JP2005247651A - Mn−Co−Zn系フェライト - Google Patents

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Abstract

【課題】Fe2+含有量を減らして比抵抗を高める一方、この比抵抗を低下することなしに、保磁力を大幅に低下したMn−Co−Zn系フェライトを提供する。
【解決手段】Fe2O3:45.0 mol%以上50.0mol%未満、CoO:0.5mol%以上4.0mol%以下、ZnO:15.5 mol%以上24.0mol%以下およびMnO:残部を基本成分とし、フェライト中に含まれるCd,Pb,Sb,AsおよびSeを、それぞれ20massppm未満とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、比抵抗が高くかつ保磁力の低いMn−Co−Zn系フェライトに関するものである。
軟磁性酸化物磁性材料の代表的な例として、Mn−Znフェライトが挙げられる。従来のMn−Znフェライトでは、正の磁気異方性を持つFe2+を約2mass%以上含み、負の磁気異方性を持つFe3+およびMn2+と相殺させることにより、高透磁率材料や低損失材料が得られている。
しかし、Fe2+量を多くすると、Fe3+−Fe2+間での電子の授受が起こりやすくなる結果、比抵抗が非常に小さな値、具体的には0.1Ω・mのオーダーにまで低下してしまうという欠点がある。そのため、使用する周波数領域が高くなると、フェライト内を流れる渦電流による損失が急増する。そのため高周波領域では、Mn−Znフェライトの初透磁率は大きく低下し、損失も増大する。よって、耐用周波数は数百kHz程度が限界である。
従って、MHzオーダーの周波数領域で使用されるフェライトとしては、Ni−Znフェライトが主流になっている。その理由として、Ni−Znフェライトは、Mn−Znフェライトの約1万倍となる、105(Ω・m)以上の非常に高い比抵抗を持つため、渦電流損失による影響が無視でき、高周波領域でも初透磁率が高くかつ低損失という特性が失われにくい、ことが挙げられる。
ところが、Ni−Znフェライトには大きな問題点がある。すなわち保磁力、軟磁性材料は外部磁場の変化に敏感に反応することが求められるため、Hcは小さい方が好ましいが、Ni−Znフェライトは負の磁気異方性を持つイオンによってのみ構成されているため、この保磁力の値が大きくなることである。なお、保磁力については、JIS C2561に規定されている。
また、Ni−Znフェライト以外で比抵抗の大きいフェライトを得る方法として、Mn−Znフェライト中に含まれるFe2+量を減らすことによって比抵抗を上昇させる、というものがある。その一つとして、原料中のFe2O3成分を50mol%未満としてFe2+含有量を減らして比抵抗を高めた、Mn−Znフェライトの開発が行われており、特許文献1、特許文献2および特許文献3等において提案されている。しかし、これらの技術も、正の磁気異方性を持つFe2+の含有量を減らした結果、Ni−Znフェライトと同様に負の磁気異方性を持つイオンのみから構成されることは変わりなく、保磁力の低減という課題は全く解決されていない。
これに対して、特許文献4、特許文献5および特許文献6では、Fe2+以外の正の磁気異方性を持つイオンであるCo2+をさらに添加することが、提案されている。
特開平7−230909号公報 特開2000−277316号公報 特開2001−220222号公報 特許第3418827号明細書 特開2001−220221号公報 特開2001−68325号公報
しかしながら、特許文献4〜6には、保磁力について触れるところがなく、また実際にCo2+の添加によっても保磁力の低減は実現されていなかった。
さらに、実際の製造を鑑みた際に、コスト及び効率の面から劣っているといわざるを得ない。すなわち、特許文献4および5における実施例では、非常に低い酸素濃度雰囲気下で焼成が行われているために、
a)焼成炉の厳密なシール及び雰囲気制御
b)(工業用窒素は最低でも1〜20ppmの酸素を含むため)純窒素の使用
が要求される。これらの規制は、工業化を考えた際に、製造効率およびコストの両面において問題となる。
