JP4706432B2 - シームレス管状体用の芯体金型、シームレス管状体用の芯体金型の製造方法および芯体金型を用いたシームレス管状体の製造方法 - Google Patents

シームレス管状体用の芯体金型、シームレス管状体用の芯体金型の製造方法および芯体金型を用いたシームレス管状体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、複写機、プリンタ等の電子写真機器における像担持体や中間転写ベルト、定着ベルト等に好ましく使用されるシームレス管状物(シームレスベルトまたはシームレスフィルム)の製造方法、前記シームレス管状体の製造に用いる芯体金型および芯体金型の製造方法ならびに前記シームレス管状物を用いた画像形成装置に関する。
画像形成装置では、像担持体、中間転写ベルト或いは定着ベルト等に、金属、各種プラスチック又はゴム製の回転体が使用されている。機器の小型化や高性能化のために、これらの回転体はある程度変形可能なものが好ましい場合があるが、その場合には肉厚が薄いプラスチック製のフィルムからなる管状物が用いられる。その際、管状物に継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がない管状物を用いる必要がある。
かかる画像形成装置に用いられる定着装置としては、画像形成装置の高速化に対応させるべく、表面が弾性変形する回転可能な定着ロールと、この定着ロールに接触したまま走行可能な無端ベルトと、この無端ベルトの内側に非回転状態で配置された圧力パッドとを具備し、圧力パッドにより無端ベルトを定着ロールに圧接させて、無端ベルトと定着ロールとの間に記録紙を通過させるベルトニップを設けるとともに、定着ロールの表面のうち、記録紙の出口側を局部的に弾性変形させるようにした定着装置に関する技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
このような特許文献1に記載された定着装置はベルトニップ方式と呼ばれ、従来の定着ロールと加圧ロールとを圧接させるロールニップ方式の定着装置とは異なり、圧力パッドを用いて無端ベルトを定着ロールに圧接させる構成を採用することにより、定着ロールと無端ベルトとによって形成されるベルトニップの幅が従来の定着ロールと加圧ロールとによるロールニップの幅よりも容易に大きくすることができるので、高速化対応が可能となり、しかも装置の小型化を図ることも容易である。
そして、かかるベルトニップ方式の定着装置では、定着ロールに圧接されたベルトによって形成されるベルトニップに記録紙を通過させるように構成されているため、ベルトは変形可能であることが必要であり、そのため肉厚の薄い耐熱性のプラスチック製のフィルムからなるベルトが用いられる。この場合、ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、ベルトは継ぎ目がない無端ベルトで形成されるのが一般的である。また、その際に用いられる材料としては、強度や寸法安定性、耐熱性等に優れたポリイミド樹脂が特に適している。
シームレス管状物を作製する方法に関しては、例えば、特許文献2には回転成形法により型の内周面にフィルムを成形する方法、特許文献3には樹脂を溶融し環状に押し出し成膜する方法、特許文献4には樹脂溶液を円柱成形型外面にディッピングにより一定の厚さに塗布し、加熱成膜後に成形型を引き抜く方法、等が記載されている。
このシームレス管状物を形成する樹脂材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられ、強度、耐熱性、寸法安定性の観点からポリイミド前駆体樹脂が好適に用いられている。ポリイミド管状物を製造するための問題点として熱可塑性樹脂で作る管状物のように押出成形やインフレーション成形または真空成形ができないことが挙げられる。
したがって、ポリイミド管状物の製造方法としてはその前駆体であるポリアミド酸溶液を成形型(芯体)等に塗布し加熱によりイミド化した段階で脱型する方法をとらざるを得ない。
ポリイミド樹脂製のシームレス管状物の作製には、例えば、特許文献5や特許文献6が提案するように、円筒体の内面にポリイミド前駆体溶液を展開し、回転させながら乾燥させる遠心成形法、特許文献6に開示されている内面塗布法などがある。しかしながら、耐熱性樹脂であるポリイミド前駆体溶液を完全にイミド化させると、イミド化反応により収縮が起き、内面に前駆体溶液を塗布した場合、自由収縮する為、管状物の外径精度が得られない。従って、特許文献7で提案されているように、第一段階として所望の外径よりやや大きめな内径を持ち、離型剤を被覆した成形型の内表面にポリイミド前駆体溶液を塗布したのち、100〜200℃の温度でイミド化を進行させ中間体とした後にこの成形型より分離し、第2段階として所望の内径が得られるような外径を持つ内側成形型に再度管状物を挿入し250〜450℃の温度でイミド化を完成させる必要があった。
そのため、製造工程が煩雑となるばかりでなく、イミド化の中間段階で管状物を取り出し、別の成形型に取り付けるため、その取り付け時に中間体の皮膜と成形型の間にゴミなどの異物を挟むことなどによって、ポリイミド管状物の外観欠陥(凹凸)を発生させて、歩留まりが低下するという問題もあった。
そこで、特許文献8には、外表面を粗面化した芯体を用い、前記芯体の外表面に樹脂溶液を均一に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を芯体上に保持したまま乾燥し、その後加熱して樹脂を焼成成膜した後、芯体から分離することを特徴とする継ぎ目なしベルトの製造方法が提案されており、芯体としてアルミニウムを用いた実施例が記載されている。アルミニウムはSUS等と比べると比較的熱膨張率が大きい事から、焼成後の管状体の内径と芯体の外径の差が確保できるので、管状体の脱型が容易となる為、シームレス管状物の芯体として、アルミニウムやアルミニウム合金がよく用いられる。
特許第3298354号公報 特開昭60−170862号公報 特開平6−202513号公報 特開平6−222695号公報 特開平10−100171号公報 特開平10−296761号公報 特開平1−139228号公報 特開2002−160239号公報
ところで、無端ベルトの製造の際に用いられるポリイミド前駆体溶液においては、溶剤として非プロトン系極性溶剤が用いられることが一般的であり、これらはいずれも沸点が高く、乾燥が非常に遅いという性質を有している。そのため、特許文献8に記載された無端ベルトの製造方法のように、前記芯体の外表面に樹脂溶液を均一に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を芯体上に保持したまま乾燥し、その後加熱して樹脂を焼成成膜した後、芯体から分離する工程を経ることで溶剤の乾燥の促進を図っている。
しかしながら、前述の通り、芯体としては熱膨張率の関係から管状体の脱型が容易となる為、アルミニウムまたはアルミニウム系合金が好ましいが、アルミニウムまたはアルミニウム系合金は比較的柔らかく傷つきやすいため、特に芯体を繰り返し使用した場合、取り扱い中に芯体表面にキズがつき、そのキズが管状物の突起やピンホールといった欠陥として現れてしまう。特許文献8の方式の場合、芯体を樹脂溶液の塗布時から焼成成膜まで一貫して同一のものを使用するため、特に芯体表面にキズを付ける可能性が増加する。
更に、乾燥工程後の焼成成膜された耐熱性樹脂組成物からなる塗膜の表面に、所定の膜厚の耐熱性離型性材料を塗布する耐熱性離型層塗布工程を含む場合、工程の増加に伴い芯体へのキズの可能性が一層増加する。
そこで、芯体として、アルミニウム表面に、表面が酸化アルミセラミック成分となるよう、公知である陽極酸化処理したりすることで硬度をあげる方法もあるが、この場合、アルミ素材そのものより熱伝導率が約1/3に低下してしまう。
このような低熱伝導率の芯体を用いた場合、乾燥や焼成時に芯体表面の温度分布にむらが生じやすくなり、温度が上昇しやすい芯体の端部と、上昇し難い芯体中央部で温度上昇時に温度の差異が大きくなる。結果、芯体両端の塗膜の溶媒が早く揮発すると共に、イミド化反応も端部が早く進み収縮しやすくなる。円筒状芯体に塗布形成されたポリイミド樹脂皮膜はガス透過性が低いため、端部が先に収縮すると、芯体外表面と塗膜内面の溶媒が揮発していく事が難しくなり、加熱乾燥時にポリイミド樹脂皮膜中に含まれる溶剤の一部がポリイミド樹脂皮膜内部に残留し易い。また、溶剤を乾燥させた後の加熱工程においては、縮合反応が進行する段階でポリイミド樹脂皮膜から水が発生する。そのため、乾燥後の加熱工程において、ポリイミド樹脂皮膜内部や円筒状芯体とポリイミド樹脂皮膜との間に残留溶剤や水が滞留し、それが加熱時の熱で膨張して高圧のガスになる。それによって、ポリイミド樹脂皮膜に膨れが生じて変形し、膜厚や外径が不均一となり易い。特に、長手方向中央部に溜まったガスは逃げ難く、ポリイミド樹脂皮膜は中央部で外径が大きい所謂クラウン形状となる傾向が強くなる。このような傾向は、ポリイミド樹脂皮膜の加熱焼成後の膜厚が50μm以上、さらには70μm以上で顕著に現れる。
そして、かかるクラウン形状のポリイミド樹脂皮膜で形成された無端ベルトを、前述のベルトニップ方式の定着装置において使用すると、無端ベルトの回動速度が長手方向で不均一となり、ベルトニップ部を通過する記録紙に紙しわを生じさせたり、画像グロスむら等の画像不良を生じさせたりするという問題があった。
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、長手方向に亘り外径の均一性が高い無端ベルトを安定的に、低コストで提供することにある。
本発明の構成は以下の通りである。
(1)アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に、銀または銅の少なくとも一方を含むアルミニウム陽極酸化皮膜が形成されたシームレス管状体用の芯体金型であり、前記芯体金型は、その表面のビッカース硬度が460HV以上500HV以下でかつ熱伝導率が210W/(m・K)以上240W/(m・K)以下であるシームレス管状体用の芯体金型である。
(2)アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯体基材を、銀または銅の少なくとも一方を添加した電解液中で陽極酸化処理を施し、ビッカース硬度が460HV以上500HV以下でかつ熱伝導率が210W/(m・K)以上240W/(m・K)以下である芯体金型を製造するシームレス管状体用の芯体金型の製造方法である。
(3)上記(1)に記載のシームレス管状体用の芯体金型の外表面に、耐熱性樹脂組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を加熱成形する加熱成形工程と、加熱成形により得られた成形膜であるシームレス管状体を前記芯体金型から外す工程と、を有するシームレス管状体の製造方法である
(4)上記(1)に記載のシームレス管状体用の芯体金型の外表面に耐熱性樹脂組成物からなる塗膜を形成し、前記塗膜を加熱成形したのち、前記芯体金型から成形膜を外すことによって得られるシームレス管状体であ、前記シームレス管状体は、長手方向両端部と中央部との外径差が外径に対して0.3%以下で形成されているシームレス管状体である
(5)像担持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記像担持体表面に画像情報に応じた静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記像担持体表面に形成された前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を得る現像手段と、前記像担持体表面に形成された前記トナー像を記録媒体表面に転写する転写手段と、前記記録媒体表面に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を少なくとも含む画像形成装置であり、前記像担持体および前記転写手段において用いられる中間転写ベルト、前記定着手段において用いられる定着ベルトの少なくとも1つに上記(4)に記載のシームレス管状体を用いる画像形成装置である
本発明によれば、製造されるシームレス管状体にて、外径の長手方向における均一性、又その製造安定性を高めることが可能となる。また、かかるシームレス管状体を定着装置に用いた場合には、シームレス管状体の回動速度を幅方向に亘って略等速に設定することができるので、長期に亘り紙しわや画像グロスむら等の画像不良の発生を抑えて高品質な画像を形成することが可能となった。
以下、実施の態様を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
