JP4849777B2 - Mn−Ni−Zn系フェライト - Google Patents

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Description

本発明は、比抵抗が高く、保磁力が小さく、なおかつ、残留磁束密度に対する飽和磁束密度の比(残留磁束密度/飽和磁束密度)である角形比の大きいMn−Ni−Zn系フェライトに関するものである。
例えば、スイッチング電源回路では、マグアンプとして、またノイズを抑制するために、可飽和コアがしばしば用いられている。この可飽和コア用の材料には、高飽和磁束密度かつ低損失、そして何よりも角形比が大きいことが求められる。ここで、角形比とは、残留磁束密度を飽和磁束密度で除したものである。可飽和コアは、その素材において、インダクタンスの変化を急激にするような特性が求められる。前記した角形比が小さくなると、インダクタンスの変化が小さくなるため、可飽和コアの用途には角形比が大きいものが好適である。
そのために、この種の用途には、上記の諸特性を満足する非晶質金属磁性材料が主に用いられている。
しかしながら、この非晶質金属磁性材料には大きな欠点が2つある。まず、その材質および製造方法に起因してコストが高くなる点、そして金属であるために、比抵抗がμΩ・mオーダーと非常に低くなる点である。
この点、酸化物磁性材料であるフェライトは、非晶質金属磁性材料と比較すると、飽和磁束密度の点では劣るものの、安価に製造でき、また比抵抗に関しては少なくとも103倍以上高い値を持つ。
特に、フェライトの中でもNi-Znフェライトは高い角形比を持ち、同時に比抵抗が105Ω・mと非常に高い材質である。しかし、Ni-Znフェライトは、非晶質金属磁性材料ほどではないが、原料のNiOが高価でかつ価格変動が激しいことが問題となる。
一方、Mn-Znフェライトは、Ni-Znフェライトと比較して、高い飽和磁束密度に加えて、小さい保磁力を有する。また、原料となるMnOの価格も、NiOと比較して、安価である利点もある。しかし、従来のMn-Znフェライトは、正の磁気異方性を持つFe2+量を多く含有するため、残留磁束密度が小さく、角形比は高々0.3程度である。同時に、Fe3+およびFe2+間での電子の授受が起こりやすく、結果として比抵抗が0.1Ω・mオーダーにまで低下してしまうという問題点がある。
この問題点を解決する手段として、Mn-Znフェライト中に含まれるFe2+量を減らすことで比抵抗を上昇させる、というものがある。すなわち、Fe23成分を50mol%未満としてFe2+含有量を減らし比抵抗を高めることが、特許文献1〜3において提案されている。
しかし、これらの文献に記載されたMn-Znフェライトは、高抵抗化、高透磁率化もしくは低損失化のいずれかに主眼が置かれたものである。すなわち、これらの文献中には、角形比はおろか残留磁束密度に関する記述は全くない。しかも、実際に製造した場合に、比抵抗の低下並びにその他磁気特性の劣化をまねくことがあり、従って角形比の大きなMn−Znフェライトを安定して得ることが困難であった。
さらに、特許文献3に示された実施例は、非常に低い酸素濃度雰囲気下で焼成が行われるために、
a)焼成炉の厳密なシールおよび雰囲気制御
b)(工業用窒素は最低でも1〜20体積ppmの酸素を含むため)純窒素の使用
が要求される。これらの規制は、工業化を考えた際に、製造効率およびコストの両面において問題となる。
特開平7−230909号公報 特開2000−277316号公報 特開2001−151565号公報
本発明は、上記の問題を有利に解決するものであり、Fe23成分を50mol%未満としてFe2+含有量を減少させ、さらに、NiOを適量添加することで、比抵抗の低下並びにその他磁気特性の劣化をまねくことなしに角形比の大幅な増加を実現した、Mn−Ni−Zn系フェライトを提供しようとするものである。
さて、発明者らは、Fe23成分を50mol%未満としてFe2+含有量を減少させたMn−Ni−Zn系フェライトにおいて、大きな比抵抗や優れた磁気特性が安定して得られない原因について検討したところ、フェライトの製造過程における異常粒成長が関係していることを見出した。すなわち、異常粒成長とは、何らかの原因により局部的に粒成長のバランスが崩れた際に起こる、特に粉末冶金法を用いた製造時にしばしば見られる現象である。この異常成長粒内には、不純物や格子欠陥等の磁壁の移動を大きく妨げる物質が混入するため、保磁力を上昇させる。同時に、結晶粒界形成が不十分になることから、比抵抗は低下し、その他の磁気特性についても大きく劣化するのである。
