以下、図1〜図7を用いて、本発明の第1の実施形態による自動変速機を備えた自動車の制御装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による自動変速機を備えた自動車の構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による自動変速機を備えた自動車のシステム構成を示すスケルトン図である。
駆動力源であるエンジン7には、エンジン7の回転数を計測するエンジン回転数センサ(図示せず)、エンジントルクを調節する電子制御スロットル(図示せず)、吸入空気量に見合う燃料量を噴射するための燃料噴射装置(図示せず)が設けられている。エンジン制御ユニット101が、吸入空気量,燃料量,点火時期等を制御することで、エンジン7のトルクを高精度に制御することができる。燃料噴射装置には、燃料が吸気ポートに噴射される吸気ポート噴射方式あるいはシリンダ内に直接噴射される筒内噴射方式があるが、エンジンに要求される運転域(エンジントルク,エンジン回転数で決定される領域)を比較して燃費が低減でき、かつ排気性能が良い方式のエンジンを用いるのが有利である。駆動力源としては、ガソリンエンジンのみならず、ディーゼルエンジン,天然ガスエンジンや、電動機などでも良い。
また、自動変速機50には、入力軸クラッチ8,アシストクラッチ9,変速機入力軸41,変速機出力軸42,第1ドライブギア1,第2ドライブギア2,第3ドライブギア3,第4ドライブギア4,第5ドライブギア5,および第6ドライブギア6,第1ドリブンギア11,第2ドリブンギア12,第3ドリブンギア13,第4ドリブンギア14,第5ドリブンギア15,および第6ドリブンギア16,第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23を備え、入力軸41には回転センサ31が設けられ,出力軸42には回転センサ32が設けられている。
入力軸クラッチ(発進クラッチ)8は、入力軸クラッチ入力ディスク8aと、入力軸クラッチ出力ディスク8bとを備えている。エンジン7には、入力軸クラッチ入力ディスク8aが連結されており、入力軸クラッチ入力ディスク8aと入力軸クラッチ出力ディスク8bを係合・開放することで、エンジン7のトルクを変速機入力軸41に伝達・遮断することが可能である。入力軸クラッチ8には、一般に乾式単板クラッチが用いられるが、湿式多板クラッチや電磁クラッチなどすべてのクラッチを用いることが可能である。入力軸クラッチ入力ディスク8aと入力軸クラッチ出力ディスク8b間の押付け力(入力軸クラッチトルク)の制御には、油圧によって駆動する作動装置(アクチュエータ)111が用いられており、この押付け力(入力軸クラッチトルク)を調節することで、エンジン7の出力を入力軸41へ伝達・遮断を行うことができる。
入力軸41には、第1ドライブギア1,第2ドライブギア2,第3ドライブギア3,第4ドライブギア4,第5ドライブギア5,および第6ドライブギア6が設けられている。第1ドライブギア1,第2ドライブギア2は変速機入力軸41に固定されており、第3ドライブギア3,第4ドライブギア4,第5ドライブギア5,第6ドライブギア6は、変速機入力軸41に対して回転自在に設けられている。また、変速機入力軸41の回転数である、入力軸回転数を検出する手段として、回転センサ31が設けられている。
一方、変速機出力軸42には、第1ドリブンギア11,第2ドリブンギア12,第3ドリブンギア13,第4ドリブンギア14,第5ドリブンギア15,および第6ドリブンギア16が設けられている。第1ドリブンギア11,第2ドリブンギア12は変速機出力軸42に対して回転自在に設けられており、第3ドリブンギア13,第4ドリブンギア14,第5ドリブンギア15,第6ドリブンギア16は変速機出力軸42に固定されている。また、変速機出力軸42の回転数を検出する手段として、回転センサ32が設けられている。
これらのギアの中で、第1ドライブギア1と第1ドリブンギア11とが噛合し、第2ドライブギア2と第2ドリブンギア12とが噛合している。また、第3ドライブギア3と第3ドリブンギア13とが噛合し、第4ドライブギア4と第4ドリブンギア14とが噛合している。さらに、第5ドライブギア5と第5ドリブンギア15とが噛合し、第6ドライブギア6と第6ドリブンギア16とが噛合している。
そして、入力軸41には、摩擦伝達機構の一方式であるアシストクラッチ9が備えられており、アシストクラッチ9の伝達トルクを制御することによって、エンジン7のトルクを変速機出力軸42に伝達することが可能である。
アシストクラッチ9の伝達トルクの制御には、油圧によって駆動するアクチュエータ114が用いられており、この伝達トルク(アシストクラッチトルク)を調節することで、エンジン1の出力を、第6ドライブギア6および第6ドリブンギア16を介して、出力軸42へと伝達することができる。
ここで、アシストクラッチ9として用いられている摩擦伝達機構は、摩擦面の押し付け力によって摩擦力を発生させてトルクを伝達する機構であり、代表的なものとして、乾式単板クラッチ,乾式多板クラッチ,湿式多板クラッチ等がある。本実施例ではアシストクラッチには湿式多版クラッチを用いているが、他の全ての摩擦伝達機構を用いることが可能である。
第1噛合い伝達機構21は、第1ドリブンギア11と第2ドリブンギア12の間に設けられている。第1噛合い伝達機構21は、第1ドリブンギア11を出力軸42に係合させたり、第2ドリブンギア12を出力軸42に係合させる。したがって、入力軸41へ入力された回転トルクは、第1噛合い伝達機構21を介して、第1ドライブギア1−第1ドリブンギア11−出力軸42へ、または、第2ドライブギア2−第2ドリブンギア12−出力軸42へと伝達される。
また、第2噛合い伝達機構22は、第3ドライブギア3と第4ドライブギア4の間に設けられている。第2噛合い伝達機構22は、第3ドライブギア3を入力軸41に係合させたり、第4ドライブギア4を入力軸41に係合させる。したがって、入力軸41へ入力された回転トルクは、第2噛合い伝達機構22を介して、第3ドライブギア3−第3ドリブンギア13−出力軸42へ、または第4ドライブギア4−第4ドリブンギア14−出力軸42へと伝達される。
さらに、第3噛合い伝達機構23は、第5ドライブギア5と第6ドライブギア6の間に設けられている。第3噛合い伝達機構23は、第5ドライブギア5を入力軸41に係合させる。したがって、変速機入力軸41へ入力された回転トルクは、第3噛合い伝達機構23を介して、第5ドライブギア5−第5ドリブンギア15−出力軸42へと伝達される。
ここで、噛合い伝達機構21、22、23は、常時噛合い式を用いても良いし、摩擦伝達機構を備え、摩擦面を押しつけることによって回転数を同期させて噛合いを行う同期噛合い式を用いても良い。
このように、変速機入力軸41の回転トルクを、変速機出力軸42に伝達するためには、第1噛合い伝達機構21,または第2噛合い伝達機構22,または第3噛合い伝達機構23のうちいずれか一つを変速機入力軸41もしくは変速機出力軸42の軸方向に移動させ、第1ドリブンギア11,第2ドリブンギア12,第3ドライブギア3,第4ドライブギア4,第5ドライブギア5のいずれか一つと係合する必要がある。セレクトアクチュエータ113によって、シフト/セレクト機構24を動作させ、第1噛合い伝達機構21,または第2噛合い伝達機構22,または第3噛合い伝達機構23のいずれを移動させるかを選択し、シフトアクチュエータ112によって、シフト/セレクト機構24を動作させることによって、第1噛合い伝達機構21,または第2噛合い伝達機構22,または第3噛合い伝達機構23のうち、選択されたいずれか一つの噛合い伝達機構の位置を移動し、第1ドリブンギア11,第2ドリブンギア12,第3ドライブギア3,第4ドライブギア4,第5ドライブギア5のいずれか一つに係合させ、変速機入力軸41の回転トルクを、第1噛合い伝達機構21,または第2噛合い伝達機構22,または第3噛合い伝達機構23のいずれか一つを介して変速機出力軸42へと伝達することができる。
このように第1ドライブギア1,第2ドライブギア2,第3ドライブギア3,第4ドライブギア4,第5ドライブギア5,第6ドライブギア6から、第1ドリブンギア11,第2ドリブンギア12,第3ドリブンギア13,第4ドリブンギア14,第5ドリブンギア15,第6ドリブンギア6を介して変速機出力軸42に伝達された変速機入力軸41の回転トルクは、変速機出力軸42に連結されたディファレンシャルギア(図示せず)を介して車軸(図示せず)に伝えられる。
