以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1〜図3に示すように、ミシンMは、ベッド部1と、ベッド部1の右側部分に立設された脚柱部2と、ベッド部1と対向するように脚柱部2の上部から左方へ延びるアーム部3と、アーム部3の左部に設けられた頭部4とを有する。ベッド部1には針板(図示略)が設けられ、針板の下側に釜機構(図示略)が設けられ、その釜機構に下糸が巻かれたボビンが着脱自在に装着される。脚柱部2の前面には、大型で縦向きの液晶ディスプレイ5が設けられている。
アーム部3には、その上部側を覆う開閉カバー6が開閉可能に取り付けられている。この開閉カバー6はアーム部3の左右全長に亙って設けられ、アーム部3の上側後端部に左右方向向きの軸回りに開閉可能に枢支されている。頭部4の右側において、アーム部3の上部には糸収容凹部7が形成され、その糸収容凹部7に糸立棒8が配設されている。
糸供給源である糸駒9が糸立棒8に装着され、糸収容凹部7に左右横向き姿勢で収容され、この糸駒9から繰り出される上糸10が、糸調子器14、糸取バネ15、天秤13等の複数の糸掛け部を順々に経由して、最終的に針棒11の下端部に装着された縫針19の目孔19aに供給される(図17−1、図18−1参照)。
図3〜図5、図8に示すように、頭部4には、針棒11、押え棒12、天秤13、糸調子器14,糸取りバネ15、自動糸掛け装置16、自動糸通し機構17等が設けられている。針棒11はミシン機枠に上下往復動可能に支持され、針棒11の下端部に針棒糸案内18が設けられると共に、縫針19が装着されている。この針棒11はミシンモータ(図示略)を有するミシン駆動機構(図示略)により上下駆動される。
押え棒12は針棒11の後側に配設されてミシン機枠に昇降可能に支持され、押え棒12の下端部に押え足20(図1、図2参照)が装着されている。尚、図1、図2に示すように、アーム部3の前面には、縫製開始スイッチ21、縫製終了スイッチ22、自動糸掛け準備スイッチ23、自動糸掛け開始スイッチ24等が一列状に設けられている。
ここで、針棒11の下端部に設けられた針棒糸案内18について説明する。
図8〜図14に示すように、針棒11の下端に針抱き部材25が取付けられ、針棒糸案内18は屈曲形成した板部材を組み合わせたものであり、針抱き部材25の上側に位置する水平な第1針棒糸案内26aと針抱き部材25の下側に位置する水平な第2針棒糸案内26bと第1針棒糸案内26aから上方に延びる固定部26d等を一体形成した糸案内本体26と、第1針棒糸案内26aの上下両側の近傍位置に設けられた抜け防止部材27等を有している。
糸案内本体26は、図15−1〜図15−4に示すように、第1針棒糸案内26aと第2針棒糸案内26bとが左端部で縦向きの連結壁26cにより連結され、固定部26dは第1針棒糸案内26aの後端から上向きに屈曲形成され、止めネジ29で針棒11の下端部に固定されている。
針抱き部材25には、縫針19の上端部を針棒11に着脱可能に固定する固定ビス25aが取り付けられ、その固定ビス25aを緩めた場合でも、針抱き部材25が針棒11から外れないように針抱き部材25を支持する外れ防止部材28も止めネジ29で針棒11の下端部に固定されている。
第1針棒糸案内26aには、上糸10を導入する導入部26eと、その導入部26eに連続する糸掛け部26fが形成されている。第2針棒糸案内26bは、上糸10を右方から引っ掛ける単なる糸掛けフックとして形成されている。
抜け防止部材27は薄板部材からなり、図16−1〜図16−3に示すように、上側抜け防止部27aと、この上側抜け防止部27aと略平行な下側抜け防止部27cと、上側抜け防止部27aに連なる固定部27eとを一体形成したものである。上側抜け防止部27aと下側抜け防止部27cとは所定隙間をあけて上下に対応する位置関係であり、これら上側抜け防止部27aと下側抜け防止部27cとで第1針棒糸案内26aを上下に挟むように取付けられ、固定部27eにより針棒11と針抱き部材25との間に固着されている。
上側抜け防止部27aには導入部26eの上側に対応するように湾曲形状の上側先端部27bが形成され、下側抜け防止部27cには導入部26eの下側に対応するように湾曲形状の下側先端部27dが形成されている。但し、図14に示すように、上側先端部27bは左右方向の折れ線L1で上側に所定角度だけ折り曲げ形成され、下側先端部27dも同様に、左右方向の折れ線(図示略)で下側に所定角度だけ曲げられている。
即ち、図14に示すように、上側先端部27bの後端部は、上糸10の通過が可能なように第1針棒糸案内26aから所定隙間tだけ上側に離間した上側近傍位置に設けられるとともに、下側先端部27dの後端部は、上糸10の通過が可能なように第1針棒糸案内26aから所定隙間tだけ下側に離間した下側近傍位置に設けられている。
