JP3470610B2 - スポット溶接性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法 - Google Patents

スポット溶接性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法

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JP3470610B2
JP3470610B2 JP25130198A JP25130198A JP3470610B2 JP 3470610 B2 JP3470610 B2 JP 3470610B2 JP 25130198 A JP25130198 A JP 25130198A JP 25130198 A JP25130198 A JP 25130198A JP 3470610 B2 JP3470610 B2 JP 3470610B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スポット溶接性に
優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法に関す
る。より詳述すれば、本発明は、スポット溶接時の電極
チップの損耗を抑制して、電極チップの耐久性を向上さ
せることにより、連続打点性を向上させることができ、
さらには、連続打点時における鋼板からの溶金が飛び散
る現象 (スパッタあるいはスパッタ現象) 、および鋼板
と電極チップとの溶着現象 (スティッキング) を防止す
ることができるスポット溶接性に優れた合金化溶融亜鉛
めっき鋼板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、自動車の車体は、各種形
状にプレス加工されたパネル(鋼板)同士に抵抗溶接
(特にスポット溶接) を行って接合することにより、組
み立てられる。このスポット溶接では、連続的に多数の
点溶接を行うため、その生産性を向上させるには、でき
るだけ連続打点数を上げることが要求される。
【0003】一方、溶接時に鋼板と電極チップ(単に電
極とも言う)が溶着を起こすスティッキング現象が発生
した場合には、電極の表面の脱落が発生して溶接できな
くなるし、電極損耗を助長し、連続打点数が減少するこ
とから、スティッキング現象の発生はできるだけ抑制す
ることが好ましい。また、溶接時にスパッタが発生した
場合には溶金が鋼板に付着するために、車体表面の手入
れが必要となりスパッタ現象もできるだけ抑制すること
が、生産性の向上には重要である。
【0004】したがって、スポット溶接に際しては、連
続打点数をできるだけ上げるとともに、スティッキング
現象およびスパッタ現象をできるだけ抑制することが、
生産性の向上には不可欠である。
【0005】近年、防錆性向上の観点から、表面処理鋼
板、特に、溶融亜鉛めっき後の鋼板に熱拡散処理を行っ
て、亜鉛めっき皮膜を素地鋼と合金化させて得た合金化
溶融亜鉛めっき鋼板が、自動車車体用パネルに積極的に
使用されてきている。しかし、この合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板では、めっき皮膜の主成分である亜鉛が母材鋼板
の鉄よりも融点が低いことから、この亜鉛が、銅を主成
分とする電極へ拡散することによる電極損耗が激しく、
スポット溶接時の連続打点性が低いことが従来より問題
視されてきた。
【0006】従来にあっても、合金化溶融亜鉛めっき鋼
板の連続打点性を向上させるため、例えば、特開昭59−
104463号公報には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき
最表部に半導体である酸化Zn皮膜を形成させる発明が提
案されている。
【0007】一方、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造に
際して、めっき皮膜と母材鋼板との密着力を向上させる
ために溶融亜鉛めっき浴中に、0.08〜0.17重量% (以
下、本明細書においては特にことわりがない限り「%」
は「重量%」を意味するものとする) 程度のAlを含有さ
せるため、熱拡散処理によって形成される合金化溶融亜
鉛めっき皮膜表面には、一般的にAl2O3(アルミナ) が残
存する。しかしながら、Al2O3 は、絶縁体であるため
に、それが存在するとスポット溶接時に電極表面の発熱
が過大となる。そのため、電極表面に脆い合金層が厚く
形成されて、電極損耗が著しくなり、連続打点性を低下
させるという問題もある。
【0008】このような溶接性の観点から、特開平6−
73521 号公報は、Al量の制限と前述した酸化Zn皮膜の形
成とを組み合わせることにより、連続打点性の改善を図
ることを提案している。
