JP2006069879A - 酸化第一銅粒子の製造方法及び酸化第一銅粒子 - Google Patents

酸化第一銅粒子の製造方法及び酸化第一銅粒子 Download PDF

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Abstract

【課題】 サイズ分布が単分散である安定でかつ高濃度な酸化第一銅のコロイドを液相法により効率よく製造できる酸化第一銅粒子の製造方法及び酸化第一銅粒子の提供。
【解決手段】 少なくとも酸化第一銅原料及び還元作用を有する化合物を複数の溶液として撹拌装置中に注入し、銅イオンの還元反応により、酸化第一銅結晶を成長させる酸化第一銅結晶の成長工程を含み、前記成長工程においてイオン交換樹脂及びキレート樹脂のいずれかにより原料である銅イオンを吸着除去して粒子成長を抑制する酸化第一銅粒子の製造方法である。該撹拌装置が、撹拌対象の溶液を流入させる所定数の液供給口と、撹拌処理を終えた溶液を排出する液排出口とを備えた撹拌槽と、該撹拌槽内の溶液を撹拌する撹拌手段とを有する態様が好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、サイズ分布が単分散である安定でかつ高濃度な酸化第一銅のコロイドを液相法により効率よく製造できる酸化第一銅粒子の製造方法及び酸化第一銅粒子に関する。
金属酸化物ナノ粒子及び金属ナノ粒子の物性は、バルクと大きく異なり、融着温度の低下や触媒活性が飛躍的に高まることなどから、注目を集めている。しかし、単分散で任意の寸法のナノ粒子を効率よく製造することは困難であり、これらを解決する技術が求められている。
例えば、特許文献1には、気相法によるナノ粒子の合成方法が提案されている。この方法によれば、高濃度で金属酸化物ナノ粒子を製造することが可能である。しかし、この方法では、特別な装置が必要な上に高温下での反応が必要であり、製造上不利である。また、気相法で得られるコロイド粒子は、一般には粒度分布の制御が難しく、気相法では酸化第一銅は組成が均一なコロイドを得ることは困難であるという欠点がある。
また、特許文献2には、貴金属又は銅コロイドを、有機溶媒相と水相の間での相間移動を利用してナノ粒子を製造する方法が提案されている。しかし、この提案では、原料に制約を受けてしまうという問題がある。
また、特許文献3には、撹拌装置を使用することで、単分散性が高いナノ粒子を連続系で、安全に生産性よく得ることができることが提案されている。また、特許文献4では、管状流通反応器中で半導体超微粒子を製造する方法が提案されている。しかし、これらの提案では、凝集や結晶成長が起こりやすい系では粒子の寸法が大きくなりやすいという問題がある。
また、特許文献5には、金属塩のアルコール溶液を加熱処理した後、塩基性陰イオン交換樹脂と接触させる金属酸化物コロイドの製造方法が開示されている。しかし、この方法では、原料の除去はできないため、粒子の寸法の制御という点では効果がない。
したがって従来技術においては、未だ任意のサイズで、粒度分布が単分散である酸化第一銅粒子を得ることができる酸化第一銅粒子の製造方法は得られておらず、その速やかな提供が望まれているのが現状である。
特開平1−226723号公報 特開平11−319538号公報 特開平10−43570号公報 特開2002−52336号公報 特開2003−286028号公報
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、任意のサイズで、粒度分布が単分散である酸化第一銅粒子を効率よく製造することができる酸化第一銅粒子の製造方法及び該酸化第一銅粒子の製造方法により製造される酸化第一銅粒子を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも酸化第一銅原料及び還元作用を有する化合物を複数の溶液として撹拌装置中に注入し、銅イオンの還元反応により、酸化第一銅結晶を成長させる酸化第一銅結晶の成長工程を含み、前記成長工程においてイオン交換樹脂及びキレート樹脂のいずれかにより原料である銅イオンを吸着除去して粒子成長を抑制することを特徴とする酸化第一銅粒子の製造方法である。該<1>に記載の酸化第一銅粒子の製造方法においては、撹拌装置を利用し液相法により前駆体金属イオン溶液を還元剤により還元して粒子が析出する過程で、イオン交換樹脂及びキレート樹脂のいずれかにより原料である銅イオンを吸着除去して粒子成長を抑制することによって、サイズ分布が単分散である小粒径の酸化第一銅粒子を効率よく製造することができる。
