JP2006104040A - 光学素子の成形用型及び光学素子の成型方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 成形用型がインロー構造であっても、上型へのガラス成形品の付着が確実に起こらないように工夫した光学素子の成形用型を提供する。
【解決手段】 光学素子の光学機能面を形成する成形用上型と下型と、非光学機能面を形成する胴型とよりなるインロー構造の成形用型内に、ガラス素材を投入し加熱軟化させ、押圧成形する光学素子の成形用型において、前記胴型の非光学機能面を形成する一部に、アンダーカット形状を有する摺動可能な部材を設けている。成形用型は、矩形の光学素子を成形する型であって、前記胴型は、矩形の稜線部で分割された複数の固定の型部材と、前記摺動可能な部材とから成り、角穴のキャビティを形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えばカメラ・ビデオ用レンズ、画像形成装置用の光学走査用レンズ、プリズム等の光学素子の成形用型及び光学素子の成型方法に関するものである。
研磨工程を必要としないでガラス素材のプレス成形によりレンズを製造する技術は、従来の製造において必要とされた複雑な工程を無くし、簡単にかつ安価にレンズを製造することを可能にした。
このようなプレス方法では、一般に成形用の上型部材と下型部材を用い、この型キャビティ内にガラス素材を挿入し、型部材の酸化防止のために雰囲気を非酸化性雰囲気、例えば窒素雰囲気として成形に適した所定温度、すなわち成形用素材粘度がlogη=8〜12(ηの単位はmPas)となるまで加熱して、所定圧力でプレス成形を行い、成形用型の成形面の形状を成形用ガラス素材の表面に転写する。そして型と成形済みガラス光学素子をガラス素材の転移温度に十分近い温度まで冷却しその後プレス圧力を除去し成形用型を開いて成形済みガラス光学素子を取り出す。
特に最近では、非球面レンズなどの光学素子のみならず、f−θレンズやプリズムなどの、軸対称形状でないレンズなどにも、この押圧成形法が採用されている。例えば、下記特許文献1、または下記特許文献2に記載の成形装置では、両面もしくは片面にトーリック面やアナモフィック面などを有する、軸非対称面の光学素子である角形光学素子を、精度よく成形するために工夫された成形用型が提示されている。
図9は、特許文献1における光学素子の成形用型を示す図、図10は、特許文献2における光学素子の成形用型を示す図((b)は(a)のX−X断面図)である。
特許文献1では、分割されていない角穴の胴型23と、それに対応して嵌合する断面が矩形(角形)の上下型部材21,22というインロー構造を成しており、この角穴のキャビティ内にガラス素材を充填、プレスすることで、所要の角形光学素子を成形する。
また、特許文献2における成形用型は、矩形の上下型部材31,32と、上型部材31を保持する上側胴型33と、下型部材32と嵌合する矩形の稜線部で分割された組み合わせ構造の下側胴型である側面型部材34,35と、この分割された下側胴型を固定させるため、それらの外周部に設置された下側胴枠36とで構成されている。上側胴型33、下側胴枠36には、位置決めピン37,38が固定されている。101は成形品である。
しかし、この型はインロー構造をしておらず、型部材、胴型及び胴枠が上下2つの組として成形前はそれぞれ分離しており、成形時の上下型の位置決めは、位置決めピンを設置することによって行っている。
特開平6−256025号公報 特開平11−100220号公報
しかしながら、前記各文献の、それぞれの成形方法において次のような欠点がある。
特許文献1では、
(1)従来公知の加工手段を用いて、胴型に角穴を形成するが、必要とする角穴の加工精度(寸法、垂直度、平行度)を出すのが困難である。
(2)胴型に設ける角穴は、そのコーナーの稜線に沿って、加工上必須のR面を形成する必要があり、そのR面に対応して、胴型に挿入する上下型部材のコーナーにも、それぞれ、C面取りあるいはR面取りの加工が必要となる。しかし、加工精度の制約から、角穴のコーナーと上下型部材との隙間が、しばしば、約10μm以上となるので、プレス成形時に、ガラスがそれらの隙間に入り易く、バリを発生し、そのため、成形後に、光学素子の稜部に、欠けや割れが生じ易い。
(3)胴型に設けた角穴にガラス素材塊を充填し、角穴内壁にガラス表面を密接させるため、成形後に、成形品の表面を角穴内壁から剥離して、胴型から取り出すのに、かなりの困難が伴う。すなわち、ガラス表面と胴型の角穴内壁との間で融着が生じ易い。また、それを防ぐ目的で、角穴内壁に融着防止のコーティングを施すことも考慮されたが、角穴内のことでもあり、コーティング加工自体が非常に困難である。