また、特許文献6の実施例には、ブリッジマン法による単結晶育成についてのみ記載されている。これは、工業化の際の製造効率やコストにおいて、従来の粉末冶金法でフェライトを製造する場合と比較すると、当然ながら大きく劣ったものとなる。
本発明は、上記の問題を有利に解決するものであり、Fe2+含有量を減らして比抵抗を高める一方、この比抵抗を低下することなしに、保磁力を大幅に低下したMn−Co−Zn系フェライトを提供しようとするものである。
さて、フェライト製造の際に課題となるのが、異常粒成長の抑制である。異常粒成長とは、何らかの原因により局部的に粒成長のバランスが崩れた際に起こる、粉末冶金法を用いた製造時にしばしば見られる現象であり、この異常成長粒内には、不純物や格子欠陥等の磁壁の移動を大きく妨げる物質が混入しているために、これが磁壁の移動を妨害する結果、保磁力が上昇することになる。同時に、結晶粒界形成が不十分になることから、比抵抗は低下する。その他の磁気特性および強度についても大きく劣化することから、異常粒成長の抑制はフェライト製造の際の重要なポイントである。
そこで、この異常粒成長の抑制を達成する手段について鋭意究明したところ、以下の知見を得るに到った。すなわち、Mn−Co−Zn系フェライトの主原料は、Fe2O3,CoO,ZnOおよびMnO等であるが、これらの原料中には、天然鉱石中に含有されたり、または製錬時に混入されたりする等の理由から、Cd,Pb,Sb,As及びSeの各成分がある程度で混入することが不可避である。これらの不純物が適正量を超えて含有されたフェライトは、異常粒成長を誘発し、結果として軟磁性フェライトの磁気特性、比抵抗および強度等の諸特性に対して重大な悪影響を及ばすことが、新たに判明したのである。
上述の特許文献4〜6に記載の技術では、このような不純物についての記載は何ら行われていない。特許文献5では、むしろ反対に、Pbを意図的に添加することが規定されているほどである。そのため、これらの文献に記載された技術をもってしても、望ましい特性、特に高い比抵抗の下に保磁力を低下したMn−Co−Zn系フェライトを得ることは極めて困難であったのである。
本発明は、上記の知見に基づいて成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
(1)Fe2O3:45.0 mol%以上50.0mol%未満、
CoO:0.5mol%以上4.0mol%以下、
ZnO:15.5 mol%以上24.0mol%以下および
MnO:残部
を基本成分とし、
フェライト中に含まれるCd,Pb,Sb,AsおよびSeがそれぞれ20massppm未満であることを特徴とするMn−Co−Zn系フェライト。
(2)前記フェライト中に、添加物としてさらに
CaO:0.005〜0.200mass%および
SiO2:0.001〜0.050mass%
のうちから選んだ1種または2種を含有する上記(1)に記載のMn−Co−Zn系フェライト。
(3)前記フェライト中に、添加物としてさらに
ZrO2:0.005〜0.100mass%、
Ta2O5:0.005〜0.100mass%、
HfO2:0.005〜0.100mass%および
Nb2O5:0.005〜0.100mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する上記(1)または(2)に記載のMn−Co−Zn系フェライト。
本発明のMn−Co−Zn系フェライトは、上記の構成によって、従来実現されなかった、キュリー温度100℃以上、室温(23℃)における比抵抗が30Ω・m以上、かつ保磁力が10.0A/m以下という、優れた特性を有するものとなる。
本発明によれば、キュリー温度を100℃以上に保持したまま、室温(23℃)での比抵抗を上昇し、かつ保磁力を低くした、Mn−Co−Zn系フェライトを提供することができる。
さらに、このフェライトにCaO,SiO2の1種又は2種を適量添加して、粒界偏析の効果を利用することによって、さらなる比抵抗の上昇を、またZrO2,Ta205,HfO2及びNb205の1種または2種以上を適量添加して結晶粒径を抑えることにより、さらなる保磁力の低下を、それぞれ達成することができる。さらに、これらを組み合わせて添加することにより、上記効果を併せた効果が得られる。