入力軸クラッチ8の伝達トルクを制御する入力軸クラッチアクチュエータ111は、制御装置である変速機制御ユニット100によって油圧機構104に設けられた電磁弁104aの電流を制御することで、入力軸クラッチアクチュエータ111に設けられた油圧シリンダおよびピストン(図示せず)を制御し、入力軸クラッチ8の伝達トルクの制御を行っている。なお、入力軸クラッチアクチュエータ111には、入力軸クラッチのストロークを計測する位置センサ(図示せず)が設けられている。
アシストクラッチ9の伝達トルクを制御するアシストクラッチアクチュエータ114は、変速機制御ユニット100によって、油圧機構104に設けられた電磁弁104fの電流を制御することで、アシストクラッチアクチュエータ114に設けられた油圧ピストン(図示せず)を制御し、アシストクラッチ9の伝達トルクの制御を行っている。すなわち、油圧機構104,電磁弁104fおよびアシストクラッチアクチュエータ114が、アシストクラッチ9を作動させる作動機構として構成されている。
また、変速機制御ユニット100によって、油圧機構104に設けられた電磁弁104d,104eの電流を制御することで、セレクトアクチュエータ113に設けられた油圧ピストン(図示せず)を介して、シフト/セレクト機構24に設けられたコントロールアーム(図示せず)のストローク位置である、セレクト位置を制御し、第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23のいずれを移動するか選択している。なお、セレクトアクチュエータ113には、セレクト位置を計測する位置センサ(図示せず)が設けられている。
また、変速機制御ユニット100によって、油圧機構104に設けられた電磁弁104b,104cの電流を制御することで、シフトアクチュエータ112に設けられた油圧ピストン(図示せず)を介して、シフト/セレクト機構24に設けられたコントロールアーム(図示せず)の回転力,回転位置を制御し、セレクトアクチュエータ113によって選択された、第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23のいずれかを動作させる荷重またはストローク位置(シフト位置)を制御できるようになっている。なお、シフトアクチュエータ112にはシフト位置を計測する位置センサ(図示せず)が設けられている。
また、変速機制御ユニット100によって、油圧機構104に設けられた油圧ポンプ(図示せず)を制御することで、ライン圧を調整している。また、油圧機構104には、油圧機構104内部の作動油の温度を計測する油温センサ(図示せず)が設けられている。また、変速機50には、変速機50内部の潤滑油の温度を計測する油温センサ(図示せず)が設けられている。
セレクトアクチュエータ113を制御してセレクト位置を制御し、第1噛合い伝達機構21を移動することを選択し、シフトアクチュエータ112を制御してシフト位置を制御し、第1噛合い伝達機構21と第1ドリブンギア11が噛合して第1速段となる。
セレクトアクチュエータ113を制御してセレクト位置を制御し、第1噛合い伝達機構21を移動することを選択し、シフトアクチュエータ112を制御してシフト位置を制御し、第1噛合い伝達機構21と第2ドリブンギア12が噛合して第2速段となる。
セレクトアクチュエータ113を制御してセレクト位置を制御し、第2噛合い伝達機構22を移動することを選択し、シフトアクチュエータ112を制御してシフト位置を制御し、第2噛合い伝達機構22と第3ドライブギア3が噛合して第3速段となる。
セレクトアクチュエータ113を制御してセレクト位置を制御し、第2噛合い伝達機構22を移動することを選択し、シフトアクチュエータ112を制御してシフト位置を制御し、第2噛合い伝達機構22と第4ドライブギア4が噛合して第4速段となる。
セレクトアクチュエータ113を制御してセレクト位置を制御し、第3噛合い伝達機構23を移動することを選択し、シフトアクチュエータ112を制御してシフト位置を制御し、第3噛合い伝達機構23と第5ドライブギア5が噛合して第5速段となる。
なお、第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23を動作させるシフト/セレクト機構24としては、コントロールシャフト、コントロールアームおよびシフトフォークなどによって構成しても良いし、ドラム式など、噛合い伝達機構21、22、23を移動させるための他の機構を用いても構成可能である。
また、エンジン7は、エンジン制御ユニット101により、吸入空気量、燃料量、点火時期等を操作することで、エンジン7のトルクを高精度に制御するようになっている。
そして、油圧機構104は、変速機制御ユニット100によってコントロールされている。変速機制御ユニット100、エンジン制御ユニット101は、通信手段103によって相互に情報を送受信する。
なお、摩擦伝達機構の一方式であるアシストクラッチの連結する第6ドライブギアおよび第6ドリブンギアの減速比は、第3ドライブギア3および第3ドリブンギア13によって構成される第3速段の減速比と、第4ドライブギア4および第4ドリブンギア14によって構成される第4速段の減速比との間に設定しても良いし、第4速段と第5速段の間の減速比としても良いし、第3速段相当としても良いし、第4速段相当としても良いし、最高速段相当としても良い。また、例えば第5速段相当として、第5ドライブギア5および第5ドリブンギア15および第3噛合い伝達機構のかわり用いるなど、所定の変速段として設けられた噛合い伝達機構のかわりに摩擦伝達機構を設置することも可能である。さらには複数の摩擦伝達機構を用いて、複数の変速段へ設置することも可能である。
このように、変速機の入力軸と出力軸の間に、少なくとも1つの摩擦伝達機構を備えた種々の変速機に適用可能である。
次に、図2を用いて、本発明の第1の実施形態による自動変速機を備えた自動車に用いる摩擦伝達装置(アシストクラッチ9,アシストクラッチアクチュエータ114)の構成について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態による自動変速機を備えた自動車に用いる摩擦伝達装置の構成を示す断面図である。なお、図2においては、図1に示したアシストクラッチ9,変速機入力軸41,第6ドライブギア6,第6ドリブンギア16,アシストクラッチアクチュエータ114の部分を抜粋し、拡大して示している。また、図1と同一符号は、同一部分を示している。
図1に示したアシストクラッチ9は、クラッチプレート9aと、クラッチディスク9bと、プレッシャプレート9cと、ベアリング9dと、クラッチハブ9fと、リターンスプリング9gと、クラッチドラム9hとから構成されている。
入力軸41と第6ドライブギア6の間にはベアリング6b,6cが備えられ、入力軸41と第6ドライブギア6は互いに回転自在となっている。また、第6ドライブギア6とクラッチハブ9fの間にはベアリング6aが備えられ、第6ドライブギア6とクラッチハブ9fは互いに回転自在となっている。また、第6ドライブギア6と変速機エンドケース50aの間にはベアリング6dが備えられ、第6ドライブギア6と変速機エンドケース50aは互いに回転自在となっている。
また、入力軸41と、クラッチハブ9fと、プレッシャプレート9cと、リターンスプリング9gと、クラッチプレート9aとが一体回転する。さらに、第6ドライブギア6と、クラッチドラム9hと、クラッチディスク9bとが一体回転する。
図1に示したアシストクラッチアクチュエータ114は、ピストン室114bの内部を摺動可能なピストン114cを備え、給油口114aを有している。図1の電磁弁104fによって調圧された油圧が、油圧配管(図示せず)を介してアシストクラッチアクチュエータ114の給油口114aに供給され、ピストン室114bの油圧が上昇することでピストン114cが作動する。ピストン114cが作動すると、ベアリング9dを介してプレッシャプレート9cを押付け、リターンスプリング9gを圧縮し、クラッチプレート9aとクラッチディスク9bの間に押し付け力が働き、入力軸41の回転トルクが、クラッチハブ9f−クラッチプレート9a−クラッチディスク9b−クラッチドラム9h−第6ドライブギア6を介して、第6ドリブンギア16に伝達される。
次に、図3を用いて、本発明の第1の実施形態による自動変速機を備えた自動車に用いる変速機制御ユニット100と、エンジン制御ユニット101との間の入出力信号関係について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態による自動変速機を備えた自動車に用いる変速機制御ユニットとエンジン制御ユニットとの間の入出力信号関係を示すブロック図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
