JP2006014684A - 発酵機能茶 - Google Patents

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Abstract

【課題】 香りを楽しむことができると同時に、茶葉中の機能性物質を増大させた機能茶を提供すること。
【解決手段】 青殺後の茶葉、粗揉後の茶葉、揉捻後の茶葉、中揉後の茶葉、精揉後の茶葉または荒茶を25〜80重量%の水分を含むように調整し、真菌類の作用により発酵させ、次いで加熱乾燥させることにより得られる発酵機能茶。
【選択図】なし

Description

本発明は、茶葉由来のカテキン類やテアニン等の機能性物質を損失することなく、真菌類の発酵により新たな機能性や好ましい香気を獲得した発酵機能茶に関する。
発酵により香味を付与した茶には、発酵茶としての紅茶および半発酵茶としてのウーロン茶がある。これらは、茶の生葉を萎凋することにより茶葉中の酵素で発酵させ、好ましい香気と特有の色調を発生させる。しかし、これらは、発酵と同時に茶葉中の機能性物質であるテアニンやカテキン類が減少するとともに、茶葉の緑色は失われ褐色に変化する。
一方、香りを楽しむ茶ではないが、機能性をもたせるために、茶葉を微生物で発酵させたものも少量ではあるが、中国や日本各地でつくられている。プアール茶、阿波番茶、石鎚碁石茶、富山黒茶等の伝統的な後発酵茶が挙げられる。しかしながら、これらは漬物に似た雑駁な製法であるため、微生物管理が皆無であり、通常は漬物臭があり、また劣悪でカビ臭のあるものが多く、とても香りを楽しめるものではない。加えて、これらが有する機能性についても明確でなく、発酵期間も数年に及ぶものもあり、品質的および経済的に問題がある。
また、発酵により機能性物質を増加させた茶としてギャバロン茶がある。これは、茶葉のもつ酵素でグルタミン酸をGABA(γ−アミノ酪酸)に変換したものであり、商品化されている。ただし、その製造には生葉を用いるので、時間的制約と大掛かりな製茶設備一式を必要とする。さらに、製造中に他の酵素の作用で、茶葉に褐変や好ましくない異臭が生じ、品質の低下が起こる。
このように従来は、発酵処理により茶葉に香味を付与するか、茶葉の機能性を高めるかの何れかであり、香りを楽しむことができると同時に、茶葉中の機能性物質を増大させた茶はこれまでに得られていない。
上記事情に鑑み、本発明は、香りを楽しむことができると同時に、茶葉中の機能性物質を増大させた機能茶を提供することを目的とする。なお、茶は、葉に含まれるカテキン類の抗癌作用やテアニンの精神安定作用などの機能性が近年注目され、嗜好性飲料であると同時に機能性飲料としても注目されている。加えて今日、機能性飲料の需要や消費が高まっていることもあり、上記課題を解決することが切望される。
上記課題を解決するために検討を重ね、本発明者は、以下のことを見出した。
(1)茶葉はその含有成分であるカテキンにより抗菌性を有しており、そのため、他の穀物(大豆や米)を製麹するときに頻繁に現れ腐敗の原因となる納豆菌やミクロコッカス属等の汚染菌類は、茶葉を製麹するときにはカテキン類による生育阻害を受け、茶葉表面でまったく繁殖しないのに対し、真菌類は茶葉表面で繁殖可能であることを見出した。
(2)また、茶葉表面における真菌類の培養は、所定量の水分を含有する青殺後の茶葉、粗揉後の茶葉、揉捻後の茶葉、中揉後の茶葉、精揉後の茶葉(以上を青殺後の中間品の茶葉という)または荒茶を用いることにより、真菌類の良好かつ優先的な繁殖が可能になることを見出した。すなわち、これらの茶葉は、重量に対する容積比が大きいため、茶葉の水分が適度に分散し、その結果、荒茶表面における真菌類の良好な繁殖が可能になることを見出した。また、水分量を制限することにより、乾燥に比較的強い真菌類のみが優先的に繁殖可能であることを見出した。
