JP2793534B2 - 耐錆性に優れた鋼用溶接ワイヤ - Google Patents

耐錆性に優れた鋼用溶接ワイヤ

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JP2793534B2 JP29428395A JP29428395A JP2793534B2 JP 2793534 B2 JP2793534 B2 JP 2793534B2 JP 29428395 A JP29428395 A JP 29428395A JP 29428395 A JP29428395 A JP 29428395A JP 2793534 B2 JP2793534 B2 JP 2793534B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐錆性に優れた鋼
用溶接ワイヤに関し、より詳細には、銅めっき等のめっ
きが施されていない鋼用溶接ワイヤ(以下、鋼用めっき
なし溶接ワイヤ)であって、軟鋼、耐候性鋼、低合金
鋼、高張力鋼等の鋼の溶接に用いられる耐錆性に優れた
鋼用めっきなし溶接ワイヤに関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】現在一般的に使用されている鋼用溶接ワ
イヤは、合金元素(脱酸剤やアーク安定剤等)を冶金的
に合金化したもの(ソリッドワイヤ)と、スラグ形成剤
等のフラックスを内部に充填したもの(フラックス入り
ワイヤ)とに大別される。これらの溶接ワイヤは、その
殆どが自動あるいは半自動溶接法で使用されている。か
かる溶接ワイヤの表面には、溶接時の送給安定性、耐ス
パッタ性、通電性、アーク安定性あるいは保存時の耐錆
性の観点から、様々な表面処理が施されている。
【0003】ところで、溶接ワイヤに錆が発生すると、
美観上に問題があるのみでなく、送給不良の原因とな
り、それにより作業効率が著しく低下するため、溶接ワ
イヤの耐錆性の向上は非常に重要な技術的課題である。
【0004】かかる耐錆性の向上及び送給性の改善のた
め、鋼用溶接ワイヤの表面に、該ワイヤのマトリックス
である鋼あるいは主成分である鉄よりも電気化学的に貴
な電位を有する銅のめっきが行われ、そして、かかる銅
めっきがされた鋼用溶接ワイヤ(以下、鋼用銅めっき溶
接ワイヤ)が使用されている。
【0005】しかしながら、かかる鋼用銅めっき溶接ワ
イヤにおいては、銅めっきのピンホール部等の如く基材
(ワイヤ)の露出部が存在すると、その露出部の鋼ある
いは鉄がガルバニック腐食により激しく腐食する。この
ため、鋼用銅めっき溶接ワイヤは、却って悪く、鋼用め
っきなし溶接ワイヤよりも耐錆性に劣る場合があり、従
って、信頼性に乏しく、安心して使用できないという欠
点がある。
【0006】そこで、鋼用溶接ワイヤの耐錆性の向上技
術について種々検討がなされ、その結果、鋼用溶接ワイ
ヤの耐錆性の向上技術として、下記の如き技術が提案さ
れている。
【0007】(1) フッ素樹脂を0.5 〜99.5%含む送給潤
滑剤をワイヤの表面に形成させる方法(特公昭51-43987
号公報)。 (2) 伸線の最終ダイスでワイヤに一次塗油を行って一次
油膜を形成した後、静電的に防錆油を塗油する方法(特
開平1-107876号公報)。 (3) 銅めっきされたワイヤ表面に油溶性アミン及び防錆
油を付着させた溶接ワイヤ(特公昭59-6760 号公報)。
【0008】これらの鋼用溶接ワイヤの耐錆性の向上技
術は、上記の如く、溶接ワイヤの表面にいかなる防錆油
をいかに塗油するかということがキーポイントで重要な
点であるが、溶接ワイヤにおいては、前述の如く、耐錆
性のみではなく、耐スパッタ性、通電性等の様々な要求
特性があるため、一般的な防錆油の使用量及び種類にも
制限がある。
【0009】従って、これらの技術によれば、鋼用溶接
ワイヤの耐錆性をある程度向上させることができるもの
の、その耐錆性は未だ充分ではなく、ひいては送給性や
美観上の観点から不充分であり、かかる点から更に優れ
た耐錆性を有する鋼用溶接ワイヤの開発が望まれてい
る。又、防錆油の使用は、耐スパッタ性や通電性等の様
々な要求特性の確保を阻害し、それらを低下させるばか
りでなく、コストの上昇を招く。
【0010】一方、鋼用銅めっき溶接ワイヤにおいて
は、前述の如くガルバニック腐食という問題点があるだ
けでなく、銅めっきによる大幅なコスト上昇がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事情に
着目してなされたものであって、その目的は前記従来の
技術の有する問題点を解消し、防錆油の塗油や銅めっき
を適用せず、それら適用の場合での如き耐スパッタ性や
通電性等の低下を招くことなく、又、大幅なコスト上昇
を招くことなく、優れた耐錆性を有し得る鋼用めっきな
し溶接ワイヤを提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る鋼用めっきなし溶接ワイヤは、請求項
1〜3記載の耐錆性に優れた鋼用めっきなし溶接ワイヤ
としており、それは次のような構成としたものである。
【0013】即ち、請求項1記載の耐錆性に優れた鋼用
めっきなし溶接ワイヤは、脱脂後に30℃の大気開放の0.
