JP2006083195A - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、該樹脂組成物の製造方法及び該樹脂組成物の成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 (A)芳香族ポリカーボネート樹脂50〜99質量%及び(B)ポリオレフィン系樹脂50〜1質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、(C)カーボンナノチューブ0.1〜30質量部及び(D)相溶化剤0〜10質量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である。
【選択図】 なし
Description
電子機器の普及に伴い、電子部品から発生するノイズが周辺機器に影響を与える電磁波障害、静電気による誤作動等のトラブルが増加し、大きな問題となりつつある。
これらの問題の解決のため、導電(帯電防止)性や制電性に優れた材料が要求されている。
従来より、導電性の低い高分子材料に導電性フィラー等を配合した導電性高分子材料が広く利用されている。
導電性フィラーとしては、金属繊維、金属粉末、カーボンブラック及び炭素繊維等が一般に用いられているが、金属繊維及び金属粉末を導電性フィラーとして用いると、優れた導電性付与効果はあるが、耐蝕性に劣り、機械的強度が得難い欠点がある。
カーボンブラックを導電性フィラーとして用いる場合、少量の添加で高い導電性が得られるケッチェンブラック、バルカンXC72及びアセチレンブラック等の導電性カーボンブラックが用いられているが、これらは、樹脂への分散性が不良である。
カーボンブラックの分散性が樹脂組成物の導電性に影響するため、安定した導電性を得るには独特の配合並びに混合技術が必要とされる。
更に、複雑な形状の成形品を得ようとする場合、導電性フィラーの片寄りが生じるため、導電性にバラツキが発生し、満足できない。
炭素繊維では、繊維径の細い方が同量の繊維を添加した場合、樹脂と繊維間の接触面積が大きくなるため導電性付与に優れることが期待される。
優れた導電性を有する極細炭素フィブリルが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、樹脂と混合した場合、樹脂への分散性に劣り、成形品表面外観が損なわれ、満足できるものではない。
また、樹脂を着色する場合、公知の顔料用カーボンブラックを着色剤として用いる場合、黒色を発現させるには多量に用いる必要があり、樹脂への分散性及び成形品の表面外観の点で問題がある。
極細炭素フィブリルを添加する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)が、極細炭素フィブリルが及ぼす難燃性については全く記載されていない。
また、開示された方法では難燃性が低く、高い難燃性を必要とする製品には使用することができない。
熱可塑性樹脂、カーボンナノチューブと、リン系化合物、フェノール系化合物、エポキシ系化合物及びイオウ系化合物から選ばれる一種以上の化合物を配合してなる樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献3参照。)が、実施例は、ポリカーボネート樹脂/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂のみであり、ポリカーボネート樹脂/ポリオレフィン系樹脂の組合わせについては実施例はない。
また、導電性能を発現させるためにカーボンナノチューブを多量に配合すると、外観不良を招いたり、耐衝撃強度の低下を引き起こす場合があり、耐溶剤性の改良についても記載がない。
従来、ポリカーボネート樹脂/ポリオレフィン系樹脂アロイは、相溶性が低く、耐衝撃強度が低かったり、その成形品は層状剥離を引き起こすため外観が不良であり、相溶化剤等の配合が不可欠であった。
1.(A)芳香族ポリカーボネート樹脂50〜99質量%及び(B)ポリオレフィン系樹脂50〜1質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、(C)カーボンナノチューブ0.1〜30質量部及び(D)相溶化剤0〜10質量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
2.(A)成分の粘度平均分子量が、10,000〜40,000である上記1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
3.(B)成分が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体エステルから選ばれる1種以上の化合物である上記1又は2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
4.(C)成分が、非晶カーボン粒子の含有量20質量%以下、外径0.5〜120nm及び長さ500nm以上である上記1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
5.(D)成分が、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂、オキサゾリン変性ポリオレフィン系樹脂から選ばれる1種以上の化合物である上記1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
6.OA機器、情報・通信機器、自動車部品又は家庭電化機器用組成物である上記1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
7.(B)成分と(C)成分を溶融混練した後、この混練物に(A)成分、又は(A)成分と(D)成分を添加し、溶融混練することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法、
8.上記1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いて得られた成形体
を提供するものである。
カーボンナノチューブは、炭素繊維よりはるかにその本数を多く(106倍程度)配合することができるため、層状剥離の防止効果と導電パスの形成効果がある。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂/ポリオレフィン系樹脂をアロイ化することにより、カーボンナノチューブの配合量を低減することができる。