[芯体金型およびその製造方法]
本実施の形態の芯体金型は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成る芯体基材の表面に、銀または銅の少なくとも一方を含むアルミニウム陽極酸化皮膜が形成され、芯体金型の表面のビッカース硬度は450HV以上、かつ芯体金型の熱伝導率は200W/(m・K)以上である。
上記芯体基材としては、例えば、アルミニウム(JIS H4080 合金番号1000系純アルミニウム)、JIS H4080 合金番号3000系アルミニウム−マンガン(Al−Mn)系合金、JIS H4080 合金番号5000系アルミニウム−マグネシウム(Al−Mg)系合金、JIS H4080 合金番号6000系アルミニウム−マグネシウム−ケイ素(Al−Mg−Si)系合金が挙げられるが、好ましくは、高温での形状保持性および加工性に優れるという観点からJIS H4080 合金番号3000系アルミニウム−マンガン系合金、JIS H4080 合金番号5000系アルミニウム−マグネシウム系合金がより好ましい。
また、本実施の形態における芯体金型の製造方法は、上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯体基材を、銀または銅の少なくとも一方を添加した電解液中で陽極酸化処理を施し、ビッカース硬度が450HV以上でかつ熱伝導率が200W/(m・K)以上である芯体金型を製造するものである。
この芯体基材の陽極酸化処理について、図1を用いて説明する。図1は陽極酸化処理槽を上方からみた模式図である。
芯体基材が十分浸漬できるだけの大きさと深さをもつ電解槽31の内部にそれぞれ間隔をもって、電極32a,32bが配置され、その一対の電極32a,32bの間に、被処理物であって、芯体基材である筒状芯体33が配置されている。そして、この電解槽31内に、筒状芯体33及び電極32a,32bが浸漬して表面処理可能な程度に電解液が満たされている。電解液は、硫酸浴やシュウ酸浴やその混合物が用いられ、これらの浴に硝酸銀や硝酸銅又は硫酸銀や硫酸銅が添加される。上記硝酸銀や硝酸道または硫酸銀や硫酸銅の添加量は、3g〜10g/リットル程度が好ましい。
筒状芯体33に表面処理を施すには、筒状芯体33に交流とプラスの直流が重畳された電流を加える。この電流密度としては、1〜10A/dm2の範囲が好ましい。電解浴液の温度としては、例えば0℃〜20℃前後が好ましい。
このような方法により、陽極酸化処理すると、芯体表面に多孔質皮膜である陽極酸化皮膜(「アルマイト皮膜」ともいう)が形成され、その皮膜の表面の多孔質層中に銀や銅が析出し多孔質の孔に銀や銅が形成される。
この多孔質層の膜厚は、電解槽31中で処理する時間や前述の条件によって、10〜200μm程度まで形成する事が可能となる。この陽極酸化皮膜により筒状芯体33の表面の硬度が向上し、後述するエンドレスベルト製造時の芯体金型のキズの発生が抑制され、それによる無端ベルト(エンドレスベルト)の突起欠陥の発生を低減しつつ、又、銀や銅が陽極酸化処理時に析出し、芯体金型表面の多孔質の陽極酸化皮膜に前記銀や銅が充填されるため、芯体金型の熱伝導性を向上させることができる。
ここで、上述した陽極酸化皮膜は、アルミニウムを陽極で電解し酸化させることによって形成され、蜂の巣のような六角柱のセルの集合体からなる多孔質皮膜がアルミニウム又はその合金の素地に形成される。そして、上記六角柱のセルの上皮中心には微細な孔が形成されており、この孔は、素地界面に生成した陽極酸化皮膜のバリア層まで通じている。
そして、上述した陽極酸化処理浴に添加された硝酸銀や硝酸銅又は硫酸銀や硫酸銅から供給された銀および/または銅が、上記陽極酸化皮膜の孔に充填され、これにより、芯体金型の熱伝導性を向上されている。
一般に、1000系アルミニウム(純アルミニウム)の熱伝導率は236W/(m・K)であり、陽極酸化処理皮膜(アルマイト皮膜)の熱伝導率は70W/(m・K)である。したがって、銀および/または銅を含有する陽極酸化皮膜が形成された本実施の形態における芯体金型は、熱伝導率200W/(m・K)以上であることから、純アルミニウム並の熱伝導性を有することがわかる。これにより、特に、後述する無端ベルトの製造において、芯体金型を均一な温度に保つことができるため、芯体金型の外周面を用いて製造される無端ベルトの外径の長手方向における寸法の均一性が保たれる。なお、銀の熱伝導率は430W/(m・K)であり、銅の熱伝導率は390W/(m・K)であり、陽極酸化皮膜に充填する銀、銅の充填率および銀と銅の割合を制御することによって、芯体金型において所望の熱伝導率を得ることができる。
上記熱伝導率の測定は、例えば、レーザーフラッシュ法熱伝導率測定装置「LFA−502」(京都電子工業株式会社製))を用い、試験面積φ10mm、厚み2mmの試料を用意し、サンプルにレーザをフラッシュ照射しサンプル温度が常温(25℃)から100℃に到達するまで加熱する測定条件に基づいた熱拡散率および比熱の測定結果と予め上記測定装置に入力したサンプルの密度を元に熱伝導率を自動計算した。なお、後述する実施例における熱伝導率の測定においても同様の装置により上記測定条件にて測定した。
また、上述したビッカース硬度は、例えば、ビッカース硬度計「DVK−2型」(松沢精機株式会社製)を用いJIS−Z2244に規定される測定方法に基づき10Kgfの荷重の測定条件に基づいて測定した。なお、後述する実施例におけるビッカース硬度の測定においても同様の装置により上記測定条件にて測定した。
さらに、後述するシームレス管状体の製造方法に用いられる芯体金型の外周面には、陽極酸化処理前に凹凸が形成される。
本実施の形態における芯体金型の形状としては、内部に熱風を通過させることができるように円筒状等の筒形状であって、その断面は一般的に円形状のものが好適に用いられるが、楕円状等のその他の断面形状を有するものを用いることも可能である。なお、本実施の形態において、「芯体表面」とは、特に説明しない限り、『芯体金型の外周面』を意味する。
ところで、後述するように、芯体表面に、シームレス管状体を形成するためのポリイミド前駆体塗膜を加熱して乾燥させた場合に、塗膜中に残留する溶剤等が気化して発生するガスによって、ポリイミド樹脂皮膜に膨れが発生する場合があった。そのため、従来においては、加熱処理した際に、塗膜中に発生するガスを効果的に放出することができるように、芯体表面に均一にブラスト加工を施すことにより、芯体表面に表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.6〜1.0μm程度で、芯体の周方向と軸方向に均一な粗さをもつ粗面を形成している。
しかしながら、上記芯体金型を用いて形成された均一な粗面の内周面をもつシームレス管状体を図3に示すエンドレスベルト62として用いた場合、エンドレスベルト62が回動した際に発生する摺動音が問題となる場合がある。この摺動音とは、均一に粗面化された内周面の凹凸が、図3に示す定着装置60の低摩擦シート68と摺動した際に発生し、ベルト内周面の表面粗さが大きいほど摺動音が大きくなることから、潤滑剤の保持能力との両立が難しいと考えられていた。
そこで、図3に示すエンドレスベルト62内周面の表面粗さについて種々の検討を加えたところ、エンドレスベルト62の周方向に切削加工を施す等の加工によって、内周面の周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さい形状とすれば、潤滑剤の保持能力を確保することができると同時に、エンドレスベルト62の回動方向に沿った方向の内周面の凹凸が小さくなることから、摺動音を抑制することもできることが判明した。
ここで、「周方向に切削加工を施す」とは、切削加工により芯体表面に形成される加工目の方向が、芯体の周方向に対して略平行に形成された状態を意味するのみならず、周方向に対してやや斜めに形成された場合も意味する。また、芯体表面に形成される加工目は、周方向に対して、実質的に一定の角度を成すもののみであってもよく、複数の角度を成すものが混在していてもよい。
図2は、図1に示す本実施の形態におけるエンドレスベルト62の製造方法に用いられる芯体金型である円筒状芯体(以下、単に「芯体」ともいう。)101において、その表面の周方向に形成された切削加工目の例を示す模式図であり、図2(a)は、周方向に対して略平行に形成された加工目の例を示し、図2(b)は、周方向に対してやや斜め方向に形成された加工目の例を示し、図2(c)は、周方向に対して2種類の角度でやや斜め方向に形成された加工目の例を示している。そして、図中一点鎖線は、芯体101の軸方向を示している。なお、図2(a)から図2(c)に示す加工目は、説明のために強調して描いたものであり、必ずしも実際に形成される加工目に対応するものではない。
切削加工は、芯体101を周方向に回転させながら、芯体101表面にバイトを当接させる公知の加工方法で実施され、バイトの形状や送り速度により芯体101表面の表面粗さRaを制御することができるが、これらの加工条件は芯体101の外径に応じて調整される。芯体101表面の軸方向の表面粗さRaが、0.3〜3.0μmの範囲内であり、芯体101表面の周方向の表面粗さRaが、芯体101表面の軸方向の表面粗さRaよりも小さくなるように、芯体101表面の周方向に切削加工が施されることが好ましい。
ところが、潤滑剤の保持能力の向上および摺動音の低減を同時に実現するために、上述したように、内周面の周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さい形状をもつ芯体101を用いた場合には、従来の芯体金型を用いたエンドレスベルトの製造方法では、軸方向に大きい芯体101表面の凹凸によってガスが抜けにくくなり、前駆体乾燥工程においてポリイミド前駆体塗膜に生じる膨れ現象が悪化する場合があった。
それに対して、本実施の形態の芯体金型を用いたエンドレスベルトの製造方法においては、アルミニウム又はアルミニウム合金の外周面に銀又は銅の少なくとも一方又は両方を含む陽極酸化皮膜が形成された芯体金型を用いることにより、円筒状芯体(芯体金型)101中央の表面に近い塗膜中の溶媒成分の揮発速度と、芯体両端の溶媒の揮発速度の差を小さくすることができるので、塗膜中及び、芯体101表面と塗膜内周面との界面での溶媒成分から揮発したガスの滞留を抑制できる。そのため、内周面の周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さい形状をもつ芯体101を用いた場合にも、後述するように、ポリイミド前駆体塗膜に生じる膨れ現象を極めて低レベルに抑えることが可能となる。
なお、芯体101表面の表面粗さRaと、作製されるエンドレスベルト62内周面の表面粗さRaとの関係は略直線的で、芯体101表面の表面粗さRaが大きくなるに従い、エンドレスベルト62内周面の表面粗さRaも大きくなる。したがって、芯体101表面の表面粗さRaを調整することによって、エンドレスベルト62内周面の表面粗さRaを所望の値に設定することができる。
また、ここでの表面粗さRaとは、粗さの尺度の一つである算術平均粗さであり、公知の触針式表面粗さRa測定機(例えば、サーフコム1400A:東京精密社製)を使用して測定することができる。
[シームレスベルト管状体およびその製造方法]
なお、シームレス管状体は、以下「無端ベルト」ともいう。
本実施の形態におけるシームレス管状体の製造方法は、少なくとも、円筒状の芯体金型(以下「円筒状芯体」ともいう)表面に、耐熱性樹脂の前駆体溶液を塗布し、前駆体塗膜を形成する工程(「前駆体塗膜形成工程(塗布工程)」)と、前駆体塗膜を乾燥させる工程(「前駆体乾燥工程(乾燥工程)」)と、前駆体乾燥工程を経た塗膜を加熱して前駆体を縮重合させる工程(「樹脂皮膜形成工程(焼成工程)」)とを有し、更に、耐熱性樹脂皮膜を円筒状芯体金型から剥離する工程と、必要に応じて、その他の工程とを有する。また、前駆体乾燥工程後の工程が、上記以外の工程からなるものでもよい。
以下、本実施の形態におけるシームレス管状体の製造方法を工程毎に分けて詳細に説明する。
(前駆体塗膜形成工程)
前駆体塗膜形成工程では、円筒状芯体表面に耐熱性樹脂前駆体溶液を塗布する。ここでは、耐熱性樹脂としてポリイミド(PI)樹脂を用いる場合を例として説明する。
まず、ポリイミド前駆体を非プロトン系極性溶剤に溶解してポリイミド前駆体溶液を調製する。ポリイミド前駆体としては、従来公知のものを用いることができる。また、非プロトン系極性溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の従来公知のものを用いることができる。なお、ポリイミド前駆体溶液の濃度、粘度等は、適宜選択して行われ、またポリイミド前駆体溶液には、必要に応じて導電性粒子等の他の材料や添加物等を加えてもよい。