さらに、発明者らは、フェライトの原料、中でも主原料であるFe2O3の大半が製鉄の際に発生するスケールに依存していることに着目し、スケール由来のFe2O3原料と上記異常成長粒との関連を調査した。その結果、鉄鋼(スケール)中に不可避に混入するP、B、SおよびClという不純物が含有された、フェライトは、異常粒成長を誘発し、結果として軟磁性フェライトの磁気特性や比抵抗等の諸特性に対して重大な悪影響を及ばすことが、新たに判明した。
すなわち、上記した特許文献1または3に記載された技術では、かような不純物についての規制は何ら行われていないため、これら文献に開示の技術内容に従うだけでは、同文献に記載された望ましい特性を持つMn−Zn系フェライトの製造は、実際上困難であったのである。また、特許文献2に記載の技術では、Pについて制限されているが、その他の不純物については何ら触れられていない。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)Fe2O3:45.0mol%以上49.5mol%以下、
NiO:0.1mol%以上5.0mol%以下、
ZnO:3.0mol%以上15.5mol%未満および
MnO:残部
からなるフェライトであってフェライト中に不可避的に含まれる混入物のうちP、B、SおよびClが、
P:50massppm未満、
B:20massppm未満、
S:30massppm未満および
Cl:50massppm未満
であることを特徴とするMn−Ni−Zn系フェライト。
(2)Fe 2 O 3 :45.0mol%以上49.5mol%以下、
NiO:0.1mol%以上5.0mol%以下、
ZnO:3.0mol%以上15.5mol%未満および
MnO:残部
を基本成分とし、さらに添加物として、
CaO:0.005〜0.200mass%および
SiO2:0.001〜0.050mass%
のうちから選んだ1種または2種を含有する組成からなるフェライトであってフェライト中に不可避的に含まれる混入物のうちP、B、SおよびClが、
P:50massppm未満、
B:20massppm未満、
S:30massppm未満および
Cl:50massppm未満
であることを特徴とするMn−Ni−Zn系フェライト。
(3)Fe 2 O 3 :45.0mol%以上49.5mol%以下、
NiO:0.1mol%以上5.0mol%以下、
ZnO:3.0mol%以上15.5mol%未満および
MnO:残部
を基本成分とし、さらに添加物として、
ZrO2:0.005〜0.100mass%、
Ta2O5:0.005〜0.100mass%、
HfO2:0.005〜0.100mass%および
Nb2O5:0.005〜0.100mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成からなるフェライトであって、該フェライト中に不可避的に含まれる混入物のうちP、B、SおよびClが、
P:50massppm未満、
B:20massppm未満、
S:30massppm未満および
Cl:50massppm未満
であることを特徴とするMn−Ni−Zn系フェライト。
(4)Fe 2 O 3 :45.0mol%以上49.5mol%以下、
NiO:0.1mol%以上5.0mol%以下、
ZnO:3.0mol%以上15.5mol%未満および
MnO:残部
を基本成分とし、さらに添加物として、
CaO:0.005〜0.200mass%および
SiO 2 :0.001〜0.050mass%
のうちから選んだ1種または2種と、
ZrO 2 :0.005〜0.100mass%、
Ta 2 O 5 :0.005〜0.100mass%、
HfO 2 :0.005〜0.100mass%および
Nb 2 O 5 :0.005〜0.100mass%
のうちから選んだ1種または2種以上と
を含有する組成からなるフェライトであって、該フェライト中に不可避的に含まれる混入物のうちP、B、SおよびClが、
P:50massppm未満、
B:20massppm未満、
S:30massppm未満および
Cl:50massppm未満
であることを特徴とするMn−Ni−Zn系フェライト。
本発明のMn−Ni−Zn系フェライトは、上記の構成によって、従来実現されなかったJIS C4003に規定されたH種絶縁を満たすキュリー温度180℃以上、並びに室温(23℃)における比抵抗が30Ω・m以上かつ保磁力が20.0A/m以下であり、しかも角形比が0.70以上という、優れた特性を有するものとなる。
本発明によれば、キュリー温度を180℃以上に保持したまま、室温(23℃)での比抵抗が高くて保磁力が小さく、かつ角形比を大きくした、Mn−Ni−Zn系フェライトを提供することができる。
このフェライトに、CaO、SiO2の1種または2種を適量添加して粒界偏析の効果を利用することによって、さらなる比抵抗の上昇および保磁力の低下を、それぞれ達成することができる。さらに、これらを組み合わせて添加することにより、上記の効果を併せた効果が得られる。
