JP2006103924A - 主ロープの振れ止装置、及びこれを備えるエレベータ - Google Patents

主ロープの振れ止装置、及びこれを備えるエレベータ Download PDF

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Abstract

【課題】外部からの入力因子となる振動周波数が、主ロープの固有振動数と近接する場合にも、主ロープに生じる振動の増大を抑制し、叩き音などの騒音を低減する主ロープの振れ止装置を備えるエレベータを提供する。
【解決手段】エレベータ1は、一対のシーブ5と主ロープ9と振れ止装置10とを備える。一対のシーブ5は、昇降路3を横切る方向へ離して乗り籠2に固定される。主ロープ9は、乗り籠2を昇降路3内に吊り下げるべく一対のシーブ5の間に掛け渡される。主ロープ9と交差する向きに配置されて主ロープ9と接する位置から主ロープ9に対して離れる方向及び主ロープ9に対して押し当てる方向へ調節代を有して乗り籠2に固定される少なくとも1つの振れ止装置10とを備える。
【選択図】 図4

Description

本発明は、乗り籠の移動中に主ロープに生じる自励振動を抑制する振れ止装置と、この振れ止装置を有するエレベータに関する。
エレベータの乗り籠は、主ロープによって昇降路内に吊るされており、フープ状にガバナロープが接続されている。主ロープもガバナロープも、複数のストランドを撚り合わせて作られたワイヤロープである。乗り籠が定格速度で移動すると、各ロープを案内するシーブにストランドが順番に接触することで、一定周期の振動が自励振動として発生する場合がある。
ガバナロープは、昇降路の上下に配置されるシーブに環状に捲きかけられている。したがって、ガバナロープは、上下に配置されたシーブとの接触部をそれぞれ固定端とする弦として、固有振動数f[Hz]を自ずと有することとなる。固有振動数f[Hz]は、次数をN、主ロープ長さをL、主ロープに働く張力をT、主ロープの単位長さ当りの質量をmとすると、
=N/2L{T/m}1/2
で現される。したがって、シーブ間距離、ガバナロープに作用する張力、ガバナロープの単位長さ当りの質量の条件によって決定されるガバナロープの固有振動数と、乗り籠の移動速度及びガバナロープのストランドピッチによって発生する自励振動の周波数とが、互いに近い値となると、共振してガバナロープが大きく揺れる恐れがある。
このため、ガバナロープは、特許文献1に示されるように、昇降路の途中の数箇所でローラを片側から当接させ、振れ止対策が施される。
特開平11−11823号公報
ガバナロープの場合、エレベータを運行する上で、固有振動数を変化させるような変数が存在しない。したがって、シーブとガバナロープとの間に生じる振動が固有振動数に近くならないように予め設定をずらすことができる。これに対して、主ロープの場合、乗り籠内の乗員の総重量によって主ロープにかかる張力が変化する。また、乗り籠が移動することでシーブ間距離が変化する。したがって、主ロープの場合、張り渡される長さや、加わる張力など様々な条件が変化することで、固有振動数が大きく変化する。
この場合、特定の場所に隣り合うシーブが固定され、互いの距離が一定である区間においては、乗り籠の移動速度、釣合い錘の重量、乗客の総重量、主ロープの直径、ストランド数、ストランドピッチ等の条件が揃うと、シーブと主ロープとの間の接触によって生じる自励振動の周波数が、固定されたシーブ間の主ロープの固有振動数に近くなることも予想される。
ある区間の主ロープの固有振動数に近い周波数の振動が外部振動として加わると、主ロープが共振しはじめる。そして、この区間において、シーブ間の中央における振幅が最大となる定常波が発生し、主ロープ全体にとって極めて不安定な状態となる。
