JP2006045681A - 頭飾用再生コラーゲン繊維の製造方法及び連続乾燥装置 - Google Patents

頭飾用再生コラーゲン繊維の製造方法及び連続乾燥装置 Download PDF

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Abstract

【課題】頭飾用再生コラーゲン繊維の製造工程において、毛羽(糸切れ)の発生を防いで工程トラブルを防止するとともに、カールセット性に優れ且つハックリングロスの少ない再生コラーゲン繊維を生産できる製造方法及びその連続乾燥装置を開発する。
【解決手段】頭飾用再生コラーゲン繊維の製造方法及び連続乾燥装置において、まず、乾燥装置に導入する繊維束に撚りを入れて、出入口に駆動ロールを設置して、出入口のいずれか一方の駆動ロールを一定速度で回転させ、出口駆動ロールの乾燥室側に設置した張力検出器から繊維張力を検出し、その出口張力が所望値になるよう他方の駆動ロールの回転速度を制御する機構を備え、乾燥中の繊維束の張力が出口張力より低く、且つ、出入口間の張力差が小さくなるよう入口から出口の間に自在に回転するフリーロールを所定の間隔で設置した装置を用いて、乾燥時の繊維束の張力を制御しながら、連続乾燥を行う。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウィッグやヘアアクセサリーなどの頭飾用再生コラーゲン繊維の製造において、繊維束に撚りを入れること、及び、乾燥中の繊維束の張力を所望値に制御することを特徴としており、毛羽(糸切れ)の発生を防ぎ、カールセット性に優れ且つハックリングロスの少ない再生コラーゲン繊維を連続で乾燥する方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
再生コラーゲン繊維は、一般に、動物の皮や骨を原料として、これにアルカリまたは酵素処理を施し、コラーゲンのテロペプチド部を分解除去して水に可溶なコラーゲンとし、これを紡糸する方法で製造される。さらに、この紡糸された繊維にはその用途に応じて様々な処理が施される。一例を示すと、コラーゲンに単官能エポキシ化合物とアルミニウム塩とを用いた2つの方法を組み合わせた処理が施され(特許文献1)、その処理後、繊維中の含水を除去するために乾燥処理が施される。
【0003】
再生コラーゲン繊維は、乾燥する前の含水糸の引張り強度が非常に弱く乾燥時に糸切れ(毛羽)が発生し易い、乾燥時に収縮はするが延伸できず無理に延伸すると切断する、また、乾燥時の収縮挙動が乾燥条件により大きく変化する性質を持つ。さらに、糸切れを恐れるがあまり乾燥時の張力を低下させ過ぎると、乾燥終了時の再生コラーゲン繊維の収縮率が大きくなり頭飾用繊維の重要品質の一つであるカールセット性が発現せず、商品価値が低下するという問題がある。
【0004】
再生コラーゲン繊維の乾燥方法として、バッチ方式の乾燥条件に関しては、乾燥温度は、100℃以下、さらには75℃以下、荷重は、1dtexに対して0.01〜0.25g重、特に0.02〜0.15g重の重力下で乾燥するのが好ましいことが開示されている(特許文献1)。しかしながら、生産性を向上させる観点からは、連続方式での乾燥方法及びその装置の開発が不可欠となるが、毛羽(糸切れ)の発生や乾燥機内を走行する繊維の張力制御等の課題が挙げられ、再生コラーゲン繊維の連続乾燥は実用化されていない状況にある。
【0005】
アクリル系やアミド系繊維等の一般的な合成繊維の製造に関しては、それらの繊維は再生コラーゲン繊維とは異なり、乾燥および熱処理時に延伸できることから、複数の駆動ロールを用いた熱風乾燥方式やヒートロール方式の汎用的な乾燥機が用いられ、乾燥工程を含め乾燥以降の工程では繊維の垂れが発生しないよう、或いは、繊度を調整するため、或いは、強度等の品質向上を目的とし、駆動ロールの回転速度を工程の出口に近づくとともに徐々に上げて、延伸しつつ乾燥しているのが現状である。それに対して再生コラーゲン繊維の場合、乾燥時に延伸できない。無理に延伸すると繊維束の破断が発生して工程トラブルにつながる。さらに、延伸せずそのまま連続的に乾燥しようとすると、乾燥中の繊維束に乾燥斑ができ、繊維の収縮長さに違いが生じて乾燥後半で糸垂れが発生し、その垂れた糸がロールに巻き付いたりロールから外れたりする。結果として、それが糸切れ或いは繊維束の破断を引き起こして、運転できない状況に陥る。
【0006】
