JP2005298590A - 芳香族ポリアミドフィルムおよびプラスチック基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アウトガス量を抑えた高透明性芳香族ポリアミドフィルムを提供すること。
【解決手段】 波長450nm〜700nmの全ての光に対する光線透過率が80%以上、厚みが1μm〜200μmであり、130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルム100重量%に対して2重量%以下である芳香族ポリアミドフィルムとする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、フィルムのアウトガス量が少なく、ガラス代替プラスチック基板として好適に使用可能な芳香族ポリアミドフィルムおよびそれを用いたプラスチック基板に関する。
従来より液晶表示用透明導電体の基板としてはガラスが用いられてきたが、近年になり、軽量である、薄型化が可能である、大面積化が容易である、割れない、加工性が優れている、という性質を持つ透明導電性フィルムで代用する方法が提案されている。また、アモルファスシリコン太陽電池において、従来はガラス板の上に透明電極、アモルファスシリコン層、金属電極層を順次形成して太陽電池を構成していたが、太陽電池の大型化、施工性の向上を目的として、ガラス板の代わりにプラスチックフィルムを基板とした太陽電池が検討されている。これら基板用のフィルムとしては、透明性、剛性および耐熱性が高く、アウトガス量が少ないことが要求される。剛性、耐熱性の点からは芳香族ポリアミドフィルムが非常に優れていると考えられるが、芳香族ポリアミドフィルムは溶液製膜によりフィルム化するため、使用した溶媒の完全除去が困難であり、このことに起因してアウトガス量の制御が難しい。例えば透明導電性フィルムとして用いる場合、スパッタリング法によりITO(酸化インジウム(スズ))等をフィルム表面に薄膜化することになる。この際フィルムは真空状態に置かれることになるが、アウトガス量が多い場合はフィルム内部から発生する揮発成分により、スパッタリング時の系内の真空度が低下してスパッタリングの効率が悪くなったり、ITO粒子の正常な堆積を妨げて、ITO薄膜とフィルムの密着力低下や耐熱性不良となったりする問題がある。また液晶用基板として使用した場合、使用中に発生するアウトガスにより他の部材、例えば液晶素子等を劣化させる等の問題がある。
上記のような問題点に鑑み、芳香族ポリアミドフィルムのアウトガス量を抑える方法が、例えば特許文献1に記載されている。ところが、この特許文献1に記載される方法は、25〜175℃で発生するアウトガス量を制御しようとするものであり、芳香族ポリアミド溶液の溶媒として広く用いられる非プロトン性有機極性溶媒の沸点は一般に高温のため、この温度範囲以上の高温にすると、やはりアウトガスが発生することがある。例えば、フィルム表面にITO等を透明導電膜としてスパッタリングする際、300℃以上の高温で行うことが好ましいが、175℃以下で発生するアウトガス量を制御するだけでは不充分なことがある。また、特許文献1は薄膜で用いることを前提とした技術であり、膜厚の厚いフィルムを使用するプラスチック基板用途では必ずしも十分ではなかった。
特開2002−322297号公報(2頁、2〜6段落)
本発明は、上述した従来技術における問題点を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明の目的は、高温領域におけるアウトガス量を抑えた芳香族ポリアミドフィルムを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明は、波長450nm〜700nmの全ての光に対する光線透過率が80%以上、厚みが1〜1,000μmであり、130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して2重量%以下である芳香族ポリアミドフィルムを特徴とする。
本発明によれば、以下に説明するとおり、アウトガス量を抑えた高透明の芳香族ポリアミドフィルムを得ることができる。
以下、本発明の実施形態の例を説明する。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは波長450nm〜700nmの全ての光に対する光線透過率が80%以上である。光線透過率が80%未満であると、液晶ディスプレイ用基板などの光学部材として利用できない場合がある。透明性がより向上することから光線透過率はより好ましくは85%以上である。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの厚みは、1μm以上1,000μm以下であり、より好ましくは20μm以上500μm以下であり、特に好ましくは20μm以上200μm以下である。厚みが1,000μmを超える場合はフィルムの透明性が低下する場合がある。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して2重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下である。ここでいうアウトガス量とは、フィルムを加熱していった時に発生するガス分の総量を指す。ガスの種類としては、フィルム中に残存している溶媒、水分等が挙げられるが、何れにしても総量として制御する必要がある。アウトガス量が2重量%を超えると、スパッタリング法等によりフィルムにITO等の薄膜を形成する際に、フィルム内部から発生する揮発成分により、スパッタリング時の系内の減圧度が低下しスパッタリングの効率が悪くなったり、ITO粒子の正常な堆積を妨げ、膜とフィルムの密着力低下や耐熱性不良となったりすることがある。また液晶用基板として使用した場合、使用中に発生するアウトガスにより他の部材、例えば液晶素子等を劣化させる場合がある。このアウトガス量はTGA(熱重量測定)を用いて、130℃〜330℃におけるフィルムの重量減少を測定することで決定される。使用した揮発物が不明なためにアウトガスの種類が分からない場合でも、TGA等の定量分析と、NMR、IR、GC−MS等の定性分析を用いることで、アウトガスを同定してフィルム中に含まれる揮発物の種類の確認が可能である。
