JP2004036853A - 摩擦式変速装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】入力に対する出力の速度比を広範囲に変更可能とし、しかも、上記速度比が0に近い極低速域でも良好なトルク性能を得ることができるようにする。
【解決手段】入力軸の周囲に遊星回転運動可能に配置された円錐状ローラ3の被駆動部14、頭部15及び円錐台状部13に駆動リング2、軌道リング6及び変速リング5を当接させ、この変速リング5を回り止めするとともにし、軌道リング6に出力軸9を連結する。そして、上記変速リング5が円錐台状部13の一端部に近い所定位置に当接するとき速度比が0となり、円錐台状部13の上記所定位置から他端部付近までの所定領域で変速リング5が移動するに伴い上記速度比が変化するように構成するとともに、円錐状ローラ3の頭部15に軌道リング6が当接する点を通り円錐状ローラ3の中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定領域から外れた位置となるように設定する。
【選択図】 図2
【解決手段】入力軸の周囲に遊星回転運動可能に配置された円錐状ローラ3の被駆動部14、頭部15及び円錐台状部13に駆動リング2、軌道リング6及び変速リング5を当接させ、この変速リング5を回り止めするとともにし、軌道リング6に出力軸9を連結する。そして、上記変速リング5が円錐台状部13の一端部に近い所定位置に当接するとき速度比が0となり、円錐台状部13の上記所定位置から他端部付近までの所定領域で変速リング5が移動するに伴い上記速度比が変化するように構成するとともに、円錐状ローラ3の頭部15に軌道リング6が当接する点を通り円錐状ローラ3の中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定領域から外れた位置となるように設定する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用または産業機械用等として使用される変速装置であって、入力軸の駆動トルクを摩擦力によって出力軸に伝達するとともに、出力軸の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特公昭57−13221号公報に示されるような摩擦式変速装置が知られている。
【0003】
この摩擦式変速装置は、例えば図11に示すように、入力軸41と出力軸51とを同軸上に設け、入力軸41の周囲に、キャリア43に回転自在に支持された円錐形転子44を配設し、この円錐形転子44に設けられた頂角が鈍角をなす円錐面45を、ケーシングに対して回り止めされた変速リング46に摺接させるとともに、上記円錐面45の底部に設けられた第1環状伝動面47を軌道リング48に摺接させつつ、入力軸41と一体に回転する伝動板42から上記円錐形転子44に駆動トルクを伝達することにより、転子軸49を中心に円錐形転子44を自転させるとともに、上記入力軸41周りに円錐形転子44を公転させるように構成されている。そして、円錐形転子44の公転力を軌道リング48に伝達することにより、この軌道リング48を介して出力軸51に駆動トルクを伝達して、この出力軸51を回転させ、かつ上記円錐形転子44の円錐面43に対する変速リング46の当接位置を変化させることにより、上記出力軸51の回転速度が無段階に調節されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような摩擦式変速装置は、ギアまたはベルトを介して駆動トルクを伝達する変速装置に比べて騒音が小さいとともに、上記変速リング46を入力軸41の軸方向にスライド変位させることにより、入力軸41から出力軸51に伝達される回転の変速比を無段階で調節できるが、出力軸の回転速度が0に近い極低速域で良好な出力トルク性能が得られないという問題がある。
【0005】
この点を、図12〜図14を参照しつつ具体的に説明する。
【0006】
上記摩擦式変速機の要部を模式的に表した図12に示すように、変速リング46を円錐形転子44の円錐面45の母線に沿って移動させるとそれに応じて変速比が変化し、変速リング46が円錐面45の頂面に近づくと出力軸が高速になり、変速リング46が円錐面の周辺に近づくと出力軸が低速になる。同図中のAは円錐形転子44の公転軸線、Bは同自転軸線であり、また、実施形態の中で詳しく述べるように、円錐形転子44に軌道リング48が当接する点と公転,自転軸線A,Bの交点とを通る直線Cをゼロ回転線と呼ぶと、このゼロ回転線Cと上記円錐面45の母線Mとの交点(ゼロ回転位置C0)に変速リング46が接したとき、出力軸51の回転が0になる。また、円錐形転子44に軌道リング48が当接する点を通り自転軸線Bと平行な直線Dをトルク支点線と呼び、このトルク支点線Dと上記母線Mとの交点D0をトルク支点と呼ぶと、変速リング46が上記トルク支点D0に達したとき出力トルクが得られなくなる。
【0007】
すなわち、図14に示すように、円錐形転子44には入力側、出力側及び変速リング46から接線力PV,SV,FVが作用し、これらの接線力PV,SV,FVの関係については梃子の原理が応用され、変速リング46が上記トルク支点D0よりも出力高速側の領域にあれば、図に実線で示すように接線力PV,SV,FVが平衡を保つ状態となるが、変速リング46が上記トルク支点D0の位置まで移動すると、変速リング46からの接線力FVが二点鎖線で示すように出力側からの接線力SVに対向するように作用し、梃子の支点と力点が重なる場合と同様に、接線力PV,SV,FVの平衡が保たれなくなる。そして、トルク支点D0からゼロ回転位置C0までの領域では有効に出力が得られなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、入力に対する出力の速度比を広範囲にわたり無段階に変更可能とし、しかも、上記速度比が0に近い極低速域でも良好な出力トルク性能を得ることができる摩擦式変速装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ケーシングに回転自在に支持された入力軸と、上記入力軸により回転駆動される駆動リングと、入力軸に対して回転自在とされたキャリアに保持されて、入力軸の周囲に遊星回転運動可能に配置された円錐状ローラと、入力軸と同軸上に配設された変速リングと、この変速リングを上記入力軸の軸方向にスライド変位させる変速手段と、入力軸と同軸上に配設された軌道リングとを備え、上記円錐状ローラに、上記駆動リングが当接する被駆動部と、上記軌道リングが当接する頭部と、この頭部に小径端部が連なる円錐台状部とを設け、この円錐台状部の外面側または内面側の母線を入力軸と平行に設置して、この部分に上記変速リングを当接させ、この変速リングと上記軌道リングとのうちの一方を回り止めし、他方に出力軸を連結した摩擦式変速装置であって、上記変速リングが上記円錐台状部の一端部に近い所定位置に当接するときに入力に対する出力の速度比が0となり、上記円錐台状部の上記所定位置から他端部付近までの所定領域で変速リングが移動するに伴い上記速度比が変化するように構成するとともに、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、円錐台状部の上記所定領域から外れた位置となるように設定したものである。
【0010】
上記構成によれば、上記所定領域内に変速リングが位置するとき、変速リングの移動に伴い、上記速度比が0から比較的大きな値にまでわたって無段階に変化し、この速度比の変化に略反比例してトルク伝達比が変化する。
【0011】
そして、とくに、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、円錐台状部の上記所定領域から外れた位置となるように設定しているため、上記所定領域内で上記速度比が0付近となる位置まで変速リングが移動したときにも、速度比に略反比例する大きなトルク伝達比が確保され、出力トルク性能が良好に保たれることとなる。
【0012】
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の摩擦式変速装置において、上記円錐台状部の外面側の母線が入力軸と平行となるように円錐状ローラを設置し、この円錐状ローラの被駆動部が駆動リングの外周面に当接し、頭部が軌道リングの内周面に当接し、円錐台状部の外面側に変速リングが当接するように構成するとともに、上記頭部の径を上記円錐台状部の大径端部と同程度に大きくすることにより、円錐台状部の大径端部に近い所定位置に変速リングが当接するときに上記速度比が0となり、かつ、上記頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定位置よりも大径端部側となるように設定したものである。