なお、本発明のフェライトでは、Cd,Pb,Sb,As及びSeの不純物の量を規制し、異常粒成長の発生や雰囲気の変動に伴う特性劣化を抑制している。従って、その製造時に粉末冶金的な手法を用いることができ、さらに焼成の際の冷却時に、例えば酸素を1〜20体積ppm含む工業用の窒素を用いることが可能であるから、従来に比べ大幅な製造コストを削減した、安定した製造を実現できる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、基本成分を上記の範囲に限定した理由を説明する。なお、本発明における基本成分組成は、含まれるFeおよびMnを全てFe203およびMnOとして換算した場合のものである。
Fe2O3:45.0 mol%以上50.0mol%未満
主成分組成のうち、Fe203は過剰に含まれた場合Fe2+量が増加し、それによりMn−Znフェライトの比抵抗が低下する。これを避けるために、Fe2O3量は50mol%未満に抑える必要がある。しかし、少なすぎると、今度は室温での保磁力の上昇及びキュリー温度の低下を招くため、最低でも45.0mol%は含有することとした。
CoO:0.5mol%以上4.0mol%以下
Co2+は、正の磁気異方性エネルギーをもつイオンであるから、CoOの適正量の添加に伴って磁気異方性エネルギーの総和の絶対値が低下する結果、室温での保磁力の低下を実現する。そのためには、CoOを0.5mol%以上で添加する必要がある。しかし、適正量以上の添加は、比抵抗の低下を招き、また磁気異方性エネルギーの総和が過度に正に傾くことから、逆に室温での保磁力の上昇を招くことになる。従って、CoOの添加量は、最大4.0mol%の添加にとどめるものとする。
ZnO:15.5 mol%以上24.0mol%以下
ZnOは、フェライトに軟磁性的な性質を持たせるために不可欠な成分である。その添加に伴い室温での保磁力を低下させる働きがあるため、最低でも15.5mol%は含有するものとする。しかし、含有量が適正な値より多い場合には、キュリー温度の低下を招き、実用上問題がある。そのため、上限を24.0mol%とする。
MnO:残部
本発明のMn−Co−Zn系フェライトであり、主成分組成の残部はMnOである。残部をMnOとすることによって、高飽和磁束密度、低損失および高透磁率等の良好な磁気特性が得られる。
Cd,Pb,Sb,AsおよびSe:それぞれ20massppm未満
Cd,Pb,Sb,AsおよびSeの各成分は、主成分原料である酸化鉄、酸化マンガン、酸化コバルトおよび酸化亜鉛中に含まれる成分である。これら成分の含有が極く微量であれば問題はないが、ある一定以上含まれる場合にはフェライトの異常粒成長を誘発し、得られるフェライトの諸特性に重大な悪影響を及ぼす。特に、Fe2O3を50mol%未満しか含まない組成のフェライトは、50mol%以上含むものに比べ結晶の粒成長が進行しやすく、そのため異常粒成長が発生しやすくなる。
ここで、CoOについて、前記した理由による保持力の低下を狙い、その添加を行ったものの十分な効果が得られなかったところから、この原因について鋭意調査した結果、前記5成分をすべて抑制することによって、初めてCoOの添加効果が現出することを見出した。すなわち、これら5成分の混入により、異常粒成長が発生する等の弊害が生じてCoOの添加効果が相殺されていたものと考えられる。よって、Cd,Pb,Sb,AsおよびSeの含有量は、それぞれ20ppm未満に制限する必要がある。
CaO:0.005〜0.200mass%およびSiO2:0.001〜0.050mass%のうちから選んだ1種または2種
CaOおよびSiO2はいずれも、結晶粒界に偏析することによりフェライトの電気抵抗を高め、また粒成長時の粒界の移動速度を緩和させることから粒内残留空孔を減らし磁壁移動を容易にし、室温での保磁力を低下させる効果がある。これらの効果を得るには、CaO:0.005mass%以上およびSiO2:0.001mass%以上の添加が必要である。反対に多量に添加し過ぎた場合には、フェライト粒内の異常粒成長を誘発し、比抵抗の低下と保磁力の上昇をまねくことになる。そこで、上限はCaO:0.200mass%およびSiO2:0.050mass%とすることが望ましい。
