ところで、近年における電子部品製造業界では、積層電子部品と他部品との接続部分にできるだけ高い信頼性を確保することが要求されており、今後この要求はさらに高度化していくと考えられる。
しかしながら、焼成工程を経て製造されるこの種の部品においては、焼成収縮に起因して部品全体に数十μmの反りが生じる場合があり、この反りに伴って外部端子電極の先端のコプラナリティが悪くなるという問題がある。そのため、積層電子部品の外部端子電極と他部品の電極との距離がばらつくことで、場所によっては電極同士の距離が大きくなり、電極同士のはんだ接合が不完全になることがある。よって、上記従来の積層電子部品の構成では、他部品との間に高い接続信頼性が確保できないという問題がある。
また、上記従来の積層電子部品の製造方法では、樹脂テープ剥離工程の際、貼り付いている樹脂テープを大きな力で剥がそうとすると、その樹脂テープとともに突出部(外部端子電極)の一部が持ち去られてしまうことがある。それゆえ、所望とする高さ及び形状の突出部(外部端子電極)を得ることが困難になる。この問題は、高さのある突出部(外部端子電極)の形成を目的として厚い樹脂テープを使用した場合に、より顕著になる。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、他部品との接続信頼性に優れた積層電子部品を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記の優れた積層電子部品を比較的簡単に得ることができる製造方法を提供することにある。
そして、上記課題を解決するための手段としては、第1主面及び第2主面を有するとともに、反りを有し、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層された構造の積層部と、前記複数の誘電体層を貫通し、前記複数の内部電極層を接続するビア導体と、前記ビア導体とは別体で形成され、前記第1主面側にて前記ビア導体に接続された外部端子電極とを備え、前記外部端子電極の高さが前記反りの量よりも大きいことを特徴とする積層電子部品がある。
例えば、積層部の反りの量よりも外部端子電極の高さが小さいような場合、上述したように外部端子電極と他部品の電極とのはんだ接合が不完全になりやすい。これに対して上記手段では、反りの量よりも外部端子電極の高さが大きいため、外部端子電極の先端のコプラナリティが多少悪くても、はんだを介して接続した場合に好適な接合状態を得ることができる。これは、前者よりも後者のほうが外部端子電極の表面積が大きくなり、はんだとの接触面積も大きくなることによると考えられる。従って、他部品との接続信頼性に優れた積層電子部品を提供することができる。
ここで、前記積層部の「反り」は、第1主面側が凸状になる反り、第1主面側が凹状になる反りのいずれも含む。また「反りの量」とは、本明細書では、基準となる平坦面に積層部を載置した場合においてその平坦面との間にできる隙間の最大値と定義する。なお、前記積層部が少なくとも10μm以上の反り、特には20μmの反りを有している場合に、上記手段の構成を適用することが好ましい。
ここで積層電子部品とは、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層された構造を有する電子部品を指し、その具体例としては、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックコンデンサ内蔵基板、積層セラミックモジュール基板などがある。とりわけ前記積層電子部品は、複数のビア導体をアレイ状に配置したタイプの積層セラミックコンデンサ、即ちビアアレイタイプの積層セラミックコンデンサであることがよい。
積層電子部品を構成する積層部は、第1主面及び第2主面を有する板状物であって、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層された構造を有している。例えば、積層電子部品がビアアレイタイプの積層セラミックコンデンサである場合、内部電極層は2つの群(第1内部電極層からなる群と第2内部電極層からなる群)に分けられる。この場合、第1内部電極層及び第2内部電極層は一層おきに配置される。
誘電体層は高誘電率セラミックからなる層であることが好ましく、その好適例としては、チタン酸バリウム層、チタン酸鉛層、チタン酸ストロンチウム層などを挙げることができる。内部電極層は、積層部の内部に配置された層状の電極のことを指す。内部電極層は、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、タングステン等を主成分として形成されている。
誘電体層の厚さは1μm以上10μm以下に設定されることがよく、好ましくは5μm以上10μm以下に設定される。内部電極層の厚さは誘電体層の厚さよりも薄くなるように例えば0.5μm以上5μm以下に設定されることがよく、好ましくは1μm以上3μm以下に設定される。
前記積層部には複数の誘電体層を貫通するビアが設けられており、そのビア内には複数の誘電体層を貫通して複数の内部電極層を接続するビア導体が形成されている。例えば、積層電子部品がビアアレイタイプの積層セラミックコンデンサである場合、ビア導体は、複数の第1内部電極層同士を電気的に接続する第1ビア導体と、複数の第2内部電極層同士を電気的に接続する第2ビア導体という2つの群に分けられる。第1ビア導体と第2内部電極層とは電気的に絶縁されており、第2ビア導体と第1内部電極層とは電気的に絶縁されている。
ビア導体は、積層部の第1主面及び前記第2主面間を貫通する貫通ビア導体であってもよく、積層部の第1主面及び前記第2主面間を貫通しない非貫通ビア導体であってもよい。ビア導体は、上記の内部電極層と同様に、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、タングステン等を主成分として形成される。
