JP2006045373A - 熱可塑性エラストマー組成物および成形品 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】1,2−ポリブタジエが本来有する成形性、軽量性、柔軟性、機械強度などの一般物性を大きく損なうことなく、透明性、さらには摺動摩耗性を向上させることが可能が1,2−ポリブタジエンを主体とする熱可塑性エラストマー組成物を得る。
【解決手段】(A)1,2−結合含量が70%以上、結晶化度が5〜50%である1,2−ポリブタジエン100重量部に対し、(B)数平均分子量1,000〜10,000のポリエチレン1〜15重量部、さらに必要に応じて、(C)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体2〜100重量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明性、摺動摩耗性に優れ、かつ成形性、軽量性、柔軟性、および引裂強度に優れる熱可塑性エラストマー組成物およびこれを用いたフィルムや医療用部材などの成形品に関する。
1,2−ポリブタジエンは、透明性に優れ、かつ成形性、軽量性、柔軟性、引裂強度、透湿度、ガス透過性に優れた熱可塑性エラストマー組成物として、青果物包装や家庭用ラッピングフィルムなどの各種フィルムに使用されている。これらフィルムは、包装した内容物の確認を容易にするために高透明なものが好まれる。1,2−ポリブタジエンは、透明性に優れるが、より高い透明性が望まれていた。
1,2−ポリブタジエンの透明性を向上させるためには、結晶性ポリマーであるために、成形時の冷却方法(成形条件)をコントロールする方法がある。表1に示すように、急冷すればヘイズ・平行線透過率は良くなり、徐冷すればヘイズ・平行線透過率は悪くなる。
ここで、表1は、JSR社製、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(RB820)の冷却速度と透明性についての評価である。140℃で溶融したあと、厚さ1mmのプレスシート作成時の冷却速度と透明性の関係を表1に示す。
Figure 2006045373
また、1,2−ポリブタジエンは、成形加工性、透明性に優れた軟質な熱可塑性エラストマー組成物として医療用輸液チューブなどの成形品に使用されている。医療用輸液チューブは、薬液を一定量送り流すために薬液定量ポンプに装着され使用されることがあるが、1,2−ポリブタジエンは耐摩耗性が悪く、輸液チューブと薬液定量ポンプ可動部との擦れにより輸液チューブ表面が削れ易い問題がある。対策として、1,2−ポリブタジエンと相溶性の良いスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体をブレンドして軟質化することがされているが、透明性が悪化する問題があるとともに、さらなる削れ性の改良が望まれている。
本発明は、1,2−ポリブタジエに低分子量のポリエチレンを添加することで、成形時の冷却方法(成形条件)をコントロールしなくても、成形性、軽量性、柔軟性、機械強度などの一般物性を大きく損なうことなく透明性を向上させることが可能で、フィルムだけでなく、ブロック、ホース、シートなどの各種成形品に使用することが可能な熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記低分子量のポリエチレンに加えて、さらにスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を添加することで、成形性、柔軟性、軽量性、機械強度などの一般物性を大きく損なうことなく摺動摩耗性を改良して、さらに透明性を向上させるこことが可能で、医療用チューブなどの医療用部材だけでなく、ホース・シートなどの各種成形品に使用することが可能な熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
本発明は、(A)1,2−結合含量が70%以上、結晶化度が5〜50%である1,2−ポリブタジエン100重量部に対し、(B)数平均分子量1,000〜10,000のポリエチレン1〜15重量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物に関する。
また、本発明は、(A)1,2−結合含量が70%以上、結晶化度が5〜50%である1,2−ポリブタジエン100重量部に対し、(B)数平均分子量1,000〜10,000のポリエチレン1〜15重量部、および(C)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体2〜100重量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物に関する。
ここで、(A)成分としては、融点70℃〜140℃のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンが好ましい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、またはバンバリーで混練りされたものが好ましい。
次に、本発明は、上記熱可塑性エラストマー組成物を、Tダイ押出成形、インフレーション成形、あるいはキャスト成形によって成形されたフィルムなどの成形品に関する。
さらに、本発明は、混練りされていない上記熱可塑性エラストマー組成物をドライブレンドしたもの、または上記単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、またはバンバリーで混練りされた熱可塑性エラストマー組成物を、異形押出成形によって成形された医療用部材(例えば、チューブ)などの成形品に関する。
