JP4472729B2 - 補強構造 - Google Patents

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Description

本発明は、せん断力が作用する既設のコンクリート部材の補強構造に関する。
既設のコンクリート部材の中には、大きな地震力を受けた場合に、せん断破壊に至る可能性が高いものがある。特に、阪神大震災以前に設計及び施工された地下鉄、上下水道浄化施設などの各種施設において、その構造物躯体を構成する鉄筋コンクリート造のボックスカルバートや鉄筋コンクリート造の地中埋設構造物の壁やスラブ、橋梁の壁式橋脚などは、せん断補強鉄筋が配筋されていない場合が多く、レベル2地震動に対するせん断耐力の不足や曲げモーメントによる靱性性能の不足が各種の耐震診断の結果から明らかになっており、速やかに耐震補強を行う必要性が指摘されている。
そのため、このような鉄筋コンクリート構造物について、せん断破壊が生じることのないように、補強を行う場合がある。
従来、これらの鉄筋コンクリート構造物の補強方法としては、鉄筋コンクリート構造物の面に沿って鉄筋を配筋して、コンクリートを打設する増厚工法、鉄筋コンクリート構造物の周囲に鋼板を巻き立て、鉄筋コンクリート構造物と鋼板との隙間にモルタルや樹脂等の充填材を充填する鋼板巻き立て工法(例えば、特許文献1参照)、鉄筋コンクリート構造物の周囲を接着剤等を介して貼着された炭素繊維シートで覆う炭素繊維シート接着工法(例えば、特許文献2参照)等が採用されていた。
特開平10−077683号公報 特開平09−277428号公報
ところが、増厚工法は、主鉄筋が増加することから、せん断耐力が向上する一方で、曲げ耐力も増加することから、補強後においてせん断先行破壊型を曲げ先行破壊型に移行させるという要請を実現して、曲げ耐力以上にせん断耐力を増加させることが困難であった。
また、鋼板巻き立て工法は、鋼板の搬入や組み立て等に手間が係るとともに、大掛かりな揚重機械を必要とし、例えば、地下構造物内や橋梁等の限られた空間では、これらの揚重機械の制約があり、施工が困難な場合があった。
また、炭素繊維シート接着工法は、せん断耐力を向上させるためには、鉄筋コンクリート構造物の全周囲を、炭素繊維シートで囲む必要があり、壁、底版、頂版等の部材のせん断補強には不向きであった。
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、既設のコンクリート構造物の補強を行うとともに、せん断先行破壊型であったコンクリート構造物を曲げ先行破壊型に移行させることを可能とした、補強構造を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明の補強構造は、既設のコンクリート部材の表面にコンクリート新設部が増設された補強構造であって、前記コンクリート新設部に埋設された状態で定着している埋設部および前記コンクリート部材に所定の定着長を確保した状態で挿入される挿入部を有するせん断補強部材が配設されており、前記せん断補強部材の挿入部が、前記コンクリート部材の裏面側に配筋されている主筋と同等のコンクリート被りを確保した状態で該コンクリート部材に定着していて、前記せん断補強部材の埋設部が、前記コンクリート新設部の主筋と同等のコンクリート被りを確保した状態で前記コンクリート新設部に埋設されており、前記せん断補強部材は、線材と、前記線材の両端部に形成されて該線材の直径よりも大きな幅寸法を有する定着部材とからなり、面外せん断力が発生した際に、前記定着部材同士の間のコンクリートに圧縮応力場を形成させてせん断抵抗力を増大させるように構成されていることを特徴としている。
ここで、本明細書におけるコンクリート新設部は、既設のコンクリート部材の部材厚を増厚するために、このコンクリート部材に沿って増設されるコンクリート部分のほか、既設のコンクリート構造物の一部である既設のコンクリート部材に接した状態で増築される新設のコンクリート部材や新設のコンクリート構造物の一部も含むものとする。
