JP2006100379A - ヒートシンク - Google Patents
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Abstract
【課題】 放熱フィンの熱伝導率に優れ、熱伝導率や密度のムラがなく、厚みが薄いことにより、放熱効率が高いグラファイト製ヒートシンクを提供する。さらに放熱フィンからの表面剥がれないことによる環境汚染の少ないヒートシンクを提供する。
【解決手段】 放熱フィンが高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、ヒートシンクによって、解決する。ヒートシンクの底辺部または上辺部が同グラファイトフィルムであることによって、解決する。また、グラファイトフィルムの熱伝導率が500W/m・Kを超え、密度が、1.5g/cm3を超えることを特徴とする、ヒートシンク、によって解決する。
【選択図】 なし
【解決手段】 放熱フィンが高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、ヒートシンクによって、解決する。ヒートシンクの底辺部または上辺部が同グラファイトフィルムであることによって、解決する。また、グラファイトフィルムの熱伝導率が500W/m・Kを超え、密度が、1.5g/cm3を超えることを特徴とする、ヒートシンク、によって解決する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、軽量で熱伝導性に優れたヒートシンクに関する。
軽量で熱伝導性に優れたヒートシンクとして、(特許文献1)には、高配向性を有するグラファイトを粉砕して得られた粉末を成形してなるヒートシンク、(特許文献2)には膨張黒鉛のチップを、ヒートシンク形状に圧縮成形してなる、膨張黒鉛製ヒートシンク、
(特許文献3)には、フレーク状のグラファイトを圧縮成形して厚板状グラファイトを得、これを切削加工して得られるヒートシンクや、フレーク状のグラファイトを所定の形状に押出成形して得られるヒートシンクが知られている。
特開平8−23183
特開2002−83913
特開2003−60140 しかし、(特許文献2、3)のヒートシンクに用いられるグラファイトの熱伝導率は500W/m・K以下であり、熱伝導率が低く、十分な放熱効果が得られなかった。
の放熱フィンの原料である高配向性を有するグラファイト粉末の熱伝導率は、500〜1000W/m・Kと非常に高い値を有しているが、ヒートシンクに成形する際に一度粉砕したのち成形しているため、得られるグラファイトの熱伝導率は500W/m・K以下となり、熱伝導率が低く、十分な放熱効果が得られなかった。
(特許文献3)には、フレーク状のグラファイトを圧縮成形して厚板状グラファイトを得、これを切削加工して得られるヒートシンクや、フレーク状のグラファイトを所定の形状に押出成形して得られるヒートシンクが知られている。
また、圧縮成形や押出成形では、放熱フィンに十分な強度を持たせることができず、放熱フィンの厚みを数mm以上にしか加工することができなかった。その結果、放熱フィンを薄くして枚数を増やして、放熱効率を上げることが難しくなり、十分な放熱効果が得られなかった。
また、圧縮成形や押出成形では、グラファイトの密度、熱伝導性を均一にすることができず、また原料に天然黒鉛を用いているため、材料のばらつきも大きく、放熱特性にむらができてしまった。
また、原料に黒鉛粉末を用いているため、圧縮成形や切削加工して作製したグラファイトは表面の黒鉛が剥がれやすく、環境汚染を起こしやすく、特に排気ファンを併用した場合には、表面の黒鉛剥がれるため、排気ファンとの併用は困難であった。
また、グラファイトフィルムを放熱フィンとして底辺部にカシメ法にて取り付ける場合、通常のグラファイトでは強度が弱く、破損してしまった。
本発明は、以上のような従来の欠点に鑑み、熱伝導率が高く、十分な放熱効果が得られ、また十分な強度を持ち、密度・熱伝導性においてバラツキの小さいヒートシンクを提供することを目的としている。さらに、表面はがれの無い環境汚染の少ないヒートシンクを提供することを目的としている。
本発明の第1は、
放熱フィンが高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、ヒートシンク、
である。
放熱フィンが高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、ヒートシンク、
である。
本発明の第2は、
底辺部または上辺部が高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、ヒートシンク、
である。
底辺部または上辺部が高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、ヒートシンク、
である。
本発明の第3は、
放熱フィンの厚みが1mm以下であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
放熱フィンの厚みが1mm以下であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
本発明の第4は、
放熱フィンの厚みが0.015mm以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
放熱フィンの厚みが0.015mm以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
本発明の第5は、
グラファイトフィルムの熱伝導率が500W/m・Kを超えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
グラファイトフィルムの熱伝導率が500W/m・Kを超えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
本発明の第6は、
グラファイトフィルムの熱伝導率が1000W/m・Kを超えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
グラファイトフィルムの熱伝導率が1000W/m・Kを超えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
本発明の第7は、
グラファイトフィルムの密度が1.5g/cm3を超えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
