ところで、より確実なノイズ低減対策を図ろうとした場合には、コンデンサのキャパシタンスを大きくすればよく、具体的には例えば誘電体の膜厚を薄くすればよいことになる。しかしながら、上記従来技術のようにペーストをスクリーン印刷する手法では、薄い印刷層を得るためには固形分量を減らしてペースト粘度を低くする必要がある。すると、ペーストの固形分低下に起因して、焼成後に得られる誘電体内に欠陥が生じやすくなり、これが金属電極間のショート不良の原因となる。
また、大きな面積に対して均一な厚さでペーストをスクリーン印刷することは容易ではなく、これが生産効率の向上を妨げる1つの原因となる。さらに、印刷層の膜厚が薄くなるほど膜厚ばらつきが大きくなり、結果としてキャパシタンスのばらつきが大きくなるという問題もある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、薄くて均一な厚さの誘電体を効率よく得ることができ、ショート不良やキャパシタンスのばらつきを低減できるコンデンサの製造方法を提供することにある。
そして、上記課題を解決するための手段(第1手段)としては、第1金属電極及び第2金属電極間に誘電体が配置されたコンデンサの製造方法において、前記第1金属電極となるべき金属上に、誘電体スラリーをシート状にキャスティングすることにより誘電体グリーンシートを形成する工程と、前記誘電体グリーンシート上に、前記第2金属電極となるべき導体部を形成する工程と、焼成を行って前記誘電体グリーンシートを焼結させる工程とを含むことを特徴とするコンデンサの製造方法がある。
従って、上記第1手段にかかる製造方法では、誘電体スラリーをシート状にキャスティングする手法により誘電体グリーンシートを形成し、さらにこの誘電体グリーンシートを焼成することによって、誘電体を形成している。このため、ペースト印刷法に比べて、薄くて均一な厚さの誘電体を効率よく得ることができる。よって、ショート不良やキャパシタンスのばらつきを低減できるコンデンサの製造方法を提供することができる。
以下、第1手段にかかるコンデンサの製造方法を説明する。
まず、前記第1金属電極となるべき金属上に、誘電体スラリーをシート状にキャスティングすることにより誘電体グリーンシートを形成する(誘電体グリーンシート形成工程)。
前記誘電体グリーンシートとは、誘電体を含む未焼結のシート状成形体のことを指し、通常、誘電体セラミック粉、可塑剤、有機バインダ等を含む。ここで、誘電体セラミック粉とは、誘電率が高いセラミック(比誘電率が5.0以上のセラミックと定義する。)の粉末のことをいい、例えば、ペロブスカイト型結晶構造を有した複合酸化物がこれに該当する。かかる複合化合物の具体例としては、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸鉛及びチタン酸ストロンチウムから選択される1種または2種以上にて構成された化合物を挙げることができる。
誘電体グリーンシートを形成する際の出発材料となる誘電体スラリーとは、誘電体セラミック粉、揮発性溶媒、可塑剤、有機バインダ等を含む泥漿のことをいう。このような誘電体スラリーは、通常、誘電体印刷形成用ペーストの粘度(数千Pa・s)に比較して相当低い粘度を有している。前記誘電体スラリーは、具体的には、0.1Pa・s以上1.0Pa・s以下の粘度(リオン株式会社製ビスコテスター VT−04型粘度計 No.1ロータ 62.5rpm 1分値 25℃で測定した粘度をいう。)に調製されることが好ましい。その理由は、0.1Pa・s以上の粘度であれば、固形分量を大幅に減らす必要がないため、誘電体内に欠陥が生じにくくなるからである。また、1.0Pa・s以下の粘度であれば、スラリーに比較的高い流動性があって塗工時に広がりやすいため、キャスティング法により薄くて均一な厚さの誘電体グリーンシートを得ることができるからである。そして、このような好適な誘電体グリーンシートが得られれば、薄くて均一な厚さの誘電体を効率よく得やすくなる。
