JP2006057205A - 布帛及びスポーツウェア - Google Patents

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Abstract

【課題】吸湿性がありながら多量の発汗時にもべたつき低減効果に優れ、洗濯を繰り返しても風合いが硬くならないスポーツウエアに最適な布帛を提供する。
【解決手段】沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上50%以下であるセルロース系繊維を構成糸の全体重量の15〜60%、疎水性繊維フィラメントを構成糸の全体重量の40〜85%含有されていることを特徴とする布帛、および該布帛を用いてなるスポーツウエア。
【選択図】選択図なし。

Description

本発明は、セルロース系繊維を含有する布帛に関する。より詳細には、吸湿性がありながら多量の発汗時のべたつき低減効果に優れた布帛およびそれからなるスポーツウエアに関する。
従来、スポーツウエアには強度が強く、汗をかいてもべたつきが少ないことからポリエステル繊維が広く使用されている。しかしながらポリエステル繊維は疎水性繊維であり、吸湿性が乏しいため、着用時の不感蒸泄や、少量でも汗をかいた場合にはポリエステル繊維100%のスポーツウエアでは蒸れが生じ、着用感は不快である。
このため、綿やレーヨンなどの吸湿性に優れるセルロース繊維とポリエステル繊維などの疎水性繊維とを複合、あるいは交編、交織し、吸湿性を付与した布帛から構成されるスポーツウエアも広く使用されている。しかしながら綿やレーヨン繊維等のセルロース繊維は繊維自身の水との親和力が大きいため汗などの液体の水分を保持しやすく、一旦保持された水は拡散させにくいため、特にスポーツ時などで多量の汗をかいたときにべたつきが増大し、不快となる。また、綿やレーヨン繊維等のセルロース繊維は乾きも遅いため、汗が冷えるとさらに不快となる場合が多く、ポリエステル等を混用してもべたつきの低減効果は十分ではなかった。また、綿やレーヨン繊維は繊維比重が大きく嵩高性と軽量感に欠け、さらに、洗濯を繰り返すと水による膨潤、乾燥が繰り返されるため糸が膠着し、風合いが硬くなり、着用などで布帛が伸張された後の伸長回復率の低下が起こりやすいという問題点があった。
一方、高捲縮セルロースフィラメントを用いた編織物が記載されている(例えば、特許文献1参照)が、スポーツウエアに最適な布帛、すなわち、多量の発汗に対応するためには本発明に示した限定された混用方法が必要であり、それらについて何ら記載されていない。
特開2004−131890号公報
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決し、吸湿性がありながら発汗時のべたつき低減効果に優れ、洗濯による風合い変化が小さい、スポーツウエアに最適な布帛を提供することにある。
本発明者は前記課題を解決するため、以下の構成要件を見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上50%以下であるセルロース系繊維を構成糸の全体重量の15〜60%、疎水性繊維フィラメントを構成糸の全体重量の40〜85%含有されていることを特徴とする布帛。
(2)30℃90%での吸湿率が3.5%以上であり、べたつき指数が1.5以下である上記1に記載の布帛。
(3)疎水性繊維フィラメントがポリエステル異型断面繊維である上記1または2に記載の布帛。
(4)洗濯30回後の曲げ応力の変化率が150%以下である上記1〜3のいずれかに記載の布帛。
(5)上記1〜4のいずれかに記載の布帛を用いてなるスポーツウエア。
本発明の布帛は、吸湿性がありながら多量の発汗時にもべたつき低減効果に優れ、スポーツウエアに最適な布帛である。さらに肌との皮膚摩擦低減効果に優れ、洗濯を繰り返しても風合いが硬くならない布帛である。
本発明について以下に具体的に説明する。