変速機制御ユニット100は、入力部100iと、出力部100oと、コンピュータ100cを備えたコントロールユニットとして構成される。同様に、エンジン制御ユニット101も、入力部101iと、出力部101oと、コンピュータ101cを備えたコントロールユニットとして構成される。変速機制御ユニット100からエンジン制御ユニット101に、通信手段103を用いてエンジントルク指令値TTeが送信され、エンジン制御ユニット101はエンジントルク指令値TTeを実現するように、エンジン7の吸入空気量,燃料量,点火時期等を制御する。また、エンジン制御ユニット101内には、変速機への入力トルクとなるエンジントルクの検出手段(図示せず)が備えられ、エンジン制御ユニット101によってエンジン7の回転数Neや、エンジン7が発生したエンジントルクTeを検出し、通信手段103を用いて変速機制御ユニット100に送信する。エンジントルク検出手段には、トルクセンサを用いるか、またはインジェクタの噴射パルス幅や吸気管内の圧力とエンジン回転数等など、エンジンのパラメータによる推定手段としても良い。
変速機制御ユニット100は、所望の入力軸クラッチ伝達トルクを実現するために、入力軸クラッチアクチュエータ111を制御する電磁弁104aへ印加する電圧PWMstaを調整することで、電磁弁104aの電流を制御し、入力軸クラッチ8を係合・解放する。
また、変速機制御ユニット100は、所望のアシストクラッチ伝達トルクを実現するために、アシストクラッチアクチュエータ114を制御する電磁弁104fへ印加する電圧PWMastを調整することで、電磁弁104fの電流を制御し、アシストクラッチ9を係合・解放する。
また、変速機制御ユニット100は、所望のセレクト位置を実現するために、セレクトアクチュエータ113を制御する電磁弁104d,104eへ印加する電圧PWMsel1,PWMselを調整することで、電磁弁104d,104eの電流を制御し、第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23のいずれを噛合させるかを選択する。
また、変速機制御ユニット100は、所望のシフト荷重もしくはシフト位置を実現するために、シフトアクチュエータ112を制御する電磁弁104b,104cへ印加する電圧PWMsft1、PWMsft2を調整することで、電磁弁104b,104cの電流を制御し、第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23のいずれかの噛合・解放を行う。
なお、変速機制御ユニット100には、電流検出回路(図示せず)が設けられており、各電磁弁の電流が目標電流に追従するようPWM出力を変更して、各電磁弁の圧力または流量を制御している。また、油圧機構104に備えられた油圧ポンプを駆動するリレー信号RLYpmpを出力する。
また、変速機制御ユニット100には、回転センサ31,回転センサ32から、入力軸回転数Ni,出力軸回転数Noがそれぞれ入力され、また、Pレンジ,Rレンジ,Nレンジ,Dレンジ等のシフトレバー位置を示すレンジ位置信号RngPosと、アクセルペダル踏み込み量Apsと、ブレーキが踏み込まれているか否かを検出するブレーキスイッチからのON/OFF信号Brkが入力される。
また、変速機制御ユニット100には、油圧機構104内部の作動油の温度を示す作動油温TEMPopoと、変速機50内部の潤滑油の温度を示す潤滑油温TEMPlubが入力される。また、変速機制御ユニット100には、入力軸クラッチのストロークを示すクラッチ位置RPstaが入力される。
また、変速機制御ユニット100には、第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23のいずれかのストローク位置を示すシフト位置RPsftが入力される。また、変速機制御ユニット100には、第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23のいずれかを選択するためのコントロールアームのストローク位置を示すセレクト位置RPselが入力される。
変速機制御ユニット100は、例えば、運転者がシフトレンジをDレンジ等にしてアクセルペダルを踏み込んだときは運転者に発進、加速の意志があると判断し、また、運転者がブレーキペダルを踏み込込んだときは運転者に減速・停止の意志があると判断し、運転者の意図を実現するように、エンジントルク指令値TTe,入力軸クラッチ目標伝達トルクTTsを設定する。
また、出力軸回転数Noから算出する車速Vspとアクセルペダル踏み込み量Apsから目標とする変速段を設定し、設定した変速段への変速動作を実行するよう、エンジントルク指令値TTe,アシストクラッチ目標伝達トルクTTa,入力軸クラッチ目標伝達トルクTTs,目標シフト位置TPsft,目標シフト荷重TFsft,目標セレクト位置TPselを設定する。
また、変速機制御ユニット100は、設定されたアシストクラッチ目標伝達トルクTTa,入力軸クラッチ目標伝達トルクTTs,目標シフト位置TPsft,目標シフト荷重TFsft,目標セレクト位置TPselを実現するよう、電磁弁104a〜104fへ印加する電圧のデューティー比を算出し、電磁弁104aへ印加する電圧PWMsta,電磁弁104bへ印加する電圧PWMsft1,電磁弁104cへ印加する電圧PWMsft2,電磁弁104dへ印加する電圧PWMsel1,電磁弁104eへ印加する電圧PWMsel2,電磁弁104fへ印加する電圧PWMastを出力する。
次に、図4〜図7を用いて、本実施形態による自動変速機の制御装置による変速制御の制御内容について説明する。
以下に示す変速制御の内容は、パワートレーン制御ユニット100のコンピュータ100cにプログラミングされ、あらかじめ定められた周期で繰り返し実行される。すなわち、図4〜図6の処理は、パワートレーン制御ユニット100によってあらかじめ定められた周期で繰り返し実行される。
最初に、本発明の第1の実施形態による自動変速機の制御装置の全体の制御内容の概略について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態による自動変速機の制御装置の全体の制御内容の概略を示すフローチャートである。
ステップ401(変速開始判定)において、車速Vspとアクセルペダル踏み込み量Apsから変速段を設定し、現在の変速段と設定された変速段が異なる場合には、変速開始を判断して、ステップ402に進む。現在の変速段と設定された変速段が同じ場合には、変速不要を判断して、ステップ407(通常制御)へ進み、ステップ407を実行した後に終了する。ステップ407(通常制御)では、運転者の意図を実現するように、エンジントルク指令値TTe,アシストクラッチの目標伝達トルクTTa,入力軸クラッチの目標伝達トルクTTs,目標シフト位置TPsft,目標シフト荷重TFsft,目標セレクト位置TPselを設定する。
ステップ402(充填制御完了判定)において、充填制御が完了したか否かを判定し、充填制御完了の場合はステップ403へ進み、未完了の場合はステップ408(充填制御フェーズ)へ進み、ステップ408を実行した後に終了する。ステップ408(充填制御フェーズ)では、アシストクラッチをトルク伝達位置まで移動するよう、リターンスプリング9cを圧縮させるためにピストン室114bへの作動油の充填が実行するように電磁弁104fへ印加する電圧のデューティー比を算出する。ここで、ステップ402の判定は、ステップ408(充填制御フェーズ)の実行経過時間による判定としても良いし、アシストクラッチ9の油圧センサを設け、油圧センサの値による判定としても良い。
ステップ403(解放制御完了判定)において、解放制御が完了か否かを判定し、解放制御完了の場合はステップ404へ進み、未完了の場合はステップ409(解放制御フェーズ)へ進み、ステップ409を実行した後に終了する。ステップ409(解放制御フェーズ)では、ギアを解放するための解放制御を実行するよう、アシストクラッチ目標伝達トルクTTa,目標シフト荷重TFsft,目標シフト位置TPsftを設定する。ここで、ステップ403の判定は、シフト位置RPsftが解放位置と判定できる位置であるか否かで判定する。解放位置と判定する閾値をそれぞれSF1OFF,SF3OFFとすると、SF1OFF≧RPsft≧SF3OFFとする。ここで、SF1OFF,SF3OFFは、第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22および第3噛合い伝達機構23が噛合い状態ではなくなる位置の中で、できるかぎり広い範囲とすることが望ましい。また、ステップ403の判定は、シフト位置RPsftが解放位置への移動を始めたと判定できたときとしても良い。
