JP4122730B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車等の変速機構として用いられるトロイダル型無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の変速機構として用いられるトロイダル型無段変速機は、互いに対向して同軸的に配置された入力ディスクおよび出力ディスクを備え、これら入力ディスクと出力ディスクとの間に、揺動可能なトラニオンを介して支持されたパワーローラが複数設けられている。
【0003】
各パワーローラはトラニオンに回転自在に取り付けられ、これらパワーローラの周面のトラクション面が入力ディスクおよび出力ディスクのトラクション面にそれぞれ接触し、これらパワーローラが入力ディスクの回転に応じて回転してその動力を出力ディスクに伝達するようになっている。
【0004】
そして、各パワーローラがトラニオンと一体的にその軸方向に変位し、この変位に応じて各パワーローラがトラニオンと一体的に揺動し、この揺動で各パワーローラのトラクション面と入力ディスクおよび出力ディスクのトラクション面との接触位置が変化し、この変化により入力ディスクと出力ディスクとの間の回転速度比が無段階に変化して所定の変速比が得られるものである。
【0005】
図5にはトラニオン1およびパワーローラ2を示してあり、トラニオン1は主部3の両端部に一体に軸部4を有するほぼコ字状をなし、その主部3の内側面に偏位軸5を介してパワーローラ2が回転自在に取り付けられている。
【0006】
トラニオン1の両軸部4は同軸的に配置し、その一方の軸部4に枢軸6が取り付けられ、この枢軸6と一体にトラニオン1およびパワーローラ2がその軸方向に変位し、この変位に応じてトラニオン1およびパワーローラ2がその軸回り方向に揺動するようになっている。
【0007】
そしてトラニオン1の各軸部4には、例えば特開2000−161456号に示されているようにニードル軸受10が設けられ、これらニードル軸受10を介してトラニオン1の各軸部4が変速機に設けられたヨーク(図示せず)に回転自在に取り付けられている。これらニードル軸受10は、軸部4の外周に嵌合された外輪11と、この外輪11の内周面と軸部4の外周面との間に装填された転動体としての複数のニードル(ころ)12とで構成され、軸部4の端部外周に嵌合されたワッシャ13および止め輪18によりその抜け止めが図られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、トラニオン1にはパワーローラ2から5ton程度の相当大きな荷重を受けるため、図6に示すようにトラニオン1の軸部4の外周面と主部3の外側端面とがほぼ直角に交わる繋ぎ部Aを円弧面とすることが必須となっている。これは、パワーローラ2からトラニオン1にスラスト荷重が入ると、主部3の両端の軸部4をニードル軸受10で支持されたトラニオン1は両端支持梁のように曲げられ、その結果、主部3と軸部4の繋ぎ部Aでは応力集中により大きな応力が発生する。この応力集中を緩和するために繋ぎ部Aを円弧面とし、さらにその円弧半径を大きくする必要がある。
【0009】
そしてこの円弧面の繋ぎ部Aにニードル軸受10のニードル12が乗り上げないためには、主部3の外側端面とニードル12の端面との間にその円弧の半径以上のX寸法の間隔を確保する必要がある。
【0010】
トラニオン1の繋ぎ部Aに発生する応力を下げるためには、繋ぎ部Aの円弧の半径Rを大きくすればよい。この場合、トラニオン1の主部3の外側端面とニードル12の端面との間の間隔を充分に大きくしなければならない。
【0011】
特開2000−161456号においては、図6に示すように、ニードル軸受10の外輪11の両端部に、ニードル12を保持するための鍔11aが設けられ、また特開2000−320635号においては、外輪11の一方側の端部つまりトラニオン1の主部3の外側端面と対向する側の端部に鍔が設けられている。
【0012】
これらの場合、鍔にニードルの端面とのかかり代が必要なため、そのかかり代の寸法で繋ぎ部Aの円弧の半径Rの大きさが制限されてしまう。すなわち、繋ぎ部Aの円弧の半径Rは図に示すY寸法より大きくすることができない。
【0013】
これにより、トラニオン1の許容曲げ応力が制限され、結果としてトロイダル型無段変速機の許容伝達能力を大きくすることができない。換言すれば、トロイダル型無段変速機の構成をコンパクトにすることができないという問題がある。
【0014】