ビア導体の直径は50μm以上120μm以下に設定されることがよく、好ましくは60μm以上110μm以下に設定され、最も好ましくは70μm以上100μm以下に設定される。また、ビア導体の間隔は100μm以上600μm以下に設定されることがよく、好ましくは150μm以上450μm以下に設定される。ここで、ビア導体の間隔とは、隣接するビア導体同士の中心間距離、つまりビア導体のピッチのことを意味する。
なお、ビア導体が上記のように小径化、狭ピッチ化した場合に、電極同士のはんだ接合の不完全さに起因する接続信頼性の低下といった本願特有の課題が顕著になる。ゆえに、ビア導体の直径及びピッチを上記範囲とした場合について、上記手段の構成を採用することには意義がある。
積層電子部品を構成する外部端子電極は、第1主面側、第1主面に対向する第2主面側、または第1主面及び第2主面の両側に配置されるとともに、ビア導体に電気的に接続されている。この場合において外部端子電極は、例えば別の導体を介して間接的にビア導体に接続されていてもよいが、ビア導体の端部に直接接続されていることが好ましい。なお、前記外部端子電極は、導体部とは別体で形成されたものであって、導体部を形成する際に当該導体部の一部として同時に形成されたものではないことがよい。つまり、前記外部端子電極は、導体部とは別の工程により形成されたものであることがよい。
外部端子電極の高さは、前記積層部の反りの量の1.0倍よりも大きく設定され、好ましくは1.5倍以上2.0倍以下に設定される。この範囲内で前記高さを設定すれば、外部端子電極の形成が困難にならず、しかも、外部端子電極とはんだとの接触面積を大きくすることができるからである。これの具体例を挙げると、積層部の反り量が例えば20μmである場合、好適な外部端子電極の高さは30μm以上40μm以下の範囲となる。また、積層部の反り量が例えば30μmである場合、好適な外部端子電極の高さは45μm以上60μm以下の範囲となる。また、積層部の反り量が例えば40μmである場合、好適な外部端子電極の高さは60μm以上80μm以下の範囲となる。これらの反り量は、例えば、CNC画像測定システム(株式会社ニコン社製)を使用して外部端子電極の高低差を主面全体(25点)にわたって測定することにより得られる。
外部端子電極の形状は特に限定されないが、例えば、多段構造であってもよい。また、多段構造とした場合に、段と段との境界に段差部(くびれ部)が存在していてもよい。この場合、外部端子電極は2段構造、3段構造、4段構造等にすることができるが、2段構造であれば比較的簡単に形成することができ、製造上好ましい。つまり、外部端子電極は、電極下段部と、前記電極下段部上に形成された電極上段部と、前記電極下段部及び前記電極上段部の境界に位置する段差部とを有していることが好適である。多段構造を有する外部端子電極は複雑な表面形状を有するため、単純な表面形状を有するものと比べて、はんだとの接合状態がよくなるからである。
上記の2段構造を採用した場合、第1主面に垂直な方向から見たときの電極上段部の投影面積は、第1主面に垂直な方向から見たときの電極下段部の投影面積よりも小さいことがよい。例えば、この大小関係が逆転すると、形状的に不安定な外部端子電極となるおそれがあるからである。また、第1主面に垂直な方向から見たときの電極上段部の投影面積は、第1主面に垂直な方向から見たときのビア導体の投影面積よりも大きくなるように設定されていることがよい。この構成によれば、ビア導体との位置合わせ誤差をある程度吸収することができる。また、ビア導体の端面が第1主面や第2主面から突出していたり、引っ込んでいたりするような場合であっても、その影響が電極上段部に出にくくなる。
前記外部端子電極は、上記の内部電極層やビア導体と同様に、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、タングステン等を主成分として形成される。なお、外部端子電極はニッケルを主成分として形成されていることが好ましい。ニッケルは比較的安価な材料であることに加え、チタン酸バリウムなどの高誘電率セラミックとの同時焼結が可能だからである。
前記外部端子電極は、他部品の電極に対してはんだを介して接続されるべきものである。従って、例えば、第1主面を半導体集積回路素子または半導体集積回路素子搭載基板が搭載されるべき面であるとした場合、前記外部端子電極は、半導体集積回路素子または半導体集積回路素子搭載基板の電極と、はんだを介して接合される。この場合、前記外部端子電極と前記電極との間に高い接合強度が確保される。
また、前記外部端子電極の表面は、めっき層によって被覆されていてもよい。特に多段構造とした外部端子電極は表面積が大きく、めっき層との接触面積も大きくなるため、めっき層の密着強度が高くなる。このことは他部品との接続信頼性の向上にも寄与する。
例えば、前記外部端子電極がニッケルを主成分として形成されている場合、外部端子電極の表面をニッケルめっき層で被覆することがよく、この構成によれば電極表面を改質してはんだ濡れ性を向上させることができる。はんだ濡れ性の向上は、他部品との接合強度の向上に貢献するからである。また、ニッケルめっき層上にさらに金めっき層を形成することがよく、この構成によればはんだ濡れ性をよりいっそう向上させることができる。
また、本発明の別の課題を解決するための手段としては、前述した積層電子部品の製造方法であって、前記内部電極層となる内部電極部を有し前記誘電体層となる複数のグリーンシートが積層され、前記ビア導体となる導体部が形成されたグリーンシート積層体を形成する積層体形成工程と、前記グリーンシート積層体において前記導体部の端部に対応した箇所に、導電性材料を複数回重ねて印刷することにより、前記外部端子電極となる表面端子部を形成する電極印刷工程とを含むことを特徴とする積層電子部品の製造方法、がある。