グラファイトフィルムの密度が1.5g/cm3を超えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
本発明の第8は、
前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
本発明の第9は、
前記高分子フィルムが、複屈折0.12以上の高分子フィルムであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
前記高分子フィルムが、複屈折0.12以上の高分子フィルムであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のヒートシンク、
である。
グラファイトフィルムの熱伝導率が高く、熱伝導率のムラも無くなり、グラファイトフィルムの強度が高く、放熱フィンの厚みが薄くなるため、放熱効率が高くなり、カシメ法により放熱フィンを形成することが可能となる。さらにグラファイトフィルム表面からの剥がれが無くなり、環境汚染が無くなり、排気ファンとの併用も可能となる。
本発明のヒートシンクの第一は、放熱フィンが高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とするヒートシンク、である。
また、本発明のヒートシンクの第二は、底辺部または上辺部が高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とするヒートシンク、である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1、2は、本発明のヒートシンクの一実施形態を示す斜視図である。図1に示すように、このヒートシンクは、半導体パッケージなどの発熱体に直接もしくは他の伝熱部材を介して取り付けられる底辺部と、この底辺部に立設された互いに平行な複数の板状放熱フィンを具備する。さらに、図2に示すように、このヒートシンクは、放熱フィンを固定するための上辺部を備えていてもよい。
放熱フィン、底辺部、上辺部に用いられるグラファイトフィルムには、面方向と厚み方向で異方性があり、面方向の方が優れた熱伝導性を有する。グラファイトフィルムを底辺部に用いる場合、その良好な熱伝導性を有する方向が、底辺部の面方向に向いているので、発熱体からの熱は、底辺部で瞬時に広がり、放熱フィンへ速やかに伝達される。さらに、グラファイトフィルムを放熱フィンに用いる場合、その良好な熱伝導性を示す方向が放熱フィンの放熱面方向に向いているので、底板部からの熱は、板状放熱フィンへ速やかに伝達され、それらの表面から熱が速やかに放散される。さらに、上辺部もグラファイトフィルムであっても良く、上辺部の上に排気ファンを備え付ける場合には、効果的に熱を排気ファンに移動させる事が出来る。ヒートシンクの構成部材をグラファイトフィルムを含む材料で形成することにより、従来の銅やアルミのヒートシンクより大幅に軽量化を計ることが可能となる。
本発明において、放熱フィンは必ずグラファイトフィルムから構成される必要があるが、底辺部、上辺部は銅やアルミ、ヒートパイプから構成されても良い。底辺部と放熱フィンの接続方法としては、カシメ法により接続されると良い。
放熱フィンの厚みは、0.015mm以上、1mm以下であると良い。厚みを1mm以下とすることで、フィン高さと厚さの比率が大きなハイアスペクトヒートシンクとすることができる。また、厚みを0.015mm以上とすることで、排気ファンによる冷却においても充分な強度を保持でき、カシメ法により接続できる十分な強度を保持できる。
また、本発明のグラファイトフィルムの熱伝導性は、熱伝導性に異方性を有し、その良好な熱伝導性を示す方向の熱伝導率が500W/m・K以上、好ましくは1000W/m・K以上、さらに好ましくは1500W/m・K以上であり、銅(熱伝導率:約380W/m・K)およびアルミニウム(熱伝導率:約200W/m・K)に比べて、熱放散性が向上し、高い放熱性能を備えることができる。
また、本発明のグラファイトフィルムの熱伝導性は、密度が1.5g/cm3以上、好ましくは1.8g/cm3以上、さらに好ましくは2.0g/cm3を超える、アルミニウム(密度:2.70g/cm3)や銅(密度:8.96g/cm3)などに比べ小さいため、ヒートシンクを軽量化することができるとともに、同じ大きさおよび重さのものにあっては、その熱放散性を向上させ、放熱性能を高めることができる。また、密度が高いため、黒鉛内部に空気層を含まず高い熱伝導性が実現できる。さらに黒鉛そのものの凝集力も高く、表面からの剥がれがなく、排気ファンを併用して放熱をする場合でも環境汚染をすることがない。さらに、密度を均一性が高く熱伝導性ひいては放熱特性を均一にすることができ、さらに、充分な強度を持たせることができ、放熱フィンをカシメ法により形成することが可能となる。
<グラファイトフィルム>
本発明のグラファイトフィルムは、高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムである。
本発明のグラファイトフィルムは、高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムである。
また、本発明のグラファイトフィルムは、高分子フィルムを1000℃以の温度で熱処理して得られた炭素化フィルムを、2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルム、である。
<高分子フィルム>
本発明で用いることができる高分子フィルムは、特に限定はされないが、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザール(PBBO)、ポリチアゾール(PT)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスイミダゾール(PBBI)等が挙げられ、これらのうちから選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムであることが、最終的に得られるグラファイトの電気伝導性、熱伝導性が大きくなることから好ましい。これらのフィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。この中でもポリイミドは、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および特性を有するものを得ることができるために好ましい。また、ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする高分子フィルムよりもフィルムの炭化、黒鉛化が進行しやすいため、結晶性、熱伝導性に優れたグラファイトとなりやすい。
