JP4082023B2 - 酸素吸収性樹脂組成物、包装材料及び包装用多層容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを用いた包装材料並びに包装容器に関するもので、より詳細には、器壁を通しての酸素透過を長期間にわたって安定に抑制できる酸素吸収性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、包装容器としては、金属缶、ガラスビン、各種プラスチック容器等が使用されているが、容器内に残留する酸素や容器壁を透過する酸素による内容物の変質やフレーバー低下が問題となっている。
【0003】
特に、金属缶やガラスビンでは容器壁を通しての酸素透過がゼロであり、容器内に残留する酸素のみが問題であるのに対して、プラスチック容器の場合には器壁を通しての酸素透過が無視し得ないオーダーで生じ、内容品の保存性の点で問題となっている。
【0004】
これを防止するために、プラスチック容器では容器壁を多層構造とし、その内の少なくとも一層として、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の耐酸素透過性を有する樹脂を用いることが行われている。
【0005】
容器内の酸素を除去するために、脱酸素剤の使用も古くから行われており、これを容器壁に適用した例としては、特公昭62−1824号公報の発明があり、これによると、酸素透過性を有する樹脂に鉄粉などの還元性物質を主剤とする脱酸素剤を配合して成る層と、酸素ガス遮断性を有する層とを積層して、包装用多層構造物とする。
【0006】
本発明者等の提案に係る特開平1−278344号公報には、20℃及び0%RHでの酸素透過係数が10−12cc・cm/cm2・sec・cmHg以下で且つ20℃及び100%RHでの水分吸着量が0.5%以上であるガスバリヤー性熱可塑性樹脂に遷移金属の有機金属錯体を配合した樹脂組成物を中間層とし、該中間層の両側に耐湿性可塑性樹脂の層を設けた積層構造物から成ることを特徴とするプラスチック多層容器が記載されている。
【0007】
特表平2−500846号公報には、ポリマーから成り酸素捕集特性を有する組成物または該組成物の層を含有する包装用障壁において、組成物が酸化可能有機成分の金属触媒酸化により酸素を捕集することを特徴とする包装用障壁が記載されており、酸化可能有機成分としては、ポリアミド、特にキシリレン基含有ポリアミドが使用されることも記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
鉄粉等の酸素吸収剤を樹脂に配合して、包装材料の器壁に用いる方法は、酸素吸収性能が大きいという点では満足できるものであるが、樹脂を固有の色相に着色するために、透明性が要求される包装の分野には使用できないという用途上の制約がある。
【0009】
一方、遷移金属系触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物は、実質上透明である包装容器にも適用できるという利点を有しているが、遷移金属系触媒を配合した基材樹脂が酸化により劣化するため、器壁を通しての酸素透過が経時により大きくなるという欠点がある。
【0010】
本発明者らは、ポリアミド樹脂はそれ自体酸素バリアー性に優れた樹脂であり、この酸素バリアー性を損なうことなしに、この樹脂層に酸素吸収性を付与することに着目した。その結果、ポリアミド樹脂に、酸化性有機成分と遷移金属系触媒とを配合することにより、該樹脂組成物を通しての酸素透過を長期間にわたって低減可能となることを見出した。
即ち、本発明の目的は、酸素バリアー性と酸素吸収性とを兼ね備え、樹脂組成物の層を通しての酸素透過を長期にわたって低減させることが可能である酸素吸収性樹脂組成物を提供するにある。
本発明の他の目的は、ポリアミド樹脂により優れた酸素バリアー性が保持されると共に、酸化性有機成分により酸素吸収性が発現された機能分離型の酸素吸収性樹脂組成物を提供するにある。
本発明の更に他の目的は、向上した酸素吸収速度及び酸素吸収容量を有すると共に、透明性にも優れており、広範な包装材料及び包装容器の用途に適用できる酸素吸収性樹脂組成物を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、末端アミノ基濃度が40eq/106g以上であるポリメタキシリレンアジパミドと、酸変性ポリエン系重合体である酸化性有機成分と、遷移金属系触媒とを含有してなり、前記酸化性有機成分が樹脂組成物基準で0.01乃至10重量%の量で含有され、前記遷移金属系触媒が樹脂組成物基準且つ遷移金属量換算で100乃至3000ppmの量で含有されていることを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物が提供される。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物においては、
1.前記ポリメタキシリレンアジパミドの末端アミノ基濃度が50eq/106gを超えていること、
2.遷移金属系触媒がコバルトのカルボン酸塩であること、
が好ましい。
本発明によれば更に、上記酸素吸収性樹脂組成物からなる少なくとも1層を含むことを特徴とする包装用多層容器が提供される。
【0012】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、ポリアミド樹脂を基材とし、これに酸化性有機成分と遷移金属系触媒とを配合したことが特徴であり、ポリアミド樹脂の酸化劣化による酸素バリアー性の低下を生じることなしに、酸素吸収性を発現させることができる。
【0013】
公知のポリアミド樹脂−遷移金属系触媒の酸素吸収性樹脂組成物では、ポリアミド樹脂が酸化を受けることにより酸素の吸収が行われるものであり、このポリアミド樹脂の酸化劣化に伴い樹脂層自体の酸素透過度は増大する傾向を示す。
