しかし、プーリにクラウンを形成する場合、平ベルトの走行安定性(蛇行や片寄りの防止)を重要視してクラウンの曲率半径を小さくすれば、ベルトの幅中央に応力が集中し、ベルト幅全体を伝動に有効に利用することができず、心線の早期疲労及び伝動能力の低下を招く。
また、プーリのクラウンを該プーリの回転中心を中心とする球状に形成した場合、仮にベルトの片寄り防止の効果が高まるとしても、プーリのクラウンによってベルトの幅中央に応力が集中するという問題は依然として残る。
また、平プーリに上述の如き溝加工をすると、該平プーリの製造コストが高くなり、しかも、溝加工だけでは平ベルトの蛇行や片寄りを確実に防止することは難しい。
さらに、平ベルトの両側にガイドローラ等を配置してその走行位置を規制する方式を採用すると、平ベルトの両側がそのような規制部材に常時接触することになるため、その側面のほころび、心線のほつれを生じ易くなる。従って、それらを防止するための平ベルトに特殊な加工を施すことが必要になり、平ベルトの製造コスト低減に不利になる。
以上のような理由から、平ベルト伝動装置は、Vベルトなど他のベルトに比べて、ベルトの曲げによるロスが少なく伝動効率が非常に高いにも拘わらず、十分に活用されていないのが実情である。
そこで、本発明は、主として平ベルトの、また、伝動用、搬送用等に用いられるその他のベルトの蛇行や片寄りを確実に防止することができるようにして、これらのベルトを用いたベルト駆動装置を各種の産業機械、その他の機器に有効利用できるようにせんとするものである。
本発明は、ベルトの片寄りを生じたときに、このベルトの張力によってプーリやローラの軸にかかる軸荷重の位置が変化することを利用して該プーリ等(ベルト車)を変位させ、これによりベルトの片寄り走行・蛇行を防止するようにした。
すなわち、本願の第1の発明は、ベルトの巻き掛けられる円筒状の回転体と、該回転体に挿入されて、これを回転自在に支持する軸部材と、該軸部材を、上記回転体の回転中心軸に沿って見て軸荷重の方向に対し該回転体の回転方向前側に所定角度傾倒した枢軸の周りに揺動自在に支持する支持機構と、を備えたベルト車であって、上記回転体が回転中心軸の延びる方向(以下、回転体の幅方向ともいう)に分割されており、また、上記支持機構が上記軸部材を、上記回転体の分割された部材間において該回転体にベルトの巻掛けられる側とは反対側から揺動自在に支持していることを特徴とする。
この構成のベルト車によれば、ベルトが回転体上で片寄って、軸荷重が枢軸の位置から回転体の幅方向にずれて軸部材に作用するようになると、その軸荷重によって軸部材に枢軸を中心とする回転モーメントが働き、この軸部材が回転体と共に枢軸の回りに回動変位(揺動)する。これにより、回転体は、ベルトの片寄った側が軸荷重の方向に移動するように、即ち、軸荷重の方向で高低をみれば、ベルトが片寄ってきた側が低く、反対側が高くなるように傾斜する。つまり、回転体は、その外周面がプーリのクラウンと同様に傾斜した状態になるので、ベルトには上記片寄り方向とは反対の方向への戻し力が働くことになる。
また、上記のような回動変位の中心となる枢軸が、軸荷重の方向に対して該回転体の回転方向前側に傾倒している(即ち傾倒角度が0度を越え且つ90度未満である)ことから、回転体の回動変位には、上記軸荷重の方向の成分だけでなく、軸荷重方向に直交する前後方向(ベルトが回転体に接触して走行している方向である)の成分が含まれる。すなわち、回転体は上記の如く軸荷重の方向に傾斜するだけでなく、ベルトの片寄った側がベルト走行方向の前側に移動して、当該ベルトに対し斜交いになって接触した状態になり、このことによってもベルトには回転体から上記片寄りを戻す方向の力が与えられる。
