JP2006057290A5 - - Google Patents

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せん断補強構造およびせん断補強部材
本発明は、せん断力が作用する既設の鉄筋コンクリート造(以下、鉄筋コンクリートを「RC」という場合がある)の構造物のせん断補強構造およびこれに使用するせん断補強部材に関する。
阪神大震災以前に設計及び施工された地下鉄、上下水道浄化施設などの各種施設において、その構造物躯体を構成するRC造のボックスカルバートやRC造の地中埋設構造物の壁やスラブ、橋梁の壁式橋脚など(以下「RC構造体」という場合がある)は、せん断鉄筋が配筋されていない場合が多く、レベル2地震動に対するせん断耐力の不足や曲げモーメントによる靱性性能の不足が各種の耐震診断の結果から明らかになっており、速やかに耐震補強を行う必要性が指摘されている。
これらのRC構造体は、機能の特性上、地中に埋設されている場合がほとんどであり、施工後に補強する際には、構造物躯体の側壁や底版を外面側から補強することができず、内面側からのみその補強を行わざるをえない。ここで、本明細書において「外面」とは、RC構造体の面材又は版材の地山に面している側の面をいい、「内面」とは、同面材又は版材の外面に対向する面で、地山に面していない側の面をいう。
従来、これらのRC構造体の補強方法としては、RC構造体の面に沿って主鉄筋及び配力鉄筋を配筋して、コンクリートを打設する増厚工法や、RC構造体の周囲に鋼板を巻き立て、RC構造体と鋼板との隙間にモルタルや樹脂等の充填材を充填する鋼板巻き立て工法等が採用されていた。
しかし、これらの工法では、補強後に面材や版材の厚さが増大して、躯体の内空断面が減少してしまう等、各種の不都合が生じてしまう(例えば、上下水道浄化施設の場合には、貯水能力や処理能力が減少してしまい、また地下鉄の場合には、建築限界を満足しなくなるため、使用不能となってしまう場合が生じる)。さらに、増厚工法は、主鉄筋が増加することから、せん断耐力が向上する一方で、曲げ耐力も増加することから、補強後においてせん断先行破壊型を曲げ先行破壊型に移行させるという要請を実現するのが困難であった。
さらに、補強鉄筋や鋼板等の補強部材の搬入や組み立てに、大掛かりな揚重機械を必要とし、地下構造物内や橋梁等の限られた空間では、これらの揚重機械の制約があり施工が困難な場合があった。また、供用中の道路トンネル内や鉄道トンネル内のせん断補強では、その交通量や列車運行の制約により、夜間の限られた時間帯内での急速施工の要求に対して、前記従来の補強方法では、施工ができない場合があった。
そこで、前記問題点を解決するために、ボックスカルバートのせん断補強方法として、ボックスカルバートの外壁の内面側から、所定の間隔で鉛直方向にスリットを形成し、該スリット内に所定の鋼板を挿入した後に、前記スリット内にグラウト材を充填して前記鋼板と前記外壁とを一体化させる方法が提案されている。(例えば、特許文献1)
特開2003−3556号公報(第2頁−第4頁、図2)
しかし、前記補強方法は、単に、スリット内に所定の鋼板を挿入するだけであることから、鋼板に引抜き力が発生した際、充分な剛性(引き抜き力に対する引き抜き抵抗の大きさ、以下「引き抜き剛性」という)を得ることができないという新たな問題点を有していた。また、前記補強方法は、単にRC構造体のせん断力に対する補強であるため、所定のせん断耐力以上のせん断力が生じた際には、これに対応する靱性性能を有していないため、主鉄筋の降伏とともにRC構造体が破壊してしまうという問題点を有していた。
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、簡易かつ確実に所定の引き抜き剛性を確保して、所定のせん断耐力を発現するとともに、高い靱性性能を付与することを可能とする、既設のRC構造体の面外せん断力の補強と曲げ靱性性能の向上がなされた構造(以下、単に「せん断補強構造」という場合がある)およびこれに使用するせん断補強部材を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、既設の鉄筋コンクリート構造物と、前記鉄筋コンクリート構造物に形成された第一補強部材挿入孔の内部に配設される第一せん断補強部材及び第二補強部材挿入孔の内部に配設される第二せん断補強部材と、前記第一補強部材挿入孔及び第二補強部材挿入孔に充填される充填材と、からなるせん断補強構造であって、前記第一せん断補強部材は、第一線材と、前記第一線材の基端部に形成されて該第一線材の直径よりも大きな幅を有する第一基端定着部材とから構成されていることを特徴としている。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のせん断補強構造であって、前記第一補強部材挿入孔が、前記第一線材の直径よりも大きい内径の第一標準径部と、前記第一補強部材挿入孔の基端部に形成されて、前記第一標準径部よりも大きい内径を有する第一基端拡径部と、から構成されていることを特徴としている。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のせん断補強構造であって、前記第一補強部材挿入孔の先端部には、前記第一標準径部よりも大きい内径を有する第一先端拡径部が形成されていることを特徴としている。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のせん断補強構造であって、前記第二せん断補強部材は、第二線材と、前記第二線材の基端部に形成されて該第二線材の直径よりも大きな幅を有する第二基端定着部材とから構成されており、前記第一基端定着部材は、前記第二基端定着部材の幅よりも大きな幅を有していることを特徴としている。