本発明で用いることができる高分子フィルムは、特に限定はされないが、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザール(PBBO)、ポリチアゾール(PT)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスイミダゾール(PBBI)等が挙げられ、これらのうちから選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムであることが、最終的に得られるグラファイトの電気伝導性、熱伝導性が大きくなることから好ましい。これらのフィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。この中でもポリイミドは、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および特性を有するものを得ることができるために好ましい。また、ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする高分子フィルムよりもフィルムの炭化、黒鉛化が進行しやすいため、結晶性、熱伝導性に優れたグラファイトとなりやすい。
<高分子フィルムと複屈折>
さらに、高分子フィルムの分子の面内配向性に関連する複屈折Δnが、フィルム面内のどの方向に関しても0.12以上、好ましくは0.13以上、さらに好ましくは0.14以上である高分子フィルムであると好ましい。
さらに、高分子フィルムの分子の面内配向性に関連する複屈折Δnが、フィルム面内のどの方向に関しても0.12以上、好ましくは0.13以上、さらに好ましくは0.14以上である高分子フィルムであると好ましい。
複屈折が高くなるほど、フィルムの炭化(炭素化)、黒鉛化が進行しやすくなる。その結果、グラファイトの結晶配向性がよくなり、熱伝導性、密着性、切断性が顕著に改善され、さらに、密度、強度が高く、表面剥がれの少ないグラファイトとなりやすい。また、炭化が進行しやすいため、炭化中の昇温速度を速く、熱処理時間を短くしても、品質の優れたグラファイトとなる。また、黒鉛化が進行しやすいため、最高温度を下げて熱処理時間を短くしても品質の優れたグラファイトとなる。
また低温で炭化(炭素化)及び黒鉛化が進行するために、低温の熱処理中からフィルムの熱伝導性が高くなり、表面及び内部へ充分に熱が伝わり、均一な黒鉛化が進行しやすくなる。
また、原料の厚みが厚くなったとしても、表面と内部で均一に黒鉛化が進行するため、熱伝導性の優れたグラファイトが得られる。
複屈折が高くなると黒鉛化しやすくなる理由は明らかではないが、以下のように推測される。グラファイト化のためには分子が再配列する必要があり、複屈折の高い分子配向性に優れたポリイミドフィルムでは分子の再配列が最小で済む。そのため、ポリイミドフィルムの中でも、より配向性に優れたポリイミドフィルム(すなわち、複屈折がより大きいポリイミドフィルム)の方が、比較的低温の最高処理温度で、厚みが厚くても、結晶性、密度、強度の高いグラファイトフィルムになる、と推測される。
<複屈折>
ここでいう複屈折とは、フィルム面内の任意方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差を意味し、フィルム面内の任意方向Xの複屈折Δnxは次式(数式1)で与えられる。
ここでいう複屈折とは、フィルム面内の任意方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差を意味し、フィルム面内の任意方向Xの複屈折Δnxは次式(数式1)で与えられる。
なお、前述の「フィルム面内の任意方向X」とは、例えばフィルム形成時における材料流れの方向を基準として、X方向が面内の0゜方向、45゜方向、90゜方向、135゜方向のどの方向においても、の意味である。サンプル測定個所・測定回数は、好ましくは、下記の通りである。例えば、ロール状の原料フィルム(幅514mm、)からサンプルを切り出す際には、幅方向で10cm間隔に6カ所サンプリングして、各部位で複屈折を測定する。その平均を複屈折とする。
<ポリイミドフィルムの熱的性質、機械的性質、物理的性質、化学的性質>
また、本発明に用いられるグラファイトの原料となるポリイミドフィルムは、100〜200℃の範囲において2.5×10-5/℃未満の平均線膨張係数を有しているとよい。線膨張係数が2.5×10-5/℃未満であれば、熱処理中の伸びが小さく、スムースに黒鉛化が進行し、脆くなく、種々の特性に優れたグラファイトを得ることができる。このようなポリイミドフィルムを原料に用いることで、グラファイトへの転化が2400℃から始まり、2700℃で十分結晶性の高いグラファイトに転化が生じ得る。なお、その線膨張係数は、2.0×10-5/℃以下であることがより好ましい。
また、本発明に用いられるグラファイトの原料となるポリイミドフィルムは、100〜200℃の範囲において2.5×10-5/℃未満の平均線膨張係数を有しているとよい。線膨張係数が2.5×10-5/℃未満であれば、熱処理中の伸びが小さく、スムースに黒鉛化が進行し、脆くなく、種々の特性に優れたグラファイトを得ることができる。このようなポリイミドフィルムを原料に用いることで、グラファイトへの転化が2400℃から始まり、2700℃で十分結晶性の高いグラファイトに転化が生じ得る。なお、その線膨張係数は、2.0×10-5/℃以下であることがより好ましい。
なお、高分子フィルムの線膨張係数は、TMA(熱機械分析装置)を用いて、まず試料を10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させた後に一旦室温まで空冷し、再度10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させ、2回目の昇温時の100℃〜200℃における平均線膨張係数を測定することによって得られる。具体的には、熱機械分析装置(TMA:セイコー電子製SSC/5200H;TMA120C)を用いて、3mm幅×20mm長のサイズのフィルム試料を所定の治具にセットし、引張モードで3gの荷重をかけて窒素雰囲気下で測定が行われる。
