JP4283625B2 - 塗装用熱可塑性樹脂成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、塗装用熱可塑性樹脂成形品に関する。さらに詳しくは、機械的強度、耐熱性に優れ、塗装しても寸法安定性の低下しない塗装用熱可塑性樹脂成形品に関するものである。
一般的に結晶性熱可塑性樹脂は、耐薬品性に優れている反面、耐衝撃性や寸法安定性が劣り、非晶性熱可塑性樹脂は寸法安定性に優れているが、耐薬品性に劣っている。このような結晶性熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミド類、飽和ポリエステル類、ポリオレフィン類と、非晶性熱可塑性樹脂、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂などは、それぞれの欠点を補うため、両者を混合した熱可塑性樹脂組成物が種々提案され、電気・電子機器、精密機械、医療機器、建材、雑貨等幅広い用途で使用されている。
また、このような用途の中には外観、耐擦傷性、耐候性などを改良する目的で、製品とした後にその表面に各種塗料によって塗装を施すことがある。例えば、塗装性と耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物および成形品として、(A)ポリアミド樹脂、(B)芳香族ビニル単量体、極性官能基含有ビニル単量体を溶融混練重合反応して得られる変性プロピレン系重合体、(C)極性基を有するエラストマーとからなる熱可塑性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。この特許文献1に記載の熱可塑性樹脂組成物は、また、耐衝撃性、成形性、塗装焼付後の寸法安定性に優れた樹脂組成物及び成形品として、ポリアミド樹脂とABS樹脂からなるアロイが提案されている(特許文献2)。しかし特許文献1および特許文献2に記載の樹脂組成物から得られる成形品は、寸法安定性に問題があったが、塗装成形品の寸法安定性の改良策については全く記載されていない。
さらに特許文献3には、各種塗料による塗装性の優れた樹脂組成物および成形品として、(A)ポリアミド系樹脂と(B)スチレン系樹脂を含有しており、(B)スチレン系樹脂が、(B−1)JIS
K6760に準拠して測定される250℃、10kg荷重でのメルトインデックス(MI)が10g/10分以下のスチレン系樹脂と、(B−2)前記MIが10g/10分を超えるスチレン系樹脂とを含むものである熱可塑性樹脂組成物、およびこの樹脂組成物からなる成形品に関する発明が記載されている。この特許文献3には、塗膜密着性が改良されることは記載されているが、寸法安定性の問題があることやこの問題を解決することについては全く記載されていない。
さらにまた特許文献4には、各種塗料による塗装工程の簡略化、作業環境の改善、コストダウンを図ることなどを目的に、(A)ゴム強化スチレン系樹脂2〜96.95重量%、(B)ポリアミド系エラストマ−96.95〜2重量%、(C)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基のうち少なくとも1種の官能基を有する変性ビニル系重合体1〜50重量%および(D)アルカリ金属塩0.05〜10重量%からなる静電塗装用樹脂組成物が提案されている。しかしこの特許文献4に記載の方法によると、塗装工程における加熱乾燥(焼付け)後に、成形品に変形(反り、ひけ、へこみなど)が生起するが、変形問題があることや、この変形問題の解決策については全く記載されていない。
特開平08−048873号公報 特開平11−286587号公報 特開2002−302603号公報 特開平10−219151号公報
本発明者等は、かかる状況にあって、樹脂製品の表面に各種塗料を塗装(塗布)し、塗装面乾燥(焼付け)する際の製品の変形、すなわち高温時の変形の問題を、原料樹脂の耐熱性を向上させるという従来の手法では十分満足できる結果が得られなかったことから、耐熱性向上とは別の手法による解決策を見いだすべく鋭意研究を重ねた結果、カーボンブラックを添加すること、および、成形品の融解エネルギーを制御することが重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の目的は、次のとおりである。
(1) 機械的強度、耐熱性に優れた塗装用熱可塑性樹脂成形品を提供すること。
(2)塗料の塗装工程における加熱乾燥(焼付け)後の成形品の変形(反り、ひけ、へこみなど)が小さい、塗装用熱可塑性樹脂成形品を提供すること。
上記課題を解決するために、本発明では、(A)成分:ポリアミド20〜95重量%、(B)成分:非晶性熱可塑性樹脂およびエラストマーから選ばれる一種以上の樹脂3〜75重量%、および、(C)成分:DBP吸油量が120ml/100g以上のカーボンブラック0.01〜20重量%を含む熱可塑性樹脂組成物とからなり、かつこの熱可塑性樹脂組成物についてのDSCによる融解エネルギーが、次の(1)および(2)の条件を満たすことを特徴とする、塗装用熱可塑性樹脂成形品を要旨とする。
(1)塗装前成形品の異なる部位から切り出した5箇以上のサンプルにつき測定した融解エネルギーの最大値と最小値の差が、最小値の30%以下であること。
(2)塗装前成形品の融解エネルギー最大値と、塗装後成形品の融解エネルギー値であって、塗装前成形品の融解エネルギー値が最大値となった部位で測定した融解エネルギー値との差が、塗装前成形品の融解エネルギー最大値の20%以下であること。
