JP2006026057A - ミシンの糸掛け装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 駆動伝達部材を案内する案内経路の自由度を高め、案内経路を容易に形成できるだけでなく、小型且つ安価な糸掛け装置を実現できるようにすること。
【解決手段】 糸駒からの上糸を糸調子器と糸取りバネと天秤に糸掛けする為の第1糸移送部材54と、この第1糸移送部材54が所定の糸移送経路に沿って移動するように、第1糸移送部材54をほぼ倒立J字状に案内する案内溝51cを形成した溝形成部材51と、案内溝51cに沿うほぼ倒立J字状の案内部53aを形成した案内部形成部材53と、第1糸移送部材54を駆動するための第1ステッピングモータと、第1ステッピングモータの駆動を第1糸移送部材54に伝達する歯付きベルト52であって、歯52aをループ外側に向けて案内溝51cに配設した歯付きベルト52とを備えた。
【選択図】 図13

Description

本発明は、糸供給源から繰り出される上糸を糸調子器、糸取りバネ、天秤等の糸掛け部等に糸掛けするミシンの糸掛け装置に関し、特に糸移送体を駆動伝達部材を介して上側の待機位置から下側の糸渡し位置まで移送することで、これら糸調子器、糸取りバネ、天秤に自動的に糸掛けできるようにしたものに関する。
従来、ミシンにおいて、糸駒から繰り出される上糸は、複数の糸掛け部(糸調子器、糸取バネ、天秤等)に所定の順序及び経路にて糸掛けされ、糸通し機構を備えている場合には、最終的に、その糸通し機構により縫針の目孔に自動的に糸通しされ、縫製可能な状態になる。
縫製開始に際して、糸駒の上糸を複数の所定の糸掛け部へ糸掛けするのを、縫製作業者の手作業で行うようにしたミシンが種々実用化されているが、最近、糸移送部材に糸駒からの上糸を引っ掛けて移送することで、複数の糸掛け部に上糸を自動的に糸掛けするようにしたミシンが種々提案されている。
例えば、特開平2−220690号公報に記載の簡易糸掛けミシンは、上糸ガイドと糸取りバネの間に上糸案内装置を設け、上糸供給用ステッピングモータに連結された回転体軸に固着した上側の回転体と、従動体軸に枢支された下側の従動体とに亙って、歯を内側に向け且つ外周側に突起状の糸案内部を形成したループ状の歯付きベルトが掛け渡され、糸掛けに際して、歯付きベルトが所定回転方向(手前側が下方向き)に駆動されるので、予め糸掛けされた上糸が上側に移動した糸案内部に捕捉され、歯付きベルトの駆動により上糸が糸案内部で下方に移送され、下側の糸取りバネに糸掛けできるようにしてある(例えば、特許文献1参照)。
特開平2−220690号公報(第3〜5頁、図1〜図2)
特許文献1に記載の簡易糸掛けミシンにおいては、一般的な標準歯付きベルトではなく、外周側に突起状の糸案内部を形成した特殊な歯付きベルトを採用しているため、製造コストが高価になるという問題がある。
また、ミシンにおける糸移送経路は、曲面的にデザインされたミシンの外観に沿って湾曲状に形成されるのが普通であるが、前記歯付きベルトにより糸を移送する糸移送経路を構成すると、歯付きベルトは複数の従動体間に亙って直線的に架設されるので、糸移送経路は歯付きベルトの直線的な架設経路と略同一の平面で構成されてしまい、ミシン外観のデザイン的な自由度が制限されてしまう。逆に、曲面的にデザインされたミシン外観に沿って歯付きベルトを湾曲状に架設するためには、歯付きベルトの架設経路が複雑となり、多数の従動体を配置する必要があると共に、歯付きベルトに適正な所定の張力を付与することが困難となり、回転体の駆動力を正確に歯付きベルトに伝達できないという問題がある。
更に、前記歯付きベルトは上糸供給用ステッピングモータで駆動制御されるため、制御開始時における突起状の糸案内部の初期位置を、正確に位置決めして組み付けを行う必要がある。このため、組み付け作業が煩雑となり、多大の組み付け時間を要する等の問題がある。
請求項1のミシンは、糸調子器と糸取りバネと天秤とを備えたミシンの糸掛け装置において、糸供給源からの上糸を糸調子器と糸取りバネと天秤に糸掛けする為の糸移送体と、この糸移送体が所定の糸移送経路に沿って移動するように糸移送体を案内する案内経路を形成する経路形成体と、糸移送体を駆動するための駆動手段と、駆動手段の駆動を糸移送体に伝達する駆動伝達部材とを備えたものである。
請求項2のミシンは、請求項1の発明において、前記駆動伝達部材は、無端ループ状の歯付きベルトであって歯をループ外側に向けて配設した歯付きベルトで構成したものである。
請求項3のミシンは、請求項2の発明において、前記経路形成体は、天秤の上下揺動面と平行に配設された合成樹脂製の板状の溝形成部材と、この溝形成部材に固定される案内部形成部材とを有し、溝形成部材の外縁近傍部に、案内経路の少なくとも一部として歯付きベルトを案内するほぼ倒立J字状の案内溝が形成され、案内部形成部材は案内溝に沿うほぼ倒立J字状の外縁部を有し、この外縁部に前記糸移送体を案内する案内部が形成されたものである。
請求項4のミシンは、請求項3の発明において、前記糸移送体が案内溝内で歯付きベルトの歯に係合された係合歯を有する支持部と、案内部で案内される被案内部とを有し、案内部形成部材は、糸移送体を案内溝に沿って移動可能に支持するために、溝形成部材の案内溝側から所定距離だけ離間した位置に配設されたものである。
請求項5のミシンは、請求項4の発明において、前記駆動手段がステッピングモータからなり、糸掛けの際に前記糸移送体が案内溝と案内部に沿って下降して糸掛けを行い、その糸掛け後に案内溝と案内部に沿って上方へ復帰移動するようにステッピングモータを制御する制御手段を設けたものである。
請求項1のミシンによれば、糸調子器と糸取りバネと天秤とを備えたミシンの糸掛け装置において、糸移送体と、経路形成体と、駆動手段と、駆動伝達部材とを設けたので、駆動手段により駆動伝達部材が駆動されると、駆動手段の駆動が駆動伝達部材を介して糸移送体に伝達され、糸移送体は糸供給源からの上糸を引っ掛けた状態で経路形成体で案内され、糸移送体が所定の糸移送経路に沿って移動するので、上糸が糸調子器と糸取りバネと天秤に順々に糸掛けすることができる。