また、本発明に用いられるポリイミドフィルムは、その弾性率が3.4GPa以上であれば、グラファイト化をより容易に行い得るということから好ましい。すなわち、弾性率が3.4GPa以上であれば、熱処理中のフィルムの収縮によるフィルムの破損を防止することができ、種々の特性に優れたグラファイトを得ることができる。
なお、フィルムの弾性率は、ASTM−D−882に準拠して測定することができる。ポリイミドフィルムのより好ましい弾性率は3.9GPa以上であり、さらに好ましくは4.9GPa以上である。フィルムの弾性率が3.4GPaより小さければ、熱処理中のフィルムの収縮で破損および変形しやすくなり、得られるグラファイトの結晶性は劣り、密度および熱伝導性が劣る傾向にある。
フィルムの吸水率は、下記のごとく測定した。フィルムを絶乾するために、100℃で30分乾燥して、25μm厚み10cm角のサンプルを作製した。この重量を測定してA1とする。25μm厚み10cm角のサンプルを蒸留水に23℃で24時間浸漬し、表面の水を拭いて除去し直ちに重量を測定した。この重量をA2とする。下記式より吸水率を求めた。
吸水率(%)=(A2−A1)÷A1×100
<ポリイミドフィルムの作製方法>
本発明で用いられるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶液をイミド化促進剤と混合した後、エンドレスベルトまたはステンレスドラムなどの支持体上に流延し、それを乾燥および焼成してイミド化させることにより製造され得る。
<ポリイミドフィルムの作製方法>
本発明で用いられるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶液をイミド化促進剤と混合した後、エンドレスベルトまたはステンレスドラムなどの支持体上に流延し、それを乾燥および焼成してイミド化させることにより製造され得る。
本発明に用いられるポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ、通常は、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種が実質的に等モル量で有機溶媒中に溶解させられる。そして、得られた有機溶液は酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで制御された温度条件下で攪拌され、これによってポリアミド酸が製造され得る。このようなポリアミド酸溶液は、通常は5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に、適当な分子量と溶液粘度を得ることができる。
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、例えば次のような重合方法(1)−(5)が好ましい。
(1) 芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
(2) 芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対して過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマを得る。続いて、芳香族テトラカルボン酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
(3) 芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマを得る。続いて、このプレポリマに芳香族ジアミン化合物を追加添加後に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
(4) 芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解および/または分散させた後に、その酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
(5) 実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
これらの中でも(2)、(3)に示すプレポリマを経由するシーケンシャル制御(シーケンスコントロール)(ブロックポリマー同士の組み合わせ・ブロックポリマー分子同士の繋がりの制御)をして重合する方法が好ましい。というのは、この方法を用いることで、複屈折が大きく、線膨張係数が小さいポリイミドフィルムが得られやすく、このポリイミドフィルムを熱処理することにより、結晶性が高く、密度および熱伝導性が優れたグラファイトを得やすくなるからである。また、規則正しく、制御されることで、芳香環の重なりが多くなり、低温の熱処理でもグラファイト化が進行しやすくなると推定される。また複屈折を高めるために、イミド基含有量を増やすと、樹脂中の炭素比率が減り、黒鉛処理後の炭素化収率が減るが、シーケンシャル制御をして合成されるポリイミドフィルムは、樹脂中の炭素比率を落とすことなく、複屈折を高めることが出来るために好ましい。炭素比率が高まるために、分解ガスの発生を抑えることができ、外観上優れたグラファイトフィルムが得られやすくなる。また芳香環の再配列を抑えることができ、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
本発明においてポリイミドの合成に用いられ得る酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
本発明においてポリイミドの合成に用いられ得るジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−オキシジアニリン)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル(3,3’−オキシジアニリン)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−オキシジアニリン)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
特に、線膨張係数を小さくして弾性率を高くかつ複屈折を大きくし得るという観点から、本発明におけるポリイミドフィルムの製造では、下記式(1)で表される酸二無水物を原料に用いることが好ましい。
上述の酸二無水物を用いることによって比較的低吸水率のポリイミドフィルムが得られ、このことはグラファイト化過程において水分による発泡を防止し得るという観点からも好ましい。