本発明における芳香族ポリアミドフィルムは、アウトガスとして非プロトン性有機極性化合物をポリマーに対して0.1〜2重量%含むときに好ましい場合がある。非プロトン性有機極性化合物は芳香族ポリアミドとの親和性に優れることから、フィルムに柔軟性を付与するための可塑剤として働く場合がある。従って、非常に脆く破れやすいフィルムの場合、非プロトン性有機極性化合物が可塑剤として働いて、フィルムに柔軟性が生じ、作業性が高まる場合がある。ここで、非プロトン性有機極性化合物は芳香族ポリアミドの良溶媒であり、また非プロトン性有機極性化合物は酸ジクロライドとジアミンによる重合反応の反応溶媒に用いることができる。この非プロトン性有機極性化合物を芳香族ポリアミドの重合溶媒に用いることで重合溶液をそのまま製膜溶液に用いることが可能となる。重合時と製膜時の溶媒を同じものにできることから、作業の効率を上げることができるために、本発明における芳香族ポリアミドフィルムは溶媒として非プロトン性有機極性化合物を用いた芳香族ポリアミド溶液から製膜することが好ましい。非プロトン性有機極性化合物としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
また本発明における芳香族ポリアミドフィルムは、以下に示す構造単位を持つ芳香族ポリアミドフィルムを用いると、高いヤング率や表面硬度、ガラス転移温度などの優れた物性と、高い透明性を両立できるため好ましい。即ち、化学式(I)、(II)、(III)または(IV)で示される構造単位を含み(これらの全ての構造単位を含むこともあり、またその一部のみを含むこともある)、かつ、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、oとしたとき、次式(1)〜(3)を満足していることが好ましい。
50<l+m+n≦100 ・・・ (1)
0≦l、m、n、o≦100・・・ (2)
0≦o≦50 ・・・ (3)
Figure 2005298590
1:少なくとも一つの5員環、6員環または7員環を有する基
2:任意の芳香族基
X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
Figure 2005298590
3:−CF3、−CCl3、−CBr3、−OH、−F、−Cl、−OCH3(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
4:任意の芳香族基
Figure 2005298590
5:−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基、または−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基を1つ以上含む芳香族基。
6:任意の芳香族基
X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
Figure 2005298590
7:任意の芳香族基
8:任意の芳香族基
X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、nとした時、l+m+nが50を超えることが好ましい様態である。さらに好ましくはl+m+nは80以上であり、最も好ましくはl+m+nは100である。l+m+nが50以下の場合には、着色に寄与する構造単位の寄与が大きくなり無色透明フィルムは得られない(光線透過率に劣る)ことがある。芳香族ポリアミドの着色は分子内および分子間の電荷移動錯体によると考えられているが、化学式(I)、(II)および(III)はいずれも芳香族ポリアミド分子内および分子間の電荷移動錯体の形成を阻害し、芳香族ポリアミドフィルムを無色透明化する(光線透過率を向上させる)と考えられる。
化学式(I)においてR1は少なくとも一つの5員環、6員環または7員環を有する基などが好適に用いられるが、化学式(V)で示される環状基であることがさらに好ましい。
Figure 2005298590
化学式(II)においてR3は、−CF3、−CCl3、−CBr3、−OH、−F、−Cl、−OCH3(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)などが好適に用いられる。最も好ましくは−CF3である。
化学式(III)においてR5は、−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基、または−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基を1つ以上含む芳香族基などが好適に用いられるが、最も好ましくは−SO2−である。
また、本発明における芳香族ポリアミドフィルムは、以下に示す構造単位を持つ芳香族ポリアミドフィルムを用いると、高いガラス転移温度と、高い透明性、を満たすことができるため特に好ましい。即ち、化学式(I)、(II)、(III)、(IV)または(VI)で示される構造単位を含み(これらの全ての構造単位を含むこともあり、またその一部のみを含むこともある)、かつ、化学式(I)、(II)、(III)、(IV)および(VI)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、o、pとしたとき、次式(4)、(5)を満足していることが好ましい。
