JP2005307204A - ポリブチレンテレフタレートペレット - Google Patents

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Abstract

【課題】 色調、耐加水分解性、透明性に優れ、異物が低減されたポリブチレンテレフタレート製フィルム、シート、モノフィラメントを得るためのポリブチレンテレフタレートペレット、およびその製造方法を提供する
【解決手段】 チタンを含有し且つその量がチタン原子として90重量ppm以下であり、ペレット全体の平均固有粘度が1.10〜2.00dL/gであるポリブチレンテレフタレートから構成され、以下の関係を満たすことを特徴とするポリブチレンテレフタレートペレット。
(IV−1.00)/2 ≧ ΔIV > 0 ・・・(1)
(式(1)中、IVはペレット全体の平均固有粘度(dL/g)、ΔIV(dL/g)はペレット中心部と表層部の固有粘度の差を表す)
【選択図】 なし

Description

本発明は、色調、透明性、耐加水分解性に優れ、異物が低減されたポリブチレンテレフタレート成形品、さらに詳しくはフィルム、シート、モノフィラメントを得るためのポリブチレンテレフタレートペレットに関する。
熱可塑性ポリエステル樹脂の中で代表的なエンジニアリングプラスチックスであるポリブチレンテレフタレートは、成形加工の容易さ、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、保香性、その他の物理的、化学的特性に優れていることから、自動車部品、電気・電子部品、精密機器部品などの射出成形品に広く使用されている。近年は、その優れた性質を活かし、フィルム、シート、モノフィラメントなどの分野でも広く使用される様になってきた。これらの用途では、通常押出成形で製品を得ることから射出成形に比べてより高い分子量のポリブチレンテレフタレートが求められている。
ポリブチレンテレフタレートは通常テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と1,4−ブタンジオールとを、触媒を使用してエステル化反応またはエステル交換反応を経て溶融重縮合を行った後、ペレット化し、必要に応じて固相重合して製造される。
ところが、ポリブチレンテレフタレートは、より高い温度で長時間置かれた方が、劣化が進んで色調の悪化や末端カルボキシル基濃度の上昇を招くことが知られており、製造時の熱履歴は、ポリブチレンテレフタレートが高分子量になるほど多く受けるため、一般的な溶融重合では、固有粘度が高いポリブチレンテレフタレートほどこの傾向が著しい。
これらを改良するために、溶融重合を比較的低温、短時間で行い、その後に、融点以下の温度で固相重合させることが広く行われている。固相重合は通常円柱状や球状のペレットの形で行われるが、重合により生成する低分子量成分の揮散が起こりやすい表層部は高分子量になりやすく、中心部は分子量が上がりにくいため、ペレット内で粘度差が生じるという問題がある。しかし、従来ポリブチレンテレフタレートが多く使用されていたガラス繊維や難燃剤等が混練された射出成形用コンパウンド製品では、ポリブチレンテレフタレートペレット内で粘度差があっても、混練の際に平準化されることも多く、またポリブチレンテレフタレート以外の成分も多いために、異物として顕在化することはなかった。ところが、フィルム、シート、モノフィラメント等の新しい用途では、通常練り効果の低いスクリューを用いて成形され、ポリブチレンテレフタレートやこれと混合される樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート)以外のフィラーや添加剤が少ないため、ポリブチレンテレフタレートペレット中に粘度差があり、更にその差が大きいと、特に高分子量部分が異物(フィッシュアイ)になりやすく、これらはフィルム、シートにおいては、商品価値を著しく落とし、モノフィラメントにおいては、これを基点に成形時に破断を起こすため問題となっていた。また、これらの用途では、上記のように分子量の高いポリブチレンテレフタレートが求められており、ペレット表層部と中心部の粘度差が大きくなる傾向あるため、フィシュアイの問題がよりクローズアップされる方向にあった。
他方、特許文献1では、固相重合をさせることなく、重合プロセス内に設置したフィルターを用いて、フィッシュアイ原因物質を取り除き、フィッシュアイを特定量以下にしたフィルムが開示されているが、使用している触媒のチタンの量が多いという問題があった。ポリブチレンテレフタレートの製造に使用される触媒は、プロセスの途中で除去されず、製品中にそのまま持ち越されるため、触媒量が多いとフィッシュアイの原因になり、例えフィルターで除去することができたとしても、フィルターライフが著しく短くなる。
また、残存触媒は、ポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基濃度の上昇や、着色を伴う反応を助長し、ポリブチレンテレフタレートの熱劣化の原因となるが、これは、ポリブチレンテレフタレート生産時の熱履歴だけでなく、成形時の熱履歴によっても起こる。従って、熱劣化防止の観点からは、重合時や成形時はできる限り温度を下げるほうが好ましいが、重合時の温度を下げて、同じ分子量のポリブチレンテレフタレートを得ようとすると重合時間を長くせざるを得ず、熱履歴に起因する問題点は何ら解決されないままであった。一方、触媒量を多くすれば、低温で重合時間を短くして同じ分子量のポリブチレンテレフタレートを得ることができるが、触媒は上記のように着色や劣化を促進するため、結局この方法によっても、品質の良い製品を得ることはできなかった。
触媒量を下げて、重合温度を下げ、重合時間を短くすると、必然的に低分子量のポリブチレンテレフタレートしか得られず、熱劣化を抑制しながら高分子量のポリブチレンテレフタレートを得ようとすれば、固相重合を行うしかないが、従来の方法で固相重合されたポリブチレンテレフタレートペレットには上記のようなフィッシュアイ生成の問題があり、特に成形時においても熱劣化を防止しようとして成型温度を低くすると、ペレット表層部の高分子量成分は益々中心部の低分子量領域と混ざりにくくなるため、フィッシュアイは増えてしまうというジレンマがあった。
