JP2006011380A - 眼用レンズ材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ホスホリルコリン基含有化合物を眼用レンズ材料に反応させる後処理によって、特定構造のホスホリルコリン基を眼用レンズ材料表面に共有結合させたことを特徴とする眼用レンズ材料である。
【選択図】 図3
Description
式中、mは2〜6、nは1〜4である。また式(6)の−NH−は−O−でも良い。
X1、X2、X3は、それぞれ単独に、メトキシ基、エトキシ基またはハロゲンである。ただし、X1、X2、X3のうち、2つまではメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基のいずれでも良い。
Rは下記式(2)〜(4)中の構造のいずれかである(ただし、下記式(2)〜(4)構造において、式(1)の化合物をA−R−Bで表す)。
式(2)〜(4)中、Lは1〜6、Pは0〜3を表す。
式中、mは2〜6、nは1〜4である。また式(6)の−NH−は−O−でも良い。X1、X2、X3は、それぞれ単独に、メトキシ基、エトキシ基またはハロゲンである。ただし、X1、X2、X3のうち、2つまではメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基のいずれでも良い。
本発明において眼用レンズ材料とは、眼の中に装着する材料の成型物である。主にはコンタクトレンズである。
いかなる材質のコンタクトレンズでも良い。例えば、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸(AA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)、ビニルアルコール(VA)、メチルメタクリレート(MMA)、トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、フルオロシリコーン、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、パーフルオロアルキルメタクリレート、シロキサニルメタクリレート(SiMA)、シロキサニルスチレン(SiSt)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、アリルメタクリレート(AMA)、シリコンマクロマー等の重合体若しくは二種以上のモノマーの共重合体から構成されるコンタクトレンズから、本発明のコンタクトレンズを製造することが可能である。本発明は、モノマーの種類に関係なく、またハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズのどちらにも利用出来る。
また、コンタクトレンズを構成するモノマーとして、ビニルアルコールまたはN−ビニルピロリドンを主成分若しくは共重合成分とするコンタクトレンズも、本発明の方法によって好ましく処理される。
さらに、コンタクトレンズを構成するモノマーとして、(メタ)アクリル酸メチルを主成分とするハードコンタクトレンズ、特に蛋白質が吸着しやすい酸素透過性や連続装用のハードコンタクトレンズも、本発明の方法によって好ましく処理される。
しかし、これらの官能基を有していなくても、プラズマ処理によりコンタクトレンズ表面に共有結合可能な水酸基を導入することが可能である。例えば、N−ビニルピロリドン重合体からなるコンタクトレンズはプラズマ処理により水酸基を導入し、本発明のコンタクトレンズを製造することが可能である。
眼用レンズ材料のコンタクトレンズ表面の水酸基に、式(1)、または(5)若しくは(6)のホスホリルコリン基含有化合物を、共有結合によってその表面に結合させる。
共有結合させる水酸基は、コンタクトレンズ構成モノマーの水酸基、又は、新たに後からコンタクトレンズ表面にプラズマ処理等により導入した水酸基である。
これにより、ホスホリルコリン基がコンタクレンズ表面に後処理によって直接的に共有結合される。
コンタクトレンズの水酸基と、上記ホスホリルコリン基含有化合物との反応は常法により脱水反応によって共有結合が形成される。なお、水酸基に限らず、コンタクトレンズ表面の存在または導入する任意の官能基と、上記のホスホリルコリン基含有化合物とを共有結合させてもよい。
下記方法により製造可能である。
下記式(7)に示したホスホリルコリン誘導体を蒸留水に溶解させる。下記式(7)のホスホリルコリン誘導体は公知の化合物であり市販品を入手できる。
この方法では、式(5)の化合物として下記式(9)の化合物が得られる。同様な方法により、3−アミノプロピルトリメトキシシランの代わりに他のシラン化合物を用いて、一般式の式(1)、又は式(5)の化合物が得られる。
さらに、式(7)の化合物の水溶液を氷水浴中で冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム及び触媒量の三塩化ルテニウムを添加し、3時間攪拌する。反応液を減圧濃縮、減圧乾燥し、メタノールにより下記式に示すカルボキシル基を有するホスホリルコリン誘導体(a)を抽出する。
次に、式(a)のアセトニトリル或いはN,N−ジメチルホルムアミド分散液に塩化チオニル1.2当量を添加し、30分間攪拌した溶液に3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.9当量添加する。この混合溶液を室温で4時間撹拌する。