これに対して、本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、ポリアミド樹脂基材は実質上酸化することなく、酸化性有機成分が専ら酸化を受けてこれにより酸素吸収が行われるため、ポリアミド樹脂の酸化劣化による酸素バリアー性の低下を生じることなしに、酸素吸収性を発現させることが可能となるのである。
【0014】
実際に、構成(12μPET、20μバリヤー材、50μCPP、条件(95℃、30分ボイル処理))、末端アミノ基(AEG)濃度が27eq/106gのメタキシリレン系ポリアミド樹脂にコバルト系触媒をコバルト量換算で400ppm配合した組成物と、末端アミノ基(AEG)濃度が87eq/106gのメタキシリレン系ポリアミド樹脂に酸化性有機成分(酸変性ジエン系ポリマー)を5重量%及びコバルト系触媒をコバルト量換算で400ppm配合した組成物とについて、酸素透過量の経時変化を調べると、30日経時後の酸素透過量が、前者の樹脂組成物では0.31cc/カップであるのに対して、後者の組成物では0.01cc/カップ以下であって、本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、器壁を通しての酸素透過を、長期間の経時にかかわらず、著しく低く抑制できるのである。
本発明のこの効果は、ポリアミド樹脂による酸素バリアー性の保持と、酸化性有機成分による酸素吸収性の発現とが機能分離的に行われていることによると考えられる。
図1は、メタキシリレン系ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度と酸素吸収速度との関係を示し、末端アミノ基濃度の異なるメタキシリレン系ポリアミド樹脂にネオデカン酸コバルトをコバルト換算で400ppm配合した組成物を厚さ20μmのフィルムに成形し、このフィルムを22℃、60%RHに調湿した後述するハイレトフレックスの容器に入れ、7日間保管した後、ガスクロマトグラフィーを用いて酸素濃度を測定し、酸素吸収速度を求めたものである。該ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が10〜30eq/106gの範囲では該ポリアミド樹脂の酸素吸収速度が大きく、酸化劣化が促進される。一方、末端アミノ基濃度が50〜70eq/106gの範囲では該ポリアミド樹脂の酸素吸収速度が0であり、全く酸化劣化が起こっていないことを示している。
【0015】
本発明では、末端アミノ基濃度が40eq/10 6 g以上、特に50eq/10 6 gを超えるポリアミド樹脂を用いることにより、ポリアミド樹脂の酸化劣化を抑制することができる。
【0016】
本発明者らの研究によると、ポリアミド樹脂の酸化劣化、つまり酸素吸収と、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度とは密接な関係があることが分かった。即ち、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が上述した比較的高い範囲にある場合には、酸素吸収速度は殆どゼロかゼロに近い値に抑制されるのに対して、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が上記範囲を下回るようになると、ポリアミド樹脂の酸素吸収速度が増大する。
かくして、本発明によれば、上記範囲のポリアミド樹脂と酸化性有機成分との組合せを用いることにより、ポリアミド樹脂の酸化劣化を抑制しつつ、酸化性有機成分による酸素吸収を選択的に行わせることが可能となる。
【0017】
本発明に用いるポリアミド樹脂は、ポリメタキシリレンアジパミドであり、このポリアミドは、全脂肪族ポリアミド樹脂に比して酸素透過性が小さく、酸素バリアー性が高いという利点を有している。
【0018】
本発明においては、ポリエン類から誘導された重合体のうち、酸変性ポリエン系重合体を酸化性有機成分として使用する。ポリエン類から誘導された重合体は、重合体中の主鎖或いは側鎖中に二重結合を有している。Smithの理論によると、二重結合に隣接する炭素原子は著しく活性化されやすく、水素ガスを容易に放出するとされている。ポリエンから誘導される重合体では、重合体中の炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子の位置で水素原子の引き抜きが容易に行われ、これによりラジカルが発生すると考えられる。遷移金属系触媒と上記酸化性有機成分とを含有する組成物での酸素吸収は、当然のことながら、この有機成分の酸化を経由して行われるものであり、この酸化は、遷移金属系触媒による二重結合隣接炭素原子からの水素原子の引き抜きによるラジカルの発生、このラジカルへの酸素分子の付加によるパーオキシラジカルの発生、パーオキシラジカルによる水素原子の引き抜きの各素反応を通して生じると信じられる。遷移金属系触媒と上記酸化性有機成分とを含有する組成物での酸素吸収は、当然のことながら、この有機成分の酸化を経由して行われるものであり、この酸化は、(a)遷移金属系触媒による二重結合隣接炭素原子からの水素原子の引き抜きによるラジカルの発生、(b)このラジカルへの酸素分子の付加によるパーオキシラジカルの発生、(c)パーオキシラジカルによる水素原子の引き抜きの各素反応を通して生じると信じられる。
【0019】
ところが、常態でも樹脂の劣化を生じないような少量の遷移金属触媒の共存下では、上記ラジカルの発生や、酸素の付加には誘導期があり、これらの素反応が必ずしも迅速且つ有効には行われていないと考えられる。
これに対して、本発明で好適に使用される酸変性ポリエン重合体では、上記二重結合隣接炭素原子に加えて、カルボン酸基、カルボン酸無水物基等の官能基を有しており、前記誘導期の短縮に有効に役立っていると信じられる。
即ち、前記官能基は何れも電子吸引性の基であり、前記二重結合隣接炭素原子を活性化させることがその理由であろう。
【0020】