1 mol/l NaCl水溶液中で測定された浸漬 300秒後での自
然浸漬電位が飽和カロメル電極基準で−600 〜−400 mV
であることを特徴とする耐錆性に優れた鋼用めっきなし
溶接ワイヤである(第1発明)。
【0014】請求項2記載の耐錆性に優れた鋼用めっき
なし溶接ワイヤは、前記自然浸漬電位が飽和カロメル電
極基準で−500 〜−440 mVである請求項1記載の耐錆性
に優れた鋼用めっきなし溶接ワイヤである(第2発
明)。
【0015】請求項3記載の耐錆性に優れた鋼用めっき
なし溶接ワイヤは、酸化処理により形成された酸化皮膜
を表面に有する請求項1又は2記載の耐錆性に優れた鋼
用めっきなし溶接ワイヤである(第3発明)。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明は例えば次のようにして実
施する。0.1 mol/l NaCl水溶液を一部開口部を有する容
器(例えばビーカ)に入れ、これを恒温槽内に配置し、
容器内水溶液の温度を30℃になるように調整し、保持す
る。この容器内水溶液中に飽和カロメル電極(以下、SC
E )を浸漬し、該電極をポテンシォスタツト等の電位測
定装置の−端子にリード線により接続する。尚、この容
器内水溶液は、30℃の大気開放の0.1 mol/l NaCl水溶液
である。
【0017】一方、伸線工程等を経て製作された鋼用め
っきなし溶接ワイヤから、自然浸漬電位測定用電極とし
て適当な長さの短尺ワイヤを採取し、この短尺ワイヤに
ついてアセトン等の溶剤により脱脂し、この脱脂後のも
のを試料電極として前記容器内水溶液中に浸漬すると共
に、該電極の上端部と前記電位測定装置の+端子とをリ
ード線を介して接続する。そして、この試料電極(短尺
ワイヤ)のSCE に対する電位差(電位)の測定を開始す
る。尚、かかる電位差が SCE(即ち飽和カロメル電極)
基準での試料電極の自然浸漬電位(以下、自然電位とい
う)である。
【0018】このようにして試料電極(短尺ワイヤ)の
自然電位を測定し、前記容器内水溶液中に試料電極を浸
漬してから300 秒経過した時点(即ち、浸漬300 秒後)
における自然電位を求める。この自然電位が、脱脂後に
30℃の大気開放の0.1 mol/lNaCl水溶液中で測定された
浸漬300 秒後での自然浸漬電位(以下、特定条件での自
然電位という)に相当する。
【0019】このようにして求められた特定条件での自
然電位が SCE基準で−600 〜−400mVである場合、その
試料電極(短尺ワイヤ)は耐錆性に優れている。即ち、
その試料電極(短尺ワイヤ)が採取された鋼用めっきな
し溶接ワイヤは、耐錆性に優れている。
【0020】かかる鋼用めっきなし溶接ワイヤが、本発
明に係る鋼用めっきなし溶接ワイヤである。即ち、特定
条件での自然電位が SCE基準で−600 〜−400 mVとなり
得る鋼用めっきなし溶接ワイヤが、本発明に係る鋼用め
っきなし溶接ワイヤである。換言すれば、本発明に係る
鋼用めっきなし溶接ワイヤは、特定条件での自然電位が
SCE基準で−600 〜−400 mVとなるような鋼用めっきな
し溶接ワイヤである。より詳細には、本発明に係る鋼用
めっきなし溶接ワイヤは、それより採取された試料電極
(短尺ワイヤ)の特定条件での自然電位が SCE基準で−
600 〜−400 mVとなるような鋼用めっきなし溶接ワイヤ
である。尚、かかる溶接ワイヤは、直接的には、試料電
極が採取された残りの溶接ワイヤということになるが、
間接的には、それに実質的に相当する溶接ワイヤ、即
ち、特定条件での自然電位が SCE基準で−600 〜−400
mVとなる溶接ワイヤと実質的に同一内容の溶接ワイヤ
(同様の組成を有し、同様の製造方法により製造された
溶接ワイヤ)であってもよく、それらを含むものであ
る。