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のせん断補強構造であって、前記鉄筋コンクリート構造物はラーメン構造からなり、前記第一補強部材挿入孔は、前記鉄筋コンクリート構造物の隅角部に形成されることを特徴としている。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のせん断補強構造であって、前記第一基端定着部材は、前記第一線材の直径の5倍以上、20倍以下の幅、好ましくは10倍以上、15倍以下の幅からなるプレート状の部材が、前記第一線材の基端部に固定されてなることを特徴としている。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のせん断補強構造であって、前記鉄筋コンクリート構造物の内面には、繊維シートが接着されており、前記繊維シートは、前記第一線材と一体化がなされていることを特徴としている。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のせん断補強構造であって、前記鉄筋コンクリート構造物の内面には、繊維シートが接着されており、前記繊維シートは、前記鉄筋コンクリート構造物の表面と、前記第一線材の前記第一基端定着部材の表面とに接着されて一体化がなされていることを特徴としている。
また、請求項9に記載の発明は、既設の鉄筋コンクリート構造物と、この鉄筋コンクリート構造物に形成された補強部材挿入孔の内部に配設されるせん断補強部材と、前記補強部材挿入孔に充填される充填材と、前記鉄筋コンクリート構造物の表面に接着される繊維シートと、からなるせん断補強構造であって、前記繊維シートと前記せん断補強部材とは、一体化がなされていることを特徴としている。
さらに、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のせん断補強構造であって、前記せん断補強部材は、線材と、前記線材の基端部に形成されて該線材の直径よりも大きな幅を有する基端定着部材とから構成されており、前記繊維シートは、前記鉄筋コンクリート構造物の表面と、前記基端定着部材の表面と、に接着されていることを特徴としている。
また、請求項11に記載の発明は、既設の鉄筋コンクリート構造物に形成された補強部材挿入孔の内部に配設されるせん断補強部材であって、前記補強部材挿入孔の延長よりも短い長さの線材と、前記線材の直径よりも大きな幅を有し、該線材の基端部及び先端部にそれぞれ形成された基端定着部材及び先端定着部材とから構成されていることを特徴としている。
また、請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のせん断補強部材であって、前記線材が鉄筋からなり、前記先端定着部材が、該線材の先端を熱した状態で軸方向に打撃あるいはプレスすることで、前記線材の直径に対して120%乃至130%の幅に形成された突起部であって、前記基端定着部材が、前記線材の基端部に接合されたプレート状の部材であることを特徴としている。
また、請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のせん断補強部材であって、前記基端定着部材が、前記線材の直径の5倍以上、20倍以下の幅、好ましくは10倍以上、15倍以下の幅からなるプレート状の部材であることを特徴としている。
さらに、請求項14に記載の発明は、請求項11に記載のせん断補強部材であって、前記線材が鉄筋からなり、前記先端定着部材および前記基端定着部材が、前記線材の先端および基端を熱した状態で軸方向に打撃あるいはプレスすることで、前記線材の直径に対して120%乃至130%の幅に形成された突起部であることを特徴としている。
ここで、本発明による補強の対象部材は、せん断補強が必要となる構造物であり、既設である各種の鉄筋コンクリート造の構造物(以下「RC構造物」という場合がある)に適用可能であり、また、施工対象に関して、現場打ちや、プレキャストコンクリート製品等の種類は問わない。
本発明によれば、せん断補強部材とRC構造物のコンクリートが充填材を介して一体化されているため、当該RC構造物に、面外のせん断力が発生した場合に発生する斜め引張り応力に対して、せん断補強部材とRC構造物とが一体となって抵抗することになる。従って、既設のRC構造物のせん断耐力を向上させ、地震等による破壊形態を脆性的な破壊から靱性的な破壊へ移行させることができる。
また、本発明によれば、RC構造物のコンクリート厚さを増加させることなく、直接的にせん断補強部材を構造体の内部に埋設することにより、せん断耐力と靱性性能の増大を効率的に実現できることから、補強後に躯体の内空断面が減少してしまうといった不都合が生じることを防止することができる。加えて、主鉄筋を増加させることがないため、曲げ耐力を増加させることなく、面外せん断耐力を向上させることができる。そのため、レベル2地震時において、せん断先行破壊型の可能性があるRC構造物を曲げ先行破壊型に移行することができる。
また、せん断補強部材において、線材であるせん断補強鉄筋の基端部及び先端部に、当該せん断補強鉄筋より断面形状が大きい定着部材が設けられていれば、当該せん断補強部材の定着効果を高めることができるとともに、せん断補強鉄筋の引張抵抗と定着部材の内側のコンクリートに発生する圧縮応力により、より効果的にせん断耐力の向上と靱性性能の向上を図ることができる。また、塑性ヒンジが発生すると考えられる付近(以下、「第一領域」という場合がある)のせん断補強部材である第一せん断補強部材の第一基端定着部材が、第一せん断補強鉄筋(第一線材)の10倍〜15倍程度の幅を有するプレート状の部材から形成されていれば、該第一基端定着部材よりも外面側のコンクリートを拘束して、より効果的に靱性性能の向上を図ることができるため、好適である。さらに、これらのプレート状の第一基端定着部材の表面とRC構造物の表面とに、繊維シートが一体に接着されていれば、コンクリートの剥落を防止するため、より効果的に靱性性能の向上を図ることが可能となる。ここで、線材は異形鉄筋や丸鋼鉄筋に限定されるものではなく、炭素線材、鋼棒、PC鋼より線等、あらゆる線材が適用可能である。
