JP3912143B2 - プラスチック多層容器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック多層容器に関し、特に、耐圧及び/又は耐熱プラスチック多層容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)から成る延伸容器は、透明性、耐衝撃性(耐落下強度)、軽量性、衛生性、酸素・炭酸ガス等の適度のガスバリヤー性及び耐圧性等に優れており、醤油、ソース、ドレッシング、食用油、ビール、コーラ、サイダー等の炭酸飲料、果汁飲料、ミネラルウォーター、シャンプー、洗剤、化粧品、ワイン、カラシ、エアゾール製品等の包装容器として広く使用されている。
しかし、ガラスびん、金属缶等の完全に密封されたものにあってはガスの透過性はゼロに等しいが、延伸ポリエステル容器は酸素、炭酸ガス等に対し僅かではあるが透過性を有しており、缶、ガラスびんより食品の充填保存性に劣る。炭酸ガス入り飲料においては炭酸ガスが損失し、ビール、コーラ、サイダー等では明らかに保存期間が制限され、また果汁入り飲料においても外部からの酸素の透過のために保存期間の制限を受ける。また、特に、高温又は高湿度の条件下では酸素の透過量が多くなり、熱い内容物を入れる容器では問題が大きい。
【0003】
この欠点を改善するため、例えば、特許公報第2991437号及び特開2001−39475号公報に、容器を、ポリエステルの内外層とその間に酸素吸収層を設けた多層構造とすることが提案されている。
しかし、このようなプラスチック多層容器は、内層のガスバリヤー性が低く、内容物の水が内層を透過して酸素吸収層に達し、酸素吸収性層を劣化させる。酸素吸収層が劣化すると、酸素の透過量が増える課題がある。また、内容物が炭酸飲料である場合は、炭酸ガスが外に出て行きやすい。
さらに、熱い内容物を充填する場合は、その形状保持性がなくなるという課題がある。
また、このような熱間充填においては、加熱時の内容物の容積と冷却時における内容積との間にかなり大きな容積変化があり、この容積変化に対応して容器内外にかなりの圧力差を生じる。この圧力差が変形の原因となるという課題もある。このような課題は、容器に内容物を充填後、これを加熱殺菌する場合にも同様に生じる。
【0004】
一方、特公平2−30929号公報には、ポリエステルからなる内外層と、その間にガスバリヤー性樹脂層を設けた多層容器が開示されており、パネル部の内外層の面内配向度が0.350以上の容器が示されている。
しかしながら、この容器の中間層は、ガスバリヤー性樹脂のみからなり、酸素吸収性樹脂に比べると、酸素の透過性の点で劣り、また、ポリエステルからなる内外層のガスバリヤー性も劣る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、従来のプラスチック多層容器における上記課題を解消するものであり、酸素透過量が低く、内外層のガスバリヤー性が高いプラスチック多層容器を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、内外層と、前記内外層の間に酸素吸収層を有するプラスチック多層容器において、少なくとも容器胴部における内外層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅を15°以下にすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明によれば、熱可塑性ポリエステルからなる内外層と、前記内外層の間に酸素吸収層を有し、少なくとも容器胴部における内外層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅が15°以下であるプラスチック多層容器が提供される。
ここで、図1を用いて、回折プロファイルのピーク及び半値幅について説明する。
図1の縦軸は回折強度を、横軸は回折角度を示す。内層及び外層をぞれぞれ分離して、各層の厚み方向にX線を入射すると、図1に示すように、特定の回折角度(2θ)付近で、X線回折による回折プロファイルのピークA°が検出される。この回折角度は、熱可塑性ポリエステルの種類により異なるが、15°〜25°の範囲にあり、ポリエチレンテレフタレートでは21°付近に回折プロファイルのピークA°が検出される。半値幅B°は、回折プロファイルのピークA°における強度の1/2の点を通って横軸に平行線を引いたときに、この平行線とピークが交差する2点間の間隔である。
半値幅の小さい程、配向していることを示す。本発明においては、少なくとも容器胴部の内層及び外層の半値幅を15°以下とすることより、前記内層及び外層のガスバリヤー性を高く、例えば、内容物の水分が前記内外層の間の酸素吸収層に到達しにくくなり、前記酸素吸収層の吸湿によるガスバリヤー性の低下が防止できる。
また、外部からの酸素進入、及び内容物が炭酸飲料の場合は、炭酸ガスの外部への流出が防止される。
【0008】
また、酸素吸収層が、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒を含むことが好ましい。
酸化可能有機成分及び遷移金属触媒を含むことにより、前記酸素吸収層を透過する酸素を捕捉し、容器内への酸素進入を低減することできる。
【0009】
また、酸化可能有機成分がガスバリヤー性樹脂であることが好ましい。
ガスバリヤー性樹脂は、遷移金属触媒により酸化されて酸素捕捉性能を有するようになる。従って、ガスバリヤー性樹脂は、酸素をガスバリヤーしながら酸素を捕捉でき、より酸素の透過を防ぐことができる。
【0010】
また、ガスバリヤー性樹脂がキシリレン基含有ポリアミドであることが好ましい。
キシリレン基含有ポリアミドは、特に、全脂肪族ポリアミドに比べて、酸素透過性が小さく、酸素ガスバリヤー性の観点から好ましい。
【0011】
さらにまた、酸素吸収層が、実質的に酸化しないガスバリヤー性樹脂、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒を含むことが好ましい。
