JP2005292413A - 環境対応型電子写真感光体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結合剤樹脂として、少なくとも端末の1つがメチレン基の炭素原子と結合しているPPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂を用いることにより、上記の課題を解決する。
【選択図】なし
Description
さらに詳しくは、特定のPPE樹脂の少なくとも1つの端末基を装飾することにより塩化メチレン等のハロゲン系溶剤、キシレン、トルエン等の芳香族系溶剤を用いることなしに、電子写真性能(特に繰り返し特性)に優れた感光体作成に関する。更には末端基にビニル基導入することにより、硬化作用をもたせ、感光体の機械的強度を向上させることに関する。
現在、大部分の複写機やプリンターなどにおいて、電子写真感光体(以下、「感光体」と略称する)として、OPC(Organic Photo Conductor )といわれる光導電性の有機化合物が用いられている。特に、OPC材料の性能向上が、昨今のコピーの一般大衆化時代をもたらしている。
しかしながら、従来からOPCは機能性の向上を第一として開発されてきた。この反面、感光体の製造において用いられる化学物(溶剤)の環境に対する配慮が欠けている面があった。
従来から、感光体の電荷発生材料および電荷輸送材料などの材料開発のポイントは、感光体の機能性の向上及び耐刷枚数の向上が第一であった。
これらの材料に求められる主な特性としては、高感度、高帯電性、光劣化および熱劣化が少ないこと、ならびに電荷発生効率または電荷輸送効率が大きいことなどが挙げられる。 更には耐刷枚数向上のため機械強度(耐磨耗性)の向上についてもその対応が必要であった。
一方、感光体の感光層を形成する結合剤樹脂(マトリックス樹脂)についても、電荷発生材料や電荷輸送材料と同様に、感光体の機能性、耐磨耗性を重視する見地から、既存のいわゆる熱可塑性のエンジニヤリング樹脂を中心として開発が行われてきた。
上記開発において、熱可塑性のエンジニヤリング樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂等のいわゆるポリエステル系のエンジニヤリング樹脂が用いられてきている。特にポリカーボネート樹脂は電荷輸送層の結合剤樹脂として感光体の機械的強度、電荷保持性、帯電性等の面より現在の感光体において、よく用いられている。これら樹脂本体については、近年DVD,CD等の基板対応の透明材料などにも用いられている安全、衛生面において、更には透明性、対候性においても問題のない樹脂である。しかしながら従来の感光体で用いられているこれらポリエステル系のエンジニヤリング樹脂は溶解性が悪くこのため、環境上問題のある特定のハロゲン含有炭化水素系有機溶剤(以下、「ハロゲン系溶剤」と略称する)またはテトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤を用いているのが現状である。当然これらポリエステル系エンジニヤリング樹脂の分子量の低いもの(1000から5000)、また特定の構造からの化学処理(長鎖のアルキル基の側鎖への導入)をすることにより、ある程度は溶解性を向上させることも出来るが、これら対応樹脂を使用した場合、機械的な強度の低下、電荷輸送材料の析出、不均一化、これによる帯電不足、感度低下等の問題点が生じてくる。
一方テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤は肝臓障害、エーテル結合による酸化爆発の危険性、更には吸水作用の大きさに基づく乾燥時での空気中の水分吸収による膜特性の劣化現象をもたらし易い。
また、本発明のPPE樹脂の一部については加熱することにより、架橋反応が起こりこれにより耐摩耗性に優れた感光体を得ることができた。
これらのことより、本発明の感光体は、複写機やプリンター用の高性能感光体として好適に用いることができた。
一般式(1)
特に一般式(2)の樹脂の中でも、Xがビスフェニレン基(炭素原子、酸素原子を中心として同じ置換基が2個ある。)で示される重量分子量が数千から1万程度のPPE樹脂が、溶解性、電子写真特性等からも好ましいものである。溶解性の向上と化学構造との関係では、一般式(3)
次に、代表的な本発明のPPE樹脂の合成について具体的に説明する。
なお、数平均分子量および重量平均分子量の測定にゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
得られたものは、IRの分析によりフェノール性水酸基の吸収ピーク(3600cm-1)が消滅していた。代わりに1780cm-1にカルボニルの吸収が生じた。
このようにして得られたPPE 樹脂両方のIR分析からフェノール性水酸基の吸収ピーク(3600cm-1)が消滅していた。また夫々新たに1780及び1760 cm-1にカルボニル基の吸収が認められた。
更に、バイルシュタイン試験によりハロゲン原子は存在していなかった。
またバイルシュタイン試験により塩素原子は存在していなかった。
