JP2006027701A - 果実飲料充填プラスチック多層容器 - Google Patents

果実飲料充填プラスチック多層容器 Download PDF

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智香 大槻
Yukiko Yamaguchi
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Abstract

【課題】透明性、軽量性、耐衝撃性、再封性に優れ、充填された果実飲料の色調の変化が小さく、ガラス瓶とほぼ同等の賞味期限を有する果実飲料充填プラスチック多層容器を提供する。
【解決手段】果実飲料がアセプティック充填され密封された透明なプラスチック容器であって、該プラスチック容器は、熱可塑性ポリエステルからなる内外層と前記内外層の間に酸素吸収層を有し、容器内に無酸素水を試験液として満注充填して密封し22℃−60%RHで12週間保存したとき試験液中の溶存酸素量が0.5ppm以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、果実飲料を充填して密封したプラスチック容器に関するものであって、より詳しくは充填液のビタミン成分や色調などの変化が少なく、鮮度保持性に優れた果実飲料充填プラスチック容器に関する。
従来から、ミカン、グレープフルーツ、リンゴ、ブドウ、イチゴ等の果実や、トマトなどの野菜を原料として、例えば、果汁飲料、果肉飲料、果肉粒入り果実飲料、野菜ジュース等の種々の果実飲料、野菜飲料が製造され、市販されている。本願では、以下これらを総称して果実飲料と呼ぶ。
これら果実や野菜を原料とする果実飲料用の容器として、これまでガラス瓶や金属缶が使用されてきたことはよく知られている。これらの容器は、果実飲料中に含まれる香味成分を長期にわたって保持するために、本来は容器構成素材として好ましいものであるが、両容器ともに重いことや、さらに、ガラス瓶の場合は割れ易いという問題があり、金属缶の場合は、へこみ易く、かつ内容物に比較して材料費が高くつくという問題もある。
このような技術上の問題点を解決するものとして、ポリエステル樹脂(PET)に代表される透明なプラスチック容器がみられるようになった。プラスチック容器は、軽くて割れにくく、流通の合理化という点でのメリットはあるものの、僅かながら酸素を透過する性質がある。
果実飲料は、光、保存温度等の要因だけでなく保存中にヘッドスペースや果実飲料中に共存する酸素の影響を受けて、変色、風味の低下、成分の変化や劣化等が進行して商品価値が低下する。このため特に酸素の影響を受けやすい果実飲料用途の場合には、プラスチック容器では酸素による内容物の変質やフレーバーの劣化が起こりやすく、賞味期間が短くなってしまうという問題がある。
この欠点を改善するため、例えば、本出願人の提案にかかる特許文献1には、熱可塑性ポリエステルからなる内外層と、前記内外層の間に酸素吸収層を有し、少なくとも容器胴部における内外層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅が15°以下であることを特徴とするプラスチック多層容器が記載されている。
特開2003−225982号公報
しかしながら、上記従来のプラスチック多層容器では、内容物として果実飲料を充填密封した場合に、どの程度の酸素バリア性能があれば、従来容器に比べどのような鮮度保持ができ、賞味期限の延長ができるのか明確ではなかった。
本発明は、従来のプラスチック多層容器における上述のような事情に鑑みてなされたものであって、内容液の充填方法等も考慮して、透明性、軽量性、耐衝撃性、再封性に優れ、充填された果実飲料の色調の変化が小さく、ガラス瓶とほぼ同等の賞味期限を有する果実飲料充填プラスチック多層容器を提供するものである。
本発明によれば、果実飲料がアセプティック充填され密封された透明なプラスチック容器であって、該プラスチック容器は、熱可塑性ポリエステルからなる内外層と前記内外層の間に酸素吸収層を有し、容器内に無酸素水を試験液として満注充填して密封し22℃−60%RHで12週間保存したとき試験液中の溶存酸素量が0.5ppm以下であることを特徴とする果実飲料の鮮度保持性に優れた果実飲料充填プラスチック多層容器が提供される。
本発明においては、
1.前記プラスチック容器は、二軸延伸ブロー成形ボトルであって、少なくともボトル胴部における内外層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅が15°以下であること、
2.前記酸素吸収層が、キシリレン基含有ポリアミドとポリエンとコバルト塩を含有すること、
3.室温における容器内のヘッドスペース量が容器の満注内容量に対して3%以下となるように果実飲料が充填されていること、
が好ましい。
本発明では、熱可塑性ポリエステルからなる内外層と前記内外層の間に酸素吸収層を有し、容器内に無酸素水を内容液として満注充填して密封し22℃−60%RHで12週間保存したときの内容液中の溶存酸素量が0.5ppm以下である酸素バリア性・吸収性に優れたプラスチック多層容器に果実飲料を充填し密封しているので、流通や保存時の果実飲料の色調の変化が少なく、さらにビタミンCなどの減少も抑制でき、従来のプラスチック容器詰め果実飲料に比べ賞味期限の延長が図れ、ガラス瓶詰めとほぼ同等の鮮度保持性が可能となる。
そして、透明なプラスチック容器詰めであるので、内容物の視認性に優れ、割れにくく軽量、耐衝撃性に優れる。さらにアセプティック充填し密封するのでレトルト殺菌するものに比べ、飲料に与える熱履歴が少ない。また常温での流通、保管が可能で取り扱い容易である。