本発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、トラニオンの軸部の外周面と主部の外側端面との繋ぎ部の円弧の半径を大きくしてトラニオンに発生する曲げ応力を低減し、許容伝達能力を高めることができるトロイダル型無段変速機を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、互いに対向して同軸的に配置された入出力ディスク間にトラニオンが揺動可能に設けられ、このトラニオンは主部の両端部に軸部を有し、その主部の内側部に前記入出力ディスクに接触するパワーローラが回転自在に設けられ、主部の両端部の軸部にはそれぞれニードル軸受が設けられ、これらニードル軸受は前記軸部の外周に嵌合された外輪と、この外輪の内周面と前記軸部の外周面との間に転動自在に配置する複数のニードルとからなり、これらニードル軸受を介してトラニオンがヨークに揺動自在に支持されているトロイダル型無段変速機において、前記ニードル軸受の外輪は、トラニオンの主部の外側端面と対向する側の端部の反対側の端部にのみ前記ニードルを保持する鍔を一体的に有し、このニードル軸受とトラニオンの主部の外側端面との間にワッシャを挿入し、このワッシャの内周部に、トラニオンの軸部の外周面と主部の外側端面とが交わる繋ぎ部の円弧面と離間して対向してその円弧面との接触を避ける面取り加工を施すと共に、トラニオンの軸部にスライド自在に接触してその軸部の軸方向に一定の長さで延びる案内部を形成するようにしたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1ないし図4を参照して説明する。なお、従来の構成と対応する部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0017】
図1には本発明の一実施形態を示してあり、トラニオン1の端部の軸部4の外周にニードル軸受10が装着されている。そしてニードル軸受10の外輪11には、その軸方向でかつトラニオン1の主部3の外側端面と対向する側の端部の反対側となる端部の内周部にのみニードル12を保持するための鍔11aが一体に形成され、他端側の端部の内周部は鍔のないフラットな形状となっている。
【0018】
そしてトラニオン1の主部3の外側端面とニードル軸受10の端面との間にリング状でかつ熱処理等により十分な硬さをもたせたワッシャ15が挿入されている。このワッシャ15はトラニオン1の軸部4の外周に嵌合されている。
【0019】
このワッシャ15の内周部には、図2に示すようにトラニオン1の軸部4の外周面と主部3の外側端面とが交わる繋ぎ部Aの円弧面と対向する部分にその円弧面との接触を避ける面取り加工16が施されている。そして、このワッシャ15の内周部の他の一部がトラニオン1の軸部4の外周面にスライド自在に接触してその軸部の軸方向に一定の長さで延びる案内部17となっている。
【0020】
このような構成においては、トラニオン1の主部3の外側端面に対向する側の外輪11の端部が開放されているから、外輪11とニードル12とのかかり代との関係がなくなり、ワッシャ15の面取り加工16の大きさを調整するだけでトラニオン1の軸部4の外周面と主部3の外側端面との繋ぎ部Aの円弧の半径Rを大きくすることができる。例えば半径Rを1〜3mm程度とすることができる。このためトラニオン1に発生する曲げ応力を低減でき、結果としてトロイダル型無段変速機の許容伝達能力を高めることができ、伝達能力を同じとするときにはトロイダル型無段変速機の構成をコンパクトにすることができる。
【0021】
ニードル軸受10のニードル12は、ワッシャ15によりトラニオン1の円弧状の繋ぎ部Aへの乗り上げが抑えられ、またニードル12がスキューしてトラニオン1の主部3の外側端面を押して摩耗させるような不都合をワッシャ15により防止することができる。また、ワッシャ15も十分な硬さを有しているのでこれ自身の摩耗も防ぐことができる。
【0022】
ワッシャ15は内周部に軸部4に対してスライド自在な案内部17を有しているから、軸部4の軸方向にスムースに移動することができ、このため軸部4をこじったり、ニードル軸受10の軸方向すきまを拘束して回転フリクションを増大させるようなことがない。
【0023】
また、ワッシャ15の厚みを調整することにより、ニードル軸受10の軸方向すきまを調整することも可能で、これにより回転フリクションの増加を抑えることができる。
【0024】