加えて、酸変性ポリエン重合体をポリアミド樹脂に配合すると、ポリアミド樹脂マトリックスに対する酸変性ポリエン系重合体の分散性が向上し、樹脂組成物の加工性が向上するというきわめて好都合の作用が達成される。
即ち、未変性のポリエン系重合体の場合、単に機械的な混練でポリエン系重合体を分散させるため、分散性が不良であり、また分散の程度も不均一のものとなり易いという傾向があり、また樹脂組成物の加工性も低下するのを免れない。
これに対して、酸変性ポリエン系重合体では、前述した官能基の存在により、ポリアミド樹脂に対する親和性が大であり、ポリアミド樹脂に対する分散性が良好で、樹脂組成物の加工性にも優れているという利点が達成されるものである。
【0021】
本発明では、遷移金属系触媒がコバルトのカルボン酸塩であることが、酸素吸収性の点で好ましく、またこの触媒は樹脂中への分散性に優れていると共に、包装材料を見苦しくなるほどには着色しないという点でも優れている。
【0022】
本発明では、酸化性有機成分が樹脂組成物基準で0.01乃至10重量%、特に0.5乃至8重量%の量で含有されていることが好ましい。
酸化性有機成分の量が上記範囲を下回ると、酸素の吸収速度が、上記範囲内にある場合に比してかなり低下するようになり、好ましくない。一方、酸化性有機成分の量が上記範囲を上回ると、酸素吸収速度の点では格別の利点が得られないと共に、酸素吸収性樹脂組成物の層を通しての酸素透過度が大きくなり、成形性が悪くなるので好ましくない。
【0023】
一方、遷移金属系触媒は樹脂組成物基準でかつ遷移金属量換算で100乃至3000ppm、特に150乃至1000ppmの量で含有されていること好ましい。遷移金属系触媒の量が上記範囲を下回ると、酸素吸収速度が上記範囲内にある場合に比してかなり低下するようになり、またこの量が上記範囲を上回ると樹脂の劣化傾向が著しくなるので好ましくない。
【0024】
[ポリアミド樹脂]
ポリアミド樹脂としては、(a)ジカルボン酸成分とジアミン成分とから誘導された脂肪族、脂環族或いは半芳香族ポリアミド、(b) アミノカルボン酸或いはそのラクタムから誘導されたポリアミド、或いはこれらのコポリアミド或いはこれらのブレンド物が挙げられる。
ジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバチン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数4乃至15の脂肪族ジカルボン酸やテレフタール酸やイソフタール酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
また、ジアミン成分としては、 1,6- ジアミノヘキサン、1,8-ジアミノオクタン、1,10- ジアミノデカン、1,12- ジアミノドデカン等の炭素数4〜25とくに6〜18の直鎖状又は分岐鎖状アルキレンジアミンや、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、4, 4′- ジアミノ-3,3′- ジメチルジシクロヘキシルメタン、特にビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミンが挙げられる。
アミノカルボン酸成分として、脂肪族アミノカルボン酸、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノオクタン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸や、例えばパラ−アミノメチル安息香酸、パラ−アミノフェニル酢酸等の芳香脂肪族アミノカルボン酸等を挙げることができる。
【0025】
本発明においては、これらのポリアミドの内でも、キシリレン基を含有しているポリメタキシリレンアジパミドが使用されるのであり、このポリアミドは、先にも述べたように、他のポリアミド樹脂に比して酸素バリアー性に優れている。
【0026】
本発明に用いるポリアミド樹脂は、前述した範囲の末端アミノ基濃度を有しているのが好ましい。末端アミノ基濃度が上記範囲を下回ると、ポリアミド樹脂の劣化が生じるので好ましくない。
【0027】
末端アミノ基濃度が前記範囲内にあるポリアミド樹脂は、市販のポリアミド樹脂の樹脂から選択して用いることができる。
これらのポリアミド樹脂は、容器の機械的特性及び加工の容易さから、98%硫酸中、1.0 g/dlの濃度及び20℃の温度で測定した相対粘度(ηrel )が1.3乃至4.2、特に1.5乃至3.8の範囲内にあることが望ましい。
【0028】
[酸化性有機成分]
本発明に用いる酸化性有機成分は、ポリエンから誘導される重合体であることが好ましい。
かかるポリエンとしては、炭素原子数4〜20のポリエン、鎖状乃至環状の共役乃至非共役ポリエンから誘導された単位を含む樹脂が好適に使用される。これらの単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4- ヘキサジエン、4-メチル-1,4- ヘキサジエン、5-メチル-1,4- ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4- ヘキサジエン、7-メチル-1,6- オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-メチレン-2- ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2- ノルボルネン、5-ビニリデン-2- ノルボルネン、6-クロロメチル-5- イソプロペニル-2- ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-エチリデン-3- イソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-プロペニル-2,2- ノルボルナジエン等のトリエン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0029】