(3)また、従来の発酵茶、半発酵茶、後発酵茶はいずれも、発酵によりテアニンやカテキン類が大幅に減少するのに対し、真菌類による発酵は、茶葉由来のテアニンやカテキン等の機能性物質を分解しないことを見出した。
(4)加えて、茶葉に増殖させることが可能になった真菌類は何れも、細胞壁の構成成分としてβ-1,3/1,6-グルカンやキチン等の機能性多糖類を多量に含んでいること、また、真菌類による発酵は、菌株の選択により、茶葉に含まれるグルタミン酸をγ−アミノ酪酸(機能性物質)に変化させることが可能であることを見出した。
(5)さらに、真菌類による発酵は、茶葉の良好な香りを高めることができること、すなわち、芳香性エステルを生成させたり、特定の真菌類が有するβ−グリコシダーゼの作用により、茶葉に元々含まれる配糖体の糖を分離させ、花や果実様の香りを発現させたりすることを見出した。
以上述べたとおり、特定の真菌類を接種して茶葉を発酵させることにより、茶葉由来のテアニンやカテキン等の機能性物質を分解することなく、更なる機能性と好ましい香気を茶葉に付与することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
[1] 青殺後の茶葉、粗揉後の茶葉、揉捻後の茶葉、中揉後の茶葉、精揉後の茶葉または荒茶を25〜80重量%の水分を含むように調整し、真菌類の作用により発酵させ、次いで加熱乾燥させることにより得られる発酵機能茶。
[2] [1]に記載の発酵機能茶であって、砂糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖または蜂蜜の存在下で発酵させることにより得られる発酵機能茶。
[3] [1]または[2]に記載の発酵機能茶であって、茶抽出物の存在下で発酵させることにより得られる発酵機能茶。
[4] [1]〜[3]の何れか1に記載の発酵機能茶であって、グルタミン酸またはグルタミン酸ソーダの存在下で発酵させることにより得られる発酵機能茶。
[5] [1]〜[4]の何れか1に記載の発酵機能茶であって、β−グリコシダーゼの存在下で発酵させることにより得られる発酵機能茶。
[6] 青殺後の茶葉、粗揉後の茶葉、揉捻後の茶葉、中揉後の茶葉、精揉後の茶葉または荒茶を25〜80重量%の水分を含むように調整し、真菌類の作用により発酵させ、次いで加熱乾燥させることを特徴とする、発酵機能茶の製造方法。
[7] [1]〜[5]の何れか1に記載の発酵機能茶であって、加熱乾燥後に、更に微粉砕することにより得られる発酵機能茶。
本発明では、所定量の水分を含有する青殺後の中間品の茶葉または荒茶を用いることにより、茶葉表面における優先的かつ良好な真菌類の培養を可能にし、これにより、茶葉由来のテアニンやカテキン等の機能性物質を失うことなく、β-1,3/1,6-グルカン、キチン、γ−アミノ酪酸等の機能性物質や良好な香りを新たに獲得した発酵機能茶を製造することが可能である。このように本発明は、香りを楽しむことができると同時に、茶葉中の機能性物質を保持し、かつ増大させた機能茶を製造可能にした点において優れている。
また、本発明の発酵機能茶を製造する条件下では、腐敗の原因となる汚染菌類は生育阻害を受けるため、真菌類のみが繁殖した清浄な発酵茶が得ることが可能である。更に、本発明の発酵機能茶は、青殺後の中間品の茶葉または荒茶を原料として用いているため生葉の酵素は失活しており、発酵処理中に茶葉が褐変することもなく色調も好ましい。
以下、本発明の発酵機能茶を、その製法により詳細に説明する。
まず、青殺後の茶葉、粗揉後の茶葉、揉捻後の茶葉、中揉後の茶葉、精揉後の茶葉または荒茶を25〜80重量%の水分を含むように調整する。ここで原料の茶葉が「青殺後の茶葉、粗揉後の茶葉、揉捻後の茶葉、中揉後の茶葉」である場合、それを水分調整することなくそのまま使用してもよい。また、原料の茶葉が「精揉後の茶葉または荒茶」である場合一般に、水分を加えることにより所定の水分を含むように調整する。本発明では、好ましくは荒茶を原料として使用する。