更に、図13に示すように、これら上側先端部27bの後端部と下側先端部27dの後端部とは、平面視にて糸案内本体26の導入部26eの前端部に前方から僅かに重なるような位置関係になっている。
上糸10の糸移送の最終段階で、後述する糸案内糸掛け機構70の糸掛けフック部材76により、糸掛けに供する上糸10が、図13に矢印Sで示す上糸導入方向から第1針棒糸案内26aの導入部26eと第2針棒糸案内26bとの間に向けて移動されるようになっている。
ここで、図13、図16−1に示すように、上側先端部27bの湾曲状エッジである屈曲開始端部は、上糸導入方向Sにおいて、下側先端部27dの湾曲状エッジである屈曲開始端部よりも所定寸法だけ上流側(右側)に設けられ、上側抜け防止部27aによる上糸10の屈曲開始時期を下側抜け防止部27cによる上糸10の屈曲開始時期よりも早めるようになっている。
図5〜図7に示すように、天秤13は針棒11の前側且つ上側に配設され、後述するように、天秤13の基端部である天秤本体部40の下端部が、ミシン機枠に左右方向向きの軸回りに回動可能に枢支されている。この天秤13は前記ミシン駆動機構により針棒11と同期して上下に揺動駆動される。
糸調子器14は1対の糸調子皿14a,14bを有し、天秤13の右側である糸駒9側(天秤13の上流側)に左右方向向きに配置され、1対の糸調子皿14a,14bは自動糸掛け装置16の第1ガイドフレーム52の上端部分に、左右方向向きの糸調子軸14cを介して取り付けられている。糸取りバネ15は糸調子器14の下側(天秤13の上流側且つ糸調子器14の下流側)の第1ガイドフレーム52の下端部分に、上糸10を弾性付勢可能な状態で取り付けられている。
さて、このミシンMには、図1〜図4、図8、図17−1、図18−1に示すように、糸立棒8に装着された糸駒9から繰り出される上糸10を、自動糸掛け装置16により複数の糸掛け部(糸調子器14、糸取りバネ15、天秤13、針棒糸案内18等)に糸掛け可能に、しかも自動糸通し機構17により縫針19の目孔19aに上糸10を自動的に糸通し可能に準備しておく糸準備経路30と、その糸準備経路30に上糸10を導入可能なようにミシンカバー35に形成された糸導入溝31が設けられている。
次に、糸導入溝31について説明する。
図1〜図4に示すように、アーム部3の上部を覆うミシンカバー35は、上カバー35a、糸導前カバー35b、リヤカバー35c、糸案内カバー35dが設けられ、アーム部3の下前部の大部分にフロントカバー35e等、複数に分割されたカバー部を有し、頭部4の大部分には、大型の面板35fが設けられている。上カバー35aに、前述した糸収容部7が形成されている。
上カバー35aの左端部がアーム部3の左右方向中央部に位置し、この上カバー35aとその左側の糸導前カバー35bとの間に導入溝部34aが形成され、糸導前カバー35bとその後側のリヤカバー35cとの間に導入溝部34bが形成され、糸案内カバー35dとその右側の糸導前カバー35b及びフロントカバー35eとの間に湾曲状の導入溝部34cが形成され、糸案内カバー35dとその下側及び下部左側の面板35fとの間にL形の導入溝部34dが形成されている。
これら導入溝部34a,34b,34cは直列的に繋がり、導入溝部34cの下端から導入溝部34dが繋がっている。そこで、これら複数の導入溝部34a,34b,34c,34dにより糸導入溝31が構成されている。
ここで、天秤13について、簡単に説明しておくと、図5〜図7に示すように、天秤13は、側面視にてその全体が略ヘ字形に形成されると共に、正面視にてクランク状に形成され、図示しない前述したミシン駆動機構により上下に揺動駆動されるように構成されている。
この天秤13は、天秤本体部40に一体形成され、上糸10が縫製可能に掛けられる天秤糸掛け部41と、この天秤糸掛け部41に上糸10を導入する天秤糸導入部42と、この天秤糸導入部42に上糸10を案内する導入案内部43等を有する。
前記天秤糸掛け部41は、天秤先端部13aに設けられた小形の楕円孔形状をなす糸孔であり、天秤本体部40から天秤先端部13aに繋がる糸受部45と、天秤導入部42とからなる隙間から構成される糸導入溝13bに通じている。上糸10はこの糸導入溝13bを通って天秤糸掛け部41へ導かれる。導入案内部43は、糸導入溝13bの開放端である糸導入口13cから天秤導入部42と略同じ長さで糸受部45に対して約120度の角度をなす直線形状部で形成されている。
導入案内部43の端部13dには、導入案内部43に掛けられた上糸10が糸受部45の反対側へ外れないように上糸10を係止する第1糸係止部46が形成され、また、糸受部45の基端部には、糸受部45で受け止められた上糸10が天秤糸導入部42の反対側へ外れないように上糸10を係止する第2糸係止部47が形成されている。