【0013】
上記構成によれば、円錐台状部の大径端部に近い所定位置から小径端部付近までの所定領域内における変速リングの移動に伴い、上記速度比が0から比較的大きな値にまでわたって無段階に変化し、この速度比の変化に略反比例してトルク伝達比が変化する。
【0014】
そして、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定位置よりも大径端部側、つまり上記所定領域外となることにより、上記所定領域内で上記速度比が0付近となる位置まで変速リングが移動したときにも、出力トルク性能が良好に保たれることとなる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の摩擦式変速装置において、上記円錐台状部の内面側の母線が入力軸と平行となるように円錐状ローラを設置し、この円錐状ローラの被駆動部が駆動リングの内周面に当接し、頭部が軌道リングの外周面に当接し、円錐台状部の内面側に変速リングが当接するように構成するとともに、上記頭部の径を上記円錐台状部の小径端部より少し大きくて大径端部よりは充分に小さくすることにより、円錐台状部の小径端部に近い所定位置に変速リングが当接するときに上記速度比が0となり、かつ、上記頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定位置よりも小径端部側となるように設定したものである。
【0016】
上記構成によれば、円錐台状部の小径端部に近い所定位置から大径端部付近までの所定領域内における変速リングの移動に伴い、上記速度比が0から比較的大きな値にまでわたって無段階に変化し、この速度比の変化に略反比例してトルク伝達比が変化する。
【0017】
そして、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定位置よりも小径端部側、つまり上記所定領域外となることにより、上記所定領域内で上記速度比が0付近となる位置まで変速リングが移動したときにも、出力トルク性能が良好に保たれることとなる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れかに記載の摩擦式変速装置において、上記変速リングを回り止めし、上記軌道リングに出力軸を連結したものである。
【0019】
上記構成によれば、上記軌道リングを回り止めして変速リングを出力軸に連結する場合と比べ、軌道リングの移動に応じた上記速度比の変化を大きくすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明に係る摩擦式変速装置の実施形態を示している。この摩擦式変速装置は、エンジンまたは電動モータ等からなる駆動源により回転駆動される入力軸1と、この入力軸1により回転駆動される駆動リング2と、入力軸1の周囲に遊星回転運動可能に配設されて駆動リング2に当接する複数個(例えば三個)の円錐状ローラ3と、これらの円錐状ローラ3を回転自在に支持するキャリア4と、上記円錐状ローラ3に当接するように設置された変速リング5および軌道リング6と、変速リング5を入力軸1の軸方向にスライド変位させる変速手段7と、出力軸9と、上記入力軸1および出力軸9を、その軸方向移動を規制した状態で回転自在に支持するケーシング10とを備えている。そして、上記変速リング5および軌道リング6のうちの一方が回り止めされるとともに、他方に出力軸9が連結され、当実施形態では変速リング5が回り止めされるとともに軌道リング6に出力軸9が連結されている。
【0021】
上記駆動リング2は、入力軸1にキー結合される等によって一体に連結された入力ボス11に外嵌された円盤状部材からなり、この入力ボス11に沿って入力軸1の軸方向にスライド可能に支持されている。上記入力ボス11の一端部に設けられたフランジ部11aと上記駆動リング2の基端部との間には第1付勢手段12が設けられ、この第1付勢手段12を介して入力軸1の駆動トルクが駆動リング2に伝達されることにより、この駆動リング2が回転駆動されるとともに、その駆動トルクが上記円錐状ローラ3に伝達されて、この円錐状ローラ3が回転駆動されるようになっている。
【0022】
なお、上記第1付勢手段12は、入力ボス11のフランジ部11aと駆動リング2の基端部との対向面に形成されたV溝状のカムとその間に配置されたボール等からなり、上記フランジ部11aと駆動リング2との間に作用するトルクに応じ、駆動リング2をフランジ部11aから離間させる方向(円錐状ローラ3の後記被駆動部14に駆動リング2を押しつける方向)のスラスト力を生じさせるようになっている。
【0023】
上記円錐状ローラ3は、被駆動部14と、これに隣接する頭部15と、この頭部15に小径端部が連なる円錐台形状部13と、上記被駆動部14の端面および円錐台状部13の大径端部の端面に連設された一対の支持軸16とを有し、これらが同軸上に連設されている。上記円錐台形状部13は、母線が鋭角をなし、つまり頂角が例えば10°〜45°程度の鋭角、好ましくは25°〜35°程度に設定された直円錐体の頂部を切除した形に形成されている。また、被駆動部14は、円錐台状部13の小径端部と略等しい直径を有する円柱状に形成されている。この被駆動部14と上記円錐台状部13との間に位置する頭部15は、円錐台状部13の大径端部と同程度に大径の扁平円柱状に形成されている。
【0024】
そして、上記円錐台状部13の外面側の母線が入力軸1の軸方向と平行に設置されるとともに、上記被駆動部14が駆動リング2の外周部に当接するように上記円錐状ローラ3が設置された状態で、キャリア4に設けられたブッシュ等からなる一対のローラ支持部17に上記両支持軸16がそれぞれ挿入されることより、上記円錐状ローラ3が回転自在に支持されるとともに、その軸方向に移動可能な状態で支持されている。
【0025】
上記キャリア4は、円錐状ローラ3の被駆動部14側に配設された前面板18と、円錐状ローラ3の大径端部側に配設された後面板19と、上記前面板18と後面板19とを連結する連結部20とを有し、入力軸1上に設けられた軸受部21によって上記連結部20が回転自在に支持されることにより、上記前面板18と後面板19とが連結部20を介して一体に連結された状態で、上記入力軸1まわりに回転自在に支持されている。
【0026】
上記変速リング5は、変速手段7を介してケーシング10に回り止め状態に支持されたリング体からなり、その内周面が上記各円錐状ローラ3の円錐台状部13にそれぞれ当接するように内径が設置されている。そして、上記変速手段7により変速リング5が駆動されて入力軸1の軸方向にスライド変位するのに応じ、円錐状ローラ3の円錐台状部13に対する上記変速リング5の当接位置が変化するようになっている。
【0027】
上記変速手段7は、変速リング5の外周部を抱持する抱持部22と、変速リング5をスライド自在に支持する支持バー23を備えた支持部材24と、上記抱持部22に形成された係合孔に係合される係合ピン25を有する旋回レバー26と、この旋回レバー26を旋回駆動する駆動レバー27を備えた操作部とからなり、この操作部により旋回レバー26を旋回駆動することにより、上記抱持部22により保持された変速リング5を入力軸1の軸方向にスライド変位させるように構成されている。また、上記支持部材24の基端部と、ケーシング10に固着された固定部材10aとの間には、第2付勢手段28が配設されている。
【0028】
この第2付勢手段28は、支持部材24の基端部と固定部材10aとの対向面に形成されたV溝状のカムとその間に配置されたボール等からなり、上記支持部材24と固定部材10aとの間に作用するトルクに応じ、支持部材24を固定部材10aから離間させる方向のスラスト力を生じさせるようになっており、このスラスト力が推力リング29を介して円錐状ローラ3に及ぶようになっている。
【0029】