上記手段にかかる製造方法では、ビア導体と外部端子電極とを別工程にて形成するため、樹脂テープの剥離とともに導体部が持ち去られたとしても、表面端子部を形成することにより、不利益を回避することができる。また、外部端子電極の形成にあたり導電性材料を複数回重ねて印刷する方法を採用しているため、所望とする十分な高さ及び所望とする形状(例えば多段構造)の外部端子電極を比較的簡単にかつ確実に得ることができる。
以下、積層電子部品の製造方法について説明する。
積層体形成工程では、前記内部電極層となる内部電極部を有し前記誘電体層となる複数のグリーンシートが積層され、前記ビア導体となる導体部が形成されたグリーンシート積層体を形成する。具体的には、例えば、前記内部電極層となる内部電極部を有し前記誘電体層となる複数のグリーンシートを積層一体化してグリーンシート積層体とした後、前記グリーンシート積層体にビアホールを形成し、さらに前記ビアホール内に前記導体部となる材料を充填する。
前記内部電極層となる内部電極部の形成は、例えば、あらかじめ作製されたグリーンシートに導電性金属ペーストを印刷すること等により行われる。内部電極部は、後に焼成されることで内部電極層となる。このような内部電極層形成用のペーストはニッケルを含むペーストであることが好ましい。
前記ビア導体となる導体部の形成においてビアホールの形成は、例えば、ドリル加工、パンチング加工、レーザー加工等といった従来周知の手法により行うことができる。導体部の形成は、ビアホール内に導電性金属ペーストを印刷して同ペーストを充填すること等により行うことも可能である。このようなビア導体形成用のペーストはニッケルを含むペーストであることが好ましい。
ここで、ビア導体形成用のニッケルペーストは、誘電体層との焼成収縮率のマッチングを得るために原料組成及び原料粒径の最適化が図られ、その結果100000Pa・s以上1000000Pa・s以下(東機産業株式会社製 RB80型粘度計T−バーロータ 0.5rpm 1分値 25℃)の極めて高い粘度に設定される。それに対して、内部電極層形成用のニッケルペーストは、均一に薄く形成する必要があるために、原料組成及び原料粒径の最適化が図られ、その結果10Pa・s以上30Pa・s以下(リオン株式会社製 ビスコテスター VT−04型粘度計 No.2ロータ 62.5rpm 1分値 25℃)の極めて低い粘度に設定される。そしてこの場合、内部電極層形成用のニッケルペーストは、メッシュマスクを用いて印刷されることが好適である。メタルマスクに比較してメッシュマスクのほうが、低粘度ペーストの印刷に適しているからである。なお、ニッケルペーストの粘度は、ニッケルの含有量や有機溶媒の添加量などの変更により増減することができる。
この場合における導体部の形成手法としては、充填容器と押圧板との間にグリーンシート積層体を配置して厚さ方向に圧力を加えながら導電性金属ペーストを充填する圧入充填法が好適である。即ち、ビア導体形成用のニッケルペーストは高粘度であり、積層によってビアホールの長さが長くなると、ペーストがビアホール内に充填されにくくなる。その点、圧入充填法によれば高粘度のニッケルペーストを確実に充填することができ、ビア導体の電気的特性の向上を図りやすくなるからである。
なお、積層体形成工程を以下のように行ってもよい。まず、前記内部電極層となる内部電極部を有し前記誘電体層となる複数のグリーンシートを積層してなるグリーンシートブロック体を複数形成する。次いで、それらのグリーンシートブロック体にビアホールを形成し、さらに前記ビアホール内に前記ビア導体となる導体部の形成用の材料を充填する。その後、前記複数のグリーンシートブロック体を積層一体化してグリーンシート積層体とする。
この場合における導体部の形成手法としては、充填容器と押圧板との間にグリーンシートブロック体を配置して厚さ方向に圧力を加えながら導電性金属ペーストを充填する圧入充填法が好適である。この手法によれば、高粘度のニッケルペーストを確実に充填でき、ビア導体の電気的特性の向上を図りやすくなる。
なお、積層体形成工程を以下のように行ってもよい。前記内部電極層となる内部電極部と、前記ビア導体となる導体部とを有し前記誘電体層となる複数のグリーンシートを積層一体化してグリーンシート積層体とする。
前記ビア導体となる導体部の形成においてビアホールの形成は、例えば、ドリル加工、パンチング加工、レーザー加工等といった従来周知の手法により行うことができる。
この場合における内部電極層となる内部電極部の形成は、例えば、あらかじめ作製されたグリーンシートに導電性金属ペーストを印刷すること等により行われる。内部電極部は、後に焼成されることで内部電極層となる。この場合における導体部の形成手法としては、ビアホール内に導電性金属ペーストを印刷して同ペーストを充填すること等により行うことが好ましい。導電性金属ペーストの印刷により、内部電極部と導体部を同時に形成することが可能である。このような導電性金属ペーストはニッケルを含むペーストであることが好ましい。
電極形成工程は積層体形成工程の後で行われる。電極形成工程では、グリーンシートにおいてビア導体の端部に対応した箇所に、導電性材料を複数回重ねて印刷する。そしてこの印刷により、所定の高さ及び形状を有する外部端子電極が形成される。なお、この工程では、段差部を有する多段構造の外部端子電極を形成してもよい。