ZrO2:0.005〜0.100mass%、Ta2O5:0.005〜0.100mass%、HfO2:0.005〜0.100mass%およびNb2O5:0.005〜0.100mass%のうちから選んだ1種または2種以上
また、添加物として、ZrO2,Ta2O5,HfO2及びNb2O5を1種又は2種以上を添加しても良い。これらの物質はいずれも、高い融点を持つ化合物であり、Mn−Co−Zn系フェライトに添加した場合には結晶粒を小さくする働きを持ち、そのため比抵抗を上昇させる。また、粒内残留空孔を減少させることから、室温での保磁力を低下させる。しかし、添加量が適正な値よりも少ない場合には効果が得られず、また多量の場合には異常粒発生による比抵抗の低下と保磁力の上昇とを招く。そのため、ZrO2:0.005〜0.100mass%、Ta2O5:0.005〜0.100mass%、HfO2:0.005〜0.100mass%およびNb2O5:0.005〜0.100mass%の範囲内に収めることが望ましい。
なお、上記にて群れ毎に解説した添加物は、その群れ毎の単独添加でも上記のとおり有効であるが、さらに複数の群れの組み合わせにて添加する場合でも、同様に効果を発揮する。その際も、異常粒成長の発生、比抵抗の低下および室温での保磁力の上昇を抑えるため、その添加量は上記の範囲内に抑えることが望ましい。
次に、本発明のMn−Co−Zn系フェライトの好適な製造方法について説明する。
まず、所定の比率となるように、Fe2O3,ZnO,CoO及びMnO粉末を秤量し、これらを十分に混合した後に仮焼を行う。次に、得られた仮焼粉を粉砕する。さらに、上記の添加物を加える際は、それらを所定の比率で加え、仮焼粉と同時に粉砕を行う。この作業で、添加した成分の濃度に偏りがないよう粉末の充分な均質化を行う必要がある。目標組成の粉末をポリビニルアルコール等の有機物バインダーを用いて造粒し、圧力を加えて成形後適宜の焼成条件の下で焼成を行う。
ここで、本発明のMn−Co−Zn系フェライトは、不純物量が制限されているため、粉末冶金的手法を用いた際に問題となる異常粒成長や、焼成時の雰囲気の変動に対しても、保磁力の上昇のような特性劣化を起こしにくい。そのため、上記のように、製造時に粉末冶金的な手法を用いることができ、さらに焼成の際の冷却時に、例えば酸素を1〜20体積ppm含む工業用の窒素を用いることが可能である。
かくして得られたMn−Co−Zn系フェライトは、Fe2+量が従来のMn−Znフェライトに比べ大きく減少している。そのため、従来のMn−Znフェライトの問題点であった低い比抵抗が、0.1Ω・mオーダーから約300倍の領域にまで上昇する。また、Co添加による磁気異方性エネルギーの制御、並びに不純物量規定により異常粒成長が抑制されたことにより、保磁力が大幅に低下している。
含まれるFe及びMnをすべてFe23及びMnOとして換算した場合に、Fe2O3,ZnO,CoO及びMnOが表1に示す比率となるように秤量した各原料粉末を、ボールミルを用いて16時間混合した後、空気中925℃および3時間の仮焼を行った。次に、ボールミルで12時間粉砕を行い、得られた混合粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、1.2ton/cm2の圧力をかけトロイダルコアを成形した。その後、この成形体を焼成炉に装入して、窒素流入により酸素濃度が制御された雰囲気の下、最高温度1350℃で焼成を行い、焼成後の冷却の際には、1100℃から500℃までの温度範囲で酸素分圧10ppmを含む工業用窒素流中で行い、外径25mm、内径15mmおよび高さ5mmの焼結体コアを得た。
このようにして得られた各試料について、室温での比抵抗並びに保磁力を算出した。得られた結果を表1に併記する。
なお、酸化鉄等の主成分原料に由来する成分であるCd,Pb,Sb,As及びSeの最終的な含有量は全ての試料でそれぞれ3ppmであった。そのため、従来のMn−Co−Zn系フェライトで問題となる異常粒成長については、表1内のすべての発明例および比較例において確認されなかった。
Figure 2005247651
同表に示したとおり、発明例である試料番号1−3、1−5および1−9では、室温での比抵抗が30Ω・m以上かつ保磁力が10.0A/m以下、という優れた特性を有している。