上記軌道リング6は、円錐状ローラ3の各頭部15に内周面がそれぞれ当接するように内径が設置されたリング体31と、このリング体31と一体に連設された支持部材32とを有し、支持部材32の基端部は、出力軸9の基端部9aに、第3付勢手段33を介して連結されている。この第3付勢手段33は、支持部材32の基端部と出力軸9の基端部9aとの対向面に形成されたV溝状のカムとその間に配置されたボール等からなり、上記支持部材32と出力軸9との間に作用するトルクに応じ、支持部材32を出力軸9の基端部9aから離間させる方向(円錐状ローラ3の頭部15に支持部材32のリング体31を押しつける方向)のスラスト力を生じさせるようになっている。
【0030】
上記構成において、入力軸1により駆動リング2が回転駆動されると、この駆動リング2の外周部が上記円錐状ローラ3の被駆動部14に当接しているために、この当接部に作用する摩擦力に応じて円錐状ローラ3が自転しようとする。この円錐状ローラ3の円錐台状13には、ケーシング10に対して回り止めされた変速リング5が当接しているため、この当接部に作用する摩擦力に対応して上記駆動リング2から円錐状ローラ3に入力される駆動トルクに応じ、円錐状ローラ3が変速リング5および軌道リング6の内周面に沿って自転しつつ公転する。
【0031】
そして、上記円錐状ローラ3の駆動トルクが摩擦力を介して軌道リング6に伝達されることにより、この軌道リング6が回転駆動されるとともに、その駆動トルクが上記第3付勢手段33を介して出力軸9に伝達され、この出力軸9が回転駆動される。上記円錐状ローラ3の周速は、変速手段7により変速リング5を円錐台状部13の外面側の母線に沿って移動させるのに応じて変化し、これに対応して上記頭部15に当接した軌道リング6の回転速度が変化し、つまり出力軸9の回転速度が変化する。
【0032】
ところで、当実施形態の構造では、円錐台状部13の大径端部に近い所定位置に変速リング5が当接するときに出力軸9の速度が0となり、この所定位置より小径端部側の所定領域では、出力軸9の回転方向が一定で、かつ速度比(出力軸回転速度の入力軸回転速度に対する比)が変速リング5の移動に伴って変化するとともに、速度比に略反比例して駆動トルクの伝達比が変化する関係が保たれ、速度比0の付近で大きな出力トルクが得られる。
【0033】
このような構成を、図3を参照しつつ具体的に説明する。
【0034】
図3は当実施形態における円錐状ローラ3を模式的に示すとともに、これに対する入力側、出力側及び固定側のリング当接点を、それぞれに符号P,S,Fを付した三角印で示しており、Pは入力側リング当接点(被駆動部14に駆動リング2が当接する個所)、Sは出力側リング当接点(頭部15に軌道リング6が当接する個所)、Fは固定側リング当接点(円錐台状部13に変速リング5が当接する個所)である。当実施形態では変速操作に応じて固定側リング当接点Fが円錐台状部13の外面側の母線Mに沿って移動する。
【0035】
この図において、Aは円錐状ローラの公転軸線(入力軸1の中心線)、Bは
円錐状ローラ3の自転軸線(円錐状ローラ3の中心線)である。また、Cは円錐状ローラ3の頭部15におけるリング当接点(当実施形態では出力側リング当接点S)と公転,自転軸線A,Bの交点とを結ぶ直線である。
【0036】
この直線Cが上記母線Mと交差する点に固定側リング当接点Fが位置するときに速度比が0、つまり出力軸回転速度が0となる。すなわち、直線C上に出力側リング当接点Sと固定側リング当接点Fとがともに位置する状態での円錐状ローラ3の自転及び公転の動作は、線Bを中心、線Cを母線とする円錐体が線Aを中心とするリングに当接しつつ自転及び公転する場合と等価であるため、線A上の一点を当接点とするリング(固定側のリング)が停止していれば線A上の別の点を当接点とするリング(出力側のリング)も停止することとなる。なお、以下の説明では便宜的に上記直線Cをゼロ回転線と呼び、ゼロ回転線Cが円錐台状部13の母線Mと交差する点C0をゼロ回転位置と呼ぶ。
【0037】
また、Dは円錐状ローラ3の頭部15におけるリング当接点(当実施形態では出力側リング当接点S)を通り自転軸線Bと平行な直線であり、便宜的にこの直線Dをトルク支点線と呼び、このトルク支点線Dと上記母線Mもしくはその延長線との交点D0をトルク支点と呼ぶ
当実施形態では円錐状ローラ3の頭部15が円錐台状部13の大径端部と同程度に大きく形成されていることにより、円錐台状部13の大径端部に近い所定位置がゼロ回転位置C0となり、円錐台状部13の母線Mに沿った変速リング可動範囲のうちでゼロ回転位置C0より小径端部側にある所定領域αがゼロ回転位置C0より大径端部側の領域βと比べて充分に大きくなるとともに、トルク支点D0が上記所定領域αには存在せず、ゼロ回転位置C0より大径端部側(大径端部よりさらに外側でもよい)に存在するようになっている。
【0038】
このように構成された摩擦式変速装置は、車両または産業用機械等に組み込んで使用する場合、上記ゼロ回転位置C0より小径端部側の、変速リング可動範囲の大部分を占める所定領域αが通常使用領域となり、変速リング5がこの領域αに位置するときの出力軸9の回転方向が車両や産業用機械等にとって正転方向、となるように組み込まれる。なお、変速リング5が領域βまで移動したときは出力軸9の回転方向は逆転する。
【0039】
通常使用領域である上記所定領域α内で変速リング5が変速操作に応じて移動すると、それに伴い入力に対する出力の速度比が比較的大きく変化し、変速リング5が円錐台状部13の小径端部に近づくにつれて出力軸9が高速となり、変速リング5がゼロ回転位置C0に近づくにつれて出力軸9が低速となる。また、トルク伝達比は上記速度比が小さくなるにつれて反比例的に大きくなり、このような関係が速度比0付近まで保たれる。この作用を、図4を参照しつつ説明する。
【0040】
図4は、円錐状ローラ3を軸方向一端側から見た模式図上に、円錐状ローラ3に対して入力軸側リング、出力側リング及び固定側リング(変速リング5)からそれぞれ作用する接線力PV,SV,FVを矢印で表したものであり、矢印先端の横軸上の位置は、円錐状ローラ3の中心から接線力が作用する点までの径方向の距離に対応している。
【0041】
上記各接線力PV,SV,FVの関係については前述のように梃子の原理が応用され、変速リング5が上記所定領域α内にあるときは図4中に実線で示すように接線力PV,SV,FVの平衡が保たれ、かつ、変速リング5がゼロ回転位置に近づくにつれて接線力PVに対して接線力SV,FVが大きくなる。また、変速リング5がトルク支点D0まで達すると、変速リング5からの接線力FVと出力側からの接線力SVとが、円錐状ローラ3の中心から等距離の位置に作用することとなるため、力の平衡が保たれなくなるが、トルク支点D0は上記所定領域α内に存在しないため、変速リング5が上記所定領域α内ある場合にはこのような事態が生じない。
【0042】
従って、図5に示すように、本発明例では速度比0付近まで速度比が小さくなるにつれてトルク伝達比が増大する傾向が保たれ、極低速域でも良好なトルク性能が確保される。一方、前述の図11に示すような従来例では、トルク比が0に近い低速域でトルク伝達比が落ち込む傾向が生じる。
【0043】
なお、上記第1実施形態では、図1に示すように、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部と、出力軸9に伝達された駆動力を外部の比駆動部に出力する出力部とを同方向に設けているが、図6に示す第2実施形態のように、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部1aをケーシング10の一端側に配置するとともに、出力軸9に伝達された駆動力を外部の比駆動部に出力する出力部9bをケーシング10の他端側に配置した構造としてもよい。
【0044】
また、上記第1,第2実施形態では、変速リング5をケーシング10に対して回り止めするとともに、軌道リング6を出力軸9に連結しているが、図7に示す第3実施形態のように、軌道リング6をケーシング10に対して回り止めするとともに、変速リング5を出力軸9に連結してもよい。この場合も、円錐状ローラ3の頭部15を円錐台状部13の大径端部と同程度に大径としておくことにより、第1,第2実施形態と略同様の作用が得られる。ただし、変速リング5を移動させることに応じた変速の有効範囲は、第1,第2実施形態の方が大きくなる。
【0045】
図8は第4実施形態を示している。この実施形態では、円錐状ローラ3Aが、被駆動部を兼ねる頭部15Aと、これに小径端部が連なる円錐台状部13Aと、両側端面に連設された一対の支持軸16Aとを同軸上に連設した構造であって、上記頭部15Aは、上記円錐台状部13Aの小径端部より少し大きくて大径端部よりは充分に小さい径の円柱上に形成されている。そして、この円錐状ローラ3Aは、その円錐台状部13Aの内面側の母線が入力軸1と平行になるように配置された状態で、キャリア4Aに回転自在に保持されている。