また、本発明のせん断補強構造は、異なる2種類のせん断補強部材を使用しており、コンクリート構造物に発生する応力に対して、これらの異なる2種類のせん断補強部材を適切に配設すれば、より効果的にせん断耐力を増強し、且つ靱性性能を向上させることが可能となり、好適である。また、異なる応力が作用する各領域(例えば、塑性ヒンジが発生すると考えられる領域と、それ以外の領域)において、配設されるせん断補強部材の形状をその応力に応じて形成させれば、材料費を必要最小限に抑えることが可能となるため好適である。
また、充填材として、セメントと最大粒径が2.5mm以下、好ましくは2mm以下の骨材と粒子径が0.01〜15μm、好ましくは0.01〜0.5μmの活性度の高いポゾラン系反応粒子と0.1〜15μmの活性度の低いポゾラン反応粒子と、少なくとも1種類の分散材と水とを混合して得られるセメント系マトリックスに、直径が0.05mm〜0.3mmで長さが8mm〜16mmの繊維を、前記セメント系マトリックスの容積に対して1%〜4%程度混入してなる繊維補強セメント系混合材料を使用すれば、圧縮強度が200N/mm、曲げ引張強度が40N/mm、異形鉄筋に対する付着強度が60〜80N/mmとなり、剛性の高い定着効果を実現する。
つまり、本発明のせん断補強構造によれば、RC構造物が巨大地震等による水平力を受けた際に、隅角部付近に発生する塑性ヒンジの変形能力を大きくすることで、地盤の変形量による損傷を小さくすることが可能となる。そのため、せん断破壊と同時に上載荷重を支持できなくなって、RC構造物の全体が破壊することを防止することが可能となる。
本発明のせん断補強構造およびせん断補強部材によれば、簡易かつ確実に所定の引き抜き剛性を確保して、所定のせん断耐力を発現するとともに、高い靱性性能を付与することが可能となる。
本発明の補強方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下は、地中に埋設された既設の鉄筋コンクリート構造物であって、ラーメン構造とみなし得るボックスカルバートをせん断補強する場合について説明を行う。なお、以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態(以下、単に「第1実施形態」という場合がある)に係るせん断補強構造を示す断面図である。また、図2は、第一せん断補強部材を示す図であり、(a)は設置状況を示す断面図、(b)は全体を示す斜視図である。また、図3は、第二せん断補強部材を示す図であり、(a)は設置状況を示す断面図、(b)は全体を示す斜視図である。また、図4(a)〜(g)は、せん断補強部材の突起部の変形例を示す斜視図である。また、図5は、地盤に埋設されたボックスカルバートの地震による変形状況を示す図であり、(a)は常時、(b)は地震時、(c)は地震時の曲げモーメント図である。
第1実施形態に係るせん断補強構造1は、図1に示すように、既設の鉄筋コンクリート造のボックスカルバートBと、このボックスカルバートBにおいて、地震力により塑性ヒンジが発生すると想定される位置(図5参照)及びその近傍の領域である第一領域2に形成された第一補強部材挿入孔11の内部に配設される第一せん断補強部材21と、その他の領域である第二領域3に形成された第二補強部材挿入孔15の内部に配設される第二せん断補強部材25と、第一補強部材挿入孔11及び第二補強部材挿入孔15に充填される充填材30とから構成されている。以下、「第一補強部材挿入孔11」と「第二補強部材挿入孔15」とを区別しない場合は、これらを「補強部材挿入孔10」という場合がある。また、「第一せん断補強部材21」と「第二せん断補強部材25」とを区別しない場合は、これらを「せん断補強部材20」という場合がある。
第一せん断補強部材21は、図2に示すように、異形鉄筋からなる第一せん断補強鉄筋(第一線材)22と、この第一せん断補強鉄筋22の先端部に形成されて、当該第一せん断補強鉄筋22よりその断面形状が大きい突起部24と、第一せん断補強鉄筋22の基端部に形成されて、突起部24よりも断面形状が大きいプレートヘッド(第一基端定着部材)23とから構成されている。そして、第一せん断補強部材21の全長は、第一補強部材挿入孔11の深さよりも短く、第一補強部材挿入孔11に配置した状態で、完全に埋設される(図1又は図2(a)参照)。
プレートヘッド23は、図2に示すように、厚さが第一せん断補強鉄筋22の直径の40%〜80%、幅が第一せん断補強鉄筋22の鉄筋径の10倍〜15倍程度の四角形状の鋼製プレートからなり、第一せん断補強鉄筋22の基端部に一体に固定されている。プレートヘッド23の第一せん断補強鉄筋22への固定は、摩擦圧接機械を用いて、固定した第一せん断補強鉄筋22に回転させた鋼製プレートを押し付けることにより、回転する鋼製プレートに所定の圧力で摩擦熱を発生させて、鋼製プレートを第一せん断補強鉄筋22に溶着(摩擦圧接A)させることにより簡易に行うことができる。
ここで、プレートヘッド23と第一せん断補強鉄筋22との接合方法は、摩擦圧接Aに限定されるものではなく、ガス圧接接合、アーク溶接接合等、その一体化が可能であればよい。また、プレートヘッド23の形状は、四角形に限定されるものではなく、円形、楕円形、多角形等でもよい。
また、突起部24は、第一せん断補強鉄筋22の先端を熱した状態で軸方向に打撃あるいはプレスすることで、図2(b)に示すように、第一せん断補強鉄筋22の鉄筋径の120%〜130%の幅に形成されたものである。ここで、本明細書において、プレートヘッド23や突起部24等の定着部材の「幅」は、定着部材の形状が矩形、多角形であれば対角線長、円形であれば直径、楕円形であれば長辺長に統一するものとする。