主ロープは、ガバナロープと異なり、複数本並行に並べて使用されることが多い。各主ロープが個々に共振して振幅が大きくなると、隣り合うロープ同士がぶつかり合って、叩き音が生じることがある。また、振動が主ロープから伝播され、走行中の乗り籠内に伝わり騒音となって搭乗者に不快感を与えることとなる。
上述のような振動の防止対策として、乗り籠の定格速度を変更する、主ロープ本数を減らす、乗り籠にデッドウエイトを追加してロープに働く張力を増やす、などの方法がある。これらの方法は、運転条件から予め計算し、外部入力因子となる振動周波数を主ロープの固有振動数から予め十分にずらすことで、共振の発生を回避し、安定性を図るものである。
しかしながら、エレベータの運転条件は、上述の通り複数の条件の組合せによって決定される。そして、主ロープの自励振動の振動数を固有振動数からずらすために、乗り籠の定格速度を変更することは困難な場合が多い。また、主ロープ本数を減らしたり、デッドウエイトを追加したりすることは、主ロープの一本当たりの負荷を大きくするため、主ロープの寿命に対して好ましい方法ではない。
そこで、本発明は、外部からの入力因子となる振動周波数が、主ロープの固有振動数と近接する場合にも、主ロープに生じる振動の増大を抑制し、叩き音などの騒音を低減する主ロープの振れ止装置、及びこれを備えるエレベータを提供することを目的とする。
本発明に係る振れ止装置は、乗り籠に一対に配置されるシーブ間や、巻上機横引きタイプやトップサイド式のエレベータに設けられる逸らせシーブ間など、一定スパンに区切られたシーブ間に張り渡される主ロープを対象に設ける。これにより、主ロープに生じる自励振動が増大することを防止する。
本発明に係る振れ止装置は、エレベータの昇降路を横切る方向へ離して乗り籠に固定される一対のシーブを有するエレベータに設けられる。振れ止装置は、一対のシーブの間に少なくとも1つ配置し、一対のシーブ間に掛け渡された主ロープと接する位置から主ロープに対して離れる方向及び主ロープに対して押し当てる方向へ調節代を有して乗り籠に少なくとも1つ固定する。
本発明に係る振れ止装置は、乗り籠が移動する昇降路から逸らされた位置に巻上機が配置されて乗り籠を吊り下げる主ロープが逸らせシーブによって昇降路から巻上機まで取りまわされるエレベータに設けられる。振れ止装置は、逸らせシーブと巻上機との間、または隣り合う組されシーブ間に少なくとも1つ配置され、逸らせシーブと巻上機との間、または隣り合う逸らせシーブ間に掛け渡される主ロープに接する位置から主ロープに対して離れる方向及び主ロープに対して押し当てる方向へ調節代を有して固定される。
本発明に係るエレベータは、昇降路を横切る方向へ離して乗り籠に固定される一対のシーブと、乗り籠を昇降路内に吊り下げるべく一対のシーブ間に掛け渡される主ロープと、主ロープと交差する向きに配置されて主ロープと接する位置から主ロープに対して離れる方向及び主ロープに対して押し当てる方向へ調節代を有して乗り籠に固定される少なくとも1つの振れ止装置とを備える。
本発明に係るエレベータは、昇降路を移動する乗り籠と、昇降路から逸らせた位置に配置される巻上機と、乗り籠を昇降路内に吊り下げるとともに巻上機に回し掛けられる主ロープと、昇降路の上部に配置されて主ロープを昇降路から巻上機へと変向させる少なくとも1つの逸らせシーブと、逸らせシーブと巻上機との間または複数の隣り合う逸らせシーブ間に張り渡される主ロープに接する位置から主ロープに対して離れる方向及び主ロープに対して押し当てる方向へ調節代を有して配置される少なくとも1つの振れ止装置とを備える。
本発明に係る振れ止装置によれば、乗り籠に設けられる一対のシーブ間、巻上機と逸らせシーブとの間、隣り合う逸らせシーブ間に発生する自励振動が増大することを簡単な構造で抑制することができる。
本発明に係るエレベータによれば、乗り籠に一対のシーブを備える場合はこれらシーブ間、巻上機が昇降路から逸らされて配置される場合は、逸らせシーブと巻上機の間、または隣り合う逸らせシーブ間に振れ止装置を配置する。したがって、これら各区間に渡された主ロープに自励振動が発生した場合に、シーブに接する部分を固定端として主ロープが弦のように振動することを防止することができる。