【0046】
駆動リング2Aは、円錐状ローラ3Aの各頭部15Aに内周面がそれぞれ当接するように内径が設定されたリング体35と、このリング体35と一体に連設された支持部材36とを有し、支持部材36が第1の付勢手段12Aを介して入力ボスに連結されている。
【0047】
また、上記軌道リング6Aは、円錐状ローラ3Aの各頭部15Aに外周面がそれぞれ当接するように設置されたリング体37と、このリング体37と一体に連設されて入力軸1の周囲に回転自在に配置された筒状の支持部材38とを有し、支持部材38の端部は、出力軸9の基端部に、第3付勢手段33Aを介して連結されている。
【0048】
変速リング5Aは、変速手段6Aを介してケーシング10に回り止め状態に支持されたリング体からなり、その外周面が上記各円錐ローラ3Aの円錐台状部13Aの内面側に当接している。また、変速手段7Aは、変速リング5Aにロッド39を介して連結された変速リング連結部22Aと、変速リング5Aをスライド自在に支持するとともにケーシング10に対して回り止めされる支持バー23Aを備えた支持部材24Aと、上記変速リング連結部22Aに形成された係合孔に係合される係合ピンを有する旋回レバー26Aと、この旋回レバー26Aを旋回駆動する駆動レバー27Aを備えた操作部7Aとからなり、この操作部7Aの旋回レバー26Aを旋回駆動することにより変速リング5Aを入力軸1の軸方向にスライド変位させるように構成されている。上記支持部材24Aの基端部と、ケーシング10に固着された部材との間には、第2付勢手段28Aが配設されている。
【0049】
図9は上記第4実施形態における円錐状ローラ3Aとこれに対する入力側、出力側及び固定側のリング当接点P,S,Fを模式的に示している。
【0050】
この図において、円錐状ローラ3Aの頭部15Aの外面側に入力側リング当接点Pが、同内面側に出力側リング当接点Sが、また円錐台状部13Aの内面側に固定側リング当接点Fがそれぞれ存在する。そして、上記出力側リング当接点Sと公転,自転軸線A,Bの交点とを結ぶ直線がゼロ回転線Cに相当し、このゼロ回転線Cが円錐台状部13Aの内面側の母線Mと交差する点をゼロ回転位置C0に相当する。また、出力側リング当接点Sを通り自転軸線Bと平行な直線がトルク支点線Dに相当し、このトルク支点線Dと上記母線Mとの交点がトルク支点D0に相当する。
【0051】
当実施形態では、円錐台状部13Aの小径端部に近い所定位置がゼロ回転位置C0となり、円錐台状部13Aの母線Mに沿った変速リング可動範囲のうちでゼロ回転位置C0より大径端部側にある所定領域αがゼロ回転位置C0より小径端部側の領域βと比べて充分に大きくなるとともに、トルク支点D0が上記所定領域αには存在せず、ゼロ回転位置C0より小径端部側に存在するようになっている。
【0052】
このように構成された摩擦式変速装置は、車両または産業用機械等に組み込んで使用する場合、上記ゼロ回転位置より大径端部側の、変速リング可動範囲の大部分を占める所定領域αが通常使用領域となり、この領域αに位置するときの出力軸の回転方向が車両や産業用機械等にとって正転方向となるように組み込まれる。
【0053】
これにより、前記各実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0054】
なお、上記第4実施形態では、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部と、出力軸9に伝達された駆動力を外部の比駆動部に出力する出力部とを同方向に設けているが、図10に示す第5実施形態のように、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部1aをケーシング10の一端側に配置するとともに、出力軸9に伝達された駆動力を外部の比駆動部に出力する出力部9bをケーシング10の他端側に配置した構造としてもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、入力軸の周囲に遊星回転運動可能に配置された円錐状ローラの被駆動部、頭部及び円錐台状部に駆動リング、軌道リング及び変速リングを当接させ、この変速リングと上記軌道リングとのうちの一方を回り止めし、他方に出力軸を連結するように構成するとともに、上記変速リングが上記円錐台状部の一端部に近い所定位置に当接するときに入力に対する出力の速度比が0となり、上記円錐台状部の上記所定位置から他端部付近までの所定領域で変速リングが移動するに伴い上記速度比が変化するように構成するとともに、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、円錐台状部の上記所定領域から外れた位置となるように設定しているため、上記所定領域内おける変速リングの移動により上記速度比が0から比較的大きな値にまでわたって無段階に変化させることができ、しかも、この速度比の変化に略反比例してトルク伝達比が変化し、この速度比とトルク伝達比の関係を、速度比が0付近にあるときにも確保することができる。従って、広い変速範囲を確保しつつ、速度比が0に近い極低速域でのトルク性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る摩擦式変速装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】上記変速装置の要部の構成を示す断面図である。
【図3】第1実施形態の変速装置における円錐状ローラ等を模式的に表した説明図である。
【図4】円錐状ローラに作用する接線力を示す説明図である。
【図5】変速比と駆動トルクの伝達比との対応関係を示すグラフである。
【図6】摩擦式変速装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図7】摩擦式変速装置の第3実施形態を示す断面図である。
【図8】摩擦式変速装置の第4実施形態を示す断面図である。
【図9】第4実施形態の変速装置における円錐状ローラ等を模式的に表した説明図である。
【図10】摩擦式変速装置の第4実施形態を示す断面図である。
【図11】摩擦式変速装置に従来例を示す断面図である。
【図12】上記従来例における要部を模式的に表した説明図である。
【図13】上記従来例の図12に示す部分の一部を拡大して示す説明図である。
【図14】上記従来例による場合の円錐形転子に作用する接線力を示す説明図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 駆動リング
3 円錐状ローラ
4 キャリア
5 変速リング
6 軌道リング
7 変速手段
9 出力軸
10 ケーシング
13 円錐台状部
14 被駆動部
15 頭部
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用または産業機械用等として使用される変速装置であって、入力軸の駆動トルクを摩擦力によって出力軸に伝達するとともに、出力軸の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特公昭57−13221号公報に示されるような摩擦式変速装置が知られている。
【0003】
この摩擦式変速装置は、例えば図11に示すように、入力軸41と出力軸51とを同軸上に設け、入力軸41の周囲に、キャリア43に回転自在に支持された円錐形転子44を配設し、この円錐形転子44に設けられた頂角が鈍角をなす円錐面45を、ケーシングに対して回り止めされた変速リング46に摺接させるとともに、上記円錐面45の底部に設けられた第1環状伝動面47を軌道リング48に摺接させつつ、入力軸41と一体に回転する伝動板42から上記円錐形転子44に駆動トルクを伝達することにより、転子軸49を中心に円錐形転子44を自転させるとともに、上記入力軸41周りに円錐形転子44を公転させるように構成されている。そして、円錐形転子44の公転力を軌道リング48に伝達することにより、この軌道リング48を介して出力軸51に駆動トルクを伝達して、この出力軸51を回転させ、かつ上記円錐形転子44の円錐面43に対する変速リング46の当接位置を変化させることにより、上記出力軸51の回転速度が無段階に調節されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような摩擦式変速装置は、ギアまたはベルトを介して駆動トルクを伝達する変速装置に比べて騒音が小さいとともに、上記変速リング46を入力軸41の軸方向にスライド変位させることにより、入力軸41から出力軸51に伝達される回転の変速比を無段階で調節できるが、出力軸の回転速度が0に近い極低速域で良好な出力トルク性能が得られないという問題がある。