前駆体塗膜形成工程において、ポリイミド前駆体溶液を円筒状芯体表面に塗布してポリイミド前駆体塗膜を形成するが、その塗布方法としては、芯体の形状にもよるが、円筒状芯体をポリイミド前駆体溶液に浸漬して引き上げる浸漬塗布法、芯体をポリイミド前駆体溶液に浸漬して引き上げる浸漬塗布法、軸方向が水平方向に略平行となるように設置され、周方向に回転している芯体の表面に、芯体のほぼ真上に設置されたノズル等からポリイミド前駆体溶液を吐出しながら、芯体またはノズルを軸方向に平行移動させる流し塗り法において、芯体表面に形成された塗膜をブレードでメタリングするブレード塗布法等、公知の方法が利用できる。
なお、流し塗り法やブレード塗布法では、芯体表面に形成される塗膜は芯体の軸方向にらせん状に形成されるため、継ぎ目が出来るものの、ポリイミド前駆体溶液に含まれる溶剤は常温での乾燥が遅いために継ぎ目は自然に液のレベリング性により平滑化される。
ここで、「円筒状芯体上に塗布する」とは、円柱状芯体上に塗布する場合も含まれる。また、「塗付する」とは円筒状芯体の側面の表面上に塗布することをいい、側面上に層を有する場合には、その層表面上に塗布することをも意味する。
まず、上記に説明した各種塗布法のうち浸漬塗布法について、次にブレード塗布法について詳述するが、本実施の形態のエンドレスベルト62の製造方法において、ポリイミド前駆体塗膜の形成方法は、これに限定されるものではない。
前駆体塗膜形成工程では、ポリイミド前駆体溶液の塗布を浸漬塗布法で行う場合、ポリイミド前駆体溶液は粘度が非常に高いので、膜厚が所定値より厚くなりすぎる場合がある。その際には、例えば、以下に示すような環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法を適用することができる。
環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法を、図4〜図6を参照して説明する。図4は、環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。ただし、図4〜図6では塗布主要部のみを示し、他の装置は省略している。図4に示すように、この浸漬塗布法は、塗布槽103に満たされたポリイミド前駆体溶液102に、円筒状芯体(以下、単に「芯体」ともいう。)101の外径よりも大きな孔106を設けた環状体105を浮かべ、この孔106を通して円筒状芯体101をポリイミド前駆体溶液102に浸漬し、次いで、引き上げる塗布法である。
図5は、図4に示す環状体105の設置状態を説明するための要部拡大斜視図である。図5に示すように、ポリイミド前駆体溶液102液面に、円筒状芯体101の外径よりも一定の間隙だけ大きい径を有する孔106を設けた環状体105を浮かべてある。
環状体105は、ポリイミド前駆体溶液102液面に浮くものであり、その材質は、ポリイミド前駆体溶液102によって侵されないものがよく、例えば、種々の金属、種々のプラスチック等が挙げられる。また、ポリイミド前駆体溶液102液面に浮き易いように、環状体105の構造は、例えば、中空構造であってもよい。
環状体105は、ポリイミド前駆体溶液102の液面を自由に動くことができる。そこで、環状体105は、ポリイミド前駆体溶液102上でわずかの力で動くことができるよう、環状体105をポリイミド前駆体溶液102上に浮遊させる方法の他、環状体105をロールやベアリングで支える方法、環状体105をエア圧で支える方法、等の自由移動可能状態で設置する方法がある。また、環状体105が塗布槽103の中央部に位置するように、環状体105を一時的に固定する固定手段を設けてもよい。このような固定手段として環状体105に足を設ける手段、塗布槽103と環状体105とを固定する手段等がある。ただし、これらの固定手段を用いた場合、後述するように、円筒状芯体101を浸漬した後、引き上げる際に、環状体105が自由に動き得るように、固定手段は取り外し可能に配置される。
円筒状芯体101の外径と、孔106の最小孔径との間隙は、塗布膜厚に応じて調整する。所望の塗膜厚、すなわち乾燥膜厚は、濡れ膜厚とポリイミド前駆体溶液102の不揮発分濃度の積になる。これらによって、所望の濡れ膜厚が求められる。また、円筒状芯体101の外径と、孔106の最小孔径との間隙は、所望の濡れ膜厚の1倍〜2倍であるのが好ましい。1倍〜2倍とするのは、ポリイミド前駆体溶液102の粘度および/または表面張力等により、間隙の距離が濡れ膜厚になるとは限らないからである。このように、所望の乾燥膜厚および所望の濡れ膜厚から、所望の孔106の最小孔径が求められる。
環状体105に設けられる孔106の壁面は、浮かべるポリイミド前駆体溶液102の液面に対してほぼ垂直となるように構成してもよい。例えば、図5に示す断面図にある直線状であり、かつその直線がポリイミド前駆体溶液102の液面に垂直であるものでもよいし、他の形態に構成されてもよい。例えば、図6(a)に示すように、ポリイミド前駆体溶液102に浸る下部が広く、上部が狭い、斜めの直線状の壁面107であるもの、または図6(b)に示すように、ポリイミド前駆体溶液102に浸る下部が広く、上部が狭い、曲線状の壁面108であるものが挙げられる。特に、図6(a)または図6(b)に示すように、ポリイミド前駆体溶液102に浸る下部が広い形状が好ましい。ここで、図5は環状体105に設けられる孔106の壁面の形状を示しており、図6(a)は直線状の壁面107、図6(b)は曲線状の壁面108を示す概略断面図である。
浸漬塗布を行う際には、円筒状芯体101を、孔106を通してポリイミド前駆体溶液102に浸漬し、円筒状芯体101が環状体105に接触しないようにする。次いで、孔106を通して円筒状芯体101を引き上げる。その際には、円筒状芯体101と孔106との間隙により塗膜104が形成される。引き上げ速度としては100〜1500mm/min程度であるのが好ましい。この塗布方法に好ましいポリイミド前駆体溶液102の固形分濃度は10〜40質量%、粘度は1〜200Pa・sである。ここで、「引き上げ」とは、ポリイミド前駆体溶液102の液面に対する相対的な上昇を意味する。
孔106を通して円筒状芯体101を引き上げる際には、環状体105は自由移動可能状態であり、さらに、環状体105の孔106が円形であり、かつ、円筒状芯体101の外周も円形であるため、円筒状芯体101と環状体105との摩擦抵抗が一定になるように、環状体105は動くことができる。すなわち、円筒状芯体101を引き上げる際、ある位置において、環状体105と円筒状芯体101との間隙が狭まろうとした場合には、狭まろうとした部分では摩擦抵抗が大きくなる。一方、その反対側では摩擦抵抗が小さくなり、一時的に摩擦抵抗が不均一な状態が生じうる。しかしながら、環状体105が自由に動くこと、円筒状芯体101の外周が円形であること、および、環状体105の孔106が円形であることから、そのような摩擦抵抗が不均一な状態から均一な状態になるように、環状体105が動く。そのため、環状体105が円筒状芯体101と接触するようなことはない。
また、摩擦抵抗が均一となる位置は、円筒状芯体101の外周の円形と、環状体105の孔106の円形とがほぼ同心円となる位置である。よって、円筒状芯体101断面の円の中心が、軸方向において、許容範囲内でずれている場合であっても、環状体105はそれに追随するように動く。したがって、円筒状芯体101の表面には、一定の濡れ膜厚を有するポリイミド前駆体の塗膜104を形成することができる。
さらに、浸漬塗布法に用いる塗布装置は、円筒状芯体101を保持する円筒状芯体保持手段、並びに、所望により、保持手段を上下方向に移動する第1の移動手段および/またはポリイミド前駆体溶液102を入れる塗布槽103を上下方向に移動する第2の移動手段を有してもよい。それらの保持手段、第1の移動手段および/または第2の移動手段が、移動の際に引き上げ方向と横断する面でフレを有する場合がある。そのような場合であっても、そのフレに追随して、環状体105は動くことができる。
このような、環状体105により膜厚を制御する浸漬塗布法を適用することで、高粘度のポリイミド前駆体溶液102を用いることによる、円筒状芯体101上端部でのタレは少なくなり、簡易に膜厚を均一にすることができる。
次に、ブレード塗布方法について説明する。
ブレード塗布方法では、ポリイミド前駆体溶液を円筒状芯体外表面に流下させつつ、へらでポリイミド前駆体溶液を平坦化し、ポリイミド前駆体溶液の流下点とへらを円筒状芯体の一端から他の一端へ水平方向に移動させることにより、円筒状芯体の外表面にポリイミド前駆体溶液を塗布する。
図7を参照してブレード塗布方法について説明する。図7は、ブレード塗布方法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。ただし、図7では塗布主要部のみを示し、他の装置は省略している。図7において、円筒状芯体201を矢印方向に回転させながら、ポリイミド前駆体溶液を容器202から、ノズル204を通して、流下させる。ノズル204は容器202に取り付けてもよいが、両者を離して管で連結し、容器202を別置きに固定してもよい。
流下したポリイミド前駆体溶液は、へら203により平坦化される。へら203を通過した直後は、筋が残ることがあるが、ポリイミド前駆体溶液の流動性により、筋は時間と共に消滅する。ノズル204とへら203とを連動させ、円筒状芯体201の一端から他の一端へ水平方向に移動させることにより、円筒状芯体201の表面全面にわたって塗布することができる。その移動速度が塗布速度である。
塗布時の条件は、円筒状芯体201の回転速度が20〜200rpmであり、塗布速度Vは、円筒状芯体201の外径k、ポリイミド前駆体溶液の流下量f、所望の濡れ膜厚tと関係があり、V=f/(t・k・π)の式で表わされる。ここで、πは円周率を示す。
ポリイミド前駆体溶液を流下させる場合、粘度が高いポリイミド前駆体溶液は、重力だけでは自然に流下しにくいので、エア圧やポンプで押し出すことも有効である。ノズル204と円筒状芯体201の距離は任意でよいが、流下液が途切れることがないよう、10〜100mm程度が好ましい。液の途切れが生じると、泡を巻き込むことがあるからである。
へら203は、ポリイミド前駆体溶液に侵されない材料、例えば、ポリエチレンやフッソ樹脂等のプラスチック、または、真鍮やステンレス等の金属の薄い板からなり、弾力性を有するもので形成される。これを幅10〜50mmに成形し、軽く円筒状芯体201に押し当てる。ポリイミド前駆体溶液が通過すれば、へら203は円筒状芯体201からある隙間をもって離れ、その際にポリイミド前駆体溶液を押し広げるのである。本塗布方法に好ましいポリイミド前駆体溶液の濃度は、10〜25重量%、粘度は10〜1000Pa・s程度である。へら203がない場合、流下したポリイミド前駆体溶液は筋状のまま円筒状芯体201上に付着し、平坦になることはない。
塗布面は、円筒状芯体201の全面に亘って形成されてはおらず、両端に多少の不塗布部が残される。なお、円筒状芯体201の両端に、円筒状芯体201の外径と同じ外径の円筒体を取り付けて、その円筒体にも塗布するようにすれば、円筒状芯体201の全面に亘って塗膜を形成することもできる。その場合は、塗布後に円筒体を取り外し、塗膜を洗浄すればよい。
(前駆体乾燥工程)
前駆体乾燥工程では、円筒状芯体外表面に形成されたポリイミド前駆体塗膜中に含まれる非プロトン系極性溶剤を除去する。溶剤除去方法として、熱風乾燥炉等にポリイミド前駆体が外表面に塗布された円筒状芯体を置き、ポリイミド前駆体塗膜を乾燥させる方法が一般的であるが、これに限定されるものではない。
本実施の形態の製造方法では、アルミニウム又はアルミニウム合金を、銀又は銅の少なくとも一方、又は両方を添加した電解液中で陽極酸化処理し、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に、銀または銅の少なくとも一方を含むアルミニウム陽極酸化皮膜が形成された芯体金型を用いる。
この芯体金型を用いる事で、乾燥や焼成時に芯体表面の温度分布が小さくなり、温度が上昇しやすい芯体金型の端部と上昇し難い芯体中央部で温度上昇時に温度の差異が小さくなる。その結果、芯体両端と中央の塗膜の溶媒揮発速度差が小さくなると共に、イミド化反応の速度差も小さくなる。この結果、芯体中央部の塗膜中及び塗膜と芯体間に滞留したガスが両端からも外部に放出しやすくなり、熱によって膨張することによるポリイミド前駆体塗膜の膨れを防ぐことができる。特に、従来の方法では、長手方向中央部において、揮発したガスが逃げ難いために膨れが生じ易く、ポリイミド前駆体塗膜の外径が中央部で大きくなる所謂クラウン形状になり易かったが、本実施の形態の製造方法では、長手方向に亘って一様に揮発したガスが逃げ易いため、ポリイミド前駆体塗膜の外径を長手方向に亘って略均一に形成することが可能となる。
