JP2007191763A - 固体高分子型燃料電池セパレータ用オーステナイト系ステンレス鋼及び燃料電池セパレータ - Google Patents

固体高分子型燃料電池セパレータ用オーステナイト系ステンレス鋼及び燃料電池セパレータ Download PDF

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学 奥
Kazu Shiroyama
和 白山
Naohito Kumano
尚仁 熊野
Keiji Izumi
圭二 和泉
Yoshikazu Morita
芳和 守田
Shinichi Kamoshita
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Abstract

【課題】耐溶出性に優れ低い表面接触抵抗を長期にわたって維持する固体高分子型等の燃料電池のセパレータに適したオーステナイト系ステンレス鋼及び燃料電池セパレータを提供する。
【解決手段】Crを16.0〜35.0質量%を含み、表面に窒化物として存在しているCr,Nb,Ti,Al,Zr,V,Bの一種以上が総量で3原子%以上含まれ、酸化物を構成しているSiとMnの総量(Si+Mn)が50原子%以下である不動態皮膜を有しているオーステナイト系ステンレス鋼を固体高分子形燃料電池セパレータとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車や家庭用コージェネレーションシステム等に用いられる固体高分子型燃料電池のセパレータとして使用されるステンレス鋼及びそれを使用した燃料電池セパレータに関する。
燃料電池にはリン酸型燃料電池,溶融炭酸塩型燃料電池,固体高分子型燃料電池,固体電解質型燃料電池等がある。
なかでも、固体高分子型燃料電池(以下、PEFC)は、CO2,NOx,SOx等の排出がほとんどなく、発電効率が非常に高い。さらに、100℃以下の温度で動作可能であり、短時間でも起動できる利点もあるため、車両用動力源を初め、定置用,モバイル機器用等の電源として適用されつつある。
PEFCの基本的構成を図1,2に示す。図1,2に示すような電池の最小ユニットを単セルと称す。各用途に適用されるPEFCには、要求される電力を取り出すために単セルを数十から数百組み合わせたスタックが使用されている。
PEFCは、プロトン交換基をもつ固体高分子の樹脂からなるイオン交換膜がプロトン導電性電解質として機能することを利用しており、イオン交換膜の一側に水素等の燃料ガスを流し、他側に空気,酸素等の酸化性ガスを流す構造になっている。
具体的には、図1に示すように、両側に酸化極2及び燃料極3が接続されたイオン交換膜1の両面にガスケット4を介してセパレータ5を対向させて単セルを構築している。
そして、酸化極2側のセパレータ5には空気等の酸化性ガスoの供給口6及びその排出口7が形成され、燃料極3側のセパレータ5には水素等の燃料ガスgの供給口8及びその排出口9が形成されている。また、図2に示すように、酸化性ガスo,燃料ガスgの導通,均一分配のため、複数の溝10がセパレータ5に形成されている。
PEFCの燃料として用いられる水素は、イオン交換膜1の導電性を高めるため、通常、90℃前後に加温された温水を通過させる方法等によって加湿されている。酸化極2側に送り込まれる酸化性ガスoも加湿される場合がある。したがって、セパレータ表面は高湿度の雰囲気に曝される状態になっている。また、イオン交換膜1の樹脂成分が分解し、SO4 2-,F-等の反応生成物がセパレータ5の表面に付着するようになる。さらに、セパレータ材に腐食や溶出が生じると、セパレータ5から溶け出した金属イオンによりイオン交換膜1の分解が促進されたり、電極の触媒が汚染されたりすることがある。そして、これらの現象が、PEFCの出力低下や耐久性低下の原因となっている。
したがって、セパレータ材には、高湿度の酸性環境下で耐溶出性,耐食性に優れていることが要求される。