【0005】
この点を、図12〜図14を参照しつつ具体的に説明する。
【0006】
上記摩擦式変速機の要部を模式的に表した図12に示すように、変速リング46を円錐形転子44の円錐面45の母線に沿って移動させるとそれに応じて変速比が変化し、変速リング46が円錐面45の頂面に近づくと出力軸が高速になり、変速リング46が円錐面の周辺に近づくと出力軸が低速になる。同図中のAは円錐形転子44の公転軸線、Bは同自転軸線であり、また、実施形態の中で詳しく述べるように、円錐形転子44に軌道リング48が当接する点と公転,自転軸線A,Bの交点とを通る直線Cをゼロ回転線と呼ぶと、このゼロ回転線Cと上記円錐面45の母線Mとの交点(ゼロ回転位置C0)に変速リング46が接したとき、出力軸51の回転が0になる。また、円錐形転子44に軌道リング48が当接する点を通り自転軸線Bと平行な直線Dをトルク支点線と呼び、このトルク支点線Dと上記母線Mとの交点D0をトルク支点と呼ぶと、変速リング46が上記トルク支点D0に達したとき出力トルクが得られなくなる。
【0007】
すなわち、図14に示すように、円錐形転子44には入力側、出力側及び変速リング46から接線力PV,SV,FVが作用し、これらの接線力PV,SV,FVの関係については梃子の原理が応用され、変速リング46が上記トルク支点D0よりも出力高速側の領域にあれば、図に実線で示すように接線力PV,SV,FVが平衡を保つ状態となるが、変速リング46が上記トルク支点D0の位置まで移動すると、変速リング46からの接線力FVが二点鎖線で示すように出力側からの接線力SVに対向するように作用し、梃子の支点と力点が重なる場合と同様に、接線力PV,SV,FVの平衡が保たれなくなる。そして、トルク支点D0からゼロ回転位置C0までの領域では有効に出力が得られなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、入力に対する出力の速度比を広範囲にわたり無段階に変更可能とし、しかも、上記速度比が0に近い極低速域でも良好な出力トルク性能を得ることができる摩擦式変速装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ケーシングに回転自在に支持された入力軸と、上記入力軸により回転駆動される駆動リングと、入力軸に対して回転自在とされたキャリアに保持されて、入力軸の周囲に遊星回転運動可能に配置された円錐状ローラと、入力軸と同軸上に配設された変速リングと、この変速リングを上記入力軸の軸方向にスライド変位させる変速手段と、入力軸と同軸上に配設された軌道リングとを備え、上記円錐状ローラに、上記駆動リングが当接する被駆動部と、上記軌道リングが当接する頭部と、この頭部に小径端部が連なる円錐台状部とを設け、この円錐台状部の外面側または内面側の母線を入力軸と平行に設置して、この部分に上記変速リングを当接させ、この変速リングと上記軌道リングとのうちの一方を回り止めし、他方に出力軸を連結した摩擦式変速装置であって、上記変速リングが上記円錐台状部の一端部に近い所定位置に当接するときに入力に対する出力の速度比が0となり、上記円錐台状部の上記所定位置から他端部付近までの所定領域で変速リングが移動するに伴い上記速度比が変化するように構成するとともに、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、円錐台状部の上記所定領域から外れた位置となるように設定したものである。
【0010】
上記構成によれば、上記所定領域内に変速リングが位置するとき、変速リングの移動に伴い、上記速度比が0から比較的大きな値にまでわたって無段階に変化し、この速度比の変化に略反比例してトルク伝達比が変化する。
【0011】
そして、とくに、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、円錐台状部の上記所定領域から外れた位置となるように設定しているため、上記所定領域内で上記速度比が0付近となる位置まで変速リングが移動したときにも、速度比に略反比例する大きなトルク伝達比が確保され、出力トルク性能が良好に保たれることとなる。
【0012】
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の摩擦式変速装置において、上記円錐台状部の外面側の母線が入力軸と平行となるように円錐状ローラを設置し、この円錐状ローラの被駆動部が駆動リングの外周面に当接し、頭部が軌道リングの内周面に当接し、円錐台状部の外面側に変速リングが当接するように構成するとともに、上記頭部の径を上記円錐台状部の大径端部と同程度に大きくすることにより、円錐台状部の大径端部に近い所定位置に変速リングが当接するときに上記速度比が0となり、かつ、上記頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定位置よりも大径端部側となるように設定したものである。
【0013】
上記構成によれば、円錐台状部の大径端部に近い所定位置から小径端部付近までの所定領域内における変速リングの移動に伴い、上記速度比が0から比較的大きな値にまでわたって無段階に変化し、この速度比の変化に略反比例してトルク伝達比が変化する。
【0014】
そして、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定位置よりも大径端部側、つまり上記所定領域外となることにより、上記所定領域内で上記速度比が0付近となる位置まで変速リングが移動したときにも、出力トルク性能が良好に保たれることとなる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の摩擦式変速装置において、上記円錐台状部の内面側の母線が入力軸と平行となるように円錐状ローラを設置し、この円錐状ローラの被駆動部が駆動リングの内周面に当接し、頭部が軌道リングの外周面に当接し、円錐台状部の内面側に変速リングが当接するように構成するとともに、上記頭部の径を上記円錐台状部の小径端部より少し大きくて大径端部よりは充分に小さくすることにより、円錐台状部の小径端部に近い所定位置に変速リングが当接するときに上記速度比が0となり、かつ、上記頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定位置よりも小径端部側となるように設定したものである。
【0016】
上記構成によれば、円錐台状部の小径端部に近い所定位置から大径端部付近までの所定領域内における変速リングの移動に伴い、上記速度比が0から比較的大きな値にまでわたって無段階に変化し、この速度比の変化に略反比例してトルク伝達比が変化する。
【0017】
そして、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定位置よりも小径端部側、つまり上記所定領域外となることにより、上記所定領域内で上記速度比が0付近となる位置まで変速リングが移動したときにも、出力トルク性能が良好に保たれることとなる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れかに記載の摩擦式変速装置において、上記変速リングを回り止めし、上記軌道リングに出力軸を連結したものである。
【0019】
上記構成によれば、上記軌道リングを回り止めして変速リングを出力軸に連結する場合と比べ、軌道リングの移動に応じた上記速度比の変化を大きくすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明に係る摩擦式変速装置の実施形態を示している。この摩擦式変速装置は、エンジンまたは電動モータ等からなる駆動源により回転駆動される入力軸1と、この入力軸1により回転駆動される駆動リング2と、入力軸1の周囲に遊星回転運動可能に配設されて駆動リング2に当接する複数個(例えば三個)の円錐状ローラ3と、これらの円錐状ローラ3を回転自在に支持するキャリア4と、上記円錐状ローラ3に当接するように設置された変速リング5および軌道リング6と、変速リング5を入力軸1の軸方向にスライド変位させる変速手段7と、出力軸9と、上記入力軸1および出力軸9を、その軸方向移動を規制した状態で回転自在に支持するケーシング10とを備えている。そして、上記変速リング5および軌道リング6のうちの一方が回り止めされるとともに、他方に出力軸9が連結され、当実施形態では変速リング5が回り止めされるとともに軌道リング6に出力軸9が連結されている。