(4)成形後に成形品を取り出す際、上型へのガラス成形品の付着を防止する手段がなく、また付着が起こらなかった場合にも成形品を取り出すために上型を胴型より完全に引き抜かなければならず、再び胴型に上型を挿入するときにカジリを起こしてしまう恐れがある。
また、これらの問題を解決するために上記特許文献2の成形用型、成形方法も考案されたが、そこでも、次のような欠点がある。
(1)上下成形用型の位置決めを、分割胴型を介して胴枠に設置された位置決めピンによって行っているので、位置決め精度がインロー構造の型に比べて落ちる。
(2)インロー構造ではなく、成形品の側面部にガラス材料のはみ出し部分ができるため、成形品の後加工が必要になる場合がある。
本発明は、上記課題の全てを同時に解決するために考案したもので、その目的は、光学素子を成形する場合に、成形用型がインロー構造であっても、上型へのガラス成形品の付着が確実に起こらないように工夫した光学素子の成形用型を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の光学素子の成形用型は、光学素子の光学機能面を形成する成形用上型と下型と、非光学機能面を形成する胴型とよりなるインロー構造の成形用型内に、ガラス素材を投入し加熱軟化させ、押圧成形する光学素子の成形用型において、
前記胴型の非光学機能面を形成する一部に、アンダーカット形状を有する摺動可能な部材を設けたことを特徴とする。
また、本発明の光学素子の成形方法は、上記成形用型を用いて成形する方法であって、
前記胴型に空けた開口より成形用型内にガラス素材を投入し加熱軟化する工程と、前記摺動可能な部材を摺動させ前記開口を塞ぐ工程と、前記上型又は下型を移動させて前記ガラス素材を押圧する工程と、成型された光学素子を冷却し前記上型又は下型を離型させる工程と、前記摺動可能な部材を摺動させ前記開口を開放し、前記光学素子を取り出す工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、光学素子の光学機能面でない側面部分を形成する胴型の一部がアンダーカット形状を成しているので、光学機能面を成形し、成形時に移動する成形駒に、成形品が付着してしまう不良を確実に回避することができる。
また、成形行程を完了した後、上記胴型の一部が摺動可能となるような構造、アンダーカット形状を成しているので、この部材を摺動させることによってアンダーカット形状に引っかかることなく成形品を取り出すことができる。
以下に、本発明の実施の形態として、光学素子の成形用型の一例を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態において、光学素子用の成形用型の構造及び成形品を示す斜視図、
図2は、図1の摺動可能な側面型を、アンダーカット部分が見えるよう方向から見た斜視図である。
図1において、符号1は矩形の上成形駒(成形用上型)であり、2は同じく矩形の下成形駒(成形用下型)である。下成形駒2の周囲には、下成形駒2を基準として組み合わされ、一対の側面型3、及び他の一対の側面型4が配置され、底板5上に装着されている。これら側面型3,4は、内部が角穴のキャビティとなっている胴型を構成し、矩形の稜線部で分割された複数の固定の型部材である。光学機能面を形成する上成形駒1と下成形駒2、及び非光学機能面を形成する胴型によりインロー構造となっている。
また、側面型3の一方には、型構造の正面図(図3)から見て成形品側面が見えるように開口9が空いており、この開口9より成形開始時に成形前のガラス素材7を投入し、成形終了後に成形品8を不図示のハンドリング部材にて取り出す。成形品8は、光学機能面の周囲が矩形となっている。
胴型を構成する前記分割された型部材の、ガラス成形品の非光学機能面である少なくとも1つの側面を成形する部分が、引き戸のように摺動可能な別部材で構成され、また前記摺動可能な胴型のガラス成形品の側面を形成する面の少なくとも一部が、アンダーカット形状となっている。
すなわち、上記側面型3には、開口9を塞ぐように摺動可能な側面型6が配置されており、成形時は閉じられているが、成形前後のガラス素材投入、成形品取り出し時には、この摺動可能な側面型6は、それにより形成される成形面の法線方向に対して垂直な方向に摺動する。
そして、前記摺動可能である側面型6と、固定の側面型3,4及び下成形駒2との嵌合クリアランスは10μm以下である。