また、天秤糸導入部42と導入案内部43の連結部に、糸受部45の方へ張り出す張出し部48が、側面視にて糸受部45とラップする状態に形成されている。この張出部48により、天秤糸掛け部41に導入された上糸10が、糸受部45と天秤糸導入部42の間を通って抜け出ないようになっている。
さて、このミシンMでは、図5に示すように、天秤13の位置を上昇限界位置近傍の糸引掛け位置に切り換えた状態で、糸準備経路30に上糸10の糸掛けを可能に構成してある。ここで、自動糸掛け準備スイッチ23を操作することで、ミシンモータの駆動により、糸引掛け位置に位置しない天秤13を、糸引掛け位置に自動的に移動させることができる。
図5に示すように、天秤13が糸引掛け位置に切り換えられた状態では、導入案内部43が下方程前方へ移行するように、水平方向に対して約80度の傾斜角で傾斜し、天秤糸導入部42が前方程下方へ移行するように、水平方向に対して約20度の傾斜角で傾斜した姿勢となる。糸準備経路30における上糸10は導入案内部43に後側から掛けられる状態となる。
次に、自動糸掛け装置16について説明する。
図8、図9、図17−1〜図17−6、図18−1〜図18−6、図19−1〜図19−6に示すように、自動糸掛け装置16は、糸準備経路30に予めセットされた上糸10を移送して、天秤13を含む複数の糸掛け部(糸調子器14、糸取りバネ15、天秤13、針棒糸案内18等)に糸掛けする第1糸移送部材51を有する第1糸移送機構50と、この第1糸移送機構50を駆動する為の第1ステッピングモータ54と、天秤13よりも下流側の上糸10を縫針19に移送する第2糸移送部材61を有する第2糸移送機構60と、この第2糸移送機構60を駆動する為の第2ステッピングモータ69とを備えている。ここで、これら第1糸移送機構50と、第2糸移送機構60等で糸移送機構が構成される。
第1糸移送機構50により、第1糸移送部材51が、天秤13の導入案内部43よりも上流側の上糸10を引っ掛けて糸取りバネ15の方へ移送し、その上糸移送途中に上糸10を糸調子器14に糸掛けし、移送後の上糸10を糸取りバネ15に糸掛けし、第1,第2糸移送機構50,60により、第1,第2糸移送部材51,61が、上糸移送途中に上糸10を天秤13の天秤糸掛け部41に糸掛けするように構成されている。
第1糸移送機構50は、ミシン機枠に固定された第1ガイドフレーム52と、第1ガイドフレーム52にガイド支持されて図17−1、図18−1、図19−1に示す第1待機位置と図17−4、図18−4に示す第1糸渡し位置とに亙って上下に移動可能な第1糸移送部材51と、第1糸移送部材51を移動駆動する第1駆動機構部(図示略)とを有する。
第1ガイドフレーム52は、針棒11及び天秤13の右側に鉛直姿勢で配設固定され、面が左右方向に向く上下に長い板状フレームであり、上端縁部分が大径の円弧状に、前端縁部分が上下に長い直線状に、下端縁部分が小径の円弧状に連続的に形成されている。
第1ガイドフレーム52の右側面の上端部に、糸調子器14の糸調子皿14a,14bが糸調子軸14cを介して取り付けられ、第1ガイドフレーム52の下端部分にバネ付勢された糸取りバネ15が取り付けられている。第1ガイドフレーム52の下部には、下端から上側に凹むように切欠部52aが形成され、この切欠部52aに糸取りバネ15が臨んでおり、糸取りバネ15は切欠部52aを介して下側から係合する上糸10の糸取り機能を充分に発揮できるようになっている。
第1糸移送部材51の待機位置は、図17−1、図18−1、図19−1に示すように、第1ガイドフレーム52の上端且つ後側の移動開始位置であり、第1糸移送部材51の糸渡し位置は、図17−4、図18−4、図19−4に示すように、第1ガイドフレーム52の下端且つ後側の移動終了位置である。
それ故、第1糸移送部材51は、第1ガイドフレーム52の上端縁部分と前端縁部分と下端縁部分に沿って、上側の待機位置から下側の糸渡し位置まで一気に移動する。第1糸移送部材51には、待機位置において前方に突出状の糸引っ掛け部51aと、その糸引っ掛け部51aを支持する脚部が夫々形成され、第1糸移送部材51は脚部の第1ガイドフレーム52の縁部分との係合を介して、待機位置から糸渡し位置まで移動可能にガイド支持されている。
第1糸移送部材51が待機位置から糸渡し位置へ移動するに際して、予め糸準備経路30に糸掛けされた上糸10の一部を糸引っ掛け部51aに引っ掛けた状態で下方に移送しながら、第1糸移送部材51よりも上流側の上糸10を糸調子器14に糸掛けし、下側の糸渡し位置に移動したとき、その移動が停止する。
このように、第1糸移送部材51が糸渡し位置に達して、上糸移送が停止したとき、糸引っ掛け部51aに引っ掛けられた上糸10が糸取りバネ15の直ぐ下側に移送されている。その後、後述する第2糸移送部材61は継続して下方に移動しているため、上糸10が第2糸移送部材61の移動により、第2糸移送部材61側に引っ張られ、上糸10が糸引っ掛け部51aから外れて切欠部52aに下端から導入され、糸取りバネ15に確実に糸掛けされる。