導電性材料としては導電性金属ペーストが好適である。このような導電性金属ペーストは、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、タングステンから選択される1種または2種以上の金属を含むことが好ましい。これらのなかでもニッケルを含むペーストを選択することがよい。この場合、積層体との焼成収縮率のマッチング及び密着強度を得るために原料組成及び原料粒径の最適化が図られる。また、ペースト粘度については500Pa・s以上5000Pa・s以下(東機産業株式会社製 RE80型粘度計3°×R7.7ロータ 0.5rpm 1分値 25℃)に設定することが好ましく、500Pa・s以上2000Pa・s以下に設定することがより好ましい。ペースト粘度が500Pa・s未満であると、印刷を重ねたとしても所望の段差の形成が困難になるからである。一方、ペースト粘度が5000Pa・sを超えると、ペーストの版抜け性が悪化するおそれがあり、やはり所望の段差の形成が困難になるからである。なお、ニッケルペーストの粘度は、ニッケルの含有量や有機溶媒の添加量などの変更により増減することができる。
前記電極印刷工程では、マスクを用いて導電性金属ペーストの印刷を行うことが好適である。この工程で使用されるマスクは、金属材料を用いて形成された、ある程度剛性を有するマスクであることがよい。このようなマスクは繰り返して使用可能なため、材料費の低減につながり、低コスト化にも貢献するからである。そして具体的には、いわゆるメタルマスクを用いて導電性金属ペーストの印刷を行うことが最も好適である。メッシュマスクに比較してメタルマスクのほうが、高粘度ペーストの印刷に適しているからである。
前記電極印刷工程では、例えば、導電性金属ペーストの印刷を重ねる毎に個々の印刷層の印刷領域を小さくすることがよい。この方法によると、所望の段差を形成しやすくなる。これとは逆に、導電性金属ペーストの印刷を重ねる毎に個々の印刷層の印刷領域を大きくしてもよい。
また、前記電極印刷工程では、メタルマスクを用いた印刷を行う毎に、電極印刷された前記グリーンシート積層体の乾燥を行い、かつ、使用後のメタルマスクを別のメタルマスクと交換することが望ましい。この方法によれば、段差部を有する外部端子電極を形成する場合に、その形成精度が高くなる。
そして電極形成工程を行った後には焼成工程が行われ、この工程を経るとセラミック及びペースト中の金属が同時焼結する。焼成工程後には必要に応じて外部端子電極に対するめっき工程が行われる。
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した実施形態の積層セラミックコンデンサ及びその製造方法について図1〜図15に基づき説明する。図1は、本実施形態の積層セラミックコンデンサ11の概略断面図である。図2,図3は、積層セラミックコンデンサ11の内層における接続を説明するための概略説明図である。図4は、積層セラミックコンデンサ11における上面13側の外部端子電極41の概略断面図である。図5は、上面13側の外部端子電極41のSEM写真である。図6は、積層セラミックコンデンサ11における下面14側の外部端子電極42の概略断面図である。図7〜図15は、積層セラミックコンデンサ11の製造方法を説明するための概略断面図である。
図1等に示されるように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ11は、いわゆるビアアレイタイプの積層セラミックコンデンサである。積層セラミックコンデンサ11を構成する積層部12は、上面13(第1主面)及び下面14(第2主面)を有する板状物である。この積層部12は実際には上面13側に凸状の反り(反りの量約25μm)を有している。ただし、図面作成の便宜上、図1では反りのない積層部12が示されている(反りのある積層部12については図16,17を参照)。積層部12の上面13側には、ICチップ搭載基板16(半導体集積回路素子搭載基板)が搭載されるようになっている。一方、積層部12は、下面14側を下に向けた状態でマザーボード17上に搭載されるようになっている。積層部12は、多数のセラミック誘電体層15と多数の内部電極層21,22とを交互に積層した構造を有している。セラミック誘電体層15は、高誘電率セラミックの一種であるチタン酸バリウムの焼結体からなり、内部電極層21,22間の誘電体(絶縁体)として機能する。セラミック誘電体層15の厚さは5μm程度に設定されている。第1内部電極層21及び第2内部電極層22は、いずれもニッケルを主成分として形成された厚さ1.5μm〜1.8μm程度の層であって、積層部12の内部において一層おきに配置されている。
図1に示されるように、積層部12には多数のビアホール33が形成されている。これらのビアホール33は、積層部12をその厚さ方向に貫通するとともに、全面にわたって格子状(アレイ状)に配置されている。各ビアホール33内には、積層部12の上面13及び下面14間を貫通する複数のビア導体31,32が、ニッケルを主材料として形成されている。各第1ビア導体31は、各第1内部電極層21を貫通しており、それら同士を互いに電気的に接続している。一方、図3等に示されるように、各第1ビア導体31は、各第2内部電極層22に設けられたクリアランスホール35を貫通することにより、各第2内部電極層22とは電気的に絶縁されている。各第2ビア導体32は、各第2内部電極層22を貫通しており、それら同士を互いに電気的に接続している。一方、図2等に示されるように、各第2ビア導体32は、各第1内部電極層21に設けられたクリアランスホール34を貫通することにより、各第1内部電極層21とは電気的に絶縁されている。なお本実施形態では、ビア導体31,32の直径が100μm程度に設定され、ビアピッチが400μmに設定されている。また、各クリアランスホール34,35の直径は約300μmに設定されている。
そして図1等に示されるように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ11は、上面13及び下面14の両方に多数の外部端子電極41,42をそれぞれ備えている。上面13側の外部端子電極41は、ICチップ搭載基板16が有する電極19に対して、はんだバンプ18を介して電気的に接続される。一方、下面14側の外部端子電極42は、マザーボード17側が有する電極に対して、はんだを介することなく機械的な接触のみをもって電気的に接続される。よって、これら2種の外部端子電極41,42は異なる形状を有している。