結局、上記回転体が軸部材を介して上記枢軸の周りに揺動自在に支持されていることにより、その枢軸の傾倒角が0度を越え且つ90度未満である場合は、回転体の幅方向にベルトが片寄ったときに、この回転体が軸荷重の方向に高低差を生ずるように傾斜することによる戻し力と、回転体がベルトに対して斜交いになることによる戻し力との双方が働き、この両戻し力の合力と、ベルト駆動装置の特性によってベルトに作用する片寄り力とがつり合う位置でベルトが走行することになる。よって、ベルトの蛇行や片寄り走行を防止することができる。
さらに、上記構成のベルト車では、上記回転体が幅方向(回転中心軸の延びる方向)に分割されており、その分割された部材間において上記軸部材が支持機構により揺動自在に支持されている。すなわち、ベルトの巻き掛けられる回転体を分割することで、軸部材の外周に直接的に支持機構を配置することができるので、この支持機構の構造がシンプル且つコンパクトなものになり、レイアウトの自由度も比較的高くなって、その強度を十分なものとすることができるとともに、該軸部材及び回転体の回動角度も比較的確保しやすくなる。よって、回転体が中心線の方向に長いローラである場合にも対応しやすい。
しかも、上記支持機構が、上記回転体にベルトの巻掛けられる側とは反対の側から上記軸部材を支持しているので、当該支持機構は、回転体に巻き掛けられて周回するベルトの内周側に配置されることになり、ベルト駆動装置全体で見ても、ベルトレイアウトの内部に支持機構を配置して、装置全体をコンパクトに構成することができる。また、その保守作業、例えばベルトの交換が容易に行えるようになる。
ところで、上述の如くベルト車の回転体に働く傾斜による戻し力と斜交いによる戻し力とでは、後者の方が片寄り防止効果が高い。そこで、好ましくは、上記斜交いによる戻し力を有効に利用するために、上記枢軸の傾倒角は0度を越え45度以下の範囲に設定するのがよく、30度以下とするのがさらによい。
但し、傾倒角が0度に近づくほど枢軸の方向に作用する軸荷重成分が大きくなるので、該枢軸周りの回転モーメントが発生しにくくなる上に、軸部材や支持機構における摺動部の摩擦抵抗によって該軸部材及び回転体の枢軸周りの回動が妨げられやすく、その摩擦抵抗を下げるための対策が必要になる。
好ましいのは、上記ベルト車の回転体を回転中心軸方向の中央付近で2分割し、上記支持機構を、上記軸部材に配設されて上記枢軸を構成するシャフトと、該シャフトに作用するスラスト力を受ける転がり軸受と、を有するものとすることである。
こうすれば、上記のように枢軸の傾倒角を小さくしたときに、この枢軸の方向に作用する軸荷重成分が大きくなっても、この力(シャフトのスラスト力)を転がり軸受によって受け止めて、回動変位に対する摺動摩擦抵抗を極小化することができる。また、枢軸が回転体の幅方向中央付近に位置するので、ベルトの幅の中心を回転体の幅の中央付近に位置付けて走行させる上で有利になる。
本願の第2の発明は、ベルトの巻き掛けられる回転体と、該回転体を回転自在に支持するとともに、その回転中心軸に沿って見たときに軸荷重の方向に対し該回転体の回転方向前側に所定角度傾倒した枢軸の周りに揺動自在に支持する支持機構と、を備えるベルト車であって、上記支持機構が、上記回転体の外周面から離間して、その回転中心軸の方向に延びるように配置されたアームと、該アームの両端部からそれぞれ上記回転体の側に延出し、該回転体の中心軸方向両端部を各々回転自在に支持する回転支持部と、上記アームを上記枢軸の周りに揺動自在に支持する揺動支持部と、からなることを特徴とする。
この構成のベルト車によれば、上記第1発明のものと同様に、回転体の幅方向にベルトが片寄ったときに、このことに起因する軸荷重中心のずれによって回転体が枢軸周りに回動変位して、その傾斜による戻し力と斜交いによる戻し力との双方が働き、これにより、ベルトの蛇行や片寄り走行が防止される。