<2> 酸化第一銅結晶の成長工程において、イオン交換樹脂及びキレート樹脂のいずれかによる銅イオンの吸着開始のタイミング、吸着速度、及び吸着量の少なくともいずれかを制御することにより、酸化第一銅粒子サイズを制御する前記<1>に記載の酸化第一銅粒子の製造方法である。
<3> 撹拌装置が、撹拌対象の溶液を流入させる所定数の液供給口と、撹拌処理を終えた溶液を排出する液排出口とを備えた撹拌槽と、該撹拌槽内の溶液を撹拌する撹拌手段とを有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の酸化第一銅粒子の製造方法である。
<4> 撹拌手段が、撹拌槽内の溶液中に乱流を発生させて撹拌する手段である前記<3>に記載の酸化第一銅粒子の製造方法である。
<5> 撹拌手段が、撹拌槽内の相対向する2箇所に離間して配置されて互いに逆向きに回転駆動されることで該撹拌槽内の溶液の撹拌状態を制御する手段である前記<3>から<4>のいずれかに記載の酸化第一銅粒子の製造方法である。
<6> 撹拌手段が、一対の撹拌羽根である前記<3>から<5>のいずれかに記載の
酸化第一銅粒子の製造方法である。
前記<3>から<6>のいずれかに記載の撹拌装置は、槽内に対向配置された撹拌手段は、それぞれ向きの異なる撹拌流を槽内に形成する。そして、それぞれの撹拌手段の形成する撹拌流は、流れ方向が異なるために互いに衝突して槽内における撹拌を促進する高速の乱流を生成して、槽内の流れが定常化することを防止し、撹拌手段の回転を高速化した場合にも撹拌手段の回転軸回りに空洞が形成されることを阻止すると同時に、撹拌作用を十分に受けずに撹拌槽の内周面に沿って槽内を流れる定常流が形成されるという不都合を阻止することができる。
<7> 撹拌手段と近接した撹拌槽壁外側に配置されて貫通軸を持たない磁気カップリングを撹拌手段と形成する外部磁石と、前記撹拌槽外に配備され、前記外部磁石を回転駆動して撹拌手段を回転させる駆動手段とを有する前記<3>から<6>のいずれかに記載の酸化第一銅粒子の製造方法である。該<7>に記載の酸化第一銅粒子の製造方法においては、撹拌槽内の撹拌手段は、それぞれの撹拌手段が近接する槽壁の外側に配置された外部磁石と磁気カップリングを構成し、それぞれの外部磁石を槽外に配備されたモータで回転駆動することで撹拌手段が回転操作される構成とした場合には、撹拌槽の槽壁に回転軸を挿通させる必要がなくなり、撹拌槽を回転軸の挿通部のない密閉容器構造にすることができる。
したがって、前記<3>から<7>のいずれかに記載の酸化第一銅粒子の製造方法においては、撹拌装置として上記撹拌装置を用いることによって、従来のバッチによる接触点での反応に比べて均一な反応を起こすことができ、単分散な酸化第一銅粒子が効率よく得られる。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の酸化第一銅粒子の製造方法により製造され、分散度が1〜100であることを特徴とする酸化第一銅粒子である。該<8>に記載の酸化第一銅粒子は、小粒径かつ単分散であり、導体形成用ペーストなどの各種分野に好適に用いられる。
本発明によると、従来における問題を解決することができ、撹拌装置と、イオン交換樹脂及びキレート樹脂のいずれかとの組み合わせにより、サイズ分布が単分散である酸化第一銅粒子を安全に効率よく大量に製造できる。
(酸化第一銅粒子の製造方法)
本発明の酸化第一銅粒子の製造方法は、少なくとも酸化第一銅結晶の成長工程を含んでなり、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
−酸化第一銅結晶の成長工程−
前記酸化第一銅結晶の成長工程は、少なくとも酸化第一銅原料及び還元作用を有する化合物を複数の液相として撹拌装置中に注入し、銅イオンの還元反応により、酸化第一銅結晶を成長させる工程である。
本発明においては、該成長工程においてイオン交換樹脂及びキレート樹脂のいずれかにより原料の銅イオンを吸着除去して粒子成長を抑制する。
この場合、前記イオン交換樹脂及びキレート樹脂のいずれかによる銅イオンの吸着開始のタイミング、吸着速度、及び吸着量の少なくともいずれかを制御することにより、酸化第一銅粒子サイズを制御することが好ましい。
ここで、前記原料としての銅イオン溶液は可溶性の銅の化合物を溶解して調製することができる。前記銅の化合物は銅を含有し、水溶液又は有機溶媒に溶解するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硝酸銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)などが挙げられる。
