JP3578210B2 - 地下壁構造 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、地下階を有する構造物の建造に用いられる山留め壁のH形鋼や鋼矢板等の仮設の鋼製の山留め壁杭材と、鉄筋コンクリート造の外壁体とを連結し、山留め壁杭材を土圧および水圧が作用する地下外壁の補強に利用する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
掘削した地中に、耐久構造物である鉄筋コンクリート製の外壁体を構築するのに先立ち、周りの地盤が崩れないように押さえる目的で、山留め壁が構築される。山留め壁には、親杭横矢板壁、鋼矢板壁あるいはソイルセメント壁等がある。
【0003】
これら山留め壁は、地下工事期間中の仮設構造物として用いられ、使用後はそのまま地中に放置されるのが一般的である。この場合には、仮設の山留め壁とその後に施工される本設の鉄筋コンクリート造の外壁体とは、別個独立の壁体として地中に配されることになるため、鉄筋コンクリート造の外壁体は、山留め壁が存在しないものとして、該外壁体のみで全土圧および全水圧を支持することができるように設計されなければならない。
【0004】
一方、図11に示されるように、地下の掘削によって露出させた山留め壁杭材30の表面に、高さ方向の全域にわたって頭付きスタッド等の接合部材31を溶接した後に、鉄筋コンクリート造の外壁体32を山留め壁杭材30の露出表面に密着させるように施工することにより、接合部材31を外壁体32の内部に埋設させ、山留め壁杭材30を鉄筋コンクリート造の外壁体32と一体化させた合成壁として地下外壁33を構成する方法がある。この場合には、山留め壁杭材30により地下外壁33の強度が向上されるという力学的な合成効果が発揮される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記地下外壁33は、各階の床スラブ34,35の高さにおいて水平方向に支持され、かつ、水平方向に加わる土圧や水圧などの水平力により発生する曲げモーメントが支配する曲げ材として機能する。このため、上記のように山留め壁杭材30と鉄筋コンクリート造の外壁体32とを合成壁として構築し、その力学的な合成効果を発揮させるためには、両者の接触面に垂直方向に発生するせん断力に耐えて、山留め壁杭材30と外壁体32とを一体的に保持するように、せん断ずれ止めとして機能するのに十分な数のスタッド等の接合部材31を階高の全長にわたって設ける必要があった。
【0006】
したがって、この場合には、夥しい数の接合部材31が必要となり、その接合部材31を山留め壁杭材30に溶接する溶接作業にも、莫大な作業工数が必要となるという不都合がある。
【0007】
また、実際に作用する外力に対して接合部材31の数が不足する不完全合成壁となる場合には、せん断力によって接合部材31が破断する可能性がある。
さらに、合成壁を構築する場合には、山留め壁杭材30および鉄筋コンクリート造の外壁体32に作用する水平力による荷重の分担割合が、山留め壁の種類と仕様、接合の程度、地盤条件および時間経過等によって異なるために容易に設定できず、設計が困難であるという問題もある。
【0008】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、多量の接合部材を使用することなく、山留め壁杭材を鉄筋コンクリート造の外壁体の補強材として有効に機能させることができる地下壁構造を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提案している。
〔請求項1に係る発明〕 山留め壁を構成する鋼製杭部材と、鋼製杭部材に隣接して施工される本設の鉄筋コンクリート造の壁体とを、所定の階高の中間域のみにおいて、縦方向に部分的に設けた連結部材により、横方向に連結し、
鋼製杭部材を仮設の山留め壁杭材として使用すると共に、鉄筋コンクリート造の壁体に対する本設の補強材として利用し、
鉄筋コンクリート造の壁体は、上下階の床スラブ、梁などの横架材の間に水平変形の可撓域である内法階高を形成し、
所定の階高の中間域は、連結部材をせん断力による破断を生じること無く設けることができる縦方向の範囲であって、横架材の上面から内法階高の略25%〜75%の範囲であり、
連結部材を、その材軸方向に引っ張り力を受ける引っ張り構造部材として形成した地下壁構造である。
【0010】
〔請求項2に係る発明〕 前記連結部材が、一端を鋼製杭部材に固定され、他端を鉄筋コンクリート造の壁体に定着した頭付きスタッドである請求項1に記載の地下壁構造である。