50≦p≦100 ・・・(4)
0≦l、m、n、o≦50・・・(5)
Figure 2005298590
1:少なくとも一つの5員環、6員環または7員環を有する基
2:任意の芳香族基
X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
Figure 2005298590
3:−CF3、−CCl3、−CBr3、−OH、−F、−Cl、−OCH3(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
4:任意の芳香族基
Figure 2005298590
5:−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基、または−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基を1つ以上含む芳香族基。
6:任意の芳香族基
X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
Figure 2005298590
7:任意の芳香族基
8:任意の芳香族基
X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
Figure 2005298590
9:任意の芳香族基
X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
化学式(I)、(II)、(III)、(IV)および(VI)はそれぞれ存在しても、または存在しなくても構わないが、化学式(I)、(II)、(III)、(IV)および(VI)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、o、pとした時、pが50以上であることが好ましい様態である。さらに好ましくはpは80以上であり、最も好ましくはpは100である。pが50より小さい場合には、ガラス転移温度が十分に高くならず、また立体的に大きな置換基の割合が減るためにポリマー構造が緻密になり、フィルム中の揮発物が密に詰まったポリマー間に立体的に束縛されて、そのためアウトガス量の少ない厚膜フィルムを得にくくなる。
化学式(II)においてR3は、−CF3、−CCl3、−CBr3、−OH、−F、−Cl、−OCH3(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)などが好適に用いられる。最も好ましくは−CF3である。
化学式(I)においてR1は少なくとも一つの5員環、6員環または7員環を有する基などが好適に用いられるが、化学式(V)で示される環状基であることがさらに好ましい。
Figure 2005298590
化学式(III)においてR5は、−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基、または−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基を1つ以上含む芳香族基などが好適に用いられるが、最も好ましくは−SO2−である。
また本発明のフィルムは、芳香族ポリアミドフィルムを含んだプラスチック基板として好ましく用いられる。特にITO等の透明導電膜付きプラスチック基板は、液晶ディスプレイ用基板、タッチパネル用基板、太陽電池用基板、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ用基板等の用途で使用できるために好ましい。より具体的には、液晶ディスプレイ用のプラスチック基板として使用する場合、基板に透明導電膜、ハードコート層、ガスバリアー層を付与して使用される。またタッチパネル用基板の場合、基板に透明導電膜、ハードコート層を付与したプラスチック基板として使用される。本発明のフィルムは耐熱性が高く、これらの加工を行いやすいために、プラスチック基板として好適に使用される。
芳香族ポリアミド溶液、すなわち製膜原液を得る方法は種々の方法が利用可能であり、例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができるが、ポリマー重合時の溶液をそのまま製膜溶液に用いる事が可能な点から、低温溶液重合法が好ましい。
カルボン酸ジクロライドとしてはテレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、ナフタレンジカルボニルクロライド、ビフェニルジカルボニルクロライド、ターフェニルジカルボニルクロライドなどが挙げられるが、最も好ましくはテレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライドが用いられる。
2種類以上のジアミンを用いて重合を行う場合、ジアミンは1種類づつ添加し、該ジアミンに対し10〜99モル%の酸ジクロライドを添加して反応させ、この後に他のジアミンを添加して、さらに酸ジクロライドを添加して反応させる段階的な反応方法、およびすべてのジアミンを混合して添加し、この後に酸ジクロライドを添加して反応させる方法などが利用可能である。
また、2種類以上の酸ジクロライドを利用する場合も同様に段階的な方法、同時に添加する方法などが利用できる。いずれの場合においても全ジアミンと全酸ジクロライドのモル比は95〜105:105〜95が好ましく、この値を外れた場合、得られるポリマーの分子量が低くなり、フィルムの伸度及び靭性が低下することがある。