酸素吸収層が、ガスバリヤー性樹脂と遷移金属触媒の他に、酸化可能有機成分を含むことにより、ガスバリヤー性樹脂の酸素ガスバリヤー性が低下しなくなり、長期間酸素吸収機能を発揮できる。
【0012】
また、ガスバリヤー性樹脂が40eq/10g以上の末端アミノ基濃度(AEG)を有するキシリレン基含有ポリアミド樹脂(MXD6)であることが好ましい。
上述したように、キシリレン基含有ポリアミドは、酸素透過性が小さく、酸素ガスバリヤー性の観点から好ましい。
さらに、本発明者らの研究によると、ポリアミド樹脂の酸化劣化、つまり酸素吸収と、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度とは密接な関係があることが分かった。即ち、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が40eq/10g以上の比較的高い範囲にある場合には、駿素吸収速度は殆どゼロかゼロに近い値に抑制されるのに対して、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が上記値より低くなると、ポリアミド樹脂の酸素吸収速度が増大する。従って、末端アミノ基濃度が40eq/10g以上が好ましい。より好ましくは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が50eq/10g以上である。
【0013】
また、酸化可能有機成分は酸化反応速度が速いポリエンが好ましい。
酸化可能有機成分がポリエンであることにより、温度上昇による酸素拡散速度上昇や、ガスバリヤー樹脂の吸湿により透過酸素が増大した場合でも、十分な酸素捕捉能力を発揮する。
【0014】
また、遷移金属触媒がコバルト塩であることが好ましい。
コバルト塩は、酸素吸収性の点で好ましく、またこの触媒は樹脂中への分散性に優れていると共に、容器を見苦しくなるほどには着色しない利点がある。
【0015】
【発明の実施形態】
以下、本発明のプラスチック多層容器についてさらに詳細に説明する。
[プラスチック多層容器の構造]
1.プラスチック多層容器の主要部分
プラスチック多層容器は、口頸部、肩部、胴部及び底部の主要部分からなる。これらについて図を用いて説明する。
図2は、本発明のプラスチック多層容器の一例を示す側面図である。この図に示すように、プラスチック多層容器1は、ノズル部(口頸部)2、円錐台状の肩部3、筒状の胴部4及び閉ざされた底部5からなる。
【0016】
2.多層構造
本発明のプラスチック多層容器の多層構造について説明する。
図3は、図2に示すプラスチック多層容器の胴部4における壁の拡大断面図である。プラスチック多層容器1は、ポリエステル内層20、ポリエステル外層30及びこれらの中間に位置する酸素吸収層40からなる。酸素吸収層40と内外層20,30との間には、接着性樹脂50,50’が介在していてもよい。
ここで、図3は、本発明のプラスチック多層容器における多層構造の一例を示すもので、本発明はこの構造に限定されない。即ち、内層、外層及び前記内外層の間の酸素吸収層以外に、他に、オレフィン系樹脂、ガスバリヤー性樹脂、環状オレフィン共重合体等の他の層を含むことができる。
オレフィン樹脂の例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)又はこれらのブレンド物等が挙げられる。
【0017】
以下に、本発明の多層構造の例を示す。
二種三層構造:PET/MXD6/PET
二種五層構造:PET/MXD6/PET/MXD6/PET
三種五層構造:PET/AD/MXD6/AD/PET
(PET:ポリエチレンテレフタレート、MXD6:ポリアミド樹脂、AD:接着剤)
【0018】
各層間に必要により接着剤樹脂を介在させることができるが、このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル等に基づくカルボニル(−CO−)基を主鎖又は側鎖に、1〜700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、特に10〜500meq/100g樹脂の濃度で含有する熱可塑性樹脂が挙げられる。接着剤樹脂の適当な例は、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等の1種又は2種以上の組合せである。これらの樹脂は、同時押出又はサンドイッチラミネーション等による積層に有用である。
【0019】
3.厚み
本発明のプラスチック多層容器において、酸素吸収層の厚みは、特に制限はないが、一般に3〜100μm、特に5〜50μmの範囲にあるのが好ましい。即ち、酸素吸収層の厚みがある範囲よりも薄くなると酸素吸収性能が劣り、またある範囲よりも厚くなっても酸素吸収性の点では格別の利点がなく、樹脂量が増大する等経済性の点、材料の可撓性や柔軟性が低下する等の容器特性の点では不利となるからである。
本発明のプラスチック多層容器において、全体の厚みは、用途によっても相違するが、一般に30〜7000μm、特に50〜5000μmのあるのがよく、一方酸素吸収層の中間層の厚みは、全体の厚みの0.5〜95%、特に1〜50%の厚みとするのが適当である。
【0020】
[プラスチック多層容器の製造方法]
1.多層プリフォームの製造
多層プリフォームの製造は、従来公知の共射出成形機等を用いて、内外層をポリエステル樹脂とし、内外層の間に一層又はそれ以上の酸素吸収層を挿入し、射出用プリフォーム金型の形状に対応した、底部及び開口部を有する多層プリフォームを製造することができる。
その一方法として、2台以上の射出機を備えた共射出成形機及び共射出用金型を用いて、内外層をポリエステル樹脂とし、内外層に覆われるように中間に一層又はそれ以上の酸素吸収層を挿入し、射出用プリフォーム金型の形状に対応した、底部及び開口部を有する多層プリフォームを製造することもできる。