上記誘電体グリーンシート形成工程では、例えば従来周知のキャスティング装置を用いて誘電体スラリーのキャスティングを行うことができる。この場合、誘電体スラリーは、第1金属電極となるべき金属上にシート状にキャスティング(塗工)される。即ち、当該工程において前記金属は、キャスティング領域にて塗工された誘電体スラリーをその上面に支持して乾燥領域まで搬送するキャリア部材としての役割を兼ねる。
ここで、第1金属電極となるべき金属としては、薄肉の金属材料を選択することがよく、とりわけ金属箔を選択することが好適である。その理由は、ある程度変形可能な性質を有する金属箔は、巻き取りが可能なため、キャリア部材としての用途に適するとともに、保管や管理を容易に行うことができるからである。
また、前記金属箔は、算術平均粗さRaが0.01μm以上0.5μm以下、最大高さ粗さRzが0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましい。即ち、この範囲内であると、キャパシタンスのばらつきを低減しつつ、第1金属電極と誘電体との間に十分な密着強度を確保できるからである。算術平均粗さRaが0.01μm未満または最大高さ粗さRzが0.1μm未満であると、金属箔表面の凹凸が小さすぎて、第1金属電極と誘電体との間に十分な密着強度が確保されにくくなるおそれがある。一方、算術平均粗さRaまたは最大高さ粗さRzが0.5μmを超えると、金属箔表面の凹凸が大きくなりすぎて、キャパシタンスのばらつきが拡大する可能性がある。なお、算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzの測定方法としては JIS B0601、JIS B0633がある。
第1金属電極となるべき金属は、導電性を有する金属であることがよく、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、タングステン等から選ばれる1種の金属、または2種以上の金属からなる合金が好適である。
第1金属電極となるべき金属の融点は、誘電体グリーンシートが焼結する温度よりも高いことが好ましい。その理由は、チタン酸バリウムなどのペロブスカイト型結晶構造を有した複合酸化物との同時焼結が可能になるからである。そして、この条件に該当する金属としては、例えば、ニッケル、タングステン等を挙げることができる。特にニッケルは箔とした場合に適度な強度及び変形性を有し、しかも比較的安価な材料であるという点で、好ましい。ニッケル箔をキャリア部材として用いてキャスティングを行う場合、ニッケル箔の厚さは、最終的に得ようとする第1金属電極の厚さと同等にすることがよい。
誘電体グリーンシート形成工程において、誘電体スラリーは、乾燥時の厚さが20μm以下となるように塗工されることがよく、特には1μm以上10μm以下となるように塗工されることがよい。乾燥時の厚さを薄くしておけば、薄い誘電体を得ることができ、コンデンサのキャパシタンスの増大につながるからである。
上記キャスティングを行う場合、第1金属電極となるべき金属上にてシート状に塗工された誘電体スラリーは、通常、塗工後ただちに加熱乾燥される。この加熱乾燥を行うと、誘電体スラリー中の揮発性溶媒の大部分が揮発して、誘電体スラリーの流動性が失われ、所定厚さの誘電体グリーンシートとなる。
上記誘電体グリーンシート形成工程の後、次いで前記誘電体グリーンシート上に前記第2金属電極となるべき導体部を形成する(導体部形成工程)。
第2金属電極となるべき導体部としては、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、タングステン等から選ばれる1種の金属、または2種以上の金属からなる合金が好適である。前記導体部の融点は、誘電体グリーンシートが焼結する温度よりも高いことが好ましい。その理由は、チタン酸バリウムなどのペロブスカイト型結晶構造を有した複合酸化物との同時焼結が可能になるからである。そして、この条件に該当する金属としては、例えば、ニッケル、タングステン等を挙げることができる。
