JP2005300722A - 光学用高分子フィルム - Google Patents

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英樹 森山
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Abstract

【課題】 面内方向・厚み方向の屈折率を制御した高透明性・高耐熱性を有する光学用高分子フィルムを提供すること。
【解決手段】 波長450nm〜700nmの全範囲における透過率が80%以上であり、フィルム面内の直交軸方向における屈折率をnx、ny(ただし、nx≧ny)とし、フィルムの厚み方向における屈折率をnzとしたとき、−0.01<ny−nz<0.09を満たし、かつガラス転移点温度(℃)TgがTg≧220である光学用高分子フィルムとする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、面内方向と厚み方向の屈折率を制御することによって、視野角特性が改善された光学フィルムとして好適に使用可能な高分子フィルムに関する。
近年、液晶ディスプレイを利用した機器や家電が広く普及している。この液晶ディスプレイの内部には種々の高分子フィルムが使用されている。しかし液晶ディスプレイの用途拡大に伴い、これら高分子フィルムに関して種々の問題点が生じてきた。
問題点の一つに耐熱性がある。例えばプラスチック基板に透明導電膜を形成する場合等のように、各種機能性被膜のコーティングや電極膜などの性能向上に伴い、加工温度に高温が必要とされる場合が増えてきた。耐熱性の低いフィルムを使用すると、加工時にフィルムが熱変形を受けて収縮したり、カールしたりする等の不都合を生じる場合がある。またカーナビゲーションシステム用液晶ディスプレイ等の用途では、車内で使用することから使用環境温度が高くなり、当然に高耐熱性が必要となる。
さらにPDAや携帯電話等のモバイル用途で液晶ディスプレイが普及するにつれて、より持ち運びやすいものが望まれるようになり、ディスプレイの薄膜化、軽量化が求められるようになってきた。そのためには、液晶ディスプレイの各種構成部材をプラスチックで成形し、またそれを薄膜化する必要がある。
そこでディスプレイ用光学フィルムとして、耐熱性の高いポリエーテルスルホンフィルム、ポリイミドフィルム、芳香族ポリアミドフィルムなどが期待されるようになった。そのなかでも高耐熱性で、かつ高剛性であることから薄膜化が可能な芳香族ポリアミドフィルムが最も期待される。
しかし高分子フィルムを液晶ディスプレイの構成部材として使う場合には、次のような問題がある。
複屈折性を利用している液晶ディスプレイでは、偏光板を介して直線偏光とした入射光が、液晶セルによる複屈折で楕円偏光となり、それを偏光板を介して見た場合にディスプレイが黄色ないし青色系統に着色する問題がある。そのため、液晶セル通過後の楕円偏光を直線偏光に戻して着色を防止すべく、液晶セルの複屈折による位相差を補償する手段として、液晶セルと偏光板との間に延伸フィルムからなる位相差フィルム(光学補償フィルム)を介在させる方式が提案されている。しかし位相差フィルムとして普通の延伸フィルムを用いた場合、液晶表示に垂直な方向から見ると着色が除去されるが、斜めから見ると着色する問題がある。
また液晶ディスプレイにおいてガラス製の基板の代わりに、未延伸もしくは二軸延伸することにより面内方向の屈折率差をゼロに近づけたフィルムをプラスチック製の基板として用いた場合も、液晶ディスプレイに垂直な方向から見ると着色が無いが、斜めから見ると着色する問題がある。
この問題は厚み方向(垂直方向)の屈折率を変えることで対応できる。ポリカーボネートフィルムにおいてこれらの問題を解決する方法が、特許文献1および2に記載されている。特許文献1は、延伸工程においてフィルムの延伸を一定量緩和することが開示されている。また特許文献2は、延伸工程においてガラス転移温度からガラス転移温度よりも10℃低い温度までの温度で、熱緩和工程を有することが開示されている。これらの方法は延伸後に緩和させることで、延伸によって配向が進んだフィルムの面内配向を抑制することにより、フィルムの屈折率を制御している。
しかしこれら特許文献記載の方法は、乾式製膜法によるものであり、一般に乾湿式法や湿式法で製膜される芳香族ポリアミドにはそのまま適用できない。乾湿式法、湿式法では、これらの方法に特徴的な工程である湿式浴中でポリマーの面内配向が進みやすい。よって乾式法によるフィルム製造法である特許文献1、2に記載の方法は、芳香族ポリアミドフィルムの厚み方向屈折率を制御する方法として、必ずしも十分ではなかった。
特公平8−30765号公報 特許第2592697号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点を課題として検討した結果、達成されたものである。すなわち本発明の目的は、面内方向、厚み方向の屈折率を制御して、高透明性・高耐熱性を有した光学用高分子フィルムを提供することにある。
上記目的を達成するために本発明は、波長450nm〜700nmの全範囲における透過率が80%以上であり、フィルム面内の直交軸方向における屈折率をnx、ny(ただし、nx≧ny)とし、フィルムの厚み方向における屈折率をnzとしたとき、−0.1<ny−nz<0.1を満たし、かつガラス転移点温度Tg(℃)がTg≧220である光学用高分子フィルムを特徴とする。