前記銅の化合物の前記銅イオン溶液中における濃度は、30mM以上が好ましく、150mM以上がより好ましい。前記銅の化合物の濃度が30mM未満であると、高濃度の酸化第一銅のコロイド溶液が得られないことがある。
前記銅イオン溶液のpHは7以上が好ましく、9〜14がより好ましい。前記pHが7未満であると酸化第一銅が溶解するので好ましくなく、加えて、溶解度の高い領域では酸化第一銅の析出速度が遅くなるため、粒子サイズが大きくなることがある。
前記銅イオンを酸化第一銅に還元する方法として、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、還元作用を有する化合物を添加する方法は、特別な装置を必要としないため、製造上有利である。
前記還元作用を有する化合物としては、特に制限はなく、還元剤として通常使用されるものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物、クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、アミン化合物、ジオール化合物、α−ヒドロキシケトンなどが挙げられる。これらの中でも、ヒドラジン化合物、アミン化合物、ジオール化合物、α−ヒドロキシケトンが特に好ましい。
前記アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、ブタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、アミノフェノール等が挙げられる。
前記ヒドラジン化合物としては、例えば、ヒドラジン、フェニルヒドラジン等が挙げられる。
前記ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、カテコール、エチレングリコール等が挙げられる。
前記α−ヒドロキシケトンとしては、例えば、ヒドロキシアセトン、メチルヒドロキシアセトン等が挙げられる。
前記還元作用を有する化合物の添加量は、酸化第一銅原料1molに対して0.5〜200molが好ましく、20〜100molがより好ましい。前記添加量が0.5mol未満であると還元が十分に行われないことがあり、200molを超えて添加しても、それ以上の微粒化効果は得られず、却って不経済となることがある。
前記酸化第一銅原料及び還元作用を有する化合物を混合する液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶媒、水、塩基、酸、又はこれらの混合液などが挙げられる。なお、前記混合液中には、分散剤を含んでいてもよい。
本発明においては、前記原料である銅イオンを含む液と、還元剤を含む液とを撹拌装置を用いて混合し、銅イオンの還元反応によって、酸化第一銅結晶を成長させて酸化第一銅粒子を析出させる。
この場合、前記原料である銅イオンと還元剤が同じ液中に存在していても構わない。この場合、前記還元剤が還元反応を起こすための開始剤となる液を別に用意し、原料と還元剤の混合溶液と撹拌装置を使用して混合し、還元反応を開始させることも可能である。また、温度が変わることによって還元反応が開始するような系の場合、撹拌装置のチャンバー内を必要な温度に設定することで、還元反応を開始させてもよい。この場合、特に他の液と混合させることは必ずしも必要ではない。このとき、前記撹拌装置のチャンバー部分を0〜250℃の範囲で温度制御することも可能である。また、流路自体も同様に温度を制御することが可能である。
−撹拌装置−
前記撹拌装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、撹拌対象の溶液を流入させる所定数の液供給口と、撹拌処理を終えた溶液を排出する液排出口とを備えた撹拌槽と、該撹拌槽内の溶液を撹拌する撹拌手段とを有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
前記撹拌手段としては、撹拌槽内の溶液中に乱流を発生させて撹拌する手段が好ましく、具体的には、前記撹拌槽内の相対向する2箇所に離間して配置されて互いに逆向きに回転駆動されることで該撹拌槽内の液体の撹拌状態を制御する手段であることが、撹拌槽内に効率よく撹拌流を形成する上で好ましい。
前記撹拌手段としては、その材料、形状、構造、大きさ等に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一対の撹拌羽根、互いに大きさ及び形状の少なくともいずれかが異なる2つの撹拌羽根、互いに大きさ及び形状の少なくともいずれかが異なる2つの撹拌棒、互いに大きさ及び形状の少なくともいずれかが異なる2つの撹拌柱、互いに大きさ及び形状の少なくともいずれかが異なる撹拌板、1つの撹拌棒、1つの撹拌柱、表面に溝や突起を有する撹拌棒、などが挙げられる。これらの中でも、撹拌効果が高い点で一対の撹拌羽根が特に好ましい。