前記導体部の形成方法は特に限定されるべきではないが、比較的大きな面積への形成に適するという理由で、キャスティング法を採用することが好ましい。具体的にいうと、第2金属電極となるべき導体部は、金属粉を含む導体スラリーをキャリア部材上にシート状にキャスティングして乾燥することにより作製され、露出した前記誘電体グリーンシートの片側面上に圧着された導体グリーンシートであることが好ましい。ここで前記導体グリーンシートとは、導体を含む未焼結のシート状成形体のことを指し、通常、導体金属粉、可塑剤、有機バインダ等を含むものである。なお、圧着を行う前に、誘電体グリーンシート及び導体グリーンシートをあらかじめ所定の形状及びサイズにカットしておいてもよい。
前記導体スラリーは、導体金属粉、揮発性溶媒、可塑剤、有機バインダ等を含む泥漿であって、さらにペロブスカイト型結晶構造を有した複合酸化物を含んでいてもよい。前記複合酸化物を含む導体グリーンシートは、前記複合酸化物を含まない導体グリーンシートに比べて、誘電体グリーンシートとの焼成収縮率差が小さくなるからである。よってこの場合には、第2金属電極と誘電体との密着強度の向上を図りやすくなる。
なお、導体グリーンシートのような未焼結のシート状成形体以外のものを用い、これを圧着すること等により、第2金属電極となるべき導体部を形成してもよい。
上記導体部形成工程の後、次いで焼成を行って前記誘電体グリーンシートを焼結させる(焼成工程)。前記第2金属電極となるべき導体部が未焼結状態の場合には、当該焼成工程の際に誘電体グリーンシートと同時に焼結させる。その結果、第1手段にかかるコンデンサを得ることができる。
上記課題を解決するための別の手段(第2手段)としては、第1金属電極及び第2金属電極間に誘電体が配置されたコンデンサの製造方法において、キャリア部材上に誘電体スラリーをシート状にキャスティングすることにより誘電体グリーンシートを形成する工程と、前記第1金属電極となるべき金属と前記誘電体グリーンシートとを圧着する工程と、前記キャリア部材を除去して前記誘電体グリーンシートの片側面を露出させる工程と、露出した前記誘電体グリーンシートの片側面上に、前記第2金属電極となるべき導体部を形成する工程と、焼成を行って前記誘電体グリーンシートを焼結させる工程とを含むことを特徴とするコンデンサの製造方法がある。
従って、第2手段にかかる製造方法では、誘電体スラリーをシート状にキャスティングする手法により誘電体グリーンシートを形成し、さらにこの誘電体グリーンシートを焼成することによって、誘電体を形成している。このため、ペースト印刷法に比べて、薄くて均一な厚さの誘電体を効率よく得ることができる。よって、ショート不良やキャパシタンスのばらつきを低減できるコンデンサの製造方法を提供することができる。
まず、キャリア部材上に誘電体スラリーをシート状にキャスティングすることにより誘電体グリーンシートを形成する(誘電体グリーンシート形成工程)。
誘電体グリーンシートには、誘電体セラミック粉、可塑剤、有機バインダ等が含まれており、誘電体セラミック粉としては、例えばペロブスカイト型結晶構造を有した複合酸化物の粉が用いられる。誘電体スラリーには、誘電体セラミック粉、揮発性溶媒、可塑剤、有機バインダ等が含まれている。誘電体スラリーは、0.1Pa・s以上1.0Pa・s以下の粘度(リオン株式会社製ビスコテスター VT−04型粘度計 No.1ロータ 62.5rpm 1分値 25℃で測定した粘度をいう。)に調整されることが好ましい。その理由はすでに述べたとおりである。
上記誘電体グリーンシート形成工程では、例えば従来周知のキャスティング装置を用いて誘電体スラリーのキャスティングを行うことができる。この場合、キャリア部材としては特に限定されないが、例えば可撓性のある樹脂フィルム等を用いることが好適である。このような樹脂フィルムは、第2手段にかかるコンデンサを構成する部材ではないので、製造プロセスの途中で除去される。
また、誘電体グリーンシート形成工程において、誘電体スラリーは、乾燥時の厚さが20μm以下となるように塗工されることがよく、特には1μm以上10μm以下となるように塗工されることがよい。乾燥時の厚さが薄いほうが、コンデンサのキャパシタンスの増大につながるからである。
上記キャスティングを行う場合、塗工された誘電体スラリーは、塗工後ただちに加熱乾燥される。これにより、誘電体スラリー中の揮発性溶媒の大部分が揮発して、誘電体スラリーの流動性が失われ、所定厚さの誘電体グリーンシートとなる。