第二せん断補強部材25は、図3に示すように、異形鉄筋からなる第二せん断補強鉄筋(第二線材)26と、この第二せん断補強鉄筋26の基端部に形成されて当該第二せん断補強鉄筋26より断面形状が大きい突起部(第二基端定着部材)27と、同様に第二せん断補強鉄筋26の先端部に形成されて当該第二せん断補強鉄筋26より断面形状が大きい突起部28とから構成されている。そして、第二せん断補強部材25の全長は、第二補強部材挿入孔15の深さよりも短く、第二補強部材挿入孔15に配置した状態で、第二補強部材挿入孔15の内部に完全に埋設される(図1又は図3(a)参照)。
第二せん断補強部材25の基端部及び先端部に形成される突起部27,28は、第一せん断補強部材21の先端部に形成された突起部24と同様の方法により、第二せん断補強鉄筋26の鉄筋径の120%〜130%の幅に形成されている。
ここで、各せん断補強部材20に係る第一せん断補強鉄筋22及び第二せん断補強鉄筋26(以下、「第一せん断補強鉄筋22」と「第二せん断補強鉄筋26」とを区別しない場合は、単に「せん断補強鉄筋22,26」という場合がある)は、異形鉄筋に限定されるものではなく、線状の補強材料としての機能を発揮するものであれば、例えばネジ鉄筋、鋼棒、PC鋼より線、炭素線材等を使用してもよい。
また、第一せん断補強部材21の先端に形成された突起部24は、前記のものに限定されるものではなく、例えば、図4(a)に示す突起部24aように、軟鋼やアルミニウム合金などの比較的加工しやすい金属製材料を用い、厚さ(肉厚)がせん断補強鉄筋22の直径の10%〜15%、長さがせん断補強鉄筋22の直径の100%〜250%の形状を有する円筒体を準備して、これを、せん断補強鉄筋22の先端部(又は基端部)にかぶせ、この周りを半分の円環を2つあわせたグリッパを用いて周囲から押しつぶすことにより、あるいは、鉄筋のスクイズ・ジョイントに用いるような円筒体を絞り込む(スクイズする)ようにして、円筒体を塑性変形させてせん断補強鉄筋22と一体にすることにより製造してもよい。
また、図4(b)に示す突起部24bのように、せん断補強鉄筋22としてネジ筋鉄筋を用いて、先端部(又は基端部)にロックナットをねじ込み、せん断補強鉄筋22とロックナットとのがたつきを取り除くためにダブルナットとするか、ナット内部の隙間にエポキシ樹脂のような充填材を注入する方法のいずれかにより、突起部24bとして、厚さがせん断補強鉄筋22の直径の120%〜130%、長さがせん断補強鉄筋22の直径の100%〜250%となるように、製造することもできる。
また、図4(c)に示す突起部24cのように、厚さがせん断補強鉄筋22の直径の30%〜80%、幅がせん断補強鉄筋22の直径の120%〜130%の円形鋼製プレートをせん断補強鉄筋22の先端部(又は基端部)に摩擦圧接Aすることにより製造してもよい。また、図4(d)や図4(e)に示すように、厚さがせん断補強鉄筋22の直径の30%〜80%、幅がせん断補強鉄筋22の直径の120%〜130%の多角形鋼製プレートや、厚さがせん断補強鉄筋22の直径の30%〜80%、長軸がせん断補強鉄筋22の直径の120%〜130%の楕円形(小判型や円の側部を切り落としたような形状も含む)鋼製プレートから製造してもよい。このようにすると、補強部材挿入孔10との間に隙間が形成されることになるので補強部材挿入孔10に充填材30を充填した後にせん断補強部材20を補強部材挿入孔10に挿入する場合に、充填材30による挿入抵抗を低減し、且つ、突起部24d,24eの後方に空気を残さないで挿入することができる。
また、前記円形鋼製プレート、多角形鋼製プレート、楕円形鋼製プレートに孔hを設けることで、充填材30による挿入抵抗を低減し、且つ、突起部24fの後方に空気を残すことなくせん断補強部材20を挿入することができる構成としてもよい(図4(f)参照)。さらに、図4(g)に示すように、突起部24gのせん断補強鉄筋22と接合した面と反対側の面を凸状の球面形状にすることにより、挿入抵抗を低減する構成としてもよい。
ここで、突起部24の形成方法は限定されるものではなく、摩擦圧接接合、ガス圧接接合、アーク溶接接合等、その形成が可能であればよい。
なお、プレートヘッド23と突起部24の組み合わせは、補強を行う側壁Wの配筋状態、コンクリート強度、壁厚などの要因にあわせて自由に選択することができる。また、第二せん断補強部材25の基端部に形成された突起部27及び先端部に形成された突起部28は、第一せん断補強部材21の突起部24と同様に、前記の各種方法により形成してもよい。
補強部材挿入孔10は、図1に示すように、せん断補強部材20を設置するために、ボックスカルバートBの内面側から外面側に向けて、穿孔されたものである。第1実施形態では、上下の第一領域2にそれぞれ2箇所ずつ形成された、第一補強部材挿入孔11と、第二領域3に3箇所形成された、第二補強部材挿入孔15との合計7箇所において形成されている。
第一補強部材挿入孔11は、図2(a)に示すように、第一せん断補強鉄筋22の鉄筋径の120%〜130%で突起部24の幅よりも大きい内径からなる第一標準径部12と、第一補強部材挿入孔11の基端部に形成されて、プレートヘッド23の幅よりも大きい内径を有する第一基端拡径部13と、第一補強部材挿入孔11の先端部に形成されて、第一標準径部12の内径よりも大きい内径を有する第一先端拡径部14とから構成されている。
また、第二補強部材挿入孔15は、図3(a)に示すように、第二せん断補強鉄筋26の鉄筋径の120%〜130%で突起部24の幅よりも大きい内径からなる第二標準径部16と、第二補強部材挿入孔15の基端部に形成されて、第二標準径部16の幅よりも大きい内径を有する第二基端拡径部17と、第二補強部材挿入孔15の先端部に形成されて、第二標準径部16の内径よりも大きい内径を有する第二先端拡径部18とから構成されている。
ここで、第1実施形態では、図1に示すように、第一標準径部12と第二標準径部16及び第一先端拡径部14と第二先端拡径部18の形状が同一の形状に形成されている。