前記撹拌装置は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、撹拌手段と近接した撹拌槽壁外側に配置されて貫通軸を持たない磁気カップリングを撹拌手段と形成する外部磁石と、前記撹拌槽外に配備され、前記外部磁石を回転駆動して撹拌手段を回転させる駆動手段とを有することが好ましい。
この場合、前記磁気カップリングで連結される撹拌手段及び外部磁石の一方には、N極面とS極面とが回転中心軸線に対して平行でかつ該回転中心軸線を挟んで重なるように配置された両面2極型磁石を使用し、他方には、N極面とS極面とが前記回転中心軸線に直交する平面状で前記回転中心軸線に対して対称位置に並ぶ左右2極型磁石を使用したものが好ましい。その結果、左右2極型磁石同士を対向配置する構成の磁気カップリングを使用した場合と比較して、カップリングの結合強度が大幅に向上し、より高回転での攪拌・混合が可能となる。
ここで、本発明に係る撹拌装置の一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る撹拌装置10の概略構成を示す断面図、図2は、撹拌装置10に使用される磁気カップリングの構成を示す斜視図、図3は、図2に示した磁気カップリングの作用を示す斜視図である。
この撹拌装置10は、図1に示すように、撹拌対象の液体(例えば、酸化第一銅原料、還元剤)を流入させる3つの液供給口11,12,13と撹拌処理を終えた混合液体を排出する液排出口16とを備えた円筒状の撹拌槽18と、該撹拌槽18内で回転駆動されることで該撹拌槽18内の液体の撹拌状態を制御する撹拌手段としての一対の撹拌羽根21,22とを備えてなる。
撹拌槽18は、上下方向に中心軸を向けた円筒状の槽本体19と、該槽本体19の上下の開口端を塞ぐ槽壁となるシールプレート20とで構成されている。また、撹拌槽18および槽本体19は、透磁性に優れた非磁性材料で形成されている。3つの液供給口11,12,13は槽本体19の下端寄りの位置に装備されており、液排出口16は槽本体19の上端寄りの位置に装備されている。この一実施形態の場合、最下端に配備された液供給口11は撹拌対象の主成分の液体の供給用であり、その上方に配備された液供給口12,13は主成分の液体に添加して主成分の液体に均質に撹拌混合させる添加液の供給用である。
そして、撹拌手段としての一対の撹拌羽根21,22は、撹拌槽18内の相対向する上下端に離間して配置されて、互いに逆向きに回転駆動される。各撹拌羽根21,22は、それぞれの撹拌羽根21,22が近接する槽壁(シールプレート20)の外側に配置された外部磁石26と磁気カップリングCを構成している。即ち、各撹拌羽根21,22は、磁力でそれぞれの外部磁石26に連結されており、各外部磁石26を独立したモーター28,29で回転駆動することで、互いに逆向きに回転操作される。
図2は、撹拌槽18の下部側の磁気カップリングCの構成を示したものである。この一実施形態の磁気カップリングCは、この磁気カップリングCを構成している各撹拌羽根21,22に、図示のように、N極面とS極面とが回転中心軸線31に対して平行でかつ該回転中心軸線31を挟んで重なる如く配置された両面2極型磁石33を使用している。そして、各外部磁石26は、N極面とS極面とが回転中心軸線31に直交する平面上で回転中心軸線31に対して対称位置に並ぶ左右2極型磁石(所謂、U字型磁石)35を使用している。
以上の磁気カップリングCでは、外部磁石26と各撹拌羽根21,22との間を結ぶ磁力線Lは図3(a)に示すようになり、例えば左右2極型磁石同士で磁気カップリングを構成した場合に形成される磁束と比較して、磁石相互間を結ぶ磁束の径を増倍することが可能になると同時に、外部磁石26が回転操作された場合に、図3(b)に示すように、磁束が撓んで磁束の切断を防止する磁束粘性を持たせることができ、カップリングとしての結合強度が大幅に向上して、モーター28,29に高回転型のモーターを使用することによって、撹拌羽根21,22をより高速に回転動作させることが可能になる。