ステップ404(同期制御完了判定)において、同期制御が完了か否かを判定し、同期制御完了の場合はステップ405へ進み、未完了の場合はステップ410(同期制御フェーズ)へ進み、ステップ410を実行した後に終了する。ステップ410(同期制御フェーズ)では、入力回転数を次変速段相当の回転数(目標回転数)に同期させるための同期制御を実行するようにエンジントルク指令値TTe,アシストクラッチ目標伝達トルクTTa,目標シフト荷重TFsft,目標シフト位置TPsft,目標セレクト位置TPselを設定する。ここでステップ404の判定は、次変速段の回転数(目標回転数)と入力回転数の回転差が小さくなった場合(|入力回転数Ni−出力回転数No×目標変速段減速比γn|が小さい)、かつ、セレクト位置RPselが目標セレクト位置TPsel付近にいる場合とする。なお、回転差の条件、セレクト位置の条件ともに、判定には時間ディレイを設けることが望ましい。
ステップ405(締結制御完了判定)において、締結制御が完了か否かを判定し、締結制御完了の場合はステップ406へ進み、未完了の場合はステップ411(締結制御フェーズ)へ進み、ステップ411を実行した後に終了する。ステップ411(締結制御フェーズ)では、ギアを締結するための締結制御を実行するように、エンジントルク指令値TTe,アシストクラッチ目標伝達トルクTTa,目標シフト荷重TFsft,目標シフト位置TPsft,目標セレクト位置TPselを設定する。ここでステップ405の判定は、シフト位置RPsftが目標シフト位置TPsft付近にいる場合とする。シフト位置の判定は、例えば2→3変速の場合、3速係合と判定する閾値をSF3ONとすると、rpSFT≧SF3とする。
ステップ406(終了制御完了判定)において、後述の図5において設定されるアシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNによって終了制御が完了か否かを判定し、終了制御完了の場合は終了し、未完了の場合はステップ412(終了制御フェーズ)へ進み、ステップ412を実行した後に終了する。ステップ412(終了制御フェーズ)では、アシストクラッチトルクを徐々に0とするための終了制御、すなわち、摩擦伝達機構の解放制御を実行するように、エンジントルク指令値TTe、アシストクラッチ目標伝達トルクTTaを設定する。
なお、ステップ407〜412においては、設定されたアシストクラッチ目標伝達トルクTTa,入力軸クラッチ目標伝達トルクTTs,目標シフト位置TPsft,目標シフト荷重TFsft,目標セレクト位置TPselを実現するための電磁弁104a,…,104fへ印加する電圧のデューティー比を算出する。
次に、図5を用いて、図4のステップ406(終了制御完了判定)において終了制御完了判定に用いられるアシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNの処理内容について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態による自動変速機の制御装置の制御内容の内、終了制御完了判定に用いられるアシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNの処理内容を示すフローチャートである。
ステップ501において、終了制御フェーズの完了判定ディレイ時間TMFNを、作動油温TEMPopoを入力とした関数f1によって設定する。ここで、関数f1は作動油温TEMPopoが低温になるにしたがって、完了判定ディレイ時間TMFNが長くなるように設定する。
次に、ステップ502において、終了制御フェーズであるか否かを判定し、終了制御フェーズである場合はステップ503へ進む。終了制御フェーズでない場合はステップ507へ進み、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5をリセットし、さらにステップ508にてアシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNをリセットして終了する。
終了制御フェーズである場合は、ステップ503において、アシストクラッチ目標伝達トルクTTaが0であるか否かを判定し、0である場合はステップ504へ進み、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5をカウントアップした後にステップ505へ進む。アシストクラッチ目標伝達トルクTTaが0でない場合は、ステップ507へ進み、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5をリセットし、さらにステップ508にてアシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNをリセットして終了する。
ステップ504の処理終了後、ステップ505において、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5が終了制御フェーズ完了判定ディレイ時間TMFN以上であるか否かを判定する。完了判定ディレイ時間TMFN以上である場合はステップ506でアシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNをセットした後に終了し、完了判定ディレイ時間TMFN未満である場合はアシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNをリセットして終了する。
ここで、アシストクラッチ電磁弁104fの駆動電流を、所定の値からリターンスプリング9gのセット荷重相当の油圧を発生する所定の値まで低下させた場合の、リターンスプリング9gによってピストン114cが押し戻され、ピストン油室114b内部の油圧がリターンスプリング9gのセット荷重相当の油圧となるまでの所要時間をあらかじめ測定し、関数f1の設定値として用いることが望ましい。
なお、ステップ505の判定は、油圧センサを備え、油圧センサの値が、リターンスプリング9gのセット荷重相当の油圧となっているか否かで判定することとしても構成可能である。
次に、図6を用いて、図4のステップ407〜412において実行される、アシストクラッチ目標伝達トルクTTaを実現するための電磁弁104fへの印加電圧目標デューティー比DUTYaの算出処理内容について説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態による自動変速機の制御装置において実行されるアシストクラッチ目標伝達トルクTTaを実現するための電磁弁104fへの印加電圧目標デューティー比DUTYaの算出処理の内容を示すフローチャートである。
最初に、ステップ601において、通常制御であるか否かを判定し、通常制御でない場合はステップ602へ進む。通常制御である場合は、ステップ604にて目標アシストクラッチ油圧TPaを0とした後に、ステップ608へ進む。
通常制御でない場合は、ステップ602において、充填制御フェーズであるか否かを判定し、充填制御フェーズでない場合はステップ603へ進む。充填制御フェーズである場合は、ステップ605にて、目標アシストクラッチ油圧TPaに充填目標油圧TPchgを代入し、下限を下限油圧TPph1で制限した後に、ステップ608へ進む。目標アシストクラッチ油圧TPaは、所定時間T1の間、充填目標油圧TPchgとされ、その後、下限油圧TPph1で制限される。ここで、充填目標油圧TPchgは、作動油温度TEMPopo,エンジントルクTe等から設定するのが望ましい。また、下限油圧TPph1は、リターンスプリング9gを圧縮するのに必要な油圧以上に設定するのが望ましい。
充填制御フェーズでない場合は、ステップ603において、アシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNが「1」であるか否かを判定し、「1」である場合はステップ607にて目標アシストクラッチ油圧TPaを0とした後に、ステップ608へ進む。アシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNが「1」ではない場合はステップ606にて目標アシストクラッチ油圧TPaを、アシストクラッチ目標伝達トルクTTa,リターンスプリング相当荷重TFspg,変換係数K1,変換係数K2から算出する。ここで、変換係数K1は、アシストクラッチ9の摩擦係数,摩擦面有効半径,摩擦面数から設定される係数であり、変換係数K2はピストン114cの受圧面積から設定される係数である。