本発明は、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上好ましくは7%以上、特に好ましくは10%以上、50%以下のセルロース系繊維を用いることに最大の特徴があり、SBが4%以上であるとき疎水性繊維フィラメントと所定の割合で混用して編織物となした時に十分なべたつき低減効果が得られる。一般のアウターやインナーでは汗ばむ程度の発汗すなわち80g〜120g/mの汗に対する汗処理、すなわち吸水性やべたつき防止性が必要とされるが、スポーツウエアはアウターやインナーとは異なり、かなり多量の発汗すなわち200〜250g/mの汗に対する汗処理が必要とされる。ウエア用生地のべたつき低減効果は繊維の吸水拡散性が大きく繊維と肌との接触面(表面層)に水分が少ないほど高く、すなわち、繊維が一方向に並んでいる場合に拡散が促進され、かつ、嵩高で点接触となる場合に高いべたつき低減効果が得られる。本発明のセルロース系繊維は伸縮伸長率が非常に大きく、嵩高であるため、生地と肌との接触が点接触となり非常に良好な汗処理性を有する。
尚、SBが大きすぎると、嵩高性は大きくべたつき低減効果は高いものの、凹凸感のある編織物となり外観が損なわれ、さらに肌への摩擦係数も大きくなり好ましくない。なお、伸縮伸長率はJIS L1090伸縮性試験法(A法)に準じて、またべたつき性は実施例に記載した方法でべたつき指数を測定した。べたつき指数が1.5以下であればべたつき防止性に優れることは、以下の実験により確かめられている。すなわち、この方法で各種のべたつき指数をもつ布帛でTシャツを作成し、200g/mの水を背部に与え、べたつき感を官能検査したところ、べたつき指数と官能によるべたつき感には高い相関が有り、べたつき指数が1.5以下ではべたつきを感じにくいことがわかった。SBが4%以上であると疎水性繊維フィラメントと所定の割合で混用して編織物となした時に十分なべたつき低減効果が得られる。本発明のSBが4%以上であるセルロース系繊維と疎水性繊維フィラメントと所定の割合で混用して編織物となした時にはべたつき指数が1.5以下となり、十分なべたつき低減効果が得られる。
本発明においてさらに好ましい要件としては、沸水処理前後の伸縮伸長率の比(SB/S0)が0.5以上特に好ましくは0.7以上、10以下であると、疎水性繊維フィラメントと混用して編織物となした時に極めて大きな嵩高性が得られ、べたつき低減効果に優れる。SB/S0が0.5以上では、精練や染色に基づく熱水処理で嵩高性が損なわれることがなく、10以下では、嵩高性は大きくべたつき低減効果を保持しつつ、凹凸感の少ない編織物となり外観が良好で、肌への摩擦係数も小さくなり好まい。SB/S0とは、沸水処理して乾燥した後の伸縮伸長率(SB)と、沸水処理前の伸縮伸長率(S0)との比である。
さらに本発明においては、X線回析による算出法(後記する)にて、セルロースIV型結晶成分が20%以上,好ましくは20〜60%混在するのが好ましい。この範囲であると、セルロースIV型の特徴である湿潤処理による形態保持性が充分に発揮される。
このような沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上のセルロース系繊維としては、綿、麻等の天然繊維、ビスコースレーヨン、キュプラアンモニウムレーヨン、ポリノジックレーヨン、精製セルロース繊維(テンセル、リヨセル)などの人造セルロース繊維があり、これらの一種又は二種以上を混用したものをいう。
繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸、エアジェット精紡糸等の紡績糸、マルチフィラメント原糸、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等がある。
このような沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上50%以下のセルロース系繊維は、例えば、特開2002−54044号公報、特開2002−327343号公報、特開2004−131890号公報に開示されている方法によって製造することが出来る。
好ましい製法例としては、本発明のセルロース系繊維を高圧水蒸気処理後に高圧熱水処理方法がある。この方法はセルロース系繊維が仮撚加工糸、1000T/m以上の有撚糸に適用するとより効果的であり、具体的な条件としては、絶対圧力0.41〜1.23MPa、温度160〜210℃、処理時間300〜1800秒が好ましい。高圧水蒸気処理は、従来公知の高圧釜装置を備えている装置で、チーズ状あるいはビーム状で処理できれば良く、例えば特開平9−31830号公報に記載されている高圧釜等である。