請求項2のミシンによれば、前記駆動伝達部材は、無端ループ状の歯付きベルトであって歯をループ外側に向けて配設した歯付きベルトであるので、ギヤ歯付きのプーリを用いることなく、歯付きベルトのループ内側の平面部を連続する案内壁に摺動させることでスムーズに案内できるため、歯付きベルトの案内経路を容易に形成でき、しかも湾曲形状等の種々の経路形状を案内壁で構成でき、案内経路を容易に且つ安価に形成できるだけでなく、案内経路の自由度を高めることができる。
更に、駆動伝達部材として、一般的な標準の歯付きベルトを使用できるため、駆動伝達部材のコストを低減することができる。その他請求項1と同様の効果を奏する。
請求項3のミシンによれば、前記経路形成体は、天秤の上下揺動面と平行に配設された合成樹脂製の板状の溝形成部材と、この溝形成部材に固定される案内部形成部材とを有し、溝形成部材の外縁近傍部に、案内経路の少なくとも一部として歯付きベルトを案内するほぼ倒立J字状の案内溝が形成され、案内部形成部材は案内溝に沿うほぼ倒立J字状の外縁部を有し、この外縁部に糸移送体を案内する案内部が形成されたので、歯付きベルトを溝形成部材の外縁近傍部に形成された案内溝に沿ってほぼ倒立J字状に案内でき、しかも移送体をその案内溝に沿う外縁部に形成された案内部に沿ってほぼ倒立J字状に案内することができる。その他請求項2と同様の効果を奏する。
請求項4のミシンによれば、前記糸移送体が案内溝内で歯付きベルトの歯に係合された係合歯を有する支持部と、案内部で案内される被案内部とを有し、案内部形成部材は、糸移送体を案内溝に沿って移動可能に支持するために、溝形成部材の案内溝側から所定距離だけ離間した位置に配設されたので、糸移送体はその支持部を介して歯付きベルトの歯に係合させることで糸移送を可能にできるとともに、案内部形成部材と溝形成部材の間に設けられた所定距離の離間隙間により、その被案内部を介して案内部で案内しながら、糸移送体を案内溝に沿って移動させることができる。
また、糸移送体は、その係合歯を歯付きベルトの何れかの歯に係合させるだけで、歯付きベルトにより駆動できるため、糸移送体の歯付きベルトへの組み付けを格段に簡単化させることができるとともに、所定の糸移送タイミングとなるように糸移送体の組み付け位置変更を容易に行うことができる。その他請求項3と同様の効果を奏する。
請求項5のミシンによれば、前記駆動手段がステッピングモータからなり、糸掛けの際に糸移送体が案内溝と案内部に沿って下降して糸掛けを行い、その糸掛け後に案内溝と案内部に沿って上方へ復帰移動するようにステッピングモータを制御する制御手段を設けたので、糸掛けに際して、制御手段によりステッピングモータを駆動制御することで、糸移送体を案内溝と案内部に沿って下降させながら糸掛けを実行でき、その糸掛け終了後には、糸移送体を案内溝と案内部に沿って上方へ復帰移動させておくことができ、糸移送体の移送制御の簡単化を図ることができる。その他請求項3又は4と同様の効果を奏する。
本発明のミシンは、糸供給源からの上糸を糸調子器と糸取りバネと天秤に糸掛けする為の糸移送体と、この糸移送体が所定の糸移送経路に沿って移動するように糸移送体を案内する案内経路を形成する経路形成体と、糸移送体を駆動するための駆動手段と、駆動手段の駆動を糸移送体に伝達する駆動伝達部材とを備えている。
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1〜図3に示すように、ミシンMは、ベッド部1と、ベッド部1の右側部分に立設された脚柱部2と、ベッド部1と対向するように脚柱部2の上部から左方へ延びるアーム部3と、アーム部3の左部に設けられた頭部4とを有する。ベッド部1には針板(図示略)が設けられ、針板の下側に釜機構(図示略)が設けられ、その釜機構に下糸が巻かれたボビンが着脱自在に装着される。脚柱部2の前面には、大型で縦向きの液晶ディスプレイ5が設けられている。
アーム部3には、その上部側を覆う開閉カバー6が開閉可能に取り付けられている。この開閉カバー6はアーム部3の左右全長に亙って設けられ、アーム部3の上側後端部に左右方向向きの軸回りに開閉可能に枢支されている。頭部4の右側において、アーム部3の上部には糸収容凹部7が形成され、その糸収容凹部7に糸立棒8が配設されている。
糸供給源である糸駒9が糸立棒8に装着され、糸収容凹部7に左右横向き姿勢で収容され、この糸駒9から繰り出される上糸10が、糸調子器14、糸取バネ15、天秤13等の複数の糸掛け部を順々に経由して、最終的に針棒11の下端部に装着された縫針19の目孔19aに供給される(図16−1、図17−1参照)。
図3〜図5、図8に示すように、頭部4には、針棒11、押え棒12、天秤13、糸調子器14,糸取りバネ15、自動糸掛け装置16、自動糸通し機構17等が設けられている。針棒11はミシン機枠に上下往復動可能に支持され、針棒11の下端部に針棒糸案内18が設けられると共に、縫針19が装着されている。この針棒11はミシンモータ28を有するミシン駆動機構(図示略)により上下駆動される。
押え棒12は針棒11の後側に配設されてミシン機枠に昇降可能に支持され、押え棒12の下端部に押え足20(図1、図2参照)が装着されている。尚、図1、図2に示すように、アーム部3の前面には、縫製開始スイッチ21、縫製終了スイッチ22、自動糸掛け準備スイッチ23、自動糸掛け開始スイッチ24等が一列状に設けられている。
図5〜図7に示すように、天秤13は針棒11の前側且つ上側に配設され、後述するように、天秤13の基端部である天秤本体部40の下端部が、ミシン機枠に左右方向向きの軸回りに回動可能に枢支されている。この天秤13は前記ミシン駆動機構により針棒11と同期して上下に揺動駆動される。
糸調子器14は1対の糸調子皿14a,14bを有し、天秤13の右側である糸駒9側(天秤13の上流側)に左右方向向きに配置され、1対の糸調子皿14a,14bは自動糸掛け装置16の第1ガイドフレーム25の上端部分に、左右方向向きの糸調子軸14cを介して取り付けられている。糸取りバネ15は糸調子器14の下側(天秤13の上流側且つ糸調子器14の下流側)の第1ガイドフレーム25の下端部分に、上糸10を弾性付勢可能な状態で取り付けられている。
さて、このミシンMには、図1〜図4、図8、図16−1、図17−1に示すように、糸立棒8に装着された糸駒9から繰り出される上糸10を、自動糸掛け装置16により複数の糸掛け部(糸調子器14、糸取りバネ15、天秤13、針棒糸案内18等)に糸掛け可能に、しかも自動糸通し機構17により縫針19の目孔19aに上糸10を自動的に糸通し可能に準備しておく糸準備経路30と、その糸準備経路30に上糸10を導入可能なようにミシンカバー35に形成された糸導入溝31が設けられている。