これらのポリエンは、単独で或いは2種以上の組合せで、或いは他の単量体との組み合わせで単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体などの形に組み込まれる。
ポリエンと組み合わせで用いられる単量体としては、炭素原子数2〜20のα- オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1- デセン、11- メチル-1- ドデセン、12- エチル-1- テトラデセンが挙げられ、他にスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどの単量体も使用可能である。
【0030】
ポリエン系重合体としては、具体的には、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIB)、天然ゴム、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等を挙げることができるが、これらの例に限定されない。
【0031】
重合体中における炭素−炭素二重結合は、特に限定されず、ビニレン基の形で主鎖中に存在しても、またビニル基の形で側鎖に存在していてもよい。
【0032】
これらのポリエン系重合体は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、水酸基が導入されていることが好ましい。これらの官能基を導入するのに用いられる単量体としては、上記の官能基を有するエチレン系不飽和単量体が挙げられる。
【0033】
これらの単量体としては、不飽和カルボン酸またはこれらの誘導体を用いるのが望ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等のα,β不飽和カルボン酸無水物、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸の無水物が挙げられる。
【0034】
ポリエン系重合体の酸変性は、炭素−炭素二重結合を有する樹脂をベースポリマーとし、このベースポリマーに不飽和カルボン酸またはその誘導体をそれ自体公知の手段でグラフト共重合させることにより製造されるが、前述したポリエンと不飽和カルボン酸またはその誘導体とをランダム共重合させることによっても製造することができる。
【0035】
本発明の目的に特に好適な酸変性ポリエン系重合体は、不飽和カルボン酸乃至その誘導体を、0.01乃至10モル%の量で含有していることが好ましい。
不飽和カルボン酸乃至その誘導体の含有量が上記の範囲にあると、酸変性ポリエン系重合体のポリアミド樹脂への分散が良好となると共に、酸素の吸収も円滑に行われる。
また、末端に水酸基を有する水酸基変性ポリエン系重合体も良好に使用することができる。
【0036】
本発明に用いるポリエン系重合体は、40℃における粘度が1乃至200Pa・sの範囲にあることが酸素吸収性樹脂組成物の加工性の点で好ましい。
【0037】
[遷移金属系触媒]
本発明に用いる遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属成分が好ましいが、他に銅、銀等の第I族金属:錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を挙げることができる。これらの金属成分の内でもコバルト成分は、酸素吸収速度が大きく、本発明の目的に特に適したものである。
【0038】
遷移金属系触媒は、上記遷移金属の低価数の無機酸塩或いは有機酸塩或いは錯塩の形で一般に使用される。
無機酸塩としては、塩化物などのハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩などの窒素のオキシ酸塩、リン酸塩などのリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
一方有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩などが挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
一方、遷移金属の錯体としては、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3ーシクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることが出来る。
【0039】
[酸素吸収性樹脂組成物]
本発明の酸素吸収性樹脂組成物においては、酸化性有機成分が樹脂組成物を基準として、0.01乃至10重量%、特に0.5乃至8重量%の量で含有されていることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物においては、遷移金属系触媒が樹脂組成物基準で、遷移金属量として100乃至3000ppm、具体的にはコバルトでは100乃至800ppm、鉄では150乃至1500ppm、マンガンでは200乃至2000ppmの量で含有されていることが好ましい。
【0040】
ポリアミド樹脂に酸化性有機成分及び遷移金属系触媒を配合するには、種々の手段を用いることができる。この配合には、格別の順序はなく、任意の順序でブレンドを行ってよい。
例えば、酸化性有機成分をポリアミド樹脂に乾式ブレンド或いはメルトブレンドすることにより、両者のブレンド物を容易に調製することができる。一方、遷移金属系触媒はポリアミド樹脂や酸化性有機成分に比して少量であるので、ブレンドを均質に行うために、一般に遷移金属触媒を有機溶媒に溶解し、この溶液と粉末或いは粒状のポリアミド樹脂及び酸化性有機成分とを混合し、必要によりこの混合物を不活性雰囲気下に乾燥するのがよい。
【0041】