高圧熱水処理の場合、従来公知の高圧釜装置を備えていて、チーズ染色あるいはビーム染色などができる装置で有れば良い。熱水処理においては、縦型処理機が好ましく、予め、処理糸を装着し、その中に水を投入したのち、染色ビームの内側から、外側に向かって液循環させながら、所定の処理を行うものである。
高圧水蒸気処理、高圧熱水処理する時の糸形態は巻密度0.30〜0.45g/cmにしたチーズ形態で処理することが好ましい。
また、他の好ましい製法例としては、セルロース系繊維のフィラメント糸を仮撚加工するに際し、仮撚加工前の供給糸に水分を付与し、加撚時にヒーター温度180℃以上の高温で処理をすることにより製造される。付与する水分は、水のみ、または、水に浸透剤等の界面活性剤、あるいは目的に応じて各種の機能を付与するための加工剤を添加しても良い。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル系活性剤等の非イオン系活性剤やジアルキルサクシネート、ジオクチルスルホサクシネートなどのアニオン系活性剤等を使用する。使用量としては、好ましくは0.1〜20g/リットル、より好ましくは0.5〜10g/リットルである。また、水と共にグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールなどを付与することにより、仮撚加工糸の強度低下を防止することができる。付与する水分は、常温でも温湯でも良いが、15〜25℃が好ましい。水分の付与は、仮撚加工する前、即ち、クリール仕掛けをする前に別工程で付与しても良く、また仮撚加工工程での第1ヒーター前でも良い。また、セルロース系繊維のフィラメント原糸製造工程における乾燥工程に仮撚機構を組み入れ、一次乾燥時に仮撚工程を組み入れて製造しても良い。水分を付与する方法は、供給糸を水中に走行させる浸漬法、水をノズルから噴出させて付与するノズル法、水で濡れたローラー表面に糸を接触させる単純ローラー法、また、ローラーの前で糸を水に浸漬させるデイップローラー法、走行中の糸に水をシャワーする噴霧法等、何れの方法でも良い。付与する水分量は、第1ヒーターに入る前の供給糸の絶乾水分率を20〜130%にするのが好ましく、更に好ましくは30〜100%である。なお、絶乾水分率は(株)ケット科学研究所製の赤外線水分計(FD−240)を用いて測定した。
仮撚加工温度は、例えば、加工速度60〜100m/分、接触式ヒーターゾーンの通過時間が0.69〜1.15秒の場合、第1ヒーター温度は180〜260℃が好ましく、更に好ましくは220〜260℃である。
なお、第1ヒーター通過直後の糸の絶乾水分率は0〜15%、特に5〜12%が更に好ましい。また、第2ヒーターを使用した2ヒーター仮撚加工糸にしても良い。
仮撚加工は、ピン、ニップベルト、ディスク等によって撚をかける仮撚方式により加工することが好ましく、なかでも均一な捲縮を得るためにはピン仮撚方式が好ましい。他の好ましい仮撚加工条件は、次式のとおりである。
仮撚数=(24000/D1/2+590)×(0.6)〜(24000/D1/2+590)×(1.1)
式中、Dは供給糸の繊度(dtex)を表す。
第1フィード率は−3〜10%、テイクアップ(TU)フィード率は1〜8%、加撚張力は0.05〜0.29cN/dtex、解撚張力は、(加撚張力)×(3.0〜8.0)倍である。
仮撚加工に供給するセルロース系繊維のフィラメント糸は、無撚糸でも甘撚糸でもインターレース交絡した糸でも良い。
沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維の総繊度は33〜167dtex程度のものが好ましく用いられる。