第1駆動機構部は、図示を省略するが、第1糸移送部材51が連結された無端状のタイミングベルトと、そのタイミングベルトを第1ガイドフレーム52の上端縁部分と前端縁部分と下端縁部分に沿うように案内する案内溝(図示略)を有し、第1ステッピングモータ54(図8参照)によりタイミングベルトが循環駆動されて、第1糸移送部材51がタイミングベルトにより、待機位置と糸渡し位置とに亙って移送駆動される。
次に、糸調子器14を有する糸調子機構55について説明する。糸調子機構55は、上糸10を挟持して上糸10に張力を付与する為の1対の糸調子皿14a,14bと、固定側の糸調子皿14aに対して可動側の糸調子皿14bを押圧させる圧縮コイルバネ58と、その圧縮コイルバネ58のバネ力を可変調整する張力調整機構と、その張力調整機構を作動させる糸調子ステッピングモータ59からなる。
張力調整機構について説明すると、第1ガイドフレーム52の上端部に左右向きの取付け板55aが固着され、その取付け板55aに固定した前後方向向きの枢支軸に円形の張力調整ギヤ56が回転可能に枢支されている。張力調整ギヤ56の後面に螺旋の一部である円弧カム(図示略)が形成され、その円弧カムに平面視L字状の糸調子板57の右端部が係合連結され、糸調子板57に左方向きのバネ受けピン57aが固着されている。
そのバネ受けピン57aの先端部(左端部)が、第1ガイドフレーム52に固着した糸調子軸14cの内部に右側から部分的に嵌入され、糸調子皿14bと糸調子板57との間に圧縮コイルバネ58が介装されている。糸調子ステッピングモータ59は取付け板55aに後側から固定され、取付け板55aを貫通した駆動軸に駆動ギヤ59aが固定され、その駆動ギヤ59aに張力調整ギヤ56が噛合されている。
それ故、糸調子ステッピングモータ59が駆動されると、駆動ギヤ59aを介して張力調整ギヤ56が回転駆動され、その円弧カムに係合連結された糸調子板57が左右に移動する。糸調子板57が右方に移動する程、圧縮コイルバネ58のバネ力が小さくなり、糸調子器14による張力も小さくなり、最終的には零になる。一方、糸調子板57が左方に移動する程、圧縮コイルバネ58のバネ力が大きくなり、糸調子器14による張力も大きくなる。
第2糸移送機構60は、ミシン機枠に夫々平行に固着された左右1対の第2ガイドフレーム62,63と、第2ガイドフレーム62,63にガイド支持されて図17−1、図18−1、図19−1に示す退入位置と図17−5、図18−5、図19−5に示す突出位置とに亙って移動可能な可動フレーム64と、可動フレーム64にガイド支持され且つ可動フレーム64の移動も加わって図17−1、図18−1、図19−1に示す待機位置と図17−5、図18−5、図19−5に示す糸渡し位置とに亙って移動可能な第2糸移送部材61と、可動フレーム64及び第2糸移送部材61を駆動する第2駆動機構部65とを有する。
第2ガイドフレーム62,63は、針棒12及び天秤13の左側に配設されて、夫々面が左右方向に向く上下に長い板状フレームである。第2ガイドフレーム62,63は所定間隔を空けて対面状に配置され、それら両ガイドフレーム62,63の間に可動フレーム64が退入可能に設けられている。可動フレーム64は、細長い左右1対の可動片を対面状に連結した構造であり、第2糸移送部材61はその支持部61cを介して可動フレーム64に移動可能に支持されている。
第2ガイドフレーム62,63に縦向きのガイド溝62a,63aが夫々形成され、これらガイド溝62a,63aに可動フレーム64が移動可能にガイドされ、また、可動フレーム64の1対の可動片にも縦向きのガイド溝64aが夫々形成され、このガイド溝64aに第2糸移送部材61が支持部61cを介して支持されている。
第2糸移送部材61は、待機位置のときには、図17−1、図18−1、図19−1に示すように、糸引掛け位置に移動した天秤13の直ぐ前側且つ下側の位置で下向き姿勢あり、第2糸移送部材61は、糸渡し位置のときには、図17−5、図18−5、図19−5に示すように、縫針19の前側の位置で水平な後向き姿勢である。
第2糸移送部材61は、糸準備経路30における上糸10を保持可能な左右1対の糸保持部61a,61bを有し、各糸保持部61a,61bは上糸10を係合可能に二股状に形成されている。但し、左側の糸保持部61aは、図示を省略するが、別体の糸挟持片との協働により、上糸10を挟持するように構成されている。
第2糸移送部材61は、待機位置から糸渡し位置へ下降移動する際に、糸準備経路30に糸掛けされた上糸10を、右側の糸保持部61bで保持し且つ左側の糸保持部61aで挟持した状態で下方へ移送し、下側の糸渡し位置に移動すると、第2糸移送部材61の糸保持部61a,61b間で保持された上糸10が、縫針19の目孔19aの直ぐ前側に位置し、左右向きの緊張状態で待機する。