また、3台以上の射出機を備えた多段射出機により、まず第1次内層プリフォームを形成し、次いで第2次金型に移し中間層を射出し、さらに第3次金型で外層を射出して、遂次に多段金型を移して多層プリフォームを製造することもできる。
また、多段射出機により、まず第1次内層プリフォームを射出形成し、次いで前記プリフォームを第2次金型に移して酸素吸収層を射出し、さらに前記プリフォームを第3次金型に移して外層を射出し、遂次に多段金型を用いて多層プリフォームを製造することもできる。
さらに、圧縮成形によって製造することもでき、この場合、内外層を形成する溶融塊樹脂中に酸素吸収層樹脂を設け、この溶融塊を実質上温度低下なしに雌型に供給すると共に雄型で圧縮成形する。
このようにして得られたプリフォームの口頸部に耐熱性を与えるため、プリフォームの段階で、口頸部を熱処理により結晶化し白化させてもよい。また、後述の延伸ブローによる成形を完了させた後に、未延伸部分の口頸部を結晶化し白化させてもよい。
尚、必要に応じて、前記多層プリフォームの層間には接着層を設けても良い。
【0021】
2.ブロー成形体の製造
次に、多層プリフォームを二軸延伸ブロー成形するが、その方法としては、大別して、ホットパリソン法とコールドパリソン法とがある。前者のホットパリソン法では、プリフォームを完全に冷却することなく、軟化状態で二軸延伸ブロー成形する。一方、後者のコールドパリソン法では、プリフォームを、最終形状の寸法よりかなり小さく、かつポリエステルが非晶質である過冷却有底プリフォームとして形成し、このプリフォームをその延伸温度に予備加熱し、ブロー成形金型中で軸方向に引張延伸すると共に、周方向にブロー延伸する。
いずれの方法においても、多層プリフォームを、延伸温度、例えば、85〜120℃の温度範囲に維持された金型内において、延伸ブロー成形法によって、延伸ロッドにより縦方向に延伸すると共にブローエアによって横方向に延伸する。最終ブロー成形体の延伸倍率は、縦方向で1.2〜6倍、横方向で1.2〜4.5倍が好ましい。
ここで、容器胴部において、一般に、ブロー成形体の内層は外層よりも円周方向の延伸倍率が大きくなる。
そして、内層及び外層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅を15°以下にするためには、前記半値幅が15°以下となるように、プリフォームの厚み及び二軸延伸ブロー成形時の延伸倍率を調節すれば良い。
尚、延伸倍率が大きい程、半値幅は小さくなる。
【0022】
3.熱処理(ヒートセット)
さらに、プラスチック多層容器に耐熱性、あるいは耐熱圧性を持たせるために熱処理(ヒートセット)を行ってもよい。
ブロー金型を120〜230℃、好ましくは130〜210℃に加熱して、二軸延伸ブローされたブロー成形体の器壁の外側を金型内面に接触させて、熱処理する。所定の熱処理時間後、ブロー用流体を内部冷却用流体に切換えて、内層を冷却する。熱処理時間は、ブロー成形体の厚みや温度によっても相違するが、一般に1.5〜30秒、特に2〜20秒である。一方冷却時間も、熱処理温度や冷却用流体の種類により異なるが、一般に0.1〜30秒、特に0.2〜20秒である。
図4は、熱処理後の冷却処理時における、図2に示すプラスチック多層容器の胴部4における壁付近の拡大断面図である。この図において、ポリエステル外層30は熱処理温度に加熱された金型60と接触して加熱されており、一方ポリエステル内層20は冷却用流体70と接触して冷却された状態にある。
このとき、この熱処理により外層30は結晶化される。さらに、酸素吸収層40及び内層20にも熱が伝わり、これらの層40,20も結晶化される。
内層、酸素吸収層、外層の結晶化度は、主に、延伸配向による結晶化と、熱処理による結晶化により決まるが、熱処理した場合は、一般に結晶化度は以下のようになる。
内層20≦外層30
但し、酸素吸収層40の結晶化度はポリエステル樹脂と相違し、用いるその材質によって変化するが、前述したように延伸配向による結晶化と、熱処理による結晶化が行われていることは間違いない。
このように、熱間充填等の熱履歴を受ける耐熱容器においては、内外層の結晶化度は、容器の肉厚、形状、ヒートセット温度、時間等の条件によるため、前記条件を最適化して少なくとも容器胴部における内外層の結晶化度を30〜55%とするのが好ましく、特に、30〜40%とするのが好ましい。
容器胴部における内外層の結晶化度を30〜55%とすることにより、結晶化した内層がさらに吸湿による酸素吸収層の劣化を防止する。
また、内容物を熱間充填するときの変形、及びその後の冷却時における変形が防止される。また、外層のガスバリヤー性が向上し、酸素吸収層の性能失活を防ぐこともできる。さらに、外面が高度に結晶化しているので、表面が傷つきにくい。
前記結晶化度が30%未満であると酸素透過、変形防止効果が十分得られない恐れがあり、また、結晶化度が、55%を超えると二軸延伸ブロー成形後の金型の離型性が低下し、離型後の変形が大となる恐れがある。
尚、上記の結晶化度は、内層と外層が同じでも、あるいはどちらが高くても低くてもよい。
【0023】
[結晶化度の測定]
20℃に設定された水・硝酸カルシウム系密度勾配管中に測定すべきサンプルの細片(約2mm×2mm)を沈降させ、サンプルが静止した位置から測定比重dを得た。
そして、得られた各測定比重dの値から、下記式、
(1/d)=[(1−x)/da]+(x/dc)
によって、各結晶化度xを計算した。ここで、daは結晶化度、xが0%の場合の比重値(da=1.335)を意味する。また、dcは同じく結晶化度、xが100%の場合の比重値(dc=1.455)を表わす。
【0024】
また、前記耐熱容器においては、少なくとも容器胴部における内層及び外層の降伏点荷重を9.8×10Pa以上とするのが好ましく、降伏点荷重は一般的に、結晶化度が上昇すれば上昇するため、結晶化度と同様にその条件を最適化すれば良い。
降伏点荷重をこの範囲にすることにより、容器胴部の保形性を保ち、強度を高めることができる。
尚、降伏点荷重が9.8×10Pa未満であると、所望の保形性や強度が十分得られない。
[降伏点荷重の測定]