一方、一定張力を保持しながら連続乾燥する方法やその装置についていくつかの先行文献がある。例えば、銅アンモニアレーヨン繊維の寸法安定性向上を目的とし、低張力を保持するために乾燥機を複数機設けてその間に複数の駆動ロール(糸送り装置)を設置した装置が開示されている(特許文献2)。しかし、再生コラーゲン繊維の乾燥にこの装置を採用した場合、各駆動ロール間の繊維張力を一定に保持することが困難となる。というのは、再生コラーゲン繊維を乾燥すると、減率乾燥域に入った付近で急激に収縮が起こる、また、乾燥条件が変わると繊維の収縮挙動が大きく変化することから、繊維が収縮する位置を乾燥機内のある位置に特定できず、その位置が乾燥機内で移動してしまうからである。よって、繊維の収縮挙動を駆動ロールの減速比で合致させることは極めて難しく、繊維張力が高くなる区間と低くなる区間ができてしまい、繊維張力が高くなる区間では糸切れ(毛羽)が発生し、低くなる区間では糸垂れが発生することになり工程トラブルにつながる。
【0007】
また、毛羽の少ない高モジュラスタイプのPPTA繊維を製造することを目的とし、一定張力を付与して乾燥する方法として、複数のネルソンローラーやテーパー付きローラーの使用を記載した文献がある(特許文献3)。しかし、再生コラーゲン繊維の乾燥にこの装置を採用した場合も、上述した理由により、ネルソンローラーやテーパー付きローラーの緩和角度を繊維の収縮挙動に合致させることは難しく、繊維張力が高くなる箇所では糸切れ(毛羽)が発生し、繊維張力が低くなる箇所では糸垂れが起こることになる。
【0008】
さらに、耐摩耗性の優れた高モジュラス繊維を製造することを目的とし、一定張力下で乾燥する1つの方法として、糸を加熱されたロール(ヒートロール)上及びロール間に通すことを記載した文献がある(特許文献4)。しかし、再生コラーゲン繊維の乾燥にこのヒートロールを採用した場合、通常の直銅型ヒートロールでは、乾燥が進行するとともに糸が収縮して張力が上昇し続ける。その結果、張力の制御が不可能となるため繊維束(トウ)の破断を避けられない。よって、再生コラーゲン繊維の場合は、ヒートロール単独での連続乾燥運転はできない。
【0009】
そのほか、湿潤時わずかに収縮することを特徴とするセルロース系血液処理用中空繊維の製造を目的とし、引張り張力をコントロールしつつ乾燥する方法として、導糸ローラーの回転速度をコントロールすることが見出されている(特許文献5)。この装置の特徴は、乾燥機の出入口に駆動ロール(導糸ローラーと巻き取りローラー)を設置した構造で、乾燥機内にロールが存在しないワンパスの乾燥機になっていることである。ここで、再生コラーゲン繊維の乾燥において、品質を考慮した操作条件(乾燥時間30分以上)と生産性(処理速度3m/分以上)の観点から乾燥機の滞留長を算出すると、少なくとも90m以上必要となる。よって、90m以上のワンパス乾燥機の実現は、横型或いは縦型にするにしても立地条件、建設費、操作性等を考慮した場合極めて困難になることから、乾燥機内にロールが存在しないワンパス乾燥機を再生コラーゲン繊維の乾燥に採用することは現実的でない。
【0010】
以上のことから、頭飾用再生コラーゲン繊維の製造において、工程トラブルを起こすことなく、品質に優れた再生コラーゲン繊維を連続で乾燥できる方法及びその装置は未だ見出されていない。
【0011】
【特許文献1】
WO02/52099
【0012】
【特許文献2】
特開昭48−22710号公報
【0013】
【特許文献3】
特開昭60−88117号公報
【0014】
【特許文献4】
特開平4−214434号公報
【0015】
【特許文献5】
特開昭57−14359号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、温度や湿度等異なる条件で乾燥して再生コラーゲン繊維の収縮挙動が変化しても、工程トラブルを生じることなく、品質の優れた頭飾用再生コラーゲン繊維を製造できる、工業化可能な連続乾燥方法及びその装置を開発することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、乾燥室に導入する繊維束に所定数の割合で撚りを入れ、さらに乾燥中の繊維束の張力をある範囲内に制御しながら乾燥することで、再生コラーゲン繊維の連続乾燥が可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち本発明は、乾燥室に導入する繊維束に撚りを入れ、且つ、乾燥中の繊維束の張力が0.01〜0.08g重/dtexの範囲内となるように制御して連続で乾燥することを特徴とする頭飾用再生コラーゲン繊維の製造方法に関する。ここで、繊維束に入れる撚りの個数は、0.2〜5個/mの割合であるのが好ましい。さらには、このとき、乾燥室出口側の張力の値を0.02〜0.08g重/dtexの範囲に制御するのが好ましい。