以上の撹拌装置10では、槽18内に対向配置された一対の撹拌羽根21,22は、図1中に波線の矢印(X)及び実線の矢印(Y)で示すように、それぞれ向きの異なる撹拌流を槽18内に形成する。そして、それぞれの撹拌羽根21,22の形成する撹拌流は、流れ方向が異なるために互いに衝突して槽18内における撹拌を促進する高速の乱流を槽18内に生成して、槽18内の流れが定常化することを防止し、撹拌羽根21,22の回転を高速化した場合にも撹拌羽根21,22の回転軸回りに空洞が形成されることを阻止すると同時に、撹拌作用を十分に受けずに撹拌槽18の内周面に沿って槽18内を流れる定常流が形成されるという不都合の発生を阻止することができる。したがって、撹拌羽根21,22の回転の高速化により、容易に処理速度を向上させることができ、さらに、その際に、槽18内の液体の流れが定常化して撹拌混合が不十分の液体が排出されることを阻止して、処理品位の低下を防止することができる。
また、撹拌槽18内の各撹拌羽根21,22は、磁気カップリングCによって撹拌槽18の外部に配置されたモーター28,29に連結されているため、撹拌槽18の槽壁に回転軸を挿通させる必要がなくなり、撹拌槽18を回転軸の挿通部のない密閉容器構造にすることができるため、撹拌混合した液の槽外への漏出を防止すると同時に、回転軸用の潤滑液(シール液)等が不純物として槽18内の液に混入することによる処理品位の低下を防止することができる。
更に、使用する磁気カップリングCは、いわゆる両面2極型磁石33と左右2極型磁石35とを組み合わせたもので、左右2極型磁石35同士を対向配置する構成の磁気カップリングを使用した場合と比較して、カップリングとしての結合強度が大幅に向上するため、撹拌羽根21,22をより高速に回転動作させることが可能になる。
また、撹拌槽18に装備する液供給口の数量も、前述の一実施形態のものに限定するものではない。そして、前述の一実施形態の場合は、外部磁石26には左右2極型磁石35を使用して、撹拌羽根21,22には両面2極型磁石33を使用したが、逆に、外部磁石26には両面2極型磁石33を使用して、撹拌羽根21,22には左右2極型磁石35を使用するように変更しても、同様の作用効果を得ることができる。
次に、前記還元反応を開始させた液は、イオン交換樹脂又はキレート樹脂などの銅イオンを吸着する物質を入れた水溶液に分取し、撹拌することにより原料である銅イオンを吸着し、粒子の成長を止めることができる。
ここで、前記イオン交換樹脂はイオン吸着速度、イオン吸着量が多いものが好ましい。また、水溶液はできるだけ低温の方が一般的には還元反応速度が遅くなるため、粒子成長が遅くなるので好ましい。更に、イオン交換樹脂の量を変えることによっても吸着速度を変えることができる。
前記イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂が挙げられる。前記陽イオン交換樹脂は、必ず必要であるが、前記陰イオン交換樹脂は無くてもよい。しかし、生成するコロイドの安定性を考えた場合、銅イオンの対イオンを除去するために陰イオン交換樹脂があった方が好ましい。
本発明においては、還元反応開始からイオン交換樹脂に接触させるまでの時間をコントロールすることにより、粒子成長をコントロールすることが可能である。この場合、時間のコントロールは、撹拌装置内に原料銅イオン液と還元剤液を注入する速度や流路長によって制御することができる。
また、前記イオン交換樹脂との接触方法は、上記以外にも、例えば、カラムに充填した中にコロイド液を流すなどの方法が考えられる。この場合、カラムの長さを変えることで銅イオンの吸着量を変えることも可能であり、このような方法でも析出した粒子の粒径を制御することが可能である。
(酸化第一銅粒子)
本発明の酸化第一銅粒子は、本発明の前記酸化第一銅粒子の製造方法により製造され、分散度(標準偏差)は1〜100であり、1〜50がより好ましい。
また、前記酸化第一銅粒子の平均粒径は、1〜100nmが好ましく、1〜50nmがより好ましい。
ここで、前記分散度及び平均粒径は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
本発明の酸化第一銅粒子は、任意のサイズを有し、かつ粒度分布が単分散であるため、導体形成用ペースト、触媒、色材などに好適に用いられる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(比較例1)
まず、硫酸銅(II)0.8gを16mlの純水に溶解し、更に、ジエチルアミノエタノール4mlを添加した。以下、この液をA液とする。
次に、純水中に質量濃度で2%になるようにポリビニルアルコール(PVA217C、株式会社クラレ製)を溶解させた。以下、この液をB液とする。
次に、前記A液及びヒドロキシアセトン10mlを60℃にてビーカー内でマニュアルにより混合して、銅イオンの還元反応を起こした。次いで、酸化第一銅粒子が析出した液を3秒後に200mlのB液に添加し、1時間撹拌した。以上により、比較例1のサンプルを調製した。
(比較例2)
