JP2005293982A - 固体高分子型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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廣 藤本
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尚仁 熊野
Manabu Oku
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Abstract

【課題】 燃料電池内の湿潤な酸性環境に長期間曝されても低接触抵抗,耐溶出性,高耐食性を維持する固体高分子型燃料電池用セパレータに適したフェライト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】 C:0.020質量%以下,Si:0.50質量%以下,Mn:0.50質量%以下,P:0.020〜0.080質量%,S:0.005質量%以下,Cr:16〜40質量%,Mo:2.50質量%以下,N:0.020質量%以下,Ti:0.03〜1.00質量%を含み、更に及びNb:0.03〜1.00質量%,Zr:0.03〜1.00質量%,V:0.01〜1.00質量%,Al:0.03〜0.50質量%,B:0.0002〜0.004質量%の一種又は二種以上を含むフェライト系ステンレス鋼である。Nb,Al,Zr,V,Bの窒化物の一種又は二種以上とTiの窒化物とを含み、N,Oの原子比N/Oが0.2以上,膜厚:1000Å以下で導電性に優れた不動態皮膜がステンレス鋼基材の表面に形成されている。不動態皮膜は、窒素分圧:0.05気圧以上,露点:−35℃以下の雰囲気中で該ステンレス鋼を加熱することにより形成される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、自動車用動力源や定置用,モバイル機器用等の電源としての展開が期待されている燃料電池のセパレータとして使用されるフェライト系ステンレス鋼に関する。
燃料電池にはリン酸型,溶融炭酸塩型,固体高分子型,固体電解質型等があるが、CO2,NOx,SOx等の排出がほとんどなく、発電効率が非常に高いことから固体高分子型燃料電池が注目されている。固体高分子型燃料電池は、100℃以下の温度で動作可能であり、短時間でも起動できる長所を活用し、車両用動力源を初め、定置用,モバイル機器用等の電源としての使用が進められている。
プロトン交換基をもつ固体高分子の樹脂からなるイオン交換膜がプロトン導電性電解質として機能することを利用する固体高分子型燃料電池は、イオン交換膜の一側に水素等の燃料ガスを、他側に空気,酸素等の酸化性ガスを流し、イオン交換膜を透過したプロトンが酸化極側で酸素と結合するときに生じる電力を取り出す構造になっている。
固体高分子型燃料電池は、それぞれ触媒電極層(酸化極)2,触媒電極層(燃料極)3を接合したイオン交換膜1の両面にガスケット4を介してセパレータ5を対向させて単セル(図1)を構築し、実用に供せられる電力を取り出すため数十〜数百の単セルをスタックしている。酸化極2側のセパレータ5には酸化性ガスoの供給口6,排出口7が、燃料極3側のセパレータ5には燃料ガスgの供給口8,排出口9が形成されている。また、酸化性ガスo,燃料ガスgの導通,均一分配のため、複数の溝10がセパレータ5に形成されている(図2)。
固体高分子型燃料電池の燃料ガスgとして用いられる水素は、イオン交換膜1の伝導性を高めるため、通常、90℃前後に加温された温水を通過させる方法等によって加湿されている。酸化極2側に送り込まれる酸化性ガスoも加湿される場合がある。加湿された燃料ガスg、酸化性ガスoを燃料電池に送り込むと、セパレータ5の表面が高湿潤雰囲気に曝される。燃料電池の稼動条件によっては、イオン交換膜1の樹脂成分が分解反応し、SO4 2-,F-等の反応生成物がセパレータ5に付着して腐食することもある。
セパレータ材に腐食や溶出が生じると、セパレータ5から溶け出した金属イオンによりイオン交換膜1の分解が促進され、或いは触媒電極層2,3中の触媒が汚染され、固体高分子型燃料電池の出力や耐久性を低下させる原因となる。したがって、セパレータ材にステンレス鋼を使用する場合、高湿潤雰囲気中における耐溶出性に優れていることが基本的に要求される。高湿度の酸性環境下で耐溶出性,耐食性に優れていること、触媒電極層2,3との界面における接触抵抗が低いことをもステンレス鋼製セパレータの要求特性である。