本発明に係る第1の実施形態のエレベータ1について、図1から図5までを参照して説明する。以降の説明を分かりやすくするために、重力に逆らう方向を上方、従う方向を下方とする。エレベータ1は、図1に示すように、乗り籠2と、昇降路3と、籠ガイドレール4と、籠シーブ5と、釣合い錘6と、錘ガイドレール7と、巻上機8と、主ロープ9とを備える。乗り籠2は、昇降路3内に平行に配置された一対の籠ガイドレール4を倣って移動する。乗り籠2は、籠ガイドレール4に嵌合する籠枠21と、この籠枠21に保持された籠室22を備える。籠枠21は、籠ガイドレール4に沿って配置される縦枠21aと、籠室22の上方で縦枠21aの上部を連結する上梁21bと、籠室22の下部に配置される底板21cとを備える。籠室22は、籠ガイドレール4に面していない側壁に籠ドア22aを備えている。
籠シーブ5は、乗り籠2の上部に一対、昇降路3を横切る方向に互いに離して配置されている。籠シーブ5は、籠室22の天井と上梁21bとの間に配置された支持梁51の両端に設けられている。支持梁51は、上梁21bと交差する角度に固定されており、したがって、籠ガイドレール4に沿う面に対して一方の端部が籠ドア22a側に、他方の端部が籠ドア22aと反対側に位置する。
釣合い錘6は、昇降路3内に籠ガイドレール4と平行に一対の錘ガイドレール7を倣って移動する。一対の錘ガイドレール7が沿う面と、一対の籠ガイドレール4が沿う面とは、互いに交差するように、本実施形態では直交するように、配置されている。釣合い錘6の上端には、錘シーブ6aが取り付けられている。
巻上機8は、ロープ車8aを有している。巻上機8は、ロープ車8aが釣合い錘6に近い側の籠シーブ5及び錘シーブ6aの上方に位置するように、昇降路3の上部に配置されている。好ましくは、ロープ車8aの鉛直方向の接線と籠シーブ5の鉛直方向の接線、及び、ロープ車8aの鉛直方向の接線と錘シーブ6aの鉛直方向の接線、のそれぞれが互いに同軸上に位置するように配置する。
主ロープ9は、一方の端部9aが籠ガイドレール4の上端部に設けられた籠側ロープヒッチ4aに固定され、他方の端部9bが錘ガイドレール7の上端部に設けられた錘側ロープヒッチ7aに固定される。主ロープ9は、籠側ロープヒッチ4aから、籠シーブ5の下側、巻上機8のロープ車8aの上側、錘シーブ6aの下側の順に回し掛けられている。つまり、乗り籠2は、籠シーブ5に主ロープ9が掛けられることによって昇降路3内に吊り下げられ、釣合い錘6は、錘シーブ6aに主ロープ9が掛けられることによって昇降路3内に吊り下げられている。
主ロープ9は、複数本用いられ、籠シーブ5、ロープ車8a、錘シーブ6aの外周面にそれぞれ平行に回し掛けられる。籠シーブ5、ロープ車8a、錘シーブ6aには、主ロープ9の本数に応じた数の溝5a、8b、6bが設けられている。乗り籠2及び釣合い錘6が通過する以外の昇降路3の空きスペースには、巻上機8の制御盤8cやガバナなどが配置されている。
一対の籠シーブ5の間には、図2に示すように振れ止装置10が設けられている。この振れ止装置10は、籠シーブ5と平行に回転軸が配置されたローラ11と、このローラ11を軸心方向に両側から挟むブラケット12とを備えている。ローラ11は、複数本設けられる主ロープ9(図3においては、9本)に対して交差する十分な長さを有している。
また、ローラ11の表層部材として、振動を減衰しやすいことや、耐磨耗性及び耐油性を考慮すると、ウレタンゴムを使用することが好ましい。なお、ウレタンゴムの代わりにネオプレンゴムやニトリルゴム、延性を有した合成樹脂などを用いることもできる。振れ止装置10のローラ11を主ロープ9の材質よりも軟らかくすることで、主ロープ9の磨耗を軽減する。