なお、リターンスプリング相当荷重TFspgは、一定値としても良いが、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5を入力とした関数によって算出される値とし、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5がカウントアップされるにつれて徐々に低下するように構成しても良い。
次に、ステップ608において、ステップ604,605,606,607によって設定された目標アシストクラッチ油圧TPaを電流に変換する処理を行う。目標アシストクラッチ油圧TPaを入力とした関数f2によって基本目標電流BIaを算出する。関数f2は、電磁弁104fの特性から設定される関数である。
次に、ステップ609において、ステップ608によって設定された基本目標電流BIaと、検出回路によって検出された実電流との偏差より、フィードバック補正値TIafbを算出する。
次に、ステップ610において、ステップ608によって設定された基本目標電流BIaに、変速機制御ユニット100の電源電圧変動等の補正をかけて、フィードフォワード補正値TIaffを算出する。
次に、ステップ611において、ステップ609によって設定されたフィードバック補正値TIafbと、ステップ610によって設定されたフィードフォワード補正値TIaffより、最終目標電流値TIaを算出する。
最後に、ステップ612において、ステップ611によって設定された最終目標電流値TIaを印加電圧のデューティー比に変換する処理を行う。最終目標電流値TIaを入力とした関数f3によって目標デューティー比DUTYaを算出する。関数f3は電磁弁104fの特性から設定される関数である。
次に、図7を用いて、図4〜図6にて示した第1の変速制御による変速制御の制御内容について説明する。この第1の変速制御例では、第1速段から第2速段へのアップシフト時の制御内容を示している。
図7は、本発明の第1の実施形態による自動変速機の制御装置の第1の変速制御例のタイムチャートである。
図7において、時刻t1以前が通常制御(図4のステップ407)、時刻t1から時刻t3の期間が充填制御フェーズ(図4のステップ408)、時刻t3から時刻t5の期間が解放制御フェーズ(図4のステップ409)、時刻t5から時刻t6の期間が同期制御フェーズ(図4のステップ410)、時刻t6から時刻t7の期間が締結制御フェーズ(図4のステップ411)、時刻t7から時刻t9の期間が終了制御フェーズ(図4のステップ412)、時刻t9以降が通常制御(図4のステップ407)となっている。
図7において、図7(A)は入力軸回転数Niを示している。また、Ni_1は第1速段相当の回転数であり、Ni_2は第2速段相当の回転数を示している。図7(B)は目標とするアシストクラッチ伝達トルクTTaを示している。図7(C)は電磁弁104fの駆動電流を示している。図7(D)は電磁弁104fによって調圧され、アシストクラッチピストン室114bに供給されるアシストクラッチ油圧を示している。図7(E)はアシストクラッチ9の伝達トルクを示している。図7(F)はアシストクラッチのピストンストロークを示している。また、PA1は解放位置であり、PA2はトルク伝達位置を示している。図7(G)はシフト位置RPsftを示している。また、SF1は1速側の位置であり、SF2は中立(ニュートラル)の位置であり、SF3は2速側の位置を示している。図7(H)は変速機出力軸42のトルクを示している。
時刻t1以前では、図7(G)に示すように、シフト位置RPsftは「1速側」のSF1であり、第1速段に保たれている。このとき、図7(A)に示すように、入力軸回転数Niは、第1速段相当の回転数Ni_1となっている。
図4のステップ401の判定処理により、変速開始と判定されると、変速が開始する。ここで、時刻t1において、変速が開始するものとする。時刻t1で変速を開始すると、充填制御フェーズ(図4のステップ408)において、アシストクラッチピストン室114bへ油を充填させる。
充填制御フェーズ(時刻t1〜t3)においては、アシストクラッチをトルク伝達直前の状態とするため、目標アシストクラッチ油圧TPa=充填目標油圧TPchgと設定し、その後、目標アシストクラッチ油圧TPa=下限油圧TPph1と設定する。その結果、図7(C)に示すように、時間T1の間(時刻t1〜t2)は、電磁弁電流はITPchgに制御され、その後、時刻t3までは電磁弁電流がITPph1に制限されるので、図7(D)に示すようにアシストクラッチ油圧が立ち上がり、アシストクラッチピストン室114bへ油が充填されることでリターンスプリング9gが圧縮され、図7(F)に示すように、クラッチ位置(F)がトルク伝達位置PA2まで移動し、アシストクラッチがトルク伝達直前の状態となる。
解放制御フェーズ(時刻t3〜t5)においては、図7(B)に示した目標アシストクラッチトルクを実現するため、図6のステップ606に基づき、目標アシストクラッチ油圧TPaが設定され、図7(C)に示すように、電磁弁駆動電流がさらに立ち上がり、その結果、図7(D)に示すようにアシストクラッチ油圧がさらに立ち上がり、図7(E)に示すようにアシストクラッチの伝達トルクが十分立ち上がった時刻t4で、図7(G)に示すように、シフト位置が1速側の係合位置SF1からニュートラル位置SF2へ移動し、ギア解放が行われる。図7(G)に示すように、シフト位置がニュートラル位置SF2付近となると(時刻t5)、図4のステップ403で解放制御完了と判定され、同期制御フェーズ(図4のステップ410)となる。
同期制御フェーズ(時刻t5〜t6)においては、図7(C)に示す電磁弁駆動電流によって、図7(E)に示すように、アシストクラッチの伝達トルクを制御し、図7(A)に示すように、入力回転数が第1速段相当の回転数Ni_1から、第2速段相当の回転数Ni_2に同期される。回転数が同期すると(時刻t6)、図4のステップ404で同期制御完了と判定され、締結制御フェーズ(図4のステップ411)となる。
締結制御フェーズ(時刻t6〜t7)においては、図7(G)に示すように、シフト位置がニュートラル位置SF2から2速側の係合位置SF3へ移動する。シフト位置が2速側の係合位置SF3へ移動すると(時刻t7)、図4のステップ405で締結制御完了と判定され、終了制御フェーズ(図4のステップ412)となる。
次に、終了制御フェーズ(時刻t7〜t9)における制御内容について詳細に説明する。図中、実線が本実施形態による制御を実行した場合を示しており、点線は本実施形態による制御を実行しない場合を示している。
終了制御フェーズにおいては、図7(B)に示す目標アシストクラッチトルクを実現するため、図6のステップ606に基づき、目標アシストクラッチ油圧TPaが((TTa×K1+TFspg)×K2)に設定され、その結果、図7(C)に示すように、電磁弁駆動電流が徐々に減少し、図7(D)に示すように、アシストクラッチ油圧が徐々に減少する。
次に、図5のステップ503において、目標アシストクラッチトルクTTaが0と判定されると(図7(B)の時刻t8)、図6のステップ606において、目標アシストクラッチトルクTTa=0であるため、目標アシストクラッチ油圧TPa=TFspg×K2と設定され、図7(C)に示すように、電磁弁駆動電流が一定値となる。その結果、図7(D)に示すように、アシストクラッチ油圧が徐々に一定値に漸近する。
ここで、目標アシストクラッチ油圧TPa=TFspg×K2は、アシストクラッチ9のリターンスプリング9gのセット荷重に相当する油圧である。図7(C)に点線で示すように、時刻t8において、目標アシストクラッチ油圧TPaを0とすると、図7(D)に点線で示す電磁弁駆動電流は速やかに0に減少する。したがって、アシストクラッチのリターンスプリング9gによってピストン114cが速やかに押し戻されることになる。この結果、図7(H)に点線で示すような出力軸トルクの変動が生じることになる。
それに対して、目標アシストクラッチ油圧TPa=TFspg×K2とすることにより、アシストクラッチのリターンスプリング9gによってピストン114cが緩やかに押し戻され、アシストクラッチ油圧とアシストクラッチのリターンスプリング9gのセット荷重がバランスし、図7(E)に示すように、アシストクラッチの伝達トルクが徐々に0となり、図7(H)に示すように、出力軸トルクがスムーズに変化する。