また、本発明では、前記プラスチック容器は、二軸延伸ブロー成形ボトルであって、少なくともボトル胴部における内外層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅が15°以下であることが好ましい。容器胴部における外層及び内層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅が15°以下とすることにより、前記内層および外層のガスバリア性を高く、例えば水分が前記内外層の間の酸素吸収層の間の酸素吸収層に到達しにくくなり、前記酸素吸収層の吸湿によるガスバリア性の低下が防止できる。また、外部からの酸素進入、及び内容物が炭酸飲料の場合には、炭酸ガスの外部への流出が防止される。従ってプラスチック容器詰め果実飲料の商品の鮮度保持性がより高められる。ここで、図5を用いて、回折プロファイルのピーク及び半値幅について説明する。内層及び外層をそれぞれ分離して、各層の厚み方向にX線を入射すると、図5に示すように、特定の回折角度(2θ)付近で、X線回折による回折プロファイルのピークA°が検出される。この回折角度は、熱可塑性ポリエステルの種類により異なるが、15°〜25°の範囲にあり、ポリエチレンテレフタレートでは21°付近に回折プロファイルのピーク値が検出される。半値幅B°は、回折ピークA°における強度の1/2の点を通って横軸に平行線を引いたときに、この平行線とピークが交差する2点間の間隔である。半値幅の小さい程、配向していることを示す。
また、本発明では、前記酸素吸収層が、キシリレン基含有ポリアミドとポリエンとコバルト塩を含有することが好ましい。これにより、酸素吸収性、透明性に優れた酸素吸収層が得られる。酸素吸収層が、ガスバリア性樹脂、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒を含むことにより、酸素透過を抑制しつつ、前記酸素吸収層を透過する酸素を捕捉し、容器内への酸素の進入を低減することができる。キシレン基含有ポリアミド樹脂(MXD6)は、ガスバリア性樹脂であり、ポリエンとコバルト塩はそれぞれ酸化可能有機成分と遷移金属触媒である。キシリレン基含有ポリアミドは、酸素透過性が小さく、酸素バリア性の観点から好ましい。ポリエンは、酸化反応速度が速く、温度上昇による酸素拡散速度の上昇や、バリア樹脂の吸湿により透過酸素量が増大した場合でも十分な酸素捕捉能力を確保できる。また、コバルト塩は、酸素吸収性の点で好ましく、樹脂中への分散性に優れていると共に、容器を見苦しくなるほどには着色しない利点がある。従ってプラスチック容器詰め果実飲料の外観性、鮮度保持性がより高められる。
さらに、本発明では、室温での容器内のヘッドスペース量が内容物量に対して3%以下、より好ましくは2%以下となるように果実飲料が充填されていることが好ましい。これにより容器内のヘッドスペース中の酸素量が規制され影響を小さくすることができるので、より鮮度保持性が高められる。
本発明において、果実飲料の原料となる果実は、通常、果実飲料に用いられているものであれば特に限定されず種々のものを用いることができ、トマト、スイカ等も含む広い意味での果実であればよい。特に、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、モモ、ナシ、ウメ、グアバ、パパイヤ、マンゴー、ベリー、ファッションフルーツ、トマト、スイカ等が好ましく用いられる。なかでも、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類が、後述の実施例で明らかなように色調の変化が小さく、さらに好ましい。果実から得た果汁、果肉を含む果実飲料およびその混合果実飲料や果汁入り飲料、または濃縮果汁の他、各種野菜ジュース等の飲料を充填することができる。
果実飲料は、アセプティック充填(無菌充填)により容器に充填される。すなわち、超高温殺菌法(UHT)を利用し、一般に、125℃以上の超高温下で4〜5秒間、内容液(液体飲料)の殺菌が行われ、殺菌後の内容液は、品質の劣化を防止するために急冷される。さらに、無菌的に製造された包装材料(ボトルおよびキャップ)を充填まで無菌的に取り扱うか、または製造された包装材料を充填前に殺菌液で殺菌処理し、ボトルの中に先に殺菌処理された内容液を充填し、キャップにより密封する。殺菌液としては、過酢酸や過酸化水素の水溶液が使用されている。充填は、常法にしたがって行うことができるが、この際、室温で容器内のヘッドスペース量が内容物量に対して3%以下、より好適には2%以下となるようにヘッドスペース量を小さくすると、容器内の酸素量を少なくすることができ、色調変化の抑制やビタミンC等の維持など果実飲料の鮮度保持の点で好ましい。また、場合によっては容器内をあらかじめ窒素ガス等によって置換したり、充填時にヘッドスペースのガス置換を行って酸素量を少なくしてもよい。さらにはアセプティック高温充填を行って、充填液中の溶存酸素量を減少させてもよい。
次に、本発明におけるプラスチック多層容器について説明する。
[プラスチック多層容器の構造、酸素バリア性]
1.プラスチック多層容器の主要部分
プラスチック多層容器の一例は、口頸部、肩部、胴部及び底部の主要部分からなる。これらについて図を用いて説明する。図1は、本発明のプラスチック多層容器の一例を示す側面図である。この図に示すように、プラスチック多層容器1は、ノズル部(口頸部)2、円錐台状の肩部3、筒状の胴部4及び閉ざされた底部5からなる。胴部は透明であり、内容物として充填した果実飲料が視認できる。通常、胴部には高温充填〜冷却の際の減圧変形を吸収するパネルと呼ばれる凹凸が形成され、また内容物やロゴ、標識を印刷したシュリンクラベルやストレッチラベルが外周の一部または全面を覆っている。さらに、高温充填や加温販売に耐える耐熱性・密封性を確保するため、ノズル部は結晶化処理されていてもよい。
2.多層構造