このようにして得られたPPE 樹脂のIR分析からフェノール性水酸基の吸収ピーク(3600cm-1)が消滅していた。同時に1680と1750cm-1にカルボン酸及びエステル結合からのカルボニル基のピークが発現していた。
バイルシュタイン試験により両方ともハロゲン原子は存在していなかった。
またPPE樹脂をエタノールでエステル化することによりPPE樹脂(F)がえられる。
バイルシュタイン試験により塩素原子は存在していなかった。
上記の合成例からもわかる通り、ケトン系溶剤に易溶であり、特に非水和性であるメチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、更には酢酸エチル、酢酸プロピル等に易溶であることはより好ましいといえる。従来よく使用されている塩化メチレン、2塩化エタン、テトラヒドロフラン、モノクロロベンゼン等にも良好な溶解性を有している。
これらの有機溶剤は2種以上を混合して用いることもでき、塗布溶液の濃度、乾燥条件および必要とする感光層の被膜性により適宜選択される。
電荷発生層は、目的とする波長域において光エネルギーにより電荷を効率良く発生する機能を有し、電荷輸送層は、その下層の電荷発生層から発生した電荷を効率良く輸送する機能を有する。電荷輸送材料自体が高分子タイプの化合物であれば結合剤樹脂を用いる必要はないが、電荷輸送効率などの性能面で低分子タイプを超える高分子タイプの輸送化合物は見出されていない。したがって、電荷輸送層を形成するためには低分子タイプの化合物を用いなければならず、結合剤樹脂が必要不可欠である。
さらには、電荷発生材料と電荷輸送材料を含有する単一層の感光層からなる単層型感光体、あるいは導電性支持体と感光層との間に中間層が設けられた感光体における結合剤樹脂としても用いることができる。
次に本発明の感光体に用いられる他の材料について説明する。本発明の感光体の電荷発生材料としては、公知の化合物、すなわちビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料,結晶構造の違った、無金属フタロシアニン系顔料およびチタニウムフタロシアニン系顔料などのフタロシアニン系顔料などが用いられる。
電荷輸送材料としては、特許等で公知の化合物であるモノヒドラゾン化合物、ビスヒドラゾン化合物、トリフェニルアミン化合物、エナミン化合物更にはこれらが複合した化合物などが用いられる。具体的には、後記の実施例に記載のモノヒドラゾン+ビスエナミン化合物、ジエナミン化合物などが挙げられる。特にエナミンを有する化合物は輸送効率もよくかつ熱安定性にも優れている。
次に本発明の感光体の形成方法について、機能分離型感光体を例に説明する。
電荷発生層は、上記の電荷発生材料をアルコール系、ケトン系、エステル系溶剤に通常分散させ、得られた分散液を導電性支持体上に塗布することにより形成することができる。結合剤樹脂は必ずしも必要ないが、電荷発生材料の分散安定性、更には接着性のため添加することも必要になってくる。このため、添加する割合は30%以下が好ましく基板との接着から官能基を有する樹脂が好ましく、本発明のPPE樹脂は電荷発生層用樹脂としても好ましい。特にR2が−COOHであるもの(PPE樹脂(E))は分散性、接着性(注入効率性)に優れている。
本発明の樹脂以外でも結合剤樹脂として、公知の結合剤樹脂、例えば共重合体ナイロン、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルおよび塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などを用いることができる。これら樹脂と本発明のPPE樹脂を混合して用いてもよい。これら公知の中でも本発明のPPE樹脂と比較的構造式の近いフェノキシ樹脂が特に好ましい。
電荷発生層における、結合剤樹脂と電荷発生材料との配合割合は、各配合成分の種類および感光体に要求される性能により適宜選択される。電荷発生層の膜厚は通常0.1〜0.5μm程度である。尚、膜厚は電荷トラップ防止の観点より、基本的には、薄いほどよい。
しかし、あまり薄くなると光学濃度が不十分にもなる。
次いで、電荷発生層上に電荷輸送層を形成する。
電荷輸送層は、電荷発生層と同様に公知の方法により形成することができる。
例えば、電荷輸送材料を前記の溶剤(特にメチルエチルケトン、n―ブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸アミル等)に溶解し、これに結合剤樹脂として本発明のPPE樹脂加え、得られた溶液を電荷発生層の場合と同様の方法でシートまたはドラムに塗布し乾燥後、アニールによってPPE樹脂を架橋(三次元)させて、電荷輸送層を形成する。このときより架橋化を促進するために、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウリルパーオキサイド(LPO)、AIBN等の重合開始剤をPPE樹脂に対して1%以下加えてもよい。このことにより本発明のPPE樹脂末端のビニル基が架橋促進に有効に働く。
電荷輸送層の膜厚は、電荷保持膜厚(帯電性)から通常10〜50μm程度である。耐刷性からはより膜厚は厚いほうがよいことはゆうまでもない。