また、本発明のフェライトは、不純物量に制限を加え、異常粒成長の発生や、雰囲気の変動に伴う特性劣化を抑制している。そのため、その製造時に粉末冶金的な手法を用いることができ、さらに焼成の際の冷却時に、例えば酸素を1〜20体積ppm含む工業用の窒素を用いることが可能であるから、従来に比べ大幅な製造コストの削減および異常粒成長を抑制した、安定した製造が実現される。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、基本成分を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、本発明における基本成分組成は、含まれるFeおよびMnをすべてFe2O3およびMnOとして換算した場合のものである。
Fe2O3:45.0mol%以上49.5mol%以下
基本成分のうち、Fe2O3は過剰に含まれた場合Fe2+量が増加し、それによりMn−Zn系フェライトの比抵抗が低下し、また角形比が低下する。これを避けるために、Fe2O3量を49.5mol%以下に抑える必要がある。しかしながら、少なすぎると、今度は保磁力の上昇およびキュリー温度の低下を招くため、最低でも45.0mol%は含有することとした。
NiO:0.1mol%以上5.0mol%以下
NiOの固溶により、Mn-Znフェライトの負の磁気異方性エネルギーが増大して残留磁束密度が上昇する結果、室温(23℃)での角形比を上昇する効果がある。そこで、NiOは最低でも0.1mol%以上含有することとする。しかし、適正量よりも多い場合、過度に磁気異方性が増大して保磁力の上昇を招くため、5.0mol%以下の範囲内に収める事とする。
ZnO:3.0mol%以上15.5mol%未満
ZnOは、その固溶に伴い保磁力を低下することができ、そのためには、最低でも3.0mol%は含有するものとする。しかし、含有量が適正な値より多い場合には、キュリー温度が低下し、JIS規定のH種絶縁を満たさなくなる。そのため、15.5mol%未満とする。
MnO:残部
本発明はMn−Ni−Znフェライトであり、主成分組成の残部はMnOである必要がある。その理由は、MnOを含有することにより、高飽和磁束密度、低損失および高透磁率等の良好な磁気特性が得られる為である。
P:50massppm未満、B:20massppm未満、S:30massppm未満およびCl:50massppm未満
P,B,SおよびClは、いずれも原料酸化鉄中に不可避に含まれる成分である。これらの含有がごく微量であれば問題はないが、ある一定量以上含まれる場合にはフェライトの異常粒成長を誘発し、得られるフェライトの諸特性に重大な悪影響を及ぼす。上記換算後のFe23含有量が50mol%未満の組成になるフェライトは、同含有量が50mol%以上のものに比べて、結晶の粒成長が進行しやすく、そのため異常粒成長が発生しやすくなる。従って、異常粒成長を抑制するために、P、B、SおよびClの含有量をそれぞれ50,20,30および50ppm未満に制限する必要があり、この制限を受けることで、はじめて角形比と保磁力との高度の両立を達成することができる。
なお、P、B、SおよびClの含有量を上記の範囲に抑制するには、例えば原料となるFe23、MnO、ZnO等に関して、これら不純物含有量の少ない、高純度原料を用いる必要がある。また、ボールミル等の混合粉砕時に用いる媒体についても、磨耗による混入の恐れがあるため、これら不純物含有量の少ないものを用いることが望ましい。
CaO:0.005〜0.200mass%およびSiO2:0.001〜0.050mass%のうちから選んだ1種または2種
CaOおよびSiO2はいずれも、結晶粒界に偏析することによりフェライトの電気抵抗を高める効果があり、また粒成長時の粒界の移動速度を緩和させて粒内残留空孔を減らし、保磁力を低下させる効果がある。これらの効果を得るには、CaO:0.005mass%以上およびSiO2:0.001mass%以上の添加が必要である。反対に多量に添加し過ぎた場合には、フェライト粒内の異常粒成長を誘発し比抵抗の低下と保磁力の上昇をまねくことになる。そこで、上限はCaO:0.200mass%、SiO2:0.050mass%とすることが望ましい。
ZrO2:0.005〜0.100mass%、Ta2O5:0.005〜0.100mass%、HfO2:0.005〜0.100mass%およびNb2O5:0.005〜0.100mass%のうちから選んだ1種または2種以上
また、添加物として、ZrO2,Ta205,HfO2およびNb2O5を1種または2種以上添加しても良いものとする。これらの物質はいずれも、高い融点を持つ化合物であり、Mn−Ni−Zn系フェライトに添加した場合には結晶粒を小さくする働きを持ち、そのため比抵抗を上昇させ、同時に保磁力を低下させる。しかし、添加量が適正な値よりも少ない場合には効果が得られず、また多量の場合には異常粒発生による比抵抗の低下と保磁力の上昇をまねく。そのため、それぞれ上記の範囲内に収めることが望ましい。