ブラケット12は、図3に示すように、ローラ11の回転軸芯に沿う方向に取付孔13を有している。個々の取付孔13について、ローラ11に向いた面にナット14が取り付けられている。そして、振れ止装置10は、籠シーブ5とともに回転軸方向に両側から支持梁51に挟み込まれ、支持梁51に設けられた取付孔52を通したボルト15で締め付けられる。
振れ止装置10は、図4に示すように、一対の籠シーブ5の間の距離Lの中心位置に配置される。この位置は、籠シーブ5との接触端9cを固定端とする弦として主ロープ9が振動する場合の振幅の「腹」となる位置である。
支持梁51に設けられた取付孔52は、籠シーブ5間に張り渡される主ロープ9にローラ11が接する状態の位置Pから、主ロープ9から離れる方向及び主ロープ9に押し当てる方向に、それぞれ振れ止装置10の位置を微調整できるように、長孔に形成されている。そして、振れ止装置10は、図5に示すように、乗り籠2が定格速度で運行中にローラ11が主ロープ9と触れない位置で、籠シーブ5間の主ロープ9が弦のように振動する場合の振幅範囲内にセットされる。
籠シーブ5間の主ロープ9に加わる振動がそのときの当該部の固有振動数に近い周波数になった場合、主ロープ9は、弦のように振動し始める。しかし、振れ止装置10が振幅範囲内にセットされているので、図5に2点鎖線で示すように、主ロープ9は、ローラ11にあたり、振動の増大(成長)がローラ11によって抑制される。したがって、籠シーブ5間に渡された主ロープ9の固有振動数に近い周波数の外部入力振動が主ロープ9に加わった場合にも主ロープ9の振幅が増大することを防止することができる。
このように、ローラ11は、主ロープ9の磨耗に影響を与えることなく、また主ロープ9がローラ11に接触したときに発生するたたき音を低減することができる。この結果、乗り籠2内に振動や騒音が発生することを防止することができる。
また、振れ止装置10は、ブラケット12の内側にナット14が取り付けられており、支持梁51に設けられた取付孔52を通してボルト止めされる。このため、支持梁51への取り付けや取り外しが容易であり、ローラ11が磨耗した場合の交換作業など保守にも適している。さらに取付孔52が長孔形状であるので、ローラ11と主ロープ9との位置関係を適切な状態に調整することができる。また、主ロープ9を交換する際や支持梁51に籠シーブ5と振れ止装置10を取り付けて出荷する場合の輸送中など、振れ止装置10が作業の妨げになる場合、上方に押し上げ、支持梁51の内に収めることができる。
本発明に係る第2の実施形態のエレベータ1について、図6を参照して説明する。なお、第1の実施形態において説明したエレベータ1と同じ構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。図6に示すように、このエレベータ1において、振れ止装置10は、籠シーブ5の間の中心位置から一定の距離だけ離れた位置に配置されている。
乗り籠2の定格速度が速いエレベータの場合、籠シーブ5間に渡された主ロープ9が弦のように振動する固有振動数f=N/2L{T/m}1/2に対して、外部入力因子による振動の周波数が、固有振動数の次数N=2の第2振動に近接する場合がある。
この場合、主ロープ9は、籠シーブ5間の中心位置に「節」ができ、その両側に「腹」を有する高次モードの定常波になる。第1の実施形態では、振れ止装置10が中心位置に配置され、ちょうど定常波の節の位置にあたるため、第2振動の共振に対する抑制効果が得られない。これに対し、本実施形態の振れ止装置10は、中心位置を外れた位置に配置することによって、固有振動数の次数N=1以上の高次の次数の場合の振動にも対処できるようになる。この他の構成は、第1の実施形態に記載したことと同じであるので説明を省略する。