本発明のプラスチック多層容器の多層構造について説明する。図2は、図1に示すプラスチック多層容器の胴部4における壁の拡大断面図である。プラスチック多層容器1は、ポリエステル内層20、ポリエステル外層30及びこれらの間に位置する酸素吸収層40からなる。酸素吸収層40と内外層20,30との間には、接着性樹脂50,50’が介在していてもよい。ここで、図2は、本発明のプラスチック多層容器における多層構造の一例を示すもので、本発明はこの構造に限定されない。即ち、内層、外層及び酸素吸収層の他に、オレフィン系樹脂、ガスバリア性樹脂、環状オレフィン共重合体等の他の層を含むことができる。オレフィン樹脂の例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)又はこれらのブレンド物等が挙げられる。
以下に、本発明におけるプラスチック多層容器の多層構造の例を示す。
二種三層構造:PET/MXD6/PET
二種五層構造:PET/MXD6/PET/MXD6/PET
三種五層構造:PET/AD/MXD6/AD/PET(PET:ポリエチレンテレフタレート、MXD6:ポリアミド樹脂、AD:接着剤)
各層間に必要により接着剤樹脂を介在させることができるが、このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル等に基づくカルボニル(−CO−)基を主鎖又は側鎖に、1〜700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、特に10〜500meq/100g樹脂の濃度で含有する熱可塑性樹脂が挙げられる。接着剤樹脂の適当な例は、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等の1種又は2種以上の組合せである。これらの樹脂は、同時押出又はサンドイッチラミネーション等による積層に有用である。
3.厚み
本発明のプラスチック多層容器において、酸素吸収層の厚みは、特に制限はないが、一般に3〜100μm、好ましくは5〜50μm、特に5〜25μmの範囲にあるのがより好適である。即ち、酸素吸収層の厚みがある範囲よりも薄くなると酸素吸収性能が劣り、またある範囲よりも厚くなっても酸素吸収性の点では格別の利点がなく、樹脂量が増大する等経済性の点、材料の可撓性や柔軟性が低下する等の容器特性の点では不利となるからである。本発明のプラスチック多層容器において、全体の厚みは、用途によっても相違するが、一般に30〜7000μm、好ましくは50〜5000μm、特に100〜350μmの範囲にあるのがよく、一方酸素吸収層の中間層の厚みは、全体の厚みの0.5〜95%、好ましくは1〜50%、特に3〜20%の厚みとするのが適当である。
4.酸素バリア性
本発明においては酸素バリア性の高い容器を用いることが重要であり、次のようして評価した特定のバリア性能を満たすときに、果実飲料の鮮度保持性が高まり、プラスチック容器詰め果実飲料であってもガラス瓶詰めとほぼ同等の保存性が得られる。すなわち、容器内に無酸素水を満注充填し密封し、これを恒温器内で温度22℃、湿度60%RHの条件で12週間保存したのち、容器内の水の溶存酸素量を測定する。密封は前述のようなボトル容器の場合は、例えばキャップを巻き締めて密封すればよい。本発明においては、この保存後の溶存酸素量が0.5ppm以下であることが重要である。溶存酸素量がこの値を超えると、果実飲料の鮮度保持性が低下する。
[プラスチック多層容器の製造方法]
1.多層プリフォームの製造
多層プリフォームの製造は、従来公知の共射出成形機等を用いて、内外層をポリエステル樹脂とし、内外層の間に一層又はそれ以上の酸素吸収層を挿入し、射出用プリフォーム金型の形状に対応した、底部及び開口部を有する多層プリフォームを製造することができる。その一方法として、2台以上の射出機を備えた共射出成形機及び共射出用金型を用いて、内外層をポリエステル樹脂とし、内外層に覆われるように中間に一層又はそれ以上の酸素吸収層を挿入し、射出用プリフォーム金型の形状に対応した、底部及び開口部を有する多層プリフォームを製造することもできる。また、3台以上の射出機を備えた多段射出機により、まず第1次内層プリフォームを形成し、次いで第2次金型に移し中間層を射出し、さらに第3次金型で外層を射出して、遂次に多段金型を移して多層プリフォームを製造することもできる。また、多段射出機により、まず第1次内層プリフォームを射出形成し、次いで前記プリフォームを第2次金型に移して酸素吸収層を射出し、さらに前記プリフォームを第3次金型に移して外層を射出し、遂次に多段金型を用いて多層プリフォームを製造することもできる。さらに、圧縮成形によって製造することもでき、この場合、内外層を形成する溶融塊樹脂中に酸素吸収層樹脂剤を設け、この溶融塊を実質上温度低下なしに雌型に供給すると共に雄型で圧縮成形する。このようにして得られたプリフォームの口頸部に耐熱性を与えるため、プリフォームの段階で、口頸部を熱処理により結晶化し白化させてもよい。結晶化度は30〜50%、より好適には35〜45%が好ましい。また、後述の延伸ブローによる成形を完了させた後に、未延伸部分の口頸部を結晶化し白化させてもよい。尚、必要に応じて、前記多層プリフォームの層間には接着層を設けても良い。
2.ブロー成形体の製造
次に、多層プリフォームを二軸延伸ブロー成形するが、その方法としては、大別して、ホットパリソン法とコールドパリソン法とがある。前者のホットパリソン法では、プリフォームを完全に冷却することなく、軟化状態で二軸延伸ブロー成形する。一方、後者のコールドパリソン法では、プリフォームを、最終形状の寸法よりかなり小さく、かつポリエステルが非晶質である過冷却有底プリフォームとして形成し、このプリフォームをその延伸温度に予備加熱し、ブロー成形金型中で軸方向に引張延伸すると共に、周方向にブロー延伸する。いずれの方法においても、この多層プリフォームをガラス転移点(Tg)以上の延伸温度、例えば、85〜120℃に加熱後、熱処理(ヒートセット)温度に加熱された金型内において二軸延伸ブロー成形法によって、延伸ロッドにより縦方向に延伸すると共にブローエアによって横方向に延伸する。最終ブロー成形体の延伸倍率は、縦方向で1.2〜6倍、横方向で1.2〜4.5倍が好ましい。