なお、補強部材挿入孔10は、既設RC構造物の施工時の配筋図や非破壊試験の情報をもとに、穿孔時に主鉄筋及び配力鉄筋に損傷を与えることの無いように、横間隔は主鉄筋と、縦間隔は配力鉄筋と同間隔で両鉄筋の中央に配置されている。図1に示すように、補強部材挿入孔10の穿孔は、側壁Wの内面側から地盤Gと接している外面側方向であって側壁W面に略垂直な方向に、インパクト・ドリルやロータリーハンマ・ドリル、コア・ドリルなどの穿孔手段を用いて、外面側の主筋の位置の深さまで行なわれている。また、補強部材挿入孔10は、やや下向きの傾斜を有して穿孔されており、他面側に所定寸法の被りコンクリート厚さを差し引いた長さ寸法に設けるとともに、孔径は、図2及び図3に示すせん断補強部材20の先端部に取り付けられている突起部24の外径に若干の余裕を見込んだ値に形成されている。
ここで、補強部材挿入孔10がやや下向きの傾斜を有して形成される理由は、補強部材20の挿入時において、充填材30を充填する際に、内部の空気を排出しやすくするためであり、このようにすることにより、当該充填材30の充填をより完全に行うことができるようになる。なお、充填材30の充填を完全に行うことが可能であれば、補強部材挿入孔10は、必ずしもやや下向きの傾斜を有して穿孔される必要はない。
また、第一基端拡径部13及び第二基端拡径部17は、前記穿孔手段を用いて削孔径の拡径を行うことにより形成されている。なお、この第一基端拡径部13の削孔深さはプレートヘッド23の厚みに余裕を見込んだ値となっていて、第1実施形態では第一せん断補強部材21が設置された状態で、プレートヘッド23が完全に埋設される位置まで穿孔されている。また、第一実施形態では、第二基端拡径部17の削孔深さが、第一基端拡径部13の削孔深さと同様の深さに形成されている。
さらに、第一先端拡径部14及び第二先端拡径部18は、前記穿孔手段の先端に拡径用ビットをつけて先端部の拡径を行うことにより形成されている。なお、本実施形態では、第一先端拡径部14及び第二先端拡径部18の底部は、外面側の主筋の位置の深さまで行われており、所定寸法の被りコンクリート厚さが確保されている。
充填材30は、補強部材挿入孔10とせん断補強部材20との間に形成された隙間に充填されている。また、図2(a)に示すように、プレートヘッド23の内面側に形成された第一基端拡径部13の空間には、コテなどにより、ボックスカルバートBの表面に凸凹が生じないように充填する。
充填材30には、セメントと最大粒径が2.5mm以下の骨材と粒子径0.01〜0.5μmの活性度の高いポゾラン系反応粒子であるシリカヒュームと粒子径0.1〜15μmの活性度の低いポゾラン反応粒子である高炉スラグあるいはフライアッシュと,少なくとも1種類の分散材と水とを混合して得られるセメント系マトリックスに、直径が0.05mm〜0.3mmで長さが8mm〜16mmの繊維を、セメント系マトリックスの容積に対して1%〜4%程度混入してなる繊維補強セメント系混合材料(以下「高強度繊維充填材」と称する)が使用されており、圧縮強度が200N/mm、曲げ引張強度が40N/mm、異形鉄筋に対する付着強度が60〜80N/mmとなり、剛性の高い定着効果が実現されている。また、充填材30は、可塑性があり、上向きに充填しても流れ落ちることのない性質を有している。
第1実施形態では、図2(a)及び図3(a)に示すように、充填材30により補強部材挿入孔10が外部と遮断されるように充填する。
第1実施形態に係るせん断補強構造1の構築は、補強部材挿入孔10の穿孔、補強部材挿入孔10への充填材30の充填、せん断補強部材20の補強部材挿入孔10への設置、の順序により行う。
補強部材挿入孔10の穿孔は、前記の穿孔手段により、それぞれ、所定の位置に所定の形状が形成されるように行う。そして、穿孔後、孔内に穿孔のために生じたコンクリート粉を除去する。
次に、圧入機械等により、補強部材挿入孔10への充填材30の充填を行う。この際、第一補強部材挿入孔11への充填材30の充填は、第一標準径部12及び第一先端拡径部14にのみ行う。
そして、充填材30が充填された補強部材挿入孔10に、せん断補強部材20を挿入する。なお、第一補強部材挿入孔11では、第一せん断補強部材21の挿入後、第一基端拡径部13のプレートヘッド23の内面側の空間にコテなどを用いて、第一基端拡径部13内に空間が生じることがなく、また、ボックスカルバートBの内面に凹凸ができることがないように、充填材を充填する。また、第二補強部材挿入孔15に関しても、ボックスカルバートBの内面に凹凸が生じることがないように、充填材を充填してその表面を整える。
なお、せん断補強構造1の構築において、補強部材挿入孔10への充填材の充填と、補強部材挿入孔10へのせん断補強部材20の挿入の順序は限定されるものではなく、せん断補強部材20を補強部材挿入孔10に挿入した後、充填材30を充填する構成としてもよい。この場合において、充填材30の第一標準径部12及び第一先端拡径部14への充填は、プレートヘッド23に注入孔を形成し、この注入孔から注入することにより行えばよい。
次に、第1実施形態のせん断補強構造1による面外せん断耐力の補強効果及び曲げ靱性性能の向上効果について説明する。
図5(a)に示す地中に埋設されたボックスカルバートBの周辺に、大きな地震力Pが生じた場合、図5(b)に示すように、周辺地盤の地盤変形分布Dのような変形に伴い、ボックスカルバートBにも変形が生じる。このため、ラーメン構造であるボックスカルバートBには、図5(c)に示すような曲げモーメントMが働き、隅角部に曲げモーメントMが集中するため、この隅角部付近の塑性ヒンジPHに損傷が集中する。