本発明によれば、以下に説明するとおり、面内方向・厚み方向の屈折率を制御した、高透明性・高耐熱性を有する光学用高分子フィルムを得ることができる。
以下、本発明の実施形態の例を説明する。
本発明の光学用高分子フィルムは波長450nm〜700nmの全範囲における光線透過率が80%以上である。光線透過率が80%未満であると、液晶ディスプレイなどの光学部材として利用できない場合がある。透明性がいっそう向上することから、光線透過率はより好ましくは85%以上である。
本発明の光学用高分子フィルムは、フィルム面内の直交軸方向における屈折率をnx、ny(ただし、nx≧ny)とし、フィルムの厚み方向における屈折率をnzとしたとき、−0.1<ny−nz<0.1を満たしている。ここでフィルム面内の直交軸方向は製膜方向とその直交方向に定める。よって製膜方向が分かる場合は、製膜方向とその直交方向の屈折率のうち、大きな屈折率を持つ方向の屈折率値をnx、小さな屈折率を持つ方向の屈折率値をnyとする。なお、製膜方向とはいわゆる長手方向、MD(Machine Direction)方向のことをいい、それと直交する方向(直交方向)とは、いわゆる幅方向、TD(Transverse Direction)のことをいう。また製膜方向が分からない場合は、自動複屈折計などでフィルム中の遅相軸を決定して、遅相軸とその直行方向をフィルム面内の直行軸方向に定める。ny−nz≦−0.1、0.1≦ny−nzであると、これらのフィルムを液晶ディスプレイに組み込んで用いた時に、液晶表示に垂直な方向から見た場合は着色が除去されるが、斜めから見た場合は着色が残ったり、視角が狭くなったりする傾向がある。−0.1<ny−nz<0.1を満たす場合、nzがnyに近づくため、位相差フィルムやプラスチック基板などの光学用フィルムに用いた際に視角が広がることから好ましい。より好ましくは−0.01<ny−nz<0.09であり、さらに好ましくは−0.01<ny−nz<0.04である。ここで屈折率は、アッベ屈折率計を使用してD線(波長589.3nm)における屈折率を測定した。
またフィルムのガラス転移点温度(℃)Tgは、Tg≧220であることが好ましい。Tg<220であると、フィルム加工時の熱や環境温度の高い場所での使用などにおいて、フィルムがカールや収縮する場合があり、また光学特性が変化する場合がある。Tg≧220である高分子の具体例として、ポリエーテルスルホンやポリイミド、芳香族ポリアミド等が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。ここでTgは、動的粘弾性測定機を用いて測定した。
また、高分子として芳香族ポリアミドを用いた場合、ヤング率が高いために薄膜化が可能である。よってディスプレイ用部材として使用した際に、ディスプレイ自体の軽量化、薄膜化に寄与できるために、本発明の高分子としては芳香族ポリアミドを用いることが特に好ましい。
また本発明の光学用高分子フィルムは、N=(nx−nz)/(nx−ny)と定義した際に、0<N<1であることが好ましい。液晶ディスプレイを斜めから見た場合に着色現象を生じるのは、高分子フィルム中で光の入射角によって光路差が変化するためである。0<N<1を満たす場合、屈折率がnx>nz>nyとなり、屈折率がこの範囲であると光路差が小さくなり、視角による位相差の変化が小さくなるために、ディスプレイを斜めから見た際にも着色が生じない視角特性に優れたフィルムとすることができる。
また本発明の光学用高分子フィルムは、0≦nx−ny<0.01であることも好ましい。このように屈折率がnx−ny=0に近い時、等方性に近いフィルムとなり、各方向における位相差が小さくなる。よってこれを液晶ディスプレイ用の基板として適用した場合に、ガラス製基板と同様に、ディスプレイを斜めから見た際にも着色の生じない視角特性に優れたフィルムとすることができる。
以下に、本発明において好ましく用いられる芳香族ポリアミドフィルムの製造方法の例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
芳香族ポリアミド溶液、すなわち製膜原液を得る方法は種々の方法が利用可能であり、例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができる。そのなかでも、重合度の制御がジアミンとカルボン酸ジクロライドのモル比を調整するだけで容易に可能な、低温溶液重合法が特に好ましい。また低温溶液重合法を用いる場合は非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。
カルボン酸ジクロライドとしては、フィルムを無色透明化するものであれば特に制限はないが、テレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、ナフタレンジカルボニルクロライド、ビフェニルジカルボニルクロライド、ターフェニルジカルボニルクロライドなどが挙げられるが、最も好ましくはテレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライドが用いられる。