図4,図5等に示されるように、上面13側に配置された外部端子電極41は、電極下段部51上に電極上段部52を積み重ねた2段構造であって、電極下段部51と電極上段部52との境界に段差部53(くびれ部)を有している。図4に示されるように、外部端子電極41の高さは40μm程度に設定されている。つまり、本実施形態では、外部端子電極41の高さが反りの量の1.6倍となっている。外部端子電極41はニッケルを主材料として形成されるとともに、その表面がめっき層43(ニッケルめっき層及び金めっき層)によって全体的に被覆されている(図1では便宜上めっき層43を省略)。外部端子電極41の底面略中央部は、積層部12の上面13から若干引っ込んだビア導体31,32の端面に対して直接接続されている。
上面13に垂直な方向(部品厚さ方向)から見たときの電極下段部51の形状は略円形状であり、その直径は約200μmである。同じく部品厚さ方向から見たときの電極上段部52の形状は略円形状であり、その直径は約160μmである。つまり、部品厚さ方向から見たときの電極上段部52の投影面積は、部品厚さ方向から見たときの電極下段部51の投影面積よりも小さくなっている。また、部品厚さ方向から見たときの電極上段部52の投影面積は、部品厚さ方向から見たときのビア導体31,32の投影面積よりも大きくなっている。
図6等に示されるように、下面14側に配置された外部端子電極42も、ニッケルを主材料として形成されるとともに、その表面がめっき層43(ニッケルめっき層及び金めっき層)によって被覆されている(図1では便宜上めっき層43を省略)。そして、外部端子電極42の底面略中央部は、下面14から若干引っ込んだビア導体31,32の端面に対して直接接続されている。
下面14側の外部端子電極42は、1段構造であって特に段差部53(くびれ部)を有していない点で、上面13側の外部端子電極41とは形状が異なっている。外部端子電極42の高さは20μm程度に設定され、上面13側の外部端子電極41の約半分の値となっている。また、部品厚さ方向から見たときの電極上段部52の形状は略円形状であり、その直径は約350μmである。即ち、上面13側の外部端子電極41は厚膜・小径であるのに対し、下面14側の外部端子電極42は薄膜・大径となっている。
マザーボード17側から外部端子電極42を介して通電を行い、第1内部電極層21−第2内部電極層22間に電圧を加えると、第1内部電極層21に例えばプラスの電荷が蓄積し、第2内部電極層22に例えばマイナスの電荷が蓄積する。その結果、積層セラミックコンデンサ11がコンデンサとして機能する。また、この積層セラミックコンデンサ11では、第1ビア導体31及び第2ビア導体32がそれぞれ交互に隣接して配置され、かつ、第1ビア導体31及び第2ビア導体32を流れる電流の方向が互いに逆向きになるように設定されている。これにより、インダクタンス成分の低減化が図られている。
次に、本実施形態の積層セラミックコンデンサ11の製造方法について述べる。
(1)グリーンシート61の形成
まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の長尺状のキャリアフィルム(図示略)上にチタン酸バリウム等からなるセラミックスラリーを均一に薄く塗布して乾燥させる。これにより、キャリアフィルム上にセラミックのグリーンシート61が形成される。この後、グリーンシート61を一定形状で切り出す作業が行われる。このグリーンシート61は焼成後にセラミック誘電体層15となる。
(2)内部電極部121,122の形成
次に、グリーンシート61に図示しないメッシュマスクを配置して、内部電極層用ニッケルペーストP1をスクリーン印刷し乾燥させることにより、後に内部電極層21,22となる内部電極部121,122を形成する(図7参照)。第1内部電極層21における所定の位置にはクリアランスホール34が形成され、第2内部電極層22における所定の位置にはクリアランスホール35が形成されている。このとき印刷厚は2μm〜3μmに設定される。ここで使用する内部電極層用ニッケルペーストP1は約55質量%無機固形分と約45質量%ビヒクルとを含んでいる。無機固形分は、ニッケル粉末(DSEM=0.4μm)と、共材(チタン酸バリウム粉末)とからなる。ビヒクルは、樹脂(エトセル)と、有機溶剤(テルピネオール)とからなる。そして、このような組成のペーストP1の粘度は、印刷時に約20Pa・s(リオン株式会社製 ビスコテスター VT−04型粘度計 No.2ロータ 62.5rpm 1分値 25℃)に調整される。
(3)グリーンシート61の積層圧着
次に、内部電極が印刷された複数枚のグリーンシート61を積層する。その際、第1内部電極部121が形成されているグリーンシート61と、第2内部電極部122が形成されているグリーンシート61とを交互に配置する(図8参照)。そして、従来周知のラミネート装置を用いて、所定温度条件下でシート積層方向に押圧力を付与することにより、各グリーンシート61を圧着して一体化させる。その結果、厚さ1mm程度のグリーンシート積層体62が得られる。本実施形態では、積層圧着時の温度を60℃〜80℃に設定し、押圧力を300kg/cm2〜1000kg/cm2に設定することとしている。また、積層数を100層〜120層程度に設定している。積層数については、要求されるスペック等に応じて任意に変更可能である。
(4)レーザー照射によるビアホール33の形成
次に、レーザー加工機を用いてレーザービームを照射することにより、グリーンシート積層体62に直径約120μmのビアホール33を多数個貫通形成する(図9参照)。