3.熱処理(ヒートセット)
上述したブロー金型を120〜230℃、好ましくは130〜210℃に加熱して、二軸延伸ブロー時にブロー成形体の器壁の外側を、金型内面に所定時間接触させて熱処理を行う。所定時間の熱処理後、ブロー用流体を内部冷却用流体に切換えて、内層を冷却する。熱処理時間は、ブロー成形体の厚みや温度によっても相違するが、一般に1.5〜30秒、特に2〜20秒である。一方冷却時間も、熱処理温度や冷却用流体の種類により異なるが、一般に0.1〜30秒、特に0.2〜20秒である。この熱処理によりボトル胴部の各部は結晶化される。内層、酸素吸収層、外層の結晶化度は、主に、延伸配向による結晶化と、熱処理による結晶化により決まるが、熱処理した場合は、一般に結晶化度は、内層20≦外層30となる。
但し、酸素吸収層の結晶化度はポリエステル樹脂と相違し、用いるその材質によって変化するが、前述したように延伸配向による結晶化と、熱処理による結晶化が行われていることは間違いない。そして、内外層の結晶化度は、容器の肉厚、形状、ヒートセット温度、時間等の条件によるため、前記条件を最適化して少なくとも容器胴部における内外層の結晶化度を30〜55%とすれば良い。
冷却用流体としては、常温の空気、冷却された各種気体、例えば−40℃〜+10℃の窒素、空気、炭酸ガス等の他に、化学的に不活性な液化ガス、例えば液化窒素ガス、液化炭酸ガス、液化トリクロロフルオロメタンガス、液化ジクロロジフルオロメタンガス、他の液化脂肪族炭化水素ガス等が使用できる。この冷却用流体には、水等の気化熱の大きい液体ミストを共存させることもできる。上述した冷却用流体を使用することにより、著しく大きい冷却温度を得ることができる。また、二軸延伸ブロー成形に際して2個の金型を使用し、第1の金型では所定の温度及び時間の範囲内で熱処理した後、ブロー成形体を冷却用の第2の金型へ移し、再度ブローすると同時にブロー成形体を冷却してもよい。金型から取出したブロー成形体の外層は、放冷により、又は冷風を吹付けることにより冷却する。
4.他のブロー成形体の製造
他のブロー成形体の製造方法としては、多層プリフォームを用いて、本願の出願人に係わる特許第2917851号公報に例示されるように、前記多層プリフォームを一次二軸延伸ブロー金型を用いて最終ブロー成形体よりも大きい寸法の一次ブロー成形体とし、次いでこの一次ブロー成形体を加熱収縮させた後、二次金型を用いて二軸延伸ブロー成形を行って最終ブロー成形体とする二段ブロー成形を採用しても良い。このブロー成形体の製造方法によれば、ブロー成形体の底部が十分に延伸薄肉化され、熱間充填、加熱滅菌時の底部の変形、耐衝撃性に優れたブロー成形体を得ることができる。
[内層及び外層]
1.構成成分
本発明の内層及び外層に用いる熱可塑性ポリエステルとしては、延伸ブロー成形及び熱処理(熱結晶化)可能な樹脂であれば、任意のものを使用することができるが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、又はそれらの共重合体等の熱可塑性ポリエステル、これらの樹脂又は他の樹脂とのブレンド物が好適に使用され、特にポリエチレンテレフタレート等のエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが好適に使用される。さらに、アクリロニトリル樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、ポリエチレン等も使用することができる。これらの樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲内で種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収材、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤等を配合することができる。内層及び外層に用いるエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、エステル反復単位の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50〜90℃、融点(Tm)が200〜275℃の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートが耐圧性、耐熱性、耐熱圧性等の点で特に優れているが、エチレンテレフタレート単位以外にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸とプロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位の少量を含む共重合ポリエステルも使用できる。
2.半値幅
本発明では、少なくとも容器胴部における内外層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅を15°以下、好ましくは12°以下にすることにより、内層及び外層のガスバリア性を高めることができる。半値幅が15°を超えると十分なガスバリア性が得られない。
[酸素吸収層]