第2駆動機構部65は、駆動ギヤ66、2段ギヤ67a,67b、ラック形成部材68を有し、これらギヤ66,67a,67b及びラック形成部材68と第2ステッピングモータ69は、第2ガイドフレーム62の左側に配設されている。ミシン機枠に第2ステッピングモータ69が固定され、その出力軸に駆動ギヤ66が連結されている。ここで、ラック形成部材68が、第2駆動機構部65の昇降駆動される可動部材に相当する。
2段ギヤ67a,67bは夫々ミシン機枠に回転自在に支持され、出力ギヤ66が2段ギヤ67aの大径ギヤと噛合し、2段ギヤ67aの小径ギヤが2段ギヤ67bの大径ギヤに噛合している。ラック形成部材68は第2ガイドフレーム62,63に対して昇降自在にガイドされ、そのラック68aに2段ギヤ67bの小径のピニオンが噛合している。
第2ステッピングモータ69が駆動されると、その駆動力が駆動ギヤ66、2段ギヤ67a,67b、ラック68aを介してラック形成部材68に伝達され、ラック形成部材68が下降駆動される。ラック形成部材68が下降すると、そのラック形成部材68に複数の滑車及びワイヤ(図示略)を介して連結された可動フレーム64が、ラック形成部材68の約2倍の速度で下方に移動駆動されると共に、可動フレーム64に複数の滑車及びワイヤ(図示略)を介して連結された第2糸移送部材61が、可動フレーム64の約2倍(即ち、ラック形成部材68の約4倍)の速度で下方に移動駆動される。
次に、天秤13から第2糸移送部材61の右側の糸保持部61bに至る上糸10を糸掛けフック部材76で捕捉して、針棒11の下端部に設けた針棒糸案内18に糸掛けする糸案内糸掛け機構70について説明する。但し、この糸案内糸掛け機構70の糸掛けフック部材76は、待機位置に移動した第2糸移送部材61との干渉を回避するように、針棒糸案内18の直ぐ前側において、待機位置から糸渡し位置に揺動可能になっている。
図9、図18−1、図19−1、図20−1、図20−2に示すように、左右方向に延びる水平状のL形支持板71が第2ガイドフレーム62,63の下端部の後端部に固着され、L形支持板71の左端部に側面視クランク状に曲げ形成された第1リンク72の上端部が前後方向向きの第1枢支ピン73で枢支され、第1リンク72の下端部に第2リンク74の左端部が第2枢支ピン75で枢支されている。
第2リンク74の右端部に、糸掛けフック部材76の長さ方向中央部が前後方向向きの第3枢支ピン77で枢支され、糸掛けフック部材76の基端部が、L形支持板71の下面に固着した枢支部材78に前後方向向きの第4枢支ピン79で枢支されている。それ故、これら第1リンク72と第2リンク74と糸掛けフック部材76は、夫々鉛直面と平行に揺動可能になっている。
ところで、糸掛けフック部材76の先端部には、鎌状(円弧状)に曲げ形成された所定長さを有するフック部76aが形成されている。そのフック部76aは、図21に示すように、先端部程前方に突出するように形成されている。ここで、針棒糸案内18の直ぐ前側において上糸10は針棒糸案内18側へ傾斜状に移送され、その傾斜状の上糸10がフック部76aの揺動軌跡内に保持されている。それ故、後述するように、糸掛けフック部材76が揺動した場合、フック部76aで傾斜状の上糸10を引っ掛け易く、しかも引っ掛けた上糸10を針棒糸案内18の方へ引き込むようになっている。
第1リンク72は図示外の引っ張りバネにより、正面視にて反時計回りに付勢されているため、糸掛けフック部材76は、常には図20−1に示すように、針棒11に対して右側に退避した待機位置であるが、第2糸移送部材61が糸渡し位置に達する直前に、図20−3に示すように、下降するラック形成部材68の下端が第1リンク72の上端部に設けた作動ピン72aに上側から当接して所定距離だけ下方に押圧するため、第1リンク72が時計回りに回動し、糸掛けフック部材76は、第4枢支ピン79を回動中心として、針棒11の前側を鉛直面と平行な面で円弧状に揺動して、図20−2に示す待機位置から、図20−3に示す糸掛け位置に切換えられる。
このように、糸掛けフック部材76が針棒11の直前を右方から左方に揺動するとき、針棒糸案内18の近傍に移送された傾斜状の上糸10が糸掛けフック部材76のフック部76aに確実に捕捉され、糸掛けフック部材76が上糸10を捕捉した状態で針棒11の前側を移動して糸掛け位置に切換えられる途中で、糸掛けフック部材76に捕捉された上糸10が針棒糸案内18の第1及び第2針棒糸案内26a,26bに略同時に糸掛けされる。
次に、自動糸通し機構17について簡単に説明する。