【0009】一方、特開平4−21750 号公報は、合金化
溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量を制限することにより、連
続打点性の改善を図ることを提案している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の提案にかかる従来技術によっても、合金化溶融亜鉛め
っき鋼板のスポット溶接時の連続打点性を改善すること
はできない。
【0011】すなわち、特開昭59−104463号公報により
提案された発明は、合金化溶融亜鉛めっき皮膜表面に半
導体である酸化Zn皮膜を形成し、この酸化Zn皮膜のバリ
アー効果により、合金化溶融亜鉛めっき皮膜表面に存在
する金属ZnとCu製の電極との間におけるCu−Zn反応を抑
制しようとするものである。しかし、この酸化Zn皮膜
は、存在状態によって、大きく導電性が異なるため、ス
ポット溶接時における電極表面の発熱量が大きく変動す
る。そのため、スポット溶接の際の加圧および通電によ
り、酸化Zn皮膜が簡単に破壊されてしまい、前述したCu
−Zn反応を確実に抑制できず、このことも、スポット溶
接性がばらつく一因であると考えられる。
【0012】すなわち、酸化Zn皮膜はその存在状態によ
って、導電性が大きく異なるため、合金化溶融亜鉛めっ
き皮膜表層に酸化亜鉛皮膜を形成しても連続打点性は著
しく変動し、連続打点性を確実に向上させることは難し
い。
【0013】特開平4−21750 号公報は、めっき皮膜全
体のAl量を制御しようとする方法であり、同6−73521
号公報により提案された発明は、合金化溶融亜鉛めっき
皮膜の最表部のAl量を制限するものである。
【0014】確かに、酸化皮膜中のAl量(Al2O3量) を低
減することによって、連続打点性の向上、スパッタの抑
制の効果は認められるが、後述のように、Al2O3 量を低
減すると、スポット溶接時の溶着現象であるスティッキ
ング現象を起こしやすく、Al2O3 量を極端に低減させる
と、スティッキング現象による電極損耗が顕著になり、
期待した連続打点性が確保できなくなるという問題があ
る。
【0015】また、皮膜中のAl量の低減は、連続打点性
の向上に対し、効果的であるが、スパッタ発生量が多く
なるという問題がある。また、このような従来技術で
は、皮膜中に存在するAlをできるだけ、Al2O3 の形で残
すことが効果的と推測されるが、過剰量のAl2O3 が存在
すると、これも、スパッタの増大につながり、問題があ
る。
【0016】このように、めっき皮膜層全体のAl量を規
定しても、連続打点性は向上するが、スパッタ発生とい
う問題が残り、一方、めっき皮膜最表部のAl量を極力低
減すると、スティッキング現象が発生するという問題が
ある。
【0017】したがって、連続打点性を向上させ、か
つ、スパッタ、スティッキング現象の発生を極力抑制す
るためには、めっき皮膜全体の組成と、めっき皮膜最表
部の組成の両方をうまく制御することが必要である。特
に、めっき電極先端の溶着 (スティッキング現象) を抑
制させるためには、ある程度微量にAl2O3 を残すことが
必要であり、また、過剰にAl2O3 が残存した場合には、
電極表面の発熱量が過大となり、酸化Zn層の破壊が発生
するとともに、過剰な金属Znが残存した状態でAl2O3
存在した場合には、金属Znの電極への拡散を促進させて
しまうため、溶接性が著しく劣化する問題があり、前述
の従来技術でも、連続打点性の改善効果は少なく、不十
分である。
【0018】ここに、本発明の目的は、スポット溶接の
際の相矛盾するスパッタおよびスティッキングの現象を
いずれも抑制するとともに、電極チップの損耗を抑制し
て耐久性を向上させることにより、連続打点性を向上さ
せることができるスポット溶接性に優れた合金化溶融亜
鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することであ
る。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、連続打点
性に大きな影響を及ぼす因子として、めっき皮膜全体の
Al量とめっき皮膜最表部に存在するAl2O3 量がそれぞれ
異なった要因で連続打点性に大きな影響を及ぼすと推察
し、そのような前提に立って種々の合金化溶融亜鉛めっ
き (以下、GA) 鋼板について鋭意検討を行った。
【0020】その結果、本発明者らは、GA皮膜の全体
のAl量の低下は、同一電極で連続打点を行った際に、溶
接可能となる連続打点数の増加に対しては効果的である
が、一方で、溶接時にスパッタ発生頻度が増加するとい
う問題が生じることが判明した。
【0021】また、めっき皮膜中のAl量を極端に低減さ
せると、めっき皮膜最表部に存在する金属Zn量が増加
