JP2007239063A - Sn−Znメッキ鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、鋼板にNiプレメッキを0.05〜2g/m2の範囲のプレメッキ量で行い、次いでこの鋼板に対し、Znを3〜20重量%含有するSn−Znメッキ浴を用いて、メッキ浴の浴温以上に予備加熱してから、フラックスを用いることなく、還元することなく、メッキ浴に浸漬し、鋼板にSn−Znメッキ層を形成するとともに、鋼板とSn−Znメッキ層との界面にSn−Feが主体の合金層を形成するものである。
【選択図】図5
Description
しかしながら近年、環境への配慮からPbを使用しない材料の要求が強くなり、Pbを使用しない自動車用燃料タンク材料の候補として、Sn系メッキ鋼板が提供された。ところが、Snは一般の環境ではFeよりも貴な電位にあり、ピンホールや加工疵等から地鉄が溶出し易いという欠点を有していたので、これらの欠点を適正量のZnを更に添加することにより解決したSn−Zn合金メッキ鋼板が種々提供されている。
前記Sn−Zn合金メッキ鋼板の製造技術として、鋼板の表面にフラックスを塗布した後、鋼板の表面をSn−Zn合金のメッキ浴中に浸漬してSn−Zn合金メッキを行う場合において、前記フラックスとしてSn−Zn合金浴の浴温度より20℃以上低い融点のフラックスを用いる技術が知られている。(特許文献1参照)
また、鋼板の表面に、Ni、Fe、Zn、Snの1種以上を含む合金層を形成し、その上にSnを40〜99%含み、亜鉛晶の長径が250μm以上のものが20個以下/0.25mm2であり、厚み4〜50μmのSn−Zn合金メッキをフラックスを用いた溶融メッキ法により形成してなるSn−Zn合金メッキ鋼板が知られている。(特許文献2参照)
フラックスを用いてメッキを行う方法の他の例として、前記特許文献2には、脱脂、酸洗後の鋼板にNiプレメッキを行うか、Fe−Niプレメッキを施し、酸化炉または還元炉において加熱処理した後、Sn−Zn溶融メッキを行い、Sn−Znメッキの付着量を調整する技術が記載されている。また、前記特許文献2には、酸洗後の鋼板にNiプレメッキを行うか、Fe−Niプレメッキを施し、フラックスを用いること無く酸化炉または無酸化炉、還元炉を用いて加熱処理した後、溶融メッキを行う技術が開示されている。
しかし、本発明者らの研究によれば、先のNiプレメッキを用いて酸化炉または還元炉にて加熱するメッキ方法を行うと、Niプレメッキと鋼板の界面においてFe−Sn系合金の異常粒が成長し易く、この異常成長粒が鋼板をスポット溶接する際の溶接性の低下を引き起こすおそれがあることを知見している。また、異常粒成長に起因してSn−Znメッキ層の表面が粗くなり、スポット溶接時にSn−Znメッキ層表面の凸部に溶接電流が集中し、塵が発生し易くなるとともに、溶接チップの交換時期が短くなるという問題もあった。
(2)本発明は、前記鋼板を加熱する際の雰囲気中の酸素濃度を50ppm以下とすることを特徴とする。
(4)本発明は、前記メッキ浴温を250℃以上、300℃以下とすることを特徴とする。
(5)本発明は、前記1〜4のいずれかの製造方法において、前記鋼板を加熱する際の雰囲気にH2ガスを用いることなくN2ガスを用いることを特徴とする。
(7)本発明は、鋼板に0.05〜2g/m2のプレメッキ量でNiプレメッキを施した状態とすることによって、前記Niプレメッキにより鋼板表面を部分的に露出状態で薄く覆い、次いで、H2を含まない雰囲気においてSn−Znメッキ浴により鋼板表面にSn−Znメッキ層を生成させるとともに、このSn−Znメッキ層の生成時にH2還元をしないようにしてメッキ層界面におけるSn−Fe主体の合金層の粗大粒成長を抑制することを特徴とする。
自動車などの燃料タンクは特に厳しい加工性と耐燃料性が重要であり、本発明技術を適用した場合に優れた加工性と耐燃料性が両立し、溶接性にも優れたものを提供できる。
本実施形態のSn−Znメッキ鋼板の製造方法においては、第1に、酸洗工程やリンス工程などの前処理工程を経て表面を清浄化した鋼板に対し、0.05〜2g/m2の範囲の付着量のNiのプレメッキ処理を行い、図1に示す如く鋼板1の表面側にNiのプレメッキ層2を形成する。先の範囲のNiプレメッキ量であるならば、鋼板1の表面全面を極薄く覆う程度の被覆量であることから、Niプレメッキ層2を拡大してみると、図1に示すように部分的に鋼板1の素地部分の鉄が不規則に露出した状態の層となっている。本発明ではこのように鋼板1の素地部分の鉄が一部露出した状態のNiプレメッキ層2とすることが重要であり、Niプレメッキ層が先の付着量を超える量となって鋼板1の全表面を厚く緻密に覆い隠した被覆層とするのは好ましくない。