130℃〜330℃におけるアウトガス量をフィルムに対して2重量%以下にするためには、芳香族ポリアミド溶液を得る際に単量体として酸ジクロライドとジアミンを使用して重合を行い、その際に副生する塩化水素の中和を、塩化水素100モル%に対して50モル%〜80モル%の塩化水素を無機試薬で中和し、残りの20モル%〜50モル%を有機アミンで中和することが好ましい。無機系の中和剤としては、周期律表I族かII族のカチオンと水酸化物イオン、炭酸イオン等のアニオンからなる塩に代表される試薬が使用される。また、有機系の中和剤としてはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の試薬が使用される。塩化水素を炭酸リチウム等の無機系の中和剤で中和すると、塩化リチウム等の不揮発性の塩が生成する。不揮発物が生成すると、その重量に比例して溶媒等の揮発物の沸点が上昇する。そのため無機系中和剤のみで中和することは好ましくない。また有機アミン等の有機系中和剤で中和すると有機アミンの塩酸塩が生成するが、これは熱により容易に解離して有機系中和剤と塩酸に戻る場合がある。よって有機系中和剤で中和したポリマー溶液を製膜機中の加温したエンドレスベルト上で乾燥させると、ベルト上のポリマー溶液中でアミンの塩酸塩が解離して、再び塩酸が発生する場合がある。酸性を示す塩酸が大量にベルトに付着するとベルトを腐食することになるため、有機系中和剤のみで中和することは好ましくない。そこで、ポリマー重合時に生成する塩化水素100モル%に対して、50モル%〜80モル%を無機系中和剤で中和し、残りの20モル%〜50モル%を有機系中和剤で中和する方法は、無機系中和剤のみで中和する場合や有機系中和剤のみで中和する場合と比べて、塩化リチウム等の不揮発物量を抑えることによる製膜時の溶媒乾燥温度の上昇と溶媒乾燥時間の増加を防ぐこと、また塩酸塩の量を抑えることになるので乾燥中にベルト上で発生する塩酸量を抑えられ、酸によるベルトの腐食を防ぐこと、の両方のバランスの点から好ましい。
また上述の方法以外に、130℃〜330℃におけるアウトガス量をフィルム100重量%に対して2重量%以下にする方法として、重合溶液を再沈殿・再溶解する方法がある。無機系中和剤、例えば炭酸リチウムを用いて中和を行うと塩化リチウムのような不揮発性の塩が発生するが、これら塩は溶媒等の揮発物の沸点を上昇させてしまう。しかし重合溶液に水を加えるとポリマーは固体化して(再沈殿)、中和に使用した無機試薬や生成した無機塩、また中和しない場合でも残った塩化水素は、加えた水相に移る。これを濾過することで無機試薬や無機塩、塩化水素を含まないポリマーを得ることができる。よって再沈殿を行ったポリマーを溶媒に再溶解すれば、製膜時の溶媒乾燥工程において不揮発物である塩の存在による溶媒等揮発物の沸点上昇を防ぐことができる。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムには、表面形成、加工性改善などを目的としてポリマー100重量部に対して10重量部以下の無機質または有機質の添加物を含有させてもよい。表面形成を目的とした添加剤としては例えば、無機粒子ではSiO2、TiO2、Al23、CaSO4、BaSO4、CaCO3、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、ゼオライト、その他の金属微粉末等が挙げられる。また、好ましい有機粒子としては、例えば、架橋ポリビニルベンゼン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、ポリアミド粒子、フッ素樹脂粒子等の有機高分子からなる粒子、あるいは、表面に上記有機高分子で被覆等の処理を施した無機粒子が挙げられる。
また、130℃〜330℃におけるアウトガス量をフィルムに対して2重量%以下にするためには、フィルム中に高耐熱性の可塑剤を含有する方法がある。可塑剤を含有させることで、ポリマー分子間の相互作用が弱まり、ポリマー分子間に閉じ込められた溶媒などが除去が容易となる。
次にフィルム化について説明する。上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがありいずれの方法で製膜されても差し支えないが、ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金からドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜が自己保持性をもつまで乾燥する。乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれてフィルムとなる。
130℃〜330℃におけるアウトガス量をフィルムに対して2重量%以下にするためには、乾式工程で行われる乾燥を真空乾燥機を用いて減圧にして行う方法があり、またより効率的には減圧にしながら加熱する方法がある。減圧と加熱を組み合わせることで、効率的にポリマーの乾燥を進めることができる。
130℃〜330℃におけるアウトガス量をフィルムに対して2重量%以下にするためには、乾湿式製膜、もしくは湿式製膜におけるフィルムの水洗工程で、水温度を60℃以上100℃未満にすることが好ましく、また70℃以上90℃以下がより好ましい。70℃以上の高温の水でフィルムを水洗することにより、フィルム中の残留溶媒や無機試薬等を効率的に洗浄できるために好ましい。
また100℃近い温度で水洗する場合、一部水が沸騰するために気泡がフィルム表面に付着して気泡によりフィルム表面が荒れる場合や、また高温のために洗浄力が高すぎてフィルム表面が荒れる場合があるために、90℃以下の温度で水洗することが好ましい。
また130℃〜330℃におけるアウトガス量をフィルムに対して2重量%以下にするためには、水蒸気を用いてフィルムを洗浄する方法もある。水蒸気を用いて洗浄することで、水分子がフィルム内部に浸透しやすくなり、フィルム中の残留溶媒や無機試薬等を効率的に洗浄できるからである。