(5)圧入充填法による導体部131,132の形成
ここで使用するビア導体用ニッケルペーストP2は90質量%の無機固形分と10質量%のビヒクルとを含んでいる。無機固形分は、ニッケル粉末(DSEM=0.4μm〜3μm)と、共材(チタン酸バリウム粉末)とからなる。ビヒクルは、(エトセル)と、有機溶剤(テルピネオール)と、添加剤(分散剤、酸化防止剤等)からなる。そして、このような組成のペーストP2の粘度は、充填性を考慮して100000Pa・s〜1000000Pa・s(東機産業株式会社製 RB80型粘度計T−バーロータ 0.5rpm 1分値 25℃)の範囲内にて設定され、好ましくは200000Pa・s〜300000Pa・sの範囲内にて設定される。
次に、ペースト圧入充填装置を用いて、上記のビア導体用ニッケルペーストP2を各ビアホール33内に充填する。ここで使用されるペースト圧入充填装置は、充填容器及び押圧板を備えている。充填容器内にはビア導体用ニッケルペーストP2が満たされている。充填容器の底部には底板が上下動可能に設けられている。ビアホール33が形成されたグリーンシート積層体62はその充填容器上に載置され、さらにそのグリーンシート積層体62上には押圧板が配置される。そして、この状態で前記底板を押し上げることにより厚さ方向に圧力を加え、ビア導体用ニッケルペーストP2を各ビアホール33内に充填する(図10参照)。このような圧入充填法によれば、高粘度のビア導体用ニッケルペーストP2を各ビアホール33内に確実に充填することができ、ビア導体31,32の電気的特性の向上が図りやすくなる。なお、圧入充填時に加える圧力は、ビアホール33の直径やビア導体用ニッケルペーストP2の粘度等のパラメータにもよるが、本実施形態の条件下では2.0MPa〜7.5MPaの範囲内で設定されることが好ましい。下限値である2.0MPa以上に設定することで、各ビアホール33内にビア導体用ニッケルペーストP2を確実に充填することができる。また、上限値である7.5MPa以下に設定することで、グリーンシート積層体62に対する過剰の押圧力付加が避けられ、クラック等の発生を未然に防止することができる。
また、ペースト充填に際してビアホール33内のエアは適宜の方法により外部に排出されることがよい。具体的には、押圧板の下面に通気性を有するシートを配置したり、押圧板自体を多孔質で通気性のある板材としたりすればよい。押圧板にこのような工夫を施すことにより、ペーストP2の充填性をいっそう高めることができる。
(6)上面13側における表面端子部141の形成
ここで使用する上面側外部端子電極用ニッケルペーストP3は80.0質量%の無機固形分と20.0質量%のビヒクルとを含んでいる。無機固形分は、ニッケル粉末(DSEM=0.4〜3.0μm)と、共材(チタン酸バリウム粉末)とからなる。ビヒクルは、樹脂(エトセル)と、有機溶剤(テルピネオール)とからなる。そして、このような組成のペーストP3の粘度は、印刷時に約1000Pa・s(東機産業株式会社製 RE80型粘度計3°×R7.7ロータ 0.5rpm 1分値 25℃)となるように調整される。
次に、上記の上面側外部端子電極用ニッケルペーストP3を印刷するに際し、導体部131,132が形成されたグリーンシート積層体62を、従来周知のペースト印刷装置にセットする。そして、グリーンシート積層体62の上面13上に、メタルマスク71を重ね合わせるようにして配置する。このメタルマスク71は、電極下段部51印刷用のメタルマスクであって、電極下段部51を形成すべき箇所に複数の開口部73が透設されている。本実施形態ではメタルマスク71の厚さは約30μmに設定されている。このようなマスク配置状態でメタルマスク71の上面に上面側外部端子電極用ニッケルペーストP3を供給し、スキージの移動によってそのペーストP3を刷り込むようにする。すると、各開口部73を介してペーストP3が印刷され、グリーンシート積層体62の上面13側にて各導体部131,132の上端面を覆うように電極下段部51が形成される(図11参照)。印刷後、メタルマスク71とグリーンシート積層体62とを引き離し、メタルマスク71から電極下段部51を版抜けさせる。なお、本実施形態では高粘度ペーストの印刷に適したメタルマスク71を用いているため、所望の形状を保持したまま電極下段部51を容易に版抜けさせることができる。
ここでグリーンシート積層体62をいったんペースト印刷装置から取り外して、電極下段部51を所定時間、所定温度で乾燥させる。その結果、電極下段部51中に含まれる有機溶剤量を低減し、電極下段部51をある程度固化させる。このような乾燥を行っておくと、後でペーストP3の重ね塗りを行った場合でも電極下段部51の形状が崩れにくくなり、ひいては上面13側の外部端子電極41の形成精度が高くなる。
次に、グリーンシート積層体62を再びペースト印刷装置にセットし、その上面13側に別のメタルマスク72を配置する。このメタルマスク72は、電極上段部52印刷用のメタルマスク(厚さ30μm)であって、電極上段部52を形成すべき箇所に複数の開口部74が透設されている。開口部74の開口面積は開口部73の開口面積よりも小さく設定されており、今回の印刷時のほうが前回の印刷時に比べて印刷層の印刷領域が小さくなっている。なお、メタルマスク72における各開口部74の下側開口縁は、電極下段部51の上面に当接して支持される。従って、メタルマスク72は、グリーンシート積層体62の上面13から若干浮いた状態で配置される。かかる配置態様を採ることは、確実に段差をつけるうえで好都合である。そして、このようなマスク配置状態で上面側外部端子電極用ニッケルペーストP3を刷り込むようにすると、各開口部74を介してペーストP3が印刷され、電極下段部51上に電極上段部52が積み重ねられるようにして形成される(図12参照)。本実施形態では、使用後のメタルマスク71を別のメタルマスク72に交換して印刷を行っているため、上面13側の外部端子電極41の形成精度を向上させることができる。
