JP2011257570A - 防曇性レンズ - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、界面活性剤を塗布した場合ではその防曇性能の維持が難しく、例えば水で拭けば界面活性剤が容易にレンズ表面から剥落してしまう。そのため、特許文献1に掲げるような技術が提案されている。これはレンズ表面をシランカップリング剤で処理した後、親水基を有するチオールをエン・チオール反応によって固定するというものである。
そのため、防曇性能の持続性が高く、汚れが付着した場合に拭き取りやすい防曇性レンズが求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、防曇性能の持続性が高く、汚れが付着した場合に拭き取りやすい防曇性レンズを提供することにある。
第7の手段では第1〜6のいずれか手段に記載の発明の構成に加え、化学結合基を有する親水性ポリマーを含むことをその要旨とする。
第8の手段では第7の手段に記載の発明の構成に加え、前記親水性ポリマーは、ポリエチレングリコールもしくはポリシロキサンを成分として含有することをその要旨とする。
金属アルコキシドとしては、チタンテトラブトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、アルミニウムブトキシド、トリメチルボラート等が例示できる。またシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザンなどを用いることで親水性を付与することも可能である。
ホスホリルコリン化合物と金属アルコキシド,シラン化合物から選ばれたカップリング剤を混合、分散化して防曇性組成物にする理由は、金属アルコキシド,シラン化合物から選ばれたカップリング剤を下地層としてホスホリルコリン化合物を塗布するよりもホスホリルコリン化合物が下地層中とその層表面の両方に化学修飾できるためである。そのため基材表面におけるホスホリルコリン基の修飾比率が向上されるために、より高い防曇性効果が得られると考えられる。
金属アルコキシド,シラン化合物から選ばれたカップリング剤は基材とホスホリルコリン化合物の間で一種の下地剤として機能し(ホスホリルコリン化合物が直接基材に結合している場合もある)、基材側の官能基とカップリングするとともに、自身の有機官能基とホスホリルコリン化合物との間でもカップリングをするため、より多くのホスホリルコリン化合物を固定することができる。下地剤とされる金属アルコキシド,シラン化合物から選ばれたカップリング剤のアルコキド基としては、メトキシ基よりもエトキシ基がより好ましい。エトキシ基は常温中での反応速度がメトキシ基よりも速くないため、ホスホリルコリン化合物とカップリングする機会が多くなることからメトキシ基の場合と比較するとホスホリルコリン化合物とカップリングする分子が多くなるというメリットがある。
一般に摩擦係数が大きい表面は、滑り性が低いために付着した汚れを取り除くための布やティッシュペーバーを用いた拭き取りが困難である。眼鏡やカメラなどの光学レンズでは人が触ったり屋外に固定したりして使用するため汚れが付着しやすい環境にある。そのため、光学レンズには付着した汚れを容易に除去できる表面が求められる。つまり拭き取りが行いやすい摩擦係数の小さなレンズ表面の方が利便性の高い表面と考えられる。
本発明によれば、親水性官能基としてホスホリルコリン分子由来のカチオンとアニオンの両方を備えた両性イオンであることから極めて高い親水性と表面のすべり性をもたらしている。親水性表面にすべり性をもたらすことで、表面に吸着した汚れを拭き取ることが可能となる。さらに親水性の長鎖ポリマーを部分的に表面修飾することで表面の親水性を阻害することなく付着した汚れの吸着し難くする。さらに長鎖ポリマーであるために表面における分子の自由度を高めるために拭き取り性を向上する効果が得られると予測される。
一方、界面活性剤を塗布する曇り防止レンズでは、反射防止膜上に水膜を作らせるための界面活性剤を塗布するためにレンズの光学特性と下地の有する表面硬度を得ることできたが、曇り防止機能は界面活性剤のメンテナンス状態、つまり界面活性剤の塗布量や拭き取り状態に影響を受けるため、持続性が十分でなかった。
本発明によれば、100nm以下の膜厚において形成できるために反射防止膜上に形成でき、また下地の硬度に依存した表面硬度を得ることができた。さらに水の表面張力小さくする界面活性効果となる官能基が表面に化学結合によって固定化されているために塗布状態や拭き取りの影響も受けない。
所定の酸化物被膜とは例えばハードコート膜、反射防止膜等が挙げられる。
ハードコート膜はコート用のハードコート液を塗布(手塗り、ディッピング法、スピンコート法)し、その後公知の方法にて溶媒を蒸発させて形成される。
ハードコート膜は、特にオルガノシロキサン系樹脂と無機酸化物微粒子から構成されることが好ましい。そのためのハードコート液は水又はアルコール系の溶媒にオルガノシロキサン系樹脂と無機酸化物微粒子ゾルを分散(混合)させて調整される。
オルガノシロキサン系樹脂はアルコキシシランを加水分解し縮合させて得られるものが好ましい。
反射防止膜は特性の異なるこれらを材料とした薄膜を周知の手段(例えば蒸着)により定石に従って順に低屈折率層と高屈折率層を蒸着して形成される。最上層には低屈折率層が配置される。
実施例1
A[基材]
キシリレンジイソシアナート44重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)56重量部の100重量部を室温で均一溶液とした。次にこの液をレンズ用モールドに注入し、脱気後に引続きオーブン中で20℃から120まで22時間をかけてゆっくりと重合硬化させ、屈折率1.6、アッベ数32の光学特性を有する度数0.00のフラットレンズを形成した。
以下、基材については各実施例及び比較例とも同様である。
B.ハードコート膜の形成(一層目)