【0021】
上記駆動リング2は、入力軸1にキー結合される等によって一体に連結された入力ボス11に外嵌された円盤状部材からなり、この入力ボス11に沿って入力軸1の軸方向にスライド可能に支持されている。上記入力ボス11の一端部に設けられたフランジ部11aと上記駆動リング2の基端部との間には第1付勢手段12が設けられ、この第1付勢手段12を介して入力軸1の駆動トルクが駆動リング2に伝達されることにより、この駆動リング2が回転駆動されるとともに、その駆動トルクが上記円錐状ローラ3に伝達されて、この円錐状ローラ3が回転駆動されるようになっている。
【0022】
なお、上記第1付勢手段12は、入力ボス11のフランジ部11aと駆動リング2の基端部との対向面に形成されたV溝状のカムとその間に配置されたボール等からなり、上記フランジ部11aと駆動リング2との間に作用するトルクに応じ、駆動リング2をフランジ部11aから離間させる方向(円錐状ローラ3の後記被駆動部14に駆動リング2を押しつける方向)のスラスト力を生じさせるようになっている。
【0023】
上記円錐状ローラ3は、被駆動部14と、これに隣接する頭部15と、この頭部15に小径端部が連なる円錐台形状部13と、上記被駆動部14の端面および円錐台状部13の大径端部の端面に連設された一対の支持軸16とを有し、これらが同軸上に連設されている。上記円錐台形状部13は、母線が鋭角をなし、つまり頂角が例えば10°〜45°程度の鋭角、好ましくは25°〜35°程度に設定された直円錐体の頂部を切除した形に形成されている。また、被駆動部14は、円錐台状部13の小径端部と略等しい直径を有する円柱状に形成されている。この被駆動部14と上記円錐台状部13との間に位置する頭部15は、円錐台状部13の大径端部と同程度に大径の扁平円柱状に形成されている。
【0024】
そして、上記円錐台状部13の外面側の母線が入力軸1の軸方向と平行に設置されるとともに、上記被駆動部14が駆動リング2の外周部に当接するように上記円錐状ローラ3が設置された状態で、キャリア4に設けられたブッシュ等からなる一対のローラ支持部17に上記両支持軸16がそれぞれ挿入されることより、上記円錐状ローラ3が回転自在に支持されるとともに、その軸方向に移動可能な状態で支持されている。
【0025】
上記キャリア4は、円錐状ローラ3の被駆動部14側に配設された前面板18と、円錐状ローラ3の大径端部側に配設された後面板19と、上記前面板18と後面板19とを連結する連結部20とを有し、入力軸1上に設けられた軸受部21によって上記連結部20が回転自在に支持されることにより、上記前面板18と後面板19とが連結部20を介して一体に連結された状態で、上記入力軸1まわりに回転自在に支持されている。
【0026】
上記変速リング5は、変速手段7を介してケーシング10に回り止め状態に支持されたリング体からなり、その内周面が上記各円錐状ローラ3の円錐台状部13にそれぞれ当接するように内径が設置されている。そして、上記変速手段7により変速リング5が駆動されて入力軸1の軸方向にスライド変位するのに応じ、円錐状ローラ3の円錐台状部13に対する上記変速リング5の当接位置が変化するようになっている。
【0027】
上記変速手段7は、変速リング5の外周部を抱持する抱持部22と、変速リング5をスライド自在に支持する支持バー23を備えた支持部材24と、上記抱持部22に形成された係合孔に係合される係合ピン25を有する旋回レバー26と、この旋回レバー26を旋回駆動する駆動レバー27を備えた操作部とからなり、この操作部により旋回レバー26を旋回駆動することにより、上記抱持部22により保持された変速リング5を入力軸1の軸方向にスライド変位させるように構成されている。また、上記支持部材24の基端部と、ケーシング10に固着された固定部材10aとの間には、第2付勢手段28が配設されている。
【0028】
この第2付勢手段28は、支持部材24の基端部と固定部材10aとの対向面に形成されたV溝状のカムとその間に配置されたボール等からなり、上記支持部材24と固定部材10aとの間に作用するトルクに応じ、支持部材24を固定部材10aから離間させる方向のスラスト力を生じさせるようになっており、このスラスト力が推力リング29を介して円錐状ローラ3に及ぶようになっている。
【0029】
上記軌道リング6は、円錐状ローラ3の各頭部15に内周面がそれぞれ当接するように内径が設置されたリング体31と、このリング体31と一体に連設された支持部材32とを有し、支持部材32の基端部は、出力軸9の基端部9aに、第3付勢手段33を介して連結されている。この第3付勢手段33は、支持部材32の基端部と出力軸9の基端部9aとの対向面に形成されたV溝状のカムとその間に配置されたボール等からなり、上記支持部材32と出力軸9との間に作用するトルクに応じ、支持部材32を出力軸9の基端部9aから離間させる方向(円錐状ローラ3の頭部15に支持部材32のリング体31を押しつける方向)のスラスト力を生じさせるようになっている。
【0030】
上記構成において、入力軸1により駆動リング2が回転駆動されると、この駆動リング2の外周部が上記円錐状ローラ3の被駆動部14に当接しているために、この当接部に作用する摩擦力に応じて円錐状ローラ3が自転しようとする。この円錐状ローラ3の円錐台状13には、ケーシング10に対して回り止めされた変速リング5が当接しているため、この当接部に作用する摩擦力に対応して上記駆動リング2から円錐状ローラ3に入力される駆動トルクに応じ、円錐状ローラ3が変速リング5および軌道リング6の内周面に沿って自転しつつ公転する。
【0031】
そして、上記円錐状ローラ3の駆動トルクが摩擦力を介して軌道リング6に伝達されることにより、この軌道リング6が回転駆動されるとともに、その駆動トルクが上記第3付勢手段33を介して出力軸9に伝達され、この出力軸9が回転駆動される。上記円錐状ローラ3の周速は、変速手段7により変速リング5を円錐台状部13の外面側の母線に沿って移動させるのに応じて変化し、これに対応して上記頭部15に当接した軌道リング6の回転速度が変化し、つまり出力軸9の回転速度が変化する。
【0032】
ところで、当実施形態の構造では、円錐台状部13の大径端部に近い所定位置に変速リング5が当接するときに出力軸9の速度が0となり、この所定位置より小径端部側の所定領域では、出力軸9の回転方向が一定で、かつ速度比(出力軸回転速度の入力軸回転速度に対する比)が変速リング5の移動に伴って変化するとともに、速度比に略反比例して駆動トルクの伝達比が変化する関係が保たれ、速度比0の付近で大きな出力トルクが得られる。
【0033】
このような構成を、図3を参照しつつ具体的に説明する。
【0034】
図3は当実施形態における円錐状ローラ3を模式的に示すとともに、これに対する入力側、出力側及び固定側のリング当接点を、それぞれに符号P,S,Fを付した三角印で示しており、Pは入力側リング当接点(被駆動部14に駆動リング2が当接する個所)、Sは出力側リング当接点(頭部15に軌道リング6が当接する個所)、Fは固定側リング当接点(円錐台状部13に変速リング5が当接する個所)である。当実施形態では変速操作に応じて固定側リング当接点Fが円錐台状部13の外面側の母線Mに沿って移動する。
【0035】
この図において、Aは円錐状ローラの公転軸線(入力軸1の中心線)、Bは
円錐状ローラ3の自転軸線(円錐状ローラ3の中心線)である。また、Cは円錐状ローラ3の頭部15におけるリング当接点(当実施形態では出力側リング当接点S)と公転,自転軸線A,Bの交点とを結ぶ直線である。
【0036】
この直線Cが上記母線Mと交差する点に固定側リング当接点Fが位置するときに速度比が0、つまり出力軸回転速度が0となる。すなわち、直線C上に出力側リング当接点Sと固定側リング当接点Fとがともに位置する状態での円錐状ローラ3の自転及び公転の動作は、線Bを中心、線Cを母線とする円錐体が線Aを中心とするリングに当接しつつ自転及び公転する場合と等価であるため、線A上の一点を当接点とするリング(固定側のリング)が停止していれば線A上の別の点を当接点とするリング(出力側のリング)も停止することとなる。なお、以下の説明では便宜的に上記直線Cをゼロ回転線と呼び、ゼロ回転線Cが円錐台状部13の母線Mと交差する点C0をゼロ回転位置と呼ぶ。