せん断補強構造1によれば、地震時において曲げモーメントMが大きくなる塑性ヒンジPH近傍に配設された第一せん断補強部材21の基端部には、大きなプレート部材からなるプレートヘッド23が形成されているため、地震力Pにより側壁の内側の鉄筋が引張降伏して被りコンクリートが剥落しようとしても、プレートヘッド23がコンクリートを拘束するとともに、コンクリートに圧縮応力場を作ることができるため、せん断耐力の向上と靭性性能の向上を図ることができる。したがって塑性ヒンジPHの位置を必然的に隅角部から中央部に移動することになり、ボックスカルバートBとして崩壊に対する抵抗性能を増大することになる。隅角部の外側の主鉄筋と被りコンクリートについては,第一先端拡径部14の充填材30によりプレートヘッド23と同様の効果を示すが、ボックスカルバートBの内面側に比較すると外面側は地盤Gがあるので地盤Gの土圧による被りコンクリートの剥落を防止することができる。
このため、曲げモーメントMにより主鉄筋が降伏した後も、高い靱性性能を示し、地盤の変形に対応するため、損傷被害を小さくすることを可能としている。
<第2の実施の形態>
図6は、第2の実施の形態(以下、単に「第2実施形態」という場合がある)に係るせん断補強構造を示す断面図であり、図7は、第2実施形態に係る第一せん断補強部材の設置状況を示す断面図である。
第2実施形態に係るせん断補強構造1’は、図6に示すように、既設の鉄筋コンクリート造のボックスカルバートBと、このボックスカルバートBにおいて、地震力により塑性ヒンジが発生すると想定される位置(図5参照)及びその近傍の領域である第一領域2に形成された第一補強部材挿入孔11の内部に配設される第一せん断補強部材21と、その他の領域である第二領域3に形成された第二補強部材挿入孔15の内部に配設される第二せん断補強部材25と、第一補強部材挿入孔11及び第二補強部材挿入孔15に充填される充填材30と、第一せん断補強部材21のプレートヘッド23の表面とボックスカルバートBの表面とに一体に接着された繊維シート31から構成されている。
補強部材挿入孔10は、図6に示すように、ボックスカルバートBの内面側から外面側に向けて、補強部材20を設置するために穿孔されたものであり、第2実施形態では、上側の第一領域2aの側壁部に2箇所と、下側の第一領域2bの側壁部の2箇所とハンチ部の1箇所と、第2領域3の3箇所の計8箇所が形成されている。なお、第2実施形態に係る補強部材挿入孔10のその他の構成や形成方法等は、第1実施形態に示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
せん断補強部材20は、図6に示すように、ボックスカルバートBの上側の隅角部付近の第一領域2aに形成された2箇所と、下側の隅角部付近の第一領域2bの側壁に形成された2箇所とハンチ部に形成された1箇所との計5箇所の第一補強部材挿入孔11に配置される第一せん断補強部材21と、ボックスカルバートBの側壁の中央付近の第二領域3に形成された3箇所の第二補強部材挿入孔15に挿入される第二せん断補強部材25とを有している。
第一せん断補強部材21は、第一補強部材挿入孔11の深さと、略同じ長さを有しており、第一補強部材挿入孔11に配置した状態で、プレートヘッド23の第一せん断補強鉄筋22との接合面と反対側の表面が、ボックスカルバートBの内面と一致するように形成されている。
なお、第一せん断補強部材21のその他の詳細な構成等は、第1実施形態に示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。また、第二せん断補強部材25の構成等は、第1実施形態に示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。また、充填材30は、第1実施形態で使用した充填材30と同様のものを使用する。
図6に示すように、ボックスカルバートBの下側の第一領域2bの3本の第一せん断補強部材21のプレートヘッド23,23,…と、ボックスカルバートBの内面とは、繊維シート31が接着されており、一体化がなされている。なお、繊維シート31の材質は、炭素繊維シート、アラミド繊維シート等の高強度繊維シートであれば、限定されるものではない。
第2実施形態に係るせん断補強構造1’の構築は、第1実施形態で示したせん断補強構造1の構築方法と同様に補強部材挿入孔10の穿孔、充填材30の充填、せん断補強部材20の配置を行った後、下側の第一領域2bに配設された第一せん断補強部材21のプレートヘッド23,23,…の表面と、ボックスカルバートBの内面とに繊維シート31を接着して、一体化することにより行う。
次に、第2実施形態のせん断補強構造1’による面外せん断耐力の補強効果及び曲げ靱性性能の向上効果について説明する。
せん断補強構造1’によれば、図5(c)に示す塑性ヒンジPHの損傷に対して、第1実施形態に示したせん断補強構造1の効果に加えて、さらに靭性性能の向上を図ることを可能としている。つまり、第一せん断補強部材21のプレートヘッド23に直接繊維シート31が接着されているので、繊維シート31が面外に剥離することはなく、プレートヘッド23と相互に内部コンクリートの拘束効果を期待できる。
以上のように、本発明のせん断補強構造によると、せん断耐力と靱性性能の増大を効率的に実現できる。しかも、既設のRC造面版材のコンクリート厚さを増加させることなく、直接的に補強部材20がRC造面版材内部に埋設されているため、従来の鉄筋コンクリート増厚工法等のように、補強後に内空断面が減少してしまうといった不都合が生じることを防止することができる。加えて、主鉄筋を増加させることがないことから、曲げ耐力を増加させることなく、面外せん断耐力を向上させることができるので、せん断先行破壊型の可能性があるRC構造物を曲げ先行破壊型に移行することができる。
また、ボックスカルバートBに補強部材挿入孔10とその両端部に設けられた拡径部を形成して、その内部にせん断補強部材20を配設することにより、せん断耐力と靱性性能の増大を効率的に実現することが可能となる。
また、せん断補強鉄筋22,26を挿入するための削孔径は、鉄筋径の120%〜130%程度でよく、削孔径が小さいため、急速施工が可能であり、作業効率がよい。
