JP2006045353A - ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポリイミドベンゾオキサゾールを含むフィルムであって、フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率がいずれも6000MPa以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の引張破断伸度がいずれも10%以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数がいずれも15ppm/℃以下であるポリイミドベンゾオキサゾールフィルム。当該フィルムは、ポリアミド酸を含む溶液を乾燥してなるゲルフィルムを150〜250℃にて2〜10分間処理して、その後ただちに、300〜550℃にて2〜10分間処理する工程を含み、150℃以上にて処理する時間が合計で20分以下である製造方法により得ることができる。
【選択図】 なし
Description
また、ベンゾオキサゾール環を含有するポリイミドフィルム(以下、「ポリイミドベンゾオキサゾールフィルム」ともいう)も報告されている。しかし、従来のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、フィルムをカットする際や二次加工の際にひび割れや破断が生じたりするなど、ハンドリング性に欠ける。
(1)ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合してなるポリイミドベンゾオキサゾールを含むフィルムであって、フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率がいずれも6000MPa以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の引張破断伸度がいずれも10%以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数がいずれも15ppm/℃以下であるポリイミドベンゾオキサゾールフィルム。
(2)当該フィルムの幅が300mm以上であり面積が15m2以上である、上記(1)記載のポリイミドベンゾオキサゾールフィルム。
(3)ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してなるポリアミド酸を含む溶液を乾燥してゲルフィルムを得て、得られたゲルフィルムを150〜250℃にて2〜10分間処理して、その後ただちに、300〜550℃にて2〜10分間処理する工程を含み、150℃以上にて処理する時間が合計で20分以下である、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの製造方法。
(4)フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率がいずれも6000MPa以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の引張破断伸度がいずれも10%以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数がいずれも15ppm/℃以下であるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの製造方法である、上記(3)記載の製造方法。
(5)幅が300mm以上であり面積が15m2以上のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの製造方法である、上記(3)または(4)記載の製造方法。
芳香族ジアミン類とは、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンおよびその芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基、シアノ基等で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。ここで、上記アルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部または全部は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類は、単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。本発明で用いるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられる。
本発明で用いられるテトラカルボン酸無水物は芳香族テトラカルボン酸無水物類であり、典型的には下記式(2)のように表される。
ベンゾオキサゾール環を有する芳香族ジアミン類と、テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常5〜40重量%、好ましくは8〜30重量%となるような量が挙げられる。
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラムまたはベルト状回転体などが例示される。適度な剛性と高い平滑性を有する高分子フィルムは、上記支持体として好ましく利用できる。好ましくは、支持体の表面は金属であり、より好ましくは、錆び難く耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体の表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
工程(b)で得られたグリーンフィルムを構成するポリアミド酸をイミド化することでポリイミドフィルムが得られる。その具体的な方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの厚さを制御するために、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度を適宜調節し得る。
加熱工程の説明において、「処理する」とは、規定された範囲の温度下に規定された時間フィルムを存在させることを意味し、必ずしもフィルム自体の温度が規定された温度に、規定された時間到達することを要するものではない。加熱を施す態様は特に制限されず、フィルムをバッチ式の加熱手段に投入してもよいし、予め温度が定められたトンネル炉などにフィルムを搬送することでもよい。長尺のフィルムを処理することを考慮すると、異なる温度に設定された複数の区画を有するトンネル炉に規定の速度でフィルムを搬送することによる加熱が好ましい。安定した物性としわなどの抑制のために、より好ましくは、両端部を把持した状態で搬送する。把持方式としては、ピンテンター方式やクリップテンター方式が一般的である。フィルム幅方向の把持機構を有しないロールツーロール方式も可能である。
第2段目の加熱を第1段目の加熱の「後ただちに行う」とは、第1段目の加熱終了後に、温度が150℃未満である環境にフィルムを曝すことなしに、300〜550℃の環境下にフィルムを存在させることを意味する。そのような方法の実現手段としては、典型的には、異なる温度に設定したゾーンを有する連続式の乾燥炉等でのフィルムの搬送が挙げられる。
第2段目の加熱の処理時間は、好ましくは2〜10分、より好ましくは3〜7分である。上記範囲内にすることにより、十分にイミド化させることができ、かつ、フィルムの劣化を抑制することができる。
好ましくは、製造工程中における150℃以上の処理は連続的になされる。換言すると、ひとたびフィルムを150℃以上の環境下に存在させたならば、150℃未満の環境下に曝すことなく、上記の加熱処理を合計20分以下で行った後に、室温にまで冷却させることが好ましい。
ここで、フィルムの長手方向および幅方向は、長尺の帯状を呈する本発明のフィルムの長手方向および幅方向をさす。