【0037】
また、Dは円錐状ローラ3の頭部15におけるリング当接点(当実施形態では出力側リング当接点S)を通り自転軸線Bと平行な直線であり、便宜的にこの直線Dをトルク支点線と呼び、このトルク支点線Dと上記母線Mもしくはその延長線との交点D0をトルク支点と呼ぶ
当実施形態では円錐状ローラ3の頭部15が円錐台状部13の大径端部と同程度に大きく形成されていることにより、円錐台状部13の大径端部に近い所定位置がゼロ回転位置C0となり、円錐台状部13の母線Mに沿った変速リング可動範囲のうちでゼロ回転位置C0より小径端部側にある所定領域αがゼロ回転位置C0より大径端部側の領域βと比べて充分に大きくなるとともに、トルク支点D0が上記所定領域αには存在せず、ゼロ回転位置C0より大径端部側(大径端部よりさらに外側でもよい)に存在するようになっている。
【0038】
このように構成された摩擦式変速装置は、車両または産業用機械等に組み込んで使用する場合、上記ゼロ回転位置C0より小径端部側の、変速リング可動範囲の大部分を占める所定領域αが通常使用領域となり、変速リング5がこの領域αに位置するときの出力軸9の回転方向が車両や産業用機械等にとって正転方向、となるように組み込まれる。なお、変速リング5が領域βまで移動したときは出力軸9の回転方向は逆転する。
【0039】
通常使用領域である上記所定領域α内で変速リング5が変速操作に応じて移動すると、それに伴い入力に対する出力の速度比が比較的大きく変化し、変速リング5が円錐台状部13の小径端部に近づくにつれて出力軸9が高速となり、変速リング5がゼロ回転位置C0に近づくにつれて出力軸9が低速となる。また、トルク伝達比は上記速度比が小さくなるにつれて反比例的に大きくなり、このような関係が速度比0付近まで保たれる。この作用を、図4を参照しつつ説明する。
【0040】
図4は、円錐状ローラ3を軸方向一端側から見た模式図上に、円錐状ローラ3に対して入力軸側リング、出力側リング及び固定側リング(変速リング5)からそれぞれ作用する接線力PV,SV,FVを矢印で表したものであり、矢印先端の横軸上の位置は、円錐状ローラ3の中心から接線力が作用する点までの径方向の距離に対応している。
【0041】
上記各接線力PV,SV,FVの関係については前述のように梃子の原理が応用され、変速リング5が上記所定領域α内にあるときは図4中に実線で示すように接線力PV,SV,FVの平衡が保たれ、かつ、変速リング5がゼロ回転位置に近づくにつれて接線力PVに対して接線力SV,FVが大きくなる。また、変速リング5がトルク支点D0まで達すると、変速リング5からの接線力FVと出力側からの接線力SVとが、円錐状ローラ3の中心から等距離の位置に作用することとなるため、力の平衡が保たれなくなるが、トルク支点D0は上記所定領域α内に存在しないため、変速リング5が上記所定領域α内ある場合にはこのような事態が生じない。
【0042】
従って、図5に示すように、本発明例では速度比0付近まで速度比が小さくなるにつれてトルク伝達比が増大する傾向が保たれ、極低速域でも良好なトルク性能が確保される。一方、前述の図11に示すような従来例では、トルク比が0に近い低速域でトルク伝達比が落ち込む傾向が生じる。
【0043】
なお、上記第1実施形態では、図1に示すように、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部と、出力軸9に伝達された駆動力を外部の比駆動部に出力する出力部とを同方向に設けているが、図6に示す第2実施形態のように、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部1aをケーシング10の一端側に配置するとともに、出力軸9に伝達された駆動力を外部の比駆動部に出力する出力部9bをケーシング10の他端側に配置した構造としてもよい。
【0044】
また、上記第1,第2実施形態では、変速リング5をケーシング10に対して回り止めするとともに、軌道リング6を出力軸9に連結しているが、図7に示す第3実施形態のように、軌道リング6をケーシング10に対して回り止めするとともに、変速リング5を出力軸9に連結してもよい。この場合も、円錐状ローラ3の頭部15を円錐台状部13の大径端部と同程度に大径としておくことにより、第1,第2実施形態と略同様の作用が得られる。ただし、変速リング5を移動させることに応じた変速の有効範囲は、第1,第2実施形態の方が大きくなる。
【0045】
図8は第4実施形態を示している。この実施形態では、円錐状ローラ3Aが、被駆動部を兼ねる頭部15Aと、これに小径端部が連なる円錐台状部13Aと、両側端面に連設された一対の支持軸16Aとを同軸上に連設した構造であって、上記頭部15Aは、上記円錐台状部13Aの小径端部より少し大きくて大径端部よりは充分に小さい径の円柱上に形成されている。そして、この円錐状ローラ3Aは、その円錐台状部13Aの内面側の母線が入力軸1と平行になるように配置された状態で、キャリア4Aに回転自在に保持されている。
【0046】
駆動リング2Aは、円錐状ローラ3Aの各頭部15Aに内周面がそれぞれ当接するように内径が設定されたリング体35と、このリング体35と一体に連設された支持部材36とを有し、支持部材36が第1の付勢手段12Aを介して入力ボスに連結されている。
【0047】
また、上記軌道リング6Aは、円錐状ローラ3Aの各頭部15Aに外周面がそれぞれ当接するように設置されたリング体37と、このリング体37と一体に連設されて入力軸1の周囲に回転自在に配置された筒状の支持部材38とを有し、支持部材38の端部は、出力軸9の基端部に、第3付勢手段33Aを介して連結されている。
【0048】
変速リング5Aは、変速手段6Aを介してケーシング10に回り止め状態に支持されたリング体からなり、その外周面が上記各円錐ローラ3Aの円錐台状部13Aの内面側に当接している。また、変速手段7Aは、変速リング5Aにロッド39を介して連結された変速リング連結部22Aと、変速リング5Aをスライド自在に支持するとともにケーシング10に対して回り止めされる支持バー23Aを備えた支持部材24Aと、上記変速リング連結部22Aに形成された係合孔に係合される係合ピンを有する旋回レバー26Aと、この旋回レバー26Aを旋回駆動する駆動レバー27Aを備えた操作部7Aとからなり、この操作部7Aの旋回レバー26Aを旋回駆動することにより変速リング5Aを入力軸1の軸方向にスライド変位させるように構成されている。上記支持部材24Aの基端部と、ケーシング10に固着された部材との間には、第2付勢手段28Aが配設されている。
【0049】
図9は上記第4実施形態における円錐状ローラ3Aとこれに対する入力側、出力側及び固定側のリング当接点P,S,Fを模式的に示している。
【0050】
この図において、円錐状ローラ3Aの頭部15Aの外面側に入力側リング当接点Pが、同内面側に出力側リング当接点Sが、また円錐台状部13Aの内面側に固定側リング当接点Fがそれぞれ存在する。そして、上記出力側リング当接点Sと公転,自転軸線A,Bの交点とを結ぶ直線がゼロ回転線Cに相当し、このゼロ回転線Cが円錐台状部13Aの内面側の母線Mと交差する点をゼロ回転位置C0に相当する。また、出力側リング当接点Sを通り自転軸線Bと平行な直線がトルク支点線Dに相当し、このトルク支点線Dと上記母線Mとの交点がトルク支点D0に相当する。
【0051】
当実施形態では、円錐台状部13Aの小径端部に近い所定位置がゼロ回転位置C0となり、円錐台状部13Aの母線Mに沿った変速リング可動範囲のうちでゼロ回転位置C0より大径端部側にある所定領域αがゼロ回転位置C0より小径端部側の領域βと比べて充分に大きくなるとともに、トルク支点D0が上記所定領域αには存在せず、ゼロ回転位置C0より小径端部側に存在するようになっている。
【0052】
このように構成された摩擦式変速装置は、車両または産業用機械等に組み込んで使用する場合、上記ゼロ回転位置より大径端部側の、変速リング可動範囲の大部分を占める所定領域αが通常使用領域となり、この領域αに位置するときの出力軸の回転方向が車両や産業用機械等にとって正転方向となるように組み込まれる。