し、電極へのZnの熱拡散に伴う電極損耗が激しくなり、
逆に、連続打点数も低下し、スティッキング発生頻度が
増加するという問題もあり、GA皮膜全体において、最
適Al量が存在する。
【0022】一方、GA皮膜最表部の組成も連続打点性
には大きな影響を及ぼし、前述のように、金属Zn量が多
いと、連続打点時の電極損耗の増大から連続打点数が低
下する。また、GA皮膜最表部に存在するAl2O3 量も大
きな影響を及ぼし、Al2O3 が多いと、電極と板間の発熱
量が過剰になり、スパッタが発生しやすくなるととも
に、電極へのZnの熱拡散を助長し、電極損耗が大きくな
るため、連続打点数も低下するという問題がある。しか
し、GA皮膜最表部のAl2O3 量が極端に低下すると、絶
縁皮膜であるAl2O3 が緩衝材として作用してGA皮膜と
鋼板表面との溶着を抑制している効果が低下し、スティ
ッキング現象が発生しやすいという問題がある。
【0023】すなわち、めっき皮膜全体のAl量の適正
化、および、GA皮膜最表部のZn量の適正化により、連
続打点数を増加させることが可能であるが、そのままで
は、スパッタ発生が顕著になり好ましくない。一方で、
めっき皮膜最表部のAl2O3 量を適正化することにより、
連続打点数の低下もなく、スパッタ発生を抑制でき、か
つ、スティッキング発生を抑制することが可能であり、
基本的に、GA皮膜全体の組成は、連続打点数の増加に
大きく寄与し、GA皮膜最表部の状態如何で、スパッタ
発生に大きく寄与するため、GA皮膜の全体および最表
部の組成をコントロールすることが重要であるという新
知見およびそのための最適製造方法を見出した。
【0024】一般的に、GA皮膜は、めっき浴中のAlを
含有しており、母材鋼板をめっき浴中に浸漬した際に、
初めにFe−Al合金層が形成され、鋼板と溶融亜鉛との過
剰な反応を抑制している。このFe−Al合金層は、その後
の加熱による合金化過程においては、鋼板から熱拡散す
る鉄のバリアー皮膜として作用すると考えられる。従っ
て、鋼板からの鉄拡散の起点が均一ではなく、分散され
ているため、見かけ上は、合金化処理が完了して、未反
応の金属Znは、存在していないように見えるが、めっき
皮膜最表部では、鉄拡散が遅れた部分に、金属Zn (η
相) 、もしくはFe含有量の低いZn−Fe金属間化合物 (ζ
相) が残存している。
【0025】また、GA皮膜では、Alを含んだめっき浴
に浸漬するため、めっき皮膜全体にAlが存在するととも
に、GA皮膜最表部に存在するAlは、その後の合金化処
理に伴いAl2O3 へ変化する。さらに、合金化処理によ
り、めっき皮膜内部に存在していたAlは、表面に濃化し
てくるために、めっき皮膜最表部には、通常の浴組成よ
りも、過剰のAl2O3 が、残存しているのが通常である。
【0026】したがって、電極チップ発熱と電極チップ
への金属Znの拡散をともに抑制して連続打点性の改善お
よびスパッタ発生の抑制を図るためには、めっき皮膜最
表部に存在する金属Znを除去するとともに、一方、ステ
ィッキング現象を抑制するためには、ある程度微量に、
Al2O3 を残すことが有効である。
【0027】ここで、めっき皮膜最表部に存在する金属
Zn、Al2O3 を除去、低減させるためには、Zn、Alとも
に、両性金属であり、アルカリ溶液、酸溶液により、容
易に溶解することができることを利用し、めっき皮膜最
表部に存在する金属ZnおよびAl2O3 を低減、制御するた
めには、通常の合金化熱処理を完了した後で、アルカリ
処理、酸処理またはこれらの組み合わせ処理を行えばよ
い。そうすることにより、最表層に存在する過剰の金属
ZnおよびAl2O3 を、容易かつ安定的に最適量に存在せし
めることが可能となり、非常に効果的である。
【0028】本発明者らは、これらの知見に基づき、さ
らに、検討を重ねて、GA皮膜の全体と、最表部とを分
けてその組成を別々に制御することを着想し、本発明を
完成するに至った。
【0029】ここに、本発明の要旨とするところは次の
通りである。 (1) めっき皮膜中のAl含有量:0.17〜0.28重量%、Fe含
有量:8〜16重量%であるとともに、該めっき皮膜の最
表部における金属Zn量:40重量%以下、かつ、最表部に
おけるAl2O3 量が1.0 〜10重量%である合金化溶融亜鉛
めっき皮膜を有することを特徴とするスポット溶接性に
優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0030】(2) めっき皮膜中のAl含有量:0.17〜0.28
重量%、Fe含有量:8〜16重量%である合金化溶融亜鉛
めっき鋼板を、pH9.0 以上のアルカリ溶液に接触させる
こと、および/または、pH3.0 以下の酸溶液に接触させ
ることにより、該めっき皮膜の最表部における金属Zn
量:40重量%以下、かつ、最表部におけるAl2O3 量:1.