特開2003−73488号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、色調、透明性、耐加水分解性に優れ、異物が低減されたポリブチレンテレフタレート製成形品、特にフィルム、シート、モノフィラメント及びそれらの原料となるペレット、並びにそれらの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、チタン触媒の含有量、およびペレットの中心部と表層部の固有粘度の差が特定値以下であるポリブチレンテレフタレートペレットを用いることによって、上記の課題を容易に解決し得ることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、チタンを含有し且つその量がチタン原子として90重量ppm以下であり、ペレット全体の平均固有粘度が1.10〜2.00dL/gであるポリブチレンテレフタレートから構成され、以下の関係を満たすポリブチレンテレフタレートペレットに存する。
(IV−1.00)/2 ≧ ΔIV > 0 ・・・(1)
(式(1)中、IVはペレット全体の平均固有粘度(dL/g)、ΔIV(dL/g)はペレット中心部と表層部の固有粘度の差を表す)
本発明の別の要旨は、チタンを含有し且つその量がチタン原子として90重量ppm以下であり、ペレット全体の平均固有粘度が1.10〜2.00dL/gであるポリブチレンテレフタレートから構成され、以下の関係を満たすポリブチレンテレフタレートペレットを原料の一部として使用して得られるフィルム、シートまたはモノフィラメントに存する。
(IV−1.00)/2 ≧ ΔIV > 0 ・・・(1)
(式(1)中、IVはペレット全体の平均固有粘度(dL/g)、ΔIV(dL/g)はペレット中心部と表層部の固有粘度の差を表す)
本発明の別の要旨は、ペレット全体の平均固有粘度が1.00dL/g以上のポリブチレンテレフタレートペレットを固相重合して、ペレット全体の平均固有粘度が1.10dL/g以上であり、かつ以下の関係を満たすポリブチレンテレフタレートペレットを製造する方法に存する。
(IV−1.00)/2 ≧ ΔIV > 0 ・・・(1)
(式(1)中、IVはペレット全体の平均固有粘度(dL/g)、ΔIV(dL/g)はペレット中心部と表層部の固有粘度の差を表す)
本発明により、色調、耐加水分解性、透明性に優れ、異物が低減されたポリブチレンテレフタレート製フィルム、シート、モノフィラメント、およびそれらの原料となるペレット、並びにそれらの製造方法を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明を構成するポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略記する場合がある)とは、テレフタル酸単位および1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有し、ジカルボン酸単位の50モル%以上がテレフタル酸単位から成り、ジオール単位の50モル%以上が1,4−ブタンジオール単位から成るポリエステルを言う。全ジカルボン酸単位中のテレフタル酸単位の割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上であり、全ジオール単位中の1,4−ブタンジオール単位の割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。テレフタル酸単位または1,4−ブタンジオール単位が50モル%より少ない場合は、PBTの結晶化速度が低下し、成形性の悪化を招く。
本発明において、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分には特に制限はなく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることが出来る。これらのジカルボン酸成分は、ジカルボン酸として、または、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料として、ポリマー骨格に導入できる。
本発明において、1,4−ブタンジオール以外のジオール成分には特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール等を挙げることが出来る。
本発明においては、更に、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分などを共重合成分として使用することが出来る。
本発明のPBTは、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)を原料とし、触媒としてチタン化合物を使用して得られる。
チタン触媒の具体例としては、酸化チタン、四塩化チタン等の無機チタン化合物、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等が挙げられる。これらの中ではテトラアルキルチタネートが好ましく、その中ではテトラブチルチタネートが好ましい。
チタンの他に、スズが触媒として使用されていてもよい。スズは、通常、スズ化合物として使用され、その具体例としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などが挙げられる。
スズはPBTの色調を悪化させるため、その添加量はスズ原子として、通常200重量ppm以下、好ましくは100重量ppm以下、更に好ましくは10重量ppm以下、中でも添加しないことが好ましい。
また、チタンの他に、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物の他、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、それらのエステルや金属塩などの燐化合物、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの反応助剤を使用してもよい。
本発明のPBTの特徴の1つは、チタンを含有し且つその量がチタン原子として90重量ppm以下である点にある。上記の値はPBTに対する原子の重量比である。
本発明において、上記のチタン含有量の下限は、通常10重量ppm、好ましくは15重量ppm、更に好ましくは20重量ppm、特に好ましくは25重量ppmであり、上限は、好ましくは80重量ppm、更に好ましくは70重量ppm、一層好ましくは50重量ppm、特に好ましくは40重量ppm、中でも33重量ppmが好適である。チタンの含有量が90重量ppmを超える場合は、フィルムやシートを製造する際の熱履歴によって、色調の悪化や、末端カルボキシル基濃度の増大による耐加水分解性などの悪化だけでなくフィッシュアイの増加を招き、少な過ぎる場合はPBTの重合性が悪化するため、結果的に重合温度を上げる必要があるため、色調の悪化や、耐加水分解性の悪化を招く。
チタン原子などの金属含有量は、湿式灰化などの方法でポリマー中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