前記せん断補強部材は、前記埋設部に形成された前記定着部材の幅寸法が、前記挿入部に形成された前記定着部材の幅寸法よりも大きいことが望ましい。
かかる補強構造は、コンクリート新設部により既設のコンクリート部材の曲げ・せん断補強を行うと同時に、コンクリート新設部にせん断補強部材が配設されていることでコンクリート新設部のせん断補強がなされている。そのため、せん断力が作用した場合に発生する斜め引張り応力に対して、せん断補強部材とコンクリート新設部と既設のコンクリート部材とが一体となって抵抗する。従って、既設のコンクリート部材のせん断耐力を向上させ、曲げ耐力よりもせん断耐力を増強させることが可能となり、曲げ先行破壊型に移行させることが可能となる。
また、前記せん断補強部材の埋設部が、前記コンクリート新設部の主筋と同等のコンクリート被りを確保した状態で前記コンクリート新設部に埋設されているため、せん断補強部材の劣化が防止される。
また、前記せん断補強部材の挿入部が、前記既設コンクリート部材の裏面側に配筋されている主筋と同等のコンクリート被りを確保した状態で該既設コンクリート部材に挿入されているため、既設のコンクリート部材のせん断耐力をさらに増加させることが可能なため、好適である。つまり、既設のコンクリート部材のせん断耐力がせん断補強部材により補強されることで、新設部に要求されるせん断耐力を低減させることが可能となり、新設部の厚さや鉄筋量を低減させることが可能となる。
また、前記せん断補強部材が、線材と、前記線材の両端部に形成されて該線材の直径よりも大きな幅寸法を有する定着部材とから構成されているため、当該せん断補強部材の定着効果を高めることができるとともに、せん断補強鉄筋の引張抵抗と定着部材の内側のコンクリートに発生する圧縮応力により、より効果的にせん断耐力の向上と靱性性能の向上を図ることができる。ここで、線材は異形鉄筋や丸鋼鉄筋に限定されるものではなく、炭素線材、鋼棒、PC鋼より線等、あらゆる線材が適用可能である。
なお、前記定着部材は、プレート状の部材であってもいいし、ナットであってもよい。また、前記線材が鉄筋からなり、前記定着部材が、前記線材の端部を熱した状態で軸方向に打撃あるいはプレスすることで、前記線材の直径に対して120%乃至130%の幅に形成された突起部であってもよい。
ここで、本発明の補強構造による補強の対象となるコンクリート部材は、補強が必要な既設である各種のコンクリート部材に適用可能である。また、当該コンクリート部材は現場打ちされたものでもよいし、工場などにおいてプレキャストされたものでもよい。
本発明の補強構造によれば、せん断先行破壊型を曲げ先行破壊型に移行させることを可能とした、コンクリート新設部の増設による既設構造物の補強を行うことが可能となった。
本発明の補強構造の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態に係る補強構造1は、図1に示すように、既設のコンクリート部材(以下、単に「既設部材」という場合がある)10の表面にコンクリート新設部(以下、「増し厚部」という場合がある)20を増設することにより既設部材10の曲げ・せん断強度を増加させるものである。この増し厚部20は、図1に示すように、鉄筋コンクリートにより構成されており、増し厚部20と既設部材10との間に跨って配設されたせん断補強部材30を備えている。
既設部材10は、図1に示すように、所定の間隔により縦筋(主鉄筋)R1,R2および横筋(主鉄筋)R3,R4が配筋された鉄筋コンクリート造の部材である。なお、第1の実施の形態では、既設の鉄筋コンクリート構造物の側壁(既設部材10)を補強する場合について説明するが、補強を行う既設の鉄筋コンクリート構造物の構造体(既設部材10)は側壁等の面材に限定されるものではなく、例えば床版(底版)、天井版(頂版)、梁、柱等であってもよい。また、第1の実施の形態では、既設部材10として、鉄筋コンクリート部材を補強する場合について説明したが、既設部材10は無筋コンクリート部材であってもよく、その形式は限定されるものではない。