本明細書において「荒茶」とは、摘み取った緑茶の葉を蒸して揉んだ後乾燥させたもの、すなわち茶農家が生産し、仕上げ・火入れする前の茶を指し、本発明では、荒茶として市場で流通している任意のものを使用することができる。また、「青殺後の茶葉、粗揉後の茶葉、揉捻後の茶葉、中揉後の茶葉、精揉後の茶葉」とは、荒茶の一般的な製造工程の途中の茶葉を指し、これらを本明細書において「青殺後の中間品の茶葉」ともいう。
茶葉の水分調整について、「荒茶」を使用した場合を例に以下説明する。「荒茶」は、約3〜5重量%の水分を既に含んでいる。よって、加える水分量は、茶葉が含んでいる水分を考慮して調整する必要がある。例えば、5重量%の水分を含む「原料の荒茶」1kgに、357mLの水を加えることにより、「約30重量%の水分を含むように調整された荒茶」が得られる。あるいは、「25〜80重量%の水分を含むように調整された茶葉」は、乾燥時間を短縮し、所望の水分含量まで乾燥させることにより調製することも可能である。
ここで水分含量は、発酵に用いる真菌類が繁殖、発酵可能な量であり、低水分含量から高水分含量まで広い範囲で可能であるが、好ましくは後の乾燥工程を簡便にするため低い水分含量に設定される。低い水分含量は、後の乾燥工程を簡便にすることができるとともに、乾燥に比較的強い真菌類を優先的に繁殖させるので、雑菌汚染を防止することができる。本発明では、比較的低い水分含量で真菌類が繁殖、発酵可能であることが判ったため、「25〜80重量%の水分を含むように調整された茶葉」が使用され、好ましくは「25〜50重量%の水分を含むように調整された茶葉」、より好ましくは「30〜35重量%の水分を含むように調整された茶葉」が使用される。
本発明において青殺後の中間品の茶葉以外に、「荒茶」を使用する理由は、(1)原料として長時間貯蔵できること、(2)褐変酵素など不要な酵素類を含まないこと、(3)茶葉の重量に対する容積比が大きいため、水分を茶葉に適度に分散させることができ、このことが真菌類の繁殖に適していることを本発明において見出したことが挙げられる。
本発明において、茶葉を発酵させるために使用される「真菌類」は、以下のa)〜c)の性質を備えた真菌を好ましく選抜することができる。a)茶葉が有するテアニンやカテキン類の分解能が低いこと、b)β-1,3/1,6-グルカン、キチン、γ−アミノ酪酸等の機能性物質の生成能が高いこと、c)茶葉として好ましい香気物質の生産能が高いこと(すなわち、芳香性エステルの生産能や、β−グリコシダーゼを持ち、茶葉に本来含まれる配糖体から糖を分離して、花や果実様の香りを発生させる能力が高いこと)。
上記性質を備えた真菌は、食品(例えば醸造食品や発酵食品)に使用可能な安全な真菌のなかから選抜することが可能であり、本発明では発酵、醸造、きのこ栽培用に使用されている保存菌株や市販種菌株のなかからこのような真菌を選抜した。また、本発明では、茶葉に生育しやすい菌株として、茶の花や新芽から菌株を分離し、そのなかから、茶葉が有するテアニンやカテキン類の分解能が低く、かつ茶葉として好ましい香気物質の生成能およびβ-1,3/1,6-グルカン、キチン、γ−アミノ酪酸等の機能性物質の生成能が高い真菌を選抜した。
本発明で使用可能な真菌として、具体的には、Saccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Candida属、Torulopsis属、Mycotorula属、Oidium属、Debariomyces属、Phaffia属、Aureobasidium属、Aspergillus属、Eurotium属、Rhizopus属、Mucor属、Monascus属、Pleurotus属、Armillaria属、Lentinus属、Ganoderma属、Pholiota属、Flammulina属、Agaricus属、Grifola属、Schizophyllum属の菌株が挙げられ、より具体的には、Saccharomyces