誘電体グリーンシート形成工程の後、次いで前記第1金属電極となるべき金属と前記誘電体グリーンシートとを積層して圧着する(圧着工程)。第1金属電極となるべき金属は、導電性を有する金属であることがよく、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、タングステン等から選ばれる1種の金属、または2種以上の金属からなる合金が好適である。
第1金属電極となるべき金属の融点は、誘電体グリーンシートが焼結する温度よりも高いことが好ましい。その理由はすでに述べたとおりである。この条件に該当する金属としては、例えば、ニッケル、タングステン等が挙げられる。
第1金属電極となるべき金属は、金属箔であってもよく、あるいは、導体スラリーをキャリア部材上にシート状にキャスティングして乾燥することにより作製された導体グリーンシートであってもよい。
圧着工程の後、次いで前記キャリア部材を除去して前記誘電体グリーンシートの片側面を露出させる(誘電体グリーンシート露出工程)。その結果、第2金属電極となるべき導体部が形成可能な状態となる。そして、誘電体グリーンシート露出工程の後、次いで露出した前記誘電体グリーンシートの片側面上に前記第2金属電極となるべき導体部を形成し(導体部形成工程)、さらに焼成を行って前記誘電体グリーンシートを焼結させる(焼成工程)。その結果、第2手段にかかるコンデンサを得ることができる。
以下、本発明を具体化した実施形態のセラミックコンデンサの製造方法について図面に基づき説明する。
図1に示されるように、本実施形態のセラミックコンデンサ10は、図示しないCPUの電源端子近傍に搭載されることで当該CPUの動作に必要な高周波電流を供給するデカップリングコンデンサである。このセラミックコンデンサ10は、下部ニッケル電極11(第1金属電極)と上部ニッケル電極31(第2金属電極)との間に、チタン酸バリウムからなる誘電体層21(誘電体)を挟み込むようにして配置した構造を備えている。本実施形態では、下部ニッケル電極11及び上部ニッケル電極31の厚さは、約25μmに設定されている。一方、誘電体層21の厚さは、それよりもかなり薄く、約5μmに設定されている。この誘電体層21は、厚さばらつきが±0.2μm程度であって、比較的均一な厚さを有している。
そして、このような構成のセラミックコンデンサ10を上記のようにCPU近傍に搭載することで、インダクタンス成分が低減され、ひいてはCPUのノイズが低減されるようになっている。
[実施例1]
次に、本実施形態における実施例1のセラミックコンデンサ10の製造方法について述べる。
(1)誘電体スラリーS1の調製
平均粒径0.7μmのチタン酸バリウム粉末(誘電体セラミック粉)、エタノールとトルエンとの混合溶液(揮発性溶媒)、可塑剤、有機バインダをポットで混合することにより、誘電体グリーンシート22を形成する際の出発材料となる誘電体スラリーS1を得た。このとき、各成分の配合比率を適宜変更することにより、誘電体スラリーS1を約0.5Pa・sの粘度(リオン株式会社製ビスコテスター VT−04型粘度計 No.1ロータ 62.5rpm 1分値 25℃で測定した粘度をいう。)に調製した。
(2)誘電体グリーンシート22の形成
幅220mmかつ厚さ30μmのニッケル箔12のロール13を用意し、このロール13を従来周知のキャスティング装置41の供給側にセットした(図2参照)。ここでは、キャパシタンスのばらつきを低減しつつ下部ニッケル電極11と誘電体層21との間に十分な密着強度を確保するために、算術平均粗さRaが0.06μm、最大高さ粗さRzが0.46μmのニッケル箔12を使用した。そして、ドクターブレード42の先端とニッケル箔12の上面とのクリアランスを約30μmに設定して、先に調製しておいた誘電体スラリーS1をドクターブレード42の手前側に供給した。この状態でニッケル箔12を一定のスピードで送り出して、ニッケル箔12の上面側に誘電体スラリーS1を薄く均一な厚さでキャスティング(塗工)した。なお、ここではニッケル箔12にキャリア部材としての役割を担わせた。