【0019】
さらに本発明は、乾燥室の出入口に駆動ロールを設置して、出入口のいずれか一方の駆動ロールを一定速度で回転させ、出口駆動ロールの乾燥室側に設置した張力検出器から繊維張力を検出し、その出口張力が所望値になるよう他方の駆動ロールの回転速度を制御する機構を備え、さらに乾燥室内に1回以上繊維束を往復させるための自在に回転するフリーロールが、入口から出口の間に所定の間隔で設置されていることを特徴とした連続乾燥装置に関する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。本発明の対象となる頭飾用再生コラーゲン繊維は、例えば、可溶化コラーゲンを必要に応じて酸処理した後、水酸化ナトリウム、ホウ酸、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウムなどで適宜pH調整を行なった硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの無機塩を1種または2種以上を含む水溶液に、紡糸ノズルやスリットを通して、吐出し繊維化したものを、単官能エポキシ化合物やアルミニウム塩などで処理して耐水化させて得られる再生コラーゲン繊維(特許文献1参照)が挙げられるが、その他の頭飾用再生コラーゲン繊維にも適用できる。
【0021】
ここで、再生コラーゲン繊維の性質を説明する。図1に、バッチ乾燥時における再生コラーゲン繊維の収縮挙動の一例を示す。図1より、再生コラーゲン繊維は減率乾燥域に入った付近、すなわち、繊維の含水率が50〜70wt%−drybaseにまで低下した付近で急激に収縮することがわかる。従って、連続乾燥においては、再生コラーゲン繊維の収縮する割合は、連続乾燥装置内の各位置で異なることになる。また、この収縮挙動は乾燥条件により大きく変化するため、繊維の収縮する位置が乾燥諸条件によって乾燥装置内で移動する。さらに、再生コラーゲン繊維は乾燥時に収縮はするが、延伸はできず、無理に延伸しようとすると切断されてしまう性質がある。そこで、糸切れを恐れるがあまり乾燥時の張力を低下させ過ぎると、乾燥終了後の製品の収縮率が大きくなり、頭飾用繊維の重要品質の一つであるカールセット性が発現せず、商品価値がなくなるという問題がある。さらに、繊維束を連続でそのまま乾燥すると、乾燥斑が原因となり乾燥後半で糸垂れが発生し、その垂れた糸がロールに巻き付いたりロールから外れたりして、結果として糸切れやトウ(繊維束)切れを引き起こすという問題がある。ここで言う乾燥斑とは、繊維束の表面に位置する繊維は、中心部に位置する繊維より速く乾燥して収縮するという現象である。乾燥斑が起こると、その収縮した繊維束表面の繊維のみで繊維束全体の張力を支えることになることから、実質的には繊維束表面の繊維のみに高張力がかかった状態での乾燥となる。その結果、速く乾燥した繊維の収縮率は小さくなり、乾燥後半では繊維束中心部の繊維に比べて繊維長が長くなるため、乾燥後半で糸垂れを引き起こすことになるのである。一般的な化学繊維のように延伸できる糸では、乾燥時に徐々に延伸すれば糸垂れを防止できるが、再生コラーゲン繊維の場合、延伸できないためそうはいかない。
【0022】
本発明では、そのような性質を有する再生コラーゲン繊維を連続乾燥する際、乾燥室に導入する繊維束に撚りを入れ、かつ乾燥中の繊維束の張力を制御することで上記課題を解決する。本発明において、乾燥時の繊維束の量は5000フィラメント以下が好ましい。それ以上になると、繊維束が太くなり、繊維束の表面部と中心部との乾燥斑が大きくなり過ぎる傾向がある。
【0023】
本発明において、繊維束に一定数の撚りを入れる方法については、特に限定されないが、容器を一定速度で回転させながらその容器の中に繊維束を一定速度で入れる方法や、繊維束を入れた容器を一定速度で回転させながらその繊維束を乾燥機に導入する方法等があるが、いずれの方法を採用しても良い。なお、乾燥するのに好ましい撚りの数は0.2個/m〜5個/mである。繊維束に入れる撚りの数が0.2個/mより少ない場合、繊維束の収束性が悪くなり、乾燥斑により発生した糸垂れを十分に抑制できにくくなり、結果として糸切れや工程トラブルが引き起こされる場合がある。一方、撚りの数が5個/mより多い場合、繊維束の収束性が良くなり糸垂れを防止できるという点では良いが、乾燥糸に撚りの形状が残りやすくストレートな用途では使いにくくなる場合がある。