本発明の酸素吸収層は、酸素を吸収して酸素の透過を防ぐものであれば、任意のものを使用することができるが、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒の組合せ、あるいは実質的に酸化しないガスバリア性樹脂、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒の組合せが好適に使用される。実質的に酸化しないガスバリア性樹脂、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒の組合せは、酸化可能有機成分の方がガスバリア性樹脂より酸化反応が速く、酸化可能有機成分が専ら酸化を受けて酸素を吸収する。従って、ガスバリア性樹脂は実質上酸化しないで酸化劣化による酸素バリア性の低下が生じないので、長時間酸素吸収機能を発揮できる。このため、この組合せが特に好ましい。即ち、この組合せでは、ガスバリア性樹脂による酸素バリア性の保持と、酸化可能有機成分による酸素吸収性の発現とが機能分離的に行われていると考えられる。以下、各成分について詳説する。
1.ガスバリア性樹脂
ガスバリア性樹脂の例としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができ、例えば、エチレン含有量が20〜60モル%、特に25〜50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。このエチレンビニルアルコール共重合体ケン化物は、フィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、フエノール:水の重量比で85:15の混合溶媒中30℃で測定して0.01dl/g以上、特に0.05dl/g以上の粘度を有することが望ましい。
さらにまた、ガスバリア性樹脂の他の例としては、環状オレフィン系共重合体(COC)、特にエチレンと環状オレフィンとの共重合体、特に三井化学社製のAPEL等を用いることができる。
さらにまた、ガスバリア性樹脂の他の例としては、ポリアミド樹脂が挙げられる。かかるポリアミド樹脂としては、(a)ジカルボン酸成分とジアミン成分とから誘導された脂肪族、脂環族又は半芳香族ポリアミド、(b)アミノカルボン酸又はそのラクタムから誘導されたポリアミド、又はこれらのコポリアミド又はこれらのブレンド物が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバチン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸やテレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、ジアミン成分としては、1,6−ジアミノへキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン等の炭素数4〜25とくに6〜18の直鎖状又は分岐鎖状アルキレンジアミンや、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、特にビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、1,3−ビス(アミノシクロへキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミンが挙げられる。アミノカルボン酸成分として、脂肪族アミノカルボン酸、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノオクタン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸や、例えばパラ−アミノメチル安息香酸、パラ−アミノフェニル酢酸等の芳香脂肪族アミノカルボン酸等を挙げることができる。これらのポリアミドの内でもキシリレン基含有ポリアミドが好ましく、具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスベラミド、ポリパラキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド等の単独重合体、及びメタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセバカミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体等の共重合体、又はこれらの単独重合体又は共重合体の成分とヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、ピペラジン等の脂環式ジアミン、パラ−ビス(2アミノエチル)ベンジエン等の芳香族ジアミン、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、ε−カプロラクタム等のラクタム、7−アミノへプタン酸等のω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸等を共重合した共重合体が挙げられるが、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸とから得られるポリアミドが特に好適に用いることができる。これらのキシリレン基含有ポリアミドは、他のポリアミド樹脂に比して酸素バリヤア性に優れており、好ましい。本発明に用いるポリアミド樹脂は、前述した範囲の末端アミノ基濃度を有しているのが好ましい。末端アミノ基濃度が上記範囲を下回ると、ポリアミド樹脂の劣化が生じるので好ましくない。末端アミノ基濃度が前記範囲内にあるポリアミド樹脂は、市販のポリアミド樹脂の樹脂から選択して用いることができる。これらのポリアミド樹脂は、容器の機械的特性及び加工の容易さから、98%硫酸中、1.0g/dlの濃度及び20℃の温度で測定した相対粘度(ηrel)が1.3〜4.2、特に1.5〜3.8の範囲内にあることが望ましい。
2.酸化可能有機成分
