JP2005329289A - 円筒芯体、塗布装置及びポリイミド樹脂無端ベルトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 円筒芯体10と円筒芯体10’とは、円筒芯体10の軸22に設けられた貫通孔24と、円筒芯体10’の軸16’とを嵌合させることにより、円筒芯体の軸方向を垂直にして積み重ねることができる。
【選択図】 図5
Description
この方法では、塗布による塗膜形成工程から、加熱反応させる皮膜形成工程まで、円筒芯体は一貫して同じものが使用される。
このような環状塗布法では、環状塗布槽は浸漬塗布槽よりも小さくできるので、塗布液の必要量が少なくて済む長所がある。
<1> 筒状部材と、前記筒状部材の一の端部を塞ぐように設けられた第一の保持板と、前記筒状部材の他の端部を塞ぐように設けられた第二の保持板と、前記筒状部材の軸心に沿って前記第一の保持板に設けられた第一の軸と、前記筒状部材の軸心に沿って前記第二の保持板に設けられ、前記筒状部材に連結される他の筒状部材の軸心に沿って設けられた第三の軸と嵌合するための第二の軸と、を有する円筒芯体である。
また、本発明の塗布装置を用いた本発明のポリイミド樹脂無端ベルトの製造方法によれば、膜厚が均一で、気泡などの欠陥のないポリイミド樹脂無端ベルトを得ることができる。
<円筒芯体>
本発明の円筒芯体は、筒状部材と、前記筒状部材の一の端部を塞ぐように設けられた第一の保持板と、前記筒状部材の他の端部を塞ぐように設けられた第二の保持板と、前記筒状部材の軸心に沿って前記第一の保持板に設けられた第一の軸と、前記筒状部材の軸心に沿って前記第二の保持板に設けられ、前記筒状部材に連結される他の筒状部材の軸心に沿って設けられた第三の軸と嵌合するための第二の軸と、を有する。
本発明の円筒芯体は、PI樹脂無端ベルトの製造において、PI前駆体溶液を塗布するための芯体として好適に使用できる。
以下、本発明の円筒芯体を、図面を用いて説明する。なお、同様の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、その説明を省略することがある。
軸22には、筒状部材12の軸心に沿って貫通孔24が設けられており、筒状部材12に連結される他の筒状部材の軸心に沿って設けられた軸と嵌合できるようになっている。
なお、保持板14及び保持板20は、図3の如く筒状部材12の内径部に設けられてもよく、図4のように筒状部材12の端面部に設けられた態様であってもよい。
筒状部材12の軸方向の長さは、PI樹脂無端ベルトの軸方向の長さ以上の長さが必要であるが、端部に生じる無効領域に対する余裕領域を確保するため、円筒芯体の軸方向の長さは、目的とするPI樹脂無端ベルトの軸方向の長さより、10〜40%程度長いことが望ましい。
上記膨れを防止するために、本発明者等による特開2002−160239号公報開示の如く、筒状部材12の表面は、Ra0.2〜2μm程度に粗面化することが好ましい。粗面化の方法には、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法がある。これにより、PI樹脂から生じる気体は、筒状部材12とPI樹脂皮膜との間に形成されるわずかな隙間を通って外部に出ることができ、膨れを生じない。
保持板14及び保持板20の、筒状部材12への取り付けかたとしては、溶接やねじ止め等の方法を用いることができるが、溶接の方がガタなく固定でき、力が均一に加わるようになるので好ましい。溶接方法には、ガス溶接、アーク溶接、プラズマ溶接、電気抵抗溶接、TIG溶接、MIG溶接、MAG溶接等、種々あるが、金属の種類により、最適な方法が選択される。
保持板14及び保持板20には、さらに吊り下げ部材等の金具を取り付けてもよい。