この方法では、式(6)の化合物として下記式(10)の化合物が得られる。同様な方法により、3−アミノプロピルトリメトキシシランの代わりに他のシラン化合物を用いて、一般式の式(1)又は式(5)の化合物が得られる。
また、上記縮合反応に用いる試薬は、塩化チオニル以外にも、五塩化リン、オキシ塩化リン、三臭化リン、オキザリルクロライドなど、一般的にカルボン酸ハロゲン化物を生成するものであれば問題なく使用できる。
ただし、上記化合物は、精製前のメタノール溶液の段階で、そのまま用いることが可能である。
また、式(5)または(6)中のメトキシ基(OCH3)がエトキシ基(OC2H5)である場合にはメタノールをエタノールに変えて反応を行い、Clの場合はジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシドに変更する。
さらには、Siと結合するメトキシ基またはエトキシ基またはClの内、2つまたは1つがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基のいずれかで置換されている場合も上記の手法と同様に製造することができる。
コンタクトレンズ表面の水酸基と、下記式(9)及び/又は(10)の化合物のSi−OMeから脱水によって共有結合を形成させる。この化学反応はほとんどの有機溶媒中で、極めて容易に定量的に進行する。この脱水反応によって化学的、物理的に極めて安定なホスホリルコリン基を導入することが出来るので好ましい。
具体的には、市販のコンタクトレンズを、式(9)及び/又は(10)のホスホリルコリン基含有化合物を溶解させたメタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒に浸漬し、室温で反応させた。反応条件として、必要に応じて加熱しても良いし、水や酸、或いは塩基触媒などを加えることもできる。
式中、OMeは、OEt、Clであってもよい。またSiと結合するOMeまたはOEtまたはClの内、2つまではメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基でも良い。
なお、コンタクトレンズへのホスホリルコリン基の導入量は、0.0001μmol/mg以上が好ましい。0.0001μmol/mgより少ないと、十分な蛋白質吸着抑制効果が得られない場合もあるが、コンタクトレンズの表面のみにホスホリルコリン基が導入されている場合はこの限りではない。一方、導入量が多い分には、蛋白質吸着抑制効果は増大するので特にその導入量は制限されない。
市販のコンタクトレンズを用いて本発明のコンタクトレンズを製造した。下記の評価方法により蛋白質の吸着抑制効果について比較した。
コンタクトレンズを、人工涙液3ml中に浸し、37℃にて24時間静置した。溶液部のタンパク量をBCA法にて定量し(検量線 Albumin Bovine)、溶液部の蛋白質の減少量を、蛋白質吸着量として算出した。
人工涙液は、以下の成分を超純水に溶解させて得た。
リゾチーム 1.20mg/ml、アルブミン 3.88mg/ml、γ-グロブリン 1.61mg/ml、塩化ナトリウム 9.00mg/ml、リン酸二水素カリウム 0.14mg/ml、リン酸水素二ナトリウム七水和物 0.80mg/ml
(参考文献)FDA Guideline Draft: Testing guidelines for classIII soft(hydrophilic) contact lens solution, lens group compatibility test. July 15, 1985.
1−α−グリセロホスホリルコリン(450mg)を蒸留水15mlに溶解し、氷水浴中で冷却した。過ヨウ素酸ナトリウム(750mg)を添加し、5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮、減圧乾燥し、メタノールにより化学式(5)に示す目的物を抽出した。続いて上記のメタノール溶液に3−アミノプロピルトリメトキシシラン(300mg)を添加後、室温で5時間撹拌したのち、氷冷し、シアノヒドロホウ素化ナトリウム(100mg)を添加し、室温に戻して16時間撹拌する。この間も反応容器には乾燥窒素を流し続ける。沈殿をろ過した後、式(9)のメタノール溶液を得る
図1に、式(9)の化合物の1H−NMRデータを示す。
1−α−グリセロホスホリルコリン5gを水70ml−アセトニトリル30mlに溶解した。氷冷下、過ヨウ素酸ナトリウム17gと三塩化ルテニウム80mgを添加し、一晩攪拌した。沈殿物をろ過し、減圧濃縮、メタノール抽出により化学式(6)に示す目的とするカルボキシメチルホスホリルコリンを得た。続いてアセトニトリルに式(6)の化合物及び塩化チオニル3gを氷冷下で添加、30分間攪拌し、3−アミノプロピルトリメトキシシラン3.8gを添加、反応容器には乾燥窒素を流し続け、3時間室温で攪拌して目的とする化合物(10)を得た。
図2に、式(10)の化合物の1H−NMRデータを示す。
市販のソフトコンタクトレンズとしてEtafilconA(vistakon社製、構成モノマー:HEMA,MAA)1枚をメタノール2.4ml−水0.6mlに入れ、そこに式(9)のホスホリルコリン基含有化合物50mgを入れ、60℃にて6時間攪拌した。水で洗浄後、ホスホリルコリン基が導入されたコンタクトレンズを得た。
モリブデンブルー法にて、式(9)によるホスホリルコリン基導入量を定量した結果、0.020μmg/mgであった。
<定量方法>
得られたコンタクトレンズを、過塩素酸に浸し、180℃に加熱して分解した。得られた溶液を水で希釈し、そこに七モリブデン酸六アンモニウム四水和物とLアスコルビン酸を入れ、95℃にて5分間発色させた後、710nmの吸光度測定して、導入量を求めた。検量線にはリン酸二水素ナトリウム水溶液を用いた。