【0024】
さらに本発明においては、乾燥時の繊維束の張力が、全体を通じて0.01〜0.08g重/dtexの範囲内となるよう制御して乾燥を行う必要がある。乾燥時の一部の繊維束の張力が0.01g重/dtex未満の場合、その部分で繊維束の垂れや糸垂れが発生し、結果垂れた糸がロールに巻き付いたりロールから外れたりして工程トラブルの原因となる。さらに乾燥後の再生コラーゲン繊維の品質、特にカールセット性にも悪影響を与える。また、乾燥時の一部の繊維束の張力が0.08g重/dtexをこえる場合、その部分に負荷がかかり、糸切れが発生する。
【0025】
本発明において、乾燥時の繊維束の張力を0.01〜0.08g重/dtexの範囲内となるよう制御する方法としては特に限定されず任意の方法を用いることができるが、以下述べるような駆動ロールとフリーロールを組み合わせた連続乾燥装置を用いた場合、乾燥機内の繊維束の張力値は乾燥機入口から出口にかけて徐々に上昇することになる。よって、乾燥機出口での張力値を駆動ロールを用いて制御するだけで、乾燥機内全体の繊維束の張力を所望の値にすることが可能になることから、好ましい方法である。以下、本発明の製造方法において用いられる好ましい連続乾燥装置と、それを用いる方法について説明する。
【0026】
図2に、本発明の好ましい連続乾燥装置の概略を示す。乾燥室7の入口側および出口側に、駆動ロール4,8を設置する。この駆動ロールは、その回転速度によって繊維束の送り速度を自由にコントロールできるものであれば良く、繊維束の滑りを抑制できるもの、さらには繊維束の滑りを防止できるものが好ましい。すなわち、繊維とロール表面との摩擦を利用して滑りを防止する多連ロールでも良いし、ゴムを張ったロールを金属ロールに押し当てる構造のニップロールでも良い。また、多連ロールとニップロールを併用しても良い。
【0027】
乾燥室7の入口から出口の間には、自在に回転するフリーロール6を所定の間隔で設置する。ここで言うフリーロールとは、回転させた時の摩擦抵抗が小さいものと定義する。一般に、乾燥室の出口から入口に向かうとともに繊維束の張力は徐々に減衰するが、その張力の減衰量はフリーロールを構成するベアリングの摩擦抵抗の大きさで決まる。本発明において用いられるフリーロールは、(フリーロール1個当りの減衰張力)×(フリーロールの個数)で表現できる張力減衰量が0.03g重/dtex以下のものが好ましい。ここで、フリーロールのかわりに、一般的な繊維の乾燥に用いられるような駆動ロールを設置した場合には、繊維が著しく収縮する区間では張力が上昇して毛羽(糸切れ)が発生する。さらに、乾燥条件を変えると繊維の収縮挙動が大きく変化し、繊維の収縮する位置が乾燥室内で移動してしまうことから、乾燥室内に設置した駆動ロールの減速比を繊維の収縮挙動に合致させ、乾燥室内の繊維張力を均一に保持することが極めて困難となる。しかし、本発明のように自在に回転するフリーロールを設置すれば、入口から出口までのどの位置で繊維の収縮が起ころうとも、張力は分散されて乾燥機内部の繊維張力を出口張力より低く、且つ、出入口間の張力差を小さくすることが可能となる。
【0028】
本発明においては、出入口のいずれか一方の駆動ロールの回転速度を一定とし、出口駆動ロールの乾燥室側に設置した張力検出器5から信号を検出し、他方の駆動ロールの回転速度を、繊維の出口側張力値が一定になるように制御しながら乾燥することで乾燥中の繊維束全体の張力を制御することができる。なお、張力の制御方法は、PID制御を始めとする一般的な方法で良い。なお、PID制御とは、自動制御系において制御装置が行なう制御動作の一つで、比例動作、積分動作、微分動作を組み合わせたものである。
【0029】
本発明においては、乾燥終了時における毛羽数(糸切れ数)、ハックリングロス量及びカールセット性の観点から、乾燥室出口張力を0.02〜0.08g重/dtexの範囲内に制御するのが好ましい。出口張力を0.08g重/dtexより高く制御した場合、毛羽(糸切れ)が発生して工程トラブルを引き起こすとともにハックリングロス量も増大する。一方、乾燥室出口張力を0.02g重/dtexより低く制御した場合、頭飾用繊維の重要品質の1つであるカールセット性が発現しなくなる。また、乾燥室出口張力の値を0.02〜0.08g重/dtexの範囲内に制御することによって、上記好ましい張力減衰量となるフリーロールを設置した場合、乾燥時の繊維束の張力を全体を通じて0.01〜0.08g重/dtexの範囲内とすることができる。