また、上記回転体を回転中心軸方向の両側から挟むようにして、支持機構のアームにより回転自在に支持し、そのアームを揺動自在に支持する構成としているので、上記第1発明のもののようにコンパクトにはならないものの、支持機構のレイアウト上の自由度は比較的高く、その強度を十分に確保することができるとともに、回転体の回動角度も比較的確保しやすい。
そのような第2発明のベルト車においても、上記支持機構の揺動支持部は、上記回転体の中心軸方向の中央付近において上記アームに配設されて上記枢軸を構成するシャフトと、該シャフトに作用するスラスト力を受ける転がり軸受と、を有するものとするのが好ましい。こうすれば、上述したように、回転体の斜交いによる戻し力を有効に利用するために枢軸の傾倒角を小さくしたときでも、この枢軸の方向に作用する軸荷重成分、即ちシャフトのスラスト力を転がり軸受によって受け止めて、摺動摩擦抵抗を極小化できる。
また、本願発明は、上述した第1、第2発明の如きベルト車がベルトに張力を付与するように押し当てられていることを特徴とするベルト駆動装置である。
このベルト駆動装置では、上述のベルト車によりベルトに対して安定した張力を与えながら、該ベルトの蛇行や片寄り走行を防止することができ、ベルト伝動装置においてベルトの伝動能力を十分に発揮させる上で有利になる。また、ベルトコンベアにおいては物品の搬送能力を安定的に確保する上で有利になる。
なお、本願発明に係るベルトとしては、平ベルト、歯付ベルト(タイミングベルト)等、その種類は問わない。平ベルトの場合は、その内周面(伝動ベルトでは伝動面)及び外周面のいずれを回転体に接触させるようにしてもよいが、歯付ベルトの場合は、その伝動面の背面を回転体に接触させるようにする。
以上のように、本発明によれば、ベルトの巻き掛けられる回転体を回転自在に支持するとともに、軸荷重の方向に対して所定方向に傾倒した枢軸の周りに揺動自在に支持するようにしたから、ベルトが回転体上で幅方向に片寄ったときに、この回転体を軸荷重の方向において高低差を生ずるように傾斜させるとともに、回転体をベルトに対して斜交いになった状態にして、ベルトに片寄りを戻す戻し力を作用させることができ、これにより、ベルトの耐久性の低下を招くことなく、簡単な構造でベルトの片寄り走行や蛇行を速やかに且つ確実に解消することができる。
しかも、上記回転体を幅方向に分割し、その分割部位において、ベルトの巻掛けられる側とは反対側から軸部材を支持するようにしたから、支持機構のレイアウト上の自由度が高くなり、その強度を十分なものとしながら、回転体及び軸部材の回動範囲を容易に確保することができるとともに、該支持機構をベルト駆動装置におけるベルトレイアウトの内側に配置することも可能になり、装置のコンパクト化や保守作業の容易化が図られる。
或いは、上記回転体を幅方向両側から挟むようにしてアームにより回転自在に支持し、そのアームを枢軸周りに揺動自在に支持するようにしてもよく、この場合も上記と同様に支持機構のレイアウト上の自由度が高くなって、その強度を十分なものとしながら、回転体及び軸部材の回動範囲を容易に確保することができる。
また、上記回転体の幅の中央付近に枢軸を位置づければ、ベルトの幅の中心を回転体の幅の中央付近に位置付けて走行させることができるので、ベルト車の回転体の幅をベルトの幅に近づけることができる。
さらに、上記ベルト車がベルトに張力を付与するように押し当てられていることを特徴とするベルト駆動装置では、ベルトに対して安定した張力を与えながら、該ベルトの蛇行や片寄り走行を防止することができ、ベルトの伝動能力・搬送能力等を十分に発揮させる上で有利になる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係るベルト駆動装置A1の全体構成を示し、両図において1は駆動ローラ、2は従動ローラであり、この両ローラ1,2に平ベルト3が巻き掛けられ、このベルト3に張力を付与すべく、その内周面にテンションローラ4(ベルト車)が押し当てられている。