そして、このようにシート状にキャスティングされた誘電体スラリーS1を、ドクターブレード42の後方に位置するヒータ43に通じることにより、誘電体スラリーS1を約70℃で加熱乾燥した。この加熱乾燥により、誘電体スラリーS1中の揮発性溶媒の大部分を揮発させて、厚さ8μmの誘電体グリーンシート22を形成した。なお、形成された誘電体グリーンシート22は、ニッケル箔12とともに巻き取ってロール14とした。
(3)導体スラリーS2の調製
平均粒径0.7μmのニッケル粉(導電性金属粉)と、平均粒径0.7μmのチタン酸バリウム粉末(誘電体セラミック粉)とを体積比が83:17となるように秤量し、これにエタノールとトルエンとの混合溶液(揮発性溶媒)、可塑剤、有機バインダを添加した。これをポットで混合することにより、導体グリーンシート32を形成する際の出発材料となる導体スラリーS2を得た。このとき、各成分の配合比率を適宜変更することにより、導体スラリーS2を約0.5Pa・sの粘度(リオン株式会社製ビスコテスター VT−04型粘度計 No.1ロータ 62.5rpm 1分値 25℃で測定した粘度をいう。)に調製した。
(4)導体グリーンシート32の形成
幅220mmかつ厚さ50μmのPETフィルム44のロール46を用意し、このロール46を上記のキャスティング装置41の供給側にセットした(図3参照)。そして、ドクターブレード42の先端とPETフィルム44の上面とのクリアランスを約120μmに設定して、先に調製しておいた導体スラリーS2をドクターブレード42の手前側に供給した。この状態で、キャリア部材であるPETフィルム44を一定のスピードで送り出して、PETフィルム44の上面側に導体スラリーS2を薄く均一な厚さでキャスティング(塗工)した。そして、このようにシート状にキャスティングされた導体スラリーS2を、ドクターブレード42の後方に位置するヒータ43に通じることにより、導体スラリーS2を約70℃で加熱乾燥した。この加熱乾燥により、導体スラリーS2中の揮発性溶媒の大部分を揮発させて、厚さ30μmの導体グリーンシート32を形成した。なお、形成された導体グリーンシート32は、PETフィルム44とともに巻き取ってロール47とした。
(5)ニッケル箔12、誘電体グリーンシート22及び導体グリーンシート32の積層圧着
誘電体グリーンシート22をキャスティングしたニッケル箔12、及び、導体グリーンシート32をキャスティングしたPETフィルム44を、打ち抜き金型等の従来周知の手段を用いて、それぞれ150mm角のシートに切断した。そして、誘電体グリーンシート22と導体グリーンシート32とを対向させた状態で、これら2種のシートを積層した(図4参照)。このように積層された2種のシートに対し、従来周知のラミネート装置を用いて100℃で750kgf/cm2の押圧力を加え、圧着を行った。その結果、ニッケル箔12、誘電体グリーンシート22及び導体グリーンシート32が一体化した未焼結積層体50を得た(図5参照)。
(6)切断、脱脂、同時焼成
次に、上記未焼結積層体50を切断機にてPETと共に所定の大きさに切断した後、不要になったPETフィルム44を未焼結積層体50から剥離した。そして、この未焼結積層体50を250℃で10時間脱脂し、さらに1220℃の還元雰囲気中にて所定時間焼成を行った。その結果、チタン酸バリウム及びニッケルが同時焼結してなる焼成体を完成させ、複数のセラミックコンデンサ10を得た。
(7)電気特性の評価
このようにして得られた実施例1のセラミックコンデンサ10の下部ニッケル電極11−上部ニッケル電極31間に電圧を印加したところ、それらの間でショート不良は確認されなかった。また、従来周知の手法によりキャパシタンスを測定したところ、0.5μF/cm2であった。従って、本実施例1のセラミックコンデンサ10には好適な電気特性が付与されていた。
[実施例2]
次に、実施例2の製造方法について述べる。
(1)誘電体スラリーS1の調製、誘電体グリーンシート22の形成
幅220mmかつ厚さ50μmのPETフィルム44のロール46を用意し、このロール46をキャスティング装置41の供給側にセットした(図6参照)。そして、ドクターブレード42の先端とPETフィルム44の上面とのクリアランスを約30μmに設定して、実施例1と同様に調製された誘電体スラリーS1をドクターブレード42の手前側に供給した。この状態でPETフィルム44を一定のスピードで送り出して、PETフィルム44の上面側に誘電体スラリーS1を薄く均一な厚さでキャスティング(塗工)した。