本発明によれば、1,2−ポリブタジエンに対して、数平均分子量1,000〜10,000の低分子量ポリエチレンを添加することで、成形時の冷却方法(成形条件)をコントロールしなくても、1,2−ポリブタジエンが本来有する成形性、軽量性、柔軟性、機械強度などの一般物性を大きく損なうことなく、透明性を向上させることができ、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、フィルムだけでなく、ブロック、ホース、シートなどの各種成形品に使用することが可能である。
また、本発明は、上記低分子量のポリエチレンに加えて、さらにスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を添加することで、1,2−ポリブタジエンが本来有する成形性、柔軟性、軽量性、機械強度などの一般物性を大きく損なうことなく、摺動摩耗性を改良して、さらに透明性を向上させるこことが可能で、医療用チューブなどの医療用部材だけでなく、ホース・シートなどの各種成形品に使用することが可能な熱可塑性エラストマー組成物を提供することが可能である。
(A)1,2−ポリブタジエン
本発明に用いられる(A)1,2−ポリブタジエンは、結晶化度が5〜50%である結晶性を有する1,2−ポリブタジエンであり、好ましくは、その融点が70〜140℃のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンである。結晶化度・融点がこの範囲にあることにより、引張強度、引裂強度などの力学強度と柔軟性のバランスに優れる結果となる。
なお、結晶化度が5〜25%程度までの1,2−ポリブタジエン(以下「低結晶RB」ともいう)は、柔軟性に優れるので、例えばチューブ本体などの医療用部材や合成ゴム靴底として用いられる。
一方、結晶化度が25〜50%程度の1,2−ポリブタジエン(以下「高結晶RB」ともいう)は、融点が比較的高い(融点=約105〜140℃)が、一方、硬度が高く柔軟性に劣るので、チューブとしての使用よりも、接合部材などの医療用部材やフィルムとして用いることが好ましい。
本発明に用いられる(A)1,2−ポリブタジエン、好ましくはシンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(以下「(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン」ともいう)は、例えば、1,2−結合含有量が70%以上のものであり、例えば、コバルト化合物およびアルミノオキサンを含有する触媒の存在下に、ブタジエンを重合して得られるものであるが(以下「製造方法(1)」ともいう)、この製造方法(1)に限定されるものではない。
本発明に用いられる(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンのブタジエン結合単位における1,2−結合含有量は、通常、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。1,2−結合含有量が70%以上であることにより、当該1,2−ポリブタジエンが良好な熱可塑性エラストマーとしての性質が発揮される。
本発明に用いられる(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、ブタジエン以外の共役ジエンが少量共重合していてもよい。ブタジエン以外の共役ジエンとしては、1,3−ペンタジエン、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体、2−アルキル置換−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。
このうち、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体としては、1−ペンチル−1,3−ブタジエン、1−ヘキシル−1,3−ブタジエン、1−ヘプチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル1,3−ブタジエンなどが挙げられる。
ここで、2−アルキル置換−1,3−ブタジエンの代表的なものは、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−イソブチル−1,3−ブタジエン、2−アミル−1,3−ブタジエン、2−イソアミル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2−シクロヘキシル−1,3−ブタジエン、2−イソヘキシル−1,3−ブタジエン、2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、2−イソヘプチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、2−イソオクチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これらの共役ジエンのなかで、ブタジエンと共重合される好ましい共役ジエンとしては、イソプレン、1,3−ペンタジエンが挙げられる。重合に供される単量体成分中のブタジエンの含有量は50モル%以上、特には70モル%以上が好ましい。
本発明で用いられる(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、上述したように、例えば、コバルト化合物およびアルミノオキサンを含有する触媒の存在下に、ブタジエンを重合して得られる。上記コバルト化合物としては、好ましくは炭素数4以上のコバルトの有機酸塩を挙げることができる。このコバルトの有機酸塩の具体例として、酪酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプチル酸塩、2−エチル−ヘキシル酸などのオクチル酸塩、デカン酸塩や、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸などの高級脂肪酸塩、安息香酸塩、トリル酸塩、キシリル酸塩、エチル安息香酸などのアルキル、アラルキル、アリル置換安息香酸塩やナフトエ酸塩、アルキル、アラルキルもしくはアリル置換ナフトエ酸塩を挙げることができる。これらのうち、2−エチルヘキシル酸のいわゆるオクチル酸塩や、ステアリン酸塩、安息香酸塩が、炭化水素溶媒への優れた溶解性のために好ましい。