cerevisiae、S. carlsbergensis、S. rouxii、Baker’s yeast、Wine yeast、Schizosaccharomyces pombe、Candida utilis、C. tropicalis、Torulopsis utilis、T. pulcherima、Mycotorula japonica、Oidium lactis、Debariomyces hansenii、Phaffia rhodozyma、Aureobasidium pullulans、Aspergillus oryzae、A. usamii、A. sirousamii、A. niger、A. kawachi、A. awamori、A. sojae、Eurotium repens、Rhizopus oligosporus、R. javanicus、Mucor rouxii、Monascus anka、M. purpureus、Pleurotus ostreatus、Armillaria mellea、Lentinus edodes、Ganoderma lucidum、Pholiota nameko、Flammulina velutipes、Agaricus blazei Murill、A. bisporus、Grifola frondosa、Schizophyllum communeが挙げられる。これら菌株は、IFO、IAM、ATCC、NRRC等の菌株分譲機関、日本醸造協会(清酒酵母等)や市販の種菌株販売会社、例えば、株式会社菱六(種麹販売)、森産業株式会社(きのこの種菌販売)等から入手可能である。
上記列挙した真菌は、上述のa)〜c)の性質、すなわち
a)茶葉が有するテアニンやカテキン類の分解能が低い性質、
b)β-1,3/1,6-グルカン、キチン、γ−アミノ酪酸等の機能性物質の生成能が高い性質、
c)茶葉として好ましい香気物質の生産能が高い性質(すなわち、芳香性エステルの生産能や、β−グリコシダーゼを持ち、茶葉に本来含まれる配糖体から糖を分離して、花や果実様の香りを発生させる能力が高い性質)
を保持する。
ただし、真菌の種類に応じて、各真菌が保持する性質a)〜c)の詳細は、異なる。すなわち、β-1,3/1,6-グルカン、キチン等の機能性多糖類の生成は、上記すべての真菌に共通する性質であるが、γ−アミノ酪酸の生成は、特定の真菌のみが有する性質である。また、芳香性エステルの生産は、上記すべての真菌に共通する性質であるが、花や果実様の香りを発生させる能力は、特定の真菌のみが有する性質である。
よって、γ−アミノ酪酸の生成能を有している真菌は、本発明において特に好ましいものとして使用することができ、このような真菌としては、Wine yeast、Candida utilis、C. tropicalis、Torulopsis utilis、T. pulcherima、Debariomyces hansenii、Aspergillus oryzae、A. usamii、A. sirousamii、A. niger、A. kawachi、Eurotium repens、Monascus anka、M. purpureus、Agaricus blazei Murillが挙げられる。また、β−グリコシダーゼ活性を有し、花、果実様の香気を生成可能である真菌も、本発明において特に好ましいものとして使用することができ、このような真菌としては、Saccharomyces cerevisiae、S. carlsbergensis、S. rouxii、Baker’s yeast、Wine yeast、Schizosaccharomyces pombe、Candida utilis、C. tropicalis、Torulopsis utilis、T. pulcherima、Mycotorula japonica、Oidium lactis、Debariomyces hansenii、Phaffia rhodozyma、Aureobasidium pullulans、Aspergillus oryzae、A. usamii、A. sirousamii、A. kawachi、A. awamori、Eurotium repens、Rhizopus javanicusが挙げられる。