測定すべきポリエステル層を短冊状(15mm×50mm)に切り出し、23℃50%RH下、測定長20mm、引っ張り速度30mm/minの条件で、100kgfのロードセルを装備したテンシロン[UCT−5T(株)オリエンテック社製]を用いて測定した。
降伏点荷重は、測定開始から最初に現れる極大点の値とした。
【0025】
さらに、前記耐熱容器においては、前記した結晶化度、降伏点加重の範囲を満たすことにより、容器の耐熱性(熱収縮率)が向上する。
[容器の耐熱性(熱収縮率)の測定];S
水温が20℃の水道水を、測定すべきサンプル容器に満注量充填して、サンプルの満注内容積(V、単位はml)を、あらかじめ測定した。
そして、この容器に85℃の熱水を容器の首部の下まで充填し、キャッピングした後、内容物(水道水)が室温(20℃)に戻るまで放冷し、変形状態を評価した。
さらにこのサンプルから内容物を抜き取ったのち、再び20℃の水道水をこのサンプルに満注量を再充填して、満注内容積(V、単位はml)を測定した。
容器の耐熱性(熱収縮率)、S(単位は%)を、下記式に従って計算した。
S=100×(1−V/V
熱変形率、Sについては、1種類の容器につき5本ずつ測定をおこない、5本の結果の相加平均値をもってデータとした。
【0026】
冷却用流体としては、常温の空気、冷却された各種気体、例えば冷風の−40℃〜+10℃の窒素、空気、炭酸ガス等の他に、化学的に不活性な液化ガス、例えば液化窒素ガス、液化炭酸ガス、液化トリクロロフルオロメタンガス、液化ジクロロジフルオロメタンガス、他の液化脂肪族炭化水素ガス等が使用できる。この冷却用流体には、水等の気化熱の大きい液体ミストを共存させることもできる。上述した冷却用流体を使用することにより、著しく大きい冷却温度を得ることができる。
また、二軸延伸ブロー成形に際して2個の金型を使用し、第1の金型では所定の温度及び時間の範囲内で熱処理した後、ブロー成形体を冷却用の第2の金型へ移し、再度ブローすると同時にブロー成形体を冷却してもよい。
金型から取出したブロー成形体の外層は、放冷により、又は冷風を吹付けることにより冷却する。
【0027】
4.他のブロー成形体の製造
他のブロー成形体の製造方法としては、多層プリフォームを用いて、本願の出願人に係わる特許第2917851号公報に例示されるように、前記多層プリフォームを一次ブロー金型で二軸延伸ブロー成形を行って最終ブロー成形体よりも大きい寸法の一次ブロー成形体とし、次いでこの一次ブロー成形体を加熱収縮させた後、二次金型で二軸延伸ブロー成形して最終ブロー成形体とする二段ブロー成形を採用しても良い。
このブロー成形体の製造方法によれば、ブロー成形体の底部が十分に延伸薄肉化された耐衝撃性等に優れるブロー成形体を得ることができる。
【0028】
[内層及び外層]
1.構成成分
本発明の内層及び外層に用いる熱可塑性ポリエステルとしては、延伸ブロー成形及び熱処理(熱結晶化)可能な樹脂であれば、任意のものを使用することができるが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、又はそれらの共重合体等の熱可塑性ポリエステル、これらの樹脂又は他の樹脂とのブレンド物が好適に使用され、特にポリエチレンテレフタレート等のエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが好適に使用される。
さらに、アクリロニトリル樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、ポリエチレン等も使用することができる。
これらの樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲内で種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収材、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤等を配合することができる。
内層及び外層に用いるエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、エステル反復単位の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位を占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50〜90℃、融点(Tm)が200〜275℃の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートが耐圧性、耐熱性、耐熱圧性等の点で特に優れているが、エチレンテレフタレート単位以外にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸とプロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位の少量を含む共重合ポリエステルも使用できる。
【0029】
2.半値幅
本発明では、少なくとも容器胴部における内外層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅は15°以下にすることにより、内層及び外層のガスバリヤー性を高めることができる。
半値幅が15°を越えると、十分なガスバリヤー性が得られず、このため半値幅は15°以下であり、好ましくは、半値幅は12°以下である。
【0030】
[酸素吸収層]
本発明の酸素吸収層は、酸素を吸収して酸素の透過を防ぐものであれば、任意のものを使用することができるが、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒の組合せ、及び実質的に酸化しないガスバリヤー性樹脂、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒の組合せが好適に使用される。