上記アルミノオキサンとしては、例えば下記一般式(I)または一般式(II)で表されるものを挙げることができる。




Figure 2006045373
この一般式(I)あるいは(II)で表されるアルミノオキサンにおいて、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。また、mは、2以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10〜100の整数である。アルミノオキサンの具体例としては、メチルアルミノオキサン、エチルアルミノオキサン、プロピルアルミノオキサン、ブチルアルミノオキサンなどを挙げることができ、メチルアルミノオキサンが特に好ましい。
重合触媒は、上記コバルト化合物とアルミノオキサン以外に、ホスフィン化合物を含有することが極めて好ましい。ホスフィン化合物は、重合触媒の活性化、ビニル結合構造および結晶性の制御に有効な成分であり、好ましくは下記一般式(III)で表される有機リン化合物を挙げることができる。
P(Ar)n(R’)3-n ……(III)
一般式(III)中、Arは下記で示される基を示す。
Figure 2006045373
(上記基において、R1,R2,R3は、同一または異なって、水素原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルコキシ基または炭素数が好ましくは6〜12のアリール基を表す。)
また、一般式(III)中、R’はシクロアルキル基、アルキル置換シクロアルキル基を示し、nは0〜3の整数である。
一般式(III)で表されるホスフィン化合物としては、具体的に、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−エチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−メチル−5−エチルフェニル)ホスフィン)、トリ−(3−フェニルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,4,5−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニルホスフィン)、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリ(4−メチルフェニルホスフィン)、トリ(4−エチルフェニルホスフィン)などを挙げることができる。これらのうち、特に好ましいものとしては、トリフェニルホスフィン、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンなどが挙げられる。
また、コバルト化合物として、下記一般式(IV)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2006045373
上記一般式(IV)で表される化合物は、塩化コバルトに対し上記一般式(III)においてnが3であるホスフィン化合物を配位子に持つ錯体である。このコバルト化合物の使用に際しては、あらかじめ合成したものを使用してもよいし、あるいは重合系中に塩化コバルトとホスフィン化合物を接触させる方法で使用してもよい。錯体中のホスフィン化合物を種々選択することにより、得られるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの1,2−結合の量、結晶化度の制御を行なうことができる。
上記一般式(IV)で表されるコバルト化合物の具体例としては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−イソプロピルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−t−ブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチル−5−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−フェニルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4,5−トリメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ドデシルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライドなどを使用することができる。
これらのうち、特に好ましいものとしては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライドなどが挙げられる。
触媒の使用量は、ブタジエンの単独重合の場合は、ブタジエン1モル当たり、共重合する場合は、ブタジエンとブタジエン以外の共役ジエンとの合計量1モル当たり、コバルト化合物を、コバルト原子換算で0.001〜1ミリモル、好ましくは0.01〜0.5ミリモル程度使用する。また、ホスフィン化合物の使用量は、コバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)として、通常、0.1〜50、好ましくは0.5〜20、さらに好ましくは1〜20である。さらに、アルミノオキサンの使用量は、コバルト化合物のコバルト原子に対するアルミニウム原子の比(Al/Co)として、通常、4〜107、好ましくは10〜106である。なお、一般式(IV)で表される錯体を用いる場合は、ホスフィン化合物の使用量がコバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)が2であるとし、アルミノオキサンの使用量は、上記の記載に従う。