本発明に係る第3の実施形態のエレベータ1について、図7を参照して説明する。なお、第1の実施形態において説明したエレベータ1と同じ構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。図7に示すように、このエレベータ1において、振れ止装置10は、籠シーブ5の間の中心位置から籠シーブ5間の距離Lに対して1/4L離れた位置に配置されている。この位置は、第2振動の腹の位置であるので、基準振動のみならず第2振動をも確実に押さえ込むことができる。この他の構成は、第1の実施形態に記載したことと同じであるので説明を省略する。
本発明に係る第4の実施形態のエレベータ1について、図8を参照して説明する。なお、第1の実施形態において説明したエレベータ1と同じ構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。図8に示すように、このエレベータ1において、振れ止装置10は、籠シーブ5の間の中心位置から対称の位置にそれぞれ1つずつ配置されている。
このように、2個の振れ止装置10を中心位置から対称に設置することで、第3の実施形態に記載のエレベータ1において、基準振動及び第2振動のほかに振れ止装置10を振動の固定端とする新たな固有振動も、防止することができるようになる。なお、この他の構成は、第1の実施形態に記載したことと同じであるので、説明を省略する。
本発明に係る第5の実施形態の振れ止装置10aについて、図9を参照して説明する。なお、第1の実施形態で説明した振れ止装置10と同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。図9に示すように、振れ止装置10aのローラ11は、主ロープ9の本数に合わせた数だけの溝11aを有している。第1〜第4の実施形態では、ローラ11と主ロープ9との間に若干の隙間を設けている。これに対して本実施形態においては、主ロープ9に対して押圧力を加えるように振れ止装置10aを設置する。また、主ロープ9に沿う方向における振れ止装置10aの取付位置については、第1〜第4の実施形態に記載された箇所のいずれかに設けられる。
主ロープ9は、撚りを有しているので、ローラ11と常に転接していると主ロープ9を横切る方向に力を受ける。この場合、本実施形態において、主ロープ9は、ローラ11の溝11aに嵌っている。したがって、主ロープ9がローラ11とブラケット12との隙間に脱落することがない。
本発明に係る第6の実施形態の振れ止装置10bについて、図10を参照して説明する。なお、第1、第5の実施形態で説明した振れ止装置10,10aと同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。図10に記載の振れ止装置10bは、ローラ11とブラケット12と永久磁石16とを備える。ローラ11は、主ロープ9と交差する直角方向にブラケット12で枢支されており、主ロープ9が接触することで回転する。ブラケット12は、支持梁51の内側に面した凹部12aを有している。ブラケット12は、乗り籠2側の縁にフランジ12bを備えている。フランジ12bには、支持梁51に向けて調整ボルト12cが設けられている。調整ボルト12cの突出量を調節することで、ローラ11は、主ロープ9に対して位置決めされる。
永久磁石16は、凹部12aの深さ方向に磁力線を形成する向きに取り付けられる。また、永久磁石16は、凹部12aの底部12dに貼り付けられ、かつ、凹部12aの深さよりも薄い。支持梁51は、チャンネル形の鋼材であるので、振れ止装置10bを固定するための孔を設けることなく、任意の位置に振れ止装置10bが取り付く。例えば、既存のエレベータに対して取付孔を追加工することが困難な場合にも、振れ止装置10bを設けることができる。