【0030】
連続乾燥時の温度条件については、温度が高いほど繊維束表面と内部との間の乾燥斑が大きくなるため、100℃以下、さらには80℃以下で乾燥するのが好ましい。温度条件の下限値については特に限定されないが、あまり低すぎると乾燥に時間を要してしまうことはいうまでもない。
【0031】
以上、本発明は、温度や湿度等異なる条件で乾燥して再生コラーゲン繊維の収縮挙動が変化しても、乾燥中の繊維張力を所望値に制御できることが特徴であり、本発明の連続乾燥装置で繊維張力を制御すれば、乾燥室内を走行する繊維束の張力を乾燥室出口張力より低く、且つ、出入口間の張力差を小さくすることが可能となり、その結果として、毛羽(糸切れ)の発生を防いで工程トラブルを防止するとともに、カールセット性に優れ且つハックリングロスの少ない頭飾用再生コラーゲン繊維の連続生産を実現できる。
【0032】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。表1と表2に、実施例と比較例における乾燥条件と毛羽数(糸切れ数)、ハックリングロス率、カールセット性との関係を整理した。図3には、その例における乾燥装置内(乾燥中)の繊維束の張力変動を示した。乾燥に使用した再生コラーゲン繊維は、特許文献1記載の方法に準じて作製した。なお、実施例の記載に先立ち、繊維の収縮率、カールセット性、毛羽数(糸切れ数)、ハックリングロス率の測定及び評価方法を説明する。
【0033】
(繊維の収縮率)
乾燥入口で導入される単位時間当たりの繊維長L0と乾燥出口から出てくる単位時間当たりの繊維長L1を測定し、次式にて繊維収縮率を計算した。
【0034】
繊維収縮率(%)=(L0−L1)/L0×100
(カールセット性)
カール形状付与とカールセット保持性の評価を以下のように行なった。
(1)よく開繊した繊維束(6.3g/58.4cm)の中央にミシンをかけて、繊維長33cm、幅12cmの蓑毛を作った。
(2)その蓑毛を25℃、80%RHの雰囲気中に吊り状態で12時間以上放置した。
(3)上記蓑毛を4つ折りにして幅3cmとし、外径12mmのアルミ製パイプに1ピッチ当り1回のひねりを入れながら巻き付け、繊維束がずれないようにしっかりと両端を輪ゴムで固定した。
(4)巻き終ったロッドをスチームセッター(平山製作所製:HA-300P)に投入し80℃で4時間蓑毛を湿潤させた。その後、シリコン系油剤水溶液(0.44wt%)に5分浸し、熱風対流式乾燥機(タバイエスペック(株)製:PV-221)で90℃で1時間乾燥して、30分間放冷した。
(5)アルミ製パイプから蓑毛をはずし、シリコン系油剤水溶液(0.44wt%)中で蓑毛をほぐし、網の上にあげカール形状を整えた。その後、熱風対流式乾燥機で50℃で2時間乾燥した。
(6)蓑毛を下記の手順でシャンプーした。
【0035】
1)手にシャンプー剤((株)資生堂製:スーパーマイルドシャンプーフローラルフルーティー)を1/2ポンプ量取る。
【0036】
2)シャンプー剤を蓑毛に塗布し10回手揉み洗いする。
【0037】
3)40℃の温水で溜めすすぎをする。
【0038】
4)蓑毛を強く握り水分を絞る。
【0039】
5)蓑毛を吊り、手櫛を10回通す。
【0040】
6)再度、蓑毛の根元、真ん中、毛先の3箇所を強く握る。
【0041】
7)タオルに蓑毛を挟み、水分を吸収する。
【0042】
8)蓑毛に手櫛を3回通す。
【0043】
9)50℃で90分間蓑毛を吊り乾燥する。
(7)カール形状の耐シャンプー(繰り返しシャンプー回数によるカール形状の保持性)は、前記(6)の操作を3回繰り返し、カール形状が保持されているかを観察し、良好なカール形状保持性を示すものを○、ややカール形状が落ちているものを△、カール形状がほとんど観察されないものを×とした。
【0044】
(毛羽数(糸切れ数))
乾燥室の出口において、700フィラメントの繊維束72m当たりに存在する糸切れ本数を目視にて測定した。36本以下を合格とした。
【0045】
(ハックリングロス率)
70cmの44800フィラメントの繊維束を作製し、温度20±2℃、湿度65±2%RH環境下に8時間放置後、一方から50回、他方から50回計100回ハックリングを行い、ハックリング前重量W0とハックリング後重量W1から、次式にてハックリングロス率を計算した。1.0%以下を合格とした。
【0046】
ハックリングロス率(%)=(W0−W1)/W0×100
(実施例1)