重合溶媒として用いられる不活性有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族炭化水素溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ブタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。
重合温度は、通常、−50〜120℃で、好ましくは−20〜100℃である。
重合反応は、回分式でも、連続式でもよい。なお、溶媒中の単量体濃度は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜35重量%である。
また、重合体を製造するために、本発明の触媒および重合体を失活させないために、重合系内に酸素、水あるいは炭酸ガスなどの失活作用のある化合物の混入を極力なくすような配慮が必要である。重合反応が所望の段階まで進行したら反応混合物をアルコール、その他の重合停止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加し、次いで通常の方法に従って生成重合体を分離、洗浄、乾燥して本発明に用いられるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを得ることができる。
また、本発明に用いられる(A)1,2−ポリブタジエンは、上記製造方法(1)以外に、1,3−ブタジエンを水性媒体中でスラリー重合することによって得られるもの(以下「スラリー重合法による(A)1,2−ポリブタジエン」ともいう)も使用することができる。
このスラリー重合法による(A)1,2−ポリブタジエンは、例えば、特公平3−76326号公報(以下「製造方法(2)」ともいう)記載の1,3−ブタジエンの水系重合によって得ることができる。
製造方法(2)によれば、あらかじめコバルト化合物(A’)と周期律表第III族の金属の水素化金属化合物(B’)とを、(A’)に対し1〜100倍モルの共役ジエンの存在下で接触させて得られた触媒に、二硫化炭素、フェニルイソチアン酸およびキサントゲン化合物から選ばれた少なくとも1種を共存させた触媒系の存在下で1,3−ブタジエンなどの共役ジエンを水系において重合させる。
以上の製造方法(2)の詳細は、特公平3−76326号公報第3欄第41行〜第7欄第29行に詳述されている。
また、スラリー重合法による(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、例えば、特公平5−86411号公報(以下「製造方法(3)」ともいう)記載の懸濁重合法によって得ることができる。
この製造方法(3)では、
工程(I):水中に、乳化剤の存在下において、第一の触媒成分溶液を乳化分散させてエマルジョンとし、この第一の触媒成分を溶液よりなる微小な油滴群を形成させ、
工程(II):工程(I)において得られた系内に共役ジエン単量体(1,3−ブタジエン)を加え、さらに第二の触媒成分を加えて重合を行なう。
ここで、第一の触媒成分溶液は、(A’)コバルト化合物と(B’)周期律表第II族〜第III族の金属によって形成される有機金属化合物もしくは水素化合物とを、上記(A’)コバルト化合物に対して1〜1000倍モルの(C’)共役ジエン化合物の存在下において接触させることによって得られる。
また、上記第二の触媒成分は、(D)二硫化炭素、フェニルイシチオシアン酸およびキサントゲン化合物より選択される少なくとも一種の化合物よりなる。
以上の製造方法(3)の詳細は、特公平5−86411号公報第3欄第36行〜第10欄第6行に詳述されている。
さらに、本発明の後者の(A)1,2−ポリブタジエンは、特開平6−25311号公報(以下「製造方法(4)」ともいう)記載のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの懸濁重合法によっても得ることができる。
この懸濁重合法について、上記特許公開公報を準用して、以下に説明する。
すなわち、製造方法(4)は、遷移金属化合物、I〜III族の有機金属化合物、ならびに、二硫化炭素、イソチオシアン酸フェニルおよびキサントゲン酸化合物からなる群から選ばれた化合物からなる触媒を用い、水性媒質中で1,3−ブタジエンを懸濁重合することにより、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンの粒子を得る方法であって、(a)比重1.1以上の高比重不活性有機溶媒を水性媒質中に共存させ、かつ、(b)高比重不活性有機溶媒の量の割合を、1,3−ブタジエン100容量部に対し10〜100容量部とし、かつ、(c)アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、およびニトリルからなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物(第4成分)を上記水性媒質に共存させて重合を行う、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンの懸濁重合法である(製造方法(4)の特許請求の範囲)。
製造方法(4)では、水性媒質中に塩化メチレンなどの高比重不活性有機溶媒を共存させることにより、1,3−ブタジエンや触媒などからなる有機相の比重を高くする。さらに、第4成分を共存させる。これにより、強力な機械的剪断力なしに、所望の融点をもった小粒径のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを得ることができるようにする。