次に、糸導入溝31について説明する。図1〜図4に示すように、アーム部3の上部を覆うミシンカバー35は、上カバー35a、糸導前カバー35b、リヤカバー35c、糸案内カバー35dが設けられ、アーム部3の下前部の大部分にフロントカバー35e等、複数に分割されたカバー部を有し、頭部4の大部分には、大型の面板35fが設けられている。上カバー35aに、前述した糸収容部7が形成されている。
上カバー35aの左端部がアーム部3の左右方向中央部に位置し、この上カバー35aとその左側の糸導前カバー35bとの間に導入溝部34aが形成され、糸導前カバー35bとその後側のリヤカバー35cとの間に導入溝部34bが形成され、糸案内カバー35dとその右側の糸導前カバー35b及びフロントカバー35eとの間に湾曲状の導入溝部34cが形成され、糸案内カバー35dとその下側及び下部左側の面板35fとの間にL形の導入溝部34dが形成されている。
これら導入溝部34a,34b,34cは直列的に繋がり、導入溝部34cの下端から導入溝部34dが繋がっている。そこで、これら複数の導入溝部34a,34b,34c,34dにより糸導入溝31が構成されている。
ここで、天秤13について、簡単に説明しておくと、図5〜図7に示すように、天秤13は、側面視にてその全体が略ヘ字形に形成されると共に、正面視にてクランク状に形成され、図示しない前述したミシン駆動機構により上下に揺動駆動されるように構成されている。
この天秤13は、天秤本体部40に一体形成され、上糸10が縫製可能に掛けられる天秤糸掛け部41と、この天秤糸掛け部41に上糸10を導入する天秤糸導入部42と、この天秤糸導入部42に上糸10を案内する導入案内部43等を有する。
前記天秤糸掛け部41は、天秤先端部13aに設けられた小形の楕円孔形状をなす糸孔であり、天秤本体部40から天秤先端部13aに繋がる糸受部45と、天秤導入部42とからなる隙間から構成される糸導入溝13bに通じている。上糸10はこの糸導入溝13bを通って天秤糸掛け部41へ導かれる。導入案内部43は、糸導入溝13bの開放端である糸導入口13cから天秤導入部42と略同じ長さで糸受部45に対して約120度の角度をなす直線形状部で形成されている。
導入案内部43の端部13dには、導入案内部43に掛けられた上糸10が糸受部45の反対側へ外れないように上糸10を係止する第1糸係止部46が形成され、また、糸受部45の基端部には、糸受部45で受け止められた上糸10が天秤糸導入部42の反対側へ外れないように上糸10を係止する第2糸係止部47が形成されている。
また、天秤糸導入部42と導入案内部43の連結部に、糸受部45の方へ張り出す張出し部48が、側面視にて糸受部45とラップする状態に形成されている。この張出部48により、天秤糸掛け部41に導入された上糸10が、糸受部45と天秤糸導入部42の間を通って抜け出ないようになっている。
さて、このミシンMでは、図5に示すように、天秤13の位置を上昇限界位置近傍の糸引掛け位置に切り換えた状態で、糸準備経路30に上糸10の糸掛けを可能に構成してある。天秤13がこの糸引掛け位置位置していないときには、自動糸掛け準備スイッチ23を操作することで、ミシンモータ28の駆動により、天秤13を糸引掛け位置に自動的に移動させることができる。
図5に示すように、天秤13が糸引掛け位置に切り換えられた状態では、導入案内部43が下方程前方へ移行するように水平方向に対して約80度の傾斜角で傾斜し、天秤糸導入部42が前方程下方へ移行するように水平方向に対して約20度の傾斜角で傾斜した姿勢となる。糸準備経路30における上糸10は導入案内部43に後側から掛けられる状態となる。
次に、自動糸掛け装置16について説明する。
図8〜図10、図16−1〜図16−6、図17−1〜図17−6に示すように、自動糸掛け装置16は、糸準備経路30に予めセットされた上糸10を移送して複数の糸掛け部(糸調子器14、糸取りバネ15、天秤13等)に糸掛けする第1糸移送部材54(これが糸移送体に相当する)を有する第1糸移送機構50(これが糸掛け装置に相当する)と、この第1糸移送機構50を駆動する為の第1ステッピングモータ50Aと、天秤13よりも下流側の上糸10を縫針19に移送する第2糸移送部材61を有する第2糸移送機構60と、この第2糸移送機構60を駆動する為の第2ステッピングモータ69とを備えている。
第1糸移送機構50により第1糸移送部材54が移送され、天秤13の導入案内部43よりも上流側の上糸10を引っ掛けて糸取りバネ15の方へ移送し、その糸移送途中に上糸10を糸調子器14に糸掛けし、移送最終段階で上糸10を糸取りバネ15に糸掛けし、これら第1,第2糸移送部材51,61の協働により、上糸移送途中において上糸10を天秤13の天秤糸掛け部41に糸掛けするように構成されている。
第1糸移送機構50は、第1ガイドフレーム25に固定された溝形成部材51と、溝形成部材51に収容された歯付きベルト52と、溝形成部材51に固定される案内部形成部材53と、歯付きベルト52により移送駆動される第1糸移送部材54と、第1糸移送部材54を移送駆動する第1ステッピングモータ50A等で構成されている。
溝形成部材51は、図11に示すように、天秤13の上下揺動面と平行に上下向きに配設された合成樹脂製の板状部材であって、側面視にてほぼ倒立J字状であり、第1ガイドフレーム25の左側面に複数箇所でビス止めされている。溝形成部材51の左側面部の外縁近傍部に、外周側壁部51aと内周側壁部51bとにより、第1糸移送部材54を案内する案内経路の少なくとも一部として歯付きベルト52を案内するほぼ倒立J字状の案内溝51cが形成されている。
図12に示すように、案内溝51cの上部後端と下部とに、小型のローラ部材50aが夫々案内溝51cに臨むように溝形成部材51に回転可能に枢支されている。歯付きベルト52はゴム製の無端ループ状であって、歯52aをループ外側に向けて案内溝51cに嵌め込まれている。それ故、歯付きベルト52はそのループ内側の平面部を内周側壁部51bに摺動しながら案内溝51cに案内されて、時計回りと反時計回りとに往復移動可能になっている。