また、乾燥中に重力の影響により、円筒状芯体101表面に形成されたポリイミド前駆体塗膜が垂れる場合には、円筒状芯体101を、軸方向を水平にして、10〜60rpm程度で回転させながら乾燥させることも好ましい。さらに、熱風の温度は50〜250℃の範囲内が好ましく、乾燥時間は20〜200分程度が好ましい。
(樹脂皮膜形成工程)
樹脂皮膜形成工程では、前駆体乾燥工程を経て乾燥されたポリイミド前駆体塗膜に対して加熱を行い、ポリイミド樹脂皮膜を形成する。その際の加熱条件は、350〜450℃の温度範囲で、20〜60分間程度である。その場合に、形成されるポリイミド樹脂皮膜に膨れが生じにくいよう、設定温度に達するまで一気に上昇させるのではなく、段階的に上昇させたり、ゆっくりと一定速度で上昇させたりすることが好ましい。
次に、上記した樹脂皮膜形成工程による加熱処理を経て円筒状芯体101表面に形成されたポリイミド樹脂皮膜を、円筒状芯体101から剥離することにより無端ベルトを得る。そして、この無端ベルトがエンドレスベルト62として使用される。さらに、このようにして得られた無端ベルトには、更に必要に応じて端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等が施されることもある。
ここで、本実施の形態におけるシームレス管状体の製造方法により無端ベルトを得る場合、無端ベルトの内周面とは、円筒状芯体101表面に接していた面を意味する。
なお、前駆体乾燥工程と樹脂皮膜形成工程との間に、ポリイミド前駆体塗膜の表面に離型層を形成する離型層形成工程を含めることもできる。離型層形成工程は、次のように行うことができる。
(離型層形成工程)
離型層形成工程では、前駆体乾燥工程において、静置しても塗膜が変形しない程度に乾燥されたポリイミド前駆体塗膜に対し、例えばフッ素樹脂のような離型性の樹脂を塗布し、離型層を形成する。
ここで、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、ポリエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等が挙げられ、特に耐熱性、機械特性等の観点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)が好適に用いられる。
また、離型層であるフッ素系樹脂層には、耐摩耗性や静電オフセットの向上のためにフィラーを添加してもよい。かかるフィラーとしては、無機物からなるものが好ましく、特に具体的には、硫酸バリウム、合成マイカ、グラファイト、カーボンブラック等のうち、少なくとも1種類以上が分散されていることが好ましい。
かかるフッ素系樹脂層を形成するには、その水性の分散液をポリイミド前駆体塗膜の表面に、上述した浸漬塗布法を用いて塗布する。また、ポリイミド前駆体塗膜とフッ素系樹脂層との密着性が不足する場合には、必要に応じて、ポリイミド前駆体塗膜表面にプライマー層をあらかじめ塗布形成しておく方法がある。プライマー層の材料としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミドおよびこれらの誘導体等が挙げられ、さらにフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物を含むことが好ましい。また、プライマー層の厚さとしては、0.5〜10μmの範囲が好ましい。
なお、プライマー層およびフッ素系樹脂層を形成する際には、本実施の形態の製造方法を利用して無端ベルトが得られた後に、無端ベルトの外周面にプライマー層およびフッ素樹脂皮膜を塗布または公知のフッ素樹脂チューブを被覆する方法を採ることも可能である。
芯体金型からのシームレス管状体となる皮膜の剥離が困難とならないように、芯体金型表面に離型剤を塗布してもよい。
続いて、本実施の形態における芯体金型を用いたシームレス管状体の内周面の凹凸について説明する。
上述したように、芯体表面に形成されたポリイミド前駆体塗膜を加熱して乾燥させた場合に、塗膜中に残留する溶剤等が気化して発生するガスによって、ポリイミド樹脂皮膜に膨れが発生する場合があった。そのため、従来においては、加熱処理した際に、塗膜中に発生するガスを効果的に放出することができるように、芯体表面に均一にブラスト加工を施すことにより、芯体表面に表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.6〜1.0μm程度で、芯体の周方向と軸方向に均一な粗さをもつ粗面を形成している。
一方、図3に示す定着装置60においては、エンドレスベルト62がベルト内周面をエンドレスベルト62の内部に配置された圧力パッド64と摺擦させつつ、固定された圧力パッド64に対して相対的に移動するような状態で使用されているので、圧力パッド64との摩擦によりベルト内周面が磨耗し、エンドレスベルト62が損傷に至ったり、その磨耗紛により圧力パッド64とベルト内周面との摺動抵抗が上昇し、エンドレスベルト62の回動不良を生じる可能性があった。
そこで、圧力パッド64とエンドレスベルト62との間の摺動抵抗を下げるために、シート状の低摩擦シート68を配置し、さらに低摩擦シート68上に摺動抵抗を下げるためにシリコーンオイル等の耐熱性の潤滑剤を付与している。
このような定着装置60において、ブラスト加工により均一に凹凸加工された粗面からなる内周面をもつエンドレスベルト62は、内周面が平滑化されたものと比較して、ベルト内周面の潤滑剤の保持能力が向上し、経時的な使用による潤滑剤の減少を抑制することができることから、エンドレスベルト62の耐久性能が改善されるという効果を有している。
しかしながら、均一な粗面の内周面をもつエンドレスベルト62においては、エンドレスベルト62が回動した際に発生する摺動音が問題となる場合がある。この摺動音とは、均一に粗面化された内周面の凹凸が、低摩擦シート68と摺動した際に発生し、ベルト内周面の表面粗さが大きいほど摺動音が大きくなることから、潤滑剤の保持能力との両立が難しいと考えられていた。
そこで、エンドレスベルト62内周面の表面粗さについて種々の検討を加えたところ、エンドレスベルト62の周方向に切削加工を施す等の加工によって、内周面の周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さい形状とすれば、潤滑剤の保持能力を確保することができると同時に、エンドレスベルト62の回動方向に沿った方向の内周面の凹凸が小さくなることから、摺動音を抑制することもできることが判明した。
なお、図2に示す芯体101表面の表面粗さRaと、作製されるエンドレスベルト62内周面の表面粗さRaとの関係は略直線的で、芯体101表面の表面粗さRaが大きくなるにしたがって、エンドレスベルト62内周面の表面粗さRaも大きくなる。したがって、芯体101表面の表面粗さRaを調整することによって、エンドレスベルト62内周面の表面粗さRaを所望の値に設定することができる。一方、エンドレスベルト62外周面の表面粗さRaは、エンドレスベルト62の膜厚(以下、「ベルト膜厚」と略す。)によっても左右される。
その際に、芯体101表面の周方向の表面粗さRaは、芯体101表面の軸方向の表面粗さRaよりも小さければ特に限定されないが、周方向の表面粗さRaは、ガス抜き性能には依存していないために、ベルト膜厚によらず、0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることが特に好ましい。エンドレスベルト62の内周面周方向の表面粗さRaが、0.5μm以上の場合には、エンドレスベルト62を回転させた際の負荷トルクが大きくなったり、摺動音が大きくなったりする場合がある。一方、エンドレスベルト62の外周面の表面粗さRaは、使用目的によって異なるが、総じて外周面の表面粗さRaが1.5μm以上となると、画像欠陥等の問題が生じ易くなる場合があるため、エンドレスベルト62の外周面の表面粗さRaは、1.5μm以下であることが好ましい。
また、エンドレスベルト62のベルト膜厚は、20〜200μmの範囲であることが好ましく、30〜140μmの範囲がより好ましく、50〜120μmの範囲内が特に好ましい。
このような芯体101を用いて作製されたエンドレスベルト62を、定着装置60において用いた場合には、エンドレスベルト62回動時の負荷トルクを小さくしつつ、摺動音を低減することが可能となる。
また、ここでの表面粗さRaとは、粗さの尺度の一つである算術平均粗さであり、公知の触針式表面粗さRa測定機(例えば、サーフコム1400A:東京精密社製)を使用して測定することができる。
本実施の形態のエンドレスベルト62における表面粗さRaの測定は、サーフコム1400Aを用いて、JIS B0601-1994に準拠し、評価長さLn=4mm、基準長さL=0.8mm、カットオフ値=0.8mmからなる測定条件で実施されたものである。なお、これ以外の条件で測定することも可能であるが、上記した測定条件と相関が取れる条件で測定されることが好ましく、測定された値は、上記した測定条件で評価した値に換算することにより評価される。
このように、図3に示す本実施の形態の定着装置60において、エンドレスベルト62内周面の周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さい形状とすることにより、エンドレスベルト62回転時の負荷トルクを低減しつつ、エンドレスベルト62を回動した際の摺動音を抑制することが可能となる。なお、「小さい」とは、表面粗さRaを測定した際の測定誤差の範囲や、エンドレスベルト62製造時のバラツキの範囲を明かに超えて小さいことを意味し、具体的には内周面軸方向の表面粗さRaに対する内周面周方向の表面粗さRaの比(周方向表面粗さRa/軸方向表面粗さRa)が、0.95以下であることを意味する。
さらに、上述した本実施の形態の芯体金型を用いた場合、得られるエンドレスベルト62の幅方向中央部の膨れ現象が抑制されるために、エンドレスベルト62の中央部と両端部との外径差比を0.3%以下に形成することができる。そのため、ニップ部Nを通過する用紙Pに対して、エンドレスベルト62から幅方向に亘って略均一な摩擦力が作用するように、エンドレスベルト62の回動速度を幅方向に略等速に設定することができるので、用紙Pの搬送速度を両端部ほど速く設定して、用紙Pに対し中央部から両端部に向かう幅方向の力を有効に作用させることが可能となる。そのため、用紙Pにおける紙しわの発生や、画像グロスむら等の画像不良の発生を抑制することができる。
なお、本実施の形態のエンドレスベルト62は、少なくともポリイミド樹脂を含む無端ベルトであれば特に限定されない。ただし、本実施の形態において、「少なくともポリイミド樹脂を含む無端ベルト」とは、ポリイミド樹脂層、あるいは、ポリイミド樹脂を主成分とする層からなる単層の無端ベルト(以下、「単層無端ベルト」ともいう。)のみに限定されるものではなく、単層無端ベルトの内周面および/または外周面に他の層を積層した2層以上の構成を有する無端ベルト(以下、「多層無端ベルト」ともいう。)をも意味する。
また、主成分とは、単層無端ベルト中のポリイミド樹脂の含有量が50質量%以上であることを意味する。
[画像形成装置]
次に、本願発明の画像形成装置の定着手段に用いる2種類の定着装置について、以下に例示して説明する。
[実施の形態1]
図3は本実施の形態が適用される定着装置を示した概略構成図である。図3に示す定着装置60は、例えば複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置において、記録材(記録紙)である用紙Pに転写されたトナー像を用紙Pに定着する機能を有している。そして、図3に示すように、定着装置60は、回動部材の一例としての定着ロール61、ベルト部材の一例としてのエンドレスベルト62、およびエンドレスベルト62を介して定着ロール61から押圧される圧力部材の一例としての圧力パッド64により主要部が構成されている。
定着ロール61は、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に耐熱性弾性体層612、および離型層613を積層して構成された円筒状ロールであり、回転自在に支持されて所定の表面速度で回転する。
定着ロール61の内部には、発熱源として、例えば定格600Wのハロゲンヒータ66が配設されている。一方、定着ロール61の表面には温度センサ69が接触して配置されている。画像形成装置の制御部(不図示)は、この温度センサ69による温度計測値に基づいてハロゲンヒータ66の点灯を制御し、定着ロール61の表面温度が所定の設定温度(例えば、175℃)を維持するように調整している。