【0021】本発明に係る鋼用めっきなし溶接ワイヤ
は、上記の如く特定条件での自然電位が SCE基準で−60
0 〜−400 mVとなるような鋼用めっきなし溶接ワイヤで
あり、又、特定条件での自然電位が SCE基準で−600 〜
−400 mVである溶接ワイヤは、前記の如く耐錆性に優れ
ている。故に、本発明に係る鋼用めっきなし溶接ワイヤ
は、耐錆性に優れており、そのため送給性に優れ、美観
上の点でも良好である。又、本発明に係る鋼用めっきな
し溶接ワイヤは、防錆油の塗油や銅めっきを適用するも
のではないので、それら適用の場合での如き耐スパッタ
性や通電性等の低下を招くことなく、又、大幅なコスト
上昇を招くことなく、鋼の溶接に好適に使用できる。
【0022】このように特定条件での自然電位が SCE基
準で−600 〜−400 mVである溶接ワイヤは耐錆性に優れ
ている。これは、鋭意研究を重ねた結果として得られた
新規な技術的知見であり、本発明はかかる知見に基づき
完成されたものである。
【0023】この詳細を以下に記述する。鋼用めっきな
し溶接ワイヤの耐錆性向上技術を開発するため、先ず、
鋼用めっきなし溶接ワイヤの錆発生機構を検討した。そ
の結果、下記機構、、のいづれか、或いは組み合
わせにより鉄錆が発生することが明らかとなった。
【0024】機構:ワイヤのマトリックスである鋼の
組織において、電気化学的な不均一部、例えばフェライ
トとセメンタイト或いは結晶粒界と粒内部とがミクロ電
池を形成し、電気化学的に卑である部分からFeがFe2+
なり溶解し、鉄錆となる。 機構:ワイヤ表面に付着した液滴の中心部と周囲メニ
スカス部との溶存酸素の濃度差により酸素濃淡電池が形
成され、液滴中心部が腐食反応のアノードとなり、Feが
Fe2+となり溶出し、鉄錆となる。 機構:ワイヤ表面にCl- 等の腐食性アニオンを含む水
分が付着し、ワイヤの鋼の表面皮膜を破壊するか、ある
いはフラーデ電位(Flade 電位)を低下させることに起
因して、母材のFeが溶出し、鉄錆となる。
【0025】次に、かかる錆発生機構を考慮しつつ、溶
接ワイヤの耐錆性支配因子を鋭意検討した。その結果、
溶接ワイヤの耐錆性は表面皮膜特性及び表面の電気化学
的特性に支配されており、これら両特性は特定の条件で
測定された電気化学的パラメータである自然電位に反映
されることを見出した。即ち、鋼用めっきなし溶接ワイ
ヤの耐錆性と、種々の電気化学的パラメータとの関係に
ついて詳細に調べたところ、特定条件での自然電位(脱
脂後に30℃の大気開放の0.1 mol/l NaCl水溶液中で測定
された浸漬300 秒後での自然電位)と耐錆性との間には
密接な関係があり、この特定条件での自然電位として−
600 〜−400mV (SCE基準)を示す鋼用めっきなし溶接ワ
イヤは、耐錆性に優れており、又、他の必要特性が低下
しなくて良好であるという知見が得られた。
【0026】そこで、本発明に係る鋼用めっきなし溶接
ワイヤは、前述の如く、特定条件での自然電位が−600
〜−400mV (SCE基準)となるものとしており、従って、
前記知見よりして、防錆油の塗油や銅めっきを適用せ
ず、それら適用の場合での如き耐スパッタ性や通電性等
の低下を招くことなく、又、大幅なコスト上昇を招くこ
となく、優れた耐錆性を有し得る。
【0027】ここで、本発明での数値限定理由を以下説
明する。特定条件での自然電位が、−600mV (SCE基準)
よりも卑となるものは、耐錆性が劣って不充分である
が、−600 mV以上(SCE基準)となるものは、表面皮膜特
性が強固であるか、或いはカソード反応を促進して自己
不働態化を高める作用があり、耐錆性に極めて優れてい
る。しかし、−400mV (SCE基準)よりも貴となるもの
は、表面皮膜の絶縁性が大きくなり、溶接アークの安定