本発明で発酵に「真菌類」を使用する理由は、茶葉に含まれるカテキン類の抗菌性が、細菌に対して効果を発揮し細菌の生育を阻害するのに対し、真菌類に対してその効果は弱く、そのため茶葉表面において真菌類が繁殖可能であることを本発明において見出したため、さらに、全ての真菌類の細胞壁が機能性多糖類であるβ-1,3/1,6-グルカンとキチンを含有しており、これらの物質が免疫活性を高め、また、食物繊維として整腸作用や血糖値上昇抑制作用を持つといわれるためである。
本発明において発酵は、上述のとおり水分含量を調製された荒茶に上記真菌類を接種し、一般に20〜50℃、好ましくは20〜40℃で2〜5日間、真菌類を繁殖させることにより行うことができる。
発酵工程を経た茶葉は、80〜120℃で加熱乾燥し、真菌類を殺菌するとともに、水分含量を5重量%以下(一般に3〜5重量%)にする。これにより、本発明の発酵機能茶が製造される。
得られた本発明の発酵機能茶は、加熱乾燥後に微粉砕してもよい。微粉砕は、一般には、石臼、ミル等の粉砕機により、粒径10ミクロン以下、好ましくは数ミクロン以下まで行う。茶葉を微粉砕することにより、真菌類の細胞壁に含有されるβ−グルカンの体内への吸収が高まるという利点を有する。
本発明の発酵機能茶は、後述の実施例で実証されるとおり、茶葉由来の機能性物質を保持し、かつ発酵により茶としての優れた香気や高まった機能性を獲得している。このように本発明の発酵機能茶は、発酵により、1)茶葉由来のカテキン類やテアニンなどの機能性物質が分解されることなく保持され、2)新たに、真菌類の繁殖により、菌体細胞壁の構成成分であるβ-1,3/1,6-グルカンやキチン等の機能性多糖類が多量に含まれ、免疫賦活作用、食物繊維としての血糖値上昇抑制作用や整腸作用などの機能性を示し、3)さらに、菌株を選択すれば、茶葉に含まれるグルタミン酸がγ−アミノ酪酸に変換されるため、抗癌作用、血圧上昇抑制作用、および精神安定作用などの機能性において優れている上に、4)香りもよい。
本発明の好ましい態様において、茶葉を発酵する際に以下のものを添加する。一つの好ましい態様において、任意の糖、好ましくは単糖類または二糖類、例えば砂糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖または蜂蜜を発酵時に添加する(後述の実施例2参照)。糖の添加量は、茶葉3kg、水1Lに対し、およそ0.01〜1molとすることができる。
糖を添加して、真菌類による茶葉の発酵を行うと、真菌類の生育が良好になると同時に発酵が促進され、エタノールの生成が顕著になり、官能評価で更に良好な結果が得られる。これは、エタノールのエステル類が生成したためと思われる。
また、別の好ましい態様において、茶抽出物を発酵時に添加する(後述の実施例2参照)。茶抽出物とは、緑茶葉を温水等の溶剤で抽出することにより得られた茶抽出液、あるいは緑茶葉を温水等の溶剤で抽出し、その抽出液を賦形剤等と共にスプレードライ乾燥させた茶抽出乾燥物などの任意の茶抽出物を指し、例えば市販のインスタントティーを使用することができる。茶抽出物の添加量については、茶葉3kg、水1Lに対し、緑茶葉の抽出乾燥物を、およそ3〜300gとすることができる。