特に、酸二無水物におけるR1として式(2)〜式(13)に示されているようなベンゼン核を含む有機基を使用すれば、得られるポリイミドフィルムの分子配向性が高くなり、線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折が高く、さらには吸水率が低くなるという観点から好ましい。
さらに線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折を大きく、吸水率を小さくするためには、本発明におけるポリイミドの合成に下記式(15)で表される酸二無水物を原料に用いればよい。
さらに線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折を大きくするためには、本発明におけるポリイミドは、p−フェニレンジアミンを原料に用いて合成されることが好ましい。
また、本発明においてポリイミドの合成に用いられる最も適当なジアミンは4,4’−オキシジアニリンとp−フェニレンジアミンであり、これらの単独または2者の合計モルが全ジアミンに対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。さらに、p−フェニレンジアミンが10モル%以上、さらには20モル%以上、さらには30モル%以上、またさらには40モル%以上を含むことが好ましい。これらのジアミンの含有量がこれらのモル%範囲の下限値未満になれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折が小さくなる傾向になる。但し、ジアミンの全量をp−フェニレンジアミンにすると、発泡の少ない厚みの厚いポリイミドフィルムを得るのが難しくなるため、4,4’−オキシジアニリンを使用するのが良い。また炭素比率が減り、分解ガスの発生量を減らすことができ、芳香環の再配列の必要が減り、外観、熱伝導性に優れたグラファイトを得ることができる。
本発明においてポリイミドフィルムの合成に用いられる最も適当な酸二無水物はピロメリット酸二無水物および/または式(14)で表されるp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸二無水物)であり、これらの単独または2者の合計モルが全酸二無水物に対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。これら酸二無水物の使用量が40モル%未満であれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折が小さくなる傾向になる。
また、ポリイミドフィルム、ポリアミド酸、ポリイミド樹脂に対して、カーボンブラック、グラファイト等の添加剤を添加しても良い。
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用いられ得る。
次に、ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、またはポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤やピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用いてイミド転化するケミカルキュア法のいずれを用いてもよい。中でも、イソキノリンのように沸点の高いものほど好ましい。というのは、フィルム作製中の初期段階では蒸発せず、乾燥の最後の過程まで、触媒効果が発揮されやすいため好ましい。特に、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折が大きくなりやすく、また比較的低温で迅速なグラファイト化が可能で、品質のよいグラファイトを得ることができるという観点からケミカルキュアの方が好ましい。特に、脱水剤とイミド化促進剤を併用することは、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折が大きくなり得るので好ましい。また、ケミカルキュア法は、イミド化反応がより速く進行するので加熱処理においてイミド化反応を短時間で完結させることができ、生産性に優れた工業的に有利な方法である。
具体的なケミカルキュアによるフィルムの製造においては、まずポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒からなるイミド化促進剤を加えて、支持板、PET等の有機フィルム、ドラム、またはエンドレスベルト等の支持体上に流延または塗布して膜状にし、有機溶媒を蒸発させることによって自己支持性を有する膜を得る。次いで、この自己支持性膜をさらに加熱して乾燥させつつイミド化させてポリイミド膜を得る。この加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲内にあることが好ましい。加熱の際の昇温速度には特に制限はないが、連続的もしくは段階的に、徐々に加熱して最高温度がその所定温度範囲内になるようにするのが好ましい。加熱時間はフィルム厚みや最高温度によって異なるが、一般的には最高温度に達してから10秒から10分の範囲が好ましい。さらに、ポリイミドフィルムの製造工程中に、収縮を防止するためにフィルムを固定したり延伸したりする工程を含めば、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折が大きくなりやすい傾向にあるので好ましい。
<グラファイト化の方法>
ポリイミドフィルムのグラファイト化のプロセスにおいて、本発明では出発物質であるポリイミドフィルムを減圧下もしくは窒素ガス中で予備加熱処理して炭素化を行う。この予備加熱は通常1000℃程度の温度で行い、例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の保持を行なうことが望ましい。昇温の段階では、出発高分子フィルムの分子配向性が失われないように、フィルムの破損が起きない程度に膜面に垂直方向に圧力を加えることが好ましい。
ポリイミドフィルムのグラファイト化のプロセスにおいて、本発明では出発物質であるポリイミドフィルムを減圧下もしくは窒素ガス中で予備加熱処理して炭素化を行う。この予備加熱は通常1000℃程度の温度で行い、例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の保持を行なうことが望ましい。昇温の段階では、出発高分子フィルムの分子配向性が失われないように、フィルムの破損が起きない程度に膜面に垂直方向に圧力を加えることが好ましい。