また、本発明に用いる酸化可能有機成分は、ポリエンから誘導される重合体が好ましい。かかるポリエンとしては、炭素原子数4〜20のポリエン、鎖状又は環状の共役又は非共役ポリエンから誘導された単位を含む樹脂が好適に使用される。これらの単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;1,4−へキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエン、クロロプレン等が挙げられる。これらのポリエンは、単独で又は2種以上の組合せで、又は他の単量体との組合せで単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の形に組み込まれる。ポリエンと組合せで用いられる単量体としては、炭素原子数2〜20のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−クテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンが挙げられ、他にスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレート等の単量体も使用可能である。
ポリエン系重合体としては、具体的には、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIB)、天然ゴム、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等を挙げることができるが、これらの例に限定されない。重合体中における炭素−炭素二重結合は、特に限定されず、ビニレン基の形で主鎖中に存在しても、またビニル基の形で側鎖に存在していてもよい。これらのポリエン系重合体は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、水酸基が導入されていることが好ましい。これらの官能基を導入するのに用いられる単量体としては、上記の官能基を有するエチレン系不飽和単量体が挙げられる。これらの単量体としては、不飽和カルボン酸又はこれらの誘導体を用いるのが望ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、ビシクロ〔2,2,1〕へプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等のα,β不飽和カルボン酸無水物、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸の無水物が挙げられる。ポリエン系重合体の酸変性は、炭素−炭素二重結合を有する樹脂をベースポリマーとし、このベースポリマーに不飽和カルボン酸又はその誘導体をそれ自体公知の手段でグラフト共重合させることにより製造されるが、前述したポリエンと不飽和カルボン酸又はその誘導体とをランダム共重合させることによっても製造することができる。特に好適な変性ポリエン系重合体は、不飽和カルボン酸又はその誘導体を、0.01〜10モル%の量で含有している。不飽和カルボン酸又はその誘導体の含有量が上記の範囲にあると、酸変性ポリエン系重合体のポリアミド樹脂への分散が良好となると共に、酸素の吸収も円滑に行われる。また、末端に水酸基を有する水酸基変性ポリエン系重合体も良好に使用することができる。本発明に用いるポリエン系重合体は、40℃における粘度が1〜200Pa・sの範囲にあることが酸素吸収層の加工性の点で好ましい。
3.遷移金属触媒
本発明に用いる遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属成分が好ましいが、他に銅、銀等の第I族金属:錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を挙げることができる。これらの金属成分の内でもコバルト成分は、酸素吸収速度が大きく、特に好ましい。
遷移金属系触媒は、上記遷移金属の低価数の無機酸塩又は有機酸塩又は錯塩の形で一般に使用される。無機酸塩としては、塩化物等のハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩等の窒素のオキシ酸塩、リン酸塩等のリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、へプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルへキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。一方、遷移金属の錯体としては、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3−シクロへキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロへキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロへキサノン、2−ベンゾイルシクロへキサノン、2−アセチルー1,3−シクロへキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルべンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることができる。
4.酸素吸収層の製造