なお、上記にて群れ毎に解説した添加物は、その群れ毎の単独添加でも上記のとおり有効であるが、さらに複数の群れの組み合わせにて添加する場合でも、同様に効果を発揮する。その際も、異常粒成長の発生および保力の上昇を抑えるため、その添加物量は上記の範囲内に抑えることが望ましい。
次に、本発明のMn−Ni−Zn系フェライトの好適な製造方法について説明する。
まず、所定の比率となるように、Fe2O3、ZnO、NiOおよびMnO粉末を秤量し、これらを十分に混合した後に仮焼を行う。次に、得られた仮焼粉を粉砕する。さらに、上記した添加物を加える際は、それらを所定の比率で加え、仮焼粉と同時に粉砕を行う。この作業で、添加した成分の濃度に偏りがないように粉末の充分な均質化を行う必要がある。目標組成の粉末をポリビニルアルコール等の有機物バインダーを用いて造粒し、圧力を加えて成形後適宜の焼成条件の下で焼成を行う。
ここで、本発明のMn−Ni−Zn系フェライトは、不純物量が制限されているため、粉末冶金的手法を用いた際に問題となる異常粒成長や、焼成時の雰囲気の変動に対しても、保磁力の上昇のような特性劣化を起こしにくい。そのため、上記のように、製造時に粉末冶金的な手法を用いることができ、さらに焼成の際の冷却時に、例えば酸素を1〜20体積ppm含む工業用の窒素を用いることが可能である。
かくして得られたMn−Ni−Zn系フェライトは、Fe2+量が従来のMn−Znフェライトに比べ大きく減少している。そのため、従来のMn−Znフェライトの問題点であった低い比抵抗が、0.1Ω・mオーダーから約300倍の領域にまで上昇する。また、NiOを加えたことで、角形比が上昇している。
含まれるFeおよびMnをすべてFe2O3およびMnOとして換算した場合に、Fe2O3,ZnO,NiOおよびMnOが表1に示す比率となるように秤量した各原料粉末を、ボールミルを用いて16時間混合した後、空気中で925℃および3時間の仮焼を行った。次に、ボールミルで12時間粉砕を行い、得られた混合粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、1.2ton/cm2の圧力をかけトロイダルコアを成形した。その後、この成形体を焼成炉に挿入して、最高温度1350℃で焼成を行い、焼成後の冷却の際には、1100℃から500℃までの温度範囲で酸素分圧10体積ppmを含む工業用窒素流中で行い、外径25mm、内径15mmおよび高さ5mmの焼結体コアを得た。
このようにして得られた各試料について、キュリー温度、室温での比抵抗および保磁力を測定し、また飽和磁束密度および残留磁束密度を測定して角形比を算出した。
得られた結果を表1に併記する。
なお、酸化鉄をはじめとする原料はすべて高純度なものを用いたため、P,B,S,Clの最終的な含有量は全ての試料でP,B,S,Clはそれぞれ5ppmであった。
Figure 0004849777
同表に示したとおり、発明例である試料番号1−3、1−5、1−6および1−10では、キュリー温度が180℃以上、室温での比抵抗が30Ω・m以上かつ室温での保磁力が20.0A/m以下であり、しかも角形比が0.70以上という優れた特性を有している。
これに対し、Fe23が50.0mol%以上の比較例(試料番号1-1、1-2)はいずれもFe2+を多く含むため、角形比と比抵抗が大幅に低下している。反対に、Fe23が不足した比較例(試料番号1-11)では、キュリー温度の低下と保磁力の上昇が見られる。
また、NiOを含まない比較例(試料番号1-4)では、残留磁束密度の値が低いことから、室温での角形比が0.70未満である。反対にNiOを多量に含む比較例(試料番号1-7)では、負の結晶磁気異方性エネルギーが過度に増大することにより、保磁力が大幅に上昇している。
一方、ZnOに着目すると、ZnOを発明範囲より多量に含む比較例(試料番号1-8)では、キュリー温度が180℃未満であり、実用上問題がある。反対にZnOが不足した比較例(試料番号1-9)では、保磁力が上昇している。
P、B、SおよびClの含有量が異なる種々の酸化鉄原料を使用し、試料における含有量が最終的に、P:50ppm以下、B:20ppm以下、S:30ppm以下およびCl:50ppm以下となるように計算した上で、含まれるFeおよびMnをすべてFe2O3およびMnOとして換算した場合に、Fe23:49.0mol%、ZnO:10.0 mol%、NiO:2.0mol%および残部:MnOの組成となるよう原料を秤量し、ボールミルを用いて16時間混合した後、空気中で925℃および3時間の仮焼を行った。次に、ボールミルで12時間粉砕を行い、得られた混合粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、1.2ton/cm2の圧力をかけてトロイダルコアを成形した。その後、この成形体を焼成炉に入れ、最高温度1350℃で焼成を行い、焼成後の冷却の際には、1100℃から500℃までの温度範囲で酸素分圧10体積ppmを含む工業用窒素流中で行い、外径25mm、内径15mmおよび高さ5mmの焼結体コアを得た。