また130℃〜330℃におけるアウトガス量をフィルムに対して2重量%以下にするためには、超音波中でフィルムを水洗する方法もある。超音波中でフィルムを水洗することにより、短時間で効率的にポリマー間の残留溶媒や無機試薬等を洗浄できるからである。超音波中で水温を70℃以上90℃以下にして水洗することで、さらに水洗の効率を上げることができる。
延伸は延伸倍率として面倍率で0.8〜8(面倍率とは延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルムの面積で除した値で定義する。1以下はリラックスを意味する。)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは0.8〜4である。
また、熱処理としては200℃〜500℃で数秒から数分間の熱処理が好ましく実施される。200℃以下では熱処理が十分ではなく、フィルムの表面硬度やヤング率が低下することがある。また、500℃以上ではフィルムが着色することがある。本発明の芳香族ポリアミドフィルムは単層フィルムに限定されるものではなく、積層フィルムであっても良いし、ガスバリヤ性の付与、耐溶剤性の改良、表面硬度の改良などの目的で各種下塗りや表面処理を施した複合フィルムであってもよい。
以下、実施例によって本発明を説明する。なお、特性は以下の方法により測定評価した。
(1)光線透過率
UV測定器U−3410(日立計測社製)を用いて、各波長の光に対応する透過率を測定し、以下の方法で評価した。
透過率(%)=(T1/T0)×100
ただしT1は試料を通過した光の強度、T0は試料を通過しない以外は同一の距離の空気中を通過した光の強度である。
波長範囲:450nm〜700nm
測定速度:120nm/分
測定モード:透過
(2)アウトガス量
熱重量測定装置TGA−50(島津製作所製)、熱分析システムTA−50(島津製作所製)を用いて、50ml/分の窒素気流下、室温(22℃〜24℃)から10℃/分の昇温速度によって測定を開始し、130℃〜330℃におけるフィルムの重量減少を測定した。
(3)目視による色
フィルムの色を目視で確認した。
○:無色
△:黄色
×:フィルムの後ろが透けて見えない
(4)透明導電膜の密着性試験
セロテープ(登録商標)の粘着面を、実施例1に記載の方法で形成した透明導電フィルムの導電層側にローラーを用いて密着後、剥離する事でアラミドフィルムと導電膜の密着性を目視判定した。
○:剥離なし
△:僅かだが導電膜の剥離がある
×:半分以上導電膜が剥離する
(5) フィルムの曲げ試験
本発明によるフィルムを、曲率半径が5mmになるように両端を曲げて5分間保持した。その後のフィルムの曲げ部分の様子を目視で確認した。
○:変化なし
△:フィルムの曲げ部分に跡が残る。
×:フィルムが割れる
(実施例1)
脱水したN,N−ジメチルアセトアミドに、100モル%に相当する9,9ビス(4−アミノフェニル)フルオレンを溶解させ、これに100モル%に相当するテレフタル酸ジクロライドを添加し、2時間撹拌により重合した。その後発生塩化水素に対して50モル%の炭酸リチウムと50モル%のジエタノールアミンを用いて中和を行った。得られた溶液は、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液であった。
得られたポリマー濃度10重量%の芳香族ポリアミド溶液をバーコーターで支持体上に流延し、120℃のオーブンで30分間乾燥して溶媒を蒸発させ、自己支持性を発現した重合体シートを支持体から剥離した。続いて80℃に加温した水を含む水槽へ15分間通し、残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行った。この後、温度280℃のオーブン中で幅を一定に保ったまま1分間の熱処理を行い、本発明の実施例1である厚み50μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmにおいて80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。またTGAから130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量はフィルムに対して0.4重量%であった。フィルムの曲げ試験の結果は良好であった。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は350℃とした。アウトガス量が少ないことと、フィルムのTgが高いために基板温度を十分に上げられたことから密着性の良好なフィルムとなった。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を、厚みを変えて、溶媒の蒸発のための乾燥時間を60分、水槽での抽出時間を40分に変える以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例2である厚み182μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmにおいて80%以上であるが、目視によるフィルムの色はわずかに黄色に着色していた。またTGAから130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して1.4重量%であった。フィルムの曲げ試験の結果は良好であった。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は350℃とした。アウトガス量が少ないことと、フィルムのTgが高いために基板温度を十分に上げられたことから密着性の比較的良好なフィルムとなった。結果を表1に示す。
(実施例3)