本発明に係る塗装用熱可塑性樹脂成形品は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る塗装用熱可塑性樹脂成形品は、塗装前成形品の異なる部位から切り出したサンプルの融解エネルギーの最大値と最小値の差が最小値の30%以下であり、かつ、塗装前成形品と塗装工程で熱履歴を受けた成形品の融解エネルギーの差が、塗装前成形品の融解エネルギーの20%以下であるので、アニール前後のへこみ量の差が小さい。
2.本発明に係る塗装用熱可塑性樹脂成形品は、高温焼き付けによる塗装を経た後でも成形品の変形(反り、ひけ、へこみなど)が小さく、面精度や寸法精度のよい製品が得られる。
3.本発明に係る塗装用熱可塑性樹脂成形品は、機械的強度、耐熱性に優れている。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の結晶性熱可塑性樹脂とは、示差走査熱量測定装置、例えば、パーキン・エルマー(PERKIN-ELMER)社製、DSC−IIを用いて測定される融解熱が、1カロリー/グラム以上のものと定義する。結晶性熱可塑性樹脂は、明確な結晶構造または結晶化可能な分子構造を有する非ガラス様特性のものであり、測定可能な融解熱を有し、明確な融点を示すものである。本発明において(A)成分としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイドで代表される結晶性熱可塑性樹脂であり、好ましくは、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンから選ばれた1種類以上の結晶性熱可塑性樹脂である。
(A)成分のポリアミドは、ポリマー主鎖に−CO−NH−結合を有し、加熱溶融できるものをいう。その代表的なものとしては、ポリアミド−4、ポリアミド−6、ポリアミド−6・6、ポリアミド−4・6、ポリアミド−12、ポリアミド−6・10などが挙げられ、その他、公知の芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸などの単量体成分を含む低結晶性のポリアミドなどが挙げられる。好ましいポリアミドは、ポリアミ−6、またはポリアミド6・6、中でもポリアミド−6が特に好ましい。上記ポリアミド類は、温度25℃、98重量%硫酸中に樹脂濃度を1重量%として測定したときの相対粘度が2.0〜8.0の範囲のものが好ましい。相対粘度が2.0未満であると、最終的に得られる成形品の機械的強度が劣り、8.0を越えると原料樹脂組成物の成形性が劣り、いずれも好ましくない。
(A)成分のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)、または液晶性ポリエステルなどである。このようなポリエステルは、フェノールと1,1,2,2−テトラクロルエタンとを重量比で60対40(重量%)の混合液中、温度20℃の条件下で測定した固有粘度が、0.5〜5.0dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.5dl/g未満であると、耐衝撃性が不足し、5.0dl/g以上では成形性に難があり、いずれも好ましくない。上記固有粘度の範囲では1.0〜4.0dl/gが好ましく、中でも特に好ましいのは2.0〜3.5dl/gである。
(A)成分のポリオレフィンは、α−オレフィンの単独重合、α−オレフィン同士のランダムまたはブロック共重合体、α−オレフィンを主成分とし、α−オレフィンと共重合可能な他の不飽和単量体とのランダム、グラフトまたはブロック共重合体、これらのオレフィン系重合体に酸化、ハロゲン化、スルホン化などの処理を施したものであり、少なくとも部分的にポリオレフィンに由来する結晶性を示すものであり、結晶化度は20%以上をいう。これらは、単独でも2種以上の混合物であってもよい。
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、へキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などが挙げられる。α−オレフィンと共重合可能な他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メ夕クリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミドなどの不飽和カルボン酸またはその誘導体類;酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物類;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン類;ジシクロペンタジエン、4−エチルデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン類が挙げられる。
ポリオレフィン類は、従来から知られている方法による重合反応、または変性反応などにより得られるが、市販されている製品群から適時選ぶこともできる。ポリオレフィン樹脂の中では、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1の単独重合体またはこれらを主成分とする共重合体が好ましく、中でも特に結晶性プロピレン系重合体、すなわち結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン−α−オレフィンブロックまたはランダム共重合体、これらの結晶性プロピレン重合体とα−オレフィン系ゴム、すなわちゴム状の複数のα−オレフィンよりなる共重合体、または複数のα−オレフィンと非共役ジエンとの混合物が、機械的物性バランスの点で好ましい。