0〜10重量%とすることを特徴とするスポット溶接性に
優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0031】(3) 前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板を前記
アルカリ溶液に接触させた後に、前記酸溶液に接触させ
ることを特徴とする上記(2) 記載のスポット溶接性に優
れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0032】こに、本発明における「最表部」とは、G
A皮膜のうちで、金属ZnまたはAl2O3 が過剰に存在する
領域のことで、スポット溶接時の連続打点性を低下させ
る範囲を意味しており、例えば、めっき皮膜表面から深
さ方向にほぼ500 Å (オングストローム) の範囲であ
る。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかるスポット溶
接性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造
方法の実施の形態について、詳細に説明する。
【0034】本発明にかかるスポット溶接性に優れた合
金溶融亜鉛めっき鋼板は、 (i) めっき皮膜全体の組成が、Al含有量:0.17〜0.28
%、かつ、Fe含有量:8〜16%で、残部がZnまたは不可
避的な不純物元素から成る。 (ii)めっき皮膜最表部における金属Zn量:40%以下、か
つ、めっき皮膜最表部におけるAl2O3 量が、1.0 〜10%
である。
【0035】以下、これらの特徴について分説する。 (1) めっき皮膜全体の組成が、Al含有量:0.17〜0.28
量%、かつ、Fe含有量:8〜16重量%であること:GA
皮膜全体のAl量は、連続打点性に大きく影響を及ぼし、
めっき皮膜Al量が増加すると、電極−板間の発熱量が増
大し、電極損耗が著しくなるので、連続打点性は低下す
る。また、めっき皮膜Al量が増加し、連続打点性が向上
するに伴い、連続打点時のスパッタ発生量が多くなると
いう問題もある。さらに、めっき皮膜Al量が多くなる
と、GA皮膜最表部のAl2O3 量も増大し、最適なAl2O3
量の確保が困難となってくるため、好ましくない。一
方、めっき皮膜Al量が低下すると、GA皮膜最表部に存
在する金属Znが増加し、電極へのZnの熱拡散に伴う電極
損耗が激しくなり、逆に、連続打点限界数も低下すると
いう問題があり、好ましくない。また、GA皮膜中のAl
量低下は、めっき皮膜と素地鋼板の密着性の低下を招
き、加工後のめっき剥離現象である耐パウダリング性の
観点からも好ましくない。
【0036】以上の結果から、めっき皮膜中のAl量とし
ては、最適範囲が存在し、それは0.17〜0.28重量%であ
る。
【0037】めっき皮膜中のFe含有量は、合金化処理し
た後のGA皮膜最表部の金属Zn量に影響を及ぼす。めっ
き皮膜中のFe含有量が8%未満であると、合金化処理が
めっき皮膜最表層まで完了せず、最表層に金属Zn (η
相) が厚く残存し、後述する金属Zn除去処理を行っても
充分に除去することができない。一方、めっき皮膜のFe
含有量が16%超であると、めっき皮膜最表層に残存する
金属Zn量、金属Fe量はある程度低減されるものの、プレ
ス加工時にめっき皮膜が剥離するパウダリング現象を生
じてしまう。そこで、本発明では、合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板のめっき皮膜中のFe含有量は、8%以上、16%以
下に限定する。同様の観点からは、好ましくは、9%以
上、13%以下である。
【0038】しかしながら、かかるGA皮膜全体の組成
の管理のみでは、良好な連続打点限界数を得ることが可
能となっても、めっき皮膜最表部の組成を制御しなけれ
ば、充分なスパッタ発生の抑制は困難である。
【0039】また、かかるGA皮膜を得るためには、一
般的には、溶融Znめっき浴のAl濃度を調整すればよい。
これによってめっき皮膜中のAl含有率が調整可能であ
る。また、その後の合金化処理時の加熱温度を変更する
ことにより、皮膜中Fe含有率を調整する方法も挙げられ
る。
【0040】(2) めっき皮膜最表部における金属Zn量:
40重量%以下、かつ、めっき最表部におけるAl2O3 量:
1.0 〜10重量%であること:まず、合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板のめっき皮膜最表部の金属Znが連続打点性を低下
させる機構について説明する。
【0041】一般的に、GA鋼板に、連続的な点溶接を
行う連続打点試験を行った場合、Cu合金製の電極チップ
表面は、その打点数の増大に伴い、図1(a) に示すよう
な電極チップ10の表面11の中央部12が凹む『内欠現象』
が生じる。このような、著しい内欠現象が生じた場合に
は、充分に溶接が行えるだけの溶接電流が流れる通電パ
スが確保できなくなるために、連続打点時に、充分なナ
ゲットが形成されず、連続打点性が低下する結果とな
る。従って、このような内欠現象をできるだけ抑えるこ
と、もしくは、内欠現象が発生しても、直ちに回復させ
ることが、安定した連続打点性を確保するためには、必
須である。
【0042】図2(a) は、電極チップ表面の合金相に着
目して、そのミクロ的な模式図を示すものである。合金
化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき皮膜最表部に金属Znが存
在する場合には、図2(a) に示すように、Zn−Fe合金層
24が形成される連続打点初期にγ−真鍮層22の表面に、
Fe含有率の低いZn−Fe合金層23 (Fe合金率:約10%、硬
度150Hv)が形成される。このように、金属Znがめっき皮
膜最表部に存在するGA鋼板では、低Fe含有量のZn−Fe
合金層23が、γ−真鍮層22の上に形成され、このZn−Fe
合金層23の上に、高Fe含有率のZn−Fe合金層24 (Fe含有
率:約25%、硬度約300Hv)が形成される。
【0043】しかしながら、このような電極先端構造で
は、低Fe含有量のZn−Fe合金層23が軟質なために、その
上層の硬質で、Fe含有量が多いZn−Fe合金層24が、連続
的に加圧をかけて点溶接を行う連続打点時に、機械的な
損耗を受けにくく、欠落しにくいために、図1(a) に示
したように、内欠現象をおこしたままとなり、連続打点
性を著しく低下する。
【0044】一方、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき
皮膜最表部に金属Znが存在しない場合には、図2(b) に
示すように、硬質で、Fe含有量が多いZn−Fe合金層24し
か存在しない形態となる。このようなFe含有量が多いZn
−Fe合金層は、硬質で脆いために、連続打点時に、機械
的な損耗を受けやすくなるために、部分的にZn−Fe合金
層24が欠落を繰り返し、ミクロ的に表面があれ、電極先
端全体が損耗してくるために、図1(b) に示したよう
に、電極先端の内欠現象が発生しにくくなり、安定した
通電パスの確保が可能となることから、連続打点性が著
しく向上するものと考えられる。
【0045】ここに、図1(a) 、(b) は、連続打点時の
電極チップのマクロ形状の模式図であり、すでに述べた
ように、図1(a) からは、従来材が電極チップ中央部が
凹む内欠現象を生じ、連続打点性に劣ることが、また図
1(b) からは、本発明の場合、電極チップ表面がミクロ
的に欠落して表面が荒れるために内欠現象を起こしにく
いことがそれぞれ分かる。
【0046】また、図2(a) 、(b) は、電極チップの連
続打点時のミクロ的合金層成長状態の模式図であり、従
来材では、図2(a) に示すように、真鍮層21、22上に、
軟質で剥離を起こしにくい低Fe%のZn−Fe合金層23が形
成され、内欠現象がなくなりにくいが、本発明では、図
2(b) に示すように、真鍮層21、22上に、硬質で剥離を
起こしやすい高Fe%のZn−Fe合金層24が直接形成される
ために、この高Fe%のZn−Fe合金層24が容易に欠落し、
電極先端がミクロ的に荒れるために、内欠現象が生じに
くいことを表している。
【0047】したがって、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の
めっき最表部に存在する金属Znを低減し、低Fe含有量の
Zn−Fe合金層23を形成させないことが連続打点性の向上
には有効であり、その際のめっき最表部の金属Zn量は非
常に重要である。
【0048】また、GA皮膜最表部に存在するAl2O3
は、絶縁体であるため、Al2O3 が存在する部位は、溶接
時の通電パスになり得ない。一方、そのような部位で