また、充填材30は、せん断補強部材20と一体となり、補強部材挿入孔10の両端の拡径部において剛性の高い定着効果を実現する。そのため、補強部材挿入孔10の両端の拡径部とせん断補強部材20との固定度が高く、せん断補強部材20の定着の効果を十分に発揮できる。
また、せん断補強鉄筋22,26の基端部に設けられている基端定着部材であるプレートヘッド23又は突起部27、及び先端部に設けられている先端定着部材である突起部24,28は、充分な定着効果が得られるとともに、面外せん断力が発生するとせん断補強鉄筋22,26に引張力が作用するために、基端定着部材23,27と先端定着部材24,28との間に支圧力が働き、基端定着部材23,27と先端定着部材24,28との間のコンクリートである内部コンクリートには圧縮応力場が形成されるため、せん断に対して内部コンクリート自身のせん断抵抗力が増大して効果的なせん断補強となる。
また、補強部材挿入孔10は、充填材30又は繊維シート31により外部と遮断されるので、補強後の耐久性の観点で劣化の抑制を期待できる。
また、地震時に発生する曲げモーメントの分布に応じてせん断補強部材20の基端部の形状を選択することにより、靱性性能を発揮する合理的な構造を構築することにより、経済的な構成に補強することが可能となる。
さらに、一般的にはボックスカルバートBの底版はせん断補強をすることができないが、ボックスカルバートB全体で安全性能が向上されるため、底版のせん断補強を必要としない。
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることは言うまでもない。
特に、前記実施形態では、本発明のせん断補強構造をボックスカルバートに適用した場合について述べたが、当該せん断補強構造の対象とするRC構造物はこれに限られず、その他の地下構造物や壁式橋脚等を使用した構造であってもよい。
つまり、例えば、既設のRC造の側壁と、この側壁に形成された補強部材挿入孔に配置された基端定着部材を有するせん断補強部材と、この補強部材挿入孔に充填される充填材と、側壁の表面とせん断補強部材の基端定着部材の表面に接着されて、一体化がなされた繊維シートからなるせん断補強構造を構築することにより、当該側壁のせん断耐力の補強と靱性性能の向上を行ってもよい。
また、補強対象である既設RC構造物は、RC造であればよく、現場打ち鉄筋コンクリート構造体や、プレキャストコンクリート構造体等その種類は問わないとともに、補強を行う部位についても限定されず、面材や版材等にも適用可能である。
また、補強部材の挿入間隔、挿入数、挿入位置等は、前記実施形態に限られず、適宜に定めることができる。
また、第2実施形態において、繊維シートをプレートヘッドに直接接着する構成について述べたが、第一基端側拡幅部に充填される充填材として、第一せん断補強鉄筋と十分な定着力を発現して、第一せん断補強鉄筋との一体化が可能な材質のものを使用すれば、繊維シートをプレートヘッドに直接接着しなくても、充填材の表面に接着することによりその効果を得ることが可能となる。
また、第2実施形態では、下側の第一領域のみに繊維シートを接着する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、上側の第一領域に繊維シートを接着したり、ボックスカルバートの内面全体に繊維シートを接着してもよい。
また、前記各実施形態では、第二せん断補強部材として、その両端に突起部が形成された部材を使用するものとしたが、第二先端拡幅部及び第二基端拡幅部の内部に充填された充填材が地震時の引張力に対して十分な定着力を有し、該充填材と第二せん断補強部材との一体化が可能であれば、第二せん断補強部材の両端に突起部が形成されていなくてもよい。
同様に、第一せん断補強部材の先端に形成された突起部も、地震時の引張力に対する充填材との定着力に応じて省略することが可能である。
また、第一せん断補強部材の基端部に形成された基端定着部材の形状は、RC構造物に作用する応力に応じて、適宜設定されることはいうまでもない。
また、前記実施形態では、第一先端定着部材と、第二先端定着部材と、第二基端定着部材とが、同一である構成としたが、各定着部材が同一である必要がないことはいうまでもない。
また、第一基端定着部材として、第一線材の10倍〜15倍の幅を有するプレート材を使用するものとしたが、第一基端定着部材の大きさは、これに限定されるものではない。
また、前記各実施形態では、補強部材挿入孔全体に繊維補強セメント系材料からなる充填材を充填する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、先端拡径部及び基端拡径部のみに高強度繊維充填材を充填し、一般部は、普通強度の充填材を充填する構成としてもよい。
また、補強部材挿入孔として有底のものとしたが、例えばボックスカルバート等の中壁の補強であれば、中壁を貫通する構成としてもよい。
また、充填材を構成する骨材及びポゾラン系反応粒子の配合は、前記実施の形態で記載したものに限定されるものではなく、骨材は、最大粒径が2.5mm以下、ポゾラン系反応粒子は、粒子径が0.01〜15μmの範囲内であればよい。
また、充填材にシリカヒュームを混合する構成としたが、ポゾラン系反応粒子は、シリカヒュームに限定されるものではない。
また、充填材は、所定の圧縮強度(200N/mm以上)、所定の曲げ引張強度(40N/mm以上)、所定の異形鉄筋との付着強度(60〜80N/mm)を発現可能であれば、例えばセメント系モルタルやエポキシ樹脂等を使用してもよく、前記実施形態のものに限定されるものではない。
第1の実施の形態に係るせん断補強構造を示す断面図である。 第一せん断補強部材を示す図であり、(a)は設置状況を示す断面図、(b)は全体を示す斜視図である。 第二せん断補強部材を示す図であり、(a)は設置状況を示す断面図、(b)は全体を示す斜視図である。 (a)〜(g)は、せん断補強部材の突起部の変形例を示す斜視図である。 地盤に埋設されたボックスカルバートの地震による変形状況を示す図であり、(a)は常時、(b)は地震時、(c)は地震時の曲げモーメント図である。 第2の実施の形態に係るせん断補強構造を示す断面図である。 第2の実施の形態に係る第一せん断補強部材の設置状況を示す断面図である。