本発明は上述のセルロース系繊維を構成糸の全体重量の15〜60%含有することを特徴としている。15%以上では、布帛全体の30℃90%における吸湿性を3.5%以上にすることが可能になり、発汗時に蒸れが生じず好ましい。本発明のセルロース系繊維を構成糸全体重量の25%以上含有する場合には布帛全体の30℃90%における吸湿率は6%以上になり、特に好ましい。またセルロース系繊維が全体重量の60%以下では布帛の強度が十分で、スポーツウエアに使用することができる。通常スポーツウエアに用いられる布帛はアイテムにもよるが、ニットの場合JIS L1096(ミューレン法)で測定した破裂強力が500KPa以上、織物の場合、JIS L1096(ペンジュラム法)で測定した引裂き強力が8N以上必要である。
一般に綿やレーヨンなどのセルロース系繊維は洗濯後通常の吊り干し乾燥を繰り返すと糸が膠着し、風合いが硬くなり、伸長回復率の低下や繊維の脱落による薄地化が起こりやすいという問題がある。本発明の沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維の場合には糸の嵩高性から膠着が起こりにくく、洗濯と乾燥を繰り返した場合の風合硬化と薄地化を軽減するとともに、伸長回復率の低下をも防ぐことができる。繰り返し洗濯による風合い硬化にはKES法による曲げ応力変化が指標となり、本発明のセルロース系繊維を構成糸の全体重量の15〜60%に用いた布帛の場合には洗濯30回後の曲げ応力の変化率が150%以下となり、風合い変化が小さく好ましい。セルロース系繊維を構成糸の全体重量の15〜40%に用いた布帛の場合には洗濯30回後の曲げ応力の変化率が130%以下となり、特に好ましい。
本発明は上述のセルロース系繊維を構成糸の全体重量の15〜60%、疎水性繊維フィラメントを構成糸の全体重量の40〜85%含有した布帛である。
疎水性繊維フィラメントとはポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン系等の弾性繊維等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)等の疎水性繊維の一種又は二種以上を混繊(沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸、沸水収縮率15〜30%程度の高収縮糸さらには異収縮混繊糸との混繊を含む)、交撚、諸撚糸、意匠撚糸、カバリング(シングル、ダブル)、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚(先撚同方向仮撚や先撚異方向仮撚)、位相差仮撚、仮撚加工後に後混繊)、2フィード(同時フィードやフィード差をつけた)空気噴射加工等の手段で混用してもよい。繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよいが異型断面繊維は吸水拡散性に優れるため、吸水性とべたつき低減効果が高いためこのましく、中でもW型のように扁平な異型断面繊維では曲げ応力も小さく、やわらかいため、肌に対する刺激の低減効果も高く、特に好ましく用いられる。
本発明の布帛において疎水性繊維フィラメントが布帛構成糸の全体重量の40%以上の場合には布帛の強度が十分で、スポーツウエアなどに使用することはできる。疎水性繊維フィラメントが布帛構成糸の全体重量の85%以下の場合には吸湿性が十分で、発汗時に蒸れが生じず好ましい。
上述のセルロース系繊維と疎水性繊維フィラメントの混用の方法は交編、交織による方法が好ましく行われるが、交撚、カバリング(シングル、ダブル)、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚(先撚同方向仮撚や先撚異方向仮撚)、位相差仮撚、仮撚加工後に後混繊)、2フィード(同時フィードやフィード差をつけた)空気噴射加工等の手段で混用してもよい。
布帛の目付けは80g〜300g/mである事が好ましい。一般に目付けが大きいと発汗量が同じであれば繊維表面に配される水分は少なくなるため、べたつきは低減される方向にあるが、本発明の布帛では目付けが120g以下の布帛であっても非常に高いべたつき低減効果を有する。
本発明を実施例に基づいて説明する。
本発明における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)伸縮伸長率