性が低くて劣り、溶接作業効率が劣る。かかる点から−
600 〜−400mV (SCE基準)となるものとしている。
【0028】特定条件での自然電位は、前記の如く、脱
脂後に30℃の大気開放の0.1 mol/lNaCl水溶液中で測定
された浸漬300 秒後での自然電位である。このとき、Na
Cl水溶液の濃度:0.1 mol/l 、該水溶液の温度:30℃、
浸漬300 秒後での自然電位としているのは、そうする
と、自然電位と耐錆性との間には密接な関係があり、自
然電位による耐錆性の確かな判別が可能であるからであ
る。
【0029】前記特定条件での自然電位が−600 〜−40
0mV (SCE基準)となるものの中、−500 〜−440 mV(SCE
基準)となるものは、特に、耐錆性に極めて優れ、又、
溶接アークの安定性に優れている(第2発明)。
【0030】酸化処理により形成された酸化皮膜を表面
に有する鋼用めっきなし溶接ワイヤは、前記特定条件で
の自然電位が−600 〜−400mV (SCE基準)となり、従っ
て、耐錆性に極めて優れ、又、溶接アークの安定性に優
れている(第3発明)。ここで、酸化処理としては、特
に限定されるものではなく、例えば、加熱による酸化、
電解液中での電気化学的な陽極酸化、硝酸等の酸化剤に
よる不働態化等の酸化現象を利用したすべての処理、表
面への半導体物質や酸化物の塗布、蒸着等のプレーティ
ングによる半導体皮膜や酸化物皮膜形成の処理を適用で
きる。
【0031】本発明は、前述の如く、採取された試料電
極(短尺ワイヤ)の特定条件での自然電位が−600 〜−
400 mV(SCE基準)となるような鋼用めっきなし溶接ワイ
ヤであり、かかる溶接ワイヤは耐錆性及び溶接アークの
安定性に優れている。このことは、採取された試料電極
(短尺ワイヤ)の特定条件での自然電位を測定し、その
自然電位により、鋼用めっきなし溶接ワイヤの耐錆性及
び溶接アークの安定性を判別できることを示している。
従って、本発明は、鋼用めっきなし溶接ワイヤの耐錆性
及び溶接アークの安定性の迅速評価方法として適用し
得、かかる迅速評価方法であるともいうことができる。
この迅速評価方法は、より詳細には、鋼用めっきなし溶
接ワイヤから試料電極(短尺ワイヤ)を採取し、それに
ついて特定条件での自然電位を測定し、その自然電位が
−600 〜−400 mV(SCE基準)となるような鋼用めっきな
し溶接ワイヤを耐錆性及び溶接アークの安定性に優れ、
合格と判定することを特徴とする鋼用めっきなし溶接ワ
イヤの耐錆性及び溶接アークの安定性の迅速評価方法で
あるといえる。かかる迅速評価方法によれば、鋼用めっ
きなし溶接ワイヤの耐錆性及び溶接アークの安定性を迅
速かつ正確に評価し得る。
【0032】本発明において、鋼用めっきなし溶接ワイ
ヤとは、鋼用溶接ワイヤであって銅めっき等のめっきが
施されていないものをいう。大気開放のNaCl水溶液と
は、溶液中への酸素や不活性ガス(アルゴン等)等のガ
スの吹き込みがなく、且つ溶液の水面が大気圧の大気と
接している状態のNaCl水溶液のことである。ワイヤの脱
脂とは、ワイヤ表面に付着している油成分、脂肪、異物
(ゴミ)等の付着物を除去し、清浄化することである。
この脱脂の方法は特には限定されないが、通常はアセト
ン、アルコール、エーテル等の有機溶剤により洗浄する
方法や、有機溶剤での洗浄後に水洗する方法が採用され
る。かかる脱脂の後、NaCl水溶液中に浸漬する前に、乾
燥してもよいし、乾燥しなくてもよい。
【0033】
【実施例】0.10C-0.48Si-0.81Mn 鋼を溶製し、圧延、伸
線を行い、該伸線の後に表1に示す如き塗油等の処理を
行って、ワイヤ径:1.2mmφのソリッドワイヤを作製し
た。そして、これらソリッドワイヤから試料電極(短尺
ワイヤ)を採取し、これら試料電極について、アセトン