これらの各試料について、室温での比抵抗および保磁力を測定し、また飽和磁束密度および残留磁束密度を測定して角形比を算出した。なお、主成分組成により決まるキュリー温度は、全ての試料で210℃であった。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0004849777
同表に示したとおり、P、B、SおよびCl成分がそれぞれ50、20、30および50massppm未満の発明例(試料番号1−6、2−1)はいずれも異常粒成長が見られず、NiOを含む組成においても、比抵抗が30Ω・m以上かつ保磁力が20.0A/m以下、という優れた値が得られた。
これに対し、P、B、SおよびClの4成分のうち1種類でも適正な値より多く含む比較例(試料番号2-2〜2-7)はいずれも、異常粒の発生が確認された。そのために、保磁力および比抵抗については共に大きく劣化している。
実施例2と同組成の混合粉(但し、P、B、SおよびClはすべて5massppmに調整)に、添加物としてCaOおよびSiO2をそれぞれ最終組成が表3に示す比率となるよう添加し、ボールミルで12時間粉砕を行った。この混合粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、1.2ton/cm2の圧力を加えてトロイダルコアを成形し、その後この成形体を焼成炉に入れ最高温度1350℃で焼成を行い、焼成後の冷却の際には、1100℃から500℃までの温度範囲で酸素分圧10体積ppmを含む工業用窒素流中で行い、外径25mm、内径15mmおよび高さ5mmの焼結体コアを得た。
これらの各試料について、室温での比抵抗および保磁力を測定し、また飽和磁束密度および残留磁束密度を測定して角形比を算出した。なお、主成分組成により決まるキュリー温度は、全ての試料で210℃であった。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0004849777
表3の結果から、CaOおよびSiO2の1種または2種を添加した発明例(試料番号3-1〜3-3)は、比抵抗の上昇が確認できる。しかし、CaOおよびSiO2のどちらか一方でも適正な値より多く含む比較例(試料番号3-4〜3-6)では、異常粒成長が発生し、磁気特性および比抵抗がともに大きく劣化している。
実施例2と同組成の混合粉(但し、P、B、SおよびClはすべて5massppmに調整)に、添加物としてNb25、Ta25、HfO2、およびZrO2をそれぞれ最終組成が表4に示す比率となるよう添加し、ボールミルで12時間粉砕を行った。この混合粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、1.2ton/cm2の圧力を加えてトロイダルコアを成形し、その後この成形体を焼成炉に入れ、最高温度1350℃で焼成を行い焼成後の冷却の際には、1100℃から500℃までの温度範囲で酸素分圧10体積ppmを含む工業用窒素流中で行い、外径25mm、内径15mmおよび高さ5mmの焼結体コアを得た。
これらの各試料について、室温での比抵抗および保磁力を測定し、また飽和磁束密度および残留磁束密度を測定して角形比を算出した。なお、主成分組成により決まるキュリー温度は、全ての試料で210℃であった。
得られた結果を表4に示す。
Figure 0004849777
表4の結果から、Nb25、Ta25、HfO2、およびZrO2の1種または2種以上を適量添加した発明例(試料番号4-1〜4-15)はいずれも、結晶の成長が抑制された結果、比抵抗が上昇し、保磁力が低下した。
しかし、Nb25、Ta25、HfO2、およびZrO2の4成分のうち1種類でも適正範囲を超えて多量に含有する比較例(試料番号4-16〜4-18)はいずれも、異常粒が発生し、粒内に多数の不純物や空孔を含むために比抵抗が低下し、また保磁力も大幅に上昇している。
実施例2と同組成の混合粉(但し、P、B、SおよびClはすべて5massppmに調整)に、副成分として、CaOおよびSiO2、の1種または2種(添加物群A)、そしてZrO2、Ta25、HfO2およびNb25の1種または2種以上(添加物群B)を、最終成分が表5に示す通りになるようにそれぞれ添加し、ボールミルで12時間粉砕を行った。この混合粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、1.2ton/cm2の圧力を加えてトロイダルコアを成形し、その後、この成形体を焼成炉に入れ、最高温度1350℃で焼成を行い、焼成後の冷却は1100℃から500℃までの温度範囲で酸素分圧10体積ppmを含む工業用窒素流中で行い、外径25mm、内径15mmおよび高さ5mmの焼結体コアを得た。