多数のセルを積層するPEFCの構造では、セパレータ5の表面接触抵抗が発電効率に大きな影響を及ぼす。表面接触抵抗が高いと電池の内部損出が大きくなって出力が低下することになる。このため、セパレータ材には、表面接触抵抗が低いことも要求される。
このように、セパレータ材には、化学的な安定性及び低接触抵抗が要求されている。このため、従来、カーボンブロックを切り出して所定形状に成型したものや、圧縮成型したカーボン樹脂等が用いられてきた。
しかしながら、カーボン素材の使用は、加工費用が高くなるばかりでなく、板厚を薄くすることが困難なためにPEFCを軽量化できない等の問題があった。
一方、高湿度の酸性環境下で耐溶出性,耐食性に優れているために、ステンレス鋼がセパレータとして使用されようとしている。通常のステンレス鋼は、クロムの酸化物を主とする不動態皮膜で表面が覆われているために優れた耐食性を有している。しかしながら、不動態皮膜で覆われているため接触抵抗が高くなっている。
このため、ステンレス鋼をPEFC用のセパレータとして用いるに当っては、接触抵抗を下げる必要がある。
例えば、特許文献1に見られるように、Al,V,Sn等を含むTiN皮膜をスパッタリングやアークイオンプレーティング法でステンレス鋼表面に形成したセパレータが知られている。また、特許文献2に見られるように、所定形状に加工したTi添加のステンレス鋼を窒素含有雰囲気で加熱することにより、窒化チタン層を鋼板表面に形成したステンレス鋼製セパレータも知られている。
特開2002−75398号公報 特開2003−331861号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、Al,V,Sn等をTiN皮膜に含ませることにより燃料電池使用中にTiN皮膜の酸化,ひいては接触抵抗の上昇を抑えることができているが、コストが非常に高い処理を必要とするため実用的でない。
また、特許文献2で提案されている窒素含有雰囲気での加熱処理は、スパッタリングやアークイオンプレーティング法に比較して製造コスト面では有利であるが、Tiのみの窒化物で皮膜を形成しているので腐食性環境における安定性が低く、燃料電池内で窒化チタンが溶解,変質しやすい。そのため、接触抵抗の上昇や溶出金属イオンによるイオン交換膜,触媒電極層等の汚染、ひいては燃料電池の出力低下が避けられない。また、セパレータ形状に加工した後に窒素含有雰囲気中で加熱窒化処理することは、生産コストを上げるばかりでなく、加熱・冷却時の熱応力によって加工形状が劣化することもある。
ところで、ステンレス鋼をセパレータに適用する際には、前記したような電池の内部汚染を防止できる耐溶出性や低い接触抵抗が要求させるばかりでなく、細かなセパレータ形状への加工が可能な加工性も要求される。
一般的に、フェライト系ステンレス鋼は高価なNiを含まない点で優位であるが、加工性が低いという問題がある。一方、金属材料をセパレータに適用する場合、軽量化やコンパクト化の観点から板厚0.1〜0.3mmのものが用いられ、0.3〜0.8mm前後の深さのガス流路がプレス加工により形成されている。フェライト系ステンレス鋼の場合、上記の板厚では伸びは約30%程度であり、量産体制でプレス加工を行うと割れが発生して歩留りが低下する虞が多分にある。
本発明は、このような問題を解消するために案出されたものであり、加工性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼を素材とし、その表面に導電性の良好な不動態皮膜を形成することにより、長期間にわたって金属イオンの溶出が抑制され、しかも表面接触抵抗が低位に維持された燃料電池セパレータを得ることを目的とする。
本発明の固体高分子型燃料電池セパレータ用オーステナイト系ステンレス鋼は、Cr:16.0〜35.0質量%を含むオーステナイト系ステンレス鋼であって、表面に窒化物として存在しているCr,Nb,Ti,Al,Zr,V,Bの一種以上が総量で3原子%以上含まれ、酸化物を構成しているSiとMnの総量(Si+Mn)が50原子%以下である不動態皮膜を有していることを特徴とする。