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンまたはN,Nージメチルアセトアミドに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。ここで、ポリマーを得るための重合溶媒(後述)がN−メチル−2−ピロリドンである場合にはN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、上記重合溶媒がN,Nージメチルアセトアミドである場合にはN,Nージメチルアセトアミドに溶解した。
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
乾燥後のフィルムを長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片を得た。この試験片について、引張試験機(島津製作所製オートグラフ(R)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmにて、引張弾性率、引張強度及び引張破断伸度を求めた。
測定対象のフィルムについて、下記条件にて長手方向(MD)および幅方向(TD)の伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、各方向ごとの全測定値の平均値をCTEとして算出した。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、500重量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、9500重量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、485重量部のピロメリット酸二無水物を加え、さらに球状アモルファスシリカ粒子シーホスターKE−P30(日本触媒株式会社製)0.9重量部をホモジナイザーにて予備分散したN−メチル−2−ピロリドン500重量部を加えて、25℃にて40時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液が得られた。この還元粘度は(ηsp/C)は4.0であった。
このポリアミド酸溶液を支持体としてのステンレスベルトにコーティングした。コーティングではスキージを用い、スキージとベルト間のギャップを650μmに調節した。その後、コーティングしたものを3つの区画を有する熱風式乾燥機内を搬送させた。3つのゾーンとも110℃に設定し、各ゾーンに10分間存在するようなスピードで搬送した。すなわち、110℃における10分間の乾燥を連続して3回行ったことになる。さらに換言すれば、110℃にて30分間乾燥したことと同等である。
乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離し、紙巻に巻き取った。得られたグリーンフィルムは、幅500mm、長さ70m、厚み40μmであった。得られたグリーンフィルムを、4つのゾーンからなる連続式の熱処理炉に通した。第1および第2のゾーンを200℃に設定し、第3および第4のゾーンを450℃に設定した。各ゾーンを3分間ずつ経るようにフィルムを搬送した。第4のゾーンを出たあとは自然放冷にて室温まで冷却して、ワインダ−にて巻取り、厚み25μmの褐色のポリイミドフィルムを得た。
表1のように条件を変えたことの他は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを得た。
(ポリアミド酸の重合)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、500重量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンズオキサゾールを入れた。次いで、9500重量部のN,N−ジメチルアセトアミドを加えて完全に溶解させてから、498重量部のピロメリット酸二無水物を加え、さらに球状アモルファスシリカ粒子シーホスターKE−P30(日本触媒株式会社製)0.9重量部をホモジナイザーにて予備分散したN,Nージメチルアセトアミド500重量部を加えて、25℃にて40時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液が得られた。この還元粘度は(ηsp/C)は4.5であった。
このポリアミド酸溶液を用いて、実施例1と同様に操作してポリアミド酸フィルムを経てポリイミドフィルムを得た。但し、表1のように条件を変えた。
実施例4で得られるポリアミド酸溶液を用いて、実施例1と同様に操作してポリイミドフィルムを得た。但し、表1のように条件を変えた。
表1のように条件を変えたことの他は、実施例2と同様にポリイミドフィルムを得た。
実施例1にて用いたグリーンフィルムを切り取って、A4サイズの金枠に固定した。200℃に昇温したマッフル炉に投入し5分間熱処理をした。その後、一旦、室温環境下にフィルムを取り出した後に、450℃に昇温したマッフル炉で5分間熱処理をおこなった。その後、フィルムを取り出して室温にまで自然冷却した。
実施例1にて用いたグリーンフィルムを切り取って、A4サイズの金枠に固定した。225℃に昇温したマッフル炉に投入し225℃で20分間加熱処理をした。その後、マッフル炉の温度を20分間かけて300℃にまで加熱して、300℃にて1時間保った。その後、フィルムを取り出し室温にまで自然冷却した。そして窒素雰囲気中で30℃で27分間加熱して、その後、75分間かけて400℃にまで加熱して、400℃にて2時間保った。その後、室温にまで冷却した。
Claims (5)
- ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合してなるポリイミドベンゾオキサゾールを含むフィルムであって、フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率がいずれも6000MPa以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の引張破断伸度がいずれも10%以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数がいずれも15ppm/℃以下であるポリイミドベンゾオキサゾールフィルム。
- 当該フィルムの幅が300mm以上であり面積が15m2以上である、請求項1記載のポリイミドベンゾオキサゾールフィルム。
- ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してなるポリアミド酸を含む溶液を乾燥してゲルフィルムを得て、得られたゲルフィルムを150〜250℃にて2〜10分間処理して、その後ただちに、300〜550℃にて2〜10分間処理する工程を含み、150℃以上にて処理する時間が合計で20分以下である、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの製造方法。
- フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率がいずれも6000MPa以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の引張破断伸度がいずれも10%以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数がいずれも15ppm/℃以下であるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの製造方法である、請求項3記載の製造方法。
- 幅が300mm以上であり面積が15m2以上のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの製造方法である、請求項3または4記載の製造方法。
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