ジアミンとして100モル%に相当する2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、酸ジクロライドとして100モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロライドを用いる以外は実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を、溶媒の蒸発のための乾燥時間を20分、水槽での抽出時間を20分に変える以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例3である厚み28μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmにおいて80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。またTGAから130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して0.4重量%であった。フィルムの曲げ試験の結果は良好であった。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は250℃とした。アウトガス量が少ないことから密着性の比較的良好なフィルムとなった。結果を表1に示す。
(実施例4)
ジアミンとして60モル%に相当する2−クロロパラフェニレンジアミン、40モル%に相当する2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、酸ジクロライドとして100モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロライドを用いる以外は実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を実施例1と同様にして、本発明の実施例4である厚み50μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmにおいて80%以上であり、目視によるフィルムの色はわずかに黄色に着色していた。またTGAから130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して0.8重量%であった。フィルムの曲げ試験の結果は良好であった。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は200℃とした。アウトガス量が少ない事から密着性の比較的良好なフィルムとなった。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を、水を入れたビーカー中に徐々に滴下して再沈殿を行った。110℃の熱風中で十分に水分を乾燥後、ポリマーを60℃で99.6%の濃硫酸に攪拌して再溶解し、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
得られたポリマー濃度10重量%の芳香族ポリアミド溶液をバーコーターで支持体上に流延し、120℃のオーブンで15分間乾燥して光学等方性のドープを得た。このドープを5℃の水で凝固させた後、水洗10分、5重量%水酸化ナトリウム水溶液による中和5分、80℃の水による水洗5分を2度繰り返し、自己支持性のゲルフィルムを得た。この後、温度280℃のオーブン中で幅を一定に保ったまま1分間の熱処理を行い、本発明の実施例5である厚み50μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmにおいて80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。またTGAから130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して0.9重量%であった。フィルムの曲げ試験の結果は良好であった。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は350℃とした。湿式製膜法のためにフィルム厚み斑が大きいが、アウトガス量が少ないことと、フィルムのTgが高いために基板温度を十分に上げられたことから密着性の比較的良好なフィルムとなった。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を、厚みを変えて、溶媒の蒸発のための乾燥時間を100分、水槽での抽出時間を120分に変える以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例6である厚み580μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全てにおいて80%以上であり、目視によるフィルムはわずかに黄色に着色していた。またTGAから130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して1.9重量%であった。フィルムの膜厚が厚いため、フィルムの曲げ試験の結果は曲げ時の後が残った。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は350℃とした。アウトガス量が少ないことと、フィルムのTgが高いために基板温度を十分に上げられたことから密着性の比較的良好なフィルムとなった。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例3と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