このオーステナイト系ステンレス鋼としては、C:0.050質量%以下,Si:1.50質量%以下,Mn:2.00質量%以下,P:0.020〜0.080質量%,S:0.005質量%以下,Ni:8.0〜30.0質量%,Cr:16.0〜35.0質量%を含み、さらに、Nb:0.05〜1.00質量%,Ti:0.05〜1.00質量%,Al:0.04〜2.00質量%,Zr:0.05〜1.00質量%,V:0.05〜1.00質量%,B:0.05〜1.50質量%の一種又は二種以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなるものが好ましい。
このオーステナイト系ステンレス鋼としては、さらに、Mo:0.30〜5.00質量%,Cu:0.20〜4.00質量%,W:0.20〜3.00質量%の何れか一種以上を含むものが好ましい。
そして、上記のオーステナイト系ステンレス鋼を素材として、固体高分子型燃料電池のセパレータが作製される。
本発明により提供される燃料電池用ステンレス鋼製セパレータは、耐溶出性を向上させ、さらに表面に窒化物を含む不動態皮膜を形成させることにより表面接触抵抗を低くすることができている。このため、黒鉛製セパレータと比較して加工性及び生産性が格段に優れた燃料電池用セパレータとなり、複数の燃料電池セルをスタックした状態にあっても、表面接触抵抗に起因する内部損失が少なく、発電効率の高い燃料電池が得られる。また、金属イオンの溶出も少ないために電池内汚染を低減でき、総運転時間が数万時間にも達する家庭用定置型燃料電池のセパレータへも適用が期待できる。
ステンレス鋼表面の不動態皮膜は、優れた耐食性の発現に有効であるものの、比電気抵抗が高いCrの酸化物及び水酸化物からなる、表面接触抵抗は本質的に高い。
本発明者等は、金属イオンの溶出を抑制する適正成分系を探索するとともに、酸化物よりも導電性の高い窒化物を皮膜中に導入すること、さらには酸洗処理を施して酸化物を低減することにより本発明に至った。
以下にその詳細を説明する。
まず、オーステナイト系ステンレス鋼に含まれる合金成分,含有量等を説明する。
C:0.050質量%以下
オーステナイト系ステンレス鋼の加工性に悪影響を及ぼす成分であり、特に多量のCr,Moを含む合金系では加工性を確保するため可能な限りCを低減することが好ましい。そこで、C含有量の上限を0.050質量%に規定した。さらに高レベルの加工性が要求される場合、C:0.010質量%以下が好ましい。
Si:1.50質量%以下,Mn:2.00質量%以下
Si,Mnは窒化物含有皮膜を形成する際に、酸化物を形成して表面接触抵抗を著しく増加させる。また、Mnは水溶性のある介在物を形成した耐食性を低下させる。このため、これらの元素は低いほど好ましく、それぞれ1.50質量%,2.00質量%を上限とする。
P:0.020〜0.080質量%
高湿度,酸性環境においてセパレータの耐食性,耐全面腐食性,耐溶出性を顕著に改善し、接触抵抗を低下させる作用も呈する。P添加の効果は、0.020質量%以上で発現するが、0.026質量%以上が好ましい。しかし、P添加量の増加に伴い素材が硬質化して加工性に支障をきたすので、P含有量の上限を0.080質量%に規定した。耐溶出性,低接触抵抗を高レベルで両立させる上では、0.026〜0.060質量%の範囲でP含有量を選定することが好ましい。
S:0.005質量%以下
Sは、ステンレス鋼の耐食性及び熱間加工性を低下させる元素であり、本成分系においても可能な限り低いほうが好ましい。このため、Sは0.005質量%以下に規制した。
Ni:8.0〜30.0質量%
Niはオーステナイト相形成に必要な成分である。本用途における耐食性の面から必要なCr量に対し、8.0質量%以上は必要である。Niを多量に含有させると耐溶出性が劣化するため、上限を30.0質量%に規定した。
Cr:16.0〜35.0質量%
セパレータ環境における耐溶出性を確保し、導電性を増すために不動態皮膜中に窒化物を安定化させるためには、Crは、16.0質量%以上が必要である。Cr含有量が増加するほど耐溶出性は向上するものの、ステンレス鋼製造時の熱間加工性やデスケール性の低下を招くため、上限を35.0質量%に規定した。