上記の結晶性プロピレン系重合体、またはこれらとα−オレフィン系ゴムを含む混合物は、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定したメルトフローレイト(MFR)が、0.01〜250g/10分の範囲が好ましい。MFRの値が0.01g/10分より低い範囲では成形加工性が劣り、250g/10分より高い範囲では機械的物性バランスのレベルが低く、いずれも好ましくない。上記MFRの範囲では0.05〜150g/10分がより好ましく、中でも0.1〜50g/10分の範囲が特に好ましい。これらの中には、高分子量のものをラジカル発生剤、例えば有機過酸化物等の存在下で熱処理により分子量を変化させて、MFRを上記範囲に調節したものも含まれる。
本発明において(B)成分は、非晶性熱可塑性樹脂およびエラストマーから選ばれた1種以上の樹脂であり、好ましくはポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、芳香族ビニル化合物系共重合体、およびエラストマーからなる群から選ばれた1種以上の樹脂である。ポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、例えば、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位からなるものである。好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位との組合せからなるランダム共重合体である。多くの好適な単独重合体またはランダム共重合体が、特許および文献などに記載されている。例えば、分子量、溶融粘度および/または耐衝撃強度などの特性を改良する分子構成部分を含むポリフェニレンエーテルもまた好適である。ここで使用するポリフェニレンエーテルは、クロロホルム中、温度30℃で測定した固有粘度が0.2〜0.8dl/gのものが好ましい。固有粘度が0.2dl/g未満では原料樹脂組成物の耐衝撃性が不足し、0.8dl/gを越えると成形性が不満足である。固有粘度は上記範囲で好ましいのは、0.2〜0.7dl/gであり、中でも0.25〜0.6dl/gの範囲のものが特に好ましい。
(B)成分のポリカーボネートとしては、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートなどが挙げられる。中でも、芳香族ポリカーボネートが好ましい。芳香族ポリカーボネー卜としては、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性の芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。芳香族ポリカーボネートの製造法は特に限定されるものではなく、従来から知られているホスゲン法(界面重合法)、または溶融法(エステル交換法)などによって製造することができる。溶融法で製造された芳香族ポリカーボネートは、末端基のOH基量を調整したものであってもよい。
芳香族ポリカーボネートとして、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート、または2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。さらに、この樹脂の難燃性を一層高める目的で、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーを共重合させることができる。芳香族ポリカーボネートは、2種以上の組成の異なる樹脂の混合物であってもよい。芳香族ポリカーボネートの分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度から換算した粘度平均分子量で、13,000〜30,000の範囲のものが好ましい。粘度平均分子量が13,000未満であると、原料樹脂組成物から得られる成形品の機械的強度が不足し、30,000を越えると原料樹脂組成物の成形性が悪く、いずれも好ましくない。粘度平均分子量のより好ましい範囲は15,000〜27,000であり、中でも好ましいのは17,000〜24,000である。
(B)成分の芳香族ビニル化合物系共重合体としては、一般用ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体などが挙げられる。
(B)成分のエラストマーとしては、ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体(b1)、ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物(b2)、ポリオレフィン系ゴム状共重合体(b3)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体(b1)を構成するビニル芳香族化合物として、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンなどであり、中でも好ましいのは、スチレンである。共役ジエンとして、好ましくは1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。
ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体(b1)は、ビニル芳香族化合物重合体ブロックAと共役ジエン化合物重合体Bとからなる。ブロックAおよびブロックBの配列は、線状構造のもの、または分岐構造(ラジカルテレブロック)のものなどいずれでもよい。ブロックAおよびブロックBの一部に、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとのランダム共重合に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。ブロック共重合体の配列は、線状構造のものが好ましく、ジブロック構造のものがより好ましい。ブロック共重合体(b1)において、ビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10〜80重量%の範囲が好ましく、15〜60重量%の範囲が特に好ましい。
ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物(b2)は、上記ブロック共重合体のブロックAの芳香族性不飽和結合と、ブロックBの不飽和基の一部に水素を添加し、不飽和基を少なくしたブロック共重合体である。ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合の約25%以下が水素添加されていてもよく、ブロック共重合体の共役ジエンブロックB部分の脂肪族鎖部分のうち、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物(b2)は、その分子量の目安としてのトルエン溶液粘度(温度25℃、濃度15重量%)の値が30000〜10cpsの範囲にあるものが好ましい。この溶液粘度が30000cpsより大きいと、原料樹脂組成物の成形性が劣り、また10cpsより小さいと、原料樹脂組成物と製品(成形品)の機械的強度が低下し、いずれも好ましくない。溶液粘度のより好ましい範囲は、10000〜30cpsである。
ポリオレフィン共重合体系ゴム(b3)は、エチレン・プロピレン共重合体系ゴム、エチレン・ブテン共重合体系ゴム、エチレン・ブテンを主成分とする無定形ランダム共重合体ゴム、これらに非共役ジエンを共重合させたものなどが挙げられる。非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどが挙げられる。上記のポリオレフィン共重合体系ゴム(b3)は、原料の単量体を、塩化バナジウム、バナジウムオキシクロリドなどのバナジュウム化合物と、トリエチルアルミニウムセスキクロリドなどの有機アルミニウム化合物とからなるバナジュウム系触媒を用い、重合させることによって製造することができる。このような触媒系によって製造されたエチレン・プロピレン共重合体系ゴムは、一般に、ランダム性が良好なものであり、結晶性はほとんど示さず、結晶化度は0〜20%の範囲となる。
本発明に係る成形品製造用の熱可塑性樹脂組成物は、相互に不均一混合する前記(A)成分と(B)成分とを組み合わせるが、(A)成分と(B)成分とは相溶性があることが好ましい。本発明で相溶性とは、これら二種類の樹脂成分が相互に親和性を有し、混合物を形成する性質をいう。(B)成分を例えばグラフト、ブロック化反応により化学的に親和性を高め、(A)成分の結晶性熱可塑性樹脂との相溶性を向上させるために、他の不飽和化合物をグラフト重合させて変性させたものであってもよい。
変性用に使用される他の不飽和化合物としては、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノメチルエステル、無水イタコン酸、フマル酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸、エンド−ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、もしくはこれらの誘導体などの脂環式カルボン酸、または、グリシジル基と(メタ)アクリレート基とを同一分子内に有する化合物、グリシジルオキシ基とアクリルアミド基を同一分子内に持つ化合物、脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体、およびブチルグリシジルマレートなどの含エポキシ化合物が挙げられる。これら他の不飽和化合物をグラフト重合させるには、パーオキサイドを使用する方法、電離放射線を照射する方法、紫外線を照射する方法などのいずれかによることができる。
本発明に係る塗装用熱可塑性樹脂成形品に含まれる(C)成分のカーボンブラックとしては、一般的に知られているサーマルブラック法、アセチレンブラック法、ファーネスブラック法、チャンネルブラック法、ガスブラック法、ランプブラック法などで製造されたカーボンブラックの外に、中空炭素フィブリル、カーボンファイバ−の粉砕物なども挙げられる。中でもファーネスブラック法、アセチレンブラック法によって製造されたものが好適である。またカーボンブラックは、その製造工程または製造後に、比表面積を増やすために賦活処理したものであってもよい。