図13に示すように、案内部形成部材53は、溝形成部材51の案内溝51cに沿うほぼ倒立J字状の外縁部を有する金属製の板部材からなり、この外縁部に、第1糸移送部材54を案内する案内部53aが形成されている。案内部形成部材53には、溝形成部材51側に溝形成部材51と平行に突出させた3つのビス止め部53bが形成されている。
それ故、図10に示すように、これらビス止め部53bを介して案内部形成部材53を溝形成部材51に左側から固定ビス50bにて固定することにより、案内部形成部材53は溝形成部材51の案内溝51c側から所定距離tだけ離間した位置に、溝形成部材51と平行に配設されている。
第1糸移送部材54は、図12〜図14、図15−1、図15−2に示すように、案内部形成部材53と溝形成部材51とが所定距離tだけ離間した通過隙間を介して外部に露出した門形の糸引っ掛け部54aと、その糸引っ掛け部54aの一方の脚部に一体的に固着された支持部54b及び二股状の被案内部54dを有している。
支持部54bはその係合歯54cを介して案内溝51c内で歯付きベルト52の歯52aに係合され、その被案内部54dは案内部形成部材53の案内部53aに摺動することにより、案内部形成部材53の外縁部のほぼ倒立J字状の案内経路に沿って、上側の待機位置から下側の糸渡し位置まで案内される。
第1ステッピングモータ50Aは支持フレームFに固着され、第1ステッピングモータ50Aの駆動軸に固着された駆動ギヤ50Bが、支持フレームFに回転可能に枢支された枢支軸50Cの従動ギヤ50Dに噛合し、枢支軸50Cの前端部に固着したスプロケット50Eが歯付きベルト52の一部に噛合している。
それ故、第1ステッピングモータ50Aの正転駆動により、スプロケット50Eと歯付きベルト52の移動を介して第1糸移送部材54を待機位置から糸渡し位置に連続して下降移動させ、第1ステッピングモータ50Aの逆転駆動により、スプロケット50Eと歯付きベルト52の移動を介して第1糸移送部材54を糸渡し位置から待機位置に連続して上昇移動させる。
第1ガイドフレーム25の右側面の上端部に、糸調子器14の糸調子皿14a,14bが糸調子軸14cを介して取り付けられ、第1ガイドフレーム25の下端部分にバネ付勢された糸取りバネ15が取り付けられている。第1ガイドフレーム25の下部には、下端から上側に凹むように切欠部25aが形成され、この切欠部25aに糸取りバネ15が臨んでおり、糸取りバネ15は切欠部25aを介して下側から係合する上糸10の糸取り機能を充分に発揮できるようになっている。
第1糸移送部材54の待機位置は、図16−1、図17−1、図20−1に示すように、案内部形成部材53の上端且つ後側の移動開始位置であり、第1糸移送部材54の糸渡し位置は、図16−4、図17−4、図20−4に示すように、案内部形成部材53の下端且つ後側の移動終了位置である。
それ故、第1糸移送部材54は、案内部形成部材53の案内部53aに沿って、上側の待機位置から下側の糸渡し位置までほぼ倒立J字状に一気に下降移動する。このように、第1糸移送部材54が待機位置から糸渡し位置へ移動するに際して、予め糸準備経路30に糸掛けされた上糸10の一部を移動途中で糸引っ掛け部54aに引っ掛けた状態で下方に移送するので、第1糸移送部材54よりも上流側の糸調子器14に上糸10を糸掛けし、下側の糸渡し位置に移動したとき、その移動が停止する。
第1糸移送部材54が糸渡し位置に達して、上糸移送が停止したとき、糸引っ掛け部54aの上糸10が糸取りバネ15の直ぐ下側に移送されている。その後、後述する第2糸移送部材61は継続して下方に移動しているため、上糸10が第2糸移送部材61の移動により、第2糸移送部材61側に引っ張られ、上糸10が糸引っ掛け部54aから外れて切欠部25aに下端から導入され、糸取りバネ15に確実に糸掛けされる。
次に、糸調子器14を有する糸調子機構55について説明する。
糸調子機構55は、上糸10を挟持して上糸10に張力を付与する為の1対の糸調子皿14a,14bと、固定側の糸調子皿14aに対して可動側の糸調子皿14bを押圧させる圧縮コイルバネ58と、その圧縮コイルバネ58のバネ力を可変調整する張力調整機構と、その張力調整機構を作動させる糸調子ステッピングモータ59からなる。
張力調整機構について説明すると、第1ガイドフレーム25の上端部に左右向きの取付け板55aが固着され、その取付け板55aに固定した前後方向向きの枢支軸に円形の張力調整ギヤ56が回転可能に枢支されている。張力調整ギヤ56の後面に螺旋の一部である円弧カム(図示略)が形成され、その円弧カムに平面視L字状の糸調子板57の右端部が係合連結され、糸調子板57に左方向きのバネ受けピン57aが固着されている。
そのバネ受けピン57aの先端部(左端部)が、第1ガイドフレーム25に固着した糸調子軸14cの内部に右側から部分的に嵌入され、糸調子皿14bと糸調子板57との間に圧縮コイルバネ58が介装されている。糸調子ステッピングモータ59は取付け板55aに後側から固定され、取付け板55aを貫通した駆動軸に駆動ギヤ59aが固定され、その駆動ギヤ59aに張力調整ギヤ56が噛合されている。
それ故、糸調子ステッピングモータ59が駆動されると、駆動ギヤ59aを介して張力調整ギヤ56が回転駆動され、その円弧カムに係合連結された糸調子板57が左右に移動する。糸調子板57が右方に移動する程、圧縮コイルバネ58のバネ力が小さくなり、糸調子器14による張力も小さくなり、最終的には零になる。一方、糸調子板57が左方に移動する程、圧縮コイルバネ58のバネ力が大きくなり、糸調子器14による張力も大きくなる。
第2糸移送機構60は、ミシン機枠に夫々平行に固着された左右1対の第2ガイドフレーム62,63と、第2ガイドフレーム62,63にガイド支持されて図16−1、図17−1に示す退入位置と図16−5、図17−5に示す突出位置とに亙って移動可能な可動フレーム64と、可動フレーム64にガイド支持され且つ可動フレーム64の移動も加わって図16−1、図17−1に示す待機位置と図16−5、図17−5に示す糸渡し位置とに亙って移動可能な第2糸移送部材61と、可動フレーム64及び第2糸移送部材61を駆動する第2駆動機構部65とを有する。
第2ガイドフレーム62,63は、針棒12及び天秤13の左側に配設されて、夫々面が左右方向に向く上下に長い板状フレームである。第2ガイドフレーム62,63は所定間隔を空けて対面状に配置され、それら両ガイドフレーム62,63の間に可動フレーム64が退入可能に設けられている。可動フレーム64は、細長い左右1対の可動片を対面状に連結した構造であり、第2糸移送部材61はその支持部61cを介して可動フレーム64に移動可能に支持されている。