印刷後、メタルマスク72とグリーンシート積層体62とを引き離し、メタルマスク72から電極上段部52を版抜けさせる。なお、本実施形態では高粘度ペーストの印刷に適したメタルマスク72を用いているため、所望の形状を保持したまま電極上段部52を容易に版抜けさせることができる。この後、グリーンシート積層体62をペースト印刷装置から取り外して電極上段部52を乾燥させる。その結果、電極下段部51上に電極上段部52を積み重ねた2段構造であって、電極下段部51と電極上段部52との境界に段差部53を有する所望の表面端子部141が、上面13側に形成される(図13参照)。なお、この表面端子部141は、後に焼成されて外部端子電極41となる。
(7)下面14側における表面端子部142の形成
ここで使用する下面側外部端子電極用ニッケルペーストP4は、70.0質量%の無機固形分と30.0質量%のビヒクルとを含んでいる。無機固形分は、ニッケル粉末(DSEM=0.4〜3.0μm)と、共材(チタン酸バリウム粉末)とからなる。ビヒクルは、樹脂(エトセル)と、有機溶剤(テルピネオール)とからなる。そして、このような組成のペーストP4の粘度は、印刷時に約100Pa・s(東機産業株式会社製 RE80型粘度計3°×R7.7ロータ 5rpm 1分値 25℃)に調整される。
次に、上記の下面側外部端子電極用ニッケルペーストP4を印刷するに際し、導体部131,132が形成されたグリーンシート積層体62を、従来周知のスクリーン印刷装置にセットする。そして、グリーンシート積層体62の下面14上に、メッシュマスク81を重ね合わせるようにして配置する(図14参照)。このメッシュマスク81は、下面14側の外部端子電極42を形成すべき箇所がメッシュ部82となっている。このようなマスク配置状態でメッシュマスク81の上面に下面側外部端子電極用ニッケルペーストP4を供給し、スキージの移動によってそのペーストP4を刷り込むようにする。このとき印刷厚は約25μmに設定される。すると、各メッシュ部82を介してペーストP4が印刷され、グリーンシート積層体62の下面14側にて各導体部131,132の下端面を覆うように表面端子部142が形成される。印刷後、メッシュマスク81とグリーンシート積層体62とを引き離し、メッシュマスク81から表面端子部142を版抜けさせる(図15参照)。なお、本実施形態では低粘度ペーストの印刷に適したメッシュマスク81を用いているため、クラック等を生じさせることなく表面端子部142を容易に版抜けさせることができる。この後、グリーンシート積層体62をスクリーン印刷装置から取り外して乾燥を行い、表面端子部142をある程度固化させる。
(8)溝入れ、脱脂、同時焼成、めっき、ブレーク
次に、グリーンシート積層体62にブレーク用の溝を格子状に入れた後、このグリーンシート積層体62を脱脂し、さらに所定温度で所定時間焼成を行う。その結果、チタン酸バリウム及びペーストP1〜P4中のニッケルが同時焼結し、セラミック焼結体となる。なお、上面13側と下面14側とでは焼成収縮率が異なるため、通常はこの時点で反りが発生する。焼成収縮率が異なる理由は、本実施形態の場合、上面13側における表面端子部141の占有面積よりも、下面14側における表面端子部142の占有面積のほうが大きいことが要因の1つである。即ち、占有面積の大きい下面14側の焼成収縮率が相対的に大きくなり、結果として上面13側に凸の反りが発生する要因となっている。
次に、得られたセラミック焼結体が有する各外部端子電極41,42に対して無電解ニッケルめっき(厚さ0.5μm〜3.0μm程度)を行い、続いて無電解金めっき(厚さ0.1μm〜1.0μm程度)を行う。外部端子電極41,42の表面にめっきが施されていないと、共材として含まれるチタン酸バリウムが表面に露出してしまう。その点、めっき層43があるとチタン酸バリウムが表面に露出しなくなり、めっき濡れ性の向上が図られる。そして、めっきを行った後に前記溝に沿ってセラミック焼結体をブレークすれば、複数の積層セラミックコンデンサ11を得ることができる。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)図16,図17は、積層部12の反りの量91よりも外部端子電極41の高さ90のほうが大きい本実施形態の積層セラミックコンデンサ11を示す。図16ははんだ付け前の状態、図17ははんだ付け後の状態である。これに対する比較例(従来例)の積層セラミックコンデンサ11Aを図18に示す。図18においては、積層部12の反りの量91よりも外部端子電極41の高さ90のほうが小さくなっている。比較例のものは、外部端子電極41Aが単純な形状であって、表面積もあまり大きくないため、はんだバンプ18との接触面積が小さい。従って、外部端子電極41Aと、ICチップ搭載基板16の電極19とのはんだ接合が不完全になりやすい。これに対して本実施形態のものは、外部端子電極41の形状が複雑であって、表面積も大きくなっているため、はんだバンプ18との接触面積も大きい。従って、外部端子電極41の先端のコプラナリティが多少悪くても、はんだバンプ18を介して接続した場合に好適な接合状態を得ることができる(図17参照)。よって、ICチップ搭載基板16(他部品)との接続信頼性に優れた積層セラミックコンデンサ11を提供することができる。
(2)また、本実施形態の製造方法によると、ビア導体31,32と外部端子電極41とを別工程にて形成するため、樹脂テープの剥離とともに導体部131,132が持ち去られたとしても、表面端子部141を形成することにより、不利益を回避することができる。また、外部端子電極41の形成にあたりニッケルペーストP3を2回重ねて印刷する方法を採用しているため、所望とする十分な高さ及び所望とする多段構造の外部端子電極41を比較的簡単にかつ確実に得ることができる。