(C)成分のカーボンブラックは、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜吸油量が、120ml/100g以上のものが好ましく、さらに好ましくは150ml/100g以上のものである。このような物性を備えたカーボンブラックとしては、ペイントなどに着色目的で加える顔料用カーボンブラックとは違って、微細な粒子が連なった形態のもので、一般的に導電性付与の目的で使われるものが多い。好ましいカーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラックなどが挙げられる。
次に、本発明に係る成形品製造用の原料樹脂組成物を構成する各成分の配合割合について説明する。(A)成分の結晶性熱可塑性樹脂の配合割合は、20〜95重量%とする。(A)成分が20重量%未満では荷重撓み温度が低く、95重量%を越えると塗装後の成形品の変形が大きくなり、いずれも好ましくない。(A)成分の好ましい割合は25〜85重量%であり、さらに好ましいのは30〜75重量%である。(B)成分の非晶性熱可塑性樹脂およびエラストマーから選ばれる一種以上の樹脂の配合割合は、1〜80重量%とする。(B)成分のポリマーが1重量%未満では、塗装後の成形品の変形が大きく、80重量%を越えると荷重撓み温度や流動性が低くなり、いずれも好ましくない。(B)成分の好ましい割合は3〜75重量%であり、さらに好ましいのは5〜70重量%である。(C)成分のカーボンブラックの配合割合は、0.01〜20重量%である。(C)成分が0.01重量%未満では塗装後の成形品の変形が大きく、20重量%を越えると流動性や機械的強度が低下し、いずれも好ましくない。(C)成分の好ましい割合は0.1〜8重量%であり、さらに好ましいのは0.5〜6重量%である。
本発明の塗装用熱可塑性樹脂成形品は、後記の方法で測定したDSCによる融解エネルギーが次の2条件を満たすことが必要である。
(1)塗装前の成形品の異なる部位(位置)から切り出した5箇以上のサンプルにつき測定した融解エネルギーの最大値と最小値の差が、最小値の30%以下であること。切り出しは、成形品意匠面の中央と端部を含む少なくとも5箇所以上部位で測定を行うことが望ましい(後記、図1参照)。
上の(1)の要件を満たさないと、一個の成形品中の互いに異なる部位間で結晶化度のばらつきが大きく、従って、塗装工程での加熱乾燥(焼付け)などの熱履歴による再結晶量もばらつきが大きくなり、その結果塗装後の成形品に変形が生じ、成形品意匠面が歪むなどの不都合が生じる。
(2)塗装前成形品の融解エネルギー最大値と、塗装後成形品の融解エネルギー値であって、塗装前成形品の融解エネルギー値が最大値となった箇所で測定した融解エネルギー値との差が、塗装前成形品の融解エネルギー最大値の20%以下であること。ここで塗装後の成形品とは、塗料を塗装した後の工程で、加熱乾燥(焼付け)などの熱履歴を受けた成形品を意味する。塗装前成形品の融解エネルギー値が最大値となった箇所とは、塗装前に最も結晶化が進んでいる部位(位置)を意味する。塗装前後の融解エネルギー値を測定することにより、その部位が塗装工程での熱履歴を受けた後に、どれ程度融解エネルギーが増加したかを確認できる。なお、本発明において、融解エネルギー値は、DSC(パーキン・エルマー社製DSC―II型)を使用し、測定開始温度30℃から、10℃/分で昇温させて測定したときの融解エネルギーを意味する。
上記(2)の条件を満たさず、塗装前後の融解エネルギー値が20%を越える場合は、塗装時の熱履歴による成形品の変形量が大きくなる。すなわち塗装時の熱履歴による変形は成形品中の再結晶量のバラツキにより生じ、変形量はバラツキ量の大きさと正に相関する関係にある。従って、上述のように塗装前の結晶化度のバラツキを抑えかつ、熱履歴による再結晶化量を少なくする必要がある。成形品が、上記(1)および(2)の条件を満たすためには、原料樹脂組成物を上記範囲で配合することに併せて、以下に記載する条件下で成形品を製造するのが好ましい。
本発明に係る塗装用熱可塑性樹脂成形品は、通常の溶融成形法、たとえば圧縮成形法、射出成形法または押出成形法などによって成形することができる。射出成形法によって成形する際に、射出圧縮成形法、ガスアシスト成形法などを組み合わせることもできる。中でも好ましいのは射出成形法によるもので、さらにこの際に射出成形の金型温度を、金型温度(℃)≧{ガラス転移温度(℃)+融点(℃)−結晶化温度(℃)}として、成形品の各部位における融解エネルギーを大きくかつ均一化することが好ましい。以下、前者を実際の金型温度(℃)、後者{ガラス転移温度(℃)+融点(℃)−結晶化温度(℃)}を算出金型温度と記載することがある。実際の金型温度(℃)≧算出金型温度の条件を満たさない場合、熱可塑性樹脂成形品の塗装前後での融解エネルギーの差、成形品各部位での融解エネルギーのバラツキが大きくなり、本発明の請求項1における前記二つの条件を満たす成形品が得られ難く、その結果塗装後の成形品の変形が大きくなる。射出成形時の金型温度を上記要件を満たすようにするには、離型時に金型温度を積極的に降下させるなどの工夫をすればよい。