本発明のPBTの末端カルボキシル基濃度は、通常0.1〜50μeq/g、好ましくは1〜40μeq/g、更に好ましくは1〜30μeq/g、特に好ましくは1〜25μeq/gである。末端カルボキシル基濃度が高すぎる場合は耐加水分解性が悪化することがある。
また、フィルムやシートの成型時の熱履歴でPBTのカルボキシル基末端は増加する傾向にある一方で、他のカルボキシル末端基が少ない樹脂と混合されている場合には、フィルムやシートの単位重量当たりの末端カルボキシル基は減少するケースもあるが、最終的な製品であるフィルムやシートでの末端カルボキシル基濃度は、他の樹脂の重量も含めたフィルムやシートの単位重量当たり、通常0.1〜50μeq/g、好ましくは1〜40μeq/g、更に好ましくは1〜30μeq/g、特に好ましくは1〜28μeq/gである。
PBTの末端カルボキシル基濃度は、PBTを有機溶媒などに溶解し、水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ溶液を使用して滴定することにより求めることが出来る。
また、本発明のPBTの末端ビニル基濃度は、通常0.1〜15μeq/g、好ましくは0.5〜10μeq/g、更に好ましくは1〜8μeq/gである末端ビニル基濃度が高すぎる場合は、色調悪化の原因となる。成型時の熱履歴により、末端ビニル基濃度はさらに上昇する傾向にあるため、成形温度が高い場合や、リサイクル工程を有する製造方法の場合には、さらに色調悪化が顕著となる。
PBTの末端には、水酸基、カルボキシル基、ビニル基の他に、原料由来のメトキシカルボニル基が残存していることがあり、特に、テレフタル酸ジメチルを原料とする場合には多く残存することがある。ところで、メトキシカルボニル末端は、フィルムやシートの成型時による熱により、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸を発生し、特に、食品用途に使用される場合には、これらの毒性が問題になる。また、蟻酸は金属製の成形機器やこれに付随する真空関連機器などを痛めることがある。そこで、本発明における末端メトキシカルボニル基濃度は、好ましくは0.5μeq/g以下、更に好ましくは0.3μeq/g以下、特に好ましくは0.2μeq/g以下、最適には0.1μeq/g以下である。
上記の末端ビニル基濃度および末端メトキシカルボニル基濃度は、重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=7/3(体積比)の混合液にPBTを溶解させ、H−NMRを測定することによって定量することが出来る。この際、溶媒シグナルとの重なりを防ぐため、重ピリジン等の塩基性成分などを極少量添加してもよい。
本発明で使用されるPBTの溶液ヘイズは、フェノール/テトラクロロエタンの混合液(重量比3/2)20mLに、PBT2.7gを溶解させた溶液の濁度の値として、通常5%未満、好ましくは3%未満、更に好ましくは2%未満、特に好ましくは1%未満である。触媒が失活すると、失活した触媒の析出が起こりPBTのヘイズが上昇するが、該ヘイズは、フィルム、シート、モノフィラメントの透明性悪化を招き、商品価値をも著しく落としめる。
本発明のPBTペレットの平均の固有粘度は、1.10〜2.00dL/gであることが必要で、好ましくは1.15〜1.80dL/g、更に好ましくは1.20〜1.60、特に好ましくは1.25〜1.50dLgである。固有粘度が1.10dL/g未満の場合は、押出成型においてダイからのドローダウンが激しくなる傾向があり、成形性が悪くなるだけでなく、成形品の機械的強度が不十分となり、2.00dL/gを超える場合は溶融粘度が高くなり、流動性が悪化して、成形性や製品の表面性が悪化する傾向にある。上記の固有粘度は、フェノール/テトラクロルエタン(重量比1/1)の混合液を溶媒として、30℃で測定した値である。
本発明における平均の固有粘度とは、ペレット全体を溶解させて得られた際の固有粘度を指す。
本発明のPBTペレットは、下式(1)の関係を満たすことが必要であり、さらには式(2)、中でも式(3)を満たすことが好ましい。
(IV−1.00)/2 ≧ ΔIV > 0 ・・・(1)
(IV−1.00)/2.5 ≧ ΔIV > 0 ・・・(2)
(IV−1.00)/3 ≧ ΔIV > 0 ・・・(3)
(式(1)〜(3)中、IVはペレット全体の平均固有粘度(dL/g)、ΔIV(dL/g)はペレット中心部と表層部の固有粘度の差を表す)
同じΔIVを有するペレットでも、ペレット全体の平均固有粘度(IV)が高くなるほど、フィッシュアイが少なくなる傾向があるが、上式で表されるIVとΔIVの関係を満たさない場合は、フィッシュアイが増加するだけではなく、延伸切れ等のトラブルを招く。
本発明において、ペレットの中心部と表層部の固有粘度の差(ΔIV)とは、中心部および外周部からそれぞれ10重量%以内の2部分の固有粘度の差を言う。
ペレットの中心部と表層部の固有粘度は、PBTが可溶である溶媒中にペレットを静置し、経時的に新鮮な溶媒と置換する操作を繰り返すことによって、ペレット表層から順にPBT溶液のフラクションを得、ペレットを溶かしはじめた最初のフラクションと、ペレットが完全に溶解した最後のフラクションから、溶媒を除去し、ペレット表層部と中心部のPBTを別々に得、それぞれの固有粘度を測定することによって求めることができる。操作上、完全な表層部と完全な中心部を得るにはフラクションを無限回得る操作が必要になるため、本発明では、中心部および表層部から10重量%以内であるフラクションを、それぞれ中心部、表層部と定義する。
一般的には、固相重合前後でのペレット全体の平均IVの上昇が大きい場合に、ΔIVが大きくなる傾向がある。一方、ペレットサイズが大きい場合にも、ΔIVが大きくなる傾向があり、ペレットサイズが小さいと成型時のブリッジングや食い込み不良の原因となるため、本発明のペレットの断面の短径と長径の平均の上限は、好ましくは5.0mm、より好ましくは4.0mm、さらに好ましくは3.5mm、特に好ましくは3.0mmであり、下限は、好ましくは1.0mm、好ましくは1.5mm、より好ましくは2.0mm、特に好ましくは2.5mmである。ペレットの平均の長さも同様の理由から、通常1〜6mm、中でも2〜4mmが好ましい。
本発明の条件を満たす限り、PBTの製造法に制限はないが、色調の悪化や、末端カルボキシル基濃度の増加を抑制しながら、フィッシュアイを低減し、フィルム、シート、モノフィラメントに適した高分子量のPBTを得るためには、触媒添加量を90重量ppm以下に押さえ、低温で短時間の溶融重合で得る方法が好ましいが、前述のように、一般的には、触媒を減らし、温度を低く、短時間で溶融重合を行うと、フィルム、シート、モノフィラメントに適した高分子量のPBTを得ることは困難である。