ジアミンとしては、フィルムを無色透明化するものであれば特に制限はないが、特に好ましくは、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位を含むものである。芳香族ポリアミドの着色は、分子内および分子間の電荷移動錯体の形成によると考えられているが、化学式(I)、(II)および(III)は、いずれも芳香族ポリアミドの分子内および分子間の電荷移動錯体の形成を阻害することによって、芳香族ポリアミドフィルムを無色透明化する(透過率を向上させる)と考えられる。
Figure 2005300722
1:少なくとも一つの5員環、6員環または7員環を有する基
2:任意の芳香族基
X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
Figure 2005300722
3:−CF3、−CCl3、−CBr3、−OH、−F、−Cl、−OCH3(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
4:任意の芳香族基
Figure 2005300722
5:−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基、または−SO2−、−O−、−CH2−、−C(CF32−から選ばれる基を1つ以上含む芳香族基。
6:任意の芳香族基
X:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
厚み方向に配向したフィルムを得るためには、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン等の屈曲成分を含んだモノマー、イソフタル酸ジクロライド等のメタ位で重合可能なモノマー、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン等の屈曲成分を含みかつメタ位で重合可能なモノマー、9,9ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等の重合した際にポリマー主鎖と異なる方向に配向しやすい成分を持ったモノマーを用いると、厚み方向屈折率を高めやすいために好ましい。
芳香族ポリアミド溶液は、単量体として酸ジクロライドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。
しかし無機系の中和剤を用いると塩化水素と100%反応しにくい問題点があり、また有機系の中和剤を用いると熱により塩酸塩が分解して、有機系中和剤と塩化水素に戻ってしまう問題がある。そこで中和方法は、無機系の中和剤を用いて90〜98%の塩化水素を中和して、その後残りの塩化水素に対して有機系の中和剤を用いて中和を行うことが好ましい方法である。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの製造において使用する溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。さらにポリマーの溶解を促進する目的で、溶媒にはポリマー100重量部に対して50重量部以下のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩を添加することができる。
次にフィルム化について説明する。上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあるが、中和時に無機系中和剤と塩化水素との反応により生成する不揮発性の塩を除去するためには、乾湿式法もしくは湿式法で製膜することが好ましい。ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
乾湿式法で製膜する場合は、該原液を口金からドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜が自己保持性をもつまで乾燥する。この乾式工程において目的とする範囲の屈折率を持つフィルムを得るためには、乾燥温度は60℃〜100℃が好ましく、60℃〜80℃がより好ましい。乾燥工程では厚み方向からの蒸発が進みやすく、ポリマーは圧縮されるために、面内に分子が配向しやすい。60℃〜100℃で緩やかに脱溶媒することで、加熱による分子運動のために分子鎖の配向が乱れて面内配向を抑制できるために好ましい。乾燥温度が100℃を超えると、脱溶媒速度が早くなるので急激にポリマーが圧縮され、面内配向が進みやすくなるために好ましくない。また乾燥温度が60℃よりも低い場合は、乾燥時間が長くなり生産性が著しく低下することがある。
乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離後、次の湿式工程の湿式浴に導入されて、脱塩、脱溶媒などが行なわれる。目的とする範囲の屈折率を持ったフィルムを得るためには、湿式浴中の湿式浴組成物の温度を10℃以下にすることが好ましい。湿式工程ではフィルム中からの急激な脱溶媒が起こる。このためにフィルムが厚み方向に圧縮されて面内配向が進みやすい。しかし、10℃以下の低温の湿式浴組成物でフィルムを洗浄することにより、脱溶媒速度を低下させることができ、面内配向を抑制することができるので好ましい。
また目的とする範囲の屈折率を持つフィルムを得るためには、湿式工程の最初の湿式浴組成物を、水と製膜原液中の有機溶媒との混合系にしておくことが好ましく、その割合は有機溶媒/水=70/30〜50/50が好ましい。湿式浴中に有機溶媒を含有させることで、フィルムからの脱溶媒速度がより低下する。そのためフィルムの面内配向を抑制できることになり好ましい。