軸16及び軸22の形状は、互いに嵌合することができるものであれば特に限定はないが、嵌合しやすいよう、両者の嵌合面は、テーパー形状になっていてもよい。
また、軸16及び軸22の少なくとも一方には環状溝17等の凹部が設けられていることが好ましい。これにより、円筒芯体10を、軸心を垂直にして移動させるときに、環状溝17等の凹部に嵌合する凸部を有する冶具を用いて吊り下げ移動させることができる。
本発明の塗布装置は、本発明の円筒芯体を用いるものであって、塗布液を保持すると共に、前記円筒芯体の外径よりも小さい穴を持つ環状シール材を底部に有する環状塗布槽を備え、前記環状シール材の穴に、二本の、本発明の円筒芯体を、軸方向を垂直にして嵌合して積み重ねた状態で通し、前記環状塗布槽から前記円筒芯体を相対的に上昇させ、前記円筒芯体の表面に前記塗布液を塗布するものである。
二本の、本発明の円筒芯体は、図5に示すようにして積み重ねられる。
本発明の塗布装置は、PI樹脂無端ベルトの製造において、PI前駆体溶液を本発明の円筒芯体の表面に塗布するのに好適に使用できる。
図6は、本発明の塗布装置の実施形態を示す概略構成図であり、図6(A)は、円筒芯体10への塗布前の状態を示し、図6(B)は、円筒芯体10への塗布後の状態を示す。ただし、図6においては塗布主要部のみを示し、周辺部は省略した。なお、本明細書において「円筒芯体上に塗布する」とは、円筒芯体の側面の表面、及び前記表面に層を有する場合は、その層の表面に塗布することをいう。また、「円筒芯体を上昇」とは、塗布時の塗布液面との相対関係であり、「円筒芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
また、円筒芯体10と円筒芯体10’とは、図5に示すようにして積み重ねられている。
図6(B)は、塗布装置30によって、円筒芯体10の表面へのPI前駆体溶液34の塗布が完了した状態を示す。円筒芯体10の表面にPI前駆体溶液34が塗布されることにより、円筒芯体10の表面にPI前駆体塗膜48が形成される。
円筒芯体10’は次に塗布されるものである。塗布が終わった円筒芯体10は第一の移動手段42を作動させることにより取り外され、さらに円筒芯体10’の下に次の円筒芯体が取り付けられ、再び図6(A)に示す状態から塗布が行われる。このように連続的に塗布できるので、従来のように円筒芯体同士を中間体を用いて重ね合わせるよりも効率良く塗布作業を続けることができる。
積み重ねた円筒芯体にずれや段差があると、PI前駆体溶液34に泡や異物が入ったり、液が漏れたりして、連続的に塗布作業を続けることが困難になるが、本発明の円筒芯体を用いれば、円筒芯体同士の当接部にずれや段差を生じることがないので有利である。
本発明のPI樹脂無端ベルトの製造方法は、PI前駆体溶液を、本発明の円筒芯体の表面に塗布し、PI前駆体塗膜を形成するPI前駆体塗膜形成工程と、前記PI前駆体塗膜を乾燥させた後、加熱反応させてPI樹脂皮膜を形成するPI樹脂皮膜形成工程と、前記PI樹脂皮膜を前記円筒芯体から剥離するPI樹脂皮膜剥離工程と、を有し、前記PI前駆体塗膜形成工程は、本発明の塗布装置を用いるものである。
本発明の塗布装置を用いることにより、円筒芯体の表面にはPI前駆体溶液が塗布され、PI前駆体塗膜が形成される。PI前駆体には、種々の公知のものを用いることができる。また、PI前駆体は、複数の酸又はアミンのモノマーを混合して共重合されたものであってもよい。PI前駆体の溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、等の非プロトン系極性溶剤が挙げられる。PI前駆体溶液の混合比、濃度、粘度等は、適宜選択される。
PI樹脂皮膜形成工程においては、前記PI前駆体塗膜を乾燥させた後、加熱反応させてPI樹脂皮膜を形成する。