図8、図9、図17−1〜図17−6、図18−1〜図18−6、図19−1〜図19−6に示すように、自動糸通し機構17は、針棒11の直ぐ左側近傍に昇降可能に鉛直向きに配設された糸通し軸80と、糸通し軸80の直ぐ左側に鉛直向きに配設されて糸通し軸80と一体的に昇降可能な糸通しガイド軸81と、糸通し軸80と糸通しガイド軸81の上端部分に昇降可能に外嵌された糸通しスライダ82と、糸通し軸80の下端に設けられた糸通しフック(図示略)を有するフック機構83と、糸通し軸80をその下降限界位置で糸通しフックを縫針19の目孔19aに挿通させるために約90度回動させる回動機構(図示略)等を備えている。但し、糸通しスライダ82はラック形成部材68と同期して昇降駆動される。
それ故、自動糸通し機構17は、自動糸掛け装置16の第2糸移送機構60と同期して下降し、第2糸移送部材61が糸渡し位置に移動する直前に、糸通し軸80が下降限界位置に達し、フック機構83の糸通しフックが約90度、往方向に回動して縫針19の目孔19aを挿通したとき、第2糸移送部材61で保持された上糸10が糸通しフックに引っ掛かる。
その後、フック機構83の糸通しフックが約90度、復方向に回動して縫針19の目孔19aから抜ける。このとき、目孔19aに上糸10が通され、その後、糸通し軸80が上昇して元の位置に復帰する。このような糸通しフックと縫針の作動については、特開2004−41355号公報の図16を参照のこと。
ここで、糸準備経路30について説明しておく。前述のように、糸準備経路30は、糸駒9から延びる上糸10を自動糸掛け装置16で複数の糸掛け部(糸調子器14、糸取りバネ15、天秤13、針棒糸案内18等)に糸掛け可能に準備する経路であり、この糸準備経路30への糸掛けは、予め縫製作業者による手動操作により、ミシンカバー35に形成された糸導入溝31から順次導入することで行われる。
図8、図17−1、図18−1に示すように、糸導前カバー35bの右端下部は左側へ凹む凹部36になっており、この凹部36から外部へ臨む糸掛け部材90,91が設けられている。ミシンカバー35内部には、第1ガイドフレーム52と糸掛け部材91の間に、受板92に上糸10を適度な押圧力で押圧可能な板状のプリテンショナー93が設けられ、その左側に縦向きの軸状糸掛け部材94が突設され、待機位置における第2糸移送部材61の右側の糸保持部61bの直ぐ下側且つ第2糸移送部材61の移動軌跡の右側に糸掛け部材95が設けられている。
この糸掛け部材95(図18−1参照)は、詳しくは図示しないが、第2糸移送部材61が移送開始されて、上糸10が両糸保持部61a,61bに糸掛けされるために、上糸10を所定位置に軽く一時的に係止させておく為の部材である。また、糸案内カバー35dと面板35fとの間のL形の導入溝部34dの縦溝部分に臨むように糸掛け部材96(図4参照)が設けられている。
糸準備経路30に掛けられた上糸10は次のようになる。上糸10は、糸駒9から左方へ延びて糸掛け部材90に上側から掛かり、糸掛け部材91の下部糸掛け部91aに下側から掛かって上方へ延び、糸掛け部材91の上突出糸掛け部91bに前側から掛かってその右側且つ後側を通って左方へ延びる。
上突出糸掛け部91bから左方へ延びる上糸10は、受板92とプリテンショナー93の間を通って、軸状糸掛け部94に後側から掛かり、続いて、糸引掛け位置の天秤13の導入案内部43に後側から掛かる。軸状糸掛け部94と導入案内部43の間の上糸10は、第1ガイドフレーム52の外周に沿って待機位置から糸渡し位置へ移動する第1糸移送部材51に前側から確実に掛かるような位置にある。
天秤13の導入案内部43に掛けられた上糸10は、前方且つ下方へ延びて糸掛け部材95に掛かって左方へ延び、糸掛け部材96の下部糸掛け部96aに掛かって上方へ延び、糸掛け部材96の上部糸保持部96bに掛かって保持され、上糸10の下流端は、糸掛け部材96に取り付けられたカッター97で切断された状態となる。
このように糸掛けした場合、糸掛け部材95,96の間の上糸10は、第2糸移送部材61の1対の糸保持部61a,61bの移動経路を横断し、第2糸移送部材61の1対の糸保持部61a,61bが待機位置から糸渡し位置へ移動する際に、これら1対の糸保持部61a,61bに確実に引っ掛かり、移送されることになる。
次に、このように構成されたミシンMの作用及び効果について説明する。ミシンMによる縫製途中で上糸10が切れた場合や、糸駒9を交換した場合には、前述した自動糸掛け装置16により上糸掛け操作を行う。そこで、自動糸掛けに際して、自動糸掛準備スイッチ23を操作して、糸引掛け位置に位置しない天秤13を自動的に糸引掛け位置に移動させて停止させる。
次に、糸駒9から延びる上糸10を、ミシンカバー35に形成された糸導入溝31に沿って、導入溝部34a→導入溝部34b→導入溝部34c→導入溝部34dの順に挿入し、最終的に、導入溝部34dの縦溝部分に臨む糸掛け部材96を上側から跨ぐようにUターンさせ、糸掛け部材96の上部糸保持部96bに掛かけて一時的に保持させておき、その下流側部分をカッター97で切断する。