符号の説明
1,1’ せん断補強構造
2 第一領域
3 第二領域
10 補強部材挿入孔
11 第一補強部材挿入孔
15 第二補強部材挿入孔
20 せん断補強部材
21 第一せん断補強部材
22 第一せん断補強鉄筋(第一線材)
23 プレートヘッド(第一基端定着部材)
24 突起部(第一先端定着部材)
25 第二せん断補強部材
26 第二せん断補強鉄筋(第二線材)
30 充填材
31 繊維シート
B ボックスカルバート(鉄筋コンクリート構造物)
G 地盤
PH 塑性ヒンジ

Claims (14)

  1. 既設の鉄筋コンクリート構造物と、
    前記鉄筋コンクリート構造物に形成された第一補強部材挿入孔の内部に配設される第一せん断補強部材及び第二補強部材挿入孔の内部に配設される第二せん断補強部材と、
    前記第一補強部材挿入孔及び第二補強部材挿入孔に充填される充填材と、からなるせん断補強構造であって、
    前記第一せん断補強部材は、第一線材と、前記第一線材の基端部に形成されて該第一線材の直径よりも大きな幅を有する第一基端定着部材とから構成されていることを特徴とする、せん断補強構造。
  2. 前記第一補強部材挿入孔が、前記第一線材の直径よりも大きい内径の第一標準径部と、前記第一補強部材挿入孔の基端部に形成されて、前記第一標準径部よりも大きい内径を有する第一基端拡径部と、から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のせん断補強構造。
  3. 前記第一補強部材挿入孔の先端部には、前記第一標準径部よりも大きい内径を有する第一先端拡径部が形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のせん断補強構造。
  4. 前記第二せん断補強部材は、第二線材と、前記第二線材の基端部に形成されて該第二線材の直径よりも大きな幅を有する第二基端定着部材とから構成されており、
    前記第一基端定着部材は、前記第二基端定着部材の幅よりも大きな幅を有していることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のせん断補強構造。
  5. 前記鉄筋コンクリート構造物はラーメン構造からなり、前記第一補強部材挿入孔は、前記鉄筋コンクリート構造物の隅角部に形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のせん断補強構造。
  6. 前記第一基端定着部材は、前記第一線材の直径の5倍以上、20倍以下の幅、好ましくは10倍以上、15倍以下の幅からなるプレート状の部材が、前記第一線材の基端部に固定されてなることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のせん断補強構造。
  7. 前記鉄筋コンクリート構造物の内面には、繊維シートが接着されており、前記繊維シートは、前記第一線材と一体化がなされていることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のせん断補強構造。
  8. 前記鉄筋コンクリート構造物の内面には、繊維シートが接着されており、前記繊維シートは、前記鉄筋コンクリート構造物の表面と、前記第一線材の前記第一基端定着部材の表面とに接着されて一体化がなされていることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のせん断補強構造。
  9. 既設の鉄筋コンクリート構造物と、
    この鉄筋コンクリート構造物に形成された補強部材挿入孔の内部に配設されるせん断補強部材と、
    前記補強部材挿入孔に充填される充填材と、
    前記鉄筋コンクリート構造物の表面に接着される繊維シートと、からなるせん断補強構造であって、
    前記繊維シートと前記せん断補強部材とは、一体化がなされていることを特徴とする、せん断補強構造。
  10. 前記せん断補強部材は、線材と、前記線材の基端部に形成されて該線材の直径よりも大きな幅を有する基端定着部材とから構成されており、
    前記繊維シートは、前記鉄筋コンクリート構造物の表面と、前記基端定着部材の表面と、に接着されていることを特徴とする、請求項9に記載のせん断補強構造。
  11. 既設の鉄筋コンクリート構造物に形成された補強部材挿入孔の内部に配設されるせん断補強部材であって、
    前記補強部材挿入孔の延長よりも短い長さの線材と、前記線材の直径よりも大きな幅を有し、該線材の基端部及び先端部にそれぞれ形成された基端定着部材及び先端定着部材とから構成されていることを特徴とする、せん断補強部材。
  12. 前記線材が鉄筋からなり、
    前記先端定着部材が、前記線材の先端を熱した状態で軸方向に打撃あるいはプレスすることで、前記線材の直径に対して120%乃至130%の幅に形成された突起部であって、
    前記基端定着部材が、前記線材の基端部に接合されたプレート状の部材であることを特徴とする、請求項11に記載のせん断補強部材。
  13. 前記基端定着部材が、前記線材の直径の5倍以上、20倍以下の幅、好ましくは10倍以上、15倍以下の幅からなるプレート状の部材であることを特徴とする、請求項12に記載のせん断補強部材。
  14. 前記線材が鉄筋からなり、
    前記先端定着部材および前記基端定着部材が、前記線材の先端および基端を熱した状態で軸方向に打撃あるいはプレスすることで、前記線材の直径に対して120%乃至130%の幅に形成された突起部であることを特徴とする、請求項11に記載のせん断補強部材。
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