第2ガイドフレーム62,63に縦向きのガイド溝62a,63aが夫々形成され、これらガイド溝62a,63aに可動フレーム64が移動可能にガイドされ、また、可動フレーム64の1対の可動片にも縦向きのガイド溝64aが夫々形成され、このガイド溝64aに第2糸移送部材61が支持部61cを介して支持されている。
第2糸移送部材61は、待機位置のときには、図16−1、図17−1に示すように、糸引掛け位置に移動した天秤13の直ぐ前側且つ下側の位置で下向き姿勢あり、第2糸移送部材61は、糸渡し位置のときには、図16−5、図17−5に示すように、縫針19の前側の位置で水平な後向き姿勢である。
第2糸移送部材61は、糸準備経路30における上糸10を保持可能な左右1対の糸保持部61a,61bを有し、各糸保持部61a,61bは上糸10を係合可能に二股状に形成されている。但し、左側の糸保持部61aは、図示を省略するが、別体の糸挟持片との協働により、上糸10を挟持するように構成されている。
第2糸移送部材61は、待機位置から糸渡し位置へ下降移動する際に、糸準備経路30に糸掛けされた上糸10を、右側の糸保持部61bで保持し且つ左側の糸保持部61aで挟持した状態で下方へ移送し、下側の糸渡し位置に移動すると、第2糸移送部材61の糸保持部61a,61b間で保持された上糸10が、縫針19の目孔19aの直ぐ前側に位置し、左右向きの緊張状態で待機する。
第2駆動機構部65は、駆動ギヤ66、2段ギヤ67a,67b、ラック形成部材68を有し、これらギヤ66,67a,67b及びラック形成部材68と第2ステッピングモータ69(図18参照)は、第2ガイドフレーム62の左側に配設されている。ミシン機枠に第2ステッピングモータ69が固着され、その出力軸に駆動ギヤ66が連結されている。
2段ギヤ67a,67bは夫々ミシン機枠に回転自在に支持され、出力ギヤ66が2段ギヤ67aの大径ギヤと噛合し、2段ギヤ67aの小径ギヤが2段ギヤ67bの大径ギヤに噛合している。ラック形成部材68は第2ガイドフレーム62,63に対して昇降自在にガイドされ、そのラック68aに2段ギヤ67bの小径のピニオンが噛合している。
第2ステッピングモータ69が駆動されると、その駆動力が駆動ギヤ66、2段ギヤ67a,67b、ラック68aを介してラック形成部材68に伝達され、ラック形成部材68が下降駆動される。ラック形成部材68が下降すると、そのラック形成部材68に複数の滑車及びワイヤ(図示略)を介して連結された可動フレーム64が、ラック形成部材68の約2倍の速度で下方に移動駆動されると共に、可動フレーム64に複数の滑車及びワイヤ(図示略)を介して連結された第2糸移送部材61が、可動フレーム64の約2倍(即ち、ラック形成部材68の約4倍)の速度で下方に移動駆動される。
第2ガイドフレーム62,63の下端部の後端部には、リンク機構で構成される糸案内糸掛け機構70が設けられ、第2糸移送部材61が糸渡し位置に移動したときに、天秤13から第2糸移送部材61の右側の糸保持部61bに至る上糸10を糸掛けフック部材71で捕捉して、針棒11の下端部に設けた針棒糸案内18に糸掛けするように構成されている。
次に、自動糸通し機構17について簡単に説明する。
図8、図9、図16−1〜図16−6、図17−1〜図17−6に示すように、自動糸通し機構17は、針棒11の直ぐ左側近傍に昇降可能に鉛直向きに配設された糸通し軸80と、糸通し軸80の直ぐ左側に鉛直向きに配設されて糸通し軸80と一体的に昇降可能な糸通しガイド軸81と、糸通し軸80と糸通しガイド軸81の上端部分に昇降可能に外嵌された糸通しスライダ82と、糸通し軸80の下端に設けられた糸通しフック(図示略)を有するフック機構83と、糸通し軸80をその下降限界位置で糸通しフックを縫針19の目孔19aに挿通させるために約90度回動させる回動機構(図示略)等を備えている。但し、糸通しスライダ82はラック形成部材68と同期して昇降駆動される。
それ故、自動糸通し機構17は、自動糸掛け装置16の第2糸移送機構60と同期して下降し、第2糸移送部材61が糸渡し位置に移動する直前に、糸通し軸80が下降限界位置に達し、フック機構83の糸通しフックが約90度、往方向に回動して縫針19の目孔19aを挿通したとき、第2糸移送部材61で保持された上糸10が糸通しフックに引っ掛かる。
その後、フック機構83の糸通しフックが約90度、復方向に回動して縫針19の目孔19aから抜ける。このとき、目孔19aに上糸10が通され、その後、糸通し軸80が上昇して元の位置に復帰する。このような糸通しフックと縫針の作動については、特開2004−41355号公報の図16を参照のこと。
ここで、糸準備経路30について説明しておく。
前述のように、糸準備経路30は、糸駒9から延びる上糸10を自動糸掛け装置16で複数の糸掛け部(糸調子器14、糸取りバネ15、天秤13、針棒糸案内18等)に糸掛け可能に準備する経路であり、この糸準備経路30への糸掛けは、予め縫製作業者による手動操作により、ミシンカバー35に形成された糸導入溝31から順次導入することで行われる。
図8、図16−1、図17−1に示すように、糸導前カバー35bの右端下部は左側へ凹む凹部36になっており、この凹部36から外部へ臨む糸掛け部材90,91が設けられている。ミシンカバー35内部には、第1ガイドフレーム25と糸掛部材91の間に、受板92に上糸10を適度な押圧力で押圧可能な板状のプリテンショナー93が設けられ、その左側に縦向きの軸状糸掛け部材94が突設され、待機位置における第2糸移送部材61の右側の糸保持部61bの直ぐ下側且つ第2糸移送部材61の移動軌跡の右側に糸掛け部材95が設けられている。
この糸掛け部材95(図17−1参照)は、詳しくは図示しないが、第2糸移送部材61が移送開始されて、上糸10が両糸保持部61a,61bに糸掛けされるために、上糸10を所定位置に軽く一時的に係止させておく為の部材である。また、糸案内カバー35dと面板35fとの間のL形の導入溝部34dの縦溝部分に臨むように糸掛け部材96(図4参照)が設けられている。