そこで、本発明の用途に適したポリブチレンテレフタレートを得る方法の一例として、触媒の失活を防止すると同時に、重縮合時の界面更新を良くし、圧力を低くして、色調の悪化や、末端カルボキシル基濃度の増加を抑制しながら、溶融重合でなるべく高い分子量のPBTを得、それを固相重合する方法が挙げられる。
以下に、原料としてテレフタル酸を使用した直接重合法による本発明のPBTの製造方法の一例について説明する。PBTの製造方法は、原料供給またはポリマーの払い出し形態から回分法と連続法に大別される。初期のエステル化反応を連続操作で行って、それに続く重縮合を回分操作で行う他、逆に、初期のエステル化反応を回分操作で行って、それに続く重縮合を連続操作で行う方法もある。本発明においては、生産性や製品品質の安定性、本発明による改良効果の観点から、連続的に原料を供給し、連続的にエステル化反応を行う方法が好ましく、エステル化反応に続く重縮合反応も連続的に行ういわゆる連続法が好ましい。
本発明においては、エステル化反応槽にて、チタン触媒の存在下、少なくとも一部の1,4−ブタンジオールをテレフタル酸とは独立にエステル化反応槽に供給しながら、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを連続的にエステル化する工程が好ましく採用される。すなわち、本発明においては、触媒に由来するヘイズや異物を低減し、触媒活性を低下させないため、原料スラリー又は溶液として、テレフタル酸と共に供給される1,4−ブタンジオールとは別に、しかも、テレフタル酸とは独立に1,4−ブタンジオールをエステル化反応槽に供給する。以後、当該1,4−ブタンジオールを「別供給1,4−ブタンジオール」と称することがある。
上記の「別供給1,4−ブタンジオール」には、プロセスとは無関係の新鮮な1,4−ブタンジオールを充当することが出来る。また、「別供給1,4−ブタンジオール」は、エステル化反応槽から留出した1,4−ブタンジオールをコンデンサ等で捕集し、そのまま、または、一時タンク等へ保持して反応槽に還流させたり、不純物を分離、精製して純度を高めた1,4−ブタンジオールとして供給したりすることも出来る。以後、コンデンサ等で捕集された1,4−ブタンジオールから構成される「別供給1,4−ブタンジオール」を「再循環1,4−ブタンジオール」と称することがある。資源の有効活用、設備の単純さの観点からは、「再循環1,4−ブタンジオール」を「別供給1,4−ブタンジオール」に充当することが好ましい。
また、通常、エステル化反応槽より留出した1,4−ブタンジオールは、1,4−ブタンジオール成分以外に、水、テトラヒドロフラン(以下「THF」と略記する)、ジヒドロフラン、アルコール等の成分を含んでいる。従って、上記の留出1,4−ブタンジオールは、コンデンサ等で捕集した後、または、捕集しながら、水、THF等の成分と分離、精製し、反応槽に戻すことが好ましい。
そして、本発明においては、「別供給1,4−ブタンジオール」の内、10重量%以上を反応液液相部に直接戻すことが好ましい。ここで、反応液液相部とは、エステル化反応槽の気液界面の液相側を示し、反応液液相部に直接戻すとは、配管などを使用して「別供給1,4−ブタンジオール」が気相部を経由せずに直接液相部分に供給されることを表す。反応液液相部に直接戻す割合は、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。反応液液相部に直接戻す「別供給1,4−ブタンジオール」が少ない場合は、チタン触媒が失活する傾向にある。
また、反応器に戻す際の「別供給1,4−ブタンジオール」の温度は、通常50〜220℃、好ましくは100〜200℃、更に好ましくは150〜190℃である。「別供給1,4−ブタンジオール」の温度が高過ぎる場合はTHFの副生量が多くなる傾向にあり、低過ぎる場合は熱負荷が増すためエネルギーロスを招く傾向がある。
また、本発明においては、触媒の失活を防ぐため、エステル化反応に使用されるチタン触媒の内、10重量%以上をテレフタル酸とは独立に反応液液相部に直接供給することが好ましい。ここで、反応液液相部とは、エステル化反応槽の気液界面の液相側を示し、反応液液相部に直接供給するとは、配管などを使用し、チタン触媒が反応器の気相部を経由せずに直接液相部分に供給されることを表す。反応液液相部に直接添加するチタン触媒の割合は、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
チタン触媒は、溶媒などに溶解させたり又は溶解させずに直接エステル化反応槽の反応液液相部に供給することも出来るが、供給量を安定化させ、反応器の熱媒ジャケット等からの熱による変性などの悪影響を軽減するためには、1,4−ブタンジオール等の溶媒で希釈することが好ましい。この際の濃度は、溶液全体に対するチタン触媒の濃度として、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%、更に好ましくは0.08〜8重量%である。また、異物低減の観点から、溶液中の水分濃度は、通常0.05〜1.0重量%とする。溶液調製の際の温度は、失活や凝集を防ぐ観点から、通常20〜150℃、好ましくは30〜100℃、更に好ましくは40〜80℃である。また、触媒溶液は、劣化防止、析出防止、失活防止の点から、別供給1,4−ブタンジオールと配管などで混合してエステル化反応槽に供給することが好ましい。
本発明の連続法の一例は、次の通りである。すなわち、テレフタル酸を主成分とする前記ジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とする前記ジオール成分とを原料混合槽で混合してスラリーとし、単数または複数のエステル化反応槽内で、チタン触媒の存在下に、連続的にエステル化反応させる。
本発明において、エステル化反応槽に供給されるテレフタル酸と1,4−ブタンジオールとのモル比は、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
BM/TM=1.1〜5.0(mol/mol) (4)
(但し、BMは単位時間当たりにエステル化反応槽に外部から供給される1,4−ブタンジオールのモル数、TMは単位時間当たりにエステル化反応槽に外部から供給されるテレフタル酸のモル数を示す)
上記の「エステル化反応槽に外部から供給される1,4−ブタンジオール」とは、原料スラリー又は溶液として、テレフタル酸と共に供給される1,4−ブタンジオールの他、これらとは独立に供給する1,4−ブタンジオール、触媒の溶媒として使用される1,4−ブタンジオール等、反応槽外部から反応槽内に入る1,4−ブタンジオールの総和である。