前記PI前駆体塗膜を加熱乾燥させ、塗膜を静置しても変形しない程度のPI前駆体皮膜を形成する。加熱条件は、90〜170℃の温度で30〜60分間が好ましい。その際、温度が高いほど、加熱時間は短くてよい。また、加熱することに加え、熱風を当てることも有効である。加熱は、時間内において、段階的に上昇させたり、一定速度で上昇させてもよい。PI前駆体塗膜から溶剤を除去しすぎると、塗膜はまだベルトとしての強度を保持していないので、割れを生じる虞がある。そこで、ある程度(具体的にはPI前駆体塗膜中に15〜45質量%)、溶剤を残留させておく方がよい。
図7は、本発明の円筒芯体表面に形成されたPI前駆体塗膜を乾燥させるのに用いられる回転台50を示す。図7(A)は、回転台50の正面図を示し、図7(B)は、回転台50の側面図を示す。回転台50は、軸16及び軸22を支持する軸受52と、芯体支持台54とを備える。軸受52は、不図示の回転機構により一定方向に回転することができる。軸受52は、図7(B)に示すように一対で軸16又は軸22を支持するようになっている。軸受52が一定方向に回転することにより、円筒芯体10も回転する。
乾燥後は、円筒芯体10を垂直にして静置してもよい。
加熱反応後、形成されたPI樹脂皮膜を円筒芯体から剥離することで、PI樹脂無端ベルトが得られる。
PI樹脂無端ベルトの端部は、膜厚の均一性が劣っていたり、しわ等の欠陥が多くあるため、不要部分として切断される。PI樹脂無端ベルトには、さらに必要に応じて、穴あけ加工やリブ付け加工、等が施されることがある。
導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2−In2O3複合酸化物等の導電性金属酸化物、等が挙げられる。
その非粘着性の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂が好ましい。また、非粘着性の樹脂皮膜には、オイル親和性や静電オフセットの向上のために、カーボン粉末や硫酸バリウム等が分散されていてもよい。
−PI前駆体塗膜形成工程−
PI前駆体溶液(商品名:Uワニス、宇部興産製、濃度18%)に、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比で23%混合し、次いで対向衝突型分散機により分散し、塗布液とした。
別途、外径366mm、肉厚10mm、長さ900mmのアルミニウム(JIS−A6063材)製の筒状部材を用意し、球形アルミナ粒子によるブラスト処理により、表面をRa1.2μmに粗面化した。また、保持板として、厚さ15mm、外径が上記筒状部材に嵌まる径、100mm径の通風孔を4つ設けた円板を同じアルミニウム材で作製し、図1に示すように上記筒状部材に嵌め、TIG溶接により溶接した。保持板中央には、30mmφで長さ50mmの第一の軸を取り付け、反対側の保持板中央には、第一の軸が嵌められる穴を有する第二の軸を取り付けた。両軸はステンレスSUS304製とした。
筒状部材の表面には、シリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理を施した。この状態で、円筒芯体の重量は約60kgあり、容易に位置あわせができる物ではない。
PI前駆体塗膜が形成された円筒芯体を水平にし、図7に示すように、回転台に載せて回転自在状態に保持した。次いで、PI前駆体塗膜の中央部分を小さなスポンジでこすり取り、直径約5mmの穴を6箇所あけた。次いで、円筒芯体を6rpmで回転させながら、80℃で20分間、130℃で30分間、加熱して乾燥させた。これにより、厚さ約150μmのPI前駆体皮膜を得た。
その後、円筒芯体を回転台からおろして垂直にして加熱器に入れ、200℃で30分、340℃で30分加熱反応させ、PI樹脂皮膜を形成した。