なお、図示のベルト駆動装置A1の全体構成はあくまで一例に過ぎず、これをベルト伝動装置、ベルト搬送装置等に利用する場合には必要に応じて種々のレイアウトを採用することができる。また、図示のベルト駆動装置A1は、例えば電子写真装置内で感光体ベルトや転写搬送ベルトを駆動する平ベルト駆動装置としても利用できる。
上記駆動ローラ1は、図示しない電気モータ等の原動機により図1において時計回りに回転されて、ベルト3を走行駆動する。従動ローラ2は、図2に断面で示すように、建築物(図示せず)の壁面等に固定されるベース11に取り付けられた軸部材2aと、この軸部材2aにベアリング2b,2bによって回転自在に支持されたローラ部材2cとを備え、上記ベルト3の走行に伴い回転される。
上記テンションローラ4は、ベルト3の巻き掛けられる円筒状の2つのローラ部材5,5(回転体)と、この各ローラ部材5をそれぞれベアリング6,6(図2に示す)によって回転中心軸C1の周りに回転自在に支持する概略円柱状の軸部材7と、この軸部材7の長手方向の略中央部を枢軸C2の周りに揺動自在に支持する支持機構8と、を備えている。言い換えると、テンションローラ4のローラ部材5は幅方向(回転中心軸C1の延びる方向)に2等分されており、支持機構8は、分割された2つのローラ部材5,5間において該ローラ部材5,5にベルト3の巻掛けられる側(図1の上側)とは反対側(図1の下側)から、軸部材7を支持している。
すなわち、図3に示すように、上記軸部材7の長手方向略中央部には、その軸心(ローラ部材5,5の回転中心軸C1と一致)と直交するように孔部が貫通形成され、この孔部にシャフト9の先端側が嵌入されて、ナット10により締結されている。一方、シャフト9の基端側は、上記ベース11に取り付けられたアーム12の先端のボス部13内に収容されて、2つのラジアルベアリング14,14と1つのスラストベアリング15(シャフト9に作用するスラスト力を受ける転がり軸受)とにより回動自在に支持されている。
より具体的に、上記シャフト9の先端側は基端側に比べて直径の小さな小径部とされ、基端側の大径部との間に段部が形成されていて、この段部が軸部材7の外周面に当接している。また、シャフト9基端側の大径部には、その外周面から外方に突出するように鍔部9aが形成されている一方、これを収容するボス部13内には、該シャフト9と略同心上に位置する円筒状壁部の内周面から内方に突出して、円板状壁部13aが形成されている。図示の如くシャフト9がボス部13内に収容された状態では、該シャフト9の鍔部9aはボス部13の円板状壁部13aからシャフト先端側に離間している。
そして、上記シャフト9の大径部外周面とこれを囲むボス部13内周面との間には、該シャフト9の鍔部9aよりもシャフト先端側の部位と、ボス部13の円板状壁部13aよりもシャフト基端側の部位とにそれぞれラジアルベアリング14,14が配設されるとともに、その鍔部9a及び円板状壁部13aの間にはスラストベアリング15が配設されており、これにより、ベルト3の張力によってテンションローラ4の軸部材7に作用する軸荷重を受け止めつつ、該軸部材7がシャフト9とともに回動する際の摺動摩擦抵抗を極小化している。
つまり、この実施形態では、上記支持機構8のシャフト9が軸部材7の揺動軸である枢軸c2を構成しており、テンションローラ4のローラ部材5,5は、軸部材7の軸心でもある回転中心軸C1の周りに回転自在に、且つ、その回転中心軸C1に直交する枢軸C2の周りに揺動自在に支持されている。