(3)外部端子電極41の底面略中央部は、積層部12の上面13から若干引っ込んだビア導体31,32の端面に対して直接接続されている。換言すると、外部端子電極41の底面略中央部は、上面13あるいは下面14より積層部12内部側で、ビア導体31,32の端面に対して接続されている。このため、外部端子電極41の一部がビアホール33内に埋まった状態となり、結果として外部端子電極41の接合強度が向上する。
[第2実施形態]
次に、図19〜図22に基づき第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態のときとは若干異なる方法で積層セラミックコンデンサ11の製造を行っている。
第1実施形態で示した「(1)グリーンシート61の形成」、「(2)内部電極部121,122の形成」及び「(3)グリーンシート61の積層圧着」を順次実施して、複数(本実施形態では3つ)のグリーンシートブロック体161を作製する(図19参照)。これらのグリーンシートブロック体161は、後に複数のセラミック誘電体層15となる複数のグリーンシート61を積層してなる。グリーンシート61の片側面には、後に内部電極層21,22となる内部電極部121,122が形成されている。
次に、第1実施形態で示した「(4)レーザー照射によるビアホール33の形成」を実施し、各グリーンシートブロック体161に直径約120μmのビアホール33を多数個貫通形成する(図20参照)。さらに、第1実施形態で示した「(5)圧入充填法による導体部131,132の形成」を実施し、各ビアホール33内に、後にビア導体31,32となる導体部131,132を充填形成する(図21参照)。次に、電極充填後の各グリーンシートブロック体161を積層一体化してグリーンシート積層体62とする(図22参照)。この後、第1実施形態で示した「(6)上面13側における表面端子部141の形成」、「(7)下面14側における表面端子部142の形成」及び「(8)溝入れ、脱脂、同時焼成、めっき、ブレーク」を順次実施する。
そして、以上のようなプロセスによっても所望の積層セラミックコンデンサ11が製造可能である。特にこのプロセスによれば、積層数の多い積層セラミックコンデンサ11を比較的容易に得ることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限度において、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
次に、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)第1主面及び第2主面を有するとともに、前記第1主面側に凸の反りを有し、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層された構造の積層部と、前記複数の誘電体層を貫通し、前記複数の内部電極層を電気的に接続するビア導体と、前記ビア導体とは別体で形成され、前記第1主面側にて前記ビア導体に接続された外部端子電極とを備え、前記外部端子電極の高さが前記反りの量よりも大きいことを特徴とする積層電子部品。
(2)第1主面及び第2主面を有するとともに、反りを有し、複数のセラミック誘電体層とニッケルを主成分として形成された複数の内部電極層とが交互に積層された構造の積層部と、ニッケルを主成分として形成され、前記複数のセラミック誘電体層を貫通し、前記複数の内部電極層を電気的に接続するビア導体と、ニッケルを主成分として前記ビア導体とは別体で形成され、前記第1主面側にて前記ビア導体に接続された外部端子電極とを備え、前記外部端子電極の高さが前記反りの量よりも大きいことを特徴とする積層電子部品。
(3)第1主面、第2主面、複数のセラミック誘電体層、複数の第1内部電極層及び複数の第2内部電極層を有するとともに、反りを有し、前記第1内部電極層及び前記第2内部電極層が前記セラミック誘電体層を介して一層おきに積層配置された構造の積層部と、前記複数のセラミック誘電体層を貫通し、前記複数の第1内部電極層を電気的に接続する第1ビア導体と、前記複数のセラミック誘電体層を貫通し、前記複数の第2内部電極層を電気的に接続する第2ビア導体と、前記ビア導体とは別体で形成され、前記第1主面側にて前記第1ビア導体に接続された外部端子電極とを備え、前記外部端子電極の高さが前記反りの量よりも大きいことを特徴とする、ビアアレイタイプの積層セラミックコンデンサ。
(4)反りを有する積層部の表面に、前記反りの量よりも高い外部端子電極が配置された積層電子部品の製造方法であって、前記内部電極層となる内部電極部を有し前記誘電体層となる複数のグリーンシートを積層してなるグリーンシートブロック体を複数形成し、それらのグリーンシートブロック体にビアホールを形成し、さらに前記ビアホール内に前記ビア導体となる導体部の形成用の材料を充填した後、前記複数のグリーンシートブロック体を積層一体化してグリーンシート積層体とする積層体形成工程と、前記グリーンシート積層体において前記導体部の端部に対応した箇所に、導電性材料を複数回重ねて印刷することにより、前記外部端子電極となる表面端子部を形成する電極印刷工程と、を含むことを特徴とする積層電子部品の製造方法。
(5)前記電極印刷工程では、前記導電性材料の印刷を重ねる毎に個々の印刷層の印刷領域を小さくすることを特徴とする、上記(4)記載の積層電子部品の製造方法。
(6)前記電極印刷工程では、メタルマスクを用いて印刷を行うことを特徴とする、上記(4)記載の積層電子部品の製造方法。
(7)前記電極印刷工程では、粘度が500Pa・s以上5000Pa・s以下のニッケルペーストを印刷することを特徴とする、上記(4)記載の積層電子部品の製造方法。