糸準備経路30に掛けられた上糸10は次のようになる。上糸10は、糸駒9から左方へ延びて糸掛け部材90に上側から掛かり、糸掛け部材91の下部糸掛け部91aに下側から掛かって上方へ延び、糸掛け部材91の上突出糸掛け部91bに前側から掛かってその右側且つ後側を通って左方へ延びる。
上突出糸掛け部91bから左方へ延びる上糸10は、受板92とプリテンショナー93の間を通って、軸状糸掛け部94に後側から掛かり、続いて、糸引掛け位置の天秤13の導入案内部43に後側から掛かる。軸状糸掛け部94と導入案内部43の間の上糸10は、案内部形成部材53の案内部53aに沿って待機位置から糸渡し位置へ移動する第1糸移送部材54に前側から確実に掛かるような位置にある。
天秤13の導入案内部43に掛けられた上糸10は、前方且つ下方へ延びて糸掛け部材95に掛かって左方へ延び、糸掛け部材96の下部糸掛け部96aに掛かって上方へ延び、糸掛け部材96の上部糸保持部96bに掛かって保持され、上糸10の下流端は、糸掛け部材96に取り付けられたカッター97で切断された状態となる。
このように糸掛けした場合、糸掛け部材95,96の間の上糸10は、第2糸移送部材61の1対の糸保持部61a,61bの移動経路を横断し、第2糸移送部材61の1対の糸保持部61a,61bが待機位置から糸渡し位置へ移動する際に、これら1対の糸保持部61a,61bに確実に引っ掛かり、移送されることになる。
次に、ミシンMの制御系について、簡単に説明しておく。図18に示すように、制御手段を構成するマイクロコンピュータ100は、CPU100aと、ROM100b及びRAM100c等を有し、自動糸掛け準備スイッチ23、自動糸掛け開始スイッチ24、縫製開始スイッチ21、縫製終了スイッチ22等からの入力信号を入力し、ミシンモータ28と、第1ステッピングモータ50Aと、第2ステッピングモータ69と、糸調子ステッピングモータ59と、液晶ディスプレイ5等を駆動制御可能になっている。
この場合、ROM100bには各種の実用模様のための縫製データ、ミシンMの各モータ28,50A,59,69を駆動制御する駆動制御プログラム、液晶ディスプレイ5を表示制御する表示制御プログラムに加え、後述する第1糸移送部材54の移送制御の制御プログラム等が記憶されている。RAM100cには、CPU100aで演算処理した演算結果を収容する各種メモリ、ポインタ、カウンタ等が必要に応じて設けられている。
次に、制御装置100で実行される第1糸移送部材54の移送制御のルーチンについて、図19のフローチャートに基づいて説明する。但し、図中の符号Si(i=11、12、13・・・)は各ステップである。
ミシンMに電源が投入されると、この制御が開始され、上糸10の糸掛けに際して、自動糸掛け開始スイッチ24が操作された場合(S11:Yes )、第1ステッピングモータ50Aが正転駆動され、第1糸移送部材54がその待機位置から下側の糸渡し位置に向かって移動される(S12)。その後、第1ステッピングモータ50Aが所定ステップ数の駆動により、第1糸移送部材54が糸渡し位置に到達したとき(S13:Yes )、第1ステッピングモータ50Aの正転駆動が停止される(S14)。
次に、第2糸移送部材61が糸渡し位置において、自動糸通し機構17による糸通しが完了したとき(S15:Yes )、第1ステッピングモータ50Aが逆転駆動され、第1糸移送部材54がその糸渡し位置から上側の待機位置に向かって移動される(S16)。その後、第1ステッピングモータ50Aが所定ステップ数の駆動により、第1糸移送部材54が待機位置に到達したとき(S17:Yes )、第1ステッピングモータ50Aの逆転駆動が停止される(S18)。
次に、このように構成されたミシンMの作用及び効果について説明する。
ミシンMにおいて、縫製途中で上糸10が切れた場合や、糸駒9を交換した場合には、前述した自動糸掛け装置16により上糸掛け操作を行う。そこで、自動糸掛けに際して、自動糸掛準備スイッチ23を操作して、糸引掛け位置に位置しない天秤13を自動的に糸引掛け位置に移動させて停止させる。
次に、糸駒9から延びる上糸10を、ミシンカバー35に形成された糸導入溝31に沿って、導入溝部34a→導入溝部34b→導入溝部34c→導入溝部34dの順に挿入し、最終的に、導入溝部34dの縦溝部分に臨む糸掛け部材96を上側から跨ぐようにUターンさせ、糸掛け部材96の上部糸保持部96bに掛かけて一時的に保持させておき、その下流側部分をカッター97で切断する。
このように、糸掛けのための前準備をしておくことにより、糸導入溝31に挿入された上糸10は、所定の糸準備経路30に予め掛け渡してあるため、天秤13や糸調子器14、更には糸取りバネ15を含む複数の糸掛け部の各々に自動的に糸掛け可能な状態になっている。
即ち、第1糸移送部材54と第2糸移送部材61は、図16−1、図17−1、図20−1に示すように、夫々待機位置に位置し、糸準備経路30にセットされた上糸10は、特に、第1糸移送部材54の移動軌跡を横断し、糸引掛け位置の天秤13の導入案内部43に後側から掛かり、第2糸移送部材61の1対の糸保持部61a,61bの移動経路を横断した状態である。
このとき、自動糸掛け開始スイッチ24を操作すると自動糸掛けが開始され、第1ステッピングモータ50Aと第2ステッピングモータ69とが略同時に駆動され、第1糸移送部材54による糸移送と、第2糸移送部材61による糸移送とが同時に開始される。
その後、図16−2、図17−2、図20−2に示すように、第1糸移送部材54の糸移送により、軸状糸掛け部94と天秤13の導入案内部43の間の上糸10が、糸引っ掛け部54aに引っ掛けられた状態で下方に移送される。
その後、第1糸移送部材54は上糸10を引っ掛けた状態で下方へ移動するとともに、第2糸移送部材61は上糸10を保持した状態で下方へ移動するとき、図16−3、図17−3、図20−3に示すように、第1,第2糸移送部材51,61の下方への移送により、糸駒9からの上糸10が糸調子器14を経て、第1,第2糸移送部材54,61の方へ引っ張られながら繰り出されるため、これら第1,第2糸移送部材54,61間の上糸10のうち、天秤13の導入案内部43に後側から掛けられた上糸10が、導入案内部43により天秤糸導入部42に案内され、天秤糸導入部42により天秤糸掛け部41に導入され糸掛けされる。