本発明に係る第7の実施形態の振れ止装置10cについて、図11を参照して説明する。なお、第1、第5、及び第6の実施形態で説明した振れ止装置10,10a,10bと同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。図11に示す振れ止装置10cは、主ロープ9に摺接するパッド17と、このパッド17を支持するブラケット12fとを備える。支持梁51に対する取付方法は、第1〜第5の実施形態に記載の振れ止装置10,10a,10bと同様である。
パッド17は、複数の主ロープ9が並ぶ方向に十分な長さを有している。パッド17は、主ロープ9に対して接触する位置から離れる方向へずらし、主ロープ9が弦のように振動する場合の振幅範囲内で、位置決めされている。また、主ロープ9に対するパッド17の接触面は、互いに擦れる際に生じるいわゆる齧り(かじり)や毟れ(むしれ)、あるいは磨耗を考慮して、主ロープ9よりも硬質の鋼材を用いることが好ましい。
エレベータの使用頻度が少なく、主ロープ9に振動が発生する率が少ない場合は、このような簡易的な構造でも十分に振動の成長を抑制とすることができる。また、構造が簡単なので、振れ止装置10cを設けるためのコストの低減も図れる。
本発明に係る第8の実施形態のエレベータ1aについて、図12を参照して説明する。なお、第1の実施形態で説明したエレベータ1と同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。図12に示すエレベータ1aは、籠シーブ5を乗り籠2の下方に配置している。主ロープ9は、乗り籠2の外側を通って籠シーブ5に回し掛けられている。籠シーブ5を保持する支持梁51は、乗り籠2の下部に固定されている。籠シーブ5の間には、第1の実施形態の記載と同様に、振れ止装置10が配置されている。なお、第2〜第7の実施形態に記載のように振れ止装置10,10a,10b,10cを設けても良い。
本発明に係る第9の実施形態のエレベータ1bについて、図13を参照して説明する。なお、第1〜第8の実施形態に記載のエレベータ1,1aまたは振れ止装置10,10a,10b,10cの構成と同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。図13に示すエレベータ1bは、乗り籠2が移動する昇降路3から逸らせた位置に巻上機8を配置している。主ロープ9は、乗り籠2の籠枠21に一方の端部9aが固定され、釣合い錘6に他方の端部9bが固定されている。逸らせシーブ25,26は、昇降路3の上部に2つ配置されている。
1つの逸らせシーブ25は、籠枠21に固定された主ロープ9の端部9aの鉛直上方の位置に配置され、もう一つの逸らせシーブ26は、巻上機8のロープ車8aの鉛直上方の位置にそれぞれ1つずつ配置されている。逸らせシーブ25,26は、支持梁55によって互いに連結されている。逸らせシーブ25,26は、昇降路3から巻上機8へと主ロープ9を変更させている。主ロープ9は、逸らせシーブ25,26、巻上機8のロープ車8a、錘シーブ6aに回し掛けられている。
振れ止装置10のローラ11は、ロープ車8aと逸らせシーブ26との間、及び2つの逸らせシーブ25,26間に張り渡される主ロープ9に接する位置から離れる方向へずらし、それぞれ主ロープ9が振動した場合の振幅範囲で、位置決めされる。振れ止装置10の固定部分は、主ロープ9に対して離れる方向及び主ロープ9に対して押し当てる方向へ調整代を有しており、現地組立やメンテナンスの際に適宜最適な状態に調整することを可能にしている。
振れ止装置10は、第1〜第8の実施形態において示した振れ止装置10,10a,10b,10cの形状及び取付位置を適宜採用してもよい。第5の実施形態に示したローラ11のように外周に溝11aを設ける場合は、ローラ11を主ロープ9にやや押し当てた状態に接触させる。なお、逸らせシーブ25,26及び振れ止装置10は、各々、昇降路3の内壁に直に固定支持されていても良い。