遷移金属系触媒を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒を用いることができ、一般に遷移金属系触媒の濃度が5乃至90重量%となるような濃度で用いるのがよい。
【0042】
ポリアミド樹脂、酸化性有機成分及び遷移金属系触媒の混合、及びその後の保存は、組成物の前段階での酸化が生じないように、非酸化性雰囲気中で行うのがよい。この目的に減圧下或いは窒素気流中での混合或いは乾燥が好ましい。
この混合及び乾燥は、ベント式或いは乾燥機付の押出機や射出機を用いて、成形工程の前段階で行うことができる。
また、遷移金属系触媒を比較的高い濃度で含有するポリアミド樹脂及び/または酸化性有機成分のマスターバッチを調製し、このマスターバッチを未配合のポリアミド樹脂と乾式ブレンドして、本発明の酸素吸収性樹脂組成物を調製することもできる。
尚、本発明に用いるポリアミドは、一般的な乾燥条件である120乃至180℃の温度で、0.5乃至2mmHgの減圧下2乃至6時間乾燥して後述する成形に用いるのがよい。
【0043】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物には、一般に必要ではないが、所望によりそれ自体公知の活性化剤を配合することができる。活性化剤の適当な例は、これに限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、各種アイオノマー等の水酸基及び/またはカルボキシル基含有重合体である。
これらの水酸基及び/またはカルボキシル基含有重合体は、ポリアミド樹脂100重量部当たり30重量部以下、特に0.01乃至10重量部の量で配合することができる。
本発明に用いる酸素吸収性樹脂組成物には、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂乃至ゴム、等の公知の樹脂配合剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。
例えば、滑剤を配合することにより、スクリューへの樹脂の食い込みが改善される。滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン、流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系のもの、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、およびそれらの混合系が一般に用いられる。滑剤の添加量は、ポリアミド基準で50乃至1000ppmの範囲が適当である。
【0044】
[包装材料及び包装容器]
本発明の酸素吸収性組成物は、粉末、粒状物或いはシート等の形で、酸素透過性を有する樹脂フィルム、紙、織布、不織布或いはこれらの積層体から成る袋に充填し、密封包装体内の酸素吸収に使用することができる。
また、本発明の酸素吸収性組成物は、ライナー乃至ガスケット用或いは被覆形成用の樹脂やゴム中に配合して、包装体内の残留酸素吸収に用いることもできる。
しかしながら、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、フィルム、シートの形で包装材料として、またカップ、トレイ、ボトル、チューブ容器等の形で包装容器として用いるのが特に好ましい。
【0045】
即ち、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、単層の形で包装材料及び包装容器として使用できるのは勿論のこと、この酸素吸収性樹脂組成物から成る少なくとも一層と、他の樹脂からなる少なくとも一層の積層物の形で包装材料及び包装容器として使用できる。
一般に、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、容器などの外表面に露出しないように容器などの外表面よりも内側に設けるのが好ましく、また内容物との直接的な接触を避ける目的で、容器などの内表面より外側に設けるのが好ましい。かくして、多層の樹脂包装材料或いは包装容器の少なくとも1個の中間層として、酸素吸収性樹脂組成物を用いるのが望ましい。
【0046】
多層構成の包装材料及び包装容器の場合、本発明の酸素吸収性樹脂組成物層と組み合わせる他の樹脂層としては、オレフィン系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、バリアー性樹脂等が挙げられる。
オレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)或いはこれらのブレンド物等が挙げられる。
また、熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、或いはこれらの共重合ポリエステル、更にはこれらのブレンド物等が挙げられる。
更に、ガスバリヤー性樹脂の最も適当な例としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができ、例えば、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。このエチレンビニルアルコール共重合体ケン化物は、フイルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、フエノール:水の重量比で85:15の混合溶媒中30℃で測定して0.01 dl/g 以上、特に0.05 dl/g 以上の粘度を有することが望ましい。
更にまた、バリアー性樹脂の他の例としては、環状オレフィン系共重合体(COC)、特にエチレンと環状オレフィンとの共重合体、特に三井化学社製のAPEL等を用いることができる。
【0047】
包装材料及び包装容器用の積層構造の適当な例は、本発明の酸素吸収性樹脂組成物をOARとして表して、次の通りである。また、どちらの層を内面側にするかは、目的によって自由に選択することができる。
二層構造:PET/OAR、PE/OAR、PP/OAR、