増し厚部20は、図3に示すように、既設部材10の表面に、所定の厚みにより増築された鉄筋コンクリート部分であって、既設部材10の表面から所定の間隔をあけて配筋された縦筋(主鉄筋)R5および横筋(主鉄筋)R6とせん断補強部材30とが内部に配設されている。
増し厚部20に配筋された縦筋R5および横筋R6は、図1に示すように、表面(既設部材10との当接面と反対側の面)から所定のコンクリート被りを確保することが可能な位置に配筋されている。
第1の実施の形態では、図1に示すように、増し厚部20の縦筋R5および横筋R6の配筋ピッチを、既設部材10に配筋された縦筋R1,R2および横筋R3,4の配筋ピッチと同等程度とする。なお、増し厚部20の厚みおよび縦筋R5および横筋R6の配筋ピッチ等は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
図1に示すように、せん断補強部材30は、先端側(挿入部)が既設部材10に挿入されて、基端側(埋設部)が増し厚部20に埋設されるように、既設部材10と増し厚部20とに跨って配設されている。
また、せん断補強部材30は、図2に示すように、既設部材10の施工時の配筋図や非破壊試験の情報をもとに、横間隔は縦筋R1,R2と、縦間隔は横筋R3,R4と同間隔で両鉄筋の略中央に形成されている。
増し厚部20に配設されたせん断補強部材30は、基端(埋設部の先端)が増し厚部20に配筋された縦筋R5の近傍に、先端(挿入部の先端)は既設部材10の増し厚部20と反対側に配筋された縦筋R2の近傍となるように配置されている。つまり、せん断補強部材30は、埋設部および挿入部が、それぞれ増し厚部20に配筋された主鉄筋および既設部材10に配筋された主鉄筋と同程度のコンクリート被りを確保した状態で配置されている。
せん断補強部材30は、図4に示すように、異形鉄筋からなるせん断補強鉄筋(線材)31と、前記せん断補強鉄筋31の先端部及び基端部にそれぞれ設けられている、当該せん断補強鉄筋31より断面形状が大きい先端定着部材32及び基端定着部材33(定着部材)と、から構成されている。ここで、せん断補強鉄筋31として異形鉄筋を使用するものとしたが、線材31は、異形鉄筋に限定されるものではなく、線状の補強材料としての機能を発揮するものであれば、例えばネジ鉄筋、鋼棒、PC鋼より線、炭素線材等を使用してもよい。
第1の実施の形態に係る先端定着部材32は、ネジ加工が施されたせん断補強鉄筋31の先端部にねじ込まれたナットにより構成されている。なお、先端定着部材32は、がたつきを取り除くために、ダブルナットとしてもいいし、ナットとせん断補強鉄筋31との隙間に、エポキシ樹脂等の充填材を注入してもよい。
なお、先端定着部材32の形状寸法は限定されるものではないが、厚さ(せん断補強鉄筋31の軸方向に対する長さ)がせん断補強鉄筋の直径の40%〜250%、幅(外径)がせん断補強鉄筋の直径の120%〜200%であれば好適である。
第1の実施の形態に係る基端定着部材33は、四角形状の鋼製プレートをせん断補強鉄筋31の基端に一体に固定することにより構成されている。基端定着部材23のせん断補強鉄筋31への固定は、摩擦圧接機械を用いて、固定したせん断補強鉄筋31に回転させた鋼製プレートを押し付けることにより、回転する鋼製プレートに所定の圧力で摩擦熱を発生させて、鋼製プレートをせん断補強鉄筋21に溶着(摩擦圧接A)させることにより簡易に行うことができる。
なお、基端定着部材33を構成する構成プレートの形状寸法は限定されるものではないが、厚さがせん断補強鉄筋31の直径の40%〜80%、幅がせん断補強鉄筋31の直径の150%〜300%であれば好適である。
ここで、基端定着部材33とせん断補強鉄筋31との接合方法は、摩擦圧接Aに限定されるものではなく、ガス圧接接合、アーク溶接接合や、ナット等を利用した螺合による方法等、一体化が可能な方法であればよい。また、基端定着部材33の形状は、四角形に限定されるものではなく、円形、楕円形、他の多角形等でもよい。