実質的に酸化しないガスバリヤー性樹脂、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒の組合せは、酸化可能有機成分の方がガスバリヤー性樹脂より酸化反応が速く、酸化可能有機成分が専ら酸化を受けて酸素を吸収する。従って、ガスバリヤー性樹脂は実質上酸化しないで酸化劣化による酸素ガスバリヤー性の低下が生じないので、長時間酸素吸収機能を発揮できる。このため、この組合せが特に好ましい。即ち、この組合せでは、ガスバリヤー性樹脂による酸素ガスバリヤー性の保持と、酸化可能有機成分による酸素吸収性の発現とが機能分離的に行われていると考えられる。
以下、各成分について詳説する。
【0031】
1.ガスバリヤー性樹脂
ガスバリヤー性樹脂の例としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができ、例えば、エチレン含有量が20〜60モル%、特に25〜50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。このエチレンビニルアルコール共重合体ケン化物は、フィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、フエノール:水の重量比で85:15の混合溶媒中30℃で測定して0.01dl/g以上、特に0.05dl/g以上の粘度を有することが望ましい。
【0032】
さらにまた、ガスバリヤー性樹脂の他の例としては、環状オレフィン系共重合体(COC)、特にエチレンと環状オレフィンとの共重合体、特に三井化学社製のAPEL等を用いることができる。
【0033】
さらにまた、ガスバリヤー性樹脂の他の例としては、ポリアミド樹脂が挙げられる。
かかるポリアミド樹脂としては、(a)ジカルボン酸成分とジアミン成分とから誘導された脂肪族、脂環族又は半芳香族ポリアミド、(b)アミノカルボン酸又はそのラクタムから誘導されたポリアミド、又はこれらのコポリアミド又はこれらのブレンド物が挙げられる。
ジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバチン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸やテレフタール酸やイソフタール酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
また、ジアミン成分としては、1,6−ジアミノへキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン等の炭素数4〜25とくに6〜18の直鎖状又は分岐鎖状アルキレンジアミンや、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、特にビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、1,3−ビス(アミノシクロへキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミンが挙げられる。
アミノカルボン酸成分として、脂肪族アミノカルボン酸、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノオクタン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸や、例えばパラ−アミノメチル安息香酸、パラ−アミノフェニル酢酸等の芳香脂肪族アミノカルボン酸等を挙げることができる。
これらのポリアミドの内でもキシリレン基含有ポリアミドが好ましく、具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスベラミド、ポリパラキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド等の単独重合体、及びメタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセバカミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体等の共重合体、又はこれらの単独重合体又は共重合体の成分とヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、ピペラジン等の脂環式ジアミン、パラ−ビス(2アミノエチル)ベンジエン等の芳香族ジアミン、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、ε−カプロラクタム等のラクタム、7−アミノへプタン酸等のω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸等を共重合した共重合体が挙げられるが、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸とから得られるポリアミドが特に好適に用いることができる。
これらのキシリレン基含有ポリアミドは、他のポリアミド樹脂に比して酸素ガスバリヤー性に優れており、好ましい。
本発明に用いるポリアミド樹脂は、前述した範囲の末端アミノ基濃度を有しているのが好ましい。末端アミノ基濃度が上記範囲を下回ると、ポリアミド樹脂の劣化が生じるので好ましくない。
末端アミノ基濃度が前記範囲内にあるポリアミド樹脂は、市販のポリアミド樹脂の樹脂から選択して用いることができる。
これらのポリアミド樹脂は、容器の機械的特性及び加工の容易さから、98%硫酸中、1.0g/dlの濃度及び20℃の温度で測定した相対粘度(ηrel)が1.3〜4.2、特に1.5〜3.8の範囲内にあることが望ましい。
【0034】
2.酸化可能有機成分
また、本発明に用いる酸化可能有機成分は、ポリエンから誘導される重合体が好ましい。
かかるポリエンとしては、炭素原子数4〜20のポリエン、鎖状又は環状の共役又は非共役ポリエンから誘導された単位を含む樹脂が好適に使用される。これらの単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;1,4−へキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエン、クロロプレン等が挙げられる。
