JPH0685682U - ミシンの針棒の糸掛け装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ミシンの針棒の糸掛け装置の提供。 【構成】 ミシンの針棒１の下端部に固定され、上糸Ｎ
Ｔを案内する糸掛止部３を有する針棒糸掛け具２と、該
針棒糸掛け具２の上方として、取付け位置を上下に調節
可能に該針棒１に取付けられ、上糸ＮＴを通す糸通し穴
６を有し、糸通し穴６を通る上糸ＮＴに糸通し穴６の周
縁を接触させて摩擦力を付与する補助糸掛け具５とを備
え、上糸ＮＴの糸掛止部３への掛止箇所と糸通し穴６へ
の接触箇所とが、平面視にてずれている。 【効果】 上糸の切断長さつまり針下長さを可及的に短
くして、縫い始めにおける上糸の針からの抜けが良好に
防止されるので、縫製物に残る上糸端部の見栄えを良好
に維持することと、糸抜けによる縫製ミスを防ぐことと
が両立する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、ミシンの針棒の糸掛け装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術及びその課題】

従来の例えば工業用本縫いミシンにおいて、針棒の下端部に針棒糸掛け具が備 えられている。この種のミシンにおいて、糸切断装置を備える場合、糸切断装置 によつて切断された上糸の針側に残る糸端は、次の縫製物の縫い始め箇所が見苦 しくならない範囲で可及的に短いことが望まれる。この理由から上糸の針側に残 る糸端を短くした場合、縫い始めに上糸が針穴から抜けてしまうことがある。特 に、回転天びん式高速千鳥縫いミシンにあつては、上糸が回転天びんによつて高 速かつ多量に引上げられるので、縫製物や糸の種類によつては縫い始めに上糸が 針の針穴から抜け易く、縫製不可能な状態を惹起する。従来の針棒糸掛け具は、 上糸のたるみを防止し、針穴に上糸を正確に案内する機能を有するのみであり、 上糸の抜けに対する抵抗作用は実質的に有していない。

【課題を解決するための手段】

【０００３】 本考案は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、その構 成は、ミシンの針棒１の下端部に固定され、上糸ＮＴを案内する糸掛止部３を有 する針棒糸掛け具２と、該針棒糸掛け具２の上方として、取付け位置を上下に調 節可能に該針棒１に取付けられ、上糸ＮＴを通す糸通し穴６を有し、糸通し穴６ を通る上糸ＮＴに糸通し穴６の周縁を接触させて摩擦力を付与する補助糸掛け具 ５とを備え、上糸ＮＴの糸掛止部３への掛止箇所Ａと糸通し穴６への接触箇所Ｂ とが、平面視にてずれていることを特徴とするミシンの針棒の糸掛け装置である 。 そして、補助糸掛け具５が、欠環状断面をなす取付け胴部５ａを有し、取付け 胴部５ａを針棒１の外周面に弾性的に挟着させることができる。

【作用】

【０００４】 縫製物に対する縫製が開始されれば、天びんの作用による上方への引張り力が 上糸ＮＴに作用する。しかして、上糸ＮＴは、針棒糸掛け具２の糸掛止部３を通 してあるのみならず、補助糸掛け具５の糸通し穴６を通してあるので、糸掛止部 ３及び糸通し穴６の周縁部との摩擦力によつて上方への引張り力に充分に対抗す ることができる。すなわち、補助糸掛け具５の糸通し穴６は、上糸ＮＴの糸掛止 部３への掛止箇所Ａと糸通し穴６への接触箇所Ｂとが、平面視にて所定量ずれて おり、上糸ＮＴが折れ曲がつて糸通し穴６と糸掛止部３とを連絡するので、上下 方向に延びる上糸ＮＴが折れ曲がつて延在する。従つて、上糸ＮＴが、糸通し穴 ６の周縁及び針棒糸掛け具２の糸掛止部３の側縁と確実に接触して摩擦する。

【０００５】 これにより、縫い始めにおける上糸ＮＴの針からの抜けが良好に防止される。 従つて、縫糸の切断長さ、つまり上糸ＮＴの針下長さを可及的に短くして、縫製 ミスを防ぐことができる。そして、補助糸掛け具５の取付け位置を上下に調節す ることにより、上糸ＮＴの糸掛止部３への掛止箇所Ａと糸通し穴６への接触箇所 Ｂとの間隔が変更され、上糸ＮＴの折れ曲がり状態が変化するので、縫製物や上 糸ＮＴの種類に応じて上糸ＮＴの摩擦力を増減調節することができる。

【０００６】 そして、補助糸掛け具５が、欠環状断面をなす取付け胴部５ａを有し、取付け 胴部５ａを針棒１の外周面に弾性的に挟着させて構成される場合には、胴部５ａ を針棒１の外周面に沿つて摺動させることにより、補助糸掛け具５の取付け位置 を上下に自由に調節することができる。