は、電気抵抗が高いために電極チップの表面における発
熱量が過大になって、γ−真鍮層22の成長が促進され、
γ−真鍮層22で、溶接加圧時に剥離が生じ、電極先端面
積が著しく大きくなる。電極先端面積 (鋼板と電極が接
触している面積) が大きくなると、溶接時の電流密度が
低下し、ナゲットを形成させるための充分な発熱量を稼
ぐことが困難になり、著しく連続打点性が低下する。
【0049】また、めっき皮膜最表部におけるAl2O3
在部位では、発熱量が過大となるために、スパッタが発
生しやすくなる。著しくスパッタが発生すると、溶金が
鋼板表面に付着し、表面外観を損なうために、表面手入
れ作業が必要となり、生産性の低下をきたす。したがっ
て、連続打点数を確保するためには、めっき最表部に存
在するAl2O3(酸化Al) をある程度除去することが好まし
い。
【0050】一方、最表部から金属Zn、Al2O3 が完全に
除去され、清浄なGA皮膜組成が最表部に露出すると、
電極と鋼板とが溶着するスティッキング現象を起こしや
すくなるために、今度は、連続打点時に、電極が欠落
し、生産性が低下するという問題がある。絶縁体である
Al2O3 を表層にある程度残していると、溶着に対するバ
リアー効果として期待できるために、連続打点性が低下
しない程度だけ、Al2O3を残しておくことも、スポット
溶接での連続打点時には必要である。スティッキング現
象が発生すると、実生産時に鋼板に電極が付着するため
に、電極が抜けるという問題が生じるだけでなく、電極
先端に合金層が鋼板表面に付着しやすくなり、電極先端
の損傷が大きくなるために、やはり、連続打点性が低下
するからである。
【0051】次に、めっき皮膜最表部における金属Zn
量、Al2O3 量が、スポット溶接時の連続打点性に及ぼす
影響を下記の方法で調べた。一般的に、めっき皮膜中の
金属Znを含むZn−Fe合金層を測定する際には、X線回折
法等を採用することが効果的である。しかし、X線回折
法では、めっき最表部の金属Zn量を測定することが困難
であるため、めっき皮膜最表部の分析が可能なXPS 法を
用いた。
【0052】すなわち、めっき皮膜最表部から深さ方向
へ約500 Åの範囲における金属Zn量を変化させた各試料
について、連続打点性を評価した。ここで、XPS 法の測
定条件を図3(a) 、(b) および表1にまとめて示す。
【0053】図3(a) は、あるスパッタ時間 (測定時)
のスペクトル図であり、各ピークの面積から、所定時間
の組成量 (金属Zn、Al2O3)を計算により定量できること
を表す。また、図3(b) は、各スパッタ時間 (深さ方
向) の組成量測定結果から、深さ方向の金属Fe/金属Zn
比を表わしたものであり、約500 Åの深さが、めっきバ
ルク中と組成比が異なっており、この状態の領域が、溶
接性に影響を及ぼすめっき最表層の組成領域であること
を表わしている。
【0054】また、金属Zn量の厚みを測定するために、
図3(b) および表1に示すように、Arイオンスパッタを
0〜40秒まで (深さ方向で、500 Åまで) 、5秒ピッチ
で行い、各スパッタ時の金属Zn存在量、Al2O3 量を積算
し、その存在量の平均値 (平均金属Zn存在量、平均Al2O
3 量) を用いた。
【0055】その際に、深さ方向に500 Åと規定した理
由は、それが、Arイオンスパッタによる深さ方向の強度
分布より、図3(b) に示すように、Fe/Zn強度プロファ
イルにより、強度比が一定になる時点に相当するからで
ある。すなわち、めっきバルク中のZn−Fe合金相に達す
るまでのこの最表層の状態 (金属Zn量、金属Fe量、Al 2O
3 量) が、スポット溶接性に大きな影響を及ぼしてお
り、金属Zn量が少なく、かつ、Al2O3 量の適正なもの
が、スパッタ発生率、スティッキング発生率も少なく、
かつ連続打点限界数も充分確保できるという新たな知見
を見出した。
【0056】
【表1】
【0057】この確認実験の結果、良好な連続打点性を
得るためには、めっき皮膜表面から深さ方向で500 Åの
範囲における金属Zn量は、電極先端における軟質な低Fe
含有量のZn−Fe合金相の形成を抑制するために、できる
だけ少なくすることが必要であり、平均金属Zn量として
は、40重量%以下、好ましくは、30重量%以下である。
下限は規定しない。ゼロの場合も包含される。また平均
Al2O3 量としては、1.0 〜10.0重量%、好ましくは、3.