【0011】
〔請求項3に係る発明〕 前記連結部材が、鋼製杭部材に固定した鉄筋、鋼製部材などの引張構造部材からなるとともに、所定の定着長さが鉄筋コンクリート造の壁体に埋め込まれている請求項1または請求項2のいずれかに記載の地下壁構造である。
【0012】
〔請求項4に係る発明〕 前記鋼製杭部材に雌ねじ部が設けられ、連結部材に雌ねじ部に締結される雄ねじ部が設けられている請求項3記載の地下壁構造である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る地下壁構造の一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
本実施形態の地下壁構造1は、図1および図2に示されるように、山留め壁杭材として地下に設置された仮設の鋼製杭部材2と、該鋼製杭部材2に隣接する後打ち躯体3として施工される本設の鉄筋コンクリート造の外壁体4,5とを、所定の階高の中間域6,7のみにおいて、連結部材8により横方向に連結したものである。
【0014】
本実施形態では、山留め壁がソイルセメント柱列壁である場合について説明する。したがって、山留め壁杭材である鋼製杭部材2は、ソイルセメント9内に埋設されている形鋼、例えば、H形鋼である。
なお、山留め壁としては、ソイルセメント柱列壁の他、親杭横矢板壁、鋼矢板壁等を採用することができ、それぞれの場合に鋼製杭部材2は、親杭となるH形鋼や鋼矢板である。
【0015】
前記後打ち躯体3は、例えば、地盤に打ち込まれる杭10と、該杭10上に形成される基礎スラブ11および基礎梁12からなる基礎13とを具備するとともに、該基礎13の上方に、各階ごとに形成される床スラブ14,15,16、外壁体4,5および梁17,18を具備している。この後打ち躯体3は、工事中の仮設構造物である山留め壁とは異なり、比較的長期間にわたって地下構造体として耐久的に使用される本設の耐久構造物となる。
【0016】
前記連結部材8は、図に示す例では、頭付きスタッド8である。頭付きスタッド8は、鋼製杭部材2と鉄筋コンクリート造の外壁体4,5とを連結したときに、土圧、水圧などの水平力によって頭付きスタッド8自体に加わる水平方向の引張力に十分に耐え得る強度および寸法並びに本数を有し、かつ、そのような引張力によっても鉄筋コンクリート造の外壁体4,5が破壊せずに鋼製杭部材2との連結状態を維持するのに十分な埋込深さTLおよび頭部径寸法を有している。
なお、連結部材8としては、頭付きスタッドに代えて、鉄筋、鋼製部材などの任意の引張構造部材を採用してもよい。
【0017】
前記階高の中間域6,7とは、各階高H1,H2の高さ方向の中央近傍の領域を意味している。さらに具体的には、図2に示されるように、地下1階部分を例に挙げて説明すると、各階高H1から床スラブ15,16や梁17,18などの横架材の断面高さGDを差し引いた内法階高h01の中央高さから上下に均等にh01/4ずつ割り振った領域6、言い換えると、下階の床スラブ15の上面位置を基準として、その上方の内法階高h01の25%〜75%の範囲をいうものとする。このような階高の中間域6,7に連結部材8を設置した理由については後述する。
【0018】
また、図9に示されるように、特定の階の床スラブが存在しない吹抜け構造の場合には、吹抜けの上下に配される床スラブ14,16間の高さ(H1+H2)を、便宜上、階高と考え、この階高から上階の梁17等の横架材の断面高さGDを差し引いたものを、便宜上、内法階高h12と考えるものとする。この場合には、階高の中間域は、下階の床スラブ14上面から上方の内法階高h12の25%〜75%の範囲を言うものとする。
【0019】
このような地下壁構造1は、次のようにして構築される。
まず第1に、山留め壁を構築する。山留め壁は、多軸オーガーでセメントミルクと地山を攪拌しながら削孔し、鋼製杭部材2を挿入して硬化させる、従来のソイルセメント工法によって構築することができる。鋼製杭部材2は、図1に示されるように、後打ち躯体3の深さを超える十分な深さまで挿入される。また、鋼製杭部材2は、図3に示されるように、水平方向に所定のピッチP1をおいて設けられる。
【0020】
次に、山留め壁の内側の地盤を掘削して鋼製杭部材2の一表面を露出させる。