Nb:0.05〜1.00質量%,Ti:0.05〜1.00質量%,Al:0.04〜2.00質量%,Zr:0.05〜1.00質量%,V:0.05〜1.00質量%,B:0.05〜1.50質量%
何れも窒素と反応しやすい元素である。窒化物形成による接触抵抗低減のために、何れか一種又は二種以上を積極的に添加される。また、耐溶出性向上にも有効で、各々、以下の理由で規制される。
Nb,Tiは0.05質量%以上の添加でCやNの固定作用が有効に作用するとともに、固溶しているNb,Tiが窒化物を形成して接触抵抗を低減する。しかし、1.00質量%を超える添加では、加工性が低下する。
Alは、窒化物を形成して接触抵抗を下げるために0.04質量%は必要である。しかし、2.00質量%を超えると熱間加工性が低下する。このため、Alの添加量は0.04〜2.00質量%とする。
Zrは、窒化物形成のために最低0.05質量%以上必要である。しかし、1.00質量%を超えると粗大な介在物が形成されるために製造性が困難となる。このため、Zrの添加量は0.05〜1.00質量%とする。
Vは、窒化物形成のために0.05質量%以上が必要である。しかし、Vの過剰添加は熱間加工性の低下を招くので、上限を1.00質量%に規定した。
Bは、窒化物形成のために0.05質量%以上が必要である。しかし、過剰に添加すると熱間加工性が低下するので、上限を1.50質量%に規定した。
以上の成分の他に、耐溶出性,耐食性向上のためにCrに加え必要に応じてMo,Cu,Wが添加される。
Mo:0.30〜5.00質量%,Cu:0.20〜4.00質量%,W:0.20〜3.00質量%
耐溶出性,耐食性向上の作用を発現させるためには、Mo,Cu及びWはそれぞれ0.30質量%,0.20質量%及び0.20質量%を必要とする。しかし、過剰な添加は熱間加工性の低下や、場合により耐食性低下につながるため、上限をそれぞれ上記値に規定した。
次に、低接触抵抗を発現させるための不動態皮膜の特徴点について説明する。
不動態皮膜の組成
通常のステンレス鋼では、導電性の低いCrの酸化物を主成分とした不動態皮膜が表面に形成されているので、接触抵抗が高くセパレータへの適用は困難である。本発明者等が予備実験を積み重ねた結果、ステンレス鋼の表面に形成された不動態皮膜の接触抵抗を、セパレータへの適用を可能にするほどに低下させるためには、窒化物として存在しているCr,Nb,Ti,Al,Zr,V,Bの一種以上が総量で3原子%以上含まれ、酸化物を構成しているSiとMnの総量(Si+Mn)が50原子%以下となった不動態皮膜とする必要があることがわかった。
なお、皮膜の組成は、最表層の約30Åまでの深さにおける各原子の存在割合を示したものである。表面をESCA(X線光電子分光法)により分析し、各金属成分を酸化物,窒化物,金属状態に分離して解析した結果から求めた。
窒化物が上記濃度以上に皮膜中に含まれる場合、皮膜内において窒化物が連結して皮膜の導電性が増すものと考えられる。ただし、窒化物を皮膜中へ多く含ませても、Si,Mnの酸化物が多い場合は接触抵抗が増大するため、酸化物を構成している(Si+Mn)は50原子%以下に規制される。Si,Mnの酸化物が多く存在する場合には、皮膜内における窒化物の連結状態が悪くなり、抵抗が増加すると考えられる。
不動態皮膜の膜厚:1000Å以下
窒化物が含まれている不動態皮膜であっても、厚膜になると接触抵抗が増加する。この場合の接触抵抗の増加は、不動態皮膜の膜厚増加に応じた抵抗の上昇に加え、不動態皮膜内で窒化物が相互に連結した構造が崩れやすくなることに起因すると推察される。セパレータ用途に要求される低接触抵抗を確保する上では、不動態皮膜の膜厚は1000Å以下にすることが好ましい。
続いて、上記のような不動態皮膜の形成方法について説明する。
窒化処理条件
複合窒化物を含む不動態皮膜は、窒素含有雰囲気中でステンレス鋼を加熱することにより形成される。窒化処理は、ステンレス鋼板の製造過程中、或いはセパレータ形状に加工した後の何れにおいても可能である。