ここで、製造方法(4)において、水性媒質には、水に塩化カルシウムなどの無機塩やポリビニルアルコールなどの分散剤、および必要に応じて界面活性剤を溶解もしくは分散させたものなど、通常、懸濁重合で使用されるものを用いることができる。分散剤の割合は、水100重量部に対して、0.01〜1重量部の範囲が好ましい。また、水の割合は、1,3−ブタジエン1モルに対し1〜30モルの範囲が好ましい。
高比重不活性有機溶媒は、比重が1.1以上の有機溶媒であって、重合温度にあっては1,3−ブタジエンや触媒成分と殆ど反応しないものをいう。このようなものとしては、塩化メチレン、四塩化炭素、クロロホルム、ブロモホルム、トリクレンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、クロロフェノール、ブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタブロモフェノールなどのハロゲン化フェノール、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチル硫酸やジエチル硫酸などの硫酸ジエステル類などが好ましく用いられる。
水性媒質中に共存させる高比重不活性有機溶媒は、重合系中の1,3−ブタジエン100容量部に対して10〜100容量部、好ましくは20〜80容量部、特に好ましくは40〜60容量部の範囲である。1,3−ブタジエンに対する高比重不活性有機溶媒の割合が100容量部を超えると、ポリマーの生産性が低下する点で好ましくなく、10容量部よりも少ないと粒径の大きなSPB粒子が生成しやすくなるので好ましくない。
製造方法(4)においては、さらに、第4成分を上記の水性媒質に添加する。第4成分としては、アルコールやケトン、アルデヒド、エステル、およびニトリルからなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物を用いることができる。
第4成分の添加量は、第4成分として用いる化合物の種類に応じて適宜調節できる。以下、各々の化合物について説明する。
アルコールとしては、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキサノール、オクタノールなどの脂肪族アルコール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロドデカノールなどの脂環式アルコール、ベンジルアルコール、ジフェニルカルビノール、シンナミルアルコール、o−アニスアルコール、m−アニスアルコール、p−アニスアルコールなどの芳香族アルコールなどが好ましく用いられる。
ケトンとしては、例えばアセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、ピナコロン、ジエチルケトン、ブチロン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどの脂肪族ケトンや、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロドデカノンなどの脂環式ケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、バレロフェノン、ベンゾフェノン、ジベンジルケトン、アセトナフトンなどの芳香族ケトンなどが用いられる。
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ピバリンアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、カプリルアルデヒド、ペラルゴンアルデヒド、カプリンアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ラウリンアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ミスチンアルデヒド、ペンタデシルアルデヒド、パルミチンアルデヒド、ステアリルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒドや、グリオキザール、スクシンアルデヒドなどの脂肪族ジアルデヒド、ベンズアルデヒド、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、α−ナフトエアルデヒド、β−ナフトエアルデヒド、o−アニスアルデヒド、m−アニスアルデヒド、p−アニスアルデヒド、シンナムアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが用いられる。
エステルとしては、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、カプロン酸エステル、エナント酸エステル、カプリル酸エステル、ペラルゴン酸エステル、ウンデシル酸エステルなどの飽和脂肪酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、ウンデシレン酸エステル、オレイン酸エステルなどの不飽和脂肪酸エステル、安息香酸エステル、フェニル酢酸エステルなどの芳香族カルボン酸エステル、およびアセト酢酸エステルなどのケト酸エステルなどが用いられる。
ニトリルとしては、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アクリロニトリル、プロピオニトリルなどが用いられる。