そして、露出させた鋼製杭部材2の表面の所定の位置、すなわち、上述した各階高の中間域6,7に相当する位置に、連結部材8を取り付ける。連結部材8の取り付けは、図4に示されるように、従来と同様にして、先端を鋼製杭部材2の露出面2aに溶接によることとしてもよいが、図5に示されるように、鋼製杭部材2の一側面に、予め貫通孔19を設けるとともに、該貫通孔19の裏側に袋ナット20を取り付けておき、雄ねじ部8aを有するボルト状の頭付きスタッド8を袋ナット20に締結することとしてもよい。この場合には、鋼製杭部材2のソイルセメント7内への挿入に際して、袋ナット20内にソイルセメント7が浸入しないように、貫通孔19をテープ等の閉塞部材(図示略)で閉鎖しておけばよい。
【0021】
最後に、後打ち躯体3を構築する。まず、地盤に固定するための杭10を打ち、該杭10の上に基礎スラブ11および基礎梁12からなる基礎13を構築し、該基礎13の上に、各階ごとに、床スラブ14,15,16、外壁体4,5および梁17,18からなる鉄筋コンクリート造の構造物を構築していく。
【0022】
鉄筋コンクリート造の外壁体4,5は、掘削により露出した山留め壁に隣接するように、一定の壁厚Wdで構築される。特に、外壁体4,5を鋼製杭部材2に隣接するように構築することにより、該鋼製杭部材2の表面に突出状態に取り付けた連結部材8を、所定の長さTLにわたって外壁体4,5内部に埋設して定着させることができ、これにより、連結部材8の位置で、鋼製杭部材2と鉄筋コンクリート造の外壁体4,5とを横方向に連結することができる。
【0023】
(構造的特徴)
このようにして構成された本実施形態に係る地下壁構造1の構造的特徴について、以下に説明する。
本実施形態の地下壁構造1は、仮設の鋼製杭部材2と本設の鉄筋コンクリート製の外壁体4,5とを頭付きスタッド8によって連結したものであるが、合成壁を構成する従来の地下壁構造とは明確に相違している。
【0024】
従来の地下壁構造は、階高の全長にわたって多数設置した頭付きスタッドを鉄筋コンクリート造の外壁体に埋設させることによって、仮設の鋼製杭部材と本設の鉄筋コンクリート造の外壁体とを完全に一体化させて1つの壁体として構成するものであったのに対し、本実施形態の地下壁構造1は、仮設の鋼製杭部材2と本設の鉄筋コンクリート造の外壁体4,5とは一体化されるものではない。
【0025】
これを図示すると図6のとおりである。図6は、任意の1階分の鋼製杭部材2と外壁体4およびこれらを連結する頭付きスタッド8を模式的に示したものである。この図6においては、床スラブの厚みは考慮しないものとし、梁などの他の横架材もないものと仮定している。
【0026】
各階床スラブ位置P,Qにおいて水平方向に支持された外壁体4には、上下階の床スラブ位置P,Qの間に形成された階高の範囲内で水平変形の可撓域21が形成される。また、外壁体4と鋼製杭部材2とを連結する連結部材8は、外壁体4および鋼製杭部材2と、それぞれピン接合されているものと仮定することができる。このため、外壁体4は、床スラブ位置P,Qにおける支持方向とは反対の方向から作用する土圧および水圧などの水平力Fによって水平方向に変形させられるが、連結部材8によって外壁体4に連結されている鋼製杭部材2にも略同一の水平方向の変形が生ずる。
【0027】
本実施形態の地下壁構造1では、本設の鉄筋コンクリート造の外壁体4は、仮設の鋼製杭部材2と一体化されるのではなく、連結部材8を引張構造部材として機能させることにより、該連結部材8による連結位置において、仮設の鋼製杭部材2と協働化させられている。
ここで、協働化とは、別個の構造物を一体化することなく連結して、一定の外力に対して同一の挙動をさせることを意味するものとする。
【0028】
図7は、このことを、さらに視覚的に明確に示した図である。鉄筋コンクリート造の外壁体4は、水平力Fを受ける一方、上下の床スラブ15,16で水平方向に支持されることにより圧縮力Cを加えられる。したがって、床スラブ15,16間の外壁体4は可撓域21を構成し、水平力Fによって水平方向に変形させられる結果、連結部材8の位置で、該連結部材8を介して引張力Tが鋼製杭部材2に伝達され、該鋼製杭部材2にも連結部材8の位置で外壁体4と同一の水平方向の変形を生ずることになる。
なお、図7では、明確のために、鋼製杭部材2のピッチP1を図3に示したものよりも大きくしている。
【0029】
次に、本実施形態に係る地下壁構造1の構造的特徴がもたらす効果について説明する。
図8は、図1に示した本実施形態に係る地下壁構造1の応力算定モデルを示す概念図である。ここでは、仮設の鋼製杭部材2および本設の鉄筋コンクリート造の外壁体4,5を、それぞれ、基礎スラブ11および各階床スラブ14,15,16の位置において支持された曲げ材と仮定し、かつ、鋼製杭部材2の受圧面積が十分に小さく、設置ピッチP1が十分に大きいものとして、土圧や水圧等の水平力Fは外壁体4,5のみに作用するものと仮定している。