エンドレスベルト62は、継ぎ目がない無端状のベルトであり、エンドレスベルト62の内部に配置された圧力パッド64と、上流側ベルトガイド部材63aおよび下流側ベルトガイド部材63b、さらにはエンドレスベルト62の両端部に配置されたベルト規制部材の一例としてのエッジガイド部材80(後段の図8参照)によって回動自在に支持されている。そして、ニップ部Nにおいて定着ロール61に対して圧接されるように配置され、定着ロール61に従動して回動する。
ここで、図8はエンドレスベルト62が支持される構成を説明する図であり、用紙Pの搬送方向下流側から見た定着装置60の一方の端部領域を示している。
図8に示したように、エンドレスベルト62の幅方向両端部は、エンドレスベルト62の内部に配置されたホルダ65の両端部に固設されたエッジガイド部材80によって支持されている。エッジガイド部材80は、ニップ部Nとその近傍に対応する部分に切り欠きが形成された円筒状、すなわち断面がC形状のベルト走行ガイド部801、このベルト走行ガイド部801の外側に設けられ、エンドレスベルト62の外径よりも大きな外径で形成されたフランジ部802、さらにエッジガイド部材80の外側面に設けられ、エッジガイド部材80を定着装置60本体に位置決めして固定するための保持部803で構成されている。
そして、エンドレスベルト62は、エンドレスベルト62の幅方向両端部において、両端部の内周面がエッジガイド部材80に支持されながら、定着ロール61に従動して回動する。また、エンドレスベルト62は、フランジ部802によってエンドレスベルト62の幅方向への移動(ベルトウォーク)が制限され、エンドレスベルト62に片寄りが生じるのが抑えられている。
一方、エンドレスベルト62の幅方向両端部を除く領域では、エンドレスベルト62は圧力パッド64と、上流側ベルトガイド部材63aおよび下流側ベルトガイド部材63bとに支持されている(図3も参照)。そして、エンドレスベルト62の両端部を除く領域では、エンドレスベルト62の内周面が、圧力パッド64および上流側ベルトガイド部材63a上を覆うように配置された低摩擦シート68と、下流側ベルトガイド部材63bとに摺擦しながら回動する。
上流側ベルトガイド部材63aおよび下流側ベルトガイド部材63bは、エンドレスベルト62の内部に配置されたホルダ65に、長手方向に沿って取り付けられている。そして、エンドレスベルト62の内周面と直接摺擦する下流側ベルトガイド部材63bは、エンドレスベルト62がスムーズに回動することができるように摩擦係数が低い材質であって、かつ、エンドレスベルト62から熱を奪い難いように熱伝導率が低い材質で形成されている。具体的にはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリフェニレンサルファイド(PPS)等の耐熱性樹脂が用いられる。
一方、低摩擦シート68を介してエンドレスベルト62の内周面と摺擦する上流側ベルトガイド部材63aも、熱伝導率が低い材質で形成されている。次に、圧力パッド64は、エンドレスベルト62の内側において金属製のホルダ65に支持されている。そして、エンドレスベルト62を介して定着ロール61に押圧される状態で配置され、定着ロール61との間でニップ部Nを形成している。圧力パッド64は、ニップ部Nの入口側(上流側)に、幅の広いニップ部Nを確保するためのプレニップ部材64aを配置している。また、ニップ部Nの出口側(下流側)には、定着ロール61表面を局所的に押圧することで、トナー像表面を平滑化して画像光沢を付与するとともに、定着ロール61表面に歪み(凹み)を与えて用紙Pにダウンカールを形成し、用紙Pを定着ロール61表面から剥離するための剥離ニップ部材64bを配置している。
また、圧力パッド64には、エンドレスベルト62の内周面と圧力パッド64との摺動抵抗を小さくするために、エンドレスベルト62と接する面に低摩擦部材の一例としての低摩擦シート68が設けられている。
低摩擦シート68は、ニップ部Nの上流側端部が下流側ベルトガイド部材63bによってホルダ65の底面に固定されている。そして、上流側ベルトガイド部材63aを覆うとともに、ニップ部Nの全域において、圧力パッド64とエンドレスベルト62内周面との間に挟持された状態で配設されている。なお、低摩擦シート68のニップ部N下流側は、低摩擦シート68に歪みが生じないように、固定されず自由端(フリー)の状態に設定されている。そして、低摩擦シート68は、ニップ部Nにおいて圧力パッド64と定着ロール61との間に押圧力が印加されている状態の下で、エンドレスベルト62内周面と圧力パッド64との摺動抵抗(摩擦抵抗)を低減している。
このような構成において、定着ロール61は、図示しない駆動モータに連結されて矢印C方向に回転し、この回転に従動してエンドレスベルト62も定着ロール61と同じ方向に回動する。画像形成装置においてトナー像が静電転写された用紙Pは、定着入口ガイド56によって導かれて、ニップ部Nに搬送される。そして、用紙Pがニップ部Nを通過する際に、用紙P上のトナー像はニップ部Nに作用する圧力と、定着ロール61から供給される熱とによって定着される。本実施の形態の定着装置60では、ほぼ定着ロール61の外周面に倣う凹形状のプレニップ部材64aによりニップ部Nを広く構成することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
なお、ニップ部Nの下流側近傍には、剥離ニップ部材64bによって定着ロール61から剥離された用紙Pを完全に定着ロール61から分離し、画像形成装置の排出部へ向かう排紙通路に誘導するための剥離補助部材70が配設されている。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール61と近接する状態でバッフルホルダ72によって保持されている。
次に、定着装置60を構成する各部材について詳細に述べる。まず定着ロール61では、コア611は、鉄、アルミニウム、SUS等の熱伝導率の高い金属で形成された、例えば外径30mm、肉厚1.8mm、長さ360mmの円筒体で構成されている。
耐熱性弾性体層612は、耐熱性の高い弾性体で構成され、特に、ゴム硬度が15〜45°(JIS−A)程度のゴム、エラストマー等の弾性体を用いるのが好ましい。具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を用いることができる。本実施の形態の定着装置60では、ゴム硬度が35°(JIS−A)のシリコーンHTVゴムを600μmの厚さでコア611に被覆している。
離型層613には、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂が用いられるが、トナーに対する離型性や耐摩耗性の観点から、フッ素樹脂が適している。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が使用できる。離型層613の厚さは、5〜50μmが好ましい。本実施の形態の定着装置60では、厚さ30μmのPFAが被覆されている。
エンドレスベルト62は、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じないように、原形が外径30mm、長さ340mmの円筒形状に形成された継ぎ目がない無端ベルトであり、ベース層と、このベース層の定着ロール61側の面(外周面)または両面に被覆された離型層とから構成されている。ベース層は、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂等のポリマーが耐熱性、機械特性等の観点から好適に用いられる。その厚さは、30〜200μm、好ましくは50〜125μm、より好ましくは70〜100μm程度に設定される。
ベース層の表面に被覆される離型層としては、フッ素樹脂が用いられる。ここで、フッ素樹脂としては、特に耐熱性、機械特性等の観点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)やそれらの混合物が好適に用いられる。その厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μm程度に設定される。
本実施の形態の定着装置60では、上述したシームレス管状体をエンドレスベルトとして用い、エンドレスベルト62として、周長94mm、厚さ70μm、幅320mmの熱硬化性ポリイミドからなるベース層に、厚さ30μmのPFAからなる離型層を積層した構成を用いている。
ここで、本実施の形態の外径30mmのエンドレスベルト62では、後段で述べる実施例と比較例との対比により、幅方向における中央部と両端部との外径差が100μm以下、より好ましくは50μm以下に設定している。このように、外径30mmのエンドレスベルト62において、エンドレスベルト62の中央部と両端部との外径差を100μm以下に形成することにより、定着ロール61に従動するエンドレスベルト62の回動速度を、ニップ部Nにおいて幅方向に亘って略等速に設定することができる。それにより、ニップ部Nを通過する用紙Pに対して、エンドレスベルト62から幅方向に亘る不均一な摩擦力が働くことが抑えられる。そのため、用紙Pにおける紙しわの発生や、画像グロスむら等の画像不良の発生が抑制される。
すなわち、トナー像が静電転写された用紙Pは定着装置60のニップ部Nを通過することによってトナー像が用紙Pに定着されるが、用紙Pがニップ部Nを通過する際の搬送力は、駆動側の定着ロール61から受けており、用紙Pは、定着ロール61の回転に伴って定着ロール61から摩擦力を受けて搬送されている。
一方、ニップ部Nに用紙Pが搬送されていない状態では、従動側のエンドレスベルト62も定着ロール61から摩擦力を受けることによって回動しているが、ニップ部Nに用紙Pが搬送され、用紙Pがニップ部Nに挟持されている状態では、エンドレスベルト62は用紙Pを介して定着ロール61から搬送力を受けている。したがって、用紙P側から捉えると、用紙Pがニップ部Nを通過する際には、用紙Pには、定着ロール61からの搬送力が働くと同時に、エンドレスベルト62側から搬送方向とは逆方向の摩擦力(逆搬送力)が作用することとなる。
したがって、仮にエンドレスベルト62の外径が幅方向において両端部より中央部のほうが大きい場合には、ニップ部Nにおけるエンドレスベルト62の回動速度が中央部よりも両端部で遅くなり、用紙Pは両端部に向かうほどエンドレスベルト62から大きな逆搬送力を受けることとなる。その場合には、用紙Pの搬送は両端部に向かうほど定着ロール61の回動に追随できなくなる。
特に、定着ロール61が中央部から両端部にかけて外径を大きくした所謂フレア形状に形成されたり、剥離ニップ部材64bと定着ロール61との間の押圧力が中央部から両端部にかけて大きくなるように設定されることによって、ニップ部Nにおいては、用紙Pの搬送速度を両端部ほど速くなるように構成して、常に用紙Pに対し中央部から両端部に向かう幅方向の力が作用するようにしている。そして、この幅方向の力によって用紙を両端部方向へ引っ張ることで、用紙Pに紙しわが生じるのを抑制している。ところが、用紙Pがエンドレスベルト62から両端部に向かうほど大きな摺動抵抗を受けると、このような用紙Pの幅方向に向かう力が作用しないこととなり、用紙Pに紙しわや画像グロスむらを生じさせることとなる。
具体的には、外径が30mmのエンドレスベルト62では、両端部と中央部との外径差が100μmを超えると、ニップ部Nでのエンドレスベルト62の回動速度が幅方向中央部で速く、両端部で遅くなるといったような速さのばらつきが大きくなり、そのために、ニップ部Nを通過する用紙Pに対して、エンドレスベルト62から幅方向に亘る不均一な摩擦力が作用する。すなわち、エンドレスベルト62の回動速度は、エンドレスベルト62の外径に比例するため、(両端部と中央部との外径差)/外径(=外径差比)が所定値を超えると、エンドレスベルト62の回動速度における幅方向中央部と両端部でのばらつきが大きくなって、ニップ部Nを通過する用紙Pに、エンドレスベルト62から幅方向に亘る不均一な摩擦力が作用する。そして、かかるエンドレスベルト62の回動速度におけるばらつきを、用紙Pに対する幅方向に亘る略均一な摩擦力が作用する程度に抑えるためには、後段で述べる実施例と比較例との対比により得られた結果に基づいて、外径差比を100μm/30mm≒0.3%以内に設定することが必要となる。
そこで、本実施の形態の定着装置60では、エンドレスベルト62の中央部と両端部との外径差比を0.3%以下に形成している。このように形成されたエンドレスベルト62により、上述したように、用紙Pの搬送速度を両端部ほど速くなるようにして、用紙Pに対し中央部から両端部に向かう幅方向の力を有効に作用させることが可能となる。そのため、用紙Pにおける紙しわの発生や、画像グロスむら等の画像不良の発生を抑制することができる。