ここでガラス転移温度(℃)とは、原料樹脂組成物につき、動的粘弾性測定装置(エイアンドディー社製、型式:レオバイブロンDDVIII)によって、厚さ1mm、幅3mmの絶乾状態の試料を、周波数110Hz、昇温温度2℃/分の条件下で測定した損失正接tanδのα分散によるピーク温度を意味する。融点(℃)とは、原料樹脂組成物につき、DSC−II{パーキン・エルマー社製}を用い、30℃から10℃/分の速度で昇温して測定したときの融解吸熱ピーク温度を意味する。結晶化温度(℃)とは、DSC−IIを用い、原料樹脂組成物が完全に溶融した状態から、10℃/分の速度で降温したときの結晶化発熱ピーク温度を意味する。
本発明に係る成形品製造用の原料熱可塑性樹脂組成物には、前記(A)成分〜(C)成分や相溶化剤のほか、熱可塑性樹脂用の各種の樹脂添加剤を添加することができる。樹脂添加剤としては、着色剤、酸化防止剤、耐侯性改良剤、造核剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、可塑剤、流動性改良剤、塗装密着性改良材などが挙げられる。有機・無機充填剤、補強剤、特にガラス繊維、マイカ、タルク、ワラストナイト、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、シリカなどを添加すると、樹脂組成物の剛性、耐熱性、寸法精度などを向上させることができる。
原料の熱可塑性樹脂組成物を調製するには、(1)(A)成分、(B)成分、(C)成分、さらに要すれば樹脂添加剤を所定量秤量して混合し、得られた混合物を溶融・混練する方法、(2)まず(A)成分と、(B)成分または(C)成分の2成分に、さらに要すれば、樹脂添加剤を所定量秤量し配合した混合物とし、得られた混合物に残りの(C)成分または(B)成分を加えてさらに溶融・混練する方法などによることができる。さらに好ましい調製法は、予め(A)成分と(C)成分からなるマスターバッチを作製し、その後にこのマスターバッチとその他の成分を溶融混練する方法が、生産性の観点から好ましい。
原料の熱可塑性樹脂組成物を調製する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、溶融混合法と溶液混合法がある。溶融混合の代表的な方法として、熱可塑性樹脂について一般に実用されている溶融混練機を使用する方法である。溶融混練機としては、例えば、一軸押出機、多軸押出機、加熱ロール、バンバリーミキサーなどが挙げられる。溶液混合法とは、各成分を適当な溶媒に溶解、または懸濁状態で混合する方法である。
以下、本発明を実施例によって、詳しく説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下に記載の例に限定されるものではない。以下に記載の例において使用した原料成分の詳細、原料樹脂組成物の物性評価方法、成形品の製造、成形品の評価方法などは、以下に記載したとおりである。
1.原料成分の詳細
<(A)成分>
(1)PA6:温度23℃、98重量%硫酸中に樹脂濃度を1重量%として測定したときの相対粘度が2.5のポリアミド6である。
(2)PA66:温度23℃、98重量%硫酸中に樹脂濃度を1重量%として測定したときの相対粘度が2.5のポリアミド66である。
<(B)成分>
(3) 変性PPE:以下に記載のPPEを78重量%、SEBS20重量%、および、無水マレイン酸2重量%をそれぞれ秤量し、ヘンシェルミキサーによって均一に混合した後、得られた混合物を二軸押出機(日本製鋼所製、型式:TEX30XCT、スクリュウ径30mm、L/D=42)を用いて、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数400rpmの条件下で溶融反応させ、ペレット化して変性PPEを得た。
(*)上記PPEは、温度30℃のクロロホルム中で測定したときの固有粘度が0.40dl/gのポリフェニレンエーテル(ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
(*)上記SEBSは、ビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物のブロック共重合型エラストマー(シェル化学社製、製品名−クレイトンG1651、スチレン含有量29重量%)である。
(*)上記無水マレイン酸は上記市販の1級品の試薬であり、変性PPEがポリアミド樹脂と相容するように変性することを目的として使用したものである。
<(C)成分>
(4)C1:比表面積1270m2/g、DBP吸油量495ml/100gのカーボンブラック(ライオン社製、ケッチェンブラック600JD)である。
(5)C2:比面積110m2/g、DBP吸油量100ml/100gのカーボンブラック(三菱化学社製、カーボンブラックMA100)である。
2.原料樹脂組成物の物性評価方法
(a)融点(℃):原料樹脂組成物につき、DSC(パーキン・エルマー社製、DSC−II型)によって測定し、30℃から10℃/分で昇温させたときの融解吸熱ピーク温度を、融点(℃)とした。
(b)結晶化温度(℃):原料樹脂組成物につき、DSCによって測定し、測定樹脂が完全に溶融した状態から10℃/分で降温させたときの結晶化発熱ピーク温度を、結晶化温度(℃)とした。
(c)ガラス転移温度(℃):動的粘弾性測定装置(エイアンドディー社製、レオバイブロンDDVIII)によって、厚さ1mm、幅3mmの絶乾状態の試料を、周波数110Hz、昇温速度2℃/分で測定した損失正接tanδのα分散によるピーク温度を、ガラス転移温度(℃)とした。