また、フィルムの用途、目的に応じて、湿式浴中で縦延伸が行われる。縦方向の延伸倍率は、1〜5倍、好ましくは1〜2倍、特に好ましくは1.01〜1.5倍である。
湿式工程を通過したフィルムは、用途、目的に応じてテンター内で横延伸、緩和が行われる。横方向の延伸倍率は、1〜5倍、好ましくは1〜2倍、特に好ましくは1.01〜1.5倍である。面内に一方向に配向した位相差板等では、一軸延伸もしくは二軸延伸が行われる。また面内に等方的に配向したプラスチック基板等では、未延伸もしくは二軸延伸が行われる。
延伸後のフィルムは、所定時間、所定温度に保持して、延伸フィルムを収縮させる。緩和率は0.85〜1倍であるのが好ましい。緩和率が高すぎると、フィルムが弛み、光学特性にバラツキが出る場合があるため好ましくない。時間は30秒〜600秒で行われるのが好ましく、温度は200℃〜450℃であるのが好ましい。時間が短すぎる場合や温度が低すぎる場合は、緩和効果が小さく、また十分な機械特性が得られない場合がある。時間が長すぎる場合や温度が高すぎる場合は、フィルムが脆くなり、さらに着色して光学部材としては用いられない場合がある。
本発明によるフィルムは、液晶ディスプレイ用の位相差フィルムとして好ましく用いられる。位相差フィルムとして用いる時には、2枚の位相差フィルムを適当な角度に貼り合わせて、さらに偏光フィルムを適当な角度で貼り合わせて使用される場合や、1枚の位相差フィルムに偏光フィルムを適当な角度に貼り合わせることで使用される。2枚の位相差フィルムを貼り合わせることで、必要な波長分布を持った位相差を得ることができ、また、偏光フィルムを貼り合わせることで、液晶ディスプレイのコントラストを高めて視認性を高めることができる。このようにして使用される本発明による位相差フィルムは、屈折率を制御したことにより、ディスプレイを斜めから見た場合にも着色現象を生じない視角特性に優れたものとなる。
また本発明のフィルムは、液晶ディスプレイ用のプラスチック基板として好ましく用いられる。液晶ディスプレイ用のプラスチック基板として用いる時には、ガラス製基板と同様にITO等の透明導電膜を付与したプラスチック基板として使用される。より具体的には、プラスチック基板は硬度やガスバリアー性などでガラス基板に劣るため、透明導電膜だけでなく、ハードコート層、ガスバリアー層を付与して使用される。このようにして使用される本発明によるプラスチック基板は、屈折率を制御したことにより、ディスプレイを斜めから見た場合にも着色現象を生じない視角特性に優れたものとなる。
以下、実施例によって本発明を説明する。なお、特性は以下の方法により測定評価した。
(1)光線透過率
UV測定器U−3410(日立計測社製)を用いて、各波長の光に対応する透過率を測定し、以下の方法で評価した。
透過率(%)=(T1/T0)×100
ただしT1は試料を通過した光の強度、T0は試料を通過しない以外は同一の距離の空気中を通過した光の強度である。
波長範囲:450nm〜700nm
測定速度:120nm/分
測定モード:透過
(2)ガラス転移温度
動的粘弾性測定機EXSTAR6000(セイコーインスツルメント社製)を用いて、ガラス転移温度Tgを測定した。
測定範囲 :25℃〜360℃
昇温速度 :2℃/分
測定周波数:1Hz
試験長 :5mm
(3)屈折率
アッベ屈折率計4T(アタゴ製)、スペクトル光源スタータSLS−5(入江製作所製)、中間液としてヨウ化メチレンを用いて、D線(波長589.3nm)における屈折率を測定した。
(4)耐熱性試験
200℃に保ったオーブン中に、本発明によるフィルムを無張力下で1時間吊るし、続いてフィルムを平面上に置いて、フィルムの端が平面から何cm浮き上がるかを測定して、以下の基準で判定した。
○:浮き上がりなし
△:1cm以下浮き上がる
×:1cmより高く浮き上がる
(5)目視による色
本発明によるフィルムの色を目視で確認した。
○:無色
△:黄色(透明性あり)
×:色が濃いためにフィルムの後ろが透けて見えない
(6)視角特性試験
直行する2枚の偏光板の間に45°の角度で本発明によるフィルムを挟み、ランプで光を照射して、角度を変えて見た場合の着色変化を目視で判定した。
○:視角による着色変化がない
△:視角による着色変化が僅か
×:視角による着色変化が大きい
(実施例1)
脱水したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、100モル%に相当する9,9ビス(4−アミノフェニル)フルオレンを溶解させ、これに100モル%に相当するイソフタル酸ジクロライドを添加し、2時間撹拌により重合した。その後、発生塩化水素に対して95モル%の炭酸リチウムと5モル%のジエタノールアミンを用いて中和を行った。得られた溶液は、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液であった。