そうして、上記図1及び図2に示すテンションローラ4の使用状態で、上記枢軸C2は、図4及び図5に示すように、軸荷重Lの方向を基準として、ローラ部材5,5の回転方向前側に、即ち、図に矢印Rで示すベルト走行方向の前側に、所定角度αだけ傾倒されている。これにより、該ローラ部材5,5に巻き掛けられて走行するベルト3が幅方向に片寄ったときには、このことに起因する軸荷重中心のずれによってローラ部材5,5がベルト3に対し斜交いになり、ベルトの片寄りを戻す戻し力を効果的に発生するようになる。
詳しくは、上記図5に仮想線で示すように、ベルト3が2つのローラ部材5,5に跨って走行するとき、このベルト3の幅の中心位置B1がテンションローラ4の幅方向中央部(シャフト9の軸心に対応する位置)にあるときには、軸荷重のベクトルLはシャフト9の軸心、即ち枢軸C2と交差し、その分力Loが枢軸C2に沿って作用するとともに、分力L1が枢軸C2に直交してシャフト9をこじるように作用する。一方、ベルト3の幅の中心位置B1がテンションローラ4の片側へ寄ると、その片側に軸荷重Lがずれて、その軸荷重の分力L1により軸部材7にシャフト9を中心とする回転モーメントが働き、これにより軸部材7がローラ部材5,5と共にシャフト9の回りに回動変位することになる。
すなわち、仮に上記軸荷重Lの方向がシャフト9の軸心と平行であれば、このときにはL=Lo、L1=0となり、シャフト9周りの回転モーメントは発生しないが、この実施形態のように軸荷重Lの方向がシャフト9の軸心方向から角度αだけ傾いていれば、その軸荷重の分力L1によってシャフト9周りの回転モーメントが発生するので、軸部材7はローラ部材5,5とともに回動変位するのである。ここで、上記角度αは、軸荷重Lの方向を基準とするシャフト9の軸心(枢軸C2)の傾倒角に相当する。
そして、この実施形態では、上記図4等に示すようにシャフト9の軸心(枢軸C2)がローラ部材5の回転方向前側に傾倒しているから、上記の如くローラ部材5,5及び軸部材7が軸荷重の分力L1によって枢軸C2周りに回動させられるとき、該ローラ部材5は、軸荷重Lに直交する方向に見て図6(図4のVI矢視図)に誇張して示すように、その軸荷重Lの方向について、ベルト3の片寄ってきた側が低く、反対側が高くなるように傾斜するのと同時に、その軸荷重Lの方向に見て図7(図4のVII矢視図)に誇張して示すように、ベルト3の片寄ってきた側がベルト走行方向の前側になるように、ベルト3に対して斜交いの状態になる。なお、上記図4、図6及び図7においてはローラ部材5,5が回動変位した状態を仮想線(二点鎖線)で示している。
そのようなローラ部材5,5の回動変位によって、ベルト3には、該ローラ部材5,5が斜交い状態になることによる戻し力(片寄りを戻す力)と、ローラ部材5が傾斜することによる戻し力とが働き、これによりベルト3の片寄りが防止される。すなわち、ベルト3は、ローラ部材5,5が傾斜し且つ斜交いになることによる戻し力と、ベルト駆動装置A1の特性によってベルト3に作用する片寄り力とがつり合う位置で走行することになり、仮に外乱等によってベルト3が大きく片寄ることがあっても、上記戻し力と片寄り力とがつり合う位置に戻されるので、蛇行や片寄り走行が防止される。
ここで、上記斜交いによる戻し力は傾斜による戻し力に比べて効果が高いので、その斜交いによる戻し力を有効に利用するために、上記枢軸C2の傾倒角αは0度を越え45度以下の範囲に設定するのが好ましく、30度以下とするのがさらに好ましい。但し、傾倒角αが0度に近づくほど、軸荷重Lはシャフト9に対してその軸心の方向に大きく作用するようになり、回転モーメントを発生させる分力L1が小さくなる上に、摺動部の摩擦抵抗が大きくなることが懸念される。