次に、図5のステップ505で、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5が終了制御フェーズ完了判定ディレイ時間TMFN以上と判定されると(時刻t9=時刻t8から終了制御フェーズ完了判定ディレイ時間TMFNで設定された時間が経過したタイミング)、図5のステップ506でアシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNがセットされ、図6のステップ603によってアシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FN=1と判定され、図6のステップ607に基づき、目標アシストクラッチ油圧TPa=0と設定され、電磁弁駆動電流(C)が0となり、その結果、アシストクラッチ油圧(D)も0となり、変速制御が終了して通常制御(図4のステップ407)となり、クラッチ位置(F)が解放位置PA1まで移動し、アシストクラッチが完全に解放された状態となる。
このように時刻t7から時刻t8の第一段階で図6のステップ606の設定によって定めた油圧となるよう、図7(C)に示すように電磁弁駆動電流を減少させ、図5のステップ501で設定した完了判定ディレイ時間TMFNが経過する時刻t8から時刻t9までの第二段階で図7(C)に示すように電磁弁駆動電流を一定に保ち、時刻t9の第三段階で図7(C)に示すように再度電磁弁駆動電流を減少させるように構成することで、図7(D)に点線で示したようにアシストクラッチ油圧が急速に低下することによる出力軸トルク(図7(H))の急増化(突き上げ)ショック発生を回避でき、運転性能(変速フィーリング)の低下を回避できる。
なお、上述したように、図6のステップ606における処理において、リターンスプリング相当荷重TFspgは、一定値としても良いが、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5を入力とした関数によって算出される値とし、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5がカウントアップされるにつれて徐々に低下するようにしてもよいものである。このとき、電磁弁電流は、図7(C)の時刻t8〜t9に示した一定値ではなく、徐々に低下する電流となると、このようにしても、アシストクラッチのリターンスプリング9gによってピストン114cが急激に押し戻されることはないため、アシストクラッチ伝達トルクが急激に変化することを防止できる。したがって、第二段階におけるアシストクラッチ(摩擦伝達機構)の押付け荷重の減少速度は、0(要するに、押付け荷重が一定値)若しくは第一段階における摩擦伝達機構の押付け荷重の減少速度よりも小さくすればよいものである。
また、第二段階は、ステップ505において一定時間(TMFN)が計測される間継続するものとしているが、例えば、油圧センサを備え、油圧センサの値が、リターンスプリング9gのセット荷重相当の油圧となるまで第二段階を継続するようにしてもよいものである。そして、油圧センサの値が、リターンスプリング9gのセット荷重相当の油圧となると、第三段階に移行する。
第三段階は、速やかにアシストクラッチ(摩擦伝達機構)の押付け荷重を減少させてよいため、その減少速度は、第二段階の減少速度よりも大きいものである。
以上説明したように、本実施形態においては、終了制御フェーズにおいては、アシストクラッチ(摩擦伝達機構)の押付け荷重を第一段階,第二段階,第三段階の三段階で制御し、そのとき、第二段階においては、アシストクラッチ(摩擦伝達機構)の押付け荷重の減少速度は、0若しくは第一段階における摩擦伝達機構の押付け荷重の減少速度よりも小さくすることにより、リターンスプリング9gのセット荷重と摩擦伝達機構の押付け荷重が釣合うまで応答遅れを考慮して摩擦伝達機構を完全に解放するため、アシストクラッチ伝達トルクが急速に低下することによる出力軸トルクの急増化(突き上げ)ショック発生を回避でき、運転性能(変速フィーリング)の低下を回避できるものとなる。
次に、図8〜図11を用いて、本発明の第2の実施形態による自動変速機を備えた自動車の制御装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図8を用いて、本実施形態による自動変速機を備えた自動車の構成について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態による自動変速機を備えた自動車のシステム構成を示すスケルトン図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態において、図1の実施形態と異なる点は、図1においては、油圧機構によって入力軸クラッチ8,アシストクラッチ9,シフトセレクト機構24を制御するように構成されていたのに対し、本実施形態では電動モータ機構によって構成している点である。
すなわち、入力軸クラッチ8の伝達トルクを制御する入力軸クラッチアクチュエータ111Aは、制御装置である変速機制御ユニット100Aによって入力軸クラッチアクチュエータ111Aに設けられたモータ(図示せず)の電流を制御することで、入力軸クラッチ8の伝達トルクの制御を行っている。
また、アシストクラッチ9の伝達トルクを制御するアシストクラッチアクチュエータ114Aは、変速機制御ユニット100Aによって、アシストクラッチアクチュエータ114Aに設けられたモータ(図示せず)の電流を制御することで、アシストクラッチ9の伝達トルクの制御を行っている。すなわち、アシストクラッチアクチュエータ114Aがアシストクラッチ9を作動させる作動機構として構成されている。
また、変速機制御ユニット100Aによって、セレクトアクチュエータ113Aに設けられたモータ(図示せず)の電流を制御することで、シフト/セレクト機構24に設けられたコントロールアーム(図示せず)のストローク位置である、セレクト位置を制御し、第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23のいずれを移動するか選択している。
また、変速機制御ユニット100Aによって、シフトアクチュエータ112Aに設けられたモータ(図示せず)の電流を制御することで、シフト/セレクト機構24に設けられたコントロールアーム(図示せず)の回転力、回転位置を制御し、セレクトアクチュエータ113Aによって選択された、第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23のいずれかを動作させる荷重またはストローク位置(シフト位置)を制御できるようになっている。
次に、図9を用いて、本発明の第2の実施形態による自動変速機を備えた自動車に用いる摩擦伝達装置(アシストクラッチ9,アシストクラッチアクチュエータ114A)の構成について説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態による自動変速機を備えた自動車に用いる摩擦伝達装置の構成を示す断面図である。なお、図9においては、図8に示したアシストクラッチ9,変速機入力軸41,第6ドライブギア6,第6ドリブンギア16,アシストクラッチアクチュエータ114Aの部分を抜粋し、拡大して示している。また、図2と同一符号は、同一部分を示している。
本構成例が、図2に示した構成と異なる点は、図2に示した構成では、電磁弁104fによって調圧された油圧が給油口114aに供給されるように構成されているのに対し、本構成例では、モータによって作動するアシストクラッチアクチュエータ114Aによって調圧された油圧が給油口114Aiに供給されるように構成している点である。
図9に示すアシストクラッチアクチュエータ114Aは、アシストモータ114Aaと、モータドライブギア114Abと、モータドリブンギア114Acと、ボールネジ114Adと、ロッド114Aeと、ピストン114Afと、シリンダ114Agと、配管114Ahと、給油口114Aiと、ピストン室114Ajと、ピストン114Akと、リザーバタンク114Alとを備えている。