次に、炭素化されたフィルムを超高温炉内にセットし、黒鉛化が行なわれる。黒鉛化は不活性ガス中で行なわれるが、不活性ガスとしてはアルゴンが適当であり、アルゴンに少量のヘリウムを加えることはさらに好ましい。熱処理温度としては最低でも2000℃以上、好ましくは2400℃以上が必要で、最終的には2700℃以上の温度で熱処理することが好ましく、2800℃以上で熱処理することがより好ましい。
複屈折が0.12より小さいの高分子フィルムにおいては、炭化速度が1℃/min〜10℃/min、黒鉛化速度が5℃/min以下で昇温するのが好ましく、さらに複屈折が0.12以上の高分子フィルムにおいては、炭化速度が5℃/min以上、好ましくは17℃以上、さらに好ましくは25℃以上、黒鉛化速度が10℃/min以下、好ましくは5℃/min以下で昇温するのが好ましい。この範囲に設定することにより、熱伝導性、密度、強度の高いグラファイトを得られ、特に、表面の黒鉛はがれが少ないグラファイトフィルムを得ることができるために好ましい。なかでも表面の黒鉛はがれが少ない点では、複屈折が0.12以上の高分子フィルムにおいて、炭化速度が5℃/min以上、好ましくは17℃以上、さらに好ましくは25℃以上、黒鉛化速度が10℃/min以下、好ましくは5℃/min以下で昇温するのが好ましい。
熱処理温度が高いほど良質のグラファイトへの転化が可能であるが、経済性の観点からはできるだけ低温で良質のグラファイトに転化できることが好ましい。2500℃以上の超高温を得るには、通常はグラファイトヒータに直接電流を流して、そのジュ−ル熱を利用した加熱が行なわれる。グラファイトヒータの消耗は2700℃以上で進行し、2800℃ではその消耗速度が約10倍になり、2900℃ではさらにその約10倍になる。したがって、原材料の高分子フィルムの改善によって、良質のグラファイトへの転化が可能な温度を例えば2800℃から2700℃に下げることは大きな経済的効果を生じる。なお、一般に入手可能な工業的炉において、熱処理可能な最高温度は3000℃が限界である。高分子フィルムを一旦炭素化して取り出した後、これを黒鉛化しても、炭素化と黒鉛化を連続的におこなっても良い。
グラファイト化処理では、予備熱処理で作製された炭素化フィルムがグラファイト構造に転化させられるが、その際には炭素−炭素結合の開裂と再結合が起きなければならない。グラファイト化をできる限り低温で起こすためには、その開裂と再結合が最小のエネルギーで起こるようにする必要がある。出発ポリイミドフィルムの分子配向は炭素化フィルム中の炭素原子の配列に影響を与え、その分子配向はグラファイト化の際に炭素−炭素結合の開裂と再結合化のエネルギーを少なくする効果を生じ得る。したがって、高度な分子配向が生じやすくなるように分子設計を行うことによって、比較的低温でのグラファイト化が可能になる。この分子配向の効果は、フィルム面に平行な二次元的分子配向とすることによって一層顕著になる。
グラファイト化反応における第二の特徴は、炭素化フィルムが厚ければ低温でグラファイト化が進行しにくいということである。したがって、厚い炭素化フィルムをグラファイト化する場合には、表面層ではグラファイト構造が形成されているのに内部ではまだグラファイト構造になっていないという状況が生じ得る。炭素化フィルムの分子配向性はフィルム内部でのグラファイト化を促進し、結果的により低温で良質のグラファイトへの転化を可能にする。
炭素化フィルムの表面層と内部とでほぼ同時にグラファイト化が進行するということは、内部から発生するガスのために表面層に形成されたグラファイト構造が破壊されるという事態を避けることにも役立ち、より厚いフィルムのグラファイト化を可能にする。本発明において作製されるポリイミドフィルムは、まさにこのような効果を生じるのに最適な分子配向を有していると考えられる。
以下において、本発明の種々の実施例がいくつかの比較例と共に説明される。
(実施例1)
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。
この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。次にこの混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布された。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブン、遠赤外線ヒーターを用いて乾燥された。
出来上がり厚みが75μmの場合のフィルム作製用の乾燥条件を示す。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風
オーブンで120℃において240秒乾燥されて、自己支持性を有するゲルフィルムにされた。そのゲルフィルムはアルミ箔から引き剥がされ、フレームに固定された。さらに、ゲルフィルムは、熱風オーブンにて120℃で30秒、275℃で40秒、400℃で43秒、450℃で50秒、および遠赤外線ヒータ−にて460℃で23秒段階的に加熱されて乾燥された。
オーブンで120℃において240秒乾燥されて、自己支持性を有するゲルフィルムにされた。そのゲルフィルムはアルミ箔から引き剥がされ、フレームに固定された。さらに、ゲルフィルムは、熱風オーブンにて120℃で30秒、275℃で40秒、400℃で43秒、450℃で50秒、および遠赤外線ヒータ−にて460℃で23秒段階的に加熱されて乾燥された。
以上のようにして、厚さ75μmのポリイミドフィルム(試料A:弾性率3.1GPa、吸水率2.5%、複屈折0.10、線膨張係数3.0×10-5/℃)が製造された。
厚み75μmの試料Aを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、2.5℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温された後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)が行われた。得られた炭素化フィルムを黒鉛板に挟み、黒鉛化炉を用いて2100℃未満では減圧下、2100℃以上ではアルゴン雰囲気下で、2.5℃/分の昇温速度で2800℃まで加熱し、縦3cm、横5cmのグラファイトフィルム製放熱フィンが作製された。
(実施例2、3、4)