酸素吸収層が、実質的に酸化しないガスバリア性樹脂、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒を含む場合について、ガスバリア性樹脂がポリアミド樹脂であるものを例にとって、以下に説明する。酸化可能有機成分は、樹脂組成物を基準として、0.01〜10重量%、特に0.5〜8重量%の量で含有されていることが好ましい。また、遷移金属系触媒は、樹脂組成物基準で、遷移金属量として100〜3000ppm、具体的にはコバルトでは100〜800ppm、鉄では150〜1500ppm、マンガンでは200〜2000ppmの量で含有されていることが好ましい。ポリアミド樹脂に酸化可能有機成分及び遷移金属系触媒を配合するには、種々の手段を用いることができる。この配合には、格別の順序はなく、任意の順序でブレンドを行ってよい。例えば、酸化可能有機成分をポリアミド樹脂に乾式ブレンド又はメルトブレンドすることにより、両者のブレンド物を容易に調製することができる。一方、遷移金属系触媒はポリアミド樹脂や酸化可能有機成分に比して少量であるので、ブレンドを均質に行うために、一般に遷移金属触媒を有機溶媒に溶解し、この溶液と粉末又は粒状のポリアミド樹脂及び酸化可能有機成分とを混合し、必要によりこの混合物を不活性雰囲気下に乾燥するのがよい。
遷移金属系触媒を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロへキサノン等のケトン系溶媒、n−へキサン、シクロへキサン等の炭化水素系溶媒を用いることができ、一般に遷移金属系触媒の濃度が5〜90重量%となるような濃度で用いるのがよい。ポリアミド樹脂、酸化可能有機成分及び遷移金属系触媒の混合、及びその後の保存は、組成物の前段階での酸化が生じないように、非酸化性雰囲気中で行うのがよい。この目的に減圧下又は窒素気流中での混合又は乾燥が好ましい。この混合及び乾燥は、ベント式又は乾燥機付の押出機や射出機を用いて、成形工程の前段階で行うことができる。また、遷移金属系触媒を比較的高い濃度で含有するポリアミド樹脂及び/又は酸化可能有機成分のマスターバッチを調製し、このマスターバッチを未配合のポリアミド樹脂と乾式ブレンドして、本発明の酸素吸収層を調製することもできる。尚、本発明に用いるポリアミドは、一般的な乾燥条件である120〜180℃の温度で、0.5〜2mmHgの減圧下2〜6時間乾燥して後述する成形に用いるのがよい。
酸素吸収層には、一般に必要ではないが、所望によりそれ自体公知の活性化剤を配合することができる。活性化剤の適当な例は、これに限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、各種アイオノマー等の水酸基及び/又はカルボキシル基含有重合体である。これらの水酸基及び/又はカルボキシル基含有重合体は、ポリアミド樹脂100重量部当たり30重量部以下、特に0.01〜10重量部の量で配合することができる。
酸素吸収層には、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂又はゴム等の公知の樹脂配合剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。例えば、滑剤を配合することにより、スクリューへの樹脂の食い込みが改善される。滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン、流動、天然又は合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系又はビスアミド系のもの、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、およびそれらの混合系が一般に用いられる。滑剤の添加量は、ポリアミド基準で50〜1000p pmの範囲が適当である。尚、酸素吸収層が、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒との組合せの場合も、上述した方法に準じて製造する。
本発明を以下の実施例によって説明する。なお、実施例における測定方法及び計算方法は次の通りである。
[測定方法等]
1.X線回折による回折プロファイルのピーク半値幅、B°;多層ボトルのパネル部より内外PET層を切り出し、微小X線回折装置(PSPC−1500:理学電気(株)製)により解説プロファイルを測定した。測定は、試料面に垂直にX線を入射させ、X線光軸と湾曲型PSCPを含む面に対し、ボトル軸方向が直角(高さ方向の配向の強さ)、平行(円周方向の配向の強さ)になるようにセットして、Bragg角(2θ=0〜150°)での回折強度を積算した。得られたX線回折プロファイルから、空気散乱を差し引き、回折プロファイルのピークA及び半値幅(°)を求めた(図5参照)。
2.容器の酸素バリア性;容器内に無酸素水を内容液として常温で満注充填してアルミキャップを巻締めて密封し、22℃−60%RHで26週間保存したときの内容液中の溶存酸素量を溶存酸素濃度計(オービスフェア社製)で測定した。
3.果実飲料の色調;果実飲料を容器に充填密封して保存経時後、容器から出して飲料の色調(Lab)を色差計(ミノルタ社製)で測定した。充填直後の飲料と経時後の飲料との色調変化を色差△Eとして求めた。
4.ビタミンC残存率;果実飲料を容器に充填密封して保存経時後、飲料中のビタミンCの量を液体クロマトグラフ(WATERS社製)で測定した。充填直後の飲料中の量と比較し、残存率(%)をもとめた。