窒化処理は、窒素を5体積%以上含み、残りがアルゴンや水素等の非酸化性ガスからなる雰囲気で行なう。また、加熱雰囲気の水分が多いと酸化の方が大きく進むため、加熱雰囲気の露点は−35℃以下にすることが好ましい。
加熱温度,加熱時間は、素材であるステンレス鋼の成分に応じて結晶粒度や機械的性質も考慮し、上で述べた不動態皮膜が形成される条件下で定められる。通常は、400〜1150℃の温度範囲,0〜10時間の均熱時間の範囲で行われる。
酸洗処理
上記窒化処理によって、接触抵抗はセパレータへ適用できるまでのレベルまで低減できるが、さらに安定して接触抵抗を低下させて長時間の低抵抗を維持するためには、窒化処理の後に酸洗処理を施すことが望ましい。酸洗処理を施すことにより、不要なSi,Mnの酸化物を溶解除去し、窒化物の濃縮や連結状態を改善し、低い接触抵抗が安定して得られる。
酸洗処理では、硫酸,塩酸,フッ酸等の非酸化性の酸を用いる。酸濃度:3〜20%,温度:40〜60℃,酸浸漬時間:1〜15分の範囲内で、各鋼の成分や酸洗前皮膜の組成に適した条件で実施する。上記下限界の条件では酸洗の効果が現れず、また上限の条件を超えると、窒化物も溶解される。
表1に示すオーステナイト系ステンレス鋼を真空溶解炉で溶製し、鋳造,熱間圧延した後、焼鈍・酸洗及び冷間圧延を繰り返し、最終板厚:0.2mmの冷延板を作製した。ただし、表1に掲げた成分以外に関しては、Cを0.02〜0.05質量%,Nを0.02〜0.06質量%,Pを0.0025〜0.0040質量%,Sを0.007〜0.0037質量%の範囲に調整した。
得られた冷延板を25%N2+75%H2,露点−52℃の雰囲気にて、1000℃×3時間の窒化処理を行なった。一部の供試材については、窒化処理後にフッ酸,硫酸,塩酸にて酸洗処理を行なった。
そして、窒化処理後又は酸洗処理後に、不動態皮膜に含まれている窒化物の種類及び窒化している金属の濃度並びに酸化物として存在しているSiとMnの濃度を、ESCAを用いて分析した。
Figure 2007191763
さらに、窒化処理の後,酸洗処理の後、及びセパレータ環境を想定した耐溶出性試験の後の接触抵抗を測定した。
なお、接触抵抗は次の方法で測定した。すなわち、カーボンペーパを50mm角の試験片の表面に接触させ、5kgf/cm2の面圧を加えたときの接触抵抗値を四端子法で測定した。そして、接触抵抗測定ρ'(mΩ・cm2)は、測定した抵抗値をR(mΩ)とし、試験片断面積S(cm2)を用いて、ρ'=R×S(mΩ・cm2)より算出した。
また、耐溶出性試験は、燃料電池内において、イオン交換膜が分解し、SO2-やF-を含む液に接した場合を想定し、酸浸漬試験により評価した。酸浸漬試験には、80℃,100ppmH2SO4+100ppmHFの酸液を用い、試験片を酸液に500時間浸漬した。
窒化処理後及び酸洗処理後の不動態皮膜の組成並びに耐溶出試験後の接触抵抗を表2に示す。
表2の調査結果にみられるように、本発明の組成の皮膜が形成された鋼は耐溶出試験後も安定した接触抵抗を示した。さらに窒化処理後に酸洗処理を行なったものは特に低い抵抗を維持できていた。
これに対して、Cr濃度が低く、皮膜中に窒化物が含まれていないNo.1は、初期の段階から接触抵抗は高く、しかも素材ステンレス鋼の耐食性が十分でないために酸浸漬試験後に接触抵抗が著しく上昇していた。皮膜中に窒化物を含ませていてもCr濃度の低いNo.2は、素材ステンレス鋼の耐食性が十分でないために初期の接触抵抗は低レベルであったが、酸浸漬試験後には接触抵抗がかなり上昇していた。
また、Cr濃度が高くても皮膜中に含ませた窒化物の量が少ないNo.4,5は所望の低接触抵抗は得られなかった。さらに、皮膜中に十分な量の窒化物を含ませても、素材の過剰な含有Si,Mnによって皮膜中のSi,Mnの酸化物量が多くなったNo.8,9は、接触抵抗がかなり高くなっていた。
Figure 2007191763
次に、これらの窒化処理及び酸洗処理したステンレス鋼の一部を、プレスにより0.4mm高さのガス流路を形成したセパレータを作製した。