第1の実施の形態では、先端定着部材32および基端定着部材33としてそれぞれナットおよび鋼製プレートを使用するものとしたが、例えば、先端定着部材32および着端定着部材33の両方をナットまたは鋼製プレートにより構成してもよく、先端定着部材32および着端定着部材33の組み合わせは、適宜選択することが可能である。
また、先端定着部材32または基端定着部材33の構成は、前記のものに限定されるものではなく、例えば、せん断補強鉄筋31の先端を熱した状態で軸方向に打撃あるいはプレスすることで、せん断補強鉄筋31の鉄筋径の120%〜130%の幅に形成された突部を形成してもよい。
次に、図面(特に図5)を参照して第1の実施の形態に係る側壁20の補強方法について説明する。
第1の実施の形態に係る補強方法は、
(1)既設部材10の表面側から裏面側に向けて、補強部材挿入孔11を形成する穿孔工程と、
(2)補強部材挿入孔11に充填材40を注入する注入工程と、
(3)せん断補強部材20を、既設部材10の表面側から補強部材挿入孔11に挿入する挿入工程と、
(4)増し厚部20の縦筋R5および横筋R6を配筋する配筋工程と、
(5)増し厚部20のコンクリートを打設する増し打ち工程と、から構成されている。
(1)穿孔工程
穿孔工程は、図5(a)に示すように、既設部材10に、この既設部材10の施工時の配筋図や非破壊試験の情報をもとに、縦筋R1,R2及び横筋R3,R4に損傷を与えることの無いように、横間隔は縦筋R1,R2と、縦間隔は横筋R3,R4と同間隔で両鉄筋の中央に補強部材挿入孔11を穿孔する工程である。
補強部材挿入孔11の穿孔は、既設部材10の表面側から裏面側方向であって側壁W面に略垂直な方向に、インパクト・ドリルやロータリーハンマ・ドリル、コア・ドリルなどの穿孔手段50を用いて、裏面側の縦筋R2に近い深さまで行なう。
補強部材挿入孔11の穿孔が終了したら、孔内に堆積した穿孔に伴い発生したコンクリート粉を除去する。
(2)注入工程
注入工程は、図5(b)に示すように、穿孔工程において既設部材10に形成された補強部材挿入孔11に、補強部材挿入孔11の壁面とせん断補強部材30との一体化を行う充填材40を注入する工程である。
充填材40の補強部材挿入孔11への注入は、補強部材挿入孔11に空気が滞留することがないように、圧入機械Mに接続された注入管等M1を介して圧入することにより、補強部材挿入孔11の孔底(裏面側の先端)から行うものとする。この時、注入される充填材40の量は、少なくともせん断補強部材30を補強部材挿入孔11に挿入した状態で、せん断補強部材30と補強部材挿入孔11との隙間が充填材40により完全に充填される量とする。
なお、第1の実施の形態では、接着剤30としてセメント系モルタルを使用するが、充填材40を構成する材料は、せん断補強部材30とコンクリート製の既設部材10及び増し厚部20とを強固に一体とさせることが可能な公知の材料から適宜採用すればよく、例えば、エポキシ樹脂やセメント系ミルクも好適に用いることが可能である。
(3)挿入工程
挿入工程は、図5(c)に示すように、注入工程において充填材40が注入された補強部材挿入孔11に、充填材40が硬化する前に、せん断補強部材30を挿入する工程である。
せん断補強部材30の補強部材挿入孔11への挿入は、先端定着部材32側から挿入することにより、先端定着部材32(せん断補強部材30の先端)が補強部材挿入孔11の底面に当接するまで行う。
せん断補強部材30は、補強部材挿入孔11の深さ(長さ)よりも長いため、補強部材挿入孔11に挿入された状態で、せん断補強部材30の基端側が、既設部材10の表面から所定長突出する(図5(d)参照)。
なお、注入工程と挿入工程とを逆にして、補強部材挿入孔11へせん断補強部材30を挿入してから、充填材40を補強部材挿入孔11とせん断補強部材30との隙間に注入してもよい。この場合において、充填材40の注入は、チューブ等を介して、隙間に完全に充填されるように行なう。