ポリアミド酸に4,4’−オキシジアニリンの3当量を溶解したDMF溶液にピロメリット酸二無水物の4当量を溶解して、両末端に酸無水物を有するプレポリマが合成された後、そのプレポリマを含む溶液にp−フェニレンジアミンの1当量を溶解することによって得られたポリアミド酸を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ75μm、125μmのポリイミドフィルム(試料B:弾性率4.1GPa、吸水率2.1%、複屈折0.14、線膨張係数1.6×10-5/℃)が製造された。厚みが125μmのポリイミドフィルムを得る場合には、厚みに比例して焼成時間が調整された。すなわち、厚さ125μmのフィルムの場合には、75μmの場合よりも焼成時間を5/3に設定した。また、厚みが厚い場合には、ポリイミドフィルムの溶媒やイミド化触媒蒸発による発泡を防ぐために低温での焼成時間を十分とる必要がある。
ポリアミド酸に4,4’−オキシジアニリンの3当量を溶解したDMF溶液にピロメリット酸二無水物の4当量を溶解して、両末端に酸無水物を有するプレポリマが合成された後、そのプレポリマを含む溶液にp−フェニレンジアミンの1当量を溶解することによって得られたポリアミド酸を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ75μm、125μmのポリイミドフィルム(試料B:弾性率4.1GPa、吸水率2.1%、複屈折0.14、線膨張係数1.6×10-5/℃)が製造された。厚みが125μmのポリイミドフィルムを得る場合には、厚みに比例して焼成時間が調整された。すなわち、厚さ125μmのフィルムの場合には、75μmの場合よりも焼成時間を5/3に設定した。また、厚みが厚い場合には、ポリイミドフィルムの溶媒やイミド化触媒蒸発による発泡を防ぐために低温での焼成時間を十分とる必要がある。
実施例2では、厚み75μmの試料Bを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、25℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温された後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)が行われた。得られた炭素化フィルムを黒鉛板に挟み、黒鉛化炉を用いて2100℃未満では減圧下、2100℃以上ではアルゴン雰囲気下で、2.5℃/分の昇温速度で2800℃まで加熱し、縦3cm、横5cmのグラファイトフィルム製放熱フィンが作製された。
実施例3では、厚み75μmの試料Bを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、25℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温された後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)が行われた。得られた炭素化フィルムを黒鉛板に挟み、黒鉛化炉を用いて2100℃未満では減圧下、2100℃以上ではアルゴン雰囲気下で、2.5℃/分の昇温速度で3000℃まで加熱し、縦3cm、横5cmのグラファイトフィルム製放熱フィンが作製された。
実施例4では、厚み125μmの試料Bを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、25℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温された後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)が行われた。得られた炭素化フィルムを黒鉛板に挟み、黒鉛化炉を用いて2100℃未満では減圧下、2100℃以上ではアルゴン雰囲気下で、2.5℃/分の昇温速度で3000℃まで加熱し、縦3cm、横5cmのグラファイトフィルム製放熱フィンが作製された。
(比較例1)
酸処理したフレーク状天然グラファイトを、約3000℃に加熱して発泡させた後、圧縮成形により厚さ約10mmのグラファイト厚板を得、この厚板を切削加工により、厚み2mm、縦3cm、横5cmの放熱フィンを得た。
酸処理したフレーク状天然グラファイトを、約3000℃に加熱して発泡させた後、圧縮成形により厚さ約10mmのグラファイト厚板を得、この厚板を切削加工により、厚み2mm、縦3cm、横5cmの放熱フィンを得た。
(比較例2)
実施例3で得られたグラファイトフィルムを粉砕した後、圧縮成形により厚さ約10mmのグラファイト厚板を得、この厚板を切削加工により、厚み2mm、縦3cm、横5cmの放熱フィンを得た。
実施例3で得られたグラファイトフィルムを粉砕した後、圧縮成形により厚さ約10mmのグラファイト厚板を得、この厚板を切削加工により、厚み2mm、縦3cm、横5cmの放熱フィンを得た。
実施例1〜4、比較例1、2で得られたグラファイトの熱拡散率、熱伝導率のバラツキ、密度、強度、厚み、表面はがれ性が表1に示されている。なお、ポリイミドフィルムの複屈折、強度、線膨脹係数、厚みは、グラファイトフィルム製放熱フィンの原料である高分子フィルムの特性である。また、黒鉛化の最高処理温度とは、グラファイトフィルム製放熱フィンを作製する場合の黒鉛化温度のことである。また、熱伝導率、熱伝導率のバラツキ、密度、強度、厚み、剥がれは、グラファイトフィルムの特性である。
グラファイトフィルムの熱伝導率(W/(m・K))は、グラファイトフィルムの熱拡散率(m2/s)と密度(ここではkg/m3)と熱容量(J/(K・kg))の積によって算出された。
グラファイトフィルムの熱拡散率は、実施例に準じて、5cm×5cmのグラファイトフィルムを作製し、0.5cm×5cmの短冊を10本切り出した後、これら10本について、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定し、これら10本のデータの平均値をグラファイトフィルムの熱拡散率とした。
グラファイトフィルムの密度は、グラファイトフィルムの重量(g)をグラファイトフィルムの縦、横、厚みの積で算出した体積(cm3)の割り算により算出された。なお、グラファイトフィルムの厚みは、任意の10点で測定した平均値を使用した。
グラファイトフィルムの熱伝導率のばらつきは、測定された6本の短冊のうち、熱伝導率の最大値から熱伝導率の最小値を引いて得られた値を平均の熱伝導率で割り、その値を100倍すること(百分率)により算出した。
グラファイトフィルムの熱容量は、0.709(J/(K・kg))の値を用いた。(改訂4版 化学便覧 基礎編II−290)