以下、上記クリアランスについて説明する。まず、下成形駒2、側面型4の寸法Lは、3つを、同時加工することで、誤差のない一定値に仕上げられる。そして、これらを、側面型3で挟み込んで組み込む。この時、側面型4には摺動可能な側面型6と嵌合するような窪み3−2が形成されており、下成形駒及び側面型3,4を組んだ状態で摺動可能な側面型6をこの窪み3−2に嵌合するよう挿入した時、この側面型3,4及び下成形駒2と摺動可能な側面型6との間に生じる隙間は、この摺動可能な側面型6の各寸法を調整することにより、適宜に設定できる。
これらの隙間の設定は、摺動可能な側面型の熱間時摺動実験により求めた。結果としては、隙間量が10μm以上であると、摺動時にカジリが生じ、摺動不可能となる場合があったが、隙間量が10μm以下であると、カジリを生じず、摺動可能であることが解った。よって、上記隙間は10μm以下に設定する必要がある。
図1,2に示すように、摺動可能な側面型6には、アンダーカット6−2が施されている。
ここで、前記アンダーカット6−2の形状は、図2に示すように、前記摺動可能な側面型6の摺動方向に対する垂直断面で見たときに、全ての断面において変化のない形状をしており、本実施形態では成形品に食い込む方向のくさび形をしている。
このアンダーカット形状は、本実施形態では上記のような形をしているが、稼働する成形駒、本実施形態では上成形駒1が成形行程終了後に移動する時に、上成形駒1の成形面と成形品とが付着していたとしても、成形品が上成形駒にくっついて一緒に持ち上がるようなことにならないよう、摺動可能な側面型6とかみ合っていれば、この形状に限定されるものではない。
上成形駒1の成形面は、例えば凸面であり、下型部材2の成形面は凹面であって、光学素子としての成形品の光学機能面に対応し、その表面粗さは、例えばRmax≦30nmに仕上げられている。また、側面型4の摺動可能な側面型6の、成形品と接触する側の壁面は、成形される光学素子の光学機能面に相当する程度の表面粗さ:Rmax30nmに仕上げられている。これは、光学素子としての成形品の側面が取り付け基準面として機能すればよく、光学機能面ほどの表面粗さに仕上げる必要はないものの、表面粗さが大きいと、ガラスの食い込みにより、摩擦係数が大きくなり、成形品が取り出し辛くなるためである。
また、上下成形駒1,2、側面型3,4のガラス接触表面には、硬質炭素膜がコーティングされている。これは、ガラス素材と型部材との融着を防止するためと、表面での摩擦係数を小さくするためである。勿論、この目的に反しない限り、例えば、硬質炭素膜の代わりに、貴金属を主成分とする合金膜でも構わない。
本実施形態では、以上の様に構成されるが、次に、この成形用型を用いてレンズを成形する方法について説明する。
図3は、成形前の素材であるガラス素材(ブランク)を投入した状態を示す正面図、
図4は、成形前に、摺動可能な側面型により開口を塞いだ状態を示す正面図、
図5は、図4の右側面断面図、
図6は、プレス成形が完了した状態を示す右側面断面図、
図7は、プレス成形完了後、上成形駒を上昇させた状態を示す右側面断面図、
図8は、プレス成形完了後、上成形駒を上昇させた後摺動可能な側面型により開口を開放した状態を示す正面図である。
まず、図3にあるように摺動可能な側面型6が開口9を開放する位置まで摺動され、不図示のハンドリング部材で、ガラス素材を下型部材2の上に載置する。その後図4,5のように摺動可能な側面型6を摺動させ側面型3の開口9を塞ぎ、赤外線加熱装置(図示せず)などで、成型用型とガラス素材とを、同時に加熱する。ガラス素材の粘度がlogη=8〜12となるまで加熱する。
このガラス素材は、例えば、成形温度が580℃(オハラLBAL42)のものを使う。成形用型が580℃に達したら、図6に示すように、上成形駒1を下降させ、プレス成形を実施する。
成形用型にて成型された光学素子を取り出すときには、成型完了後光学素子を、転移点以下の温度まで冷却し、その後上型を加圧方向と反対側に移動させ光学素子成形品より離型させたのち、摺動可能な側面を形成する型部材を摺動させ、成型された光学素子の側面部を露出させ、この成型された光学素子側面部分を介して光学素子成形品を型キャビティ内より取り出す。
すなわち、プレス成形完了後、不図示の窒素ガス噴射装置を用いて成型用型全体の冷却がなされる。
更に、成形用型が約470℃になった時点で、図7に示すように、上成形駒1を上昇させ、型開きを行う。この時、仮に上成形駒1と成形品8が付着していたとしても、6−2のアンダーカットがあることにより成形品は上成形駒に付着したまま上昇することはない。