(4)配筋工程
配筋工程は、図5(d)に示すように、増し厚部20に配筋される鉄筋(縦筋R5および横筋R6)を組み立てる工程である。第1の実施の形態では、既設部材10から所定長間隔をあけた位置であって、せん断補強部材30の基端定着部材33の近傍に組み立てるものとし、既設部材10の配筋ピッチと同ピッチで行う。
なお、配筋工程は、必ずしも挿入工程の後である必要はなく、例えば、穿孔工程の前や、注入工程の前に行ってもよく、施工順序は適宜設定することが可能である。
(5)増し打ち工程
増し打ち工程は、配筋工程において配設された鉄筋の外側(既設コンクリート部材と反対側)に図示しない型枠を設置した後、コンクリートを打設して、増し厚部20を構築する工程である(図5(e)参照)。
この時、型枠は、例えばスペーサを配置するなどして、縦筋R5,横筋R6および基端定着部材33が、必要となるコンクリート被りを確保することが可能な位置に配置する。
以上、第1の実施の形態に係る補強構造1によれば、既設部材10に対して、増し厚部20により曲げ・せん断補強を行うとともに、せん断補強部材30によりせん断耐力を増強させるため、曲げ耐力よりもせん断耐力を増強させることが可能となり、曲げ先行破壊型に既設部材10を移行させることが可能となる。
また、せん断補強部材30により既設部材10のせん断補強がなされていることで、増し厚部の厚みの削減や鉄筋量の削減が可能となる。
また、増し厚部20と既設部材10は、この増し厚部20と既設部材10とに跨って配設されたせん断補強部材30により一体に固定されているため、増し厚部20の分、構造部材の断面積が大きくなることで、既設部材10の強度が増す。
また、せん断補強部材30には、両端にそれぞれ先端定着部材32および基端定着部材33が一体に固定されているため、充分な定着効果が発揮されるとともに、面外せん断力が発生するとせん断補強鉄筋31に引張力が作用するために、先端定着部材32と基端定着部材33との間に支圧力が働き、先端定着部材32と基端定着部材33の間のコンクリートには圧縮応力場が形成されるため、せん断に対して内部コンクリート自身のせん断抵抗力が増大して効果的なせん断補強となる。
なお、前記実施形態に係る補強構造1は、図1に示すように、増し厚部20を単鉄筋構造としたが、図6(a)に示す補強構造1aのように、複鉄筋構造としてもよい。
また、図6(b)に示す補強構造1bのように、増し厚部20を複鉄筋構造とした際に、必要に応じて、両端がフック状に形成された第二のせん断補強部材R7を配置して、増し厚部20のせん断耐力の増加を図ってもよい。
また、図6(c)に示す補強構造1cのように、両端がフック状に形成された第二のせん断補強部材R7に代えて、一端にフック、他端に定着部材を備えた第二のせん断補強部材R8を配置して、増し厚部20のせん断耐力の増加を図ってもよい。
また、図1に示すように、第1の実施の形態では、せん断補強部材30を、先端定着部材32が縦筋R2よりも表面側(増し厚部20側)となるように配置しているが、先端定着部材32の位置はこれに限定されるものではなく、縦筋R2または横筋R4と同じコンクリート被りとなる位置まで挿入してもよいことはいうまでもない。
また、第1の実施の形態では、せん断補強部材30の基端定着部材33を、縦筋R5よりも増し厚部20の表面側(既設部材20と反対側)に配置しているが、基端定着部材33の位置は、増し厚部20のせん断耐力を増強させるために必要な長さを確保することができれば、これに限定されるものではない。
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態に係る補強構造2は、図7および図8に示すように、縦筋R5および横筋R6を、せん断補強部材30に係止させた状態で配筋されている点で、第1の実施の形態で示した補強構造1と異なっている。
つまり、第2の実施の形態に係る補強構造2は、配筋工程において、増し厚部10に配筋される横筋R6を、挿入工程において既設部材10に突設されたせん断補強鉄筋31に上載するとともに、縦筋R5をこのせん断補強鉄筋31に沿って立設させた状態で、縦筋R5と横筋R6とせん断補強鉄筋31とを結束する。