これらの各試料について、室温での比抵抗および保磁力を測定し、また飽和磁束密度および残留磁束密度を測定して角形比を算出した。なお、主成分組成により決まるキュリー温度は、全ての試料で210℃であった。
得られた結果を表5に示す。
Figure 0004849777
表5に示したとおり、添加物群AおよびBを組み合わせて添加した発明例(試料番号5-1〜5-9)はいずれも、これらが無添加の場合と比べて比抵抗が上昇し、保磁力が低下した。
これに対し、これら6成分のうちどれか1つでも適正な値より多く含む比較例(試料番号5-10〜5-11)はいずれも、異常粒が発生し、また粒内に多数の不純物や空孔を含むために保磁力および比抵抗がともに大きく劣化している。

Claims (4)

  1. Fe2O3:45.0mol%以上49.5mol%以下、
    NiO:0.1mol%以上5.0mol%以下、
    ZnO:3.0mol%以上15.5mol%未満および
    MnO:残部
    からなるフェライトであってフェライト中に不可避的に含まれる混入物のうちP、B、SおよびClが、
    P:50massppm未満、
    B:20massppm未満、
    S:30massppm未満および
    Cl:50massppm未満
    であることを特徴とするMn−Ni−Zn系フェライト。
  2. Fe 2 O 3 :45.0mol%以上49.5mol%以下、
    NiO:0.1mol%以上5.0mol%以下、
    ZnO:3.0mol%以上15.5mol%未満および
    MnO:残部
    を基本成分とし、さらに添加物として、
    CaO:0.005〜0.200mass%および
    SiO2:0.001〜0.050mass%
    のうちから選んだ1種または2種を含有する組成からなるフェライトであってフェライト中に不可避的に含まれる混入物のうちP、B、SおよびClが、
    P:50massppm未満、
    B:20massppm未満、
    S:30massppm未満および
    Cl:50massppm未満
    であることを特徴とするMn−Ni−Zn系フェライト。
  3. Fe 2 O 3 :45.0mol%以上49.5mol%以下、
    NiO:0.1mol%以上5.0mol%以下、
    ZnO:3.0mol%以上15.5mol%未満および
    MnO:残部
    を基本成分とし、さらに添加物として、
    ZrO2:0.005〜0.100mass%、
    Ta2O5:0.005〜0.100mass%、
    HfO2:0.005〜0.100mass%および
    Nb2O5:0.005〜0.100mass%
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成からなるフェライトであって、該フェライト中に不可避的に含まれる混入物のうちP、B、SおよびClが、
    P:50massppm未満、
    B:20massppm未満、
    S:30massppm未満および
    Cl:50massppm未満
    であることを特徴とするMn−Ni−Zn系フェライト。
  4. Fe 2 O 3 :45.0mol%以上49.5mol%以下、
    NiO:0.1mol%以上5.0mol%以下、
    ZnO:3.0mol%以上15.5mol%未満および
    MnO:残部
    を基本成分とし、さらに添加物として、
    CaO:0.005〜0.200mass%および
    SiO 2 :0.001〜0.050mass%
    のうちから選んだ1種または2種と、
    ZrO 2 :0.005〜0.100mass%、
    Ta 2 O 5 :0.005〜0.100mass%、
    HfO 2 :0.005〜0.100mass%および
    Nb 2 O 5 :0.005〜0.100mass%
    のうちから選んだ1種または2種以上と
    を含有する組成からなるフェライトであって、該フェライト中に不可避的に含まれる混入物のうちP、B、SおよびClが、
    P:50massppm未満、
    B:20massppm未満、
    S:30massppm未満および
    Cl:50massppm未満
    であることを特徴とするMn−Ni−Zn系フェライト。
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