茶抽出物を添加して真菌類による茶葉の発酵を行うと、真菌類の生育が良好となり、β-1,3/1,6-グルカンやキチン等の機能性多糖類が増加すると同時に、エタノールの生成が顕著になり、官能評価で更に良好な結果が得られる。これは、エタノールのエステル類が生成したためと、茶抽出物の添加により茶葉の香り配糖体の濃度が高まり、真菌類のβ−グリコシダーゼの作用により、花や果実様の香りの発現率が高まったためと思われる。このように茶抽出物を茶葉に添加してカテキン濃度を更に高めても、当該茶葉において真菌類が繁殖可能であることは、驚くべきことである。
また、別の好ましい態様において、グルタミン酸またはグルタミン酸ソーダを発酵時に添加する。グルタミン酸またはグルタミン酸ソーダの添加量は、グルタミン酸に換算して、茶葉3kg、水1Lに対し、およそ0.003〜0.3 molとすることができる。
グルタミン酸またはグルタミン酸ソーダを上記添加量で添加して真菌類による茶葉の発酵を行う(30℃で48時間)と、グルタミン酸のアルファー位のカルボキシル基が脱炭酸され、γ−アミノ酪酸が10〜40 mg%生成するという効果が得られる(ここで、mg%は、茶葉培養物の重量を100%としたときの重量%の1/1000をさす)。この効果は、上述のγ−アミノ酪酸の生成能を有する真菌を用いた場合、顕著に得られる。
更に、別の好ましい態様において、β−グリコシダーゼの存在下で発酵を行う。「β−グリコシダーゼの存在下」とは、β−グリコシダーゼを添加した条件下であってもよいし、真菌類が当該酵素の活性を有している場合、当該酵素を添加していない条件下であってもよい。なお、真菌類が有している活性を補うために当該酵素を添加してもよい。β−グリコシダーゼの添加量は、茶葉3kg、水1Lに対し、およそ0.01〜1U(ユニット)とすることができる。
β−グリコシダーゼの存在下で真菌類による茶葉の発酵を行うと、β−グリコシダーゼの作用により、茶葉に含まれる配糖体から糖を分離し、花、果実様の香りを生成するという効果が得られる。この効果は、上述のβ−グリコシダーゼ活性を有する真菌を用いた場合、顕著に得られる。
[実施例1]
「荒茶」の葉(福寿園研究茶園の生葉を製茶したもの)3kgに水1Lを混合し、28重量%の水分を含む「水分含有荒茶」を調製した。これに、ドライイースト(日清製粉製、商品名カメリヤ)1gを接種し、10Lのステンレス容器に入れ、静置培養で、30℃で48時間発酵させた。茶葉成分の分析は、全窒素、タンニン、テアニン、ビタミンC、食物繊維については、静岡精機製の近赤外分光分析法による茶成分分析計で測定した。エタノールについてはガスクロマトグラフィーにより測定した。β−グルカンは、日本バイオコン株式会社製のβ−グルカン測定キットで測定した。発生した香気は、官能により評価した。香気は、5人のパネラーが、茶葉2gの熱湯100 mLの抽出液について、花や果物様の香気の有(+)、無(−)を官能審査した。
各成分の分析結果を、表1に「水分含有荒茶」の重量に対する重量%で示す。香気発生については、官能評価の結果を有無で示す。
発酵処理した茶葉において、アミノ酸など味の基本物質を示す全窒素、および機能性物質であるタンニン、テアニン、ビタミンCは、ブランクの原茶葉の含量と同じであった。このことは、酵母の発酵によっても、茶葉中の機能性物質は、発酵前の茶葉のまま残存することを示している。一方、酵母菌体の増殖により、機能性をもつ食物繊維とβ−グルカンはともに増加し、β−グルカンは、ブランクの原茶葉は0であったものが、発酵により酵母発酵機能茶では0.2%に増加した。また香気については、酵母の発酵による香気、および花や果実様の香気が生じた。
Figure 2006014684
[実施例2]
「荒茶」の葉3kgと水1Lに、蜂蜜(日新蜂蜜株式会社)、砂糖(大日本製糖)、茶抽出物(茶抽出物粉末;佐藤工業)の何れか一を150g溶かした溶液(約1130 mL)を添加し、ドライイースト1gを接種し、静置培養で、30℃で48時間発酵させた。蜂蜜、砂糖、茶抽出物を添加した以外は、実施例1と同様に発酵処理を行い、茶成分の分析も、実施例1と同様にして行った。