三層構造:PE/OAR/PET、PET/OAR/PET、PE/OAR/PP、EVOH/OAR/PET、PE/OAR/COC、
四層構造:PE/PET/OAR/PET、PE/OAR/EVOH/PET、PET/OAR/EVOH/PET、PE/OAR/EVOH/COC、
五層構造:PET/OAR/PET/OAR/PET、PE/PET/OAR/EVOH/PET、PET/OAR/EVOH/COC/PET、PET/OAR/PET/COC/PET、PE/OAR/EVOH/COC/PET、
六層構造:PET/OAR/PET/OAR/EVOH/PET、PE/PET/OAR/COC/EVOH/PET、PET/OAR/EVOH/PET/COC/PET、
七層構造:PET/OAR/COC/PET/EVOH/OAR/PET、
などである。
【0048】
上記積層体の製造に当たって、各樹脂層間に必要により接着剤樹脂を介在させることもできる。
このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル等に基づくカルボニル(−CO−)基を主鎖又は側鎖に、1乃至700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、特に10乃至500meq /100g樹脂の濃度で含有する熱可塑性樹脂が挙げられる。接着剤樹脂の適当な例は、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフイン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフイン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等の1種又は2種以上の組合せである。これらの樹脂は、同時押出或いはサンドイッチラミネーション等による積層に有用である。
また、予じめ形成されたガスバリヤー性樹脂フイルムと耐湿性樹脂フイルムとの接着積層には、イソシアネート系或いはエポキシ系等の熱硬化型接着剤樹脂も使用される。
【0049】
本発明に用いる包装材料及び包装容器において、酸素吸収性樹脂組成物の厚みは、特に制限はないが、一般に3乃至100μm、特に5乃至50μmの範囲にあるのが好ましい。即ち、酸素吸収性樹脂組成物の厚みがある範囲よりも薄くなると酸素吸収性能が劣り、またある範囲よりも厚くなっても酸素吸収性の点では格別の利点がなく、樹脂量が増大するなど経済性の点、材料の可撓性や柔軟性が低下するなどの容器特性の点では不利となるからである。
【0050】
本発明の多層の包装材料及び包装容器において、全体の厚みは、用途によっても相違するが、一般に30乃至7000μm、特に50乃至5000μmのあるのがよく、一方酸素吸収性樹脂組成物の中間層の厚みは、全体の厚みの0.5乃至95%、特に1乃至50%の厚みとするのが適当である。
【0051】
本発明の包装材料及び包装容器は、前述した酸素吸収性樹脂組成物を用いる点を除けば、それ自体公知の方法で製造が可能である。
例えば、フィルム、シート或いはチューブの成形は、前記樹脂組成物を押出機で溶融混練した後、T−ダイ、サーキュラーダイ(リングダイ)等を通して所定の形状に押出すことにより行われ、T−ダイ法フィルム、ブローウンフィルム等が得られる。Tダイフィルムはこれを二軸延伸することにより、二軸延伸フィルムが形成される。
また、前記樹脂組成物を射出機で溶融混練した後、射出金型中に射出することにより、容器や容器製造用のプリフォームを製造する。
更に、前記樹脂組成物を押出機を通して、一定の溶融樹脂塊に押し出し、これを金型で圧縮成形することにより、容器や容器製造用のプリフォームを製造する。
成形物は、フイルム、シート、ボトル乃至チューブ形成用パリソン乃至はパイプ、ボトル乃至チューブ成形用プリフォーム等の形をとり得る。
パリソン、パイプ或いはプリフォームからのボトルの形成は、押出物を一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹込むことにより容易に行われる。
また、パイプ乃至はプリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸すると共に、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトル等が得られる。
更に、また、フイルム乃至シートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段に付することにより、カップ状、トレイ状等の包装容器やフィルム乃至シートからなる蓋材が得られる。
【0052】
フィルム等の包装材料は、種々の形態の包装袋として用いることができ、その製袋は、それ自体公知の製袋法で行うことができ、三方或いは四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋などが挙げられるが、この例に限定されない。
【0053】
多層押出成形体の製造には、それ自体公知の共押出成形法を用いることができ、例えば樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いる以外は上記と同様にして押し出し成形を行えばよい。
また、多層射出成形体の製造には、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、共射出法や逐次射出法により多層射出成形体を製造することができる。
更に、多層フィルムや多層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができ、また、予め形成されたフィルムのドライラミネーションによって多層フィルムあるいはシートを製造することもできる。
【0054】
本発明の包装材料及び包装容器は、酸素による内容物の香味低下を防止しうる容器として有用である。