アシストモータ114Aaによって発生された回転トルクは、モータドライブギア114Abおよびモータドリブンギア114Acを介して、ボールネジ114Adに伝達される。ボールネジ114Adが回転することによってロッド114Aeがストロークし、ピストン114Afをストロークする。シリンダ114Agおよびリザーバタンク114Alには油が充満されており、ピストン114Afがストロークすることで、リザーバタンク114Alの油路を塞ぎ、シリンダ114Agの内部の油を押しこみ、配管114Ahを介してピストン室114Ajに充満された油の圧力を高め、ピストン114Akが作動し、ベアリング9dを介してプレッシャプレート9cを押付け、リターンスプリング9gを圧縮し、クラッチプレート9aとクラッチディスク9bの間に押し付け力が働き、入力軸41の回転トルクが、クラッチハブ9f−クラッチプレート9a−クラッチディスク9b−クラッチドラム9h−第6ドライブギア6を介して、第6ドリブンギア16に伝達される。
このように、本実施形態は、摩擦面の押付けによって動力を伝達する摩擦伝達機構と、摩擦伝達機構の押付け荷重を調整する作動機構とを備え、作動機構を制御することによって摩擦伝達機構の押付け荷重を制御して動力を伝達する種々の摩擦伝達装置に適用可能である。
次に、図10を用いて、本発明の第2の実施形態による自動変速機を備えた自動車に用いる変速機制御ユニット100Aと、エンジン制御ユニット101との間の入出力信号関係について説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態による自動変速機を備えた自動車に用いる変速機制御ユニットとエンジン制御ユニットとの間の入出力信号関係を示すブロック図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
本構成例が、図3に示した実施形態と異なる点は、図3に示した構成例では、変速機制御ユニット100によって、電磁弁に印加する電圧を出力するように構成されているのに対し、本構成例では、変速機制御ユニット100Aによって、各モータへの印加電圧を調整するように構成している点である。
すなわち、変速機制御ユニット100Aは、所望の入力軸クラッチ油圧を実現するために、入力軸クラッチアクチュエータ111Aのモータへ印加する電圧V1_sta,V2_staを調整することで、モータの電流を制御し、入力軸クラッチ8を係合、解放する。
また、変速機制御ユニット100Aは、所望のアシストクラッチ油圧を実現するために、アシストクラッチアクチュエータ114Aのモータへ印加する電圧V1_ast,V2_astを調整することで、モータの電流を制御し、アシストクラッチ9を係合、解放する。
また、変速機制御ユニット100Aは、所望のセレクト位置を実現するために、セレクトアクチュエータ113Aのモータへ印加する電圧V1_sel,V2_selを調整することで、モータの電流を制御し、第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23のいずれを噛合させるかを選択する。
また、変速機制御ユニット100Aは、所望のシフト荷重もしくはシフト位置を実現するために、シフトアクチュエータ112Aのモータへ印加する電圧V1_sft,V2_sftを調整することで、モータの電流を制御し、第1噛合い伝達機構21,第2噛合い伝達機構22,第3噛合い伝達機構23のいずれかの噛合、解放を行う。
なお、変速機制御ユニット100Aには、電流検出回路(図示せず)が設けられており、各モータの電流が目標電流に追従するよう電圧出力を変更して、各モータの回転トルクを制御している。
またここで、各アクチュエータに備えられるモータは、磁石が固定されて巻線が回転される、いわゆる直流モータによって構成されているが、巻線が固定して磁石が回転される、いわゆる永久磁石同期モータでも良く、種々のモータが適用可能である。
次に、図11を用いて、図8〜図10に示す構成による変速制御による第2の変速制御の制御内容について説明する。この変速制御例では、第1速段から第2速段へのアップシフト時の制御内容を示している。
図11は、本発明の第2の実施形態による自動変速機の制御装置の第2の変速制御例のタイムチャートである。
なお、本実施形態による自動変速機の制御装置の全体の制御内容の概略を示すフローチャートは、図4に示したものと同様である。また、図4のステップ406(終了制御完了判定)において終了制御完了判定に用いられるアシストクラッチ解放完了判定フラグfPH5FNの処理内容は、図5に示したものと同様である。さらに、図4のステップ407〜412において実行される、アシストクラッチ目標伝達トルクTTaを実現するためのアシストモータ114Aaへの印加電圧目標デューティー比DUTYaの算出処理内容は、図6に示したものと同様である。
図11において、図11(A)は入力軸回転数Niを示している。また、Ni_1は第1速段相当の回転数であり、Ni_2は第2速段相当の回転数を示している。図11(B)は目標とするアシストクラッチ伝達トルクTTaを示している。図11(C)はアシストモータ114Aaの駆動電流を示している。図11(E)はアシストクラッチ9の伝達トルクを示している。図11(F)はアシストクラッチのピストンストロークを示している。また、PA1は解放位置であり、PA2はトルク伝達位置を示している。図11(G)はシフト位置RPsftを示している。また、SF1は1速側の位置であり、SF2は中立(ニュートラル)の位置であり、SF3は2速側の位置を示している。図11(H)は変速機出力軸42のトルクを示している。
時刻t1〜時刻t7までの制御内容は、図7と同様である。以下、時刻t7以降の変速終了フェーズの制御内容について説明する。
時刻t7において、図11(G)に示すように、シフト位置が2速側の係合位置SF3へ移動すると、変速機制御ユニット100Aによって、図11(C)に示すように、アシストモータ駆動電流が徐々に減少し、その結果、図11(E)に示すように、アシストクラッチ伝達トルクが徐々に減少する。
時刻t8において、目標アシストクラッチトルク(図11(B))が0と判定され、時刻t8から時刻t9の期間では、変速機制御ユニット100Aによって、図11(C)に示すように、アシストモータ駆動電流が一定値に保たれ、その結果、図11(E)に示すように、アシストクラッチ伝達トルクが緩やかに0となり、図11(H)に示すように、出力軸トルクがスムーズに変化する。
時刻t9において、変速機制御ユニット100Aによって、アシストモータ駆動電流(図11(C))が0となり、変速制御が終了し、図11(F)に示すように、クラッチ位置が解放位置PA1まで移動し、アシストクラッチが完全に解放された状態となる。
このように、図11(C)に示すように、時刻t7から時刻t8の第一段階でモータ駆動電流を減少させ、時刻t8から時刻t9までの第二段階でモータ駆動電流を一定に保ち、時刻t9の第三段階で再度モータ駆動電流を減少させるように構成することで、アシストクラッチ伝達トルクが急速に低下することによる出力軸トルクの急増化(突き上げ)ショック発生を回避でき、運転性能(変速フィーリング)の低下を回避できる。
なお、上述したように、図6のステップ606における処理において、リターンスプリング相当荷重TFspgは、一定値としても良いが、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5を入力とした関数によって算出される値とし、終了制御完了判定ディレイタイマTmrPH5がカウントアップされるにつれて徐々に低下するようにしてもよいものである。このとき、モータ電流は、図11(C)の時刻t8〜t9に示した一定値ではなく、徐々に低下する電流となると、このようにしても、アシストクラッチのリターンスプリング9gによってピストン114cが急激に押し戻されることはないため、アシストクラッチ伝達トルクが急激に変化することを防止できる。したがって、第二段階におけるアシストクラッチ(摩擦伝達機構)の押付け荷重の減少速度は、0(要するに、押付け荷重が一定値)若しくは第一段階における摩擦伝達機構の押付け荷重の減少速度よりも小さくすればよいものである。
また、第二段階は、ステップ505において一定時間(TMFN)が計測される間継続するものとしているが、例えば、油圧センサを備え、油圧センサの値が、リターンスプリング9gのセット荷重相当の油圧となるまで第二段階を継続するようにしてもよいものである。そして、油圧センサの値が、リターンスプリング9gのセット荷重相当の油圧となると、第三段階に移行する。
第三段階は、速やかにアシストクラッチ(摩擦伝達機構)の押付け荷重を減少させてよいため、その減少速度は、第二段階の減少速度よりも大きいものである。