この点について、この実施形態では、上述の如く、シャフト9とこれを支持するボス部13との間に3つのベアリングを配設し、そのうちの1つをスラストベアリング15として、軸荷重によりシャフト9に作用するスラスト力を受け止めつつ、当該シャフト9、即ちローラ部材5,5及び軸部材7の回動に対する摺動摩擦抵抗を極小化しているので、ベルト3の片寄りが発生したときにはローラ部材5,5,が遅れなくスムーズに回動し、これにより直ちにベルト3に戻し力が作用することになる。
また、この実施形態のテンションローラ4では、上述したように、幅方向(回転中心軸C1の延びる方向)に2等分したローラ部材5,5の間で軸部材7を直接、支持するようにしているので、支持機構8の構造がシンプルになり、レイアウトスペースも比較的大きくなって、その強度を十分なものとすることができるとともに、該軸部材7の、即ちローラ部材5,5の回動角度も比較的確保しやすくなる。よって、図示の如く幅方向に長いローラにも対応しやすい。
しかも、上記支持機構8は、ローラ部材5,5にベルト3の巻掛けられる側とは反対の側から軸部材7を支持しているので、図1に示すように、テンションローラ4に巻き掛けられて周回するベルト3の内周側に配置されることになり、ベルト駆動装置A1全体で見ても、ベルトレイアウトの内部に支持機構8が配置されて、装置A1全体がコンパクトに構成されている。また、ベルト3の交換も容易に行える。
さらに、この実施形態のベルト駆動装置A1では、上述の如くベルト3の片寄りを戻す機能が与えられたベルト車をテンションローラ4として用いているので、ベルト3に対して安定した張力を与えながら、該ベルト3の蛇行や片寄り走行を防止することができる。従って、ベルト伝動装置に適用すれば、ベルトの伝動能力を十分に発揮させる上で有利になるし、ベルトコンベア等の搬送装置に適用すれば、物品の搬送能力を安定的に確保する上で有利になる。
(実施形態2)
図8及び図9は、本発明の実施形態2に係るベルト駆動装置A2を示し、この装置A2はテンションローラを用いない2軸構成のものであって、本発明に係るベルト車は従動ローラ20として用いている。なお、この実施形態2において前記実施形態1のものと略同様の構造の部材(駆動ローラ1、平ベルト3等)には同一の符号を付して、その説明は省略する。
そして、上記従動ローラ20は、図9に断面で示すように、ベルト3の巻き掛けられる円筒状のローラ部材21(回転体)と、このローラ部材21内に挿入されて同軸に位置し、該ローラ部材21の両端部をそれぞれベアリング22,22によって回転中心軸C1の周りに回転自在に支持する軸部材23と、この軸部材23の両端部がそれぞれ連結される略コ字状のアーム24と、このアーム24の長手方向の略中央部を枢軸C2の周りに揺動自在に支持する揺動支持機構25(揺動支持部)と、を備えている。
上記コ字状アーム24は、ローラ部材21の外周面から離間して、その回転中心軸C1の方向に延びる断面矩形状のアーム本体24a(アーム)と、該アーム本体24aの両端部からそれぞれ上記ローラ部材21の側に延出する延出部24b,24bとからなり、該各延出部24bにそれぞれ形成された孔部には、上記軸部材23の両端に各々形成された縮径部が嵌入されて、連結されている。従って、上記アーム24両端の延出部24b,24bと、これに各々連結される軸部材23の両端部と、そこにそれぞれ配設されたベアリング22,22とにより、上記ローラ部材21の中心軸C1方向両端部を各々回転自在に支持する回転支持部が構成されいてる。
また、上記アーム本体24aの長手方向略中央部には、該アーム本体24aと直交してその厚み方向に貫通する孔部が形成されていて、この孔部には、上記揺動支持部25において枢軸C2を構成するシャフト26の先端部が嵌入されて、ナット27により締結されている。このシャフト26の軸心、即ち上記ローラ部材21の揺動中心となる枢軸C2は、図8に示すように、上記実施形態1と同じく軸荷重Lの方向に対して、ローラ部材21の回転方向前側に(該ローラ部材21にベルト3の巻き掛けられて走行する方向の前側ということもできる)、所定角度αだけ傾倒されている。