上記のBM/TMの値が1.1より小さい場合は、転化率の低下や触媒失活を招き、5.0より大きい場合は、熱効率が低下するだけでなく、THF等の副生物が増大する傾向にある。BM/TMの値は、好ましくは1.5〜4.5、更に好ましくは2.0〜4.0、特に好ましくは3.1〜3.8である。
本発明において、エステル化反応は、反応時間短縮のため、1,4−ブタンジオールの沸点以上の温度で行うことが好ましい。1,4−ブタンジオールの沸点は反応の圧力に依存するが、101.1kPa(大気圧)では230℃、50kPaでは205℃である。
エステル化反応槽としては、公知のものが使用でき、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などの何れの型式であってもよく、また、単数槽としても、同種もしくは異種の槽を直列または並列させた複数槽としてもよい。中でも、攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部、軸受、軸、攪拌翼から成る通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機などの高速回転するタイプも使用することが出来る。
攪拌の形態は、特に制限されず、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部などから直接攪拌する通常の攪拌方法の他、配管などで反応液の一部を反応器の外部に持ち出してラインミキサー等で攪拌し、反応液を循環させる方法も採ることが出来る。
攪拌翼の種類は、公知のものが選択でき、具体的には、プロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、デイスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼などが挙げられる。
上記のエステル化反応の温度は、通常180〜260℃、好ましくは200〜245℃、更に好ましくは210〜235℃、圧力(絶対圧力、以下同じ)は、通常10〜133kPa、好ましくは13〜101kPa、更に好ましくは60〜90kPa、反応時間は、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜6時間である。
PBTの製造においては、好ましくは複数、より好ましくは2〜5の反応槽を使用し、順次に分子量を上昇させていく。通常、初期のエステル化反応に引き続き、重縮合反応が行われる。本発明においては、上記の方法で得られたエステル化反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、単数または複数の重縮合反応槽内で、重縮合触媒の存在下に、好ましくは連続的に、攪拌下で重縮合反応させる。
PBTの重縮合反応工程の反応槽の形態は、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などの何れの型式であってもよく、また、これらを組み合わせることも出来る。中でも、攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部、軸受、軸、攪拌翼から成る通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機などの高速回転するタイプも使用することが出来る。
攪拌の形態は、特に制限されず、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部などから直接攪拌する通常の攪拌方法の他、配管などで反応液の一部を反応器の外部に持ち出してラインミキサー等で攪拌し、反応液を循環させる方法も採ることが出来る。中でも、少なくとも重縮合反応槽の1つは、水平方向に回転軸を有する表面更新とセルフクリーニング性に優れた横型の反応器を使用することが推奨される。横型の反応器の攪拌装置の回転方向には制限はないが、攪拌軸が2本ある場合には、軸の回転方向は、異方向であることが好ましく、中でも、上部がポリマー引き延ばし、下部がポリマー巻き込みとなる回転方向であることがより好ましい。
また、重縮合反応の温度は、通常210〜280℃、好ましくは220〜265℃、更に好ましくは230〜245℃、圧力は、通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、更に好ましくは13kPa以下、反応時間は、通常2〜15時間、好ましくは3〜10時間である。この際、重縮合段階で新たに触媒の添加をしてもよいし、エステル化反応で使用した触媒をそのまま重縮合触媒として使用して新たに触媒の添加を行わなくてもよい。
中でも着色や劣化を抑え、ビニル基などの末端の増加を抑制するため、少なくとも1つの反応槽において、通常1.3kPa以下、好ましくは0.5kPa以下、更に好ましくは0.3kPa以下の高真空下で、通常225〜255℃、好ましくは230〜250℃、更に好ましくは233〜245℃の温度で行うのがよい。
重縮合反応により得られたポリマーは、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら又は水冷後、カッターで切断され、ペレット化される。
次に、このようにして得られたペレットを減圧下、または不活性ガス雰囲気下に固相重合させるが、この時、固相重合の温度が高すぎると色調の悪化や、フィシュアイの増加を招き、低すぎると重合時間が長くかかるため、固相重合の温度は、通常150〜220℃、好ましくは170〜210℃、より好ましくは180〜205℃とする。
また、固相重合前の固有粘度が低すぎると、所定の分子量のPBTを得ようとした場合、ペレット中心部と表層部の固有粘度の差(ΔIV)が大きくなりフィッシュアイが増加する傾向にあり、高すぎると、溶融重合での熱履歴が大きくなり色調の悪化や末端カルボキシル基濃度の上昇を招くため、固相重合原料として用いるPBTのペレット全体の平均固有粘度は、好ましくは1.00dL/g以上、更に好ましくは1.10〜1.90dL/g、一層好ましくは1.15〜1.50dL/g、特に好ましくは1.20〜1.30dL/gとする。
本発明でいうところのフィルムまたはシートとは、何れも2次元的に広がった成形体を示すが、その境界の厚さは1/100インチ(0.254mm)である。PBTでは、この厚さを境に用途が異なることが多い。
本発明のフィルムまたはシートの製造法に特に限定は無く、公知の種々の方法を採用することができる。例えば、PBT樹脂を乾燥後、押出機にて加熱溶融し、平板状に押し出し、ロールで連続的に引き取り平板状のフィルムを作るTダイキャスティング法や、溶融樹脂を環状ダイスから連続的に押し出して内部の空気圧を調整しながら風船状に膨らませ、空中で自然冷却あるいは冷風で冷却する空冷インフレーション法、同じく環状ダイスから連続的に押し出し、金属製等の規制リングで外径を制御しながら水をかけて冷却する水冷インフレーション法、ロールを使うカレンダー法、ポリシングロール法等が挙げられる。又、公知の多層化装置(例えばマルチマニホールドTダイ、スタックプレートダイス、フィードブロック、多層インフレーションダイス)等を用いて多層フィルムを得ることも出来る。