通常のステンレス鋼は、クロムの酸化物を主とする不動態皮膜で表面が覆われており、耐食性には有効であるものの接触抵抗が高い。固体高分子型燃料電池用セパレータの要求特性を満足させるためにはステンレス鋼の接触抵抗を下げる必要があり、Al,V,Sn等を含むTiN皮膜をスパッタリングやアークイオンプレーティング法でステンレス鋼表面に形成したセパレータが知られている(特許文献1)。Al,V,Sn等をTiN皮膜に含ませることにより燃料電池使用中にTiN皮膜の酸化,ひいては接触抵抗の上昇を抑えているが、コストが非常に高い処理を必要とするため実用的でない。
特開2002-75398号公報
所定形状に加工したTi添加フェライト系ステンレス鋼を窒素含有雰囲気で加熱することにより、窒化チタン層を鋼板表面に形成したステンレス鋼製セパレータも知られている(特許文献2)。窒素含有雰囲気での加熱処理は、スパッタリングやアークイオンプレーティング法に比較して製造コスト面では有利であるが、Tiのみの窒化物で皮膜を形成しているので腐食性環境における安定性が低く、燃料電池内で窒化チタンが溶解,変質しやすい。そのため、接触抵抗の上昇や溶出金属イオンによるイオン交換膜,触媒電極層等の汚染、ひいては燃料電池の出力低下が避けられない。また、セパレータ形状に加工した後で窒素含有雰囲気中で加熱窒化処理することは、生産コストを上げるばかりでなく、加熱・冷却時の熱応力によって加工形状が劣化することもある。
特開2003-331861号公報
本発明は、ステンレス鋼製セパレータが曝される湿潤な酸性環境における腐食,金属イオンの溶出とステンレス鋼の成分・組成との関係を詳細に調査・検討した結果見出された知見をベースとし、導電性に優れた不動態皮膜を鋼板表面に形成することにより、長期間にわたって表面接触抵抗が低位に維持され金属イオンの溶出も抑制されたセパレータ用フェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明の固体高分子型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼は、Nb,Al,Zr,V,Bの窒化物の一種又は二種以上とTiの窒化物とを含み、N,Oの原子比N/Oが0.2以上,膜厚:1000Å以下の不動態皮膜が鋼板表面に形成されていることを特徴とする。
該フェライト系ステンレス鋼板は、C:0.020質量%以下,Si:0.50質量%以下,Mn:0.50質量%以下,P:0.020〜0.080質量%,S:0.005質量%以下,Cr:16〜40質量%,Mo:2.50質量%以下,N:0.020質量%以下,Ti:0.03〜1.00質量%に加え、Nb:0.03〜1.00質量%,Zr:0.03〜1.00質量%,V:0.01〜1.00質量%,Al:0.03〜0.50質量%,B:0.0002〜0.004質量%の一種又は二種以上を含む組成に調整されている。
導電性に優れた不動態皮膜は、セパレータ形状に加工した後だけでなくステンレス鋼素材の製造プロセス中に、窒素分圧:0.05気圧以上,露点:-30℃以下の雰囲気下で加熱することにより形成される。
本発明のセパレータ用フェライト系ステンレス鋼板は、基材のステンレス鋼表面に接触抵抗の低い窒化物含有不動態皮膜が生成する合金設計を採用している。不動態皮膜にTiの窒化物を含ませることにより接触抵抗が低下するが、セパレータ環境下ではTi単独の窒化物が不安定になり接触抵抗が増加しやすいので、Nb,Al,Zr,V,Bの窒化物を複合化することにより窒化物の安定性を高めている。そのため、長期にわたって接触抵抗が低位に維持され、金属イオンの溶出も抑えたステンレス鋼製セパレータが得られる。
以下、フェライト系ステンレス鋼に含まれる合金成分,含有量等を説明する。
〔C:0.020質量%以下,N:0.020質量%以下〕
何れもフェライト系ステンレス鋼の加工性,低温靭性に悪影響を及ぼす成分であり、特に多量のCr,Moを含む合金系では加工性,低温靭性を確保するため可能な限りC,Nを低減することが必要である。そこで、C,N含有量の上限を共に0.20質量%に規定した。更に高レベルの加工性,低温靭性が要求される場合、C:0.010質量%以下,N:0.015質量%以下が好ましい。
〔Si:0.50質量%以下,Mn:0.50質量%以下〕