図2に、実施例で用いた乾燥装置の概略図を示す。乾燥室7にロール径φ140mm、ロール長さ500mm、軸径φ25mmのフリーロール6(ベアリング:製品名6005ZE C3 NACHI)を6m間隔で23本設置して、滞留長を144m(6m×24パス)とした。乾燥室の出入口には、繊維束に滑りが起こらないよう多連ロールとニップロールを併用した駆動ロール4,8を設置して、乾燥室内には一定風速の熱風を吹き込んだ。また、乾燥室の出入口近傍に張力検出器5(LX-TD形張力検出器:三菱電機株式会社)を設置し、出口側張力検出器から信号を取り出し、出口側の張力値が一定になるよう出口駆動ロールの回転速度をPID制御した。乾燥条件は、温度65℃とし、出口側張力を0.036g重/dtex(20N/700f)に制御した。その時の入口側張力は0.018g重/dtex(10N/700f)であった。
【0047】
図3に示すように、出口から入口に向って張力は徐々に減衰するが、この理由はフリーロールが回転する際に発生するベアリングの摩擦抵抗によるものである。なお、乾燥装置には700フィラメントの繊維束を4本導入し、その各繊維束には0.5個/mの割合で撚りを入れた。単繊維の繊度は80dtexとし、繊維束の繊度は56000dtex、総繊度は224000dtexで乾燥した。
【0048】
上記の条件で乾燥した再生コラーゲン繊維の収縮率は7%であり、乾燥室出口における毛羽(糸切れ)数は8本/700f×72m、ハックリングロス率は0.1%で両評価とも合格基準をクリアしており、且つ、カールセット性も良好であった(表1参照)。
【0049】
(実施例2)
撚り数0.5個/mを1.0個/mにした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、繊維収縮率は7%であり、毛羽(糸切れ)数、ハックリングロス率とも合格基準をクリアしており、カールセット性も良好であった。
【0050】
(実施例3)
撚り数0.5個/mを0.25個/mにした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、繊維収縮率は7%であった。実施例1に比べ、繊維束の収束性が悪く毛羽(糸切れ)数が30本、ハックリングロス率が0.3%に増加したが、毛羽数、ハックリングロス率とも合格基準をクリアしており、カールセット性も良好であった。
【0051】
(実施例4)
乾燥温度65℃を50℃にした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、繊維収縮率は5%であった。毛羽(糸切れ)数、ハックリングロス率とも合格基準をクリアしており、カールセット性も良好であった。
【0052】
(実施例5)
乾燥温度65℃を75℃にした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、繊維収縮率は8%であった。毛羽(糸切れ)数、ハックリングロス率とも合格基準をクリアしており、カールセット性も良好であった。
【0053】
(実施例6)
出口側張力0.036g重/dtex(20N/700f)を0.054g重/dtex(30N/700f)にした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、入口側張力は0.034g重/dtex(19N/700f)で、図3に示すように、出口から入口に向って張力は徐々に減衰した。繊維収縮率は6%であった。毛羽(糸切れ)数、ハックリングロス率とも合格基準をクリアしており、カールセット性も良好であった。
【0054】
(実施例7)
出口側張力0.036g重/dtex(20N/700f)を0.071g重/dtex(40N/700f)にした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、入口側張力は0.050g重/dtex(28N/700f)で、出口から入口に向って張力は徐々に減衰した。繊維収縮率は4%であった。実施例1に比べ、繊維張力が高くなったため毛羽(糸切れ)数が33本、ハックリングロス率が0.4%に増加したが、毛羽数、ハックリングロス率とも合格基準をクリアしており、カールセット性も良好であった。
【0055】
(実施例8)
乾燥装置に2800フィラメントの繊維束を1本導入した以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、乾燥斑が大きくなり繊維束の収束性がやや低下して、毛羽(糸切れ)数、ハックリングロス率とも実施例1より増加したが、両評価とも合格基準をクリアしており、カールセット性も良好であった。