製造方法(4)では、触媒としては、遷移金属化合物、I〜III族の有機金属化合物、ならびに、二硫化炭素、フェニルイソチオシアン酸およびキサントゲンからなる群から選ばれる化合物(以下「二硫化炭素等」と略す)からなるものを用いることができる。遷移金属化合物は、1,3−ブタジエン1モルに対し、遷移金属原子が0.01〜0.00001モルの範囲になるようにすることが好ましい。遷移金属化合物とI〜III族の有機金属化合物の割合は、0.1〜500(モル/モル)の範囲が好ましい。二硫化炭素等の添加量は、遷移金属原子に対し等モル以上の範囲が好ましい。
遷移金属化合物としては、コバルト、チタニウム、あるいはニッケルの塩や錯体が好ましく用いられる。特に好ましいものは、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト、マロン酸コバルトなどのコバルト塩や、コバルトのビスアセチルアセトネートやトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルコバルト、ハロゲン化コバルトのトリアリールフォスフィン錯体やトリアルキルフォスフィン錯体、もしくはピリジン錯体やピコリン錯体などの有機塩基錯体、もしくはエチルアルコール錯体などが挙げられる。
I〜III族の有機金属化合物としては、有機リチウムや有機マグネシウム、有機アルミニウムなどが用いられる。これらの化合物のうちで特に好ましいのは、トリアルキルアルミニウムやジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイドなどである。
製造方法(4)の懸濁重合法は、例えば以下の手順に従って行うことができる。
まず、1,3−ブタジエンと遷移金属化合物および有機金属化合物を接触させ、熟成させる。熟成温度は−60〜50℃の範囲が好ましい。熟成の際、トルエンやベンゼン、キシレン、n−ヘキサン、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、あるいはケロシンなどの炭化水素系溶媒や、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒などが共存していてもよい。ただし、これらの溶媒は、熟成温度において、1,3−ブタジエンや遷移金属化合物、有機金属化合物と反応するものであってはならない。熟成工程で得られた熟成液を、次に分散媒中に分散させる。
高比重不活性有機溶媒は、分散媒中に予め分散させておいてもよく、熟成液を分散媒中に添加してから加えてもよい。ただし、第4成分は、予め分散媒中に共存させておく必要がある。最後に、二硫化炭素等を加え、懸濁重合を開始する。
二硫化炭素等は予め分散媒中に分散させてもよく、高比重不活性有機溶媒とともに加えてもよく、最後に加えてもよい。
なお、本発明では、1,3−ブタジエン以外の共役ジエンを10重量%以下程度併用することもできる。本発明で用いられる1,3−ブタジエン以外の共役ジエンとしては、上記したものが挙げられる。
以上の製造方法によって得られる1,2−ポリブタジエンは、1,2−ビニル結合含量が70%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
また、本発明で得られる1,2−ポリブタジエンの結晶化度は、5〜50%、好ましくは15〜40%、さらに好ましくは20〜35%である。5%未満では、軟質かつ耐摩耗性が損なわれ実用性に乏しく、一方、50%を超えると、成形機を用いて加工する際、180℃以上の温度を必要とし、1,2−ポリブタジエンの熱安定性が損なわれるため好ましくない。
結晶化度は、重合温度などにより調整することができる。
さらに、本発明で得られる1,2−ポリブタジエンの分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、10万〜60万である。10万未満では、強度的性質に劣り、一方、60万を超えると加工性が劣るようになる。分子量は、重合の温度やモノマー(1,3−ブタジエン)濃度により調整することができる。
さらに、本発明に用いられる(A)1,2−ポリブタジエンがシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンである場合、その融点は70〜140℃、好ましくは70〜130℃である。70℃未満では、破断強度耐熱性が劣り、一方、140℃を超えると成形加工温度が高くなりポリブタジエンが熱劣化する。
シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの融点は、重合温度などにより調整することができる。
(B)ポリエチレン
本発明に用いられる(B)ポリエチレンは、低分子量であり、その数平均分子量は、1,000〜10,000、好ましくは1,000〜5,000である。1,000未満では、成形品表面にブルームが起こり易く、一方、10,000を超えると摺動摩耗性が劣る。
このように、本発明では、低分子量の(B)ポリエチレンを1,2−ポリブタジエンに添加することにより、1,2−ポリブタジエン本来の軽量性、柔軟性、機械強度などの物性を損なうことなく、透明性を改善することができる。
この低分子量の(B)ポリエチレンの市販品としては、三洋化学工業社製のサンワックスシリーズである、サンワックス171−P,151−P,131−P,161−P,165−P,LEL−250,LEL−800,LEL400P(EX),E−310,E−330,E−250;三井化学社製のハイワックスシリーズであるハイワックス220Pなど;イーストマンケミカル社製のエポレンシリーズ;アライドシグナル社製のアライドワックスなどが挙げられる。
なお、(B)ポリエチレンの数平均分子量は、蒸気浸透圧法またはゲルパーミエーション法のポリスチレン換算によって測定することができる。
上記低分子量の(B)ポリエチレンの添加量は、(A)1,2−ポリブタジエン100重量部に対し、1〜15重量部、好ましくは3〜7重量部である。1重量部未満では、透明性、摺動摩耗性の改良効果が無く、一方、15重量部を超えると、透明性が悪くなる。