一方、ニードル軸受10をトラニオン1の軸部4に組み付けるときには、図3に示すように、まずトラニオン1の軸部4にパイプ状のガイド治具Bを取り付け、このガイド治具Bに沿ってニードル軸受10をスライドさせて軸部4に挿入することにより、容易にかつ能率よく組み付けることができる。
【0025】
ニードル軸受10の外輪11は、図4に示すようにその内径転動部を砥石Cを用いる研削加工により仕上げるが、その外輪11が一端側の片側のみに鍔11aを有するだけでから、その研削加工を容易に行なえ、コストが低減する。
【0026】
すなわち、鍔11aが外輪11の一端側の内周部にのみは位置するだけであるから、砥石Cの移動が楽になる。そして外径の大きな砥石Cを用いることが可能で、砥石Cの交換スパンが長くなり、砥石Cの交換時間を考慮すると研削時間が短くなり、効率が上がる。研削時の砥石Cの位置管理が外輪11の片側だけで済むのでオシレーションが容易になる。オシレーションをかけると研削面の粗さを良くすることができ超仕上げ等の研削工程を減らすことができる。以上のことから、外輪11の内径転動部を能率よく仕上げることができる。
【0027】
ところで、両端に共に鍔をもたない外輪の場合に本発明のようなワッシャを用いることも考えられるが、両端に共に鍔をもたない外輪の場合には特開2000−161456号に開示されているようにその組み立て性が非常に悪くなるから、本発明では片側に鍔を有する外輪の場合を対象としている。
【0028】
また、前記実施形態においては、ニードルがスキューしてトラニオンの主部の外側端面を押して摩耗させるような不都合を防止するためにワッシャを設けているが、ワッシャとトラニオン主部端面の接合部においては微小振動に起因してフレッチングが発生する恐れがあるので、トラニオン主部端面に高周波焼入れ等による硬化処理を施すとその影響が小さく抑えられなお良い。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トラニオンの主部の外側端面とニードル軸受との間に挿入したワッシャの面取り加工の大きさを調整するだけでトラニオンの軸部の外周面と主部の外側端面との繋ぎ部の円弧の半径を大きくすることができ、このためトラニオンに発生する曲げ応力を低減し、トロイダル型無段変速機の許容伝達能力を高めることができ、伝達能力を同じとするときにはトロイダル型無段変速機の構成をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るトロイダル型無段変速機のトラニオンの要部の構造を示す断面図。
【図2】そのトラニオンの要部をさらに拡大して示す断面図。
【図3】そのトラニオンの軸部にニードル軸受を組み付ける際の工程を示す断面図。
【図4】そのトラニオンにおけるニードル軸受の外輪を砥石を用いる研削加工により仕上げるときの状態を示す断面図。
【図5】従来のトロイダル型無段変速機のトラニオンを示す断面図。
【図6】図5中の(イ)部を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
1…トラニオン
2…パワーローラ
3…主部
4…軸部
10…ニードル軸受
11…外輪
11a…鍔
12…ニードル
A…繋ぎ部
Claims (1)
- 互いに対向して同軸的に配置された入出力ディスク間にトラニオンが揺動可能に設けられ、このトラニオンは主部の両端部に軸部を有し、その主部の内側部に前記入出力ディスクに接触するパワーローラが回転自在に設けられ、主部の両端部の軸部にはそれぞれニードル軸受が設けられ、これらニードル軸受は前記軸部の外周に嵌合された外輪と、この外輪の内周面と前記軸部の外周面との間に転動自在に配置する複数のニードルとからなり、これらニードル軸受を介してトラニオンがヨークに揺動自在に支持されているトロイダル型無段変速機において、
前記ニードル軸受の外輪は、トラニオンの主部の外側端面と対向する側の端部の反対側の端部にのみ前記ニードルを保持する鍔を一体的に有し、このニードル軸受とトラニオンの主部の外側端面との間にワッシャが挿入され、このワッシャの内周部に、トラニオンの軸部の外周面と主部の外側端面とが交わる繋ぎ部の円弧面と離間して対向してその円弧面との接触を避ける面取り加工が施されていると共に、トラニオンの軸部にスライド自在に接触してその軸部の軸方向に一定の長さで延びる案内部が形成されていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
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