作製されたセパレータを単セルに装着し、燃料極ガスを水素、酸化極ガスを空気として発電させた。加湿は、燃料極(水素極)のみに露点80℃で行い、電池反応で得られた凝縮水を循環させ、加湿側に再供給する構造とした。なお、セパレータ以外の配管や純水容器にはフッ素樹脂を用い、加湿用純水の容量は5リットルとした。そして、蒸発等により少なくなった純水は300時間毎に補給した。さらに、2500時間で純水を全て取り替えるとともに、純水中の溶出金属イオン量をICP−MASS法にて分析した。
0.3A/cm2の定電流運転において、初期の電池出力は何れも0.70〜0.73Vであった。10000時間の連続運転を行い、1000時間当りの出力低下(mV)にて電池の性能劣化度を評価した。
さらに、試験終了後のステンレス鋼セパレータの腐食状態を目視観察した。
表3に、セパレータの電池試験前後の接触抵抗,1000時間当りの出力低下,加湿器中の溶出金属イオン量及びセパレータの腐食状態を示す。
本発明のステンレス鋼を用いたセパレータの接触抵抗は、10000時間の電池運転の後にあっても上昇は低く、溶出量は少なく腐食も生じていなかった。また電池の出力低下は非常に小さかった。
一方、No.2のセパレータは、初期の接触抵抗は低いものの、長時間の運転で金属が溶出し、しかも赤さびが発生していた。さらに接触抵抗が上昇し、燃料電池の出力が大幅に低下していた。
以上の結果から、本発明のステンレス鋼をセパレータに用いることにより、燃料電池の出力を高い状態で維持することができ、燃料電池の高耐久化が期待できることがわかる。
Figure 2007191763
固体高分子膜をイオン交換膜に用いた燃料電池の内部構造を示す断面図 同燃料電池の分解斜視図
符号の説明
1:イオン交換膜 2:酸化極 3:燃料極 4:ガスケット 5:セパレータ6:酸化性ガスの供給口 7:酸化性ガスの排出口 8:燃料ガスの供給口
9:燃料ガスの排出口 10:セパレータに形成した溝
g:燃料ガス及びその流れ o:酸化性ガス及びその流れ

Claims (4)

  1. Cr:16.0〜35.0質量%を含むオーステナイト系ステンレス鋼であって、表面に窒化物として存在しているCr,Nb,Ti,Al,Zr,V,Bの一種以上が総量で3原子%以上含まれ、酸化物を構成しているSiとMnの総量(Si+Mn)が50原子%以下である不動態皮膜を有していることを特徴とする固体高分子型燃料電池セパレータ用オーステナイト系ステンレス鋼。
  2. オーステナイト系ステンレス鋼は、C:0.050質量%以下,Si:1.50質量%以下,Mn:2.00質量%以下,P:0.020〜0.080質量%,S:0.005質量%以下,Ni:8.0〜30.0質量%,Cr:16.0〜35.0質量%を含み、さらに、Nb:0.05〜1.00質量%,Ti:0.05〜1.00質量%,Al:0.04〜2.00質量%,Zr:0.05〜1.00質量%,V:0.05〜1.00質量%,B:0.05〜1.50質量%の一種又は二種以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなるものである請求項1に記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用オーステナイト系ステンレス鋼。
  3. オーステナイト系ステンレス鋼は、さらに、Mo:0.30〜5.00質量%,Cu:0.20〜4.00質量%,W:0.20〜3.00質量%の何れか一種以上を含むものである請求項2に記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用オーステナイト系ステンレス鋼。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼を素材として形作られている固体高分子型燃料電池セパレータ。
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