JP2005235739A - 燃料電池構成部品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の対象となる燃料電池構成部品は、燃料電池内部を流通するガス又はその一部が溶け込んだ液体との接触部を有する部品である。その燃料電池構成部品のガス等との接触部に対し電着塗料を用いて電着塗装を施した後、そのガス等との接触部に塗布された電着塗料を燃料電池構成部品に焼き付け、均一なコーティングとして定着させる。電着塗装は、カチオン型ポリイミド電着塗料を用いたカチオン電着塗装によることが最も好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明の燃料電池構成部品及びその製造方法によれば、燃料電池構成部品のガス等との接触部の表面に対するコーティング(保護皮膜)の形成に際し電着塗装法を採用したため、燃料電池構成部品が複雑な形状をしているような場合でも、ガス等との接触部の全表面に対して万遍なく均一なコーティングを施すことができる。電着塗装法によって形成された保護皮膜の均一性は非常に高く、ピンホール等はほとんど存在しないため、ガス等との接触部の耐食性が大幅に改善される。
実施例1では、基材がアルミニウム合金からなる鋳物製のエンドプレートを使用した。先ず、エンドプレートのガス配管部分を構成しない箇所に対しマスク材でマスキングを施し、少なくともガス配管の構成部分が露出した状態のエンドプレートを準備した。そのエンドプレートを十分に脱脂洗浄し、更にイオン交換水又は純水で水洗した。電着塗装槽にカチオン型ポリイミド電着塗料(株式会社シミズ製商品:エレコートPI)をイオン交換水又は純水で適度な濃度に希釈した水浴を準備し、その浴温を約25℃に調整した。そのポリイミド電着塗料水浴中に前記洗浄済みのエンドプレートを浸してエンドプレートの一部(電極接続部)を直流電源装置の負極に接続すると共に、水浴中に浸したカーボン製対向電極を直流電源装置の正極に接続し、20〜150Vの電圧にて約2分間、電着塗装を施した。その後、電着塗装槽から取り出したエンドプレートを水洗し、エアーブロー後に予備乾燥(80〜100℃で約10分間)を行った。そして、そのエンドプレートから前記マスク材を除去した後、それを加熱装置に移し、ポリイミド電着塗料の焼付け処理(約210℃で30分間)を行った。こうして、ガス配管構成部分に約11μmの膜厚のポリイミド皮膜が形成されたアルミニウム合金鋳物製のエンドプレートを得た。
比較例1では、実施例1で使用したのと同じ、基材がアルミニウム合金鋳物製のエンドプレートを使用した。先ず実施例1と同様、エンドプレートのガス配管部分を構成しない箇所に対しマスク材でマスキングを施し、少なくともガス配管の構成部分が露出した状態のエンドプレートを準備した。そのエンドプレートを十分に脱脂洗浄し、更にイオン交換水又は純水で水洗した。そして、そのエンドプレートをシアン化金の浴中に浸し、電気メッキ法によりエンドプレートの金属露出面に対して金メッキを施した。こうして、ガス配管構成部分に約11μmの膜厚の金皮膜が形成されたアルミニウム合金鋳物製のエンドプレートを得た。
実施例2では、基材がステンレス鋼(SUS316)からなる鋳物製のエンドプレートを使用した。そして実施例1と同様、エンドプレートのガス配管部分を構成しない箇所に対しマスク材でマスキングを施し、脱脂洗浄、イオン交換水又は純水による水洗後、カチオン型ポリイミド電着塗料(株式会社シミズ製商品:エレコートPI)を電着塗装法により塗装した。但し、実施例1のときよりも電着塗装時の印加電圧値を低くした。そして実施例1と同様、電着塗装槽から取り出したエンドプレートを水洗、エアーブロー、予備乾燥し、そのエンドプレートから前記マスク材を除去した後、ポリイミド電着塗料の焼付け処理(約210℃で30分間)を行った。こうして、ガス配管構成部分に約5μmの膜厚のポリイミド皮膜が形成されたステンレス鋼鋳物製のエンドプレートを得た。