0 〜8.0 重量%である。
【0058】本発明にかかるスポット溶接性に優れた合
金化溶融亜鉛めっき鋼板の上記以外の構成は、通常の合
金化溶融亜鉛めっき鋼板と同一であるため、これ以上の
説明は省略する。
【0059】次に、めっき皮膜最表部における金属Zn、
Al2O3 量を、それぞれ上記の範囲に低減して、金属Fe量
を増大させる合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法
を説明する。
【0060】Zn、Alは、ともに両性金属であるため、酸
溶液、アルカリ溶液のいずれにも溶解する。酸化Zn、Al
2O3 等の酸化皮膜の溶解には、アルカリ溶液処理が効果
的であり、酸化皮膜を残して、金属Zn、金属Alを溶解す
るには、酸溶液処理が効果的であるが、本発明では、特
に限定を必要とするものではなく、いずれの方法であっ
てもよく、めっき最表部における金属Znを40重量%以下
に、Al2O3 量を1.0 〜10.0重量%まで、それぞれ低減す
ればよい。
【0061】アルカリ溶液を用いる場合、そのpHは9.0
以上である。pHが9.0 よりも低いと、効果的に酸化Zn、
Al2O3 を除去することができないからである。同様の観
点から、好ましくは、pHは11.0以上である。
【0062】このようなアルカリ溶液は、特定種に限定
するものがないが、アルカリ処理後に直ちに行われる水
洗、乾燥工程を経て得られる合金化溶融亜鉛めっき鋼板
の表面に残留しないアルカリ溶液であることが好まし
い。自動車車体パネルとして適用する場合に、表面にア
ルカリ成分が残留すると、化成処理、塗装工程で表面欠
陥を発生する可能性があるためである。このようなアル
カリ溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム
等のアルカリ金属水溶液が挙げられる。
【0063】一方、酸溶液を用いる場合、そのpHは、3.
0 以下である。pHが、3.0 よりも高いと、効果的に金属
Zn、Alを除去することができないためである。同様の観
点から、酸溶液のpHとしては、好ましくは、pHは2.0 以
下である。
【0064】このような酸溶液を用いる場合も、特定種
に限定する必要はなく、水洗にて簡単に除去可能な無機
酸が好ましいが、硝酸溶液等の酸化性を有する酸溶液
は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面を著しく酸化さ
せ、過剰の酸化Zn層、Al2O3 層が形成されやすくなるた
め、好ましくない。また、pH3.0 以下では、塩酸溶液
や、硫酸溶液をベースとして金属イオンを含有した電気
めっき液等をそのまま使用することも可能である。
【0065】アルカリ処理法、酸処理方法としては、浸
漬法やスプレー法等があるが、前述した範囲に金属Znお
よびAl2O3 を低減管理できる方法であればよく、特定の
方法に限定する必要はない。ただし、生産性の観点か
ら、効果的に金属Zn、Al2O3 量を除去するためには、溶
液の温度を上昇させることの効果や、表面酸化層の機械
的除去、それに伴う表面応力付与によるエッチング速度
をあげるような表面研磨方法の併用も勘案した方法が好
ましい。
【0066】さらに、アルカリ処理、酸処理のいずれに
おいても、処理液の残存による表面汚れを防ぐために、
処理後、直ちに水洗、乾燥を行うことが、最表部状態の
安定性を確保するためには、好ましい。
【0067】また、アルカリ処理、酸処理を組み合わせ
ることにより、スポット溶接性のさらなる改善を効果的
に図ることができ、望ましい。すなわち、アルカリ処理
を行った後に、酸処理を行うことにより、アルカリ処理
にて、一旦過剰の酸化Zn、Al2O3 層を除去した上で、そ
の後の酸処理では、Al2O3 の除去性が遅いために、より
効果的に金属Znの溶解が進行するため、ある程度のAl2O
3 を残存させた上で、金属Zn量をより低減させることが
可能になるため、処理時間を短縮できるからである。
【0068】このように、本発明にかかるスポット溶接