そして、その後、図8に示すように、摺動可能な側面型6を摺動させて側面型3の窓状の開口を開放し、この開口より不図示のハンドリング部材で成形品を取り出す。なお、8−2は成形品のアンダーカット転写部である。このようなサイクルで、連続成形を行った結果、上記にあるように稼働する上成形駒と成形品が、成型後に付着したまま稼働して上昇する上付と呼ばれる不良を確実に防ぐことができる。
本発明の実施の形態において、光学素子の成形用型の構造及び成形品を示す斜視図 摺動可能な側面型を、アンダーカット部分が見えるような方向から見た斜視図 成形前の素材であるガラスブランクを投入した状態を示す正面図 成形前に、摺動可能な側面型により開口を塞いだ状態を示す正面図 図4の右側面断面図 プレス成形が完了した状態を示す右側面断面図 プレス成形完了後、上成形駒を上昇させた状態を示す右側面断面図 プレス成形完了後、上成形駒を上昇させた後摺動可能な側面型により開口を開放した状態を示す正面図 特許文献1における光学素子の成形用型を示す図 特許文献2における光学素子の成形用型を示す図((b)は(a)のX−X断面図)
符号の説明
1…上成形駒
2…下成形駒
3…側面型
3−2…窪み
4…側面型
5…底型
6…摺動可能な側面型
6−2…アンダーカット
7…成形前のガラス素材(ブランク)
8…成形品
8−2…成形品のアンダーカット転写部

Claims (11)

  1. 光学素子の光学機能面を形成する成形用上型と下型と、非光学機能面を形成する胴型とよりなるインロー構造の成形用型内に、ガラス素材を投入し加熱軟化させ、押圧成形する光学素子の成形用型において、
    前記胴型の非光学機能面を形成する一部に、アンダーカット形状を有する摺動可能な部材を設けたことを特徴とする光学素子の成形用型。
  2. 前記成形用型は、矩形の光学素子を成形する型であって、前記胴型は、矩形の稜線部で分割された複数の固定の型部材と、前記摺動可能な部材とから成り、角穴のキャビティを形成することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の成形用型。
  3. 前記胴型に開口が設けられ、前記摺動可能な部材は、光学素子取り出し時に前記開口を開放する位置まで摺動されることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の成形用型。
  4. 前記摺動可能な胴型の摺動方向が、摺動可能な胴型にて形成される成形面の法線方向に対して垂直であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の成形用型。
  5. 前記摺動可能な部材と、他の固定の型部材との嵌合クリアランスが10μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の光学素子の成形用型。
  6. 前記アンダーカット形状が、前記摺動可能な部材の摺動方向に対する垂直断面が変化しないことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の成形用型。
  7. 請求項1に記載の光学素子成形用型にて成形されたガラス光学素子であって、非光学機能面の一部がアンダーカット形状を成していることを特徴とするガラス光学素子。
  8. ガラス光学素子が、矩形形状であることを特徴とする請求項7に記載のガラス光学素子。
  9. 請求項6に記載の光学素子の成形用型にて成形されたガラス光学素子であって、非光学機能面の一部が前記摺動可能な部材の摺動方向に対する垂直断面が変化しないアンダーカット形状となっていることを特徴とするガラス光学素子。
  10. 請求項1記載の光学素子の成形用型を用いて成形する方法であって、
    前記胴型に空けた開口より成形用型内にガラス素材を投入し加熱軟化する工程と、前記摺動可能な部材を摺動させ前記開口を塞ぐ工程と、前記上型又は下型を移動させて前記ガラス素材を押圧する工程と、成型された光学素子を冷却し前記上型又は下型を離型させる工程と、前記摺動可能な部材を摺動させ前記開口を開放し、前記光学素子を取り出す工程と、を有することを特徴とする光学素子の成形方法。
  11. 前記ガラス素材のガラス粘度がlogη=8〜12となる温度域にて、前記ガラス素材を押圧することを特徴とする請求項10に記載の光学素子の成形方法。
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