[実施例]共射出成形機において、ポリエチレンテレフタレート(PET)を内外層用射出機及び中間層用射出機へ供給した。一方、乾燥済みのポリ(m−キシリレンアジパミド)樹脂ペレット[6007(AEG=27eq/106g・ペレット値:三菱ガス化学(株)製)]に、遷移金属系触媒としてネオデカン酸コバルト(DICNATE5000:大日本インキ化学工業(株)製)を、コバルト量で400ppm添加した酸素吸収性バリア材からなるペレットを、酸素吸収層用射出機へ供給した。これらの射出機の射出ノズルの温度を280℃、樹脂圧力250kgf/cm2の条件でそれぞれ射出金型内に共射出して、内層、中間層、外層がPET、内層と中間層、中間層と外層の間にそれぞれ酸素吸収性バリア材からなる酸素吸収層を5重量%の比率で設けた2種5層のプリフォームを製造した。更に、このプリフォームを100℃に加熱後、150℃に温調した金型を用いて、延伸倍率が縦2.4倍、横2.9倍の二軸延伸ブロー成形と、2.5秒間のヒートセットを行って、内容量が500ml(満注内容積:530ml)の2種5層の多層ボトルを成形した。ボトル胴部高さ中央付近での各層の厚さは、外PET層、外バリア層、中間PET層、内バリア層、内PET層がそれぞれ順におおよそ、105μm、7μm、90μm、7μm、70μmであった。この多層PETボトルの酸素バリア性を評価するため、無酸素水を満注充填し密封して22℃−60%RHで12週間保存後、内容液中の溶存酸素量を測定したところ、0.1ppmであった。また内層、外層のX線回折プロファイルのピークの半値幅はそれぞれ内層円周方向13.1°、内層高さ方向3.3°、外層円周方向15°、外層高さ方向4.4°であった。
上記ボトル及びこれに巻締めるポリプロピレン製キャップを、2500ppmの過酢酸系殺菌液で65℃−11秒の殺菌条件で殺菌し、無菌水で洗浄処理した。
このボトルに、市販の温州みかんジュース濃縮原料(日本果実工業(株)製)を100%に戻したみかんジュースを、140℃で5秒間、超高温殺菌したのち冷却して、充填温度30℃で、ヘッドスペース量10ml(容器満注内容量の1.9%)およびヘッドスペースなし(満注充填)にてアセプティック充填し、ポリプロピレンキャップを巻締め密封した。これを30℃・暗所で保存経時し、経時後の内容液の色調、液中のビタミンC量を測定した。
[比較例]容器の層構成をPET単層(胴部の厚みは、おおよそ280μm)とした以外は実施例と同様にして試験し比較例とした。この単層PETボトルの酸素バリア性を評価するため、無酸素水を満注充填し密封して22℃−60%RHで12週間保存後、内容液中の溶存酸素量を測定したところ、3.5ppmであった。また胴部の結晶化度は31%であった。さらにガラス瓶を用いて同様に試験して比較例とした。
図3、4に、ヘッドスペース量別に結果を示す。充填直後の飲料の色調、ビタミンC量を基準として、保存後の飲料の測定結果をそれぞれ色差△E、残存率%で表してある。図には比較として、単層PETボトルとガラス瓶の結果も合わせて示した。
まず、色調変化について見ると、図3から明らかなように、いずれのヘッドスペース量においても本発明のボトルに詰めたみかんジュースのほうが、単層PETボトルにつめたものよりも色差△Eが小さく、色調の変化が少ないことがわかる。そして、色調の変化量はガラス瓶詰めの場合とほぼ同程度であることがわかる。
つぎに、図4のビタミンCの残存率について見ると、同様にいずれのヘッドスペース量においても本発明のボトルに詰めたみかんジュースのほうが、単層PETボトルにつめたものよりもビタミンC残存率が大きく、ビタミンCの保存性が良いことがわかる。そして、その保存性はガラス瓶詰めの場合とほぼ同程度であることもわかる。
ここで、ヘッドスペース量の影響についてみると、ヘッドスペースがあるほうが満中充填に比べると、色調・ビタミンC残存率の変化ともに大きいのであるが、ヘッドスペース量が今回の程度であれば、その変化に及ぼす影響がボトル自体の影響に比べ、大きくはないことがわかる。
以上の結果から、本発明の果実飲料充填プラスチック多層容器によれば、果実飲料の色調変化、ビタミンC量の変化が少なく、鮮度保持に優れた効果のあることが判る。
本発明のプラスチック多層容器の一例を示す正面図。 図1に示すプラスチック多層容器の胴部壁の拡大断面模式図。 各容器にa)ヘッドスペース有り(1.9%)及びb)ヘッドスペース無し(満注)でみかんジュースを充填し、30℃・暗所保存したときの、内容液の色調変化の測定結果を示す図。 各容器にa)ヘッドスペース有り(1.9%)及びb)ヘッドスペース無し(満注)でみかんジュースを充填し、30℃・暗所保存したときの、内容液のビタミンC残存率の測定結果を示す図。 X線回折による回折プロファイルの強度分布から、回折プロファイルのピークA°及び半値幅B°を求める説明図である。
符号の説明
1:プラスチック多層容器
2:ノズル部(口頸部)
3:肩部
4:胴部
5:底部
20:ポリエステル内層
30:ポリエステル外層
40:酸素吸収層
50:接着性樹脂層

Claims (4)

  1. 果実飲料がアセプティック充填され密封された透明なプラスチック容器であって、該プラスチック容器は、熱可塑性ポリエステルからなる内外層と前記内外層の間に酸素吸収層を有し、容器内に無酸素水を試験液として満注充填して密封し22℃−60%RHで12週間保存したとき試験液中の溶存酸素量が0.5ppm以下であることを特徴とする果実飲料の鮮度保持性に優れた果実飲料充填プラスチック多層容器。
  2. 前記プラスチック容器は、二軸延伸ブロー成形ボトルであって、少なくともボトル胴部における内外層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅が15°以下であることを特徴とする請求項1記載の果実飲料の鮮度保持性に優れた果実飲料充填プラスチック多層容器。
  3. 前記酸素吸収層が、キシリレン基含有ポリアミドとポリエンとコバルト塩を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の果実飲料の鮮度保持性に優れた果実飲料充填プラスチック多層容器。
  4. 室温における容器内のヘッドスペース量が容器の満注内容量に対して3%以下となるように果実飲料が充填されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の果実飲料の鮮度保持性に優れた果実飲料充填プラスチック多層容器。
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