反応容器中に、エタノール206g、メタノール分散チタニア系ゾル300g(触媒化成工業(株)製 固形分30%)、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン150g、を加え、その混合液中に0.01Nの塩酸水溶液を滴下、攪拌して加水分解を行った。次にフロー調整剤0.5g(L−7604:日本ユニカ社(株)製)および触媒1.0gを加え、室温で3時間攪拌してハードコート液を形成した。このハードコート液をディッピング法で塗布し、風乾後、110℃で二時間加熱して硬化させ、膜厚2.0μmのハードコート膜を形成した。
以下、ハードコート膜については各実施例及び比較例とも同様である。
上記のハードコート膜が形成されたレンズを真空槽内にセットし、真空蒸着法によって、基板温度60℃で反射防止膜の形成を行った。膜の構成は、光学膜厚で下から二酸化珪素層がλ/4、酸化ジルコニウム層0.5λ/4、二酸化珪素層0.2λ/4、酸化ジルコニウム層がλ/4、最上層の二酸化珪素層がλ/4の5層膜とした。ここで、λは500nmに設定した。
以下、反射防止膜については各実施例及び比較例とも同様である。
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中に下記化学式で示されるリン酸側の主鎖の末端にトリエトキシシランを有するホスホリルコリン化合物0.5重量%、テトラエトキシシラン0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.0重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。
結果を表1にまとめた。また、視感度透過率については表2に耐擦傷性については表3に示す。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
実施例2では、ポリエチレングリコール(以下、PEG)の末端にトリエトキシシランを有するPEG化合物を調製した。反応容器中に実施例1と同じホスホリルコリン化合物を0.5重量%、テトラエトキシシラン0.4重量%、新たに調製したPEG化合物0.1重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.0重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。
尚、上記PEG化合物はPEGと3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTEOS)を所定の溶媒中で所定の触媒を介在させ室温で所定時間静置させて生成した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中に実施例1と同じホスホリルコリン化合物を0.25重量%、テトラエトキシシラン0.5重量%、実施例2と同じPEG化合物0.25重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.0重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中に実施例1と同じホスホリルコリン化合物を0.5重量%、テトラメトキシシラン0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.0重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中に実施例1と同じホスホリルコリン化合物を0.4重量%、テトラエトキシシラン0.5重量%、基材と化学結合する反応性基を有するポリシロキサン化合物0.01重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.09重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中に実施例1と同じホスホリルコリン化合物を0.5重量%、3−グリシドキプロピルトリエトキシシラン0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.0重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中に実施例1と同じホスホリルコリン化合物を0.5重量%、n−オクチルトリエトキシシラン0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.0重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中に実施例1と同じホスホリルコリン化合物0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.5重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中に実施例2と同じPEG化合物0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.5重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
比較例3では、ホスホリルコリン化合物の代わりにアミノエタノールの末端にトリエトキシシランを有するアミノエタノール化合物を調製した。反応容器中にこのアミノエタノール化合物0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.5重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
尚、上記アミノエタノール化合物はアミノエタノールとIPTEOSを所定の溶媒中で所定の触媒を介在させ室温で所定時間静置させて生成した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中にホスホリルコリン化合物の代わりに実施例5と同じポリシロキサン化合物0.5重量%、テトラメトキシシラン0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.0重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中にホスホリルコリン化合物の代わりに実施例2と同じPEG化合物0.5重量%、テトラメトキシシラン0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.0重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中に比較例3と同じアミノエタノール化合物0.5重量%、テトラエトキシシラン0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.0重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