何れも酸素親和力の高い元素であり、熱処理時に酸化物となって接触抵抗を上昇させる。また、Siはフェライト系ステンレス鋼を硬質化させ、Mnは耐溶出性を低下させる。そのため、Si,Mnを低減するほど好ましく、上限を共に0.50質量%に規定した。
〔P:0.020〜0.080質量%〕
高湿度,酸性環境においてセパレータの耐食性,耐全面腐食性,耐溶出性を顕著に改善し、接触抵抗を低下させる作用も呈する。P添加の効果は、0.020質量%以上で発現するが、0.026質量%以上が好ましい。しかし、P添加量の増加に伴い素材が硬質化して加工性に支障をきたすので、P含有量の上限を0.080質量%に規定した。耐溶出性,低接触抵抗を高レベルで両立させる上では、0.026〜0.060質量%の範囲でP含有量を選定することが好ましい。
〔S:0.005質量%以下〕
ステンレス鋼の耐食性を劣化させる成分であり可能な限り低いほうが好ましいので、0.005質量%以下に規制した。
〔Cr:16〜40質量%〕
高湿潤雰囲気下の耐溶出性を改善する成分であり、16質量%以上でCrの添加効果がみられる。使用環境によってはSO4 2-,F−等の腐食性イオンが存在することがあり、かかるセパレータ環境下での耐溶出性,耐食性を確保するためにはCr含有量を20質量%以上、更に高レベルの耐溶出性,耐食性を確保するためには28%以上に設定する。耐溶出性,耐食性はCr含有量の増加に応じて向上するが、過剰添加は加工性,低温靭性を低下させることになるので上限を40質量%に規定した。
〔Mo:2.50質量%以下〕
セパレータ環境下での耐溶出性,耐食性を改善する作用を呈し、0.10質量%以上でMoの添加効果がみられ、Mo含有量が増加するほど耐溶出性,耐食性が向上する。しかし、過剰添加は鋼材を硬質化させるので、上限を2.50質量%に規定した。
〔Ti:0.03〜1.00質量%〕
Nと反応しやすい元素であり、反応生成物である窒化チタンが不動態皮膜に含まれることによりステンレス鋼の接触抵抗が低下する。しかし、窒化チタンだけで低下させた不動態皮膜の接触抵抗は必ずしも安定でないので、Nb,Zr,V,Al,B等との複合窒化物とすることが必要である。Tiは、セパレータ環境下での耐溶出性,耐食性,加工性の改善にも有効な成分であり、0.03質量%以上でTiの添加効果がみられる。しかし、過剰添加は加工性,低温靭性の低下を招くので、上限を1.00質量%に規定した。
〔Nb:0.03〜1.00質量%,Zr:0.03〜1.00質量%,V:0.01〜1.00質量%,Al:0.03〜0.50質量%,B:0.0002〜0.004質量%〕
何れもTiと同様に窒素と反応しやすい元素であり、窒素との反応で生成した窒化物が窒化チタンと複合されると安定性の高い窒化物になる。該複合窒化物が不動態皮膜に含まれると、長期間にわたって接触抵抗が低位に安定維持される。各元素の添加量は、接触抵抗の長期安定化以外に他の特性に及ぼす影響を考慮して次のように定められる。
Nbは、耐食性,耐溶出性の改善にも有効であり、0.03質量%以上のNb添加で不動態皮膜の接触抵抗低下及び窒化物の安定化に及ぼす効果がみられる。しかし、1.00質量%を超える過剰添加は、加工性を大幅に低下させる。
Zrは、窒素と最も結合しやすい元素であり、セパレータ環境下での耐食性,耐溶出性を向上させる作用も呈する。接触抵抗の安定化は、0.03質量%以上のZr添加でみられる。しかし、Zrの過剰添加は、ステンレス鋼の凝固段階で大型介在物が形成され、熱間加工性,表面性状を低下させる原因となるので、上限を1.00質量%に規定した。
Alは、安定的な窒化物の形成に有効な成分であり、0.03質量%以上で添加効果がみられる。しかし、0.20質量%を超える過剰添加は、表面性状の低下を招くので好ましくない。
Vは、安定的な窒化物の形成に有効な成分であり、0.01質量%以上で添加効果がみられる。しかし、Vの過剰添加は加工性の低下を招くので、上限を1.00質量%に規定した。
Bは、安定的な窒化物の形成に有効な成分であり、0.0002質量%以上で添加効果がみられる。しかし、過剰添加すると熱間加工性,表面性状が低下するので、上限を0.0040質量%に規定した。
〔その他の成分〕
前掲成分の外に、製造コスト,耐食性,接触抵抗を大きく阻害しない範囲で他の元素を添加することもできる。たとえば、適量の炭窒化物生成元素や硫化物生成元素を添加すると、溶接部の耐食性が改善される。炭窒化物生成元素としてはそれぞれ0.04〜0.25質量%のTa,Hf、硫化物生成元素としてはそれぞれ0.1質量%以下のMg,Ca,Y,希土類金属が挙げられる。耐酸性の改善に有効なW,Co,Sn等を0.50質量%以下の範囲で添加することもできる。