これと同時に、軸状糸掛け部材94から第1糸移送部材54へ延びる上糸10が、開状態の糸調子器13の糸調子皿14a,14bの間に糸掛けされる。更に、第1糸移送部材54が、図16−4、図17−4、図20−4に示すように、糸渡し位置に到達して糸移送が停止されたとき、糸引っ掛け部54aに引っ掛けられていた上糸10が、糸取りバネ15の直ぐ下側に移送されている。このとき、第2糸移送部材61は、糸渡し位置に達する手前の位置である。
それ故、第2糸移送部材61による糸移送が続行されているため、糸取りバネ15の直ぐ下側に移送されている上糸10が第2糸移送部材61側に引っ張られるため、図16−5、図17−5に示すように、第1糸移送部材54により糸取りバネ15の直ぐ下側に移送された上糸10は、切欠部25aに導入された後、糸取りバネ15に下側から糸掛けされる。
ところで、第2糸移送部材61が糸渡し位置に到達する直前に、つまり第2糸移送部材61による糸掛けの最終段階において、下降するラック形成部材68の下降により糸案内糸掛け機構70が連動して作動するため、図16−6、図17−6に示すように、糸掛けフック部材71が針棒11の前側を通過して糸掛け位置に切換えられる。
それ故、前述したように、針棒糸案内18の近傍の上糸10は、下方程、針棒糸案内18側に接近するように移送されているため、鉛直面で揺動する糸掛けフック部材71に確実に捕捉され、糸掛けフック部材71が上糸10を捕捉した状態で針棒11の前側を移動して糸掛け位置に切換えられる。その糸掛け位置への切換え途中において、図16−6、図17−6に示すように、糸掛けフック部材71に捕捉された上糸10が針棒糸案内18側に引き込まれ、針棒糸案内18に確実に糸掛けされる。
一方、自動糸掛け装置16に同期して自動糸通し機構17の糸通しガイド軸81が下降移動を開始しており、第2糸移送部材61が糸渡し位置に到達するのと略同時に、糸通しスライダ82と一体的に糸通し軸80と糸通しガイド軸81が下降して、糸通しフックが縫針19の目孔19aと同じ高さ位置に達すると、糸通し軸80と糸通しガイド軸81の下降動作が停止する。
その後、更に、糸通しスライダ82が下降することで、回動機構によりフック機構83の糸通しフックが鉛直軸回りに回動して縫針19の目穴19aを挿通し、第2糸移送部材61で保持されている上糸10が糸通しフックに引っ掛ける。その後、フック機構83の糸通しフックが逆方向へ回動して縫針19の目孔19aから抜けて、目孔19aに上糸10が通される。
その後、糸通しスライダ82、糸通し軸80、糸通しガイド軸81が夫々上昇して元の位置に復帰する。また、第1,第2糸移送部材51,61も夫々元の位置へ復帰する。それ故、この時点で、縫製に際して全ての糸掛け部への糸掛けが完了し、縫製可能な状態となる。
以上説明したように、第1ステッピングモータ50Aによりスプロケット50Eを介して歯付きベルト52が駆動されると、第1ステッピングモータ50Aの駆動が歯付きベルト52を介して第1糸移送部材54に伝達され、第1糸移送部材54は糸供給源からの上糸10を糸引っ掛け部54aに引っ掛けた状態で、案内部形成部材53のほぼ倒立J字状に形成された案内部53aにより、所定の糸移送経路に沿って上側の待機位置から下側の糸渡し位置へ案内されるので、上糸10を天秤13と糸調子器14と糸取りバネ15に順々に自動的に糸掛けすることができる。
また、歯付きベルト52は、多数の歯52aを有する無端ループ状のベルトであって、歯52aをループ外側に向けて配設したので、ギヤ歯付きのプーリを用いることなく、歯付きベルト52のループ内側の平面部を連続する内周側壁部51bに摺動させることでスムーズに案内できるため、歯付きベルト52の案内経路を容易に形成でき、しかも湾曲形状等の種々の経路形状を内周側壁部51bで構成でき、案内経路を容易に且つ安価に形成できるだけでなく、案内経路の自由度を高めることができる。
更に、駆動伝達部材として、歯52aを有するループ状の歯付きベルト52であるため、一般的な標準の歯付きベルトを加工することなく使用できるので、駆動伝達部材のコストを低減することができる。
また、第1糸移送部材54の糸移送のために、天秤13の上下揺動面と平行に配設された合成樹脂製の板状の溝形成部材51と、この溝形成部材51に固定される案内部形成部材53とを有し、溝形成部材51の外縁近傍部に、案内経路の少なくとも一部として歯付きベルト52を案内するほぼ倒立J字状の案内溝51cが形成され、案内部形成部材53は案内溝51cに沿うほぼ倒立J字状の外縁部を有し、この外縁部に第1糸移送部材54を案内する案内部53aが形成されたので、歯付きベルト52を溝形成部材51の外縁近傍部に形成された案内溝51cに沿ってほぼ倒立J字状に案内でき、しかも第1糸移送部材54をその案内溝51cに沿う外縁部に形成された案内部53aに沿ってほぼ倒立J字状に案内することができる。
また、第1糸移送部材54が案内溝51c内で歯付きベルト52の歯52aに係合された係合歯54cを有する支持部54bと、案内部53aで案内される二股状の被案内部54dとを一体化した経路形成体として構成し、案内部形成部材53は、第1糸移送部材54を案内溝51cに沿って移動可能に支持するために、溝形成部材51の案内溝51c側から所定距離tだけ離間した位置に配設されたので、第1糸移送部材54はその支持部54bを介して歯付きベルト52の歯52aに係合させることで糸移送を可能にできるとともに、案内部形成部材63と溝形成部材51とが所定距離tだけ離間した通過隙間により、第1糸移送部材54の糸引っ掛け部54aを外部に露出することができ、その被案内部54dを介して案内部53aで案内しながら、上糸10を糸引っ掛け部54aに引っ掛けた状態で糸引っ掛け部54aを案内溝51cに沿って移動させることができる。
また、第1糸移送部材54は、その係合歯54cを歯付きベルト52の何れかの歯52aに係合させるだけで、歯付きベルト52により駆動できるため、第1糸移送部材54の歯付きベルト52への組み付けを格段に簡単化させることができるとともに、所定の糸移送タイミングとなるように第1糸移送部材54の組み付け位置変更を容易に行うことができる。
更に、第1糸移送部材54を第1ステッピングモータ50Aで駆動するようにし、糸掛けの際に第1糸移送部材54が案内溝51cと案内部53aに沿って下降して糸掛けを行い、その糸掛け後に案内溝51cと案内部53aに沿って復帰移動するように第1ステッピングモータ50Aを制御装置100で制御するようにしたので、糸掛けに際して、制御装置100により第1ステッピングモータ50Aを駆動制御することで、第1糸移送部材54を案内溝51cと案内部53aに沿って下側の糸渡し位置に下降させて、天秤13と糸調子器14と糸取りバネ15に糸掛けを実行でき、その糸掛け終了後には、第1糸移送部材54を案内溝51cと案内部53aに沿って上側の待機位置へ復帰移動させておくことができ、第1糸移送部材54の移送制御の簡単化を図ることができる。