これらのポリエンは、単独で又は2種以上の組合せで、又は他の単量体との組合せで単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の形に組み込まれる。
ポリエンと組合せで用いられる単量体としては、炭素原子数2〜20のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−クテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンが挙げられ、他にスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレート等の単量体も使用可能である。
【0035】
ポリエン系重合体としては、具体的には、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIB)、天然ゴム、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等を挙げることができるが、これらの例に限定されない。
重合体中における炭素−炭素二重結合は、特に限定されず、ビニレン基の形で主鎖中に存在しても、またビニル基の形で側鎖に存在していてもよい。
これらのポリエン系重合体は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、水酸基が導入されていることが好ましい。これらの官能基を導入するのに用いられる単量体としては、上記の官能基を有するエチレン系不飽和単量体が挙げられる。
これらの単量体としては、不飽和カルボン酸又はこれらの誘導体を用いるのが望ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、ビシクロ〔2,2,1〕へプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等のα,β不飽和カルボン酸無水物、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸の無水物が挙げられる。
ポリエン系重合体の酸変性は、炭素−炭素二重結合を有する樹脂をベースポリマーとし、このベースポリマーに不飽和カルボン酸又はその誘導体をそれ自体公知の手段でグラフト共重合させることにより製造されるが、前述したポリエンと不飽和カルボン酸又はその誘導体とをランダム共重合させることによっても製造することができる。
特に好適な変性ポリエン系重合体は、不飽和カルボン酸又はその誘導体を、0.01〜10モル%の量で含有している。
不飽和カルボン酸又はその誘導体の含有量が上記の範囲にあると、酸変性ポリエン系重合体のポリアミド樹脂への分散が良好となると共に、酸素の吸収も円滑に行われる。
また、末端に水酸基を有する水酸基変性ポリエン系重合体も良好に使用することができる。
本発明に用いるポリエン系重合体は、40℃における粘度が1〜200Pa・sの範囲にあることが酸素吸収層の加工性の点で好ましい。
【0036】
3.遷移金属触媒
本発明に用いる遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属成分が好ましいが、他に銅、銀等の第I族金属:錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を挙げることができる。これらの金属成分の内でもコバルト成分は、酸素吸収速度が大きく、特に好ましい。
【0037】
遷移金属系触媒は、上記遷移金属の低価数の無機酸塩又は有機酸塩又は錯塩の形で一般に使用される。
無機酸塩としては、塩化物等のハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩等の窒素のオキシ酸塩、リン酸塩等のリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、へプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルへキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
一方、遷移金属の錯体としては、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3−シクロへキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロへキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロへキサノン、2−ベンゾイルシクロへキサノン、2−アセチルー1,3−シクロへキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルべンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレンー3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることができる。
【0038】
4.酸素吸収層の製造
酸素吸収層が、実質的に酸化しないガスバリヤー性樹脂、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒を含む場合について、ガスバリヤー性樹脂がポリアミド樹脂であるものを例にとって、以下に説明する。
酸化可能有機成分は、樹脂組成物を基準として、0.01〜10重量%、特に0.5〜8重量%の量で含有されていることが好ましい。また、遷移金属系触媒は、樹脂組成物基準で、遷移金属量として100〜3000ppm、具体的にはコバルトでは100〜800ppm、鉄では150〜1500ppm、マンガンでは200〜2000ppmの量で含有されていることが好ましい。