上記揺動支持機構25は、図示しない建築物の壁面等に固定される略L字状断面のベース28にボス部29を取り付け、これに上記シャフト26の基端側を収容して回転自在に支持したものである。詳しくは、上記ボス部29は、上記シャフト26と略同心の円筒状に形成され、その基端部外周から外方に広がるフランジ部29aにおいてボルト30,30,…によりベース28に締結されている。また、ボス部29の内周面から内方に突出するように、円板状壁部29bが形成されている。
一方、上記シャフト26は、その長手方向の中間部に外周面から外方に突出するように鍔部26aが形成されるとともに、この鍔部26aからシャフト先端側に向かって段階的に直径が変化していて、順番に大径部、中径部及び小径部とされている。そして、その小径部と中径部との間の段部が軸部材23の外周面に当接している。なお、上記鍔部26aよりも基端側のシャフト26の直径は一定で、上記先端側の中径部と略同じになっている。
そして、図示の如くシャフト26がボス部29内に収容された状態で、該シャフト26の鍔部26aがボス部29の円板状壁部29bからシャフト基端側に離間していて、当該シャフト26の外周面とこれを囲むボス部29内周面との間には、上述した実施形態1と同様に、該シャフト26の鍔部26aよりもシャフト基端側の部位と、ボス部29の円板状壁部29bよりもシャフト先端側の部位とにそれぞれラジアルベアリング31,31が配設されるとともに、その鍔部26a及び円板状壁部29bの間にはスラストベアリング32が配設されている。
つまり、この実施形態2においては、上記従動ローラ20のローラ部材21は、その回転中心軸C1方向の両側から挟むようにして、コ字状アーム24により回転自在に支持されるとともに、このアーム24を介して上記揺動支持機構25により揺動自在に支持されており、該揺動支持機構25、アーム24、軸部材23及びベアリング22によって支持機構が構成されている。
その支持機構によれば、上記実施形態1のもののようにコンパクトにはならないものの、例えば軸部材23を円筒状のものとし、その内部に支持機構を設ける場合と比べればレイアウトスペースに十分な余裕があるので、その強度や揺動範囲を確保しやすい。
そうして、上記実施形態1と同様に、ベルト3の巻き掛けられるローラ部材21の揺動中心(枢軸C2)が軸荷重の方向に対して傾倒されていることから、該ローラ部材21の幅方向にベルト3が片寄ったときには、軸荷重中心のずれによってローラ部材21が枢軸C2周りに回動変位し、これによりベルト3を戻す力が働くことになるので、ベルト3の蛇行や片寄り走行を防止することができる。
(他の実施形態)
なお、上記実施形態2では、ローラ部材21の内部に軸部材23を挿通して、その上にベアリング22,22を配設しているが、これに限らず、アーム24の延出部24b,24bからそれぞれ回転中心軸C1に沿って内方に突出するように円形断面の凸部を形成し、これにベアリング22,22を配設してもよい。こうすれば軸部材23は省略することができる。
また、上記実施形態1では、ローラ部材2,2を中央で2等分しているが、これに限るものではなく、中央部以外で2分割してもよいし、3つ以上に分割してもよい。
また、上記実施形態1,2では、いずれもローラ部材2,21の揺動中心である枢軸C2が、該ローラ部材2,21の回転中心軸C1と直交しているが、これに限るものではない。
さらに、上記実施形態1では、本発明のベルト車をテンションローラ4として用いており、一方、実施形態2では従動ローラ20として用いているが、本発明のベルト車の用途は、それらのいずれにも限定されず、例えば、ベルトの長さや接触角の調節、ベルト走行方向の変更等、ベルト駆動装置における種々の用途に用いることができる。