代表的な電荷輸送材料としては、アドバンスト有機マテリアルR&Dリポート(富士キメラ総研)に記載されている。この中でも、特開平6−43674、130697、332204、332205、110229、特開平7−134430、14674号公報等に記載されているモノエナミン、ジエナミン、ビスエナミン化合物が輸送効率の点より好ましい材料である。
電荷発生層および/または電荷輸送層には、必要に応じてレベリング剤や酸化防止剤、トラップ防止剤などの各種添加剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物および有機燐化合物などが挙げられる。トラップ防止剤としては、ナフチルシアナイド、ベンジルシアナイド及びその誘導体等があげられる。レベリング剤としては、花王より市販されているアニオン性、ノニオン性のフッ素系の界面活性剤が代表的なものとして用いられる。
場合により、電荷輸送層上の最表面層として公知の、例えば、熱可塑性あるいは熱硬化性ポリマーを主体とするオーバーコート層を設けることにより、表面の磨耗を防いでもよい。
実施例1
アルミ蒸着膜が形成されたポリエステルフィルム(膜厚80μm)を導電性支持体とした。この上にPPE樹脂(E)を溶解した1%メチルエチルケトン溶液30ccに、電荷発生材料として、下記構造式(1)で表されるビスアゾ顔料0.5gを加えた。得られた溶液をペイントコンディショナー(レッドデェベル社製)にて、直径1.5mmのガラスビーズ100gと共に約30分間分散処理し、篩により濾過してガラスビーズを除いた。得られた分散液を上記導電性支持体上にアプリケーション法により塗布し、60℃で30分加熱乾燥して、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
構造式(1)
また印加電圧:−5KV、除電光200ルックスの条件下において、500回連続して帯電+露光の繰り返しを行い、この時、電位低下、残留電位の上昇について調べた。
この結果、V0 は−630Vであり、VR は−7Vであった。また500回連続して帯電+露光の繰り返し後のV0 は−655V、VR は−25Vであり高感度でかつ安定した繰り返し特性を有する感光体であることが判明した。
合成例2のPPE樹脂(E)の代わりに、PPE樹脂(A)(B)およびXが
構造式(3)
合成例2のPPE樹脂(D)の代わりに、PPE樹脂(C)、(E)、(H)をそれぞれ電荷輸送用結合剤樹脂材料として用いる以外は、実施例1と同様にして、シート状の機能分離型電子写真感光体を得た。得られた感光体の電子写真特性を、実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表2に示す。
いずれの上記感光体シートについて、セロハンテープによる剥離試験において当社の感光体をシール化させたものと比べてもなんら遜色はなかった。
これら各感光体は表2から優れた電子写真特性を示しており、また接着性においても良好であった。特にPPE樹脂(E)を電荷発生層の結合剤樹脂として用いた感光体の電子写真特性(残留電位)は表1及び表2からよい傾向を有している(表1のほうが少しデータがよい傾向を有する。)。
合成例1から3のPPE樹脂及び実施例4で用いたPPE樹脂(AからHまでとD'の9種類)の溶解性について調べた。
溶解性の条件は樹脂1gを溶剤10ccに入れ50℃で超音波により強制的に溶解させた後、この溶液を5℃の冷蔵庫中に一昼夜放置し、各溶液の変化について目視により濁りの発生、及びゲル化変化について調査した。
その結果メタノール以外はすべて溶解性は良好であった。ただn−ブチルアルコールは合成例1のPPE樹脂溶液が白濁ゲル化したが、メチルエチルケトンを5cc加えた系では均一溶液になり、なんら溶解性に問題はなかった。
比較例として現在電荷輸送性樹脂としてよく用いられているポリカーボネートZ(三菱瓦斯化学製)について同様の溶解性について調べた所、トルエン、ジクロロエタン以外は50℃においても溶解しなかった。このことより、本発明のPPE樹脂は毒性面、安全面に問題の少ない溶剤によく溶解することが判った。
Claims (9)
- PPE樹脂中にラジカル重合開始剤を添加することを特徴とする請求項1,2記載の電子写真感光体。
- Yがオルソ位置換の炭素数1から4の低級アルキル基を置換したフェニレン基なるPPE樹脂であることを特徴とする請求項2記載の電子写真感光体。
- Xが4,4'位置換のビフェニレン基、1,4位置換のフェニレン基からなるPPE樹脂であることを特徴とする請求項2記載の電子写真感光体。
- 電荷発生層と電荷輸送層に機能分離構造より構成された電子写真感光体において、電荷輸送層の結合剤樹脂として請求項1から6記載のPPE樹脂を用いることを特徴とする電子写真感光体。
- 電荷発生層と電荷輸送層に機能分離構造より構成された電子写真感光体において、電荷輸送層及び電荷発生層の結合剤樹脂として請求項1から6記載のPPE樹脂を用いることを特徴とする電子写真感光体。
- 電荷発生層と電荷輸送層に機能分離構造から構成された電子写真感光体において、電荷輸送層中にエナミン基を少なくとも1個有する化合物を含有していることを特徴とする請求項7,8記載の電子写真感光体。
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