次に、前記実施の形態の変更形態について説明する。
1〕歯付きベルト52に代えて細いワイヤを採用してもよい。この場合には、ワイヤの一部を駆動モータの駆動軸に巻き付けるようにしてもよい。
2〕溝形成部材51を所定の厚みを有する板部材で構成し、外周近傍部に、ほぼ倒立J字状の案内溝だけを形成するようにしてもよい。
3〕本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、第1糸移送機構に前記以外に種々の変更を付加して実施可能である。また、本発明は、家庭用、更には工業用の種々のミシンの糸掛け装置に適用することが可能である。
本発明のミシンの斜め上側からの斜視図である。 ミシンの上側からの斜視図である。 ミシンの平面図である。 図2の要部拡大図である。 ミシン(自動糸掛け可能状態)の透視左側面図である。 天秤の左側面図である。 天秤の正面図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構の右斜め上側からの斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構の左斜め上側からの斜視図である。 第1糸移送機構の正面図である。 溝形成部材の左側面図である。 歯付きベルトを組み込んだ溝形成部材の左側面図である。 歯付きベルトと案内部形成部材とを組み込んだ図12相当図である。 図13のN−N線縦断側面図である。 第1糸移送部材の正面図である。 第1糸移送部材の右側面図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(待機状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(糸掛け状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(天秤糸掛け状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(糸取りバネ糸掛け状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(糸渡し状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(針棒糸掛け状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(待機状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(糸掛け状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(天秤糸掛け状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(糸取りバネ糸掛け状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(糸渡し状態)の斜視図である。 自動糸掛け装置と自動糸通し機構(針棒糸掛け状態)の斜視図である。 ミシンの制御系の制御ブロック図である。 第1糸移送部材の移送制御のフローチャートである。 第1糸移送部材が待機位置の糸移送機構の左側面図である。 第1糸移送部材が糸を引っ掛けるときの糸移送機構の左側面図である。 第1糸移送部材が糸を移送中の糸移送機構の左側面図である。 第1糸移送部材が糸渡し位置の糸移送機構の左側面図である。
符号の説明
M ミシン
9 糸駒
10 上糸
13 天秤
14 糸調子器
16 自動糸掛け装置
50 第1糸移送機構
50A 第1ステッピングモータ
51 溝形成部材
51c 案内溝
52 歯付きベルト
52a 歯
53 案内部形成部材
53a 案内部
54 第1糸移送部材
55 糸調子機構
100 制御装置

Claims (5)

  1. 糸調子器と糸取りバネと天秤とを備えたミシンの糸掛け装置において、
    糸供給源からの上糸を糸調子器と糸取りバネと天秤に糸掛けする為の糸移送体と、
    この糸移送体が所定の糸移送経路に沿って移動するように糸移送体を案内する案内経路を形成する経路形成体と、
    前記糸移送体を駆動するための駆動手段と、
    前記駆動手段の駆動を糸移送体に伝達する駆動伝達部材と、
    を備えたことを特徴とするミシンの糸掛け装置。
  2. 前記駆動伝達部材は、無端ループ状の歯付きベルトであって歯をループ外側に向けて配設した歯付きベルトであることを特徴とする請求項1に記載のミシンの糸掛け装置。
  3. 前記経路形成体は、天秤の上下揺動面と平行に配設された合成樹脂製の板状の溝形成部材と、この溝形成部材に固定される案内部形成部材とを有し、
    前記溝形成部材の外縁近傍部に、前記案内経路の少なくとも一部として歯付きベルトを案内するほぼ倒立J字状の案内溝が形成され、
    前記案内部形成部材は前記案内溝に沿うほぼ倒立J字状の外縁部を有し、この外縁部に前記糸移送体を案内する案内部が形成された、
    ことを特徴とする請求項2に記載のミシンの糸掛け装置。
  4. 前記糸移送体が前記案内溝内で歯付きベルトの歯に係合された係合歯を有する支持部と、前記案内部で案内される被案内部とを有し、
    前記案内部形成部材は、前記糸移送体を前記案内溝に沿って移動可能に支持するために、前記溝形成部材の前記案内溝側から所定距離だけ離間した位置に配設されたことを特徴とする請求項3に記載のミシンの糸掛け装置。
  5. 前記駆動手段がステッピングモータからなり、糸掛けの際に前記糸移送体が前記案内溝と案内部に沿って下降して糸掛けを行い、その糸掛け後に前記案内溝と案内部に沿って上方へ復帰移動するようにステッピングモータを制御する制御手段を設けたことを特徴とする請求項3又は4に記載のミシンの糸掛け装置。
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