次に、エンドレスベルト62の内部に配置された圧力パッド64は、上述したように、プレニップ部材64aと剥離ニップ部材64bとで構成されている。そして、プレニップ部材64aは、バネや弾性体によって定着ロール61を、例えば35kgfの荷重で押圧するようにホルダ65に支持されている。プレニップ部材64aには、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体や板バネ等を用いることができ、定着ロール61側の面は、ほぼ定着ロール61の外周面に倣う凹状曲面で形成されている。本実施の形態の定着装置60では、幅10mm、厚さ5mm、長さ320mmのシリコーンゴムを用いている。
剥離ニップ部材64bは、ホルダ65に直接的に支持され、ホルダ65が定着ロール61に対して所定の位置に設定されることで、定着ロール61に対して所定の押圧力を持って当接する。また、剥離ニップ部材64bは、PPS、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離ニップ部材64bの形状としては、ニップ部Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸状曲面に形成されている。
そして、本実施の形態の定着装置60では、エンドレスベルト62は、この圧力パッド64(プレニップ部材64aおよび剥離ニップ部材64b)により定着ロール61に約40°の巻き付き角度でラッピングされ、約10mm幅のニップ部Nを形成している。
さらに、下流側ベルトガイド部材63bの底面には、定着装置60の長手方向に亘って潤滑剤塗布部材67が配設されている。潤滑剤塗布部材67は、エンドレスベルト62内周面に対して接触するように配置され、潤滑剤を適量供給する。これにより、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との摺動部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート68を介したエンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動抵抗をさらに低減して、エンドレスベルト62の円滑な回動を図っている。また、エンドレスベルト62の内周面や低摩擦シート68表面の摩耗を抑制する効果も有している。
なお、潤滑剤としては、定着温度環境下での長期使用に対する耐久性を有し、かつ、エンドレスベルト62内周面との濡れ性を維持できるものが適している。例えば、シリコーンオイルやフッ素オイル等の液体状のオイルや、固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース等、さらにはこれらを組み合わせたものを用いることができる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩添加ジメチルシリコーンオイル、ヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩およびヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、有機金属塩添加アミノ変性シリコーンオイル、ヒンダードアミン添加アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイル等を用いることもできる。また、フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルオイル、変性パーフルオロポリエーテルオイルを用いることもできる。本実施の形態の定着装置60では、アミノ変性シリコーンオイルを用いている。
[実施の形態2]
実施の形態1では、発熱源を有する定着ロール61に対して、加圧手段として圧力パッド64が押圧されたエンドレスベルト62が用いられる定着装置60について説明した。実施の形態2では、加熱手段として発熱源が押圧された定着ベルトを用いる定着装置について説明する。尚、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図9は、本実施の形態における定着装置90の構成を示す側断面図である。図9に示すように、本実施の形態の定着装置90では、シームレス管状体を定着ベルト92として用い、この定着ベルト92が用紙Pのトナー像担持面側に配置されている。定着ベルト92の内側に発熱源の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ82が配設され、セラミックヒータ82からニップ部Nに熱を供給するように構成している。
セラミックヒータ82は、加圧ロール91側の面がほぼフラットに形成されている。そして、定着ベルト92を介して加圧ロール91に押圧される状態で配置され、ニップ部Nを形成している。したがって、セラミックヒータ82は圧力部材としても機能している。ニップ部Nを通過した用紙Pは、ニップ部Nの出口領域(剥離ニップ部)において定着ベルト92の曲率の変化によって定着ベルト92から剥離される。
さらに、定着ベルト92内周面とセラミックヒータ82との間には、定着ベルト92の内周面とセラミックヒータ82との摺動抵抗を小さくするため、摺擦部材の一例としての低摩擦シート68が配設されている。この低摩擦シート68は、セラミックヒータ82と別体に構成しても、セラミックヒータ82と一体的に構成しても、いずれでもよい。
一方、回動部材の一例としての加圧ロール91は定着ベルト92に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印D方向に回転し、この回転により定着ベルト92が従動回転するように構成されている。加圧ロール91は、コア (円柱状芯金)911と、コア911の外周面に被覆した耐熱性弾性体層912と、さらに耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層913とが積層されて構成されている。
また、定着ベルト92は、原形が円筒形状に形成された無端ベルトであり、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂等からなるベース層921と、このベース層921の加圧ロール91側の面(外周面)または両面に被覆された、フッ素樹脂等からなる離型層922とで構成されている。
ここで、定着ベルト92は、定着ベルト92の内部に配置されたセラミックヒータ82と、上流側ベルトガイド部材93aおよび下流側ベルトガイド部材93b、さらには定着ベルト92の両端部に配置されたベルト規制部材の一例としてのエッジガイド部材(不図示)によって回動自在に支持されている。本実施の形態の定着装置90では、低摩擦シート68はセラミックヒータ82だけを覆うように構成されているため、上流側ベルトガイド部材93aおよび下流側ベルトガイド部材93bが、ともに定着ベルト92の内周面と直接摺擦しながら定着ベルト92を支持している。
そして、画像形成装置においてトナー像が静電転写された用紙Pは、定着入口ガイド56によって定着装置90のニップ部Nに導かれる。用紙Pがニップ部Nを通過する際には、用紙P上のトナー像は、ニップ部Nに作用する圧力と、定着ベルト92側のセラミックヒータ82から供給される熱とによって定着される。本実施の形態の定着装置90でも、加圧ロール91とセラミックヒータ82との間でニップ部Nを広く構成することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
なお、定着後の用紙Pを定着ベルト92から完全に分離するための補助手段として、定着ベルト92のニップ部Nの下流側に、剥離補助部材70を配設することも可能である。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト92の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト92と近接する状態でバッフルホルダ72によって保持されている。
本実施の形態の定着装置90では、定着ベルト92が実施の形態1で記載した製造方法により製造されている。それにより、定着ベルト92の幅方向における外径が略均一に形成されている。そのため、加圧ロール91に従動する定着ベルト92の回動速度を、ニップ部Nにおいて略等速に設定することができる。それにより、ニップ部Nを通過する用紙Pに対して、定着ベルト92から幅方向に亘る不均一な摩擦力が働くことが抑えられるため、用紙Pにおける紙しわの発生や、画像グロスむら等の画像不良の発生が抑制される。特に、かかる製造方法により製造された外径差比が0.3%以下の定着ベルト92を用いることで、用紙Pにおける紙しわの発生や、画像グロスむら等の画像不良の発生を抑制する効果が顕著となる。
また、かかる製造方法によれば、定着ベルト92内周面の周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さい形状とした定着ベルト92を製造する際にも、定着ベルト92の幅方向における外径差が略均一であって、外径差比が0.3%以下に形成することができる。そのため、かかる定着ベルト92を用いた定着装置90では、定着ベルト92内周面における潤滑剤の保持能力を向上できるので、回転時の負荷トルクを低減すると同時に、定着ベルト92を回動した際の摺動音を許容レベルに抑制することが可能となる。
なお、実施の形態1,2では、定着装置60,90に用いられる無端ベルトについて説明した。しかしながら、本発明はかかる形態に限定されることはない。すなわち、例えば、画像形成装置に用いられる中間転写ベルトに適用することができる。また、感光体ベルトや接触帯電フィルムに適用することもできる。
その際に、中間転写ベルトや接触帯電フィルムのような帯電体として使用する場合には、無端ベルト中に導電性粒子を分散させることができ、本実施の形態の無端ベルト製造方法を利用して無端ベルトを作製する場合には、ポリイミド前駆体溶液にこれらの導電性粒子を添加することが好ましい。
導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO−In複合酸化物等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等を用いることができる。
<好ましい態様>
(i)芯体金型の外周面が、離型剤で被覆され、その外周面の水の接触角が70°〜110°であるシームレス管状体の製造方法。
(ii)前記加熱工程は、溶媒を一定量揮発させる乾燥工程と、その後溶媒を略揮発させる焼成工程に分かれ、その乾燥工程後の耐熱性樹脂組成物塗膜の表面に、所定の膜厚の耐熱性離型性材料を塗布する耐熱性離型層塗布工程をさらに含むシームレス管状体の製造方法。
(iii)更に、前記加熱工程は、溶媒を一定量揮発させる乾燥工程と、その後溶媒を略揮発させる焼成工程に分かれ、その乾燥工程後の耐熱性樹脂組成物塗膜の表面に、所定の膜厚の耐熱性離型性材料を塗布する耐熱性離型層塗布工程をさらに含むシームレス管状体の製造方法。
(iv)前記耐熱性樹脂組成物の表面に耐熱性ゴム層を形成するゴム層形成工程をさらに含むシームレス管状体の製造方法。
(v)前記塗布工程は、外表面に、周方向の表面粗さが軸方向の表面粗さよりも小さい凹凸が形成された筒状の芯体金型を用いるシームレス管状体の製造方法。
(vi)筒状芯体の外表面に、液状の耐熱性樹脂組成物を所定の膜厚で塗布し当該組成物の塗膜を形成し、その後加熱工程を経ることによって耐熱性樹脂組成物成形し、成形した耐熱性樹脂組成物を芯体から外す工程を有するシームレス管状体の製造方法。
(vii)前記耐熱性樹脂組成物として、芳香族系ポリイミド前駆体を主成分とする溶液が用いられるシームレス管状体の製造方法。
(viii)円筒状の芯体金型の外表面上で形成される無端ベルトであって、管状の耐熱性樹脂層と、耐熱性樹脂層の外表面に形成された離型層とを有し、耐熱性樹脂層は、前記筒状の芯体金型として、アルミニウム又はアルミニウム合金を、銀又は銅の少なくとも一方、又は両方を添加した電解液中で陽極酸化処理した基材を用いて、筒状芯体の外表面に、液状の耐熱性樹脂組成物を所定の膜厚で塗布し当該組成物の塗膜を形成し、その後加熱工程を経ることによって耐熱性樹脂組成物成形し、成形した耐熱性樹脂組成物を芯体から外す工程にて形成されたことを特徴としている。
(ix)前記耐熱性樹脂製シームレスベルトは、長手方向両端部と中央部との外径差が外径の0.3%以下に形成されている。