このため、縦筋R5および横筋R6の組立ては、配筋ピッチ等を考慮することなく、せん断補強部材30に係止させることで完了するため、配筋工程における作業の効率化を図ることが可能となり、作業性に優れている。この時、縦筋R5および横筋R6は、せん断補強鉄筋31と基端定着部材33とにより形成された角部に配置されていれば、配筋時の位置決めがさらに容易となる。
なお、横筋R6は、必ずしもせん断補強部材30に上載されている必要はなく、せん断補強部材30の下側に沿って配置されていてもよい。
この他の第2の実施の形態に係る補強構造2および補強方法に関する構成および作用効果は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
参考形態1
参考形態1に係る補強構造3は、図9に示すように、せん断補強部材30’が、既設部材10の裏面側の縦筋R2の近傍まで挿入されていない点で、第1の実施の形態に係る補強構造1と異なっている。
参考形態1に係る補強構造3は、せん断補強部材30’が、せん断補強部材30’の定着に必要な長さだけ、既設構造物10に挿入されている。
かかる構成により、せん断補強部材30’を介して既設部材10と増し厚部20との一体化が行われるとともに、せん断補強部材30’による増し厚部20のせん断耐力の増強が行われるため、既設部材のせん断補強を効果的に行うことが可能となる。
なお、補強構造3では、両端にそれぞれ先端定着部材32’および着端定着部材33’を備えたせん断補強部材30’を使用しているため、通常のアンカーよりも定着長を短くすることを可能としている。
この他の参考形態1に係る補強構造3および補強方法に関する構成は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
なお、参考形態1では、せん断補強部材30’が、既設部材10の中間付近まで挿入されるものとしているが、せん断補強部材30’の挿入長が限定されないことはいうまでもない。
参考形態2
参考形態2に係る補強構造4は、矩形断面の既設部材10’の四側面(外周囲)を増し厚部20’により覆う点で、既設部材10の表面側に増し厚部20を構築する第1の実施の形態に係る補強構造1と異なっている。
補強構造4では、せん断補強部材30’の先端側が、その定着に必要な分だけ、既設部材10’に挿入されることで、互いに緩衝しないように構成されている。なお、せん断補強部材30’は、既設部材10’を貫通した状態で配置されていてもよいし、互いに緩衝することがないように、既設部材10’を挟んで対向するように配置されたせん断補強部材30’の高さ方向や横方向でずらして配置してもよい。
この他の参考形態2に係る補強構造4および補強方法に関する構成は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
補強構造4によれば、既設部材10の四側面を増し厚部20で覆うことで、部材の断面積を大きくして、強度を増加させることが可能となる。また、補強構造4は、増し厚部20にせん断補強部材30’が配設されているため、せん断耐力が増強されており、曲げ先行破壊型に構成されている。
この他の参考形態2に係る補強構造4および補強方法に関する作用効果は、第3の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、補強対象である既設のコンクリート部材は、鉄筋コンクリート造であればよく、現場打ち鉄筋コンクリート部材や、プレキャストコンクリート部材等その種類は問わないとともに、補強を行う部位についても限定されず、面材や版材等にも適用可能である。
また、せん断補強部材30の挿入間隔、挿入数、挿入位置等は、前記実施形態に限られず、適宜に定めることができる。
また、せん断補強部材に形成された定着部材(先端定着部材および基端定着部材)の形状は、補強対象である既設部材に作用する応力に応じて、適宜設定されることはいうまでもない。