このように、糸掛けのための前準備をしておくことにより、糸導入溝31に挿入された上糸10は、所定の糸準備経路30に予め掛け渡してあるため、天秤13や糸調子器14を含む複数の糸掛け部の各々に自動的に糸掛け可能な状態になっている。即ち、図17−1、図18−1、図19−1に示すように、糸準備経路30にセットされた上糸10は、特に、第1糸移送部材51の移動軌跡を横断し、糸引掛け位置の天秤13の導入案内部43に後側から掛かり、第2糸移送部材61の1対の糸保持部61a,61bの移動経路を横断した状態である
このとき、自動糸掛け開始スイッチ24を操作すると自動糸掛けが開始され、第1ステッピングモータ54と第2ステッピングモータ69とが略同時に駆動され、第1糸移送部材51による糸移送と、第2糸移送部材61による糸移送とが同時に開始される。
その後、図17−2、図18−2、図19−2に示すように、第1糸移送部材51の糸移送により、軸状糸掛け部94と天秤13の導入案内部43の間の上糸10が、糸引っ掛け部51aに引っ掛けられた状態で下方に移送される。
その後、第1糸移送部材51は上糸10を引っ掛けた状態で下方へ移動するとともに、第2糸移送部材61は上糸10を保持した状態で下方へ移動するとき、図17−3、図18−3、図19−3に示すように、第1,第2糸移送部材51,61の下方への移送により、糸駒9からの上糸10が糸調子器14を経て、第1,第2糸移送部材51,61の方へ引っ張られながら繰り出されるため、これら第1,第2糸移送部材51,61間の上糸10のうち、天秤13の導入案内部43に後側から掛けられた上糸10が、導入案内部43により天秤糸導入部42に案内され、天秤糸導入部42により天秤糸掛け部41に導入され糸掛けされる。
これと同時に、軸状糸掛け部材94から第1糸移送部材51へ延びる上糸10が、開状態の糸調子器13の糸調子皿14a,14bの間に糸掛けされる。更に、第1糸移送部材51が、図17−4、図18−4、図19−4に示すように、糸渡し位置に到達して糸移送が停止されたとき、糸引っ掛け部51aに引っ掛けられていた上糸10が、糸取りバネ15の直ぐ下側に移送されている。このとき、第2糸移送部材61は、糸渡し位置に達する手前の位置である。
それ故、第2糸移送部材61による糸移送が続行されているため、糸取りバネ15の直ぐ下側に移送されている上糸10が第2糸移送部材61側に引っ張られるため、図17−5、図18−5、図19−5に示すように、糸取りバネ15の直ぐ下側に移送されていた上糸10が切欠部52aに導入された後、糸取りバネ15に下側から糸掛けされる。
ところで、第2糸移送部材61が糸渡し位置に到達する直前に、つまり第2糸移送部材61による糸掛けの最終段階において、下降するラック形成部材68の下端が糸案内糸掛け機構70の第1リンク72の作動ピン72aを上側から下方に押圧するため、図17−6、図18−6、図19−6、図20−3に示すように、糸掛けフック部材76が針棒11の前側を通過して糸掛け位置に切換えられる。
それ故、前述したように、針棒糸案内18の近傍の上糸10は、下方程、針棒糸案内18側に接近するように移送されているため、鉛直面で揺動する糸掛けフック部材76のフック部76aに確実に捕捉され(図22−1〜図22−3参照)、糸掛けフック部材76が上糸10を捕捉した状態で針棒11の前側を移動して糸掛け位置に切換えられる切換え途中において、糸掛けフック部材76に捕捉された上糸10が針棒糸案内18に糸掛けされる。
そこで、糸掛けフック部材76による針棒糸案内18への糸掛けの様子を詳細に説明すると、先ず図23−1〜図23−3に示すように、糸掛けフック部材76の更なる回動により、捕捉された上糸10が更に上糸導入方向S(左方)に移動されるため、その上糸10は導入部26eにより導入されながら、上糸導入方向Sの上流側に位置する上側抜け防止部27aの湾曲状エッジ(屈曲開始端部)により、上糸導入方向Sの下流側に位置する下側抜け防止部27cよりも先に、導入部26eと協働して屈曲される。
次に、図24−1〜図24−3に示すように、糸掛けフック部材76の更なる回動により、捕捉された上糸10が更に上糸導入方向Sに移動されるため、その上糸10は上側抜け防止部27aの湾曲状エッジよりも上糸導入方向Sの下流側に位置する下側抜け防止部27cの湾曲状エッジ(屈曲開始端部)により、上側抜け防止部27aよりも遅れて、導入部26eと協働して屈曲される。
そして、最終的に、図25−1〜図25−3に示すように、糸掛けフック部材76の更なる回動により、糸掛けフック部材76に捕捉された上糸10が更に左方に移動されるため、上側及び下側先端部27b,27dによる屈曲が解除され、糸掛け部26fに糸掛けされる(図10参照)。
一方、自動糸掛け装置16に同期して自動糸通し機構17の糸通しガイド軸81が下降移動を開始しており、第2糸移送部材61が第2糸渡し位置に到達すると、糸通しスライダ82と一体的に糸通し軸80と糸通しガイド軸81が下降して、糸通しフックが縫針19の目孔19aと同じ高さ位置に達すると、糸通し軸80と糸通しガイド軸81の下降動作が停止する。