比較例1において、前記B液中に陰イオン交換樹脂IRA67、及び陽イオン交換樹脂IRC50をそれぞれ20g添加した液をC液とした以外は、比較例1と同様にして、比較例2のサンプルを調製した。
(実施例1)
まず、硫酸銅(II)8gを300mlの純水に溶解した。以下、この溶液をD液とする。
次に、ジエチルアミノエタノール40ml、ヒドロキシアセトン100ml、及び純水10mlを混合した。以下、この溶液をE液とする。
次に、純水中に質量濃度で2%になるようポリビニルアルコール(PVA217C、株式会社クラレ製)を溶解させた。以下、この溶液をF液とする。
次に、F液100mlに陰イオン交換樹脂IRA67、及び陽イオン交換樹脂IRC50をそれぞれ10g添加した溶液をD液とする。
次に、前記D液及び前記E液を60℃で、図1〜図3に記載の本発明の撹拌装置を用いて混合し、銅イオンの還元反応を起こし、酸化第一銅粒子の析出した溶液を、前記G液中に15ml分取した。D液及びE液の混合からG液中に至るまでの時間は1秒であった。
次に、G液を1時間マグネチックスターラーで撹拌した後、濾布で濾過してイオン交換樹脂を取り除いた。以上により、実施例1のサンプルを調製した。
(実施例2)
実施例1において、D液及びE液の混合からG液中に至るまでの時間を0.5秒とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のサンプルを調製した。
次に、得られた各サンプル液中に分散している酸化第一銅粒子の粒径を走査電子顕微鏡(SEM)観察して、n=100で平均粒径及び分散度(標準偏差)を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2006069879
本発明の酸化第一銅粒子の製造方法により製造された酸化第一銅粒子は、任意の小粒径サイズを有し、かつ粒度分布が単分散であり、導体形成用ペースト、触媒、色材などに好適に使用することができる。
図1は、本発明の酸化第一銅粒子の製造方法の製造に用いる撹拌装置の一例を示す概略断面図である。 図2は、撹拌装置に使用される磁気カップリングの一例を示す概略斜視図である。 図3は、図2に示した磁気カップリングの作用を示す斜視図である。
符号の説明
10 撹拌装置
11,12,13 液供給口
16 液排出口
18 撹拌槽
19 槽本体
20 シールプレート
21,22 撹拌羽根
26 外部磁石
28,29 モーター
31 回転中心軸線
33 両面2極型磁石
35 左右2極型磁石
L 磁力線
41 撹拌羽根
42 排出口
43 供給口

Claims (8)

  1. 少なくとも酸化第一銅原料及び還元作用を有する化合物を複数の溶液として撹拌装置中に注入し、銅イオンの還元反応により、酸化第一銅結晶を成長させる酸化第一銅結晶の成長工程を含み、前記成長工程においてイオン交換樹脂及びキレート樹脂のいずれかにより原料である銅イオンを吸着除去して粒子成長を抑制することを特徴とする酸化第一銅粒子の製造方法。
  2. 酸化第一銅結晶の成長工程において、イオン交換樹脂及びキレート樹脂のいずれかによる銅イオンの吸着開始のタイミング、吸着速度、及び吸着量の少なくともいずれかを制御することにより、酸化第一銅粒子サイズを制御する請求項1に記載の酸化第一銅粒子の製造方法。
  3. 撹拌装置が、撹拌対象の溶液を流入させる所定数の液供給口と、撹拌処理を終えた溶液を排出する液排出口とを備えた撹拌槽と、該撹拌槽内の溶液を撹拌する撹拌手段とを有する請求項1から2のいずれかに記載の酸化第一銅粒子の製造方法。
  4. 撹拌手段が、撹拌槽内の溶液中に乱流を発生させて撹拌する手段である請求項3に記載の酸化第一銅粒子の製造方法。
  5. 撹拌手段が、撹拌槽内の相対向する2箇所に離間して配置されて互いに逆向きに回転駆動されることで該撹拌槽内の溶液の撹拌状態を制御する手段である請求項3から4のいずれかに記載の酸化第一銅粒子の製造方法。
  6. 撹拌手段が、一対の撹拌羽根である請求項3から5のいずれかに記載の酸化第一銅粒子の製造方法。
  7. 撹拌手段と近接した撹拌槽壁外側に配置されて貫通軸を持たない磁気カップリングを撹拌手段と形成する外部磁石と、前記撹拌槽外に配備され、前記外部磁石を回転駆動して撹拌手段を回転させる駆動手段とを有する請求項3から6のいずれかに記載の酸化第一銅粒子の製造方法。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の酸化第一銅粒子の製造方法により製造され、分散度が1〜100であることを特徴とする酸化第一銅粒子。
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