(C)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体
本発明に用いられる(C)スチレン−イソプレン−スチレン共重合体としては、スチレン/イソプレン重量比が10/90〜30/70、好ましくは14/86〜23/77であり、ブロック共重合体全体の重量平均分子量が10〜29万、好ましくは14〜24万のものが挙げられる。
この(C)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の具体例としては、JSR社製のSIS5229P、クレイトンポリマージャパン社製のD−1107CP、日本ゼオン社製QUINTAC3421などが挙げられる。
本発明では、(A)1,2−ポリブタジエンに低分子量の(B)ポリエチレンのほか、さらに上記(C)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を添加することにより、1,2−ポリブタジエン本来の軽量性、柔軟性、機械強度などの物性を損なうことなく、さらに軟質にすることができて透明性に加えて摺動摩耗性も改善することができる。
上記(C)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の添加量は、(A)1,2−ポリブタジエン100重量部に対し、2〜100重量部、好ましくは10〜50重量部である。2重量部未満では、軟質効果が小さくポンプ削れ性も劣る、一方、100重量部を超えると、成形品のベタツキが強くなる。
なお、本発明熱可塑性エラストマー組成物において、上記(A)〜(C)成分以外に、必要に応じて、滑剤、フィラーなどの添加剤を含有してもよい。上記添加剤の具体例としては、パラフィンオイル、シリコンオイル、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミドなどの滑剤のほか、タルク、シリカ、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ガラス、カーボンファイバー、ガラスバルーンなどのフィラーを挙げることができる。
なお、滑剤の使用量は、エラストマー成分、すなわち(A)〜(B)あるいは(A)〜(C)成分の合計100重量部に対して10重量部以下、好ましくは0.01〜8重量部である。10重量部を超えると、滑剤が製品からブリードアウトするので、好ましくない。
また、得られる成形品(例えば、チューブなどの医療用部材)の電子線照射による耐熱性を向上させるために、その他の添加剤、例えば、トリメチルプロパントリメタクリレートなどの多官能モノマー、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの光重合開始剤、ベンゾフェノンなどの光増感剤などを、(A)1,2−ポリブタジエン100重量部に対して5重量部以下含有させてもよい。
組成物の調製と成形
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記(A)〜(B)成分、あるいは、(A)〜(C)成分、およびその他の成分を混合して、二軸押出機、バンバリー型ミキサー、加圧ニーダー、オープンロールなどの一般のゴム配合に使用される混練装置を用いて混練りして調製される。このときの混練り温度は、好ましくは70〜170℃の範囲の温度である。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記(A)〜(B)成分、あるいは(A)〜(C)成分、およびその他の成分を、ドライブレンドすることによっても調製することができる。
一方、成形は、フィルムなどの成形品の場合は、Tダイ押出成形、インフレーション成形、あるいはキャスト成形などにより、成形することができる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、(A)〜(B)成分、あるいは(A)〜(C)成分、これらにさらに必要に応じて、上記添加剤などを添加して、ドライブレンドするか、加熱軟化させて混練したのち、成形する。混練と成形は、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの軟化温度ないし溶融温度以上の成形性の良好な温度範囲で行い、均質な成形品(医療用部材)にする。
このため、成形温度は、90〜170℃程度が良い。チューブ、コネクタなどの成形品を得るには、プレス成形、押し出し成形、射出成形、ブロー成形、異形押出成形、Tダイフィルム成形、インフレーション成形、パウダースラッシュ成形、回転成形など、好ましくは異形押出成形が利用され、チューブや接合部材などの医療用部材に成形される。
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例中、部は重量基準である。
実施例1
(試験片の作成)
RB820(JSR社製、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、1,2−結合含量:92%、融点:95℃)100部とサンワックス171−P(低分子量ポリエチレン)5部とをドライブレンドし、これを単軸50mm押出機(L/D=28)にスパイラルダイを装着してインフレーション成形し(成形温度:140℃)、90μm厚のフィルムを試験片として作成した。この試験片を用いて、評価した。結果を表2に示す。
実施例2、比較例1〜3
実施例1と同様にして、表2に示す配合処方で、試験片を作成し、評価した。結果を表2に示す。
1,2−ポリブタジエンに低分子量のポリエチレンを所定量添加することにより、1,2−ポリブタジエンの機械的物性を保持したまま、透明性が改善されることが分かる。
Figure 2006045373
*1)JSR社製、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、1,2−結合含量:92%、融点:95℃)