【0056】
(実施例9)
出口側の張力値が一定になるよう入口駆動ロールの回転速度をPID制御した以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、繊維収縮率は7%であり、毛羽(糸切れ)数、ハックリングロス率とも合格基準をクリアしており、カールセット性も良好であった。
【0057】
【表1】
Figure 2006045681
(比較例1)
撚り数0.5個/mを0個/m(撚り無し)にした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、実施例1では糸垂れが全く発生しなかったが、比較例1では乾燥後半で糸垂れが発生し、その垂れた糸がロールに巻き付いたりロールから外れたりして糸切れを引き起こし、途中で繊維束(トウ)が破断して運転を停止した。繊維束が破断するまでに実施した評価では、乾燥出口における毛羽(糸切れ)数は約200本/700f×72m、ハックリングロス率も5.2%と多く合格基準に達しなかった。
【0058】
(実施例10)
撚り数0.5個/mを0.17個/mにした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、乾燥後半で若干糸垂れが発生し、幾分糸切れを引き起こしたが、比較例1に比べれば軽度で、連続運転は可能であった。
【0059】
(実施例11)
撚り数0.5個/mを10個/mにした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、繊維束の収束性が高く、毛羽数、ハックリングロス率とも合格基準をクリアしており、カールセット性も良好であった。しかし、撚りの数が多いため、得られた乾燥糸には撚りの形状が若干残った。
【0060】
(比較例2)
出口側張力0.036g重/dtex(20N/700f)を0.018g重/dtex(10N/700f)にした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、入口側張力は0.005g重/dtex(3N/700f)で、図2に示すように、出口から入口に向って張力は徐々に減衰した。繊維収縮率は11%と高くなった。張力が低いため、毛羽(糸切れ)数、ハックリングロス率とも合格基準をクリアしていた。しかし、カールセット保持性は、乾燥時の収縮率が高くなったため、悪化した。
【0061】
(比較例3)
出口側張力0.036g重/dtex(20N/700f)を0.089g重/dtex(50N/700f)にした以外は、実施例1と同様にして実験した。その結果、入口側張力も0.066g重/dtex(37N/700f)と高くなり(図3参照)、繊維収縮率も2%と低い値になった。乾燥出口における毛羽(糸切れ)数は約150本/700f×72m、ハックリングロス率も4.0%と多く合格基準に達しなかった。
【0062】
(比較例4)
図4に、ネルソン乾燥機の概略図を示す。ロール径φ125mm、長さ625mmのテーパー付きロール9を使用したネルソン乾燥機を3機10、11、12連結して実験を行なった。なお、各乾燥機内のロール間距離は800mmとし、トウ(繊維束)を7.5ターン滞留させ、一定速度の熱風を吹き込むことにより乾燥した。各乾燥機のネルソンロール9については、3機とも収縮率が2.4%となるようにテーパー角度を調整したものを使用した。よって、3機連結した乾燥出口における繊維の収縮率は7.0%となる。乾燥温度は、65℃とした。なお、乾燥機に導入する繊維束は700フィラメントとし、その繊維束には0.5個/mの割合で撚りを入れた。単繊維の繊度は80dtexとし、繊維束の繊度は56000dtexとした。
【0063】
図3に示すように、乾燥機内の張力は、減率乾燥域に入り繊維が著しく収縮する位置で、0.214g重/dtex(120N/700f)まで急激に上昇した。その結果、乾燥出口での繊維の収縮率は実施例1と同じ7%であるにもかかわらず、乾燥機内で糸切れが発生して毛羽数は約300本/700f×72m、ハックリングロス率は7.8%と非常に多く合格基準を満たさなかった。また、トウ(繊維束)外観も悪く、商品価値のないものであった。
【0064】
(比較例5)