なお、図1と図2においては説明の簡略化のために、Niプレメッキ層2とSn−Znメッキ層3を鋼板1の片面にのみ形成した場合の構成図として説明したが、以下に詳細に説明する工程においては鋼板1の表裏両面あるいは全周面に同じ構成のNiプレメッキ層2とSn−Znメッキ層3を形成するものとして説明する。
このNiプレメッキ処理においてNiプレメッキの付着量を0.05g/m2未満とすると、Niプレメッキの量が少なくなり過ぎて、後述する手順に従ってSn−Znメッキ鋼板としても耐食性が向上しない。Niプレメッキ処理においてNiプレメッキの付着量が2g/m2を超える量になると、本実施形態の如くフラックスを用いないフラックスレスメッキとしてSnの鋼板表面に対する密着性が劣る結果となる。
前記加熱装置18の導入部側に設けられた搬送ローラ20と前記中継部17の内部に設けられた搬送ローラ21と前記メッキ漕15の内部に設けられた搬送ローラ22とを介して先の帯状の鋼板1がメッキ浴に浸漬され、メッキ浴内において鋼板1の周面にSn−Znメッキ層2を形成できるようになっている。また、前記加熱装置18とスナウト16にN2ガスなどの雰囲気ガス調整装置19が接続されていて、加熱装置18とスナウト16の内部をN2ガス雰囲気に維持することができるようになっているとともに、加熱装置18とスナウト16の内部を50ppm以下などの低濃度の酸素雰囲気に調整できるように構成されている。
なお、本発明ではフラックス無しでSn−Znメッキ処理することを基本とするので、従来技術においてはメッキ浴に浸漬する前にフラックスの塗布を行っていたのに対し、本実施形態の工程では一切フラックスを使用しない。
このSn−Znメッキ層3が生成する場合について詳述すると、図1に示すように部分的に素地の鉄が露出された状態のNiプレメッキ層2を備えた鋼板1に対し、フラックスが無い状態で、かつ、還元されない状態において、メッキ時の鋼板表面はミクロ的に不均一の状態であり、鋼板1とその表面に生成するSn−Znメッキ層3との界面部分において、Sn−Fe合金層4が生成する。
従来一般のSnメッキは、経済性と加工性などの観点から20〜50g/m2程度の量に設定されている。このようなメッキ厚では、本発明者の研究により、従来技術の説明の部分において前述した如くSn−Fe合金層に異常粒組織が発生し、表面の粗度が大きくなる。
これに対して、先の特許文献2(特願平8−269733号公報)に記載されている如く、鋼付近の合金組織については、Niプレメッキ後、溶融メッキ、あるいは電気メッキ後、加熱して封孔処理を行うと、鋼との界面に鋼成分−メッキ成分を含む組織を生じる。この組織を合金層と称することができるが、この合金層にはNi、Fe、Zn、Snの1種以上を含んでおり、これらの組織はガソリン等の燃料に対して腐食が進行し難く、合金層の厚みが厚い方が長期耐食性を確保する点で有利である。
なお、この知見については、本発明者らが、特許文献2(特願平8−269733号公報)に記載されている、フラックスを用いるメッキ技術に基づいてメッキ層を形成し、このメッキ層の成分分析を行ない、メッキ層を電解剥離して剥離面でのX線回折分析を行った結果、Sn−Fe系の合金層は70〜95%がFeSn2であり、残部がNi−Sn系のNi3Sn4であることが判明している。(メッキ層を電解剥離する条件は、5%NaOH溶液中、室温で10mA/cm2とした。)
なお、特許文献2(特開平8−269733号公報)には、NiまたはFe−Niのプレメッキを行ってから、もしくはプレメッキ無しの状態で、酸化炉または無酸化炉、還元炉等を有する炉で加熱処理を行った後に溶融メッキ処理を行う例が示されている。
この場合には、NiまたはFe−Niのプレメッキ層は、酸化炉または無酸化炉、還元炉等の中で、鋼板の鉄と反応して、いわば、鋼板表面には、Niの濃化した状態が形成されていると言われている。この場合には、還元炉の中で表面の酸化層が還元されて、鋼板表面は活性化された状態であり、メッキ浴中のSn−Zn溶融金属との濡れ性が改善されており、Fe、NiとSnの合金化が促進すると考えられる。
また、メッキ浴がZn主体の溶融金属の場合には、鋼板の表面にNiのメッキ層が完全に覆っていたとしても、浴の温度が高いこともあり、浴中のZnがNiを溶解するので、ZnとNiの合金層が形成されると考えられる。