(d)DTUL(荷重撓み温度)(℃):射出成形機(名機M150)を使用し、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で成形した試験片について、ASTM D648に準拠し、荷重0.45MPaの条件で測定した。
3.成形品の製造、成形品の評価方法
(e) 融解エネルギー(mJ/mg):図1に示したコの字型成形品を、以下に記載の条件で射出成形法によって製造した後、成形品を絶乾状態に保つために防湿袋で密封し、温度23℃の恒温室で24時間以上コンディショニングを行った。図1に示したコの字型成形品の(1)〜(5)の部位(位置)から、5mg以上の樹脂を切り出し、DSCによって、測定開始温度30℃、10℃/分の条件で昇温させたときの融解エネルギーを測定し、その最大値と最小値をそれぞれ「塗装前最大値」、「塗装前最小値」として表に記載した。
(f)塗装後:塗装前に融解エネルギーが最大値を示す箇所(基本的には、図1に示した成形品の(1)の箇所)について、塗装布後の成形品から5mg以上の樹脂を塗膜が含まれないように切り出し、DSCによって、測定開始温度30℃、10℃/分の条件で昇温させたときの融解エネルギーを測定し、「塗装後」として表に記載した。
(g)へこみ変化量(mm):塗装時の変形を評価するために、図1に示した成形品の(1)の箇所について、塗装前後へこみ量の差を測定し表に記載した。へこみ量は、平滑な治具を成形品の図1のA−A‘間に当て、成形品(a)の箇所と治具との隙間を隙間ゲージによって測定した。
(h)塗布後面歪み:図1に示した成形品表面に、以下に記載の方法で塗料を塗装し、塗布後の成形品表面図1のA−A‘線に歪みがないかを目視観察した。歪みが確認されなかったものを○、歪みが確認されたものを×とした。
成形品表面への塗料の塗装は、次の手順で行った。
(*)塗装条件(1):まず、ハイエピコ No.1 シーラーG−57(日本油脂社製)100重量部に対し、エピコシンナー(日本油脂社製)15重量部を加えて希釈し、この希釈液をスプレーガン(アネスト岩田社製)によって、成形品表面に塗装した。この後、室温で10分間乾燥し、引き続き160℃で20分間焼付け処理を行い、スーパーラックF−50(日本油脂社製)100重量部に対し、ニッペシンナー730EN−1(日本ペイント社製)を40重量部加えて希釈し、この希釈液を成形品表面に塗装し、上と同じ手順で乾燥、焼付け処理を行った。
(*)塗装条件(2):まず、Vトップ(大日本塗料社製)100重量部(主剤80重量部・硬化剤20重量部)に対し、Vトップ用シンナー(大日本塗料社製)40重量部加えて希釈し、この希釈液をスプレーガン(アネスト岩田社製)によって、成形品表面に塗装した。この後、室温で10分間乾燥し、引き続き120℃で30分間焼付け処理を行った。
[実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例6]
<樹脂組成物の調製>
上記の(A)成分〜(C)成分のうちの2成分または3成分を、表−1に示した比率で秤量し、ヘンシェルミキサーによって均一に混合した後、得られた混合物を二軸押出機(日本製鋼所製、型式:TEX30XCT、スクリュウ径30mm、L/D=42)を使用して、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数400rpmの条件下で溶融・混練してペレット化し、原料の熱可塑性樹脂組成物を得た。
<成形品の製造>
上記方法で調製した原料熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械社製、型式:IS150)を使用し、シリンダー温度280℃、金型温度は表−1に示した温度に設定し、射出成形設定条件(充填時間:2秒、保圧:450kg/cm2で15秒間、冷却時間:30秒)として、図1および図2に示したように、意匠面(外側面)が正方形で、対向する二辺に補強リブが、補強リブのない辺からの側面図がコ字型を呈する成形品を成形した。ただし、比較例2のものは、射出成形金型の固定盤側金型の温度調節管に熱媒を通して温度調節したが、可動盤側金型は温度調節管を外し熱媒を通さず、温度調節しなかった。成形品表面への塗料は、総て前記した塗装条件(1)で塗布した。成形品の製造条件、得られた成形品についての評価結果を、表−1に示した。
[実施例5、比較例7]
実施例5では、実施例1に記載の例において、成形品表面への塗装法を、塗装条件(2)に変更した外は、同例におけると同様の手順で成形品を製造した。比較例7では、比較例2に記載の例において、成形品表面への塗料の塗装法を、塗装条件(2)に変更した外は、同例におけると同様の手順で成形品を製造した。得られた成形品についての評価結果を、表−1に示した。
Figure 0004283625
表−1より、次のことが明らかとなる。
(1)表1に示した材料組成からなる実施例1〜実施例4の成形品は、塗装前成形品の異なる部位5箇所から切り出したサンプルの融解エネルギーの最大値と最小値の差が最小値の30%以下であり、かつ、塗装前成形品と塗装工程での熱履歴を受けた成形品の融解エネルギーの差が、塗装前成形品の融解エネルギーの20%以下であるので、アニール前後のへこみ量の差が小さい。
(2)比較例1および比較例3の成形品は、塗料塗装前後での融解エネルギーの差が請求項1の範囲から外れるため、へこみ変化量が大きくなった。
(3)比較例2および比較例5の成形品は、塗料塗装前の融解エネルギーの最大値、最小値が請求項1の範囲から外れるため、へこみ変化量が大きくなった。