そして、シート状にキャスティングされた誘電体スラリーS1を、ドクターブレード42の後方に位置するヒータ43に通じることにより、誘電体スラリーS1を約70℃で加熱乾燥した。この加熱乾燥により、誘電体スラリーS1中の揮発性溶媒の大部分を揮発させて、厚さ8μmの誘電体グリーンシート22を形成した。なお、形成された誘電体グリーンシート22は、PETフィルム44とともに巻き取ってロール47とした。
(2)導体スラリーS2の調製、導体グリーンシート32の形成
実施例1の(4)と同様に、実施例1と同じ条件で調製された導体スラリーS2を用いてキャスティング及び乾燥を行って導体グリーンシート32を形成し、形成された導体グリーンシート32をPETフィルム44とともに巻き取ってロール47とした(図3参照)。
(3)ニッケル箔12、誘電体グリーンシート22及び導体グリーンシート32の積層圧着
次に、誘電体グリーンシート22をキャスティングしたPETフィルム44、及び、導体グリーンシート32をキャスティングしたPETフィルム44を、それぞれ150mm角のシートに切断した。また、150mm角,30μm厚のニッケル箔12もあらかじめ用意しておいた。
そして、ニッケル箔12側に誘電体グリーンシート22を向けた状態で、ニッケル箔12上に前記シートを積層した(図7参照)。この状態でラミネート装置を用いて80℃で200kgf/cm2の押圧力を加え、ニッケル箔12と誘電体グリーンシート22とを圧着した。この後、不要になったPETフィルム44を剥離し、誘電体グリーンシート22の片側面を露出させた(図8参照)。実施例1の(5)と同様に、さらに、誘電体グリーンシート22側に導体グリーンシート32を向けた状態で、誘電体グリーンシート22上に前記シートを積層した(図9参照)。この状態でラミネート装置を用いて100℃で750kgf/cm2の押圧力を加え、圧着を行った。その結果、ニッケル箔12、誘電体グリーンシート22及び導体グリーンシート32が一体化した未焼結積層体50を得た(図10参照)。
(4)切断、脱脂、同時焼成、電気特性の評価
そして、実施例1と同じ条件で切断、脱脂、同時焼成を行い、複数のセラミックコンデンサ10を得た。この実施例2のセラミックコンデンサ10においても下部ニッケル電極11−上部ニッケル電極31間でショート不良は確認されなかった。また、キャパシタンスの測定値は0.5μF/cm2であった。従って、本実施例2のセラミックコンデンサ10にも好適な電気特性が付与されていた。
[比較例1]
次に、比較例1の製造方法について述べる。
平均粒径0.7μmのチタン酸バリウム粉末(誘電体セラミック粉)、ターピネオール(溶媒)、可塑剤、有機バインダを混合し、この混合物を3本ロールで混練した。これにより、誘電体グリーンシート22をスクリーン印刷で形成する際の出発材料となる誘電体ペーストを得た。このとき、各成分の配合比率を適宜変更することにより、誘電体ペーストを約1000Pa・sの粘度(東機産業株式会社製RE80U型粘度計 3°×R7.7ロータ 0.5rpm 1分値 25℃で測定した粘度をいう。)に調製した。そして、従来周知のスクリーン印刷装置に150mm角のニッケル箔をセットし、そのニッケル箔の上面に誘電体ペーストを8μm厚で印刷することを試みた。しかしながら、印刷層が部分的にかすれてしまい、結局誘電体グリーンシート22の形成には至らなかった。従って、スクリーン印刷法は薄くて均一な厚さの誘電体グリーンシート22を形成するのに適さないことが実証された。
[比較例2]
上記比較例1の誘電体ペーストをターピネオールで希釈して粘度を1/100程度下げて、スクリーン印刷を行ったところ、一応ニッケル箔の上面に誘電体ペーストを8μm厚(乾燥後)で印刷することが可能であった。
次に、平均粒径0.7μmのニッケル粉(導電性金属粉)と、平均粒径0.7μmのチタン酸バリウム粉末(誘電体セラミック粉)とを体積比が83:17となるように秤量し、これにターピネオール(溶媒)、可塑剤、有機バインダを添加した。これを混合、混練して、導体グリーンシート32を形成する際の出発材料となる導体ペーストを得た。なお、導体ペーストの粘度は誘電体ペーストの粘度と同程度に設定した。そして、スクリーン印刷装置を用いて、ニッケル箔上の誘電体ペースト印刷層の上に導体ペーストを印刷することにより、3層構造の未焼結体を得た。