【0030】
鋼製杭部材2と外壁体4,5とを連結する連結部材8は、鋼製杭部材2と外壁体4,5との間で横方向の引張力T1,T2を伝達する引張構造部材であるため、結果として、一定の剛性k1,k2を有するバネ要素と仮定している。
また、土圧、水圧などの水平力Fは、地表からの深さに比例する分布荷重としている。
【0031】
水平力Fが外壁体4,5に作用すると、外壁体4,5に垂直方向の曲げモーメントが発生し、各スラブ11,14,15,16の位置に固定された支持点P,Q,R,Sを基準として水平方向に一定の変形を生ずる。外壁体4,5は連結部材8を介して鋼製杭部材2に連結されているので、外壁体4,5に生じた変形により、連結部材8に引張力が生じ、該引張力によって、鋼製杭部材2の連結箇所に、外壁体4,5と略同一の変形が生じる。
【0032】
このように応力算定モデルを仮定すると、鋼製杭部材2および外壁体4,5に発生する曲げモーメントおよび上下方向に発生するせん断力の分布は、図9に実線で示されるとおりとなる。図中(a)は鋼製杭部材2の曲げモーメント、(b)は外壁体4,5の曲げモーメント、(c)は鋼製杭部材2のせん断力、(d)は外壁体4,5のせん断力をそれぞれ示している。図9(b),(d)において、破線で示される曲げモーメントおよびせん断力は、鋼製杭部材2と外壁体4,5とを連結しない場合に外壁体4,5に生ずる曲げモーメントおよびせん断力をそれぞれ示している。
【0033】
この図9の(d)を見ると、破線で示された連結部材6を設けない場合の外壁体4,5に発生する上下方向のせん断力は、外壁体4,5の各階高の中央においてゼロとなっている。すなわち、階高の中央位置は、その位置を境界として、その上下のせん断力の方向が切り換わる位置である。したがって、この位置に連結部材8を配置しても、該連結部材8に作用するせん断力は僅かであると考えられる。
【0034】
また、階高の中央位置に限られず、その近傍の一定範囲、すなわち、上記において定義した階高の中間域6,7においては、鉄筋コンクリート造の外壁体4,5に発生する上下方向のせん断力は十分に小さい絶対値を有している。したがって、この範囲に連結部材8を配置しても、該連結部材8に作用するせん断力は十分に小さく、連結部材8が破断することはない。
【0035】
仮設の鋼製杭部材2と本設の鉄筋コンクリート造の外壁体4,5とを多数の接合部材によって一体化させるのではなく、階高の中間域6,7のみに設けた連結部材8によって協働化させることにより、連結部材8のせん断力による破断の問題を生ずることなく、連結部材8の本数を大幅に低減することができるという効果がある。
【0036】
また、図9の(b)によれば、鉄筋コンクリート造の外壁体4,5と鋼製杭部材2とを連結部材8によって横方向に連結することにより、各階高の中間域6,7に設けた連結部材8の位置で、鉄筋コンクリート造の外壁体4,5に、土圧、水圧などの水平力Fとは反対方向の外力T1,T2を作用させ、その結果、連結部材8を設けない場合と比較して、鉄筋コンクリート造の外壁体4,5に発生する曲げモーメントを低減することができる。
【0037】
また、連結部材8の位置で鉄筋コンクリート造の外壁体4,5を拘束することにより、連結部材8の位置以外の他の位置においても該外壁体4,5に発生する曲げモーメントの絶対値を低減することができる。
【0038】
さらに、図9の(d)によれば、鉄筋コンクリート造の外壁体4,5に発生する上下方向のせん断力は、連結部材8を取り付けることによって、その分布形態が変化している。この図によれば、連結部材8を取り付けない場合にはゼロであった階高の中央位置におけるせん断力は、連結部材8を取り付けることにより増加しているものの、その絶対値は十分に小さい値に抑えられている。また、特に、床スラブ14,15,16等の横架材の位置において発生していた最大せん断力は、十分に低減されている。
【0039】
すなわち、本実施形態に係る地下壁構造1によれば、階高の中間域6,7に設けた連結部材8によって、本設の鉄筋コンクリート造の外壁体4,5に発生する前モーメントおよびせん断力を外壁体4,5の高さ方向に平均化させることができる。
【0040】
【発明の効果】
〔請求項1に係る発明〕
(1) 本発明によれば、少ない連結部材を用いて、本設の鉄筋コンクリート造の壁体を仮設の鋼製杭部材によって確実に補強することができる地下壁構造が提供される。