このように構成されたエレベータ1bは、ロープ車8aと逸らせシーブ26との間、及び隣り合う逸らせシーブ25,26の間に張り渡された主ロープ9に生じる振動が、その部分の固有振動数に近い値となった場合でも、振れ止装置10のローラ11に接触して主ロープ9の振幅が成長することを防止する。したがって、このエレベータ1bは、乗り籠2に大きな振動が伝わることなく、不快な騒音を発生することも無い。
上述の第1〜第9の実施形態において、第5〜第7の実施形態に記載の振れ止装置10a,10b,10cを第1〜第4、第8、及び第9の実施形態のエレベータ1,1a,1bに適用することでも同様の効果が得られる。昇降路3を横切る方向へ主ロープ9が張り渡されている箇所に振れ止装置10を設ける場合、各実施形態において主ロープ9の上方に配置しているが、下方にローラ11やパッド17が配置されるように設けても良い。また、図12や図13において図示されていない詳細部は、第1の実施形態の図1〜図5で記載されたものと同等でありこれを参照するものとする。例えば、図13における振れ止装置10と支持梁55との取付け部は、図2に示す振れ止装置10と支持梁51との取付け部を上下逆さまにした状態と同じである。
以上説明したように、本発明に係るエレベータは、籠シーブ間、逸らせシーブ間、逸らせシーブとロープ車との間といった、互いに隣り合うシーブ間の距離が一定な箇所に張り渡される主ロープが有する固有振動数と、外部加振源からの振動周波数とが近接するような場合でも、主ロープの共振発生を抑制し、振動や騒音を低減させる、主ロープの振れ止装置を提供できる。これにより、定格速度やロープ本数を変更するなどのエレベータの基本設計からの変更が不要である。
本発明に係る第1の実施形態のエレベータを示す斜視図。 図1に示したエレベータの乗り籠の上部に設けられるシーブとその固定枠及び振れ止装置の分解斜視図。 図2に示した振れ止装置の斜視図。 図1に示したエレベータの乗り籠の上部をシーブの横から見た側面図。 図4に示した振れ止装置の周辺を一部切欠いて拡大した側面図。 本発明に係る第2の実施形態のエレベータの乗り籠の上部を示す側面図。 本発明に係る第3の実施形態のエレベータの乗り籠の上部を示す側面図。 本発明に係る第4の実施形態のエレベータの乗り籠の上部を示す斜視図。 本発明に係る第5の実施形態の振れ止装置を示す斜視図。 本発明に係る第6の実施形態の振れ止装置を示す斜視図。 本発明に係る第7の実施形態の振れ止装置を示す斜視図。 本発明に係る第8の実施形態のエレベータの乗り籠の下部を示す斜視図。 本発明に係る第9の実施形態のエレベータを示す斜視図。
符号の説明
1,1a,1b…エレベータ、2…乗り籠、3…昇降路、5…籠シーブ(シーブ)、8…巻上機、9…主ロープ、9a,9b…端部、10,10a,10b,10c…振れ止装置、11…ローラ、11a…溝、12…ブラケット、16…永久磁石、17…パッド、25,26…逸らせシーブ(シーブ)。

Claims (16)

  1. エレベータの昇降路を横切る方向へ離して乗り籠に固定される一対のシーブの間に少なくとも1つ配置され、前記乗り籠を前記昇降路内に吊り下げるべく前記一対のシーブ間に掛け渡された主ロープに接する位置で前記乗り籠に固定されることを特徴とする振れ止装置。
  2. エレベータの昇降路を横切る方向へ離して乗り籠に固定される一対のシーブの間に少なくとも1つ配置され、前記乗り籠を前記昇降路内に吊り下げるべく前記一対のシーブ間に掛け渡された主ロープが前記シーブとの接触端を固定端とする弦として振動する場合の振幅範囲内の前記主ロープと接触する位置で前記乗り籠に固定されることを特徴とする振れ止装置。
  3. エレベータの昇降路を横切る方向へ離して乗り籠に固定される一対のシーブの間に少なくとも1つ配置され、前記乗り籠を前記昇降路内に吊り下げるべく前記一対のシーブの間に掛け渡された主ロープと接する位置よりもこの主ロープを横切る方向に押し当てられた状態で前記乗り籠に固定されることを特徴とする振れ止装置。