得られたポリマー濃度10重量%の芳香族ポリアミド溶液をバーコーターで支持体上に流延し、80℃のオーブンで20分間乾燥して溶媒を蒸発させ、自己支持性を発現した重合体シートを支持体から剥離した。続いて、流延方向の幅を両面テープとクリップを用いて金属製枠で固定して、さらに面内における流延方向と直交する方向をクリップのみを用いて金属製枠で固定することにより配向させて、5℃に保持したNMP/水=60/40を含む湿式浴中へ15分間通し、残存溶媒と中和で生じた無機塩の抽出を行った。この後、温度280℃のオーブン中で1分間の熱処理を行い、枠から1cm内側を切り取ることで本発明の実施例1である厚み13μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全範囲において80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。また耐熱試験後のフィルムにカールは無かった。さらに屈折率はnx=1.699、ny=1.693、nz=1.694であり、視角特性試験の結果が非常に優れ、位相差板や液晶用基板として用いた時に視角変化の小さいフィルムとなった。
(実施例2)
実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。 得られたポリマー濃度10重量%の芳香族ポリアミド溶液をバーコーターで支持体上に流延し、80℃のオーブンで20分間乾燥して溶媒を蒸発させ、自己支持性を発現した重合体シートを支持体から剥離した。続いて、流延方向の幅のみを両面テープとクリップを用いて金属製枠で固定することにより一軸に配向させて、5℃に保持したNMP/水=60/40を含む湿式浴中へ15分間通し、残存溶媒と中和で生じた無機塩の抽出を行った。この後、温度280℃のオーブン中で1分間の熱処理を行い、枠から1cm内側を切り取ることで本発明の実施例1である厚み13μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全範囲において80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。また耐熱試験後のフィルムにカールは無かった。さらに屈折率はnx=1.702、ny=1.692、nz=1.693であり、視角特性試験の結果が非常に優れ、位相差板として用いた時に視角変化の小さいフィルムとなった。
(実施例3)
実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液から、同様にして溶媒を蒸発させシートにして、シートを支持体から剥離した。続いて剥離したシートを5℃に保持したNMP/水=60/40を含む湿式浴中へ15分間通し、残存溶媒と中和で生じた無機塩の抽出を行った。この後、温度280℃のオーブン中で1分間の熱処理を行い、本発明の実施例2である厚み14μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全範囲において80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。また耐熱試験後のフィルムにカールは無かった。さらに屈折率はnx=1.6968、ny=1.6967、nz=1.6965であり、視角特性試験の結果が非常に優れ、液晶用基板として用いた時に視角変化の小さいフィルムとなった。
(実施例4)
ジアミンとして50モル%に相当する4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、50モル%に相当する3,3’−ジアミノジフェニルスルフォンを用いる以外は実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
得られたポリマー濃度10重量%の芳香族ポリアミド溶液をバーコーターで支持体上に流延し、80℃のオーブンで20分間乾燥して溶媒を蒸発させ、自己支持性を発現した重合体シートを支持体から剥離した。続いて、両幅を両面テープとクリップを用いて金属製枠で固定することにより二軸に配向させて、5℃に保持した水を含む湿式浴中へ15分間通し、残存溶媒と中和で生じた無機塩の抽出を行った。この後、温度280℃のオーブン中で3分間の熱処理を行い、枠から1cm内側を切り取ることで本発明の実施例4である厚み13μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全範囲において80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。また耐熱試験後のフィルムにカールは無かった。さらに屈折率はnx=1.7001、ny=1.7000、nz=1.670であり、視角特性試験の結果も良好で、液晶用部材として用いた時に視角変化の比較的小さなフィルムとなった。
(実施例5)
ジアミンとして100モル%に相当する2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを用いる以外は実施例1と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を、熱処理を280℃で3分にして行う以外は実施例2と同様にして、本発明の実施例5である厚み11μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全範囲において80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。また耐熱試験後のフィルムにカールは無かった。さらに屈折率はnx=1.645、ny=1.634、nz=1.563であり、視角特性試験の結果も良好で、液晶用部材として用いた時に視角変化の比較的小さなフィルムとなった。