以上説明したように、本実施形態においては、終了制御フェーズにおいては、アシストクラッチ(摩擦伝達機構)の押付け荷重を第一段階,第二段階,第三段階の三段階で制御し、そのとき、第二段階においては、アシストクラッチ(摩擦伝達機構)の押付け荷重の減少速度は、0若しくは第一段階における摩擦伝達機構の押付け荷重の減少速度よりも小さくすることにより、アシストクラッチ伝達トルクが急速に低下することによる出力軸トルクの急増化(突き上げ)ショック発生を回避でき、運転性能(変速フィーリング)の低下を回避できるものとなる。
次に、図12を用いて、本発明の第3の実施形態による自動変速機を備えた自動車の制御装置の構成及び動作について説明する。
図12は、本発明の第3の実施形態による自動変速機を備えた自動車のシステム構成を示すスケルトン図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
自動変速機50Bには、第1クラッチ1608,第2クラッチ1609,第1入力軸1641,第2入力軸1643,出力軸1642,第1ドライブギア1601,第2ドライブギア1602,第3ドライブギア1603,第4ドライブギア1604,第5ドライブギア1605,第1ドリブンギア1611,第2ドリブンギア1612,第3ドリブンギア1613,第4ドリブンギア1614,第5ドリブンギア1615,第1噛合い伝達機構1621,第2噛合い伝達機構1622,第3噛合い伝達機構1623,回転センサ31,回転センサ32,回転センサ33が設けられている。
本構成例が、図1に示した構成例と異なる点は、図1に示した構成例が入力軸クラッチ8の係合によってエンジン7のトルクを変速機入力軸41に伝達するように構成されているのに対し、本構成例がツインクラッチで構成している点である。
すなわち、第1クラッチ1608の係合によって、エンジン7のトルクを第1入力軸1641に伝達し、また第2クラッチ1609の係合によって、エンジン7のトルクを第2入力軸1643に伝達する。第2入力軸1643は中空になっており、第1入力軸1641は、第2入力軸1643の中空部分を貫通し、第2入力軸1643に対し回転方向への相対運動が可能な構成となっている。
第2入力軸1643には、第1ドライブギア1601と第3ドライブギア1603と第5ドライブギア1605が固定されており、第1入力軸1641に対しては、回転自在となっている。また、第1入力軸1641には、第2ドライブギア1602と第4ドライブギア1604が固定されており、第2入力軸1643に対しては、回転自在となっている。
第1クラッチ1608の係合、解放は、第1クラッチアクチュエータ115によって行われ、第2クラッチ1609の係合、解放は、第2クラッチアクチュエータ116によって行われる。
また、第1入力軸1641の回転数を検出する手段として、センサ31が設けられており、第2入力軸1643の回転数を検出する手段として、センサ33が設けられている。
一方、出力軸1642には、第1ドリブンギア1611,第2ドリブンギア1612,第3ドリブンギア1613,第4ドリブンギア1614,第5ドリブンギア1615が設けられている。第1ドリブンギア1611,第2ドリブンギア1612,第3ドリブンギア1613,第4ドリブンギア1614,第5ドリブンギア1615は出力軸42に対して回転自在に設けられている。
また、出力軸1642の回転数を検出する手段として、センサ32が設けられている。
また、第1ドリブンギア1611と第3ドリブンギア1613の間には、第1ドリブンギア1611を出力軸1642に係合させたり、第3ドリブンギア1613を出力軸1642に係合させる、第1噛合い伝達機構1621が設けられている。
また、第2ドリブンギア1612と第4ドリブンギア1614の間には、第2ドライブギア1612を出力軸1642に係合させたり、第4ドリブンギア1614を出力軸1642に係合させる、第3噛合い伝達機構1623が設けられている。
また、第5ドリブンギア1615には、第5ドリブンギア1615を出力軸1642に係合させる、第2噛合い伝達機構1622が設けられている。
ここで、噛合い伝達機構1621、1622、1623は、摩擦伝達機構を備え、摩擦面を押しつけることによって回転数を同期させて噛合いを行う同期噛合い式を用いることが望ましい。
シフトアクチュエータ117によって、第1噛合い伝達機構1621の位置を移動し、第1ドリブンギア1611または、第3ドリブンギア1613と係合させることで、第2入力軸1643の回転トルクを、第1噛合い伝達機構1621を介して出力軸1642へと伝達することができる。
また、シフトアクチュエータ119によって、第3噛合い伝達機構1623の位置を移動し、第2ドリブンギア1612または、第4ドリブンギア1614と係合させることで、第1入力軸1641の回転トルクを、第3噛合い伝達機構1623を介して出力軸1642へと伝達することができる。
また、シフトアクチュエータ118によって、第2噛合い伝達機構1622の位置を移動し、第5ドリブンギア1615と係合させることで、第2入力軸1643の回転トルクを、第2噛合い伝達機構1622を介して出力軸1642へと伝達することができる。
第1クラッチ1608の伝達トルクを制御する第1クラッチアクチュエータ115は、制御装置である変速機制御ユニット100Bによって油圧機構104Aに設けられた電磁弁104Aaの電流を制御することで、第1クラッチアクチュエータ115に設けられた油圧シリンダおよびピストン(図示せず)を制御し、第1クラッチ1608の伝達トルクの制御を行っている。すなわち、油圧機構104A、電磁弁104Aa、および第1クラッチアクチュエータ115が第1クラッチ1608を作動させる作動機構として構成されている。
第2クラッチ1609の伝達トルクを制御する第2クラッチアクチュエータ116は、変速機制御ユニット100Bによって油圧機構104Aに設けられた電磁弁104Abの電流を制御することで、第2クラッチアクチュエータ116に設けられた油圧シリンダおよびピストン(図示せず)を制御し、第2クラッチ1609の伝達トルクの制御を行っている。すなわち、油圧機構104A、電磁弁104Ab、および第2クラッチアクチュエータ116が第2クラッチ1609を作動させる作動機構として構成されている。
また、変速機制御ユニット100Bによって、油圧機構104Aに設けられた電磁弁104Ac、104Adの電流を制御することで、シフトアクチュエータ117に設けられた油圧ピストン(図示せず)を介して、第1噛合い伝達機構1621の荷重またはストローク位置(第一シフト位置)を制御できるようになっている。なお、シフトアクチュエータ117には第一シフト位置を計測する位置センサ(図示せず)が設けられている。
また、変速機制御ユニット100Bによって、油圧機構104Aに設けられた電磁弁104Ae、104Afの電流を制御することで、シフトアクチュエータ118に設けられた油圧ピストン(図示せず)を介して、第2噛合い伝達機構1622の荷重またはストローク位置(第二シフト位置)を制御できるようになっている。なお、シフトアクチュエータ118には第二シフト位置を計測する位置センサ(図示せず)が設けられている。
また、変速機制御ユニット100Bによって、油圧機構104Aに設けられた電磁弁104Ag、104Ahの電流を制御することで、シフトアクチュエータ119に設けられた油圧ピストン(図示せず)を介して、第3噛合い伝達機構1623の荷重またはストローク位置(第三シフト位置)を制御できるようになっている。なお、シフトアクチュエータ119には第三シフト位置を計測する位置センサ(図示せず)が設けられている。
ここで、たとえば、第1噛合い伝達機構1621が第1ドリブンギア1611と係合し、第3噛合い伝達機構1623が第2ドリブンギア1612と係合し、第1クラッチ1608が解放され、第2クラッチ1609が係合され、
第2クラッチ1609によってエンジン7のトルクが第1ドライブギア1601、第1ドリブンギア1611、第1噛合い伝達機構1621を介して出力軸1642に伝達されている「1速」すなわち第1速段の状態から、
第1クラッチ1608が係合され、第2クラッチ1609が解放され、
第1クラッチ1608によってエンジン7のトルクが第2ドライブギア1602、第2ドリブンギア1612、第3噛合い伝達機構1623を介して出力軸1642に伝達されている「2速」すなわち第2速段の状態へと変速する場合、第一段階で第2クラッチ1609の押付け荷重を減少させ、第一段階以降の第二段階で、第2クラッチ1609の押付け荷重を一定に保ち、第二段階以降の第三段階で、第2クラッチ1609の押付け荷重を再度減少させるように構成することで、第2クラッチ1609の伝達トルクが急速に低下することによる出力軸トルクの急変ショック発生を回避でき、運転性能(変速フィーリング)の低下を回避できる。