比較例2では、実施例2で使用したのと同じ、基材がステンレス鋼(SUS316)からなる鋳物製のエンドプレートを使用した。先ず実施例1及び2と同様、エンドプレートのガス配管部分を構成しない箇所に対しマスク材でマスキングを施し、少なくともガス配管の構成部分が露出した状態のエンドプレートを準備した。そのエンドプレートを十分に脱脂洗浄し、更にイオン交換水又は純水で水洗した。そして、そのエンドプレートをシアン化金の浴中に浸し、電気メッキ法によりエンドプレートの金属露出面に対して金メッキを施した。こうして、ガス配管構成部分に約9μmの膜厚の金皮膜が形成されたステンレス鋼鋳物製のエンドプレートを得た。
実施例3では、基材がステンレス鋼(SUS316L)の圧延材からなるエンドプレートを使用した。そして実施例1と同様、エンドプレートのガス配管部分を構成しない箇所に対しマスク材でマスキングを施し、脱脂洗浄、イオン交換水又は純水による水洗後、カチオン型ポリイミド電着塗料(株式会社シミズ製商品:エレコートPI)を電着塗装法により塗装した。そして実施例1と同様、電着塗装槽から取り出したエンドプレートを水洗、エアーブロー、予備乾燥し、そのエンドプレートから前記マスク材を除去した後、ポリイミド電着塗料の焼付け処理(約210℃で30分間)を行った。こうして、ガス配管構成部分に約15μmの膜厚のポリイミド皮膜が形成されたステンレス鋼圧延材製のエンドプレートを得た。
実施例4では、実施例3で使用したのと同じ、基材がステンレス鋼(SUS316L)の圧延材からなるエンドプレートを使用した。先ず実施例1及び3と同様、エンドプレートのガス配管部分を構成しない箇所に対しマスク材でマスキングを施し、少なくともガス配管の構成部分が露出した状態のエンドプレートを準備した。そのエンドプレートを十分に脱脂洗浄し、更にイオン交換水又は純水で水洗した。電着塗装槽にフッ素樹脂分散型の電着塗料(株式会社シミズ製商品:エレコートナイスロンCTR)をイオン交換水又は純水で適度な濃度に希釈した水浴を準備し、その浴温を約25℃に調整した。そのフッ素樹脂電着塗料水浴中に前記洗浄済みのエンドプレートを浸してエンドプレートの一部(電極接続部)を直流電源装置の負極に接続すると共に、水浴中に浸したカーボン製対向電極を直流電源装置の正極に接続し、30〜200Vの電圧にて約2分間、電着塗装を施した。その後、電着塗装槽から取り出したエンドプレートを水洗し、エアーブロー後に予備乾燥(80〜100℃で約10分間)を行った。そして、そのエンドプレートから前記マスク材を除去した後、それを加熱装置に移し、フッ素樹脂電着塗料の焼付け処理(約210℃で30分間)を行った。こうして、ガス配管構成部分に約15μmの膜厚のフッ素樹脂皮膜が形成されたステンレス鋼圧延材製のエンドプレートを得た。
実施例5では、図4(A)の一部拡大断面図に示すように、ステンレス鋼(SUS304)の圧延材2枚(11,12)の端部同士を付き合わせてティグ溶接(13)により結合したものを基材とするエンドプレートを使用した。このエンドプレートにあってはそのガス配管構成部分に前記ティグ溶接箇所(13)が含まれる。そして実施例1と同様、エンドプレートのガス配管部分を構成しない箇所に対しマスク材でマスキングを施し、脱脂洗浄、イオン交換水又は純水による水洗後、カチオン型ポリイミド電着塗料(株式会社シミズ製商品:エレコートPI)を電着塗装法により塗装した。そして実施例1と同様、電着塗装槽から取り出したエンドプレートを水洗、エアーブロー、予備乾燥し、そのエンドプレートから前記マスク材を除去した後、ポリイミド電着塗料の焼付け処理(約210℃で30分間)を行った。こうして、図4(B)の一部拡大断面図に示すように、ティグ溶接箇所(13)を含むガス配管構成部分に約9μmの膜厚のポリイミド皮膜(14)が形成されたステンレス鋼圧延材(ティグ溶接品)製のエンドプレートを得た。
比較例3では、実施例5で使用したのと同じ、ステンレス鋼(SUS304)の圧延材2枚(11,12)の端部同士を付き合わせてティグ溶接(13)により結合したものを基材とするエンドプレートを使用した。先ず実施例5と同様、エンドプレートのガス配管部分を構成しない箇所に対しマスク材でマスキングを施し、少なくともガス配管の構成部分が露出した状態のエンドプレートを準備した。そのエンドプレートを十分に脱脂洗浄し、更にイオン交換水又は純水で水洗した。そして、そのエンドプレートをシアン化金の浴中に浸し、電気メッキ法によりエンドプレートの金属露出面に対して金メッキを施した。こうして、ティグ溶接箇所(13)を含むガス配管構成部分に約9μmの膜厚の金皮膜が形成されたステンレス鋼圧延材(ティグ溶接品)製のエンドプレートを得た。