これに対してフラックス無しの場合は、鋼板の鉄が部分的に露出したNiプレメッキ層であることが重要であり、この場合に鋼板表面は必然的にミクロ的に不均一であり、このまま合金層をメッキ浴中で成長させると不均一に異常粒成長することがあるので、本発明者らは、フラックスレスのメッキの場合について、異常粒成長を抑制するために、メッキ浴に入る前の鋼板表面状態に着目し、メッキ浴に入る前の雰囲気中のガス組成がメッキの生成に大きく影響を与えることを知見し、その結果として本発明に到達したものである。
メッキ処理を行う前に、H2が雰囲気ガス中に存在する状態で鋼板1を昇温してゆくと、鋼板1の表面部分では前述のNiの酸化物とFeの酸化物がそれぞれ生成する。物質の酸化と還元の状態を把握できるエリンガム図を参照すると、H2による酸化物の還元力は、NiO>FeOであり、NiOの還元力が大きいと判断できるので、仮に、鋼板表面にNi酸化物とFe酸化物が生成し、これらの酸化物をH2の存在下で還元した場合、鋼板表面のNi部位とFe部位の還元状態(換言すると、鋼板清浄度)の差異が顕著になり易くなり、その結果として、Sn−Zn合金層の核生成と成長に差異が生じやすくなり、この結果としてSn−Zn合金粒の異常成長が助長されるものと思われる。
これに対し、雰囲気中にH2が存在しない場合、NiとFeの酸化膜が極めて薄く存在していると、これらの酸化膜のH2による還元がなされなくなり、Sn−Fe合金の異常粒成長がなされない状態で健全なSn−Znメッキ層が成長し、結果的にSn−Znめっき層の表面粗度が粗くなることが無くなり、表面の滑らかなSn−Znめっき層3を得ることができるようになる。
具体的に雰囲気中の酸素濃度は、50ppm以下とすることが好ましく、50ppmを超える酸素濃度とすると、Sn−Znメッキ層3の付着性が低下する。
次に、Niプレメッキ層2を形成した後に加熱してから、メッキ浴に入る前までの間に鋼板1を搬送する雰囲気としてN2ガス雰囲気が好ましい。なお、高純度Arガスは高価で製造コスト高となり、好ましくない。
鋼板1をSn−Znメッキ浴13に侵入させる際の鋼板温度は、310℃〜380℃の範囲とすることが好ましい。この温度範囲では鋼板1の表面にわずかに生成したNiO、FeOが還元され、合金層の異常粒成長が抑制される。鋼板温度が310℃未満では前記酸化物の還元が難しくなり、380℃を超える温度では合金層の異常粒成長が始まってしまうので好ましくない。
Sn−Znメッキ浴13のZn含有量は、3%〜20%の範囲が好ましい。
Sn−Znメッキ浴13の温度は250℃〜300℃の範囲が好ましい。Sn−Znメッキ浴13の温度が250℃未満ではメッキ性が悪化し、Sn−Znメッキ浴13の温度が300℃を超える温度では鋼板1の侵入温度を310℃に下げても合金層の異常粒成長が始まってしまう問題がある。
ところで、前述の方法において、Niプレメッキを行わない場合、50ppm未満の酸素含有雰囲気において低温加熱を行うと、全面にFeOが生成し、Snではこの酸化物を還元できないので、メッキ密着性が悪化する。また、加熱前に前処理で酸洗しても、鋼板表面が活性なので加熱直前にFeOが生成してしまう。これに対してNiプレメッキ層2を形成することは、鋼板1の表面を酸化に対して不活性とする作用も有する。
鋼板に対してZnメッキ浴(例えば浴温420℃以上)中においては、NiもFeも浴中に溶解して反応する。また、NiOとFeOもZnメッキ浴中において還元される。前記文献中におけるNiプレメッキの役割は、このZn浴中での溶解により、メッキ性を向上させることにある。この文献技術においてNiプレメッキがない場合、低温加熱時にメッキ性が悪化する。
また、通常のZnメッキは、メッキ浴を出てから熱処理することにより合金化するので、これまで説明してきた本願発明に係るSn−Zn合金浴との差異は明らかである。
これに対して図3に示す如く鋼板1の表面にSn−Znメッキ層4Aが形成され、それらの界面部分に異常粒成長が見られるSn−Fe合金層3Aが形成された鋼板5Aは、Sn−Zn合金層3Aの表面部分に多数の凸部が形成されているので、溶接チップとSn−Zn合金層3A表面の凸部との間で溶接電流の集中が起こり易くなり、表面の凸部に溶接電流が集中することで溶接チップの交換頻度が高くなり、連続打点数が伸びなくなり、塵が発生し易くなる。