得られたポリマー濃度10重量%の芳香族ポリアミド溶液をバーコーターで支持体上に流延し、170℃のオーブンで25分間乾燥して溶媒を蒸発させ、自己支持性を発現した重合体シートを支持体から剥離した。続いて80℃に加温した水を含む水槽へ90分間通し、残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行った。この後、温度330℃のオーブン中で幅を一定に保ったまま5分間の熱処理を行い、本発明の実施例7である厚み70μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmにおいて80%以上であり、目視によるフィルムの色は少し黄色であった。またTGAから130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して0.07重量%であった。高温の加熱を行ったためにフィルムが少し脆くなり、フィルムの曲げ試験の結果は、曲げ時の後が残った。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は250℃とした。アウトガス量が少ないことから密着性の比較的良好なフィルムとなった。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例3と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
得られたポリマー濃度10重量%の芳香族ポリアミド溶液をバーコーターで支持体上に流延し、170℃のオーブンで15分間乾燥して溶媒を蒸発させ、自己支持性を発現した重合体シートを支持体から剥離した。続いて80℃に加温した水を含む水槽へ40分間通し、残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行った。この後、温度330℃のオーブン中で幅を一定に保ったまま3分間の熱処理を行い、本発明の実施例8である厚み70μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmにおいて80%以上であり、目視によるフィルムの色は少し黄色であった。またTGAから130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して0.9重量%であった。フィルムの曲げ試験の結果は良好であった。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は250℃とした。アウトガス量が少ないことから密着性の比較的良好なフィルムとなった。結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を厚みを変える以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例9である厚み13μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmにおいて80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。またTGAから130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して0.6重量%であった。フィルムの曲げ試験の結果は良好であった。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は350℃とした。アウトガス量が少ないことと、フィルムのTgが高いために基板温度を十分に上げられたことから接着性の良好なフィルムとなった。しかし厚みが薄いために作業性が少し劣るフィルムとなった。結果を表1に示す。
(比較例1)
脱水したN,N−ジメチルアセトアミドに、100モル%に相当する9,9ビス(4−アミノフェニル)フルオレンを溶解させ、これに100モル%に相当するテレフタル酸ジクロライドを添加し、2時間撹拌により重合した。その後発生塩化水素に対して100モル%の炭酸リチウムを用いて中和を行った。得られた溶液は、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液であった。
このポリマー溶液を、水槽中の水温度を18℃にする以外は実施例1と同様にして、本発明の比較例1である厚み50μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmにおいて80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。しかし大量の無機塩が残っていたために揮発物の沸点が上昇した事と抽出時の水温度が低かった事から、TGAによる130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して2.8重量%であった。フィルムの曲げ試験の結果は良好であった。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は350℃とした。アウトガス量が多いために、ITO膜とフィルムの密着性は優れない結果となった。結果を表1に示す。
(比較例2)
ジアミンとして85モル%に相当する2−クロロパラフェニレンジアミン、15モル%に相当する4、4’−ジアミノジフェニルエーテル、酸ジクロライドとして100モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロライドを用いる以外は実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を実施例1と同様にして、本発明の比較例2である厚み50μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全てにおいては80%以上でなく、目視からフィルムは明らかに黄色く着色していた。またTGAから130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して1.2重量%であった。フィルムの曲げ試験の結果は良好であった。