充填できる内容物としては、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品等、その他では医薬品、化粧品、ガソリン等、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品などが挙げられるが、これらの例に限定されない。
【0055】
【実施例】
本発明を次の例により更に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものでない。
【0056】
(末端アミノ基濃度(AEG)の測定)
試料0.6mgをフェノール/エタノール混合溶液(容積比4/1)50mlに溶解させた後、エタノール/水混合溶媒(容積比3/2)20mlを加え攪拌下に滴定を行った。滴定液には、1/200N塩酸エタノール/水混合規定液(容積比1/9)、指示薬にはメチルオレンジを用いた。また、試料を加えずに同様の操作を行い、ブランク測定とした。
この滴定量から、以下の式を用いて末端アミノ基濃度(AEG)を求めた。試料に遷移金属系触媒が含まれている場合は、同量の触媒のみを溶解させて滴定したAEG’を求めておき、これを差し引いた値を試料のAEGとした。
AEG(eq/106g)=[{(V−V0)×N×f}/W]×103−AEG’
V:試料滴定に要した1/200N塩酸エタノール/水混合規定液(容積比1/9)量(ml)
V0:ブランク滴定に要した1/200N塩酸エタノール/水混合規定液(容積比1/9)量(ml)
N:エタノール/水混合規定液の規定度
f:規定液のファクター
W:試料重視(g)
AEG'
:補正値(試料に遷移金属系触媒が含まれている場合)
【0057】
(多層フィルムの酸素透過量の測定)
内容積52.0mlのPP/スチール箔ラミネート製カップ状容器(東洋製罐(株)製ハイレトフレックス)に水1ccを入れ、多層フィルムを蓋材として窒素雰囲気下でヒートシールした。これらカップを処理なし、又は95℃・30分のボイル処理を行った後、30℃・80%RHにて保管し、ガスクロマトグラフィー(GC−8AIT、GC−3BT:共に島津製作所(社)製、検出器:TCD(100℃)、カラム:モレキュラーシーブ5A(60℃)、キャリアーガス:アルゴン)を用いてカップ内の酸素濃度を測定し、この酸素濃度から酸素透過量を計算した。
【0058】
(多層容器の酸素透過量の測定)
多層容器に水3ccを入れ、窒素雰囲気下にてアルミ入り蓋材でヒートシールした。これら多層容器を処理なし、又は85℃・30分のボイル処理を行い、30℃・80%RHにて保管し、前記ガスクロマトグラフィーを用いて多層容器内の酸素濃度を測定し、この酸素濃度から酸素透過量を計算した。
【0059】
[実施例1]
防湿包装を開封し、圧力1mmHg以下、温度150℃条件下で4時間乾燥したポリメタキシリレンアジパミド樹脂(東洋紡績(株)製T−600、AEG=87eq/106g)に対して、酸化性有機成分としてマレイン酸変性ポリブタジエン(日本石油化学(株)製M−2000−20)を5重量%、遷移金属系触媒としてネオデカン酸コバルト(大日本インキ化学工業(株)製DICNATE5000)をコバルト量換算で400ppm含有する樹脂組成物をTダイ押出機(東芝機械(株)製)を用いて、Tダイ温度270℃にて厚さ20μmのフィルムを成形した。このフィルムの片面に厚さ12μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを、他の面に厚さ50μmの未延伸ポリプロピレンをラミネーターを用いてドライラミネートとして多層フィルムを成形した。前記ハイレトフレックスの開口部にこの多層フィルムをヒートシールして30℃・80%RHの条件で30日間保管した後の容器内への酸素透過量を測定した。
【0060】
[実施例2]
酸化性有機成分として水酸基末端ポリイソプレン(出光石油化学(株)製poly ip)を5重量%及び遷移金属系触媒として前記ネオデカン酸コバルトをコバルト量換算で310ppmとする以外はすべて実施例1と同じ条件で成形し、容器内への酸化透過量を測定した。
【0061】
[実施例3]
ポリメタキシリレンアジパミド樹脂のAEG濃度を52eq/106gとする以外はすべて実施例1と同じ条件で成形し、容器内への酸素透過量を測定した。
【0062】
[実施例4]
遷移金属系触媒として前記ネオデカン酸コバルトをコバルト量換算で200ppmとする以外はすべて実施例1と同じ条件で成形し、容器内への酸素透過量を測定した。
【0063】
[実施例5]
酸化性有機成分として水酸基末端ポリイソプレンの量を3重量%とする以外はすべて実施例1と同じ条件で成形し、容器内への酸素透過量を測定した。
【0064】
[実施例6]
酸化性有機成分としてマレイン酸変性ポリブタジエンの量を8重量%とする以外はすべて実施例1と同じ条件で成形し、容器内への酸素透過量を測定した。
【0065】
[比較例1]
ポリメタキシリレンアジパミド樹脂のAEG濃度を27eq/106gとする以外はすべて実施例1と同じ条件で成形し、容器内への酸素透過量を測定した。
【0068】
【表1】
【0069】
[実施例7]
末端アミノ基濃度AEGが87eq/106gのポリメタキシリレンアジパミド樹脂に対して、マレイン酸変性ポリブタジエンを5重量%、ネオデカン酸コバルトをコバルト量換算で310ppm含有する樹脂組成物を中間層用押出機、ポリエチレンテレフタレート樹脂を内外層用押出機、マレイン酸変性エチレン−ブテン−1共重合体を接着剤用押出機にそれぞれ供給し、多層ダイ温度270℃にての多層シートを作成した。この多層シートをプラグアシスト圧空成形法にて、層構成が内層120μm/接着層20μm/中間層20μm/接着層20μm/外層120μmで、高さ150mm、口部径60mm、内容量300mlであるカップ状容器を作成した。この容器の口部にアルミ箔をラミネートしたシール蓋をヒートシールし、30℃、80%RHの条件で30日間保管した後の容器内への酸素透過量を測定した。
【0070】
[実施例8]