グラファイトフィルムの表面剥がれは、JIS K 5400(1990年)(JIS K 5600(1999年))「塗料一般試験方法」の8.5.3 Xカットテープ法に準じて、評価した。
グラファイトフィルムの表面剥がれは、JIS K 5400(1990年)(JIS K 5600(1999年))「塗料一般試験方法」の8.5.3 Xカットテープ法に準じて、評価した。
実施例1〜4で得られたグラファイトフィルムはいずれの水準においても、熱伝導率は、800W/m・K以上と高い熱伝導性を示し、熱伝導率のばらつきも10%以下と優れていた。また、密度は1.6g/cm3以上と高い密度を有しており、強度も20MPa以上と優れており、表面の剥がれもなかった。
一方、比較例1、2で得られたグラファイトは熱伝導率が500W/m・K以下と実施例に比較すると劣っており、熱伝導率のバラツキも30%以上もあった。また、密度は1.5g/cm3以下と密度が小さく、強度も10MPa以下と劣り、表面から黒鉛がはがれやすかった。
実施例2で得られたグラファイトフィルムは、実施例1よりも各特性に優れていた。これは、実施例2では出発ポリイミドフィルムがシーケンスコントロールされて製造されているため、黒鉛化中の分子の再配列を容易にしたものと考える。また、出発原料の炭素比率が高いために、分解ガスの発生量が少なく、スムースに黒鉛化が進行したものと考える。実施例3で得られたグラファイトフィルムは、実施例2よりも更に各特性に優れていた。これは、実施例3の方が、実施例2よりも最高加熱温度が高いために、十分黒鉛化が進行したためだと考える。
(実施例5)
図5のように底辺部を、最底辺部に実施例3で得られた厚み32μm×5cm×5cmのグラファイトフィルムの上に厚み2mm(2mmでOK)×5cm×5cmの銅板を接着剤で貼り合わせて形成した。銅板には40枚の放熱フィルが取り付けられるように等間隔に溝が掘ってあり、その溝に、実施例3で得られた厚み32μm×3cm×5cmのグラファイト製放熱フィン40枚を差し込んだ。さらにこの放熱フィンを固定するために、V字状に尖った工具を打ち込み、カシメ部を形成した。カシメを行うと、余肉が溝部に移動し、その結果、溝部の幅が狭くなることで、放熱フィンが固定される。以上のようにしてグラファイト製ヒートシンクが得られた。
図5のように底辺部を、最底辺部に実施例3で得られた厚み32μm×5cm×5cmのグラファイトフィルムの上に厚み2mm(2mmでOK)×5cm×5cmの銅板を接着剤で貼り合わせて形成した。銅板には40枚の放熱フィルが取り付けられるように等間隔に溝が掘ってあり、その溝に、実施例3で得られた厚み32μm×3cm×5cmのグラファイト製放熱フィン40枚を差し込んだ。さらにこの放熱フィンを固定するために、V字状に尖った工具を打ち込み、カシメ部を形成した。カシメを行うと、余肉が溝部に移動し、その結果、溝部の幅が狭くなることで、放熱フィンが固定される。以上のようにしてグラファイト製ヒートシンクが得られた。
(比較例3)
比較例2と同様の方法の圧縮加工により、32cm×5cm×5cmのグラファイトブロックを得、これを切削加工により、底辺部の厚みが2mm、放熱フィンが厚み2mm×3cm×5cmで10枚に形成された、グラファイト製ヒートシンクを得た。
比較例2と同様の方法の圧縮加工により、32cm×5cm×5cmのグラファイトブロックを得、これを切削加工により、底辺部の厚みが2mm、放熱フィンが厚み2mm×3cm×5cmで10枚に形成された、グラファイト製ヒートシンクを得た。
実施例5と比較例3で得られたグラファイト製ヒートシンクをDELL製デスクトップパソコンDIMENSION900に搭載して作動させ、10分後CPUの温度を観測した。その結果、実施例5のヒートシンクを搭載した場合には、比較例3のヒートシンクを搭載した場合にくらべて、CPUの温度が2℃下がっており、実施例5のヒートシンクを用いることにより、優れた放熱効果が得られることがわかった。また、実施例5のヒートシンクは表面の黒鉛がはがれなかったが、比較例3のヒートシンクからは表面から黒鉛がはがれやすかった。
11 放熱フィン
21 底辺部
31 上辺部
1 ポリイミドフィルム
2 くさび形シート
3 くさび形シートの幅
4 ナトリウム光
5 干渉縞
101 放熱フィン用グラファイト
102 底辺部用グラファイトフィルム
103 底辺部用銅板
104 カシメ部
105 接着剤層
21 底辺部
31 上辺部
1 ポリイミドフィルム
2 くさび形シート
3 くさび形シートの幅
4 ナトリウム光
5 干渉縞
101 放熱フィン用グラファイト
102 底辺部用グラファイトフィルム
103 底辺部用銅板
104 カシメ部
105 接着剤層
Claims (9)
- 放熱フィンが高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、ヒートシンク。
- ヒートシンクの底辺部または上辺部が高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする、ヒートシンク。
- 放熱フィンの厚みが1mm以下であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載のヒートシンク。
- 放熱フィンの厚みが0.015mm以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のヒートシンク。
- グラファイトフィルムの熱伝導率が500W/m・Kを超えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のヒートシンク。
- グラファイトフィルムの熱伝導率が1000W/m・Kを超えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のヒートシンク。
- グラファイトフィルムの密度が1.5g/cm3を超えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のヒートシンク。
- 前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のヒートシンク。
- 前記高分子フィルムが、複屈折0.12以上の高分子フィルムであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のヒートシンク。
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