沸水処理前の伸縮伸長率(S0)は、試料を20℃、65%RHの恒温恒湿の室内に約1週間放置した後、検尺機にて2cN/糸以下の張力で解舒して綛を作り、1昼夜リラックスさせた状態で調湿し、JIS L1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定を行い、5回の平均値で算出した。
沸水処理後の伸縮伸長率(SB)は、沸水処理前と同様に検尺機にて作った綛を1昼夜リラックスさせた後、綛の状態でガーゼに包み、JIS L1013フィラメント収縮率(B法)に準じて、沸騰水中に30分間浸漬させた後、綛を取り出して手で挟んで軽く水を切り、ガーゼを外した後、吊り干しの状態で20℃、65%RHの標準状態の室内にて乾燥及び調湿した後にJIS L1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定を行い、5回の平均値で算出した。
(2)セルロースIV型結晶成分の混在比率
X線回析装置(Rigaku−RINT2000広角ゴニオメーター)を使用して、X線源CuK−ALPHAI/40kv/200mA、発散スリット1deg、散乱スリット1deg、受光スリット0.15mm、スキャンスピード2°/min、スキャンステップ0.02°、走査軸2θ/θ、走査範囲5°〜45°の条件にて強度分布を作成し、分布図よりセルロースIV型結晶成分の混在比率を算出した。
セルロースIV型の混在比率(%)={(16°ピークの面積)/〔(16°ピークの面積)+(12°ピークの面積)〕}×100
(3)絶乾水分率
(株)ケット科学研究所製の赤外線水分計(FD−240)を用いて測定した。絶乾水分率は、設定温度90℃で、水分率変化が1分間当たり0.1%以内となる時間を恒量時とし、この時の質量を絶乾質量値とし、下記の式にて求めた。
絶乾水分率(%)={(湿潤質量−絶乾質量)/絶乾質量}×100
(4)べたつき指数
カトーテック製KES−SE装置に3cm×5cmの試料の短辺中央に25cmの60番のポリエステルミシン糸を輪にして縫い付け、試料に200g/mの水を均一に付与する。ミシン糸の他端を装置の摩擦力検出部のフックに取り付け、標準条件で測定を行い、得られた摩擦係数(MIU)をべたつき指数とする。
(5)吸湿性
10cm×10cmの試料の絶乾重量を測定した後、30℃90%の人工気候室に入れ、24時間後の水分率を求める。
(6)洗濯風合い変化
洗濯はJIS103法に基づき30回行う。洗濯前後の曲げ応力(曲げ剛性)をカトーテック製KES−FB3の純曲げ試験機を用いて評価する。
[製造例]
<沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上のセルロース系繊維の製法>
(製造例1)
110dtex/60fキュプラアンモニウムレーヨン糸(旭化成せんい社製:商標ベンベルグ:引張強さ23.2cN/tex、引張り伸度8.9%、沸水収縮率4.3%)を用い、ピン仮撚機を用いて、仮撚温度200℃、フィード率1%、仮撚数1500T/mで仮撚加工を行った。続いて、該仮撚糸を染色ボビンに巻き密度0.30g/cmで巻き上げ、スペーサーで固定し、縦型高圧釜にセットした。
続いて、減圧後、圧力0.97MPaで180℃で5分間高圧スチーム処理した。次に水を投入し、加圧により脱泡した後、染色ボビンの内側から外側に向けて、液循環させながら、圧力0.97MPaで180℃で10分間高圧熱水処理し、加圧脱水後、80℃で60分間乾燥した。得られた仮撚加工糸は、SB=11.5%、(SB/S0)=1.10、セルロースIV型の混在比率24%であった。
(製造例2)
84dtex/45fキュプラアンモニウムレーヨンフィラメント(旭化成せんい社製;:商標ベンベルグ:引張強さ23.0cN/tex、引張り伸度9.1%、沸水収縮率4.5%)を用い、仮撚加工機(石川製作所製:IVF−338、加撚機構はピン方式、接触式ヒーター、ヒーター長115cm)の条件を、加工速度100m/分、加熱時間0.69秒、スピンドル回転数230000rpm,仮撚数2300T/m(Z撚)、第1フィード率0%、TUフィード率4%に設定した。
クリールから供給された糸に2.9cN/糸の張力を掛け、第1ヒーター前にて水中を走行させる浸漬法で水分を付与した後、鋭角のセラミック板に接触させ、更に、エアーサクションを用いて付着水を除去して絶乾水分率を40%とした後、第1ヒーター温度250℃で仮撚加工した。