〔不動態皮膜の組成〕
通常のステンレス鋼では、導電性の低いCrの酸化物を主成分とした不動態皮膜が表面に形成されているので、接触抵抗が高くセパレータへの適用が困難である。酸化物に比較して電気抵抗が著しく低い窒化物を不動態皮膜に含ませると、セパレータ用途に要求されるレベルまで接触抵抗を低減できる。実際、不動態皮膜に含まれているN,Oの原子比N/Oを0.2以上にすると、接触抵抗が大幅に低下する。接触抵抗の低下は、原子比N/Oが0.2以上になると不動態皮膜内で窒化物が相互に連結した構造になり、窒化物の低い電気抵抗が支配的になることによるものと推察される。
しかし、Ti単独の窒化物は、腐食性のセパレータ環境下で不安定である。窒化物の不安定性は、Nb,Zr,V,Al,B等の窒化物と複合させることにより解消される。複合により窒化物の安定性が向上することは、Nb,Zr,V,Al,B等の窒化物がセパレータ環境下でTi単独の窒化物よりも安定であり、表面の自然電位を下げること等によるものと推察される。
〔不動態皮膜の膜厚:1000Å以下〕
窒化物が含まれている不動態皮膜であっても、厚膜になると接触抵抗が増加する。この場合の接触抵抗の増加は、不動態皮膜の膜厚増加に応じた抵抗の上昇に加え、不動態皮膜内で窒化物が相互に連結した構造が崩れやすくなることに起因すると推察される。セパレータ用途に要求される低接触抵抗を確保する上で、不動態皮膜の膜厚を1000Å以下にする必要がある。
〔窒化処理条件〕
複合窒化物を含む不動態皮膜は、窒素含有雰囲気中でステンレス鋼を加熱する窒化処理により形成される。窒化処理は、ステンレス鋼板の製造過程で、或いはセパレータ形状に加工した後の何れでも良い。
目標とする複合窒化物を安定的に形成するため、加熱雰囲気の窒素分圧を0.05気圧以上にしている。窒素以外の成分には、水素,アルゴン等の非酸化性ガスが使用される。また、加熱雰囲気の露点が高いと窒化反応より酸化反応が優先的に進むので、安定的な複合窒化物の形成のため加熱雰囲気の露点を-30℃以下に調整する。
加熱温度,加熱時間は、素材であるステンレス鋼の成分に応じた再結晶特性や機械的性質を考慮し、目標とする不動態皮膜が形成される条件下で定められる。通常は、著しい結晶粒の粗大化が生じない900〜1100℃の温度範囲,0〜30秒の均熱時間の範囲が好ましい。
-接触抵抗の及ぼす成分,窒化処理条件の影響調査-
表1のフェライト系ステンレス鋼を実験室の真空溶解炉で溶製し、鋳造,熱間圧延した後、焼鈍・酸洗及び冷間圧延を繰り返し、最終板厚:0.1mmの冷延板を作製した。ただし、表1に掲げた成分以外に関しては、Cを0.006〜0.0018質量%,Pを0.0026〜0.032質量%,Sを0.002〜0.003質量%,Nを0.012〜0.018質量%の範囲に調整した。
Figure 2005293982
各冷延板を表2の条件で窒化処理することにより、冷延板表面に不動態皮膜を生成させた。
Figure 2005293982
窒化処理で生成した不動態皮膜の膜厚,組成を調査すると共に、窒化処理直後の接触抵抗及びセパレータ環境を想定した酸浸漬試験後の接触抵抗を測定した。酸浸漬試験には80℃,100ppmH2SO4+100ppmHFの酸液を用い、試験片を酸液に300時間浸漬した。
接触抵抗ρ'は、50mm角の窒化処理剤をカーボンペーパに接触させ、面圧:5kgf/cm2を加えたときの接触抵抗を四端子法で測定した抵抗値をR(mΩ)とし、試験片の断面積S(cm2)との積ρ'=R×S(mΩ・cm2)として算出した。
不動態皮膜に含まれる各元素の化学的状態は、XPS(X線電子分光法)で分析した。
不動態皮膜の膜厚及びN,Oの原子比N/Oは、TEM(透過電子顕微鏡)及びEDX(エネルギー分散X線分光法)で求めた。具体的には、機械研磨,イオンシニングによりTEM用断面試料を作製した後、加速電圧:300kV,40万倍,明視野像の条件でTEM観察することにより不動態皮膜の膜厚を測定した。また、不動態皮膜の厚み方向中央部の組成をEDX分光分析することにより、N,Oの原子濃度を求めた。