前記加熱装置により加熱した温度を侵入板温度として表1に記載し、加熱装置及びスナウトの雰囲気中の酸素濃度を計測し、Sn−Znメッキ浴の浴中Zn濃度と浴温度を測定して表1に記載した。
また、Sn−Znメッキ後の鋼板のメッキ性と溶接性について試験した。表1に示すメッキ性の試験について、溶融メッキ後の鋼板試料表面を目視で観察し、不メッキなしの試料を○、不メッキありの試料を×として判断した。
溶接性については、図6に示す如く対になる溶接チップ25、26で試料の鋼板27、28を挟み付ける状態に配置し、溶接時のチリ発生電流の95%で連続スポット溶接を実施し、溶接部のナゲット29の長さ(L)が4t(1/2)以下(t:板厚)になる溶接打点をカウントし、溶接打点数が500点以上の試料を○、溶接打点数が500点未満のものを×として判断し、表1に記載した。(なお、溶接する試料の鋼板27、28に板厚差がある場合は、板厚の薄い方の鋼板の厚みをtとした。)
表1に示す結果を項目毎に見ると、Niプレメッキの付着量が少ない試料はいずれにおいてもNi−Sn−Znの合金化反応が不足となり、不メッキが発生した。Sn−Zn浴温度が所定の温度(250℃)以上にならないと、合金化反応が不足になり、不メッキが発生した。侵入板温度が所定の温度(310℃)以上にならないと、合金化反応が不足になり、不メッキが発生した。
逆に、侵入板温度が高くなりすぎる(380℃を超える)と合金化反応が促進され、合金層において粗大粒発生が進み、Sn−Znメッキ層表面が荒れる結果、メッキ表面の凸部に溶接電流が集中し易くなり、チリが発生し易くなった。
昇温時間については、長すぎる(160秒)と表面酸化が進行し過ぎ、メッキ性、溶接性ともに悪化する。雰囲気中酸素濃度について、濃度が高すぎる(60ppm)と表面酸化が進行し過ぎ、メッキ性、溶接性ともに悪化する。
図7と図8に示す金属組織の比較から、図7に示す組織写真の試料では粒径0.2μm程度の微細な結晶粒であったものが、図8に示す組織写真の試料では粒径1.6μm程度の異常成長粒が多数発生された結晶粒となっており、本発明方法を実施することにより、異常成長粒の発生を抑制した結晶粒にできることが明らかとなった。
2 Niプレメッキ層、
3 Sn−Znメッキ層、
4 合金層、
5 Sn−Znメッキ鋼板、
Claims (7)
- 鋼板にNiプレメッキを0.05〜2g/m2の範囲のプレメッキ量で行い、次いでこのNiプレメッキ後の鋼板に対し、Znを3〜20重量%含有するSn−Znメッキ浴を用いて、前記メッキ浴の浴温以上に予備加熱してから、フラックスを用いることなく、還元することなく、前記メッキ浴に浸漬し、前記鋼板にSn−Znメッキ層を形成するとともに、前記鋼板とSn−Znメッキ層との界面にSn−Feが主体の合金層を形成することを特徴とするSn−Znメッキ鋼板の製造方法。
- 前記鋼板を加熱する際の雰囲気中の酸素濃度を50ppm以下とすることを特徴とする請求項1に記載のSn−Znメッキ鋼板の製造方法。
- 前記鋼板の加熱温度を310℃以上、380℃以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載のSn−Znメッキ鋼板の製造方法。
- 前記メッキ浴温を250℃以上、300℃以下とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のSn−Znメッキ鋼板の製造方法。
- 前記鋼板を加熱する際の雰囲気をN2ガス雰囲気とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のSn−Znメッキ鋼板の製造方法。
- 前記鋼板が燃料タンク用途であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のSn−Znメッキ鋼板の製造方法。
- 鋼板に0.05〜2g/m2のプレメッキ量でNiプレメッキを施した状態とすることによって、前記Niプレメッキにより鋼板表面を部分的に露出状態で薄く覆い、次いで、H2を含まない雰囲気においてSn−Znメッキ浴により鋼板表面にSn−Znメッキ層を生成させるとともに、このSn−Znメッキ層の生成時にH2還元をしないようにしてSn−Fe主体の合金層の粗大粒成長を抑制することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のSn−Znメッキ鋼板の製造方法。
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