(比較例1)
実施例5と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を、湿式工程を30℃に保持したNMP/水=60/40を含む湿式浴中で行う以外は実施例5と同様にして、本発明の比較例1である厚み13μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全範囲において80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。また耐熱試験後のフィルムにカールは無かった。屈折率はnx=1.651、ny=1.642、nz=1.538であり、視角特性試験の結果は悪かった。
(比較例2)
実施例5と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を、初期の乾燥を150℃のオーブンで6分間行う以外は実施例5と同様にして、本発明の比較例2である厚み16μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全範囲において80%以上であったが、目視によるフィルムの色は少し黄色であった。また耐熱試験後のフィルムにカールは無かった。屈折率はnx=1.650、ny=1.641、nz=1.539であり、視角特性試験の結果は悪かった。
(比較例3)
ジアミンとして35モル%に相当する2−クロロパラフェニレンジアミン、65モル%に相当する4、4’−ジアミノジフェニルエーテル、酸ジクロライドとして100モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロライドを用いる以外は実施例2と同様にして、ポリマー濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
このポリマー溶液を、熱処理を300℃で3分にして行う以外は実施例1と同様にして、本発明の比較例2である厚み14μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全範囲においては80%以上でなく、目視によるフィルムの色は黄色であった。また耐熱試験後のフィルムには僅かなカールしか無かった。面内の最大屈折率方向の屈折率(nx)は、ヨウ化メチレンを中間液として用いた際のアッベ屈折率計の測定限界(n=1.74)を超えているために、面内方向(nx、ny)に関しては位相差測定装置NPDM−1000(ニコン製)を用いて測定した。nx=1.803、ny=1.745、nz=1.665であり、視角特性試験の結果は良好であった。
(比較例4)
脱水したNMPに、ポリスチレンペレットを溶解させ、ポリマー濃度が25重量%のポリスチレン溶液を得た。
得られたポリマー濃度25重量%の芳香族ポリアミド溶液をバーコーターで支持体上に流延し、70℃のオーブンで20分間乾燥して溶媒を蒸発させ、自己支持性を発現した重合体シートを支持体から剥離した。続いて、流延方向の幅のみ両面テープとクリップを用いてを金属製枠で固定することにより一軸に配向させて、5℃に保持したNMP/水=60/40を含む湿式浴中へ10分間通し、残存溶媒と中和で生じた無機塩の抽出を行った。この後、温度110℃のオーブン中で1分間の熱処理を行い、枠から1cm内側を切り取ることで本発明の比較例3である厚み52μmのポリスチレンフィルムを得た。
得られたフィルムの透過率は450〜700nmの全範囲において80%以上であり、目視によるフィルムの色は無色であった。また耐熱性試験において大きくカールした。屈折率はnx=1.596、ny=1.595、nz=1.589であり、視角特性試験の結果は良好であった。
Figure 2005300722
本発明は、面内方向・厚み方向の屈折率を制御した、高透明性・高耐熱性を有する光学用高分子フィルムであり、液晶ディスプレイ等の光学用フィルムとして好適に使用できるが、その応用範囲がこれらに限られるものではない。

Claims (6)

  1. 波長450nm〜700nmの全範囲における透過率が80%以上であり、フィルム面内の直交軸方向における屈折率をnx、ny(ただし、nx≧ny)とし、フィルムの厚み方向における屈折率をnzとしたとき、−0.1<ny−nz<0.1を満たし、かつガラス転移点温度Tg(℃)がTg≧220である光学用高分子フィルム。
  2. フィルムが芳香族ポリアミドを含んでいる、請求項1に記載の光学用高分子フィルム。
  3. nx、nyおよびnzが、0<(nx−nz)/(nx−ny)<1を満たす、請求項1または2に記載の光学用高分子フィルム。
  4. nxおよびnyが、0≦nx−ny<0.01を満たす、請求項1〜3のいずれかに記載の光学用高分子フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の光学用高分子フィルムを含む位相差フィルム。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の光学用高分子フィルムを含むプラスチック基板。
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