次に、得られたフィルム表面に4×10-3Torrの減圧下でスパッタリング法により、厚み1,500オングストロームのITO膜を形成し、エッジ部分を切断して20cm四方の導電性プラスチック積層体のサンプルを得た。ただし、この時の基板温度は250℃とした。基板温度を十分に上げられなかった事から密着性にそれほど優れないフィルムとなった。結果を表1に示す。
Figure 2005298590
本発明は、アウトガス量を抑えた高透明性芳香族ポリアミドフィルムを提供することであり、液晶表示用の基板やアモルファスシリコン太陽電池用の基板として好適に使用できるが、その応用範囲がこれらに限られるものではない。
実施例1のフィルムの透過率を示した概略グラフである。

Claims (5)

  1. 波長450nm〜700nmの全ての光に対する光線透過率が80%以上、厚みが1〜1,000μmであり、130℃〜330℃の範囲におけるアウトガス量がフィルムに対して2重量%以下である芳香族ポリアミドフィルム。
  2. アウトガスが非プロトン性有機極性化合物を含んでいる、請求項1に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
  3. 化学式(I)、(II)、(III)または(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、oとしたとき、次式(1)〜(3)を満足している、請求項1または2に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
    50<l+m+n≦100 ・・・ (1)
    0≦l、m、n、o≦100 ・・・ (2)
    0≦o≦50 ・・・ (3)
    Figure 2005298590
    1:少なくとも一つの5員環、6員環または7員環を有する基
    2:任意の芳香族基
    X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
    Figure 2005298590
    3:−CF3、−CCl3、−CBr3、−OH、−F、−Cl、−OCH3(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
    4:任意の芳香族基
    Figure 2005298590
    5:−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基、または−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基を1つ以上含む芳香族基。
    6:任意の芳香族基
    X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
    Figure 2005298590
    7:任意の芳香族基
    8:任意の芳香族基
    X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
  4. 化学式(I)、(II)、(III)、(IV)または(VI)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)、(III)、(IV)および(VI)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、o、pとしたとき、次式(4)、(5)を満足している、請求項3に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
    50≦p≦100 ・・・(4)
    0≦l、m、n、o≦50・・・(5)
    Figure 2005298590
    1:少なくとも一つの5員環、6員環または7員環を有する基
    2:任意の芳香族基
    X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
    Figure 2005298590
    3:−CF3、−CCl3、−CBr3、−OH、−F、−Cl、−OCH3(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
    4:任意の芳香族基
    Figure 2005298590
    5:−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基、または−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基を1つ以上含む芳香族基。
    6:任意の芳香族基
    X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
    Figure 2005298590
    7:任意の芳香族基
    8:任意の芳香族基
    X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
    Figure 2005298590
    9:任意の芳香族基
    X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリアミドフィルムを含むプラスチック基板。
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