樹脂成分において、(A)成分及び(B)成分の含有量が上記の範囲にあれば、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂の特性が充分に発揮されると共に、耐溶剤性及び耐衝撃性などが良好となる。
好ましい(A)成分と(B)成分との含有割合は、(A)成分が60〜95質量%で、(B)成分が40〜5質量%である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物においては、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、(C)カーボンナノチューブ0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜10質量部配合される。
カーボンナノチューブの配合量が、0.1質量部以上であると、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の導電(帯電防止)性及び難燃性が向上し、30質量部以下であると、配合量に応じて性能が向上し、耐衝撃強度や成形性が上昇する。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じ、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、(D)相溶化剤10質量部以下配合することができ、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部配合される。
相溶化剤の配合量が上記の範囲にあれば、芳香族ポリカーボネート樹脂/ポリオレフィン系樹脂の相溶化効果が良好に発揮され、ポリオレフィン系樹脂剤のドメインが微小化すると共に、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の物性が向上する。
通常、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることができる。
即ち、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法、即ち、2価フェノールとホスゲンの反応、2価フェノールとジフェニルカーボネート等とのエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、又はハロホーメート等であり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等である。
この他、2価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。
これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノール等が用いられる。
また、テレフタル酸等の2官能性カルボン酸、又はそのエステル形成誘導体等のエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。
また、種々のポリカーボネート樹脂の混合物を用いることもできる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、機械的強度及び成形性の点から、その粘度平均分子量は、通常、10,000〜40,000であり、好ましくは13,000〜30,000、更に好ましくは14,000〜27,000である。
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
他のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン−エチレンブロック及びランダム共重合体、結晶性プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、及びこれらの結晶性プロピレン重合体とエラストマーとの混合物が挙げられる。
α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。
エラストマーとしては、スチレン−(1−ブテン)−スチレントリブロック共重合体(SBS)及びスチレン−(エチレン/1−ブテン)−スチレントリブロック共重合体(SEBS)等のスチレン系やオレフィン系エラストマー、更には、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS)及びメタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン樹脂(MAS)のようなコアシェル型エラストマーが好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂としては、上記樹脂単独でも、又は2種以上の混合物としても用いることができる。
本発明のポリオレフィン系樹脂及びその混合物のメルトフローレート〔MFR〕(230℃、21.18N)は、通常0.5〜600g/10分であり、好ましくは1〜500g/10分である。
メルトフローレートが0.5g/10分以上であると、成形加工が容易であり、600g/10分以下であると耐衝撃性等の機械的物性が著しく上昇する。
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステルは、エチレンと(メタ)アクリル酸(エステル)からなる二元共重合体であるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及びそのエステル並びに、第3のモノマーとして一酸化炭素を含む三元共重合体であるエチレン−一酸化炭素−(メタ)アクリル酸共重合体及びそのエステルを含み、これらの中から、1種以上を適宜選択して用いることができる。
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、通常、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜8程度の直鎖状若しくは分岐状のアルキルエステルが好ましい。
より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−オクチル等のエステルが挙げられる。
このエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステルを用いることにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に耐衝撃性、流動性、耐溶剤性を付与することができる。
カーボンナノチューブの外径が0.5nm以上であると、分散が容易であり、導電(帯電防止)性が上昇し、外径が120nm以下であると、成形品の外観が良好で、導電(帯電防止)性も上昇する。
カーボンナノチューブの長さが、500nm以上、特に800nm以上であると、導電(帯電防止)性が十分であり、長さが15,000nm以下であると、成形品の外観が良好で、分散が容易となる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の導電(帯電防止)性及び難燃性の観点より、カーボンナノチューブに不純物として含まれる非晶カーボン粒子は、20質量%以下が好ましい。
非晶カーボン粒子を20質量%以下にすることにより、導電(帯電防止)性能が向上するとともに、成形時の劣化防止に効果がある。
カーボンナノチューブを配合することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂/ポリオレフィン系樹脂の相構造が安定化され、溶融時のポリオレフィン系樹脂の再凝集や射出成形時のドメイン配向を低減することができる。
カーボンナノチューブは、ゼオライトの細孔に鉄やコバルト系触媒を導入した触媒化学気相成長法(CCVD法)、気相成長法(CVD法)、レーザーアブレーション法、炭素棒・炭素繊維等を用いたアーク放電法等によって製造することができる。
カーボンナノチューブの末端形状は、必ずしも円筒状である必要はなく、例えば、円錐状等変形していても差し支えない。
また、カーボンナノチューブの末端が閉じた構造でも、開いた構造のどちらでも用いることができるが、好ましくは末端が開いた構造のものがよい。
カーボンナノチューブの末端が閉じた構造のものは、硝酸等化学処理をすることにより開口することができる。
更に、カーボンナノチューブの構造は、多層でも単層でもよい。
また、ポリオレフィン系樹脂とカーボンナノチューブのマスターバッチを用いて、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン,エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン系化合物共重合体(例えば、EPDM等)、エチレン−芳香族モノビニル化合物−共役ジエン系化合物共重合ゴム等が挙げられる。
また、上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられ、これらは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのポリオレフィン系樹脂の中では、共重合体を含むポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂が好適であり、中でもポリプロピレン系樹脂が最も好ましい。
これらの中で不飽和ジカルボン酸及びその誘導体が好ましく、特に無水マレイン酸が好適である。
また、変性方法については特に制限はなく、従来公知の種々の方法を用いることができる。
例えば、該ポリオレフィン系樹脂を適当な有機溶媒に溶解し、不飽和カルボン酸やその誘導体及びラジカル発生剤を添加して攪拌、加熱する方法、又は前記各成分を押出機に供給して溶融混練を行う方法等を用いることができる。
この酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、前記不飽和カルボン酸やその誘導体の付加量が0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%の範囲にあるものがよく、特に0.1〜10質量%の無水マレイン酸付加変性ポリプロピレン系樹脂が好適である。
エポキシ変性又はオキサゾリン変性ポリオレフィン系樹脂とは、エポキシ基又はオキサゾリニル基含有不飽和単量体と、これと共重合可能なオレフィン系又はアクリル系単量体との共重合体を意味する。
エポキシ基含有不飽和単量体としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、グリシジルイタコネート等が挙げられる。
炭素原子1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられ、炭素原子1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基が挙げられる。
で表わされるビニルオキサゾリン化合物が挙げられ、R2が水素原子又はメチル基の化合物が好ましい。
エポキシ基又はオキサゾリニル基含有不飽和単量体と共重合可能なオレフィン単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等のα−オレフィンが挙げられる。
α−オレフィン成分の他に、少量のブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン等のジエン成分、酢酸ビニル、アクリル酸(塩)、メタアクリル酸(塩)、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、(無水)マレイン酸、マレイン酸エステル、2−ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸(無水物)等の不飽和カルボン酸又はその誘導体成分、スチレン等の芳香族ビニルモノマー、又はアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体が共重合体中に含まれていてもよい。
共重合体がエポキシ基とオキサゾリニル基の両者を有することもできる。
エポキシ基又はオキサゾリニル基含有不飽和単量体と共重合可能なアクリル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、例えば、塩、エステル等が挙げられる。
これらの成分の他に、少量のα−オレフィン、ジエン成分、不飽和カルボン酸又はその誘導体成分、芳香族ビニル単量体又はシアン化ビニル系単量体等が共重合体中に含まれていてよい。
上記オレフィン系又はアクリル系共重合体において、エポキシ基及びオキサゾリニル基を有する不飽和単量体由来の単位の量は、共重合体に対して0.05〜30質量%が好ましい。
0.05質量%以上であると、相溶性が良好であり、30質量%以下であると、耐溶剤性の改良効果が高い。