(x)本発明の定着装置は、記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、回動部材と、回動部材に接触しながら移動可能なベルト部材とを備え、ベルト部材は、内表面側からの加熱により乾燥されることで形成されたことを特徴としている。
ここで、ベルト部材の内側に配置され、ベルト部材を回動部材に圧接させて回動部材とベルト部材との間に記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材をさらに備えた構成とすることができる。また、回動部材を加熱する加熱部材、またはベルト部材を加熱する加熱部材をさらに備えた構成とすることができる。
以下、実施例およびこれに対する比較例に基づき、本実施の形態の図3に示すエンドレスベルト62または図9に示す定着ベルト92の製造方法を具体的に説明する。なお、本実施の形態の図3に示すエンドレスベルト62および図9に示す定着ベルト92の製造方法は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
芯体金型表面へのポリイミド前駆体を含む溶液(以下、「PI前駆体溶液」と略す。)の塗布は、図4に示す構成を有する塗布装置を用いて以下のように実施した。
PI前駆体溶液としては、PI前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:UワニスS、宇部興産(株)製、固形分濃度:18質量%、粘度:約5Pa・s)を利用し、これを内径80mm、高さ600mmの円筒容器からなる塗布槽に満たした。
また、芯体基材としては、外径30mm、長さ500mmの5000系のアルミ合金製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより、芯体表面の表面粗さRaが、軸方向で、2.0μm、周方向で、0.4μmとしたものを用意した。さらに芯体金型表面を以下の方法で高熱伝導性の陽極酸化処理を行った。
まず、図1に示す前記芯体基材が十分浸漬できるだけの大きさと深さをもつ電解槽31内の両側に間隔をもって、カーボン電極32a,32bが配置され、その電極対の間に、被処理物である、筒状芯体33が配置される。この電解槽31内に、筒状芯体32及び一対の電極32a,33bが浸漬する表面処理するよう電解液が満たされる。電解液は、硫酸浴やシュウ酸浴やその混合物が用いられ、この浴に硝酸銀や硝酸銅又は硫酸銀や硫酸銅を添加する。添加量は、3g〜10g/リットル程度が好ましく、ここでは、硫酸170g/リットルの水溶液からなる硫酸浴中に硝酸銀を6g/リットルとなるように添加した。
筒状芯体33に表面処理を施すには、筒状芯体33に交流とプラスの直流が重畳された電流を加える。この電流密度としては、1〜10A/dm2範囲が好ましく、電解浴液の温度としては、0℃〜20℃前後が好ましく、夫々ここでは、4A/dm2、6℃とし、交流と直流の電流比率を1:1として、60分間処理した所、50μmの陽極酸化皮膜が形成され、表面硬度はビッカ-ス硬度で500HV、表面の熱伝導率が240W/(m・K)であった。
この陽極酸化皮膜により芯体金型表面の硬度が向上することで、エンドレスベルト製造時の芯体金型のキズの発生が抑制され、又、前述の銀や銅の析出により、熱伝導性が向上することが可能となる。
更に表面にはシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、330℃で1時間、焼き付け処理した。
一方、環状体としては、外径65mm、内径40mm、高さ30mmのステンレス製の中空状リングの内側に、外径が40mmで、断面が三角形であるテフロン(登録商標)製リングを嵌合させたものを用いた。このテフロン(登録商標)製リングの最小孔径は31.3mmであった。
次に、環状体を塗布溶液に浮かべた後、環状体を動かないよう固定し、芯体の軸方向を垂直にして、環状体の孔へ500mm/minの速度で挿入し、浸漬した。次いで環状体の固定を解除し、150mm/minの速度で芯体を引き上げた。引き上げ途中では環状体が芯体に接触することはなく、芯体表面には濡れ膜厚が約650μmのPI前駆体塗膜が形成された。
続いて、PI前駆体塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉に入れた。設定温度は最初が30℃で、1時間後に120℃になるよう、徐々に温度が上昇するようにした。
その後、室温に冷却した乾燥処理後の芯体表面に形成されたPI前駆体塗膜の表面に、PFAのディスパージョン水性塗料(商品名:AD−2CR、ダイキン工業(株)製)を浸漬塗布した。
すなわち、乾燥後のPI前駆体塗膜がその表面に形成された芯体を、その長手方向を垂直にしてディスパージョン水性塗料中に浸漬し、次いで300mm/minの速度で引き上げ、PI前駆体塗膜表面に膜厚が20μmのPFA塗膜を形成した。
続いて室温で5分間の乾燥させた後、60℃で10分間加熱乾燥させることにより、PFA塗膜から水を除去した。その後、380℃で30分間加熱して、PI樹脂皮膜を形成すると共に、PFA塗膜を焼成した。室温に冷却後、芯体表面からPI樹脂皮膜を剥離することにより、膨れのない(両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、28μmであった)膜厚70μmのPI樹脂層の外周面に、膜厚20μmのPFA層が形成された実施例5の無端ベルト(電子写真用定着エンドレスベルト)を得ることができた。この無端ベルトのPI樹脂層とPFA層との間の密着性は十分であった。また、芯体金型表面には予め離型剤が塗布されていたため、剥離に際して、無端ベルトの内周面が芯体金型と接着することはなかった。
(実施例2)
芯体基材として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより軸方向の表面粗さRaを、1.0μm、周方向の表面粗さRaを、0.3μmとした以外は、実施例1と同様にして、芯体金型を製造し、この芯体金型を用いてPI膜厚が70μm、PFA膜厚が20μmで均一であり、膨れ欠陥のない(両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、16μmであった)、実施例2の無端ベルトを得た。
(実施例3)
芯体基材として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより軸方向の表面粗さRaを、0.5μm、周方向の表面粗さRaを、0.25μmとした以外は、実施例1と同様にして、芯体金型を製造し、この芯体金型を用いてPI膜厚が70μm、PFA膜厚が20μmで均一であり、膨れ欠陥のない(両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、8μmであった)、実施例3の無端ベルトを得た。
(実施例4)
芯体基材の表面を陽極酸化処理する際に、電解処理時間を30分とし、25μmの陽極酸化皮膜を形成し、ビッカ−ス硬度が460HV、熱伝導率が230W/(m・K)とした以外は実施例2と同様にして皮膜を作製した。ベルト膜厚が70μmと均一であり、膨れ欠陥のない(両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、30μmであった)、実施例4の無端ベルトを得ることができた。また、芯体金型表面には予め離型剤が塗布されていたため、剥離に際して、無端ベルトの内周面が芯体と接着することはなかった。
(実施例5)
実施例2に示す無端ベルトの製造過程において、室温に冷却した乾燥処理後の芯体金型表面に形成されたPI前駆体塗膜の表面に、PFAのディスパージョン水性塗料(商品名:AD−2CR、ダイキン工業(株)製)を浸漬塗布した。
すなわち、乾燥後のPI前駆体塗膜がその表面に形成された芯体金型を、その長手方向を垂直にしてディスパージョン水性塗料中に浸漬し、次いで400mm/minの速度で引き上げ、PI前駆体塗膜表面に膜厚が28μmのPFA塗膜を形成した。
続いて室温で5分間の乾燥させた後、60℃で10分間加熱乾燥させることにより、PFA塗膜から水を除去した。その後、380℃で30分間加熱して、PI樹脂皮膜を形成すると共に、PFA塗膜を焼成した。室温に冷却後、芯体金型表面からPI樹脂皮膜を剥離することにより、膨れのない(両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、28μmであった)膜厚70μmのPI樹脂層の外周面に、膜厚28μmのPFA層が形成された実施例5の無端ベルト(電子写真用定着エンドレスベルト)を得ることができた。この無端ベルトのPI樹脂層とPFA層との間の密着性は十分であった。
(実施例6)
実施例1に示す無端ベルトの製造過程において、室温に冷却した乾燥処理後の芯体金型表面に形成されたPI前駆体塗膜の表面に、耐熱性ゴム材料であるシリコーンゴムDY35−3030(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)をブレード塗布方法によって塗膜厚みで100μm塗布し、その後FEPのディスパージョン水性塗料(商品名:ネオフロンFEP、ダイキン工業(株)製)を浸漬塗布した。
すなわち、乾燥後のPI前駆体塗膜とその外側にシリコーンゴム樹脂がその表面に形成された芯体金型を、その長手方向を垂直にして前記ディスパージョン水性塗料中に浸漬し、次いで300mm/minの速度で引き上げ、PI前駆体塗膜表面に膜厚が20μmのPFA塗膜を形成した。
続いて室温で5分間の乾燥させた後、60℃で10分間加熱乾燥させることにより、FEP塗膜から水を除去した。その後、380℃で30分間加熱して、PI樹脂皮膜を形成すると共に、FEP塗膜を焼成した。室温に冷却後、芯体金型表面からPI樹脂皮膜を剥離することにより、膨れのない(両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、32μmであった)膜厚70μmのPI樹脂層の外周面に、膜厚70μmのシリコーンゴム層、その上に膜厚20μmのFEP層が形成された実施例6の無端ベルト(電子写真用定着エンドレスベルト)を得ることができた。この無端ベルトのPI樹脂層と、シリコーンゴム層、FEP層の各層間の密着性は十分であった。
(実施例7)
芯体基材の表面を陽極酸化処理する際に、電解液は、硫酸170g/リットルの水溶液からなる硫酸浴中に硝酸銅を7g/リットル添加し、図3に示す陽極酸化処理において、筒状芯体33に表面処理を施すには、筒状芯体33に交流とプラスの直流が重畳された電流を加えた。ここでは、電流密度5A/dm2、電解浴液の温度7℃とし、交流と直流の電流比率を1:1として、60分間処理した所、50μmの陽極酸化皮膜が形成され、表面硬度はビッカ-ス硬度で480HV、表面の熱伝導率が210W/(m・K)であった。
上記陽極酸化処理および得られた芯体金型の表面硬度、熱伝導率以外は実施例1と同様にして皮膜を作製した。ベルト膜厚が70μmと均一であり、膨れ欠陥のない(両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、33μmであった)、実施例7の無端ベルトを得ることができた。また、芯体表面には予め離型剤が塗布されていたため、剥離に際して、無端ベルトの内周面が芯体金型と接着することはなかった。
(実施例8)
芯体基材の表面に陽極酸化処理する際に、電解液は、硫酸170g/リットルの水溶液からなる硫酸浴中に硝酸銅を3g/リットル、硝酸銀を3g/リットル添加し、図3に示す陽極酸化処理において、筒状芯体33に表面処理を施すには、筒状芯体33に交流とプラスの直流が重畳された電流を加えた。ここでは、電流密度6A/dm2、電解浴液の温度5℃とし、交流と直流の電流比率を1:1として、60分間処理した所、50μmの陽極酸化皮膜が形成され、表面硬度はビッカ-ス硬度で500HV、表面の熱伝導率が235W/(m・K)であった。
上記陽極酸化処理および得られた芯体金型の表面硬度、熱伝導率以外は実施例1と同様にして皮膜を作製した。ベルト膜厚が70μmと均一であり、膨れ欠陥のない(両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、30μmであった)、実施例8の無端ベルトを得ることができた。また、芯体金型表面には予め離型剤が塗布されていたため、剥離に際して、無端ベルトの内周面が芯体金型と接着することはなかった。
(比較例1)
実施例1に示す無端ベルトの製造する過程において、芯体金型として硬質アルマイト処理(ビッカ-ス硬度380HV、熱伝導率75W/(m・K)、処理厚25μm、処理条件:シュウ酸6質量%濃度水溶液で、浴温12℃、電流密度:4A/dm、時間35分)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の無端ベルトを得た。 その結果、PI膜厚が70μm、PFA膜厚が20μmで均一であるが、両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、115μmである、中央部が膨れたベルトを得た。