これに対し、Fe2O3が50.0mol%以上の比較例(試料番号1−1,1−2)はいずれもFe2+を多く含有するため、比抵抗が低く、発明例の300分の1程度にとどまっている。反対に、Fe2O3が不足した比較例(試料番号1−10)では、保磁力の上昇と、キュリー温度の低下が確認される。前記Cd等5成分が低減されていてもCoOを含まない比較例(試料番号1−4)では、負の結晶磁気異方性を持つイオンのみから成るため、室温での保磁力が大きな値をとっている。反対にCoOを多量に含む比較例(試料番号1―6)では、正の結晶磁気異方性が過度に増大し、逆に保磁力が上昇している。ZnOに着目すると、発明範囲より不足した比較例(試料番号1−6)では保磁力の上昇が見られる。反対に、多量に含む比較例(試料番号1−8)では、キュリー温度が100℃未満であり、実用上問題がある。
Cd,Pb,Sb,As及びSeの含有量が異なる種々の酸化鉄、酸化マンガン、酸化コバルト及び酸化亜鉛原料を使用し、試料が最終的にCd,Pb,Sb,As及びSeを表2に示す量だけ含有するように計算した上で、含まれるFe及びMnをすべてFe203及びMnOとして換算した場合に、表1における試料番号1−5と同組成である、Fe203:49.0mol%、ZnO:20.0mol%、CoO:2.0mol%およびMnO:29.0mol%の組成となるように、原料を秤量し、ボールミルを用いて16時間混合した後、空気中925℃で3時間仮焼を行った。次に、ボールミルで12時間粉砕を行い、得た混合粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、1.2ton/cm2の圧力をかけトロイダルコアを成形した。その後、この成形体を焼成炉に入れ、窒素流入により酸素濃度が制御された雰囲気の下、最高温度1350℃で焼成を行い焼成後の冷却の際には、1100℃から500℃までの温度範囲で酸素分圧10ppmを含む工業用窒素流中で行い、外径25mm、内径15mmおよび高さ5mmの焼結体コアを得た。
これらの各試料について、室温での比抵抗および保磁力を測定した。なお、主成分組成により決まるキュリー温度は、全ての試料で130℃であった。
得られた結果を表2に示す。
Figure 2005247651
同表に示したとおり、Cd,Pb,Sb,AsおよびSe成分がそれぞれ20ppm未満の発明例(試料番号1−5,2−1)はいずれも異常粒成長が見られず、高い比抵抗と低い保磁力とが同時に得られている。
これに対し、5種類のうち1成分でも適正な値より多く含む比較例(試料番号2−2〜2−7)はいずれも異常粒が発生し、比抵抗および保磁力ともに大きく劣化している。
実施例2と同組成の混合粉(但し、Cd,Pb,Sb,AsおよびSe:すべて3ppm含有)に、添加物としてCaO及びSiO2をそれぞれ最終組成が表3に示す比率となるよう添加し、ボールミルで12時間粉砕を行った。この混合粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、1.2ton/cm2の圧力を加えてトロイダルコアを成形し、その後この成形体を焼成炉に入れて最高温度1350℃で焼成を行い、焼成後の冷却の際には、1100℃から500℃までの温度範囲で酸素分圧10ppmを含む工業用窒素流中で行い、外径25mm、内径15mmおよび高さ5mmの焼結体コアを得た。
これらの各試料について、室温での比抵抗および保磁力を測定した。なお、主成分組成により決まるキュリー温度は、全ての試料で130℃であった。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2005247651
表3の結果から、CaO及びSiO2を1種または2種添加した発明例(試料番号3−1〜3−3)は、比抵抗が上昇し、また粒内残留空孔の減少から保磁力が低下していることがわかる。しかし、どちらか一方でも適正な値より多く含む比較例(試料番号3−4〜3−6)ではいずれも、異常粒が発生し、粒内に多数の不純物や空孔を含むために比抵抗が低下し、また磁壁の移動が阻害されることから保磁力が上昇している。