相溶化剤を配合することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂/ポリオレフィン系樹脂を相溶化し、ポリオレフィン系樹脂を微小化することができる。
例えば、各成分をターンブルミキサーやヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が適宜選択される。
製造方法として、各成分を一括投入して溶融混練してもよいが、予めポリオレフィン系樹脂とカーボンナノチューブを溶融混練後、芳香族ポリカーボネート樹脂等を溶融混練すると、導電(帯電防止)性が向上し、芳香族ポリカーボネート樹脂/ポリオレフィン系樹脂の相構造が安定化される。
溶融混練の方法としては、ポリオレフィン系樹脂とカーボンナノチューブを溶融した状態で、押出機の途中から芳香族ポリカーボネート樹脂等の他の成分を投入してもよいし、予め製造したポリオレフィン系樹脂とカーボンナノチューブのマスターバッチを用いてももよい。
マスターバッチ中のカーボンナノチューブ量としては、5〜40質量%が好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、前述の性状を有することから、例えば、OA機器、情報・通信機器、自動車部品又は家庭電化機用などとして、好適に用いられる。
本発明はまた、前述の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いて得られた成形体をも提供する。
実施例1〜5及び比較例1〜3
表1に示す割合で各成分を配合し、ベント式二軸押出成形機(機種名:TEM35、東芝機械社製)に供給し、280℃で溶融混練し、ペレット化した。
得られたペレットを、120℃で10時間乾燥した後、成形温度280℃、(金型温度80℃)で射出成形して試験片を得た。
得られた試験片を用いて性能を下記各種試験によって評価し、その結果を表1に示した。
〔配合成分〕
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂PC:A1900〔出光興産(株)製〕、粘度平均分子量=19,500
(B)ポリオレフィン系樹脂PO:ホモポリプロピレンH700〔出光興産(株)製〕、MFR(230℃、21.18N)=8
(C)カーボンナノチューブ:マルチウォール、直径10〜30nm、長さ1〜10μm、両端開口、非晶カーボン粒子量15質量%(サンナノテック社製)
(B)+(C):PO/カーボンナノチューブMB:カーボンナノチューブとホモポリプロピレンH700のマスターバッチ;二軸押出機(TEM−35)を使用し、設定温度220℃で製造した。
(D)相溶化剤:エポキシ変性ポリエチレン〔ボンドファストE,住友化学(株)製〕
(1)IZOD(アイゾット衝撃強度):ASTM D256に準拠、23℃〔肉厚1/8インチ(0.32cm)〕、単位:kJ/m2
(2)体積固有抵抗値:JISK6911に準拠(試験平板:80×80×3mm)した。単位:Ω
(3)難燃性:UL94燃焼試験に準拠(試験片厚み:3.0mm)した。
(4)耐溶剤性:試験片をガソリン中に10分間浸漬した後、手で曲げたときの外観等の変化により評価した。
(5)成形外観:目視により評価した。
実施例は、耐衝撃性、導電(帯電防止)性、耐溶剤性、難燃性及び成形外観に優れ、マスターバッチを用いると、耐衝撃性、導電(帯電防止)性が更に向上する。
これに対し、比較例1から、芳香族ポリカーボネート樹脂のみでは導電(帯電防止)性がなく、耐溶剤性も低いことが分かる。
比較例2から、芳香族ポリカーボネート樹脂単独では、実施例1及び2と同一のカーボンナノチューブ量を添加しても、導電(帯電防止)性、耐溶剤性、難燃性の向上はなく、成形外観も低下することが分かる。
比較例3は、実施例3及び4と同種の芳香族ポリカーボネート樹脂及びポリオレフィン系樹脂量が配合されているが、カーボンナノチューブを添加しないと導電(帯電防止)性、難燃性が発現しないだけではなく、耐衝撃性が低く、成形品に層状剥離が起こり、ポリプロピレンのドメインの配向が大きいと考えられる。
従って、OA機器、情報・通信機器、自動車部品又は家庭電化機器等の電気・電子機器のハウジング又は部品、更には自動車部品等その応用分野の拡大が期待される。
Claims (8)
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂50〜99質量%及び(B)ポリオレフィン系樹脂50〜1質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、(C)カーボンナノチューブ0.1〜30質量部及び(D)相溶化剤0〜10質量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (A)成分の粘度平均分子量が、10,000〜40,000である請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)成分が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体エステルから選ばれる1種以上の化合物である請求項1又は2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (C)成分が、非晶カーボン粒子の含有量20質量%以下、外径0.5〜120nm及び長さ500nm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (D)成分が、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂、オキサゾリン変性ポリオレフィン系樹脂から選ばれる1種以上の化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- OA機器、情報・通信機器、自動車部品又は家庭電化機器用組成物である請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)成分と(C)成分を溶融混練した後、この混練物に(A)成分、又は(A)成分と(D)成分を添加し、溶融混練することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いて得られた成形体。
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