(比較例2)
実施例3に示す芯体金型を用いて、実施例1に示す無端ベルトの製造する過程において、芯体として硬質アルマイト処理(ビッカ-ス硬度395HV、熱伝導率85W/(m・K)、処理厚40μm、処理条件:シュウ酸6質量%濃度水溶液で、浴温12℃、電流密度:5.5A/dm、時間35分)を用いた以外以外は実施例1と同様にして、室温に冷却した乾燥処理後の芯体表面に形成されたPI前駆体塗膜の表面に、PFAのディスパージョン水性塗料(商品名:AD−2CR、ダイキン工業(株)製)を浸漬塗布した。
すなわち、乾燥後のPI前駆体塗膜がその表面に形成された芯体を、その長手方向を垂直にしてディスパージョン水性塗料中に浸漬し、次いで300mm/minの速度で引き上げ、PI前駆体塗膜表面に膜厚が20μmのPFA塗膜を形成した。
続いて、室温で5分間の乾燥させた後、60℃で10分間加熱乾燥させることにより、PFA塗膜から水を除去した。その後、380℃で30分間加熱して、PI樹脂皮膜を形成すると共に、PFA塗膜を焼成した。室温に冷却後、芯体金型表面からPI樹脂皮膜を剥離することにより、膜厚70μmのPI樹脂層の外周面に、膜厚20μmのPFA層が形成された比較例2の無端ベルト(電子写真用定着エンドレスベルト)を得ることができたが、両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、102μmである、中央部が膨れたベルトを得た。なお、この無端ベルトのPI樹脂層とPFA層との間の密着性は十分であった。
(比較例3)
芯体金型として、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより軸方向の表面粗さRaを1.0μm、周方向の表面粗さRaを0.3μmとし、陽極酸化処理等せず脱脂するのみで、シリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、330℃で1時間、焼き付け処理した以外は、実施例2と同様にして、PI膜厚が70μm、PFA膜厚が20μmと均一であり、膨れ欠陥のない(両端部を除いたベルト全長450mmに対し、外径での差が、30μmであった)比較例3の無端ベルトを得た。
次に、これらのエンドレスベルト62を344mmにカットし、装着した定着装置60を、電子写真方式複写機(富士ゼロックス(株)製:Docu Center Color400)に設置し、未定着画像が担持された用紙P(富士ゼロックス(株)製:P紙A3サイズ)を通紙して、紙しわの発生率と画像グロスむら、画像欠陥とを評価した。
その結果、実施例1〜実施例8、および比較例3のエンドレスベルト62を用いた場合は、紙しわ発生率が0%であるのに対して、比較例1のエンドレスベルト62を用いた場合の発生率は25%、比較例2での発生率は10%であった。
また、実施例1〜実施例8、および比較例3のエンドレスベルト62を用いた場合には、画像のグロスむらが未発生であったのに対し、比較例1のエンドレスベルト62を用いた場合は、エンドレスベルト62の膨れ部分に対応したグロスむらが発生した。また、比較例2のエンドレスベルト62を用いた場合には、グロスむらは若干発生したが許容レベルであった。
このように、比較例1、比較例2のような外径が30mmのエンドレスベルト62では、両端部と中央部との外径差が100μmを超えると、ニップ部Nでのエンドレスベルト62の回動速度が幅方向中央部で速く、両端部で遅くなるといったような速さのばらつきが大きくなり、そのために、ニップ部Nを通過する用紙Pに対して、エンドレスベルト62から幅方向に亘る不均一な摩擦力が作用する。したがって、エンドレスベルト62の回動速度を幅方向に略等速に設定するためには、外径が30mmのエンドレスベルト62では、実施例1〜実施例6のような両端部と中央部との外径差が100μm以下、すなわち、外径差比を100μm/30mm≒0.3%以内に設定することが必要となる。
そして、外径差比を100μm/30mm≒0.3%以内に設定するように形成された実施例1〜8および比較例3のエンドレスベルト62により、用紙Pの搬送速度を両端部ほど速くなるようにして、用紙Pに対し中央部から両端部に向かう幅方向の力を有効に作用させることが可能となる。そのため、用紙Pにおける紙しわの発生や、画像グロスむら等の画像不良の発生を抑制することができる。
また、実施例2と比較例2と比較例3について、各々同じ条件で繰り返し10回、ベルトの製膜を行った。
その結果、実施例2と比較例2は特に異常なかったが、比較例3については、作業中のハンドリングにより、芯体表面に打痕キズが数個発生し、それがベルト上の突起となって転写した。
この突起のあるベルトを上記と同様に、344mmにカットし、装着した定着装置60を、電子写真方式複写機(富士ゼロックス(株)製:Docu Center Color400)に設置し、黒色トナーが全面に載った未定着画像が担持された用紙P(富士ゼロックス(株)製:P紙A3サイズ)を通紙して、画像欠陥とを評価した結果、ベルトの突起に相当する部分の、黒色画像のグロスむらが発生した。又同様な機械にて、マゼンタ色100%の画像の未定着画像を担持されたOHPシート(富士ゼロックス(株)製:OHPシートV516)を通紙したところ、ベルトの突起に相当する部分が、マゼンタ色の抜けた画像defectとなってしまった。
以上説明したように、本実施の形態の無端ベルト(エンドレスベルト62)の製造方法によれば、少なくとも、筒状の芯体金型の外表面に、液状の耐熱性樹脂組成物を所定の膜厚で塗布し当該組成物の塗膜を形成し、その後加熱工程を経ることによって耐熱性樹脂組成物成形し、成形した耐熱性樹脂組成物を芯体金型から外す工程をもつシームレス管状体の製造方法において、前記筒状の芯体金型として、アルミニウム又はアルミニウム合金を、銀又は銅の少なくとも一方、又は両方を添加した電解液中で陽極酸化処理したものを用いることにより、無端ベルトに膨れが生じることを抑えて、無端ベルトの長手方向における外径差を略均一に形成することが可能としながら、筒状芯体を繰り返し使用したときにも、上記陽極酸化処理による芯体表面の硬度向上により、ハンドリング中などで起き易い芯体表面の打痕などのキズを防止することができ、それによるベルトの歩留まり低下を抑制する事が可能となる。
さらに、かかる本実施の形態の製造方法により製造された無端ベルトをエンドレスベルト62として定着装置60に用いることにより、定着ロール61に従動するエンドレスベルト62の回動速度を、ニップ部Nにおいて幅方向に亘り略等速に設定することができる。それにより、ニップ部Nを通過する用紙Pに対して、エンドレスベルト62から幅方向に亘る不均一な摩擦力が働くことが抑えられるため、用紙Pにおける紙しわの発生や、画像グロスむら等の画像不良の発生が抑制される。
特に、本実施の形態の製造方法により製造された外径差比が0.3%以下のエンドレスベルト62を用いることで、用紙Pにおける紙しわの発生や、画像グロスむら等の画像不良の発生を抑制する効果が顕著となる。
また、本実施の形態の無端ベルトの製造方法によれば、エンドレスベルト62内周面の周方向の表面粗さRaが、内周面軸方向の表面粗さRaよりも小さい形状としたエンドレスベルト62を製造する際にも、エンドレスベルト62の幅方向における外径差が略均一であって、外径差比が0.3%以下に形成することができる。そのため、かかるエンドレスベルト62を用いた定着装置60では、エンドレスベルト62内周面における潤滑剤の保持能力を向上できるので、回転時の負荷トルクを低減すると同時に、エンドレスベルト62を回動した際の摺動音を許容レベルに抑制することが可能となる。
本発明の活用例として、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用、例えば記録紙(用紙)上に担持された未定着トナー像を定着する定着装置への適用、さらには転写ベルト、感光体ベルト、帯電ベルトへの適用がある。また、インクジェット方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用、例えば記録紙(用紙)上に担持された未乾燥インク像を乾燥する定着装置への適用がある。
陽極酸化処理槽を説明する、上方から見た概略構成図である。 芯体表面の周方向に形成された切削加工目の例を示す模式図である。 実施の形態1に係る定着装置の構成を示す側断面図である。 環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。 環状体の設置状態を説明するための要部拡大斜視図である。 環状体に設けられる孔の壁面の形状を示した図である。 ブレード塗布方法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。 エンドレスベルトが支持された状態を説明する定着装置の端部の断面図である。 実施の形態2に係る定着装置の構成を示す側断面図である。
符号の説明
31 電解槽、32a,32b 電極、33 筒状芯体、34 リアクタ、35 直流電源、36 交流電源、60,90 定着装置、61 定着ロール、62 エンドレスベルト、63 ベルトガイド部材、64 圧力パッド、64a プレニップ部材、64b 剥離ニップ部材、65 ホルダ、66 ハロゲンヒータ、67 潤滑剤塗布部材、68 低摩擦シート、69 温度センサ、70 剥離補助部材、82 セラミックヒータ、91 加圧ロール、92 定着ベルト、101,201 円筒状芯体(芯体)、102 ポリイミド前駆体溶液、103 塗布槽、104 塗膜、105 環状体、106 孔、107,108 壁面、202 容器、203 へら、204 ノズル。

Claims (5)

  1. アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に、銀または銅の少なくとも一方を含むアルミニウム陽極酸化皮膜が形成されたシームレス管状体用の芯体金型であり、
    前記芯体金型は、その表面のビッカース硬度が460HV以上500HV以下でかつ熱伝導率が210W/(m・K)以上240W/(m・K)以下であることを特徴とするシームレス管状体用の芯体金型。
  2. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯体基材を、銀または銅の少なくとも一方を添加した電解液中で陽極酸化処理を施し、ビッカース硬度が460HV以上500HV以下でかつ熱伝導率が210W/(m・K)以上240W/(m・K)以下である芯体金型を製造することを特徴とするシームレス管状体用の芯体金型の製造方法。
  3. 請求項1に記載のシームレス管状体用の芯体金型の外表面に、耐熱性樹脂組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
    前記塗膜を加熱成形する加熱成形工程と、
    加熱成形により得られた成形膜であるシームレス管状体を前記芯体金型から外す工程と、
    を有することを特徴とするシームレス管状体の製造方法。
  4. 請求項1に記載のシームレス管状体用の芯体金型の外表面に耐熱性樹脂組成物からなる塗膜を形成し、前記塗膜を加熱成形したのち、前記芯体金型から成形膜を外すことによって得られるシームレス管状体であり、
    前記シームレス管状体は、長手方向両端部と中央部との外径差が外径に対して0.3%以下で形成されていることを特徴とするシームレス管状体。
  5. 像担持体表面を帯電する帯電手段と、
    帯電された前記像担持体表面に画像情報に応じた静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
    前記像担持体表面に形成された前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を得る現像手段と、前記像担持体表面に形成された前記トナー像を記録媒体表面に転写する転写手段と、
    前記記録媒体表面に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を少なくとも含む画像形成装置であり、
    前記像担持体および前記転写手段において用いられる中間転写ベルト、前記定着手段において用いられる定着ベルトの少なくとも1つに請求項4に記載のシームレス管状体を用いることを特徴とする画像形成装置。
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