その後、糸通しスライダ82が下降することで、回動機構によりフック機構83の糸通しフックが鉛直軸回りに回動して縫針19の目穴19aを挿通し、第2糸移送部材61で保持されている上糸10が糸通しフックに引っ掛ける。その後、フック機構83の糸通しフックが逆方向へ回動して縫針19の目孔19aから抜けて、目孔19aに上糸10が通される。
その後、糸通しスライダ82、糸通し軸80、糸通しガイド軸81が夫々上昇して元の位置に復帰する。また、第1,第2糸移送部材51,61も夫々元の位置へ復帰する。それ故、この時点で、縫製に際して全ての糸掛け部への糸掛けが完了し、縫製可能な状態となる。
以上説明したように、ミシンMの上糸10を掛ける為の糸掛け部26fを有し且つ針棒11の下端部に設けられた針棒糸案内18において、針棒糸案内18の導入部26eと、抜け防止部材27とを設けたので、導入部26eを介して上糸10を糸掛け部26fへ導入する場合には、抜け防止部材27に何ら邪魔されることなく糸掛け部26fへ上糸10を容易に導入することができる一方、糸掛け部26fへ導入した上糸10は針棒糸案内18の上下両側に設けられた抜け防止部材27により、上糸10の針棒糸案内18からの糸抜けを確実に防止することができる。
また、抜け防止部材27は上側抜け防止部27aと下側抜け防止部27cとを有し、上側抜け防止部27aは導入部26eと協働して、糸掛け部26fに上糸10を導入する際に上糸10を屈曲させるように構成され、しかも下側抜け防止部27cは導入部26eと協働して、糸掛け部26fに上糸10を導入する際に上糸10を屈曲させるように構成されたので、糸掛けに供する上糸10を導入部26eと、上側抜け防止部27a及び下側抜け防止部27cとで夫々屈曲させながら容易に糸掛け部26fに導入でき、しかもその糸掛け部26fに一旦導入された上糸10は、縫製中の天秤13の下降時に弛んだ状態となるが、そのように弛んだ状態であっても導入時と同様に屈曲した状態になることは不可能であるため、簡単な構成でありながら、糸導入の確実性や糸抜け防止効果を高めることができる。
また、上側抜け防止部27aの上側先端部27bの湾曲状エッジである屈曲開始端部は導入部26eへの上糸導入方向Sにおいて、下側抜け防止部27cの湾曲状エッジである屈曲開始端部よりも所定寸法だけ上流側に設けられ、上側抜け防止部27aによる上糸10の屈曲開始時期を下側抜け防止部27cによる上糸10の屈曲開始時期よりも早めたので、上側抜け防止部27aと下側抜け防止部27cにより上糸10を同時に屈曲させる場合に比べて、上側抜け防止部27aにより上糸10を屈曲させてから、時間的に遅れて下側抜け防止部27cにより上糸10を屈曲させる方が、上糸10に対する導入抵抗を軽減させることができ、上糸10の糸導入の確実性を高めることができる。
また、導入部26eは針棒11と略平行な向きの上糸10を左方へ移動させて導入するように構成され、上側抜け防止部27aと下側抜け防止部27cは、上糸10の導入部26eへの導入に際して上糸10が屈曲により通過可能な所定隙間tを設けて導入部26eの一部に部分的に重なるように設けられたので、上糸10は、上側抜け防止部27aとこれに部分的に重なる導入部26eとで屈曲しながら所定隙間tを介して移動でき、しかも下側抜け防止部27cとこれに部分的に重なる導入部26eとで屈曲しながら所定隙間tを介して移動できるため、上糸10の導入部26eへの導入の確実性及び糸抜け効果を高めることができる。
また、針棒糸案内18は、上下に離隔して設けられた第1針棒糸案内26aと第2針棒糸案内26bを有し、抜け防止部材27は上側の第1針棒糸案内26aに設けられたので、縫製中の天秤13の下降時に、天秤13と上側の第1針棒糸案内26aとの間で上糸10が弛んだ場合でも、弛んだ上糸10に効果的に対処して糸抜けを確実に防止することができる。
次に、前記実施の形態の変更形態について説明する。
1〕図26に示すように、板状の抜け防止部材27Aの上側抜け防止部27aと下側抜け防止部27cとを、上糸10の通過が可能な所定隙間tに相当する板厚を有するスペーサ26Aを夫々介して糸案内本体26に固定するようにしてもよい。この場合、抜け防止部材27Aの先端部を曲げる曲げ加工を必要としない。
2〕図27に示すように、抜け防止部材27Aを構成する上側抜け防止部27aと下側抜け防止部27cの導入部26e側部分を部分的にクランク状に曲げ加工し、抜け防止部材27Aの先端部に、上糸10の通過が可能な所定隙間tを設けるようにしてもよい。
尚、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、例えば、針棒糸案内18等に、前記以外に種々の変更を付加して実施可能である。また、本発明は、家庭用、更には工業用の種々のミシンに適用することが可能である。