【0053】
これにより、前記各実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0054】
なお、上記第4実施形態では、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部と、出力軸9に伝達された駆動力を外部の比駆動部に出力する出力部とを同方向に設けているが、図10に示す第5実施形態のように、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部1aをケーシング10の一端側に配置するとともに、出力軸9に伝達された駆動力を外部の比駆動部に出力する出力部9bをケーシング10の他端側に配置した構造としてもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、入力軸の周囲に遊星回転運動可能に配置された円錐状ローラの被駆動部、頭部及び円錐台状部に駆動リング、軌道リング及び変速リングを当接させ、この変速リングと上記軌道リングとのうちの一方を回り止めし、他方に出力軸を連結するように構成するとともに、上記変速リングが上記円錐台状部の一端部に近い所定位置に当接するときに入力に対する出力の速度比が0となり、上記円錐台状部の上記所定位置から他端部付近までの所定領域で変速リングが移動するに伴い上記速度比が変化するように構成するとともに、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、円錐台状部の上記所定領域から外れた位置となるように設定しているため、上記所定領域内おける変速リングの移動により上記速度比が0から比較的大きな値にまでわたって無段階に変化させることができ、しかも、この速度比の変化に略反比例してトルク伝達比が変化し、この速度比とトルク伝達比の関係を、速度比が0付近にあるときにも確保することができる。従って、広い変速範囲を確保しつつ、速度比が0に近い極低速域でのトルク性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る摩擦式変速装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】上記変速装置の要部の構成を示す断面図である。
【図3】第1実施形態の変速装置における円錐状ローラ等を模式的に表した説明図である。
【図4】円錐状ローラに作用する接線力を示す説明図である。
【図5】変速比と駆動トルクの伝達比との対応関係を示すグラフである。
【図6】摩擦式変速装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図7】摩擦式変速装置の第3実施形態を示す断面図である。
【図8】摩擦式変速装置の第4実施形態を示す断面図である。
【図9】第4実施形態の変速装置における円錐状ローラ等を模式的に表した説明図である。
【図10】摩擦式変速装置の第4実施形態を示す断面図である。
【図11】摩擦式変速装置に従来例を示す断面図である。
【図12】上記従来例における要部を模式的に表した説明図である。
【図13】上記従来例の図12に示す部分の一部を拡大して示す説明図である。
【図14】上記従来例による場合の円錐形転子に作用する接線力を示す説明図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 駆動リング
3 円錐状ローラ
4 キャリア
5 変速リング
6 軌道リング
7 変速手段
9 出力軸
10 ケーシング
13 円錐台状部
14 被駆動部
15 頭部
Claims (4)
- ケーシングに回転自在に支持された入力軸と、上記入力軸により回転駆動される駆動リングと、入力軸に対して回転自在とされたキャリアに保持されて、入力軸の周囲に遊星回転運動可能に配置された円錐状ローラと、入力軸と同軸上に配設された変速リングと、この変速リングを上記入力軸の軸方向にスライド変位させる変速手段と、入力軸と同軸上に配設された軌道リングとを備え、上記円錐状ローラに、上記駆動リングが当接する被駆動部と、上記軌道リングが当接する頭部と、この頭部に小径端部が連なる円錐台状部とを設け、この円錐台状部の外面側または内面側の母線を入力軸と平行に設置して、この部分に上記変速リングを当接させ、この変速リングと上記軌道リングとのうちの一方を回り止めし、他方に出力軸を連結した摩擦式変速装置であって、上記変速リングが上記円錐台状部の一端部に近い所定位置に当接するときに入力に対する出力の速度比が0となり、上記円錐台状部の上記所定位置から他端部付近までの所定領域で変速リングが移動するに伴い上記速度比が変化するように構成するとともに、円錐状ローラの頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、円錐台状部の上記所定領域から外れた位置となるように設定したことを特徴とする摩擦式変速装置。
- 請求項1記載の摩擦式変速装置において、上記円錐台状部の外面側の母線が入力軸と平行となるように円錐状ローラを設置し、この円錐状ローラの被駆動部が駆動リングの外周面に当接し、頭部が軌道リングの内周面に当接し、円錐台状部の外面側に変速リングが当接するように構成するとともに、上記頭部の径を上記円錐台状部の大径端部と同程度に大きくすることにより、円錐台状部の大径端部に近い所定位置に変速リングが当接するときに上記速度比が0となり、かつ、上記頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定位置よりも大径端部側となるように設定したことを特徴とする摩擦式変速装置。
- 請求項1記載の摩擦式変速装置において、上記円錐台状部の内面側の母線が入力軸と平行となるように円錐状ローラを設置し、この円錐状ローラの被駆動部が駆動リングの内周面に当接し、頭部が軌道リングの外周面に当接し、円錐台状部の内面側に変速リングが当接するように構成するとともに、上記頭部の径を上記円錐台状部の小径端部より少し大きくて大径端部よりは充分に小さくすることにより、円錐台状部の小径端部に近い所定位置に変速リングが当接するときに上記速度比が0となり、かつ、上記頭部に軌道リングが当接する点を通り円錐状ローラの中心線に平行な直線と上記母線もしくはその延長線との交点が、上記所定位置よりも小径端部側となるように設定したことを特徴とする摩擦式変速装置。
- 請求項1〜3の何れかに記載の摩擦式変速装置において、上記変速リングを回り止めし、上記軌道リングに出力軸を連結したことを特徴とする摩擦式変速装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002198405A JP2004036853A (ja) | 2002-07-08 | 2002-07-08 | 摩擦式変速装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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ID=31705861
Family Applications (1)
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JP2002198405A Pending JP2004036853A (ja) | 2002-07-08 | 2002-07-08 | 摩擦式変速装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2014021360A1 (ja) * | 2012-08-01 | 2014-02-06 | 株式会社ミクニ | 無段変速装置 |
-
2002
- 2002-07-08 JP JP2002198405A patent/JP2004036853A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2014021360A1 (ja) * | 2012-08-01 | 2014-02-06 | 株式会社ミクニ | 無段変速装置 |
US9353835B2 (en) | 2012-08-01 | 2016-05-31 | Mikuni Corporation | Continuously variable transmission device |
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