【実施例】

【０００７】 以下、本考案の実施例について説明する。 図１〜図４は、本考案の１実施例を示す。図中において符号１はミシンの針棒 を示し、針棒１は、垂直に配置され、図外のミシン上軸の回転運動が針棒クラン クを介して往復直線運動に変換されて上下に往復駆動されるものであり、円形断 面を有すると共に下端部の上糸ＮＴが近接する箇所は、斜めに切除して切除部１ ａを形成している。この針棒１の下端部には、針棒糸掛け具２が固定されると共 に、補助糸掛け具５が取付けられる。

【０００８】 針棒糸掛け具２は、図１に示すように円弧状断面をなす取付け部２ａと、取付 け部２ａの下端部をほぼ直角に折曲げて形成した糸案内部２ｂとを有し、取付け 部２ａには、複数個の通孔２ｃが形成され、糸案内部２ｂには、中央部に円形の 糸掛止部３が形成され、この糸掛止部３と取付け部２ａ側となる基端部とをＬ字 状に接続する糸導入路２ｄが形成されている。この糸掛止部３は、針８及び上糸 ＮＴを遊挿可能である。

【０００９】 このような針棒糸掛け具２は、図２に示すように円弧状断面をなす取付け部２ ａを針棒１の上糸ＮＴの延在側とは反対側に密着させ、いずれかの通孔２ｃに通 した止めねじ４によつて固着してある。このようにして針棒１に針棒糸掛け具２ を取付けた状態で、糸掛止部３は、針８を受入れると共に、糸導入路２ｄから挿 入した上糸ＮＴを掛止し、上糸ＮＴのたるみを防止し、針８の針穴８ａに上糸Ｎ Ｔを正確に案内する機能を有する。なお、止めねじ４は、針棒１の下端部から挿 入した針８の針棒１への止めを兼ねている。

【００１０】 一方、補助糸掛け具５は、開口部５ｃを有して欠環状断面をなす取付け胴部５ ａと、取付け胴部５ａの下端部から外側に傾斜して延びる接続部５ｄを介して下 方に延びる突出部５ｂとを有し、突出部５ｂには、円形の糸通し穴６が形成され ている。この補助糸掛け具５は、取付け胴部５ａを針棒１に外装させ、針棒１の 外周面を弾性的に挟み付けて取付けられ、人手によつて補助糸掛け具５を摺動さ せることにより、上下の取付け位置が調節可能である。また、取付け胴部５ａは 、１８０度を越える周方向長さを有すると共に、開口部５ｃは、針棒１に取付け た状態で図２に示すように針棒糸掛け具２の取付け部２ａと干渉しない大きさを 有している。更に、突出部５ｂは、外側に傾斜して延びる接続部５ｄを介して形 成されているので、針棒１に切除部１ａを形成したこととも相まつて、針棒１の 外周面との間に適当な隙間を形成し、後記するように上糸ＮＴを通した状態で、 上糸ＮＴと針棒１との干渉が防止されている。

【００１１】 しかして、針棒１に取付けた状態で、針棒糸掛け具２の糸掛止部３は、ほぼ上 下方向に開口し、補助糸掛け具５の糸通し穴６は、上糸ＮＴの延在方向（上下方 向）から傾斜する方向、具体的にはほぼ水平方向に開口し、糸掛止部３と糸通し 穴６とは空間において交差している。上糸ＮＴは、図外の糸巻きから回転天びん 、糸案内等を経て針棒１の側面に沿わせて上下方向に延在させ、補助糸掛け具５ の糸通し穴６に外側から通した後、針棒糸掛け具２の糸導入路２ｄから挿入し、 糸掛止部３に掛止させて通し、針８の針穴８ａを挿通させてある。従つて、上下 方向に延びる上糸ＮＴが糸通し穴６の上縁又は下縁と接触すると共に、針棒糸掛 け具２の糸掛止部３の側縁に掛止し、かつ、図４に示すように上糸ＮＴの糸掛止 部３への掛止箇所Ａと糸通し穴６への接触箇所Ｂとが、平面視にて所定量ずれて いる。

【００１２】 また、図２に示すようにミシンベッド１２に設けた針板１０の下方には、糸切 断装置１１が備えられる。糸切断装置１１は、一連の縫製終了後に一対の切断刃 が交差して、上糸ＮＴ及び下糸からなる縫糸を切断する機能を有し、従来公知の 構造を有している。