固有粘度0.83dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を内外層用射出機に、実施例1と同条件で乾燥処理したポリメタキシリレンアジパミド樹脂(東洋紡績(株)製T−600、AEG=87eq/106g)に、酸化性有機成分として無水マレイン酸変性ポリブタジエン(日本石油化学(株)製M−2000−20)5重量%及び遷移金属系触媒としてネオデカン酸コバルト(大日本インキ化学工業(株)製DICNATE5000)をコバルト量換算で400ppm添加した樹脂組成物を二軸押出機でペレタイズしたペレットを中間層用射出機に供給して、射出ノズルの温度を280℃、樹脂圧力250kgf/cm2の条件で射出金型内に共射出成形して、内外層がポリエチレンテレフタレート樹脂、中間層がポリメタキシリレンアジパミド樹脂である2種3層の多層プリフォームを成形した。この多層プリフォームの目付量は32g、中間層の割合は5重量%であった。この多層プリフォームを110℃に加熱し、150℃に加熱した金型内で2軸延伸ブローして、内容量が500cc多層ボトルを成形した。この多層ボトルの口部を密封し、85℃、30分のボイル処理を行い、30℃、80%RHの条件で60日保管した後、容器内酸素濃度の測定を行った。
【0071】
[実施例9]
実施例8と同じ条件で多層プリフォームを成形し、この多層プリフォームを60℃に加熱した金型内で2軸延伸ブローして、内容量が500cc多層ボトルを成形した。この多層ボトルの口部を密封し、30℃、80%RHの条件で60日保管した後、容器内酸素濃度の測定を行った。以上の測定結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【発明の効果】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、ポリアミド樹脂を基材とし、これに酸化性有機成分と遷移金属系触媒とを配合したことが特徴であり、ポリアミド樹脂の酸化劣化による酸素バリアー性の低下を生じることなしに、酸素吸収性を発現させることができる。
即ち、本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、ポリアミド樹脂基材は実質上酸化することなく、酸化性有機成分が専ら酸化を受けてこれにより酸素吸収が行われるため、ポリアミド樹脂の酸化劣化による酸素バリアー性の低下を生じることなしに、酸素吸収性を発現させることが可能となるのである。
本発明では、このように、ポリアミド樹脂による酸素バリアー性の保持と、酸化性有機成分による酸素吸収性の発現とが機能分離的に行われている。
【0074】
また、本発明では、ポリアミド樹脂が末端アミノ基濃度が40eq/106 g以上、一層好適には末端アミノ基濃度が50eq/106 gを超えるポリアミド樹脂であることが、ポリアミド樹脂の酸化劣化を抑制することができる。
【0075】
本発明に用いる酸化性有機成分は、ポリエン類から誘導された重合体、特に酸変性ポリエン系重合体であることが好ましい。ポリエンから誘導される重合体では、重合体中の炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子の位置で水素原子の引き抜きが容易に行われ、これによりラジカルが発生すると考えられる。遷移金属系触媒と上記酸化性有機成分とを含有する組成物での酸素吸収は、当然のことながら、この有機成分の酸化を経由して行われるものであり、酸素の吸収速度及び酸素の吸収容量が大きいという利点がある。
【0076】
常態でも樹脂の劣化を生じないような少量の遷移金属触媒の共存下では、上記ラジカルの発生や、酸素の付加には誘導期があり、これらの素反応が必ずしも迅速且つ有効には行われていないが、本発明で好適に使用される酸変性ポリエン重合体では、上記二重結合隣接炭素原子に加えて、カルボン酸基、カルボン酸無水物基等の官能基を有しており、前記誘導期の短縮に有効に役立っている。
加えて、酸変性ポリエン重合体をポリアミド樹脂に配合すると、ポリアミド樹脂マトリックスに対する酸変性ポリエン系重合体に対する分散性が向上し、樹脂組成物の加工性が向上するというきわめて好都合の作用が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】メタキシリレン系ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度と酸素吸収速度との関係を示すグラフである。
Claims (5)
- 末端アミノ基濃度が40eq/106g以上であるポリメタキシリレンアジパミドと、酸変性ポリエン系重合体である酸化性有機成分と、遷移金属系触媒とを含有してなり、前記酸化性有機成分が樹脂組成物基準で0.01乃至10重量%の量で含有され、前記遷移金属系触媒が樹脂組成物基準且つ遷移金属量換算で100乃至3000ppmの量で含有されていることを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物。
- 前記ポリメタキシリレンアジパミドの末端アミノ基濃度が50eq/106gを超えている請求項1に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
- 遷移金属系触媒がコバルトのカルボン酸塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
- 請求項1乃至3の何れかに記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる少なくとも1層を含むことを特徴とする包装材料。
- 請求項1乃至3の何れかに記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる少なくとも1層を含むことを特徴とする包装用多層容器。
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