(2) 本発明は、上下方向に作用するせん断力が十分に小さいと考えられる所定の階高の中間域のみに連結部材を配することにより、連結部材に作用するせん断力を低く抑えることができる。したがって、従来、仮設の鋼製杭部材と本設の鉄筋コンクリート造の壁体とを接合する接合部材の数を減らして不完全合成壁とする際に生じていた、接合部材の破断の問題を生ずることなく、その数を大幅に低減することができる。
(3) 本発明は、本設の鉄筋コンクリート造の壁体を階高の中間域において仮設の鋼製杭部材に支持させるので、本設の外壁体に生ずる曲げモーメント並びに上下方向のせん断力を低減することができる。
下階の横架材の上面から内法階高の25%〜75%の範囲は、鉄筋コンクリート造の壁体に発生するせん断力が十分に低い領域であり、この範囲に連結部材を配することにすれば、連結部材に作用するせん断力を、連結部材が破断しない程度に十分に低く抑えることができる。
【0041】
〔請求項2に係る発明〕
連結部材を頭付きスタッドとすれば、本発明を簡易に構成することができる。すなわち、頭付きスタッドの一端を鋼製杭部材に固定し、他端である頭部を含む所定の長さにわたって鉄筋コンクリート造の壁体に定着させることにより、鋼製杭部材と鉄筋コンクリート造の壁体とを確実に連結し、協働化させることができる。
【0042】
〔請求項3に係る発明〕
連結部材を、鉄筋、鋼製部材などの任意の引張構造部材としても、頭付きスタッドと同等の効果を奏することができる。また多様な方法でこの発明の地下壁構造を構築することができる。
【0043】
〔請求項4に係る発明〕
連結部材の取り付けを溶接によることなく、ねじの締結によることとすれば、現場での溶接作業が不要となり、簡易かつ確実に取り付けることができる。鋼製杭部材に雌ねじ部を設けておき、鋼製杭部材の設置後に連結部材を締結する構造とすれば、鋼製杭部材の設置の際に、鋼製杭部材の表面に突出部が形成されないので、設置作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る地下壁構造を概略的に示す縦断面図である。
【図2】図1の地下壁構造の内の任意の1階分を概略的に示す縦断面図である。
【図3】図1の地下壁構造を概略的に示す横断面図である。
【図4】図1の地下壁構造の連結部材を説明する縦断面図である。
【図5】図1の地下壁構造の他の連結部材を説明する縦断面図である。
【図6】図2の地下壁構造を模式的に示す図である。
【図7】図2の地下壁構造を模式的に示す斜視図である。
【図8】図1の地下壁構造の応力算定モデルを示す図である。
【図9】図6の応力算定モデルを用いて得られた曲げモーメントおよびせん断力の分布を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る地下壁構造を概略的に示す縦断面図である。
【図11】従来の地下壁構造を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
H1,H2 階高
h01 内法階高
1 地下壁構造
2 鋼製杭部材
4,5 壁体
6,7 中間域
8 頭付きスタッド(連結部材)
8a 雄ネジ部
14,15,16 床スラブ(横架材)
17,18 梁(横架材)
20 袋ねじ部(雌ねじ部)
Claims (4)
- 山留め壁を構成する鋼製杭部材と、鋼製杭部材に隣接して施工される本設の鉄筋コンクリート造の壁体とを、所定の階高の中間域のみにおいて、縦方向に部分的に設けた連結部材により、横方向に連結し、
鋼製杭部材を仮設の山留め壁杭材として使用すると共に、鉄筋コンクリート造の壁体に対する本設の補強材として利用し、
鉄筋コンクリート造の壁体は、上下階の床スラブ、梁などの横架材の間に水平変形の可撓域である内法階高を形成し、
所定の階高の中間域は、連結部材をせん断力による破断を生じること無く設けることができる縦方向の範囲であって、横架材の上面から内法階高の略25%〜75%の範囲であり、
連結部材を、その材軸方向に引っ張り力を受ける引っ張り構造部材として形成した地下壁構造。 - 前記連結部材が、一端を鋼製杭部材に固定され、他端を鉄筋コンクリート造の壁体に定着した頭付きスタッドである請求項1に記載の地下壁構造。
- 前記連結部材が、鋼製杭部材に固定した鉄筋、鋼製部材などの引張構造部材からなるとともに、所定の定着長さが鉄筋コンクリート造の壁体に埋め込まれている請求項1または請求項2のいずれかに記載の地下壁構造。
- 前記鋼製杭部材に雌ねじ部が設けられ、連結部材に雌ねじ部に締結される雄ねじ部が設けられている請求項3記載の地下壁構造。
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