により脱脂して付着物を取り除いた後に、30℃の大気開
放の0.1 mol/l NaCl水溶液中で自然電位を測定し、浸漬
300 秒後の自然電位を求めた。その浸漬300 秒後の自然
電位(SCE基準)を表1に示す。
【0034】又、0.05C-0.01Si-0.20Mn 鋼のフープ材を
用いて、成型加工、成型伸線、仕上げ伸線を行って、ワ
イヤ径:1.2mmφのフラックス入りワイヤを作製した。こ
のとき、仕上げ伸線後または成型加工前あるいは成型加
工後に、表2に示す如き処理を行った。そして、これら
ワイヤから試料電極(短尺ワイヤ)を採取し、これら試
料電極について、上記ソリッドワイヤの場合と同様の方
法により浸漬300 秒後の自然電位を求めた。その自然電
位(SCE基準)を表2に示す。
【0035】上記試料電極(短尺ワイヤ)採取後のソリ
ッドワイヤ及びフラックス入りワイヤから耐錆性評価試
料を採取し、これら試料について温度:30℃、相対湿
度:80%RHの条件で恒温恒湿試験を行い、耐錆性を評価
した。即ち、所定時間後に試料を恒温恒湿試験の雰囲気
下から取り出し、試料の発錆の程度をJIS D 0201に定め
られた方法に従ってレーティングナンバー付けを行っ
た。その結果を図1及び2に示す。ここで、図1はソリ
ッドワイヤ、図2はフラックス入りワイヤについてのも
のである。レーティングナンバーは、それぞれの10個の
平均で示している。
【0036】図1及び2並びに表1及び2から、本発明
の実施例に係る溶接ワイヤは、いづれも優れた耐錆性を
有しており、特に浸漬300 秒後の自然電位が−500 〜−
440mV(SCE基準)の範囲にあるものは、一層優れた耐錆
性を示すことがわかる。
【0037】上記耐錆性評価試料の採取後のソリッドワ
イヤ及びフラックス入りワイヤから試料を採取し、これ
ら試料について室温の1%NaCl水溶液を散布してから上
記と同様条件で同様の恒温恒湿試験を行い、同様の方法
によりレーティングナンバー付けを行った。その結果を
図3及び4に示す。ここで、図3はソリッドワイヤ、図
4はフラックス入りワイヤについてのものである。レー
ティングナンバーは、それぞれの10個の平均で示してい
る。これらより、本発明の実施例に係る溶接ワイヤは、
塩分のある比較的厳しい腐食環境においても優れた耐錆
性を発揮し、特に浸漬300 秒後の自然電位が−500 〜−
440 mV(SCE基準)の範囲にあるものは、一層優れた耐錆
性を示すことがわかる。
【0038】以上の如く、本発明の実施例に係る溶接ワ
イヤは、耐錆性に優れていることがわかる。又、防錆油
を塗布しなくても耐錆性に優れており(本発明1、3、
5、6、8、10)、従来の溶接ワイヤ(比較例1、6)
と同等もしくはそれ以上の耐錆性を有していることがわ
かる。
【0039】次に、表2に示したフラックス入りワイヤ
(上記試料を採取後のもの)をスプール状に巻き、これ
を温度:30℃、相対湿度:80%RHの恒温恒湿試験(試験
時間:7,14,30日)に供した後、溶接ワイヤとして用
い、溶接速度:50cm/min、電流:200 〜250 Aの条件で
軟鋼の自動溶接を行い、溶接ワイヤの送給不良発生回数
を調べた。又、恒温恒湿試験に供することなく、溶接ワ
イヤとして用い、上記と同様の溶接を行った。それらの
結果を表3に示す。
【0040】表3からわかる如く、比較例に係るものの
中、比較例10のものでは、恒温恒湿試験に供することな
く、溶接ワイヤとして用い、溶接を行った場合でも、溶
接アークが不安定となり、溶接性に劣っていた。この原
因は、溶接ワイヤの表面皮膜の絶縁性が高すぎることに
ある。その他の比較例のものでは、恒温恒湿試験に7
日、14日あるいは30日供した後に溶接ワイヤとして用い
た場合に送給不良が発生している。これに対し、本発明