表3-1,3-2の調査結果にみられるように、基材のステンレス鋼及び不動態皮膜が本発明で規定した成分条件を満足すると、目標とする10mΩ・cm2以下の低い接触抵抗を示した。Ti単独添加鋼でも、初期の接触抵抗は低レベルであったが、酸浸漬試験後には接触抵抗が著しく上昇していた。この結果から、Ti単独の窒化物を不動態皮膜に含ませるだけでは接触抵抗が低位に安定せず、Nb,Al,Zr,V,Bの窒化物を複合させることによって接触抵抗の低位安定が可能になることを理解できる。
Figure 2005293982
Figure 2005293982
実施例1で目標とする低接触抵抗が得られた材料から表2の条件Cで窒化処理した試験Nos.1,2,7(比較例)及び試験Nos.5,11(本発明例)の5種を選び、高さ:0.4mmのガス流路をもつセパレータ形状にプレス加工した。作製されたセパレータを燃料電池に組み込み、露点:90℃の加湿水素を燃料極側に、空気を酸化極側に送り込みながら0.5A/cm2の定電流条件で燃料電池を稼動した。
初期の電池出力は、何れのセパレータを組み込んだ燃料電池でも0.63〜0.65Vであった。六ヶ月間の連続運転中、二カ月おきに出力電圧を測定し、出力電圧低下度(%)=(各経過期間における電圧/初期電圧)×100として出力電圧低下度を算出した。また、連続運試験終了後に燃料電池を解体してセパレータを取り出し、セパレータの腐食状態,接触抵抗を調査した。
表4の調査結果にみられるように、Cr量が本発明で規定した範囲を外れる試験No.1を除きセパレータはほとんど腐食していなかった。Ti単独添加鋼から作製された試験No.2,7のセパレータでは、腐食が生じなかったものの接触抵抗が上昇し、出力低下が生じていた。これに対し、TiとNb,Al,Zr,V,Bとの複合窒化物を含む不動態皮膜を生成させた試験Nos.5,11のセパレータでは、実質的な接触抵抗の上昇,出力低下がみられなかった。この対比結果から、窒化チタンに加えてNb,Al,Zr,V,B等の窒化物を含む不動態皮膜が形成されたステンレス鋼製セパレータの使用により、燃料電池の耐久性が向上することが判る。
Figure 2005293982
以上に説明したように、Tiの窒化物に加えNb,Al,Zr,V,B等の窒化物を含む不動態皮膜が形成されたフェライト系ステンレス鋼は、燃料電池内の湿潤な酸性環境においても優れた耐溶出性,耐食性を呈し、低位に安定した接触抵抗を示す。そのため、該ステンレス鋼板を素材とするセパレータを組み込んだ燃料電池は耐久性が向上し、長期間にわたって高発電効率を維持できる。このステンレス鋼は、水素ガスを燃料に使用する燃料電池に限らず、メタノール溶液,有機ハライド等を燃料とする燃料電池にも適用できる。また、長期的な低接触抵抗,高耐食性を活用し、プラグ,端子,スイッチ等の電気接点材料にも適用可能である。
固体高分子膜を電解質に用いた燃料電池の内部構造を示す断面図 同燃料電池の分解斜視図
符号の説明
1:イオン交換膜 2:触媒電極層(酸化極) 3:触媒電極層(燃料極) 4:ガスケット 5:セパレータ 6:酸化性ガスoの供給口 7:酸化性ガスoの排出口 8:燃料ガスgの供給口 10:燃料ガスgの排出口9: 10:セパレータに形成した溝

Claims (3)

  1. Nb,Al,Zr,V,Bの窒化物の一種又は二種以上とTiの窒化物とを含み、N,Oの原子比N/Oが0.2以上,膜厚:1000Å以下の不動態皮膜がステンレス鋼基材の表面に形成されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼。
  2. C:0.020質量%以下,Si:0.50質量%以下,Mn:0.50質量%以下,P:0.020〜0.080質量%,S:0.005質量%以下,Cr:16〜40質量%,Mo:2.50質量%以下,N:0.020質量%以下,Ti:0.03〜1.00質量%を含み、更にNb:0.03〜1.00質量%,Zr:0.03〜1.00質量%,V:0.01〜1.00質量%,Al:0.03〜0.50質量%,B:0.0002〜0.004質量%の一種又は二種以上を含む請求項1記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼。
  3. 不動態皮膜が窒素分圧:0.05気圧以上,露点:-30℃以下の雰囲気下で加熱する窒化処理により形成されている請求項1記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼。
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