【００１３】 次に、作用について説明する。 上記構成のミシンの針棒の糸掛け装置によれば、一連の縫製終了後に糸切断装 置１１によつて上糸ＮＴ及び下糸が切断される。次いで、次の縫製物に対する縫 製が開始され、回転天びんの作用による上方への引張り力が上糸ＮＴに作用する 。しかして、上糸ＮＴは、針棒糸掛け具２の糸掛止部３を通してあるのみならず 、補助糸掛け具５の糸通し穴６を通してあるので、糸掛止部３及び糸通し穴６の 周縁部との摩擦力によつて上方への引張り力に充分に対抗することができる。す なわち、補助糸掛け具５の糸通し穴６は、ほぼ水平方向を向いて開口しているの で、上下方向に延びる上糸ＮＴが糸通し穴６の接触箇所Ｂである上縁又は下縁並 びに針棒糸掛け具２の糸掛止部３の掛止箇所Ａである側縁と摩擦することが可能 である。更に、上糸ＮＴの糸掛止部３への掛止箇所Ａと糸通し穴６への接触箇所 Ｂとが、平面視にて所定量ずれているので、上糸ＮＴが折れ曲がつて糸通し穴６ と糸掛止部３とを連絡する。従つて、上糸ＮＴが、糸通し穴６の接触箇所Ｂ並び に針棒糸掛け具２の糸掛止部３の掛止箇所Ａと確実に接触し、上糸ＮＴの急激な 移動に対して比較的大きな摩擦力を生ずる。

【００１４】 これにより、縫い始めにおける針８の針穴８ａからの上糸ＮＴの抜けが良好に 防止される。その結果、糸切断装置１１による縫糸の切断長さ、特に上糸ＮＴの 切断長さつまり針下長さを可及的に短くして、糸抜けによる縫製ミスを防ぐこと ができる。

【００１５】 図３は、補助糸掛け具５の針棒１への取付け位置を変更した状態を示す。取付 け胴部５ａを把持し、補助糸掛け具５を針棒１に沿つて下方に摺動させ、補助糸 掛け具５の針棒１への取付け位置を変更することにより、針棒糸掛け具２の糸掛 止部３に対して補助糸掛け具５の糸通し穴６が接近する。これにより、上糸ＮＴ の糸通し穴６の下縁との摩擦力は減少するが、上糸ＮＴの折れ曲がりが大きくな り、糸通し穴６の上縁及び針棒糸掛け具２の糸掛止部３の側縁との摩擦力が大き く増大するので、上糸ＮＴに作用する摩擦力が全体として増大する。その結果、 上糸ＮＴの通過抵抗が増大し、上糸ＮＴが抜け難くなる。このようにして、補助 糸掛け具５の針棒１への取付け位置を高低変更することにより、上糸ＮＴに作用 する摩擦力を増減調節することが可能である。かくして、上糸ＮＴの針８側への 定常的な供給に際する抵抗を可及的に抑制しつつ、縫製物や上糸ＮＴの種類に応 じて、抜けに対する適当な摩擦力を上糸ＮＴに与えることができる。

【００１６】 ところで、上記の実施例にあつては補助糸掛け具５の糸通し穴６を円形孔にて 形成し、糸通し穴６に上糸ＮＴを上側から通すようにしたが、糸通し穴６に接続 する径方向の糸導入路を形成し、上糸ＮＴを糸導入路から挿入するようにしても よい。

【考案の効果】

【００１７】 以上の説明によつて理解されるように、本考案に係るミシンの針棒の糸掛け装 置によれば、上糸の針下長さを可及的に短くして、縫い始めにおける上糸の針か らの抜けが良好に防止されるので、縫製物に残る上糸端部の見栄えを良好に維持 することと、縫製ミスを防ぐこととが簡素な構造によつて両立する。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の１実施例に係るミシンの針棒の糸掛
け装置を分解して示す斜視図。

【図２】 同じく取付け状態を示す図。

【図３】 同じく作用説明図。

【図４】 同じく糸掛止部の掛止箇所と糸通し穴の接触
箇所との関係を平面視にて示す図。

【符号の説明】

１：針棒、２：針棒糸掛け具、２ａ：取付け部、２ｂ：
糸案内部、２ｄ：糸導入路、３：糸掛止部、４：止めね
じ、５：補助糸掛け具、５ａ：取付け胴部、５ｂ：突出
部、５ｃ：開口部、６：糸通し穴、８：針、８ａ：針
穴、１０：針板、１１：糸切断装置、ＮＴ：上糸、Ａ：
掛止箇所、Ｂ：接触箇所。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ミシンの針棒の下端部に固定され、上糸
   を案内する糸掛止部を有する針棒糸掛け具と、該針棒糸
   掛け具の上方として、取付け位置を上下に調節可能に該
   針棒に取付けられ、上糸を通す糸通し穴を有し、糸通し
   穴を通る上糸に糸通し穴の周縁を接触させて摩擦力を付
   与する補助糸掛け具とを備え、上糸の糸掛止部への掛止
   箇所と糸通し穴への接触箇所とが、平面視にてずれてい
   ることを特徴とするミシンの針棒の糸掛け装置。
2. 【請求項２】 補助糸掛け具が、欠環状断面をなす取付
   け胴部を有し、取付け胴部が針棒の外周面に弾性的に挟
   着されることを特徴とする請求項１のミシンの針棒の糸
   掛け装置。