更に必要に応じ、公知の方法に従って、一軸又は二軸延伸して延伸フィルムを得ることも出来る。二軸延伸は同時二軸延伸であっても逐次二軸延伸であっても構わない。更に熱処理工程を得て、フィルムの寸法安定化処理を行っても構わない。
また、本発明においては、フィルム端部またはシート端部に代表される製造時に生成した商品価値のない部分等を、原料と混合してリサイクルすることが、廃棄物低減、コスト低減、本発明の改良効果の点から好ましい。
この時、フィルムやシートをそのままの形状でリサイクルしても良いし、原料の供給器や成形機のスクリューへの食い込み性に悪影響を及ぼす等、生産に不都合が生じる場合は、造粒、切断、粉砕等の加工を施しても良い。
原料に占めるリサイクルされるフィルムまたはシートの比率は、リサイクルされたフィルムまたはシートを含む全原料の重量をB、リサイクルされるフィルムまたはシートの重量をCとする時、下式(5)を満たすことが好ましい。中でも下式(6)、特には下式(7)を満たすことが推奨される。
0.01 ≦ C/B ≦ 0.5 ・・・(5)
0.05 ≦ C/B ≦ 0.4 ・・・(6)
0.1 ≦ C/B ≦ 0.3 ・・・(7)
リサイクルされるフィルムまたはシートの比率が高いと、色調の悪化や、異物の増大、末端カルボキシル基濃度の上昇を招き、リサイクルされるフィルムまたはシートの比率が低いと、廃棄物低減、コスト低減の観点から、効果が見られなくなる傾向にある。
本発明のモノフィラメントの製造法に特に制限はなく、例えば単軸押出機に原料樹脂を連続的に供給し、溶融しながら連続的に先端部のノズルから糸状に押し出し、3〜50℃程度、好ましくは5〜20℃の水や空気で一旦冷却固化させ、未延伸のモノフィラメントを得る。この際、温度が高すぎると溶融樹脂が結晶化して上手く延伸がかからなかったり白化したりなどして好ましくない。続いて該樹脂のガラス転移温度付近の温度、好ましくは、40〜280℃に設定した温水、蒸気または空気槽内でモノフィラメントを再加熱し、その際、槽の前後に設置された駆動ロールの速度差を使って、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.8〜6倍に延伸処理する。延伸操作は多段で行うこともできる。その場合には、延伸温度を下流に行くほど高く設定し、最終的には後収縮を防止するため、60〜280℃の槽内で延伸せずに、数%程度弛緩させることが好ましい。
本発明において、フィルム、シート、モノフィラメントの成型温度に特に制限はないが、成形温度が高いと色調の悪化や、末端カルボキシル基濃度の上昇、ひいては耐加水分解性の悪化を招くため、270℃未満であることが好ましく、中でも265℃未満、特には260℃未満であることが好ましい。
本発明のフィルム、シート、モノフィラメントでは、原料PBTペレット中にフィッシュアイや、延伸切れの原因となる高粘度物が低減されているため、上記のような低温で成形しても、フィッシュアイの発生が少なく、これまで困難であったフィッシュアイ低減と成形時の熱劣化防止を両立させることができる。
本発明のフィルム、シート、モノフィラメントを製造する際には、必要に応じ、慣用の添加剤などを配合することが出来る。斯かる添加剤としては、特に制限されず、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤の他、滑剤、離型剤、触媒失活剤、結晶核剤、結晶化促進剤などが挙げられる。これらの添加剤は、重合途中または重合後に添加することが出来る。更に、PBTに、所望の性能を付与するため、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの安定剤、染顔料などの着色剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤などを配合することが出来る。
本発明のフィルム、シート、モノフィラメントを製造する際には、必要に応じて、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸エステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を配合することが出来る。これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。
前記の種々の添加剤や樹脂の配合方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する1軸または2軸の押出機を混練機として使用して成形加工前にあらかじめ製造しておく方法や成型時に各成分を混合する方法が挙げられる。各成分は、付加的成分を含めて、混練機や成形機に一括して供給することが出来、あるいは、順次供給することも出来る。
本発明のフィルム、シート、モノフィラメントは、高粘度物に由来するフィッシュアイが大幅に低減されているだけではなく、色調、耐加水分解性、熱安定性、透明性、成形性に優れており、産業上の利用価値が高い。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性および評価項目の測定方法は次の通りである。
(1)エステル化率:
以下の計算式(8)によって酸価およびケン化価から算出した。酸価は、ジメチルホルムアミドにオリゴマーを溶解させ、0.1NのKOH/メタノール溶液を使用して滴定により求めた。ケン化価は0.5NのKOH/エタノール溶液でオリゴマーを加水分解し、0.5Nの塩酸で滴定し求めた。
エステル化率=(ケン化価−酸価)/ケン化価)×100 ・・(8)
(2)末端カルボキシル基濃度:
ベンジルアルコール25mLにPBT0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定した。
(3)固有粘度(IV):
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合液を溶媒として、30℃において、濃度1.0g/dLの
ポリマー溶液および溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(9)より求めた。
IV=((1+4KηSP0.5−1)/(2KC) ・・・(9)
(但し、ηSP=η/η−1であり、ηはポリマー溶液の落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用した。)