  4. エレベータの昇降路を横切る方向へ離して乗り籠に固定される一対のシーブの間に少なくとも1つ配置され、前記乗り籠を前記昇降路内に吊り下げるべく前記一対のシーブ間に掛け渡された主ロープと接する位置から前記主ロープに対して離れる方向及び前記主ロープに対して押し当てる方向へ調節代を有して前記乗り籠に固定されることを特徴とする振れ止装置。
  5. 昇降路を横切る方向へ離して乗り籠に固定される一対のシーブを有するエレベータに設けられ、前記一対のシーブの間に少なくとも1つ配置され、前記乗り籠を前記昇降路内に吊り下げるべく一対のシーブ間に掛け渡された主ロープと接する位置から前記主ロープに対して離れる方向及び前記主ロープに対して押し当てる方向へ調節代を有して前記乗り籠に固定されることを特徴とする振れ止装置。
  6. 乗り籠が移動する昇降路から逸らされた位置に巻上機が配置されて少なくとも1つの逸らせシーブによって前記乗り籠を吊り下げる主ロープが前記昇降路から前記巻上機まで取り回されるエレベータに設けられ、逸らせシーブと巻上機との間、または隣り合う逸らせシーブの間に少なくとも1つ配置され、前記逸らせシーブと前記巻上機の間、または隣り合う前記逸らせシーブの間に掛け渡される前記主ロープに接する位置から前記主ロープに対して離れる方向及び前記主ロープに対して押し当てる方向へ調節代を有して固定されることを特徴とする振れ止装置。
  7. 請求項4に記載の振れ止装置は、前記一対のシーブの間の中心位置から一定の距離だけ離れた位置に配置されることを特徴とする。
  8. 請求項4に記載の振れ止装置は、前記一対のシーブの間の中心位置から対称にそれぞれ1つずつ配置されることを特徴とする。
  9. 請求項4に記載の振れ止装置は、前記一対のシーブとの接触端を固定端とする弦として前記主ロープが振動する場合の腹となる位置に配置されることを特徴とする。
  10. 請求項4に記載の振れ止装置は、前記主ロープと交差する向きに配置され、前記主ロープの移動にともなって回転するローラを備えることを特徴とする。
  11. 請求項10に記載の振れ止装置において、前記ローラは、前記主ロープが嵌り込む溝を備えることを特徴とする。
  12. 請求項10に記載の振れ止装置において、前記ローラは、少なくとも表層がウレタンゴム製であることを特徴とする。
  13. 請求項4に記載の振れ止装置は、前記主ロープと交差する向きに配置されて前記主ロープが接触することで回転するローラと、このローラを保持するブラケットと、ブラケットを前記乗り籠に対して固定する永久磁石とを備えることを特徴とする。
  14. 請求項4に記載の振れ止装置は、前記主ロープと摺接するパッドを備えることを特徴とする。
  15. 昇降路を横切る方向へ離して乗り籠に固定される一対のシーブと、
    前記乗り籠を前記昇降路内に吊り下げるべく前記一対のシーブ間に掛け渡される主ロープと、
    前記主ロープと交差する向きに配置されて前記主ロープと接する位置から前記主ロープに対して離れる方向及び前記主ロープに対して押し当てる方向へ調節代を有して前記乗り籠に固定される少なくとも1つの振れ止装置と、
    を備えることを特徴とするエレベータ。
  16. 昇降路を移動する乗り籠と、
    前記昇降路から逸らせた位置に配置される巻上機と、
    前記乗り籠を前記昇降路内に吊り下げるとともに前記巻上機に回し掛けられる主ロープと、
    前記昇降路の上部に配置されて前記主ロープを前記昇降路から前記巻上機へと変向させる少なくとも1つの逸らせシーブと、
    前記逸らせシーブと前記巻上機との間または複数の前記逸らせシーブ間に張り渡される前記主ロープに接する位置から前記主ロープに対して離れる方向及び前記主ロープに対して押し当てる方向へ調節代を有して配置される少なくとも1つの振れ止装置と、
    を備えることを特徴とするエレベータ。
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