また、定着部材の形状寸法は、前記のものに限定されるものではない。
前記各実施形態では、増し厚部の縦筋および横筋の配筋を、既設部材の縦筋および横筋に対応して行うものとしたが、増し厚部の配筋は、これに限定されるものではなく、増し厚部の形状寸法や想定される作用応力等に応じて適宜設定することが可能である。
また、前記各実施形態では、せん断補強部材について、同形状のものを所定の間隔により複数配置するものとしたが、既設部材の形状や想定される作用応力の大きさや方向等に応じて、例えば、異なる形状のせん断補強部材を配置したり、せん断補強部材同士の間隔を変化させたりしてもよく、状況に応じて適宜変更することが可能である。
また、前記各実施形態では、既設部材を増厚工法によりせん断補強を行う場合について、本発明の補強構造を適用する場合について説明したが、当該補強構造は、既設のコンクリート構造物に新設のコンクリート構造物を増設(増築)する場合にも適用可能である。例えば、既設のボックスカルバートと接した状態で新設のボックスカルバートを増築する場合に、新設のボックスカルバートの既設のボックスカルバート(既設部材)側の側壁を増し厚部として、本発明の補強構造を構成するように構築してもよい。これにより、新設のコンクリート構造物を増築するとともに、既設のコンクリート部材の曲げ・せん断補強を行うことが可能となる。なお、増設(増築)の対象となる既設のコンクリート構造物および新設のコンクリート構造物の構成等は限定されないことはいうまでもない。
第1の実施の形態に係る補強構造を示す断面図である。 図1に示す補強構造について鉄筋とせん断補強部材との位置関係を示す既設部材の裏面側から臨む立面図である。 図1に示す補強構造を示す斜視図である。 図1に示す補強構造のせん断補強部材を示す斜視図である。 (a)〜(e)は、第1の実施の形態に係る補強方法の手順を示す断面図である。 (a)〜(c)は、図1に示す補強構造の変形例を示す断面図である。 第2の実施の形態に係る補強構造を示す断面図である。 図7に示す補強構造について鉄筋とせん断補強部材との位置関係を示す増し厚部の表面側から臨む立面図である。 参考形態1に係る補強構造を示す断面図である。 参考形態2に係る補強構造を示す平断面図である。
符号の説明
1,2,3,4 補強構造
10 既設部材(既設コンクリート部材)
20 増し厚部(コンクリート新設部)
30 せん断補強部材
31 せん断補強鉄筋(線材)
32 先端定着部材(定着部材)
33 基端定着部材(定着部材)

Claims (2)

  1. 既設のコンクリート部材の表面にコンクリート新設部が増設された補強構造であって、
    前記コンクリート新設部に埋設された状態で定着している埋設部および前記コンクリート部材に所定の定着長を確保した状態で挿入される挿入部を有するせん断補強部材が配設されており、
    前記せん断補強部材の挿入部が、前記コンクリート部材の裏面側に配筋されている主筋と同等のコンクリート被りを確保した状態で該コンクリート部材に定着していて、
    前記せん断補強部材の埋設部が、前記コンクリート新設部の主筋と同等のコンクリート被りを確保した状態で前記コンクリート新設部に埋設されており、
    前記せん断補強部材は、線材と、前記線材の両端部に形成されて該線材の直径よりも大きな幅寸法を有する定着部材とからなり、面外せん断力が発生した際に、前記定着部材同士の間のコンクリートに圧縮応力場を形成させてせん断抵抗力を増大させるように構成されていることを特徴とする、補強構造。
  2. 前記せん断補強部材は、前記埋設部に形成された前記定着部材の幅寸法が、前記挿入部に形成された前記定着部材の幅寸法よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の補強構造。
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