(4)ペレット中心部と表層部の固有粘度の差(ΔIV)
PBTペレット20gをヘキサフルオロイソプロパノール200mL中に静置し、経時的に新鮮なヘキサフルオロイソプロパノールと置換する操作を20回繰り返し、全てを溶解させた。この時、1回目に得られた溶液(フラクション1)と20回目に得られた溶液(フラクション20)から、エバポレーターでヘキサフルオロイソプロパノールを除去した。得られたPBTの重量がそれぞれ2g未満であることを確認し、それぞれの固有粘度を測定し、それらの差を求めた。
(5)ペレットの長径、短径の平均
ペレット30粒の断面の長径と短径をノギスで測定し、その平均を算出した。
(6)PBT中のチタン濃度:
電子工業用高純度硫酸および硝酸でPBTを湿式分解し、高分解能ICP(Inductively Coupled Plasma)−MS(Mass Spectrometer )(サーモクエスト社製)を使用して測定した。
(7)末端メトキシカルボニル基濃度および末端ビニル基濃度:
重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=7/3(体積比)の混合液1mLにPBT約100mgを溶解させ、重ピリジン36μLを添加し、50℃でH−NMRを測定し求めた。NMR装置には日本電子(株)製「α−400」又は「AL−400」を使用した
(8)フィルム成形およびフィシュアイ数:
PBTペレットを窒素雰囲気下120℃で12時間乾燥し、オプティカルコントロールシステムズ社製フィルム成形機(型式ME−20/26V2)を用い、厚さ50μmのフィルムを得た。シリンダおよびダイの温度は、250℃とした。得られたフィルムをFilm Quality Testing System[オプティカルコントロールシステムズ社 形式FS−5]を使用し、該フィルム1m2当たりの200μmを超えるフィッシュアイの数を測定した。また、得られたフィルムの末端カルボキシル基濃度を測定し、成形前後の末端カルボキシル基濃度の上昇を成型時のΔAVとした。
(9)ペレット色調:
日本電色(株)製色差計(Z−300A型)を使用し、L、a、b表色系におけるb値で評価した。値が低いほど黄ばみが少なく色調が良好であることを示す。
(10)溶液ヘイズ:
フェノール/テトラクロロエタン=3/2(重量比)の混合液20mLにPBT2.70gを110℃で30分間溶解させた後、30℃の恒温水槽で15分間冷却し、日本電色(株)製濁度計(NDH−300A)を使用し、セル長10mmで溶液の濁度を測定した。値が低いほど透明性が良好であることを示す。
[実施例1] 図1に示すエステル化工程と図2に示す重縮合工程を通し、次の要領でPBTの製造を行った。先ず、テレフタル酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオール1.80モルの割合で混合した60℃のスラリーをスラリー調製槽から原料供給ライン(1)を通じ、予め、エステル化率99%のPBTオリゴマーを充填したスクリュー型攪拌機を有するエステル化のための反応槽(A)に、40.0kg/hとなる様に連続的に供給した。同時に、再循環ライン(2)から185℃の精留塔(C)の塔底成分を18.4kg/hで供給し、触媒供給ライン(3)から触媒として65℃のテトラブチルチタネートの6.0重量%1,4−ブタンジオール溶液を95g/hで供給した(理論ポリマー収量に対し30重量ppm)。この溶液中の水分は0.20重量%であった。
反応槽(A)の内温は230℃、圧力は78kPaとし、生成する水とTHF及び余剰の1,4−ブタンジオールを、留出ライン(5)から留出させ、精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離した。系が安定した後の塔底の高沸成分は、98重量%以上が1,4−ブタンジオールであり、精留塔(C)の液面が一定になる様に、抜出ライン(8)を通じてその一部を外部に抜き出した。一方、低沸成分は塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサ(G)で凝縮させ、タンク(F)の液面が一定になる様に、抜出ライン(13)より外部に抜き出した。
反応槽(A)で生成したオリゴマーの一定量は、ポンプ(B)を使用し、抜出ライン(4)から抜き出し、反応槽(A)内液の平均滞留時間が3.5hrになる様に液面を制御した。抜出ライン4から抜き出したオリゴマーは、第1重縮合反応槽(a)に連続的に供給した。系が安定した後、反応槽(A)の出口で採取したオリゴマーのエステル化率は97.5%であった。
第1重縮合反応槽(a)の内温は245℃、圧力2.1kPaとし、滞留時間が90分になる様に液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L2)から、水、THF、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応槽(d)に連続的に供給した。
第2重縮合反応槽(d)の内温は243℃、圧力150Paとし、滞留時間が90分になる様に液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L4)から、水、THF、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、更に重縮合反応を進めた。得られたポリマーは、抜出用ギヤポンプ(e)により抜出ライン(L3)を経由し、第3重縮合反応槽(k)に連続的に供給した。第3重縮合反応槽(k)の内温は238℃、圧力は130Pa、滞留時間は100分とし、更に、重縮合反応を進めた。得られたポリマーは、ダイスヘッド(g)からストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッター(h)でカッティングした。この様にして得られたペレット全体の平均IV=1.25dL/g、チタン含有量=30重量ppm、ΔIVが0.01dL/g未満のPBTペレットを用い、200℃、0.1kPa以下で固相重合させ、ペレット全体の平均のIV=1.50dL/gのPBTペレットを得た。このペレットのΔIVは0.14dL/gであった。このペレットを用いて250℃でフィルムを成形し、評価した。フィルム中のフィッシュアイ数が少なく、外観良好なフィルムが得られた。結果をまとめて表1に示した。
[実施例2]