ポリアミド樹脂に酸化可能有機成分及び遷移金属系触媒を配合するには、種々の手段を用いることができる。この配合には、格別の順序はなく、任意の順序でブレンドを行ってよい。
例えば、酸化可能有機成分をポリアミド樹脂に乾式ブレンド又はメルトブレンドすることにより、両者のブレンド物を容易に調製することができる。一方、遷移金属系触媒はポリアミド樹脂や酸化可能有機成分に比して少量であるので、ブレンドを均質に行うために、一般に遷移金属触媒を有機溶媒に溶解し、この溶液と粉末又は粒状のポリアミド樹脂及び酸化可能有機成分とを混合し、必要によりこの混合物を不活性雰囲気下に乾燥するのがよい。
【0039】
遷移金属系触媒を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロへキサノン等のケトン系溶媒、n−へキサン、シクロへキサン等の炭化水素系溶媒を用いることができ、一般に遷移金属系触媒の濃度が5〜90重量%となるような濃度で用いるのがよい。
ポリアミド樹脂、酸化可能有機成分及び遷移金属系触媒の混合、及びその後の保存は、組成物の前段階での酸化が生じないように、非酸化性雰囲気中で行うのがよい。この目的に減圧下又は窒素気流中での混合又は乾燥が好ましい。
この混合及び乾燥は、ベント式又は乾燥機付の押出機や射出機を用いて、成形工程の前段階で行うことができる。
また、遷移金属系触媒を比較的高い濃度で含有するポリアミド樹脂及び/又は酸化可能有機成分のマスターバッチを調製し、このマスターバッチを未配合のポリアミド樹脂と乾式ブレンドして、本発明の酸素吸収層を調製することもできる。
尚、本発明に用いるポリアミドは、一般的な乾燥条件である120〜180℃の温度で、0.5〜2mmHgの減圧下2〜6時間乾燥して後述する成形に用いるのがよい。
【0040】
酸素吸収層には、一般に必要ではないが、所望によりそれ自体公知の活性化剤を配合することができる。活性化剤の適当な例は、これに限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、各種アイオノマー等の水酸基及び/又はカルボキシル基含有重合体である。
これらの水酸基及び/又はカルボキシル基含有重合体は、ポリアミド樹脂100重量部当たり30重量部以下、特に0.01〜10重量部の量で配合することができる。
【0041】
酸素吸収層には、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂又はゴム等の公知の樹脂配合剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。
例えば、滑剤を配合することにより、スクリューへの樹脂の食い込みが改善される。滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン、流動、天然又は合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系又はビスアミド系のもの、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、およびそれらの混合系が一般に用いられる。滑剤の添加量は、ポリアミド基準で50〜1000ppmの範囲が適当である。
酸素吸収層が、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒との組合せの場合も、上述した方法に準じて製造する。
【0042】
【実施例】
[測定方法等]
本発明を以下の実施例によって説明する。なお、実施例における測定方法及び計算方法は次の通りであった。
1.X線回折による回折プロファイルのピークの半値幅、B°;
多層ボトルのパネル部より内外PET層を切り出し、微少X線回折装置[PSPC−150C:理学電気(株)製]により回折プロファイルを測定した。測定は、試料面に垂直にX線を入射させ、X線光軸と湾曲型PSCPを含む面に対し、ボトル軸方向が直角(高さ方向の配向の強さ)、平行(円周方向の配向の強さ)になるようにセットして、Bragg角(2θ=0〜150°)での回折強度を積算した。得られたX線回折プロファイルから、空気散乱を差し引き、回折プロファイルのピークA及び半値幅B(°)を求めた。
【0043】
2.容器の酸素ガス透過量;Q
測定すべき多層ボトル内に3ccの水を入れ、窒素雰囲気下にてアルミ箔入り蓋材でヒートシールして密閉した。この多層ボトルを30℃80%RHの恒温恒湿槽内に保管し、31日(1ヶ月)経時後ガスクロマトグラフィーを用いて、多層ボトル内の酸素濃度を測定した。
この酸素濃度から1ヶ月間のボトル当たりの酸素透過量(Q:cc/月・ボトル)を下記式より得た。
Q=[(C−C)/100]×V
:31日(1ヶ月)後のボトル内酸素濃度(%)
:初期のボトル内酸素濃度(%)
V:ボトル満注内容積(cc)
【0044】
参考例1](耐圧容器)
共射出成形機において、ポリエチレンテレフタレート(PET)を内外層用射出機及び中間層用射出機へ供給した。
一方、乾燥済みのポリ(m−キシリレンアジパミド)樹脂ペレット[6007(AEG=27eq/106g・ペレット値:三菱ガス化学(株)製)]に、遷移金属系触媒としてネオデカン酸コバルト(DICNATE5000:大日本インキ化学工業(株)製)を、コバルト量で400ppm添加した酸素吸収性バリヤー材からなるペレットを、酸素吸収層用射出機へ供給した。
これらの射出機の射出ノズルの温度を280℃、樹脂圧力250kgf/cm2の条件でそれぞれ射出金型内に共射出して、内層、中間層、外層がPET、内層と中間層、中間層と外層の間にそれぞれ酸素吸収性バリヤー材からなる酸素吸収層を5重量%の比率で設けた2種5層のプリフォームを製造した。
更に、このプリフォームを100℃に加熱後、常温の金型を用いて、延伸倍率が縦2.4倍、横2.9倍、面積6.96倍の二軸延伸ブロー成形を行って、内容量が500cc(満注内容積:520cc)の2種5層の多層ボトルを成形し評価した。
【0045】
参考例2](耐熱容器)
参考例1において、金型温度を150℃として2.5秒間ヒートセットした以外は、同じ条件で2種5層の多層ボトルを成形し評価した。