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた各エンドプレートについて耐食性試験を行った。耐食性試験の方法は、日本工業規格の「ステンレス鋼のアノード分極曲線の測定方法」(JIS−G0579)に準じた。即ち、ポテンショスタット、電位スイープ装置、対数変換器付き記録計、電解槽及び恒温槽を組み合わせてなる測定装置を準備すると共に、電解槽には、ポテンショスタットに電気接続された対極(白金製電極)及び照合電極(この場合SCE(飽和甘こう電極))を配置した。また、電解槽に20%硫酸水溶液を満たしてその溶液の温度を30℃に調節すると共に、窒素ガスを約1時間吹き込んで脱酸素処理した。電解槽の溶液中に測定対象となる試験片(ポテンショスタットに電気接続されている)を浸した後、ポテンショスタット及び電位スイープ装置により、アノード分極曲線を測定した。電位のスイープ速度は毎分20mVとした。そして、測定した分極曲線をSHE換算し、その換算したものを半対数記録紙(電圧を等間隔目盛の横軸、電流密度を対数目盛の縦軸とするもの)に記録した。実施例1及び比較例1についての測定結果を図1に、実施例2及び比較例2についての測定結果を図2に、実施例3及び実施例4についての測定結果を図3に、実施例5及び比較例3についての測定結果を図5に示す。
アノード分極曲線は金属製試験片における耐食性の良否を判断する指標となり得る。つまり、所定の電位スイープ範囲において電流密度が小さく現われるほど耐食性に優れ、逆に電流密度が大きく現われるほど耐食性が低い、つまり腐食ガスや腐食液に接触したときに腐食が進みやすい(腐食速度がはやい)ことを示唆する。
Claims (7)
- 燃料電池内部を流通するガス又はその一部が溶け込んだ液体との接触部を有する燃料電池構成部品であって、前記接触部には、電着塗装法によって形成されたコーティングが施されていることを特徴とする燃料電池構成部品。
- 燃料電池内部を流通するガス又はその一部が溶け込んだ液体との接触部を有する燃料電池構成部品であって、前記接触部には、電着塗装法によって形成されたポリイミド電着塗料からなるコーティングが施されていることを特徴とする燃料電池構成部品。
- 前記燃料電池構成部品の基材は鋳物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池構成部品。
- 前記燃料電池構成部品の接触部には溶接箇所が含まれており、その溶接箇所を含む接触部には、電着塗装法によって形成されたコーティングが施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池構成部品。
- 燃料電池内部を流通するガス又はその一部が溶け込んだ液体との接触部を有する燃料電池構成部品を製造する方法であって、
燃料電池構成部品の前記接触部に対しカチオン型ポリイミド電着塗料を用いてカチオン電着塗装を施した後、その接触部に塗布されたカチオン型ポリイミド電着塗料を燃料電池構成部品に焼き付けて定着させることを特徴とする燃料電池構成部品の製造方法。 - 前記燃料電池構成部品の基材は鋳物からなることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池構成部品の製造方法。
- 前記燃料電池構成部品の接触部には溶接箇所が含まれており、その溶接箇所を含む接触部に対しカチオン型ポリイミド電着塗料を用いてカチオン電着塗装を施すことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池構成部品の製造方法。
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