実施例2と同組成の混合粉(但し、Cd,Pb,Sb,As及びSe:すべて3ppm含有)に、添加物としてNb205,TaO2,HfO2及びZrO2をそれぞれ最終組成が表4に示す比率となるよう添加し、ボールミルで12時間粉砕を行った。この混合粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、1.2ton/cm2の圧力を加えてトロイダルコアを成形し、その後この成形体を焼成炉に入れ、最高温度1350℃で焼成を行い焼成後の冷却の際には、1100℃から500℃までの温度範囲で酸素分圧10ppmを含む工業用窒素流中で行い、外径25mm、内径15mmおよび高さ5mmの焼結体コアを得た。
これらの各試料について、室温での比抵抗、保磁力を測定した。なお、主成分組成により決まるキュリー温度は、全ての試料で130℃であった。
得られた結果を表4に示す。
Figure 2005247651
表4の結果から、Nb205,TaO2,HfO2およびZrO2を1種または2種以上で適量添加した発明例(試料番号4−1〜4−15)はいずれも、結晶の成長が抑制された結果、比抵抗が上昇した。また、粒内残留空孔の減少により保磁力も低下している。
しかし、これら4成分のうち1種類でも適正範囲を超えて多量に含有する比較例(試料番号4−16〜4−18)ではいずれも、異常粒が発生し、粒内に多数の不純物や空孔を含むため比抵抗が低下し、また保磁力が上昇している。
実施例2と同組成の混合粉(但し、Cd,Pb,Sb,As及びSe:すべて3ppm含有)に、副成分としてCaOおよびSiO2と、ZrO2,Ta2O5,HfO2およびNb205とを最終成分が表5に示す比率となるように、それぞれ添加し、ボールミルで12時間粉砕を行った。この混合粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、1.2ton/cm2の圧力を加えてトロイダルコアを成形し、その後この成形体を焼成炉に入れて最高温度1350℃で焼成を行い、焼成後の冷却の際には、1100℃から500℃までの温度範囲で酸素分圧10ppmを含む工業用窒素流中で行い、外径25mm、内径15mmおよび高さ5mmの焼結体コアを得た。
これらの各試料について、室温での比抵抗および保磁力を測定した。なお、主成分組成により決まるキュリー温度は、全ての試料で130℃であった。
得られた結果を表5に示す。
Figure 2005247651
表5に示したとおり、CaOおよびSiO2と、ZrO2,Ta2O5,HfO2およびNb205とを組み合わせて添加した発明例(試料番号5−1〜5−9)はいずれも、これらが無添加の場合と比べて比抵抗が上昇し、保磁力が低下した。
対して、これら6成分のうちどれか1つでも適正な値より多く含む比較例(試料番号5−10〜5−11)ではいずれも、異常粒が発生し、粒内に多数の不純物や空孔を含むため比抵抗が低下し、保磁力が上昇している。

Claims (3)

  1. Fe2O3:45.0 mol%以上50.0mol%未満、
    CoO:0.5mol%以上4.0mol%以下、
    ZnO:15.5 mol%以上24.0mol%以下および
    MnO:残部
    を基本成分とし、
    フェライト中に含まれるCd,Pb,Sb,AsおよびSeがそれぞれ20massppm未満であることを特徴とするMn−Co−Zn系フェライト。
  2. 前記フェライト中に、添加物としてさらに
    CaO:0.005〜0.200mass%および
    SiO2:0.001〜0.050mass%
    のうちから選んだ1種または2種を含有する請求項1に記載のMn−Co−Zn系フェライト。
  3. 前記フェライト中に、添加物としてさらに
    ZrO2:0.005〜0.100mass%、
    Ta2O5:0.005〜0.100mass%、
    HfO2:0.005〜0.100mass%および
    Nb2O5:0.005〜0.100mass%
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する請求項1または2に記載のMn−Co−Zn系フェライト。
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