分析結果を表2に示す。また、各発酵時間における酵母数を表3に示す。酵母数は、ポテトデキストロース寒天培地を用いて希釈平板培養法により測定した。
糖分または茶抽出物の添加により、酵母の生育は良好となった。また、蜂蜜、砂糖、茶抽出物の何れを添加して発酵処理を行った茶葉においても、アミノ酸など味の基本物質を示す全窒素、および機能性物質であるタンニン、テアニン、ビタミンCは、ブランクの原茶葉の含量と同じであった。このことは、酵母の発酵によっても、茶葉中の機能性物質は、発酵前の茶葉のまま残存することを示している。一方、酵母菌体の増殖により、機能性を持つ食物繊維とβ−グルカンはともに増加し、β−グルカンは、ブランクの原茶葉は0であったものが、発酵により酵母発酵機能茶では0.3〜0.5%に増加した。また香気については、酵母の発酵による香気、および花や果実様の香気が生じた。また、蜂蜜、砂糖、茶抽出物の何れを添加した場合も、酵母の発酵による香気、および花や果実様の香気が生じた。
Figure 2006014684
Figure 2006014684
[実施例3]
荒茶の葉3kgに水1Lを混合し、焼酎用の種麹A. sirousamii(株式会社菱六より入手)1gを接種し、ヤエガキ醸造製の自動製麹装置を用い、30〜40℃で48時間発酵させ、麹菌の発酵機能茶を製造した。焼酎用の種麹A. sirousamiiを用いた以外は、実施例1と同様に発酵処理を行い、茶成分の分析も実施例1と同様にして行った。γ−アミノ酪酸は、液体クロマトグラフィーにより分析した。
その結果を表4に示す。アミノ酸など味の基本物質を示す全窒素、および機能性物質であるタンニン、テアニン、ビタミンCは、ブランクの原茶葉の含量と同じであった。また、機能性を有するγ−アミノ酪酸は、ブランクに比べて4.5倍に増大した。また、機能性を有する食物繊維およびβ−グルカンは、麹菌の増殖により増大し、β−グルカンは、ブランクの原茶葉は0であったものが、発酵により麹菌発酵機能茶では0.7%に増加した。官能評価では、麹菌の発酵による香気、および花や果実様の香気が生じた。
Figure 2006014684

Claims (7)

  1. 青殺後の茶葉、粗揉後の茶葉、揉捻後の茶葉、中揉後の茶葉、精揉後の茶葉または荒茶を25〜80重量%の水分を含むように調整し、真菌類の作用により発酵させ、次いで加熱乾燥させることにより得られる発酵機能茶。
  2. 請求項1に記載の発酵機能茶であって、砂糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖または蜂蜜の存在下で発酵させることにより得られる発酵機能茶。
  3. 請求項1または2に記載の発酵機能茶であって、茶抽出物の存在下で発酵させることにより得られる発酵機能茶。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の発酵機能茶であって、グルタミン酸またはグルタミン酸ソーダの存在下で発酵させることにより得られる発酵機能茶。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の発酵機能茶であって、β−グリコシダーゼの存在下で発酵させることにより得られる発酵機能茶。
  6. 青殺後の茶葉、粗揉後の茶葉、揉捻後の茶葉、中揉後の茶葉、精揉後の茶葉または荒茶を25〜80重量%の水分を含むように調整し、真菌類の作用により発酵させ、次いで加熱乾燥させることを特徴とする、発酵機能茶の製造方法。
  7. 請求項1〜5の何れか1項に記載の発酵機能茶であって、加熱乾燥後に、更に微粉砕することにより得られる発酵機能茶。
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