さらに、実施例1の手法に準じて、切断、脱脂、同時焼成を行ってセラミックコンデンサ10を得た後、これについて電気特性の評価を行った。しかしながら、比較例2では下部ニッケル電極11−上部ニッケル電極31間でショート不良が確認された。この原因としては、ペースト中の固形分量が相対的に減った結果、焼成後に得られる誘電体層21内に欠陥が生じやすくなったことが考えられた。また、このように印刷層の膜厚を薄くした場合、誘電体層21の膜厚ばらつきが大きくなる傾向が認められた。ゆえに、ペースト粘度を低くした場合であっても、スクリーン印刷法では薄くて均一な厚さの誘電体グリーンシート22の形成が困難であることが実証された。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)上記実施例1、実施例2の製造方法では、誘電体スラリーS1をシート状にキャスティングする手法により誘電体グリーンシート22を形成し、さらにこの誘電体グリーンシート22を焼成することによって、誘電体層21を形成している。このため、従来のペースト印刷法に比べて薄くて均一な厚さの誘電体層21を効率よく得ることができる。よって、ショート不良やキャパシタンスのばらつきを低減でき、電気特性に優れた高信頼性のセラミックコンデンサ10を製造することができる。
また、上記製造方法では、チタン酸バリウムとニッケルとを同時焼成しているので、基本的に焼成工程が1回で済む。よって、複数回の焼成工程を必要とする従来技術の方法に比較して、生産効率に優れ、低コスト化を達成しやすくなる。
(2)上記実施例1、実施例2の製造方法では、下部ニッケル電極11となるべきニッケル箔12の表面粗さ(算術平均粗さRa,最大高さ粗さRz)がそれぞれ好適範囲内にて設定されている。このため、キャパシタンスのばらつきを低減しつつ、下部ニッケル電極11と誘電体層21との間に十分な密着強度を確保することができる。勿論、このことはセラミックコンデンサ10の電気特性や信頼性の向上に寄与する。
(3)上記実施例1、実施例2の製造方法では、粘度が0.1Pa・s以上1.0Pa・s以下であって、誘電体セラミック粉、揮発性溶媒、可塑剤及び有機バインダを含む誘電体スラリーS1が使用されている。よって、内部に欠陥を生じさせることなく、薄くて均一な厚さの誘電体層21を得ることができる。このこともセラミックコンデンサ10の電気特性や信頼性の向上に寄与している。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限度において、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
上記実施形態のセラミックコンデンサ10は、単独の部品として成立しており、例えば別体で構成された半導体パッケージ上に搭載された状態で使用可能なものであった。しかし、セラミックコンデンサ10を単独の部品とするのではなく、あらかじめ半導体パッケージの一部分として構成してもよい。具体的には、半導体パッケージの内部にセラミックコンデンサ10を埋め込んだ形態にすること等が可能である。なお、半導体パッケージ以外の基体(例えば中継基板など)の一部分としてセラミックコンデンサ10を構成することも許容される。
上記実施形態のセラミックコンデンサ10は、誘電体層21を1層のみ有するものであったが、誘電体層21を複数層有するものとして具体化してもよい。また、本発明の製造方法を適用して、格子状に配置された多数のビアホールを有するビアアレイタイプのセラミックコンデンサ10を製造することも可能である。
上記実施形態の製造方法では、圧着工程の前に打ち抜きを行ったが、圧着工程の後で打ち抜きを行っても構わない。