の実施例に係るものにおいては、恒温恒湿試験に30日供
し、恒温恒湿雰囲気に暴露した後に溶接ワイヤとして用
いた場合であっても送給不良の発生が認められない。こ
れは、本発明の実施例に係る溶接ワイヤが優れた耐錆性
を有していることに起因するものである。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【発明の効果】本発明に係る鋼用めっきなし溶接ワイヤ
は、耐錆性に優れており、そのため送給性に優れ、美観
上の点でも良好であり、又、防錆油の塗油や銅めっきを
適用するものではないので、それら適用の場合での如き
耐スパッタ性や通電性等の低下及び大幅なコスト上昇を
招くことなく、鋼の溶接に好適に使用できるという効果
を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例に係るソリッドワイヤについての恒温
恒湿試験での時間と耐錆性指数であるレーティングナン
バーとの関係を示す図である。
【図2】 実施例に係るフラックス入りワイヤについて
の恒温恒湿試験での時間と耐錆性指数であるレーティン
グナンバーとの関係を示す図である。
【図3】 実施例に係る1%NaCl水溶液散布後のソリッ
ドワイヤについての恒温恒湿試験での時間と耐錆性指数
であるレーティングナンバーとの関係を示す図である。
【図4】 実施例に係る1%NaCl水溶液散布後のフラッ
クス入りワイヤについての恒温恒湿試験での時間と耐錆
性指数であるレーティングナンバーとの関係を示す図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河野 知志 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株式会社神戸製鋼所 藤沢事業所内 (72)発明者 立花 知之 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株式会社神戸製鋼所 藤沢事業所内 (56)参考文献 特開 昭50−146540(JP,A) 特開 昭55−139195(JP,A) 特開 昭55−156690(JP,A) 特開 昭57−70100(JP,A) 特開 昭57−127597(JP,A) 特開 昭58−393(JP,A) 特開 昭58−81595(JP,A) 特開 昭58−107294(JP,A) 特開 平3−210992(JP,A) 特開 昭60−191694(JP,A) 特開 昭61−3698(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B23K 35/30 B23K 35/02 B23K 35/36

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 脱脂後に30℃の大気開放の0.1 mol/l Na
    Cl水溶液中で測定された浸漬300 秒後での自然浸漬電位
    が飽和カロメル電極基準で−600 〜−400 mVであること
    を特徴とする耐錆性に優れた鋼用めっきなし溶接ワイ
    ヤ。
  2. 【請求項2】 前記自然浸漬電位が飽和カロメル電極基
    準で−500 〜−440mVである請求項1記載の耐錆性に優
    れた鋼用めっきなし溶接ワイヤ。
  3. 【請求項3】 酸化処理により形成された酸化皮膜を表
    面に有する請求項1又は2記載の耐錆性に優れた鋼用め
    っきなし溶接ワイヤ。
JP29428395A 1995-11-13 1995-11-13 耐錆性に優れた鋼用溶接ワイヤ Expired - Lifetime JP2793534B2 (ja)

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