室温に冷えた後、円筒芯体からPI樹脂皮膜を抜き取り、PI樹脂無端ベルトを得た。PI樹脂無端ベルトの膜厚は75μmで均一であった。PI樹脂無端ベルトの不要部分を両端から30mmずつ切断し、さらに中央側から約20mmずつ切断し、長さ360mmの2本のPI樹脂無端ベルトを得た。得られたPI樹脂無端ベルトは、100Vにおいて体積抵抗率を測定すると、約1010Ωcmの半導電性を有しており、電子写真用転写ベルトとして使用することができた。
実施例1において、円筒芯体の保持板に軸を取り付けずに、円筒芯体同士を積み重ねようとしたところ、なかなか中心を合わせることができず、ぴったり合わせるには、2分間程度かかった。また、0.5mm程度のずれがあるまま塗布を行ったところ、塗布槽が円筒芯体同士の継ぎ目を通過する際に、環状シール材がパチンとはじけ、塗布液には気泡が多数混入した。塗布液は粘度が高いので、気泡はなかなか消えずに残っており、塗布に支障をきたした。
実施例1に代えて、図8に示すように、円筒芯体11の上下に中間体49、49’を取り付けて塗布した。中間体の外径は円筒芯体と同じ径、長さは150mmとした。この中間体の重量は約5kgであったので、手で持ち運んで円筒芯体11に対して、容易に位置合わせをすることができた。その後、実施例1と同じ塗布槽と塗布液を用いて塗布を行った。円筒芯体上のPI樹脂無端ベルトのできばえは、実施例1と同じものであったが、この場合は、塗布1回ごとに中間体を1個ずつ洗浄する作業が必要であった。また、中間体表面にも塗布がなされるため、長さ150mm分(円筒芯体に塗布する6分の1)の塗布液がむだになった。
12 筒状部材
14、20 保持板
16,22 軸
30 塗布装置
50 回転台
Claims (6)
- 筒状部材と、
前記筒状部材の一の端部を塞ぐように設けられた第一の保持板と、
前記筒状部材の他の端部を塞ぐように設けられた第二の保持板と、
前記筒状部材の軸心に沿って前記第一の保持板に設けられた第一の軸と、
前記筒状部材の軸心に沿って前記第二の保持板に設けられ、前記筒状部材に連結される他の筒状部材の軸心に沿って設けられた第三の軸と嵌合するための第二の軸と、
を有する円筒芯体。 - 前記筒状部材の材質は、アルミニウムである請求項1に記載の円筒芯体。
- 前記第一の軸及び前記第二の軸の材質は、鉄又は鉄合金である請求項1又は2に記載の円筒芯体。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の円筒芯体を用いる塗布装置であって、
塗布液を保持すると共に、前記円筒芯体の外径よりも小さい穴を持つ環状シール材を底部に有する環状塗布槽を備え、前記環状シール材の穴に、二本の前記円筒芯体を、軸方向を垂直にして一方の前記円筒芯体の第二の軸と、他方の前記円筒芯体の第三の軸とを嵌合して積み重ねた状態で通し、前記環状塗布槽から前記円筒芯体を相対的に上昇させ、前記円筒芯体の表面に前記塗布液を塗布する塗布装置。 - 前記円筒芯体の外径よりも大きな円孔を備えると共に、前記塗布液の液面に自由移動可能状態で設置された環状体をさらに有する請求項4に記載の塗布装置。
- ポリイミド前駆体溶液を、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の円筒芯体の表面に塗布し、ポリイミド前駆体塗膜を形成するポリイミド前駆体塗膜形成工程と、前記ポリイミド前駆体塗膜を乾燥させた後、加熱反応させてポリイミド樹脂皮膜を形成するポリイミド樹脂皮膜形成工程と、前記ポリイミド樹脂皮膜を前記円筒芯体から剥離するポリイミド樹脂皮膜剥離工程と、を有するポリイミド樹脂無端ベルトの製造方法であって、
前記ポリイミド前駆体塗膜形成工程は、請求項4又は5に記載の塗布装置を用いたポリイミド樹脂無端ベルトの製造方法。
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