実施例1において、テトラブチルチタネートの使用量を理論ポリマー収量に対して75重量ppmとし、第2重縮合反応槽(d)の内温を242℃、滞留時間を80分、第3重縮合反応槽(k)の圧力を130Paとした他は実施例1と同様に行った。この様にして得られたペレット全体の平均IV=1.25dL/g、チタン含有量=75重量ppm、ΔIVが0.01dL/g未満のPBTペレットを用い、200℃、0.1kPa以下で固相重合させ、ペレット全体の平均のIV=1.50dL/gのPBTペレットを得た。このペレットのΔIVは0.16dL/gであった。このペレットを用いて250℃でフィルムを成形し、評価した。フィルム中のフィッシュアイ数が少なく、外観良好なフィルムが得られた。結果をまとめて表1に示した。
[実施例3]
ペレット化の際のストランドの引き取り速度を変更した以外は、実施例1と同様にして得られたペレット全体の平均IV=1.25dL/g、チタン含有量=30重量ppm、ΔIVが0.01dL/g未満のPBTペレットを用い、210℃、0.1kPa以下で固相重合させ、ペレット全体の平均のIV=1.50dL/gのPBTペレットを得た。このペレットのΔIVは0.18dL/gであり、長径、短径の平均は3.22mmであった。このペレットを用いて250℃でフィルムを成形し、評価した。フィルム中のフィッシュアイ数が少なく、外観良好なフィルムが得られた。結果をまとめて表1に示した。
[実施例4]
実施例1において、第2重縮合反応槽(d)の内温を244℃、滞留時間を80分、第3重縮合反応槽(k)の圧力を130Pa、滞留時間を120分とした他は実施例1と同様に行い得られたペレット全体の平均IV=1.35dL/g、チタン含有量=30重量ppm、ΔIVが0.01dL/g未満のPBTペレットを用い、200℃、0.1kPa以下で固相重合させ、ペレット全体の平均のIV=1.50dL/gのPBTペレットを得た。このペレットのΔIVは0.08dL/gであった。このペレットを用いて250℃でフィルムを成形し、評価した。フィルム中のフィッシュアイ数が少なく、外観良好なフィルムが得られた。結果をまとめて表1に示した。
[比較例1]
実施例1において、第3重縮合反応槽(k)を用いずに第2重縮合反応槽(d)から直接ストランドを得、カッター(h)でカッティングし得られたペレット全体の平均IV=0.75dL/g、チタン含有量=30重量ppm、ΔIVが0.01dL/g未満のPBTペレットを用い、200℃、0.1kPa以下で固相重合させ、ペレット全体の平均のIV=1.50dL/gのPBTペレットを得た。このペレットのΔIVは0.42dL/gであった。このペレットを用いて250℃でフィルムを成形し、評価した。フィルム中のフィッシュアイ数が多く、外観不良なフィルムとなった。結果をまとめて表1に示した。
[比較例2]
実施例1において、テトラブチルチタネートの使用量を理論ポリマー収量に対して100重量ppmとし、第2重縮合反応槽(d)の内温を240℃、滞留時間を80分とした他は実施例1と同様に行った。この様にして得られたペレット全体の平均IV=1.25dL/g、チタン含有量=100重量ppm、ΔIVが0.01dL/g未満のPBTペレットを用い、200℃、0.1kPa以下で固相重合させ、ペレット全体の平均のIV=1.50dL/gのPBTペレットを得た。このペレットのΔIVは0.17dL/gであった。このペレットを用いて250℃でフィルムを成形し、評価した。フィルム中のフィッシュアイ数が多く、外観不良なフィルムとなった。また、溶液ヘイズの値も高かった。結果をまとめて表1に示した。
Figure 2005307204
本発明で採用するエステル化反応工程またはエステル交換反応工程の一例の説明図 本発明で採用する重縮合工程の一例の説明図
符号の説明
1:原料供給ライン
2:再循環ライン
3:触媒供給ライン
4:抜出ライン
5:留出ライン
6:抜出ライン
7:循環ライン
8:抜出ライン
9:ガス抜出ライン
10:凝縮液ライン
11:抜出ライン
12:循環ライン
13:抜出ライン
14:ベントライン
A:反応槽
B:抜出ポンプ
C:精留塔
D、E:ポンプ
F:タンク
G:コンデンサ
L1、L3、L5:抜出ライン
L2、L4、L6:ベントライン
a:第1重縮合反応槽
d:第2重縮合反応槽
k:第3重縮合反応槽
c、e、m:抜出用ギヤポンプ
g:ダイスヘッド
h:回転式カッター

Claims (11)

  1. チタンを含有し且つその量がチタン原子として90重量ppm以下であり、ペレット全体の平均固有粘度が1.10〜2.00dL/gであるポリブチレンテレフタレートから構成され、以下の関係を満たすことを特徴とするポリブチレンテレフタレートペレット。
    (IV−1.00)/2 ≧ ΔIV > 0 ・・・(1)
    (式(1)中、IVはペレット全体の平均固有粘度(dL/g)、ΔIV(dL/g)はペレット中心部と表層部の固有粘度の差を表す)
  2. ポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基濃度が1〜30μeq/gである請求項1に記載のペレット。
  3. ポリブチレンテレフタレートのチタン含有量がチタン原子として50重量ppm以下である請求項1または2に記載のペレット。
  4. ポリブチレンテレフタレートの末端ビニル基濃度が0.5〜10μeq/gである請求項1乃至3の何れかに記載のペレット。
  5. ポリブチレンテレフタレートのペレット全体の平均固有粘度が1.30dL/g以上である請求項1乃至4の何れかに記載のペレット。
  6. ポリブチレンテレフタレートの溶液ヘイズが5%未満である請求項1乃至5の何れかに記載のペレット。
    (但し、溶液ヘイズは、ポリブチレンテレフタレート2.7gをフェノール/テトラクロロエタン混合液(重量比3/2)20mLに溶解させた溶液の濁度の値とする。)
  7. ペレット断面の長径と短径の平均が2.5〜3.0mmの範囲である請求項1乃至6の何れかに記載のペレット。
  8. ポリブチレンテレフタレートの末端メトキシカルボニル基濃度が0.5μeq/g以下である請求項1乃至7の何れかに記載のペレット。
  9. 請求項1乃至8の何れかに記載のポリブチレンテレフタレートペレットを原料の一部として使用して得られるフィルム、シートまたはモノフィラメント。
  10. ペレット全体の平均固有粘度が1.00dL/g以上のポリブチレンテレフタレートペレットを固相重合して、ペレット全体の平均固有粘度が1.10dL/g以上であり、かつ以下の関係を満たすポリブチレンテレフタレートペレットを製造する方法。
    (IV−1.00)/2 ≧ ΔIV > 0 ・・・(1)
    (式(1)中、IVはペレット全体の平均固有粘度(dL/g)、ΔIV(dL/g)はペレット中心部と表層部の固有粘度の差を表す)
  11. 請求項1乃至8の何れかに記載のポリブチレンテレフタレートペレットを原料の一部として使用し、270℃未満でフィルム、シートまたはモノフィラメントを製造する方法。
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