*2)三洋化成工業社製、低分子量ポリエチレン(Mn=1,500)
*3)三洋化成工業社製、低分子量ポリエチレン(Mn=5,000)
*4)日本ポリエチレン社製、高分子量ポリエチレン〔YF30、メルトフローレート=1.1g/10min(190℃、荷重21.2N、JIS K6760準拠)〕
なお、表2中の各種測定は、下記のようにして行なった。
(密度)
密度は、JIS K7112に準拠して測定した。
(ヘイズ)
ヘイズ値は、透明性の尺度であり、その値が小さくなる程、透明性がよくなる。JIS K7105に準拠して測定した。
(引裂試験)
引裂試験は、JIS K6781に準拠して測定した。
(引張試験:破断強度・破断伸び、)
引張試験は、JIS K7127に準拠して測定した。
実施例3
RB820(シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン)100部に対し、サンワックス171−P(低分子量ポリエチレン)5部を添加し、温度120〜160℃の単軸押出機(L/D=32)にて予め混練りし、これを、温度120℃〜170℃にて射出成形にてプレート、異形押出成形でチューブ、試験片を調製した。この試験片を用いて評価した。結果を表3に示す。
実施例4〜5、比較例4〜9
実施例3と同様にして、表3に示す配合処方で、試験片を作成し、評価した。結果を表3に示す。
1,2−ポリブタジエンに低分子量のポリエチレンを所定量添加することにより、1,2−ポリブタジエンの機械的物性を保持したまま、透明性が改善されることが分かる。
また、低分子量ポリエチレンのほかに、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を添加することにより、摺動摩耗性も改善されることが分かる。
Figure 2006045373
*1〜3)前掲
*5)JSR社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS5229P)
*6)日本ポリエチレン社製、高分子量ポリエチレン〔LC720、メルトフローレート=10g/10min(190℃、荷重21.2N、JIS K6760準拠)〕
なお、表3中の各種測定は、下記のようにして行なった。
(硬度)
硬度は、JIS K6253に準拠して測定した。
(密度)
密度は、JIS K7112に準拠して測定した。
(ヘイズ)
ヘイズ値は、透明性の尺度であり、その値が小さくなる程、透明性がよくなる。このヘイズ値は、射出成形した厚さ2mmのシートを用いてASTM D−1003に準拠して測定した。
(ポンプ削れ性)
内径3mmφ、外径4.4mmφ、肉厚0.7mmのチューブを、ポンプ(JMS社製、OT−711)に装着して輸液速度500ml/hr、15時間運転後のチューブの削れ具合を目視評価した。
○:チューブ表面に毛羽立った削れあとが殆どみられず、削れた材料粉がチューブ表面に殆ど付着していない。
△:チューブ表面に毛羽立った削れあとが少し見られ、削れた材料粉がチューブ表面に少し付着している。
×:チューブ表面に毛羽立った削れあとが多く見られ、削れた材料粉がチューブ表面に多く付着している。
(DIN摩耗値)
DIN摩耗値は、DIN 53516に準拠して荷重は10Nで測定した。
(引張試験:破断強度・破断伸び)
引張試験は、JIS K6251に準拠して測定した。
本発明の1,2−ポリブタジエンを主体とする熱可塑性エラストマー組成物は、成形時の冷却方法(成形条件)をコントロールしなくても、1,2−ポリブタジエンが本来有する成形性、軽量性、柔軟性、機械強度などの一般物性を大きく損なうことなく、透明性、さらには摺動摩耗性を向上させることができ、フィルムだけでなく、ブロック、ホース、シートなどの各種成形品や、チューブのほか、コネクタなどの医療用部材として有用である。

Claims (9)

  1. (A)1,2−結合含量70%以上、結晶化度が5〜50%である1,2−ポリブタジエン100重量部に対し、(B)数平均分子量1,000〜10,000のポリエチレン1〜15重量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物。
  2. (A)1,2−結合含量が70%以上、結晶化度が5〜50%である1,2−ポリブタジエン100重量部に対し、(B)数平均分子量1,000〜10,000のポリエチレン1〜15重量部、および(C)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体2〜100重量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物。
  3. (A)成分が、融点70℃〜140℃のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンである請求項1または2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、またはバンバリーで混練りされた請求項1〜3いずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を、Tダイ押出成形、インフレーション成形、あるいはキャスト成形によって成形された成形品。
  6. フィルムである請求項5記載の成形品。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物をドライブレンドしたもの、または請求項4記載の熱可塑性エラストマー組成物を、異形押出成形によって成形された成形品。
  8. 医療用部材である請求項7記載の成形品。
  9. チューブである請求項8記載の成形品。
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