(4)比較例4の成形品は、(B)成分を含まず、かつ、塗料塗装前後での融解エネルギーの差が請求項1の範囲から外れるため、へこみ変化量が大きくなった。
(5)比較例6の成形品は、成分(C)を含まず、かつ、塗料塗布前後での融解エネルギーの差が請求項1の範囲から外れるため、へこみ変化量が大きくなった。
(6)実施例5の成形品は、融解エネルギーの最大値と最小値の差が融解エネルギーの最大値と最小値の差が、本発明の請求項1で規定する要件を満たしているため、塗料の塗布条件を変えても、へこみ変化量が小さい。
(7)これに対して、比較例7の成形品は、比較例2と同様、塗装前の融解エネルギーの最大値、最小値が請求項1の範囲から外れるため、塗料の塗装条件が変えても、へこみ変化量は改良されず大きいままである。
[実施例6〜実施例10、比較例8〜比較例12]
実施例1に記載したのと同じ組成の熱可塑性樹脂組成物で、成形条件を種々変えた実施例6〜実施例10、および比較例1、比較例8〜比較例12として、表―2に示した。いずれの例でも、溶融樹脂を射出成形金型キャビティに充填する際、キャビティの90容量%充填するまでは一定速度で充填し、それ以降は一定圧力で充填した。成形品表面への塗料は、塗布条件(1)で塗布した。成形品の製造条件、得られた成形品についての評価結果を、表−2に示した。
Figure 0004283625
表−2より、次のことが明らかとなる。
(1)実施例6〜実施例10の成形品は、{算出金型温度≦実際の金型温度}の要件を満たした条件で製造され、融解エネルギーの最大値と最小値の差が融解エネルギーの最大値と最小値の差が、本発明の請求項1で規定する要件を満たしているため、へこみ変化量が小さい。
(2)これに対して、比較例8〜比較例12の成形品は、{算出金型温度≦実際の金型温度}の要件を満たした条件で製造されておらず、融解エネルギーの最大値と最小値の差が融解エネルギーの最大値と最小値の差が、本発明の請求項1で規定する要件を満たしていないため、へこみ変化量が大きい。
上記原料の熱可塑性樹脂組成物は、電気・電子機器、精密機械、医療機器、建材、雑貨などの幅広い分野で使用される成形品の製造用原料として使用できる。成形品の製造方法は特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に採用されている成形法、例えば、射出成形法、中空成形法、押出成形法、回転成形法、積層成形法、熱成形法などが挙げられる。本発明に係る塗装用熱可塑性樹脂成形品は、上記成形法で製造され、表面に塗料が塗布されて最終製品とされるものである。塗布用の塗料には特に制限がなく、塗装方法も特に制限がない。成形品表面に塗料を塗装したあと加熱乾燥(焼付け)されるが、本発明に係る成形品は、加熱乾燥(焼付け)工程に付されても、成形品(製品)に変形(反り、ひけ、へこみなど)が生じ難く、かつ、耐衝撃性などの機械的強度、耐薬品性、荷重撓み温度、外観に優れている。
実施例で製造した成形品の一例の平面図である。 図1のA−A‘部分での縦断端面図である。
符号の説明
1、2、3、4:サンプル切り出し部位
a:へこみ量測定位置

Claims (3)

  1. (A)成分:ポリアミド20〜95重量%、(B)成分:非晶性熱可塑性樹脂およびエラストマーから選ばれる一種以上の樹脂3〜75重量%、および、(C)成分:DBP吸油量が120ml/100g以上のカーボンブラック0.01〜20重量%を含む熱可塑性樹脂組成物とからなり、かつこの熱可塑性樹脂組成物についてのDSCによる融解エネルギーが、次の(1)および(2)の二つの条件を満たすことを特徴とする、塗装用熱可塑性樹脂成形品。
    (1)塗装前成形品の異なる部位から切り出した5箇以上のサンプルにつき測定した融解エネルギーの最大値と最小値の差が、最小値の30%以下であること。
    (2)塗装前成形品の融解エネルギー最大値と、塗装後成形品の融解エネルギー値であって、塗装前成形品の融解エネルギー値が最大値となった部位で測定した融解エネルギー値との差が、塗装前成形品の融解エネルギー最大値の20%以下であること。
  2. 熱可塑性樹脂成形品が、金型温度≧(ガラス転移温度+融点−結晶化温度)の条件で、射出成形法により製造されたものである、請求項1に記載の塗装用熱可塑性樹脂成形品。但し、ガラス転移温度、融点、結晶化温度は、下記に記載の測定法で測定された値とする。
    ガラス転移温度:原料樹脂組成物につき、動的粘弾性測定装置(エイアンドディー社製、型式:レオバイブロンDDVIII)によって、厚さ1mm、幅3mmの絶乾状態の試料を、周波数110Hz、昇温温度2℃/分の条件下で測定した損失正接tanδのα分散によるピーク温度。
    融点:原料樹脂組成物につき、DSC−II{パーキン・エルマー社製}を用い、30℃から10℃/分の速度で昇温して測定したときの融解吸熱ピーク温度。
    結晶化温度:DSC−IIを用い、原料樹脂組成物が完全に溶融した状態から、10℃/分の速度で降温したときの結晶化発熱ピーク温度。
  3. (B)成分としてビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物のブロック共重合型エラストマーおよび/またはポリフェニレンエーテルを含むものである、請求項1または請求項に記載の塗装用熱可塑性樹脂成形品。
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