得られた仮撚加工糸は、SB=21.0%、(SB/S0)=2.53、セルロースIV型の混在比率58.8%であった。
(製造例3;比較)
製造例1において、高圧熱水処理しない以外は製造例1同様に処理した。
得られた仮撚加工糸は、SB=2.9%、(SB/S0)=0.42、セルロースIV型の混在比率0%であった。
(製造例4;比較)
製造例2において、水分を付与しない以外は製造例2同様に仮撚加工した。
得られた仮撚加工糸は、SB=2.5%、(SB/S0)=0.48、セルロースIV型の混在比率0%であった。
[実施例1]
製造例1で得られた加工糸とW断面のポリエステルフィラメント84dtex/30f仮撚糸(旭化成せんい社製)を28Gの編み機でプレーティング天竺により編みたて、この編地を通常の方法で精練、染色、仕上げを行った。得られた編地の性量および物性は表1に示した。
[実施例2]
製造例2で得られた加工糸とW断面のポリエステルフィラメント84dtex/30f仮撚糸(旭化成せんい社製)と○断面のポリエステルフィラメント84dtex/30f仮撚糸を用いてかのこ編地を作成した。キュプラフィラメント加工糸の混率は16%であった。この編地を通常の方法で精練、染色、仕上げを行った。得られた編地の性量および物性は表1に示した。
[実施例3]
製造例2で得られた加工糸を緯糸にW断面のポリエステルフィラメント84dtex/30f仮撚糸(旭化成せんい社製)を経糸に用いて織物(タフタ)を作成した。この織物を通常の方法で精練、染色、仕上げを行った。経密度は82本/吋、緯密度は62本/吋であった。得られた編地の性量および物性は表1に示した。
[比較例1]
実施例1の加工糸を用いる代わりにベンベルグフィラメント110dtex/60f(旭化成せんい社製キュプラアンモニウムレーヨンフィラメント:沸水収縮率3.5%)原糸を用い、実施例1と同様の条件で編成、染色仕上げを行い、得られた編地の性量および物性を表1に示した。
[比較例2]
実施例1の加工糸を用いる代わりに綿60/を用い、実施例1と同様の条件で編成、染色仕上げを行い、得られた編地の性量および物性を表1に示した。
[比較例3]
実施例1のポリエステルフィラメントを用いる代わりにW断面のポリエステルフィラメント33dtex/24f仮撚糸(旭化成せんい社製)を用い、実施例1と同様の条件で編成、染色仕上げを行い、得られた編地の性量および物性を表1に示した。JIS L1096(ミューレン法)で測定した破裂強度が420Kpaと低い編地であった。
[比較例4]
製造例1の加工糸を用いる代わりに製造例3の加工糸を用いて実施例1と同様の条件で編成、染色仕上げを行い、得られた編地の性量および物性を表1に示した。
[比較例5]
製造例2の加工糸を用いる代わりに製造例4の加工糸を用いて実施例3と同様の条件で製織、染色仕上げを行い、得られた織物の性量および物性を表1に示した。
Figure 2006057205
本発明の布帛は、吸湿性がありながら多量の発汗時にもべたつき低減効果に優れ、スポーツウエアに最適な布帛である。さらに肌との皮膚摩擦低減効果に優れ、洗濯を繰り返しても風合いが硬くならない布帛である。

Claims (5)

  1. 沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上50%以下であるセルロース系繊維を構成糸の全体重量の15〜60%、疎水性繊維フィラメントを構成糸の全体重量の40〜85%含有されていることを特徴とする布帛。
  2. 30℃90%での吸湿率が3.5%以上であり、べたつき指数が1.5以下である請求項1に記載の布帛。
  3. 疎水性繊維フィラメントがポリエステル異型断面繊維である請求項1または2に記載の布帛。
  4. 洗濯30回後の曲げ応力の変化率が150%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の布帛。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の布帛を用いてなるスポーツウエア。
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