次に、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)第1金属電極及び第2金属電極間に誘電体が配置されたセラミックコンデンサの製造方法において、前記第1金属電極となるべき金属箔上に、誘電体スラリーをシート状にキャスティングして乾燥することにより誘電体グリーンシートを形成する工程と、前記誘電体グリーンシート上に、前記第2金属電極となるべき導体部を形成する工程と、焼成を行って前記誘電体グリーンシートを焼結させる工程とを含むことを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。
(2)第1金属電極及び第2金属電極間に誘電体が配置されたセラミックコンデンサの製造方法において、キャリア部材上に誘電体スラリーをシート状にキャスティングして乾燥することにより誘電体グリーンシートを形成する工程と、前記第1金属電極となるべき金属箔と前記誘電体グリーンシートとを圧着する工程と、前記キャリア部材を除去して前記誘電体グリーンシートの片側面を露出させる工程と、露出した前記誘電体グリーンシートの片側面上に、前記第2金属電極となるべき導体部を形成する工程と、焼成を行って前記誘電体グリーンシートを焼結させる工程とを含むことを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。
(3)上記(1)または(2)において、前記金属箔の融点は、前記誘電体グリーンシートが焼結する温度よりも高いことを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか1項において、前記金属箔はニッケル箔であることを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。
(5)上記(1)乃至(4)のいずれか1項において、前記誘電体スラリーは、粘度が0.1Pa・s以上1.0Pa・s以下であって、誘電体セラミック粉、揮発性溶媒、可塑剤及び有機バインダを含むことを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。
(6)第1金属電極及び第2金属電極間に誘電体が配置されたセラミックコンデンサの製造方法において、前記第1金属電極となるべきニッケル箔上に、粘度が0.1Pa・s以上1.0Pa・s以下であってペロブスカイト型結晶構造を有した複合酸化物の粉末を含む誘電体スラリーをシート状にキャスティングして乾燥することにより、乾燥時の厚さが20μm以下である誘電体グリーンシートを形成する工程と、前記誘電体グリーンシート上に、ニッケル粉を含む導体スラリーをシート状にキャスティングして乾燥することにより、前記第2金属電極となるべき導体グリーンシートを形成する工程と、前記誘電体グリーンシートと前記導体グリーンシートとを積層して加圧することにより、前記誘電体グリーンシートと前記導体グリーンシートとを圧着する工程と、焼成を行って前記誘電体グリーンシート及び前記導体グリーンシートを同時に焼結させる工程とを含むことを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。
(7)第1金属電極及び第2金属電極間に誘電体が配置されたセラミックコンデンサの製造方法において、キャリア部材上に、粘度が0.1Pa・s以上1.0Pa・s以下であってペロブスカイト型結晶構造を有した複合酸化物の粉末を含む誘電体スラリーをシート状にキャスティングして乾燥することにより、乾燥時の厚さが20μm以下である誘電体グリーンシートを形成する工程と、前記第1金属電極となるべきニッケル箔と前記誘電体グリーンシートとを積層して加圧することにより、前記ニッケル箔と前記誘電体グリーンシートとを圧着する工程と、前記キャリア部材を除去して前記誘電体グリーンシートの片側面を露出させる工程と、別のキャリア部材上に、ニッケル粉を含む導体スラリーをシート状にキャスティングして乾燥することにより、前記第2金属電極となるべき導体グリーンシートを形成する工程と、露出した前記誘電体グリーンシートの片側面上に前記導体グリーンシートを積層して加圧することにより、前記誘電体グリーンシートと前記導体グリーンシートとを圧着する工程と、焼成を行って前記誘電体グリーンシート及び前記導体グリーンシートを同時に焼結させる工程とを含むことを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。