【0046】
実施例1
参考例2において、酸素吸収性バリヤー材として、ポリメタキシレンアジパミド樹脂(AEG=87eq/106g:東洋紡績(株)製T600)に対して、無水マレイン酸変性ポリブタジエン(日本石油化学(株)製M−2000−20)5重量%、ネオデカン酸コバルト(大日本インキ化学工業(株)製DICNATE5000)350ppm(金属コバルト量換算)からなる樹脂組成物を用いる以外は、同じ条件で多層ボトルを成形し評価した。
【0047】
参考例3](耐熱容器)
参考例1と同様のプリフォームを用い、このプリフォームを100℃に加熱後、一次ブロー金型を用いて、延伸倍率が縦3.3倍、横3.5倍、面積11.55倍で二軸延伸ブロー成形を行って、最終ブロー成形体よりも大きい寸法の一次ブロー成形体とした。
次いで、この一次ブロー成形体の底部、胴部及び肩部を800℃の加熱オーブンで5秒間加熱して加熱収縮させた。
この時の成形体の表面温度は平均170℃であった。
最後に、180℃に温調された二次金型を用いて二軸延伸ブロー成形する共に2.5秒間のヒートセットを行って2種5層の多層ボトルを成形し評価した。
【0048】
参考例4](耐圧容器)
参考例3において、二次金型を用いた二時延伸ブロー成形においてヒートセットを行わなかった以外は、参考例3と同様に2種5層の多層ボトルを成形し評価した。
【0049】
[比較例1](耐圧容器)
参考例1において、延伸倍率を縦1.8倍、横2.2倍、面積3.96倍として二軸延伸ブロー成形を行った以外は、参考例1と同様に多層ボトルを成形し評価した。
この結果、酸素透過量が多く、また、多層ボトルの首下に延伸不良による肉厚部が発生した。
【0050】
[比較例2](耐熱容器)
参考例2において、延伸倍率を縦1.8倍、横2.2倍、面積3.96倍として二軸延伸ブロー成形を行った以外は、参考例2と同様に多層ボトルを成形し評価した。
この結果、ヒートセットによる熱結晶化が進み、酸素透過量は減少するものの、多層ボトルの首部下の肉厚部に熱による白化が生じた。
【0051】
前記実施例及び比較例におけるX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅の測定結果、及び評価を表1に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0003912143
【0053】
表1の結果より、本発明のプラスチック多層容器は、酸素吸収層の吸湿によるガスバリヤー性の低下が防止され、酸素透過量が低く、内外層のガスバリヤー性、成形性、外観に優れていることが判る。
【0054】
尚、前記実施例及び比較例における中間層PET層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅、B(°)の測定結果は表1に記入しないが、内外層のPET層の平均値になる。
【0055】
また、前記実施例、比較例においては耐圧、耐熱用多層ボトルの評価を行ったが、本発明のプラスチック多層容器は、果汁入り炭酸飲料等の充填後に65℃で10分程度の熱水シャワーによる加熱殺菌を行う耐熱圧用多層ボトルにも適用できるものである。
さらに、本発明のプラスチック多層容器は、多層シートを真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等によって成形されるカップ等の容器形態にも適用できるものである。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、酸素透過量が低く、内外層のガスバリヤー性が高いプラスチック多層容器が提供される。
また、耐熱、耐熱圧容器においては、少なくとも容器胴部の白化が防止され、容器の透明性、商品価値を低下させることが無い。
充填できる内容物としては、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク、茶類、コーヒー、果汁飲料、果汁入り炭酸飲料等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品等、その他では医薬品、化粧品、ガソリン等、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品等が挙げられるが、これらの例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、X線回折による回折プロファイルの強度分布から、回折プロファイルのピークA°及び半値幅B°を求める説明図である。
【図2】図2は、本発明のプラスチック多層容器の一例を示す側面図である。
【図3】図3は、図2に示すプラスチック多層容器の胴部における壁の拡大断面図である。
【図4】図4は、熱処理後の冷却処理時における、図2に示すプラスチック多層容器の胴部4における壁付近の拡大断面図である。
【符号の簡単な説明】
1 プラスチック多層容器
4 胴部
20 内層
30 酸素吸収層
40 外層

Claims (4)

  1. 熱可塑性ポリエステルからなる内外層と、前記内外層の間に、40eq/10 g以上の末端アミノ基濃度を有するキシリレン基含有ポリアミド、酸化可能有機成分、及び遷移金属触媒を含む酸素吸収層を有し、少なくとも容器胴部における内外層のX線回折による回折プロファイルのピークの半値幅が15°以下であることを特徴とする二軸延伸ブロー成形により成形されるプラスチック多層容器。
  2. 前記キシリレン基含有ポリアミドが50eq/10g以上の末端アミノ基濃度を有する請求項1に記載のプラスチック多層容器。
  3. 前記酸化可能有機成分がポリエンである請求項1又は2に記載のプラスチック多層容器。
  4. 前記遷移金属触媒がコバルト塩である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプラスチック多層容器。
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