図2に示した乾燥装置のフリーロールを駆動ロールに変更して実験した。各駆動ロールの回転速度については、乾燥出口の繊維の収縮率が7.0%となるよう、すなわち、出口駆動ロールの回転速度を入口駆動ロール速度の93%となるよう調整した。また、乾燥室内の駆動ロールの速度は、乾燥入口から出口に近づくとともに、徐々に均等に低下させた。乾燥温度は65℃とした。なお、乾燥装置には700フィラメントの繊維束を4本導入し、その各繊維束には0.5個/mの割合で撚りを入れた。単繊維の繊度は80dtexとし、繊維束の繊度は56000dtex、総繊度は224000dtexで乾燥した。
【0065】
その結果、乾燥装置内の張力変動は、比較例4とほぼ同様の挙動となり、張力値は最大で0.205g重/dtex(115N/700f)まで上昇した。それにより、乾燥室出口での繊維の収縮率は実施例1と同じ7%であるにもかかわらず、乾燥室内で糸切れが発生して毛羽数は約300本/700f×72m、ハックリングロス率は7.4%と非常に高く合格基準を満たさなかった。また、トウ(繊維束)外観も悪く、商品価値のないものであった。
【0066】
(比較例6)
図5に、ヒートロール乾燥機の概略図を示す。ロール径φ565mm、幅500mmのヒートロール12個から構成される乾燥機を使用して実験した。トウ(繊維束)は、ガイドロール14を介して出口側から入口側のヒートロール13に戻し、ガイドロールの角度を調整して、ヒートロール上で12ターンさせた。ヒートロールは直胴の円筒型であり、各ヒートロールの駆動速度は等速とし、乾燥中の繊維の収縮率は0%とした。乾燥温度は、60〜70℃とした。なお、乾燥機に導入する繊維束は700フィラメントとし、その繊維束には0.5個/mの割合で撚りを入れた。単繊維の繊度は80dtexとし、繊維束の繊度は56000dtexとした。
【0067】
その結果、乾燥途中で張力が0.214g重/dtex(120N/700f)以上となり、トウ(繊維束)が破断して運転続行が不可能となった。
【0068】
【表2】
Figure 2006045681
【0069】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の連続乾燥方法とその装置により、頭飾用再生コラーゲン繊維の製造において、毛羽(糸切れ)の発生を防いで工程トラブルを防止するとともに、カールセット性に優れ且つハックリングロスの少ない再生コラーゲン繊維の連続生産を実現した。
【図面の簡単な説明】
【図1】バッチ乾燥における繊維収縮率と含水率の経時変化(繊維の収縮挙動)
【図2】フリーロール形式の乾燥装置の概略図(実施例1〜11、比較例1〜3)
【図3】乾燥装置内(乾燥中)の繊維束の張力変動
【図4】3機連結したネルソン乾燥機の概略図(比較例4)
【図5】ヒートロール乾燥機の概略図(比較例6)
【符号の説明】
1:繊維束(トウ)、2:ローラーポンプ、3:油剤槽、4:乾燥入口駆動ロール、5:張力検出器、6:フリーロール、7:乾燥室、8:乾燥出口駆動ロール、9:ネルソンロール(駆動)、10:ネルソン乾燥機1、11:ネルソン乾燥機2、12:ネルソン乾燥機3、13:ヒートロール(駆動)、14:ガイドロール

Claims (6)

  1. 乾燥室に導入する繊維束に撚りを入れ、且つ、乾燥中の繊維束の張力が0.01〜0.08g重/dtexの範囲内となるように制御して連続で乾燥することを特徴とする頭飾用再生コラーゲン繊維の製造方法。
  2. 繊維束に0.2〜5個/mの割合で撚りを入れることを特徴とする特許請求範囲第1項に記載の製造方法。
  3. 乾燥室出口側の張力の値を0.02〜0.08g重/dtexの範囲に制御することを特徴とする特許請求範囲第1項または第2項に記載の製造方法。
  4. 乾燥室の出入口に駆動ロールが設置され、出口駆動ロールの乾燥室側に張力検出器が設置され、その張力検出器から検出された乾燥室出口張力が所望値になるよう駆動ロールの回転速度を制御する機構を備えており、さらに乾燥室内に1回以上繊維束を往復させるための自在に回転するフリーロールが、入口から出口の間に所定の間隔で設置されていることを特徴とする連続乾燥装置。
  5. 特許請求範囲第4項記載の連続乾燥装置を用いて、入口駆動ロールの回転速度を一定とし、出口駆動ロールの回転速度を制御して乾燥することを特徴とする特許請求範囲第1項〜第3項記載の頭飾用再生コラーゲン繊維の製造方法。
  6. 特許請求範囲第4項記載の連続乾燥装置を用いて、出口駆動ロールの回転速度を一定とし、入口駆動ロールの回転速度を制御して乾燥することを特徴とする特許請求範囲第1項〜第3項記載の頭飾用再生コラーゲン繊維の製造方法。
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