市販のソフトコンタクトレンズとして、NelfilconA(CIBA社製、構成モノマー:modified PVA)1枚をメタノール2.4ml−水0.6mlに入れ、そこに式(10)のホスホリルコリン基含有化合物50mgを入れ、60℃にて6時間攪拌した。水で洗浄後、ホスホリルコリン基が導入されたコンタクトレンズを得た。
モリブデンブルー法にて、式(10)によるホスホリルコリン基導入量を定量した結果、0.015μmg/mgであった。
市販のソフトコンタクトレンズとしてPolymacon (Baush&Lomb社製、構成モノマー:HEMA)1枚をメタノール2.4ml−水0.6mlに入れ、そこに式(10)のホスホリルコリン基含有化合物50mgを入れ、60℃にて6時間攪拌した。水で洗浄後、ホスホリルコリン基が導入されたコンタクトレンズを得た。
モリブデンブルー法にて、式(1)のホスホリルコリン基導入量を定量した結果、0.018μmg/mgであった。
比較として、下記市販品のコンタクトレンズを使用した。
比較例1.EtafilconA(商品名:ワンデーアキュビュー、J&J社)
比較例2.EtafilconA(商品名:ワンデーアクエアー、オキュラーサイエンス社)
比較例3.NelfilconA(商品名:フォーカスデイリィーズ、チバビジョン社)
比較例4.Polymacon(商品名:メダリスト、ボシュロム社)
比較例5.VifilconA(商品名:フォーカス、チバビジョン社)
特許文献5の手法に基づき、1−α−グリセロホスホリルコリン10mg、1,1−カルボニルジイミダゾール20mg、トリエチルアミン20mgをジメチルスルホキシド3mlに添加し、50℃で2時間攪拌した。この溶液に、実施例1で使用したPolymaconを浸漬し、室温で12時間反応させた。コンタクトレンズをジメチルスルホキシド次いで水で充分に洗浄し、リン定量を行ったところ、導入されたホスホリルコリン基は検出限界の0.0001μmol/mg以下であり、反応が進行していなかった。
特許文献5の手法に基づき、1−α−グリセロホスホリルコリン10mg、1,1−カルボニルジイミダゾール20mg、トリエチルアミン20mgをジメチルスルホキシド3mlに添加し、50℃で2時間攪拌した。この溶液に、実施例2で使用したNelfilconAを浸漬し、室温で12時間反応させた。コンタクトレンズをジメチルスルホキシド次いで水で充分に洗浄し、リン定量を行ったところ、導入されたホスホリルコリン基は検出限界の0.0001μmol/mg以下であり、反応が進行していなかった。
本発明の方法は、蛋白質の汚れが致命的な問題となるソフトコンタクトレンズに好ましく利用できる。蛋白質吸着が促進されるイオン性ソフトコンタクトレンズには特に好ましく利用できる。
また、蛋白質が吸着しやすい酸素透過性や連続装用のハードコンタクトレンズに対しても好ましく利用できる。
Claims (10)
- 下記式(1)で示されるホスホリルコリン基含有化合物を眼用レンズ材料に反応させる後処理によって、ホスホリルコリン基を眼用レンズ材料表面に共有結合させたことを特徴とする眼用レンズ材料。
式中、mは2〜6、nは1〜4である。また−NH−は−O−でも良い。
X1、X2、X3は、それぞれ単独に、メトキシ基、エトキシ基またはハロゲンである。ただし、X1、X2、X3のうち、2つまではメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基のいずれでも良い。
Rは下記式(2)〜(4)中の構造のいずれかである(ただし、下記式(2)〜(4)構造において、式(1)の化合物をA−R−Bで表す)。
式(2)〜(4)中、Lは1〜6、Pは0〜3を表す。 - 眼用レンズ材料を構成するモノマーに、水酸基を有するモノマーを含有することを特徴とする請求項1または2記載の眼用レンズ材料。
- 眼用レンズ材料を構成するモノマーに、カルボキシル基を有するモノマーを含有することを特徴とする請求項1または2記載の眼用レンズ材料。
- 眼用レンズ材料を構成するモノマーに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを含有することを特徴とする請求項1または2記載の眼用レンズ材料。
- 眼用レンズ材料を構成するモノマーに、ビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項1または2記載の眼用レンズ材料。
- 眼用レンズ材料を構成するモノマーに、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルを含有することを特徴とする請求項1または2記載の眼用レンズ材料。
- 眼用レンズ材料を構成するモノマーに、N−ビニルピロリドンを含有することを特徴とする請求項1または2記載の眼用レンズ材料。
- 請求項1または2記載のホスホリルコリン基含有化合物を眼用レンズ材料に反応させる後処理によって、ホスホリルコリン基を眼用レンズ材料表面に共有結合させたことを特徴とする請求項1または2記載の眼用レンズ材料の製造方法。
- 請求項1または2記載のホスホリルコリン基含有化合物を眼用レンズ材料に反応させる後処理によって、ホスホリルコリン基を眼用レンズ材料表面に共有結合させて、眼用レンズ材料に対する蛋白質の吸着を防止することを特徴とする眼用レンズ材料の蛋白質吸着防止方法。
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