D.防曇膜の形成(三層目)
反応容器中に実施例1と同じホスホリルコリン化合物を0.4重量%、比較例3と同じアミノエタノール化合物0.1重量%、テトラエトキシシラン0.5重量%をメタノールで希釈して(つまり、メタノール99.0重量%)防曇膜用の溶液を調整した。この溶液内に反射防止膜が形成された上記レンズを180秒浸漬し、毎分200mmの速度で引き上げ、湿度80%、温度60度の雰囲気中で1時間かけて乾燥させた。その後基材をメタノールで拭き上げを行い評価に使用した。
[評価結果]
結果を表1にまとめた。
A.〜C.省略
比較例8は防曇膜が形成されている場合の視感度透過率を確認するために防曇膜を形成せずに基材から反射防止膜までを実施例1〜7と同じ構成とした試料である。比較例8の視感度透過率は表2に示す。
A.〜C.省略
比較例9は撥水性表面が形成された試料である。基材から反射防止膜までは実施例1〜8と同じ構成になっている。比較例9の耐擦傷性について表3に示す。
(a)防曇性
防曇膜を形成した後、呼気による曇り具合を目視し、以下の基準で評価を行った。
判定基準
◎: 曇りを感じない
○: 一瞬歪みを感じるが、視界は良好である
△: 曇るが、視界が10秒以内に回復する
×: 曇りが10秒以上視界を妨げる
(b)拭き取り性
レンズ表面に指を押しつけて指紋を付着させた後、ティッシュペーパーで指紋を拭き取り、以下の基準で評価を行った。
◎: 潤滑な滑りを有し、拭き取りも良好
○: 汚れが拭き取れ、滑る
△: 汚れを拭き取れるが、滑りにくい
×: 汚れが拭き取れにくく、滑らない
測定器として協和界面科学社製 FACE CA−D型接触角測定装置を用いて23℃、湿度60%RH条件下にて行った。注射筒(注射針の直径約0.7mm)を使用して5mgの重さの純水の液滴を作った。サンプル台を上昇させてレンズ表面の中央部に該液滴を触れさせ、レンズ表面に純水の液滴を移し、30秒以内に接触角を測定した。
(d)動摩擦係数
測定器として新東科学社製の表面性測定機(HEIDON−14D)を用いて26℃、湿度50%RH条件下において行った。擦傷物として不織布 リブドゥコーポレーション TRISEPTAIII リヨセル100%を使用して荷重200gにて毎分100mmの速度において擦ったときの動摩擦係数を測定した。
(e)防曇耐久性
基材表面に湿らせた人工皮革を使用して荷重500gにて毎秒10mmの速度において1000回擦った後の接触角について測定を行った。測定方法は(c)純水の接触角に準じて行った。
(f)視感度透過率
測定器として日立社製のU−4100紫外可視分光光度計を用いて波長領域350〜800nm、プロット間隔1nmで透過率を測定した。
(g)耐擦傷性
基材表面にスチールウール(ボンスター社製 #000)を使用して荷重500gにて毎秒10mmの速度において100回擦った後の表面に傷が入った本数を蛍光灯下にて目視検査した。
理由は、ホスホリルコリン分子(MW:約400g)とシラン化合物(約200g)の分子比率を比べたとき同重量添加した場合、シラン分子の方がおよそ2倍程度多い濃度のため官能基数が4官能から3官能に減少してもホスホリルコリン分子との反応性には影響を与えなかったためと考えられる。
テトラエトキシシランを混合した調整溶液を使用した実施例1、同じくテトラメトキシシランを混合した調整溶液を使用した実施例4ではいずれも使用しない場合に比べて接触角がかなり小さくなり、濡れ性が大きく向上したことがわかる。特にテトラエトキシシランを使用した実施例1ではテトラメトキシシランを使用した実施例4よりも更に接触角は小さい。これはホスホリルコリン化合物が比較例1<実施例4<実施例1=実施例6の順で多くなっていることによるものと考えられる。
実施例1〜7の防曇膜を形成した場合における防曇膜のない比較例8と比較した視感度透過率はほとんど変わらず、光学物品としてレンズに使用してもその光学特性を損なうことはないといえる。
視感度透過率は、視力矯正用の道具として眼鏡用レンズに適した透過率性能を有していることを評価するために行った。人間は380〜780nmの波長の光を感じることができ、人の目に対する光の感度は波長によって異なる。光の感度は明るい所での場合555nmの波長を最も明るく感じることが知られており、その感度と波長の分布を表わす標準比視感度曲線が得られている。つまり視感度透過率は、レンズの透過率スペクトルとこの標準比視感度曲線から求められる。人が感じる光量である視感度透過率が高いほど裸眼に近い透過像を見ることができる。実施例1と比較例8の透過率スペクトルを比較したところ視感度透過率がそれぞれ95.0%と95.7%と得られ、防曇膜形成の前後においてほとんど差が見られない。よって防曇膜の成膜前後において眼鏡レンズの明視性に影響が無いといえる。
Claims (8)
- 基材の酸化物表面にホスホリルコリン基と基材を化学結合するシラン反応性基を有する親水性物質と、金属アルコキシド,シラン化合物から選ばれたカップリング剤を混合した組成物を主成分とする動摩擦係数が0.5未満の低摩擦性の防曇膜を形成させたことを特徴とする防曇性レンズ。
- 上記請求項5の化学式で示されるテトラアルコキシシランはテトラエトキシシランであることを特徴とする請求項5に記載の防曇性レンズ。
- 化学結合基を有する親水性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防曇性レンズ。
- 前記親水性ポリマーは、ポリエチレングリコールもしくはポリシロキサンを成分として含有することを特徴とする請求項7に記載の防曇性レンズ。
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