性に優れたGA鋼板の製造方法によれば、GA皮膜中の
Al量をコントロールし、GA皮膜最表部の金属Zn量を低
減させることにより、スポット溶接連続打点時の電極損
耗を抑制して耐久性を向上させることができ、連続打点
性を向上させることができる。しかしながら、かかる皮
膜構成では、チリ発生が顕著になるため、GA皮膜最表
部に、Al2O3 をわずかに残留させることにより、スティ
ッキング現象も防止され、電極チップと鋼板との溶着を
抑制することになり、著しい電極チップ損耗を抑制する
ために、連続打点性の低下を抑制することが可能とな
る。
【0069】
【実施例】次に、本発明にかかるスポット溶接性に優れ
た合金化溶融亜鉛めっき鋼板の効果を、実験データを参
照しながら、説明する (実施例1)表2に示す化学成分値の冷延鋼板 (板厚:0.
8 mm) を試験に供した。
【0070】
【表2】
【0071】この冷延鋼板をベースとし、めっき皮膜の
Fe含有量 (合金化度) を、7〜17%まで、めっき皮膜Al
含有量を、0.08〜0.41%の水準で変化させた合金化溶融
亜鉛めっき鋼板を用意した。
【0072】これらの試料について、表3に示す処理
条件でアルカリ処理を行った後に水洗、乾燥を行うか、
表4に示す処理条件で酸処理を行った後に水洗、乾燥
を行うか、または、表3に示す処理条件でアルカリ処
理を行って水洗した後、直ちに、表4に示す処理条件で
酸処理を行って水洗、乾燥した。なお、めっき皮膜最表
部における金属Zn量、Al2O3 量の影響を明確にするた
め、アルカリ処理、酸処理の各処理時間を変更した。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】なお、めっき皮膜最表層における金属Zn
量、Al2O3 量は、前述した表1により測定条件を示すXP
S 法により測定した。これらの試料を2枚重ね合わせた
状態で、表5に示す条件で6000点まで点溶接を連続的に
行い、50打点ごとにナゲット径を測定することにより、
スポット溶接における連続打点性を評価した。
【0076】評価基準は、ナゲット形成ができなくなる
までの連続打点数を測定し、連続打点数が、4000点以上
確保できることを目標として○印で示し、6000点以上確
保できることを優秀値として◎印で示した。また、4000
点未満は、×印で示した。
【0077】また、これらの試料について、同時に、ス
パッタ現象およびスティッキング現象の発生状況を評価
した。
【0078】評価基準は、スパッタおよびスティッキン
グ現象が発生した比率をそれぞれカウントして、スパッ
タ発生率、スティッキング発生率をそれぞれ測定した。
スパッタ発生率、スティッキング発生率ともに、5%以
下であることを目標値として、○印で示し、3%未満で
あることを優秀値として、◎印で示した。また、5%超
は×印で示した。
【0079】さらに、自動車車体パネル用として要求さ
れる加工性評価のために、円筒絞り加工によるパウダリ
ング性を評価した。加工条件は、表6にまとめて示す。
パウダリング性の評価基準は、円筒絞り加工を行って成
形した張り出し部の側壁にテープを貼り付けてから剥離
し、剥離量を重量法により測定した。その際の評価基準
としては、剥離量が1サンプルあたり、20mg/個以下を
目標値として、○印で示し、10mg/個以下を優秀値とし
て、◎印で示した。また、20mg/個超は×印で示した。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】その結果を表7に示す。たとえば、Fe含有
率の上限に関しては、No.25 、26、27、28、29とNo.30
の比較から、パウダリング性を満たすためには、16%以
下、No.21 、22から好ましくは、13%以下であることが
わかる。また、下限に関しては、No.1から7%ではアル
カリ、酸処理を実施しても、好適最表部組成を得ること
が困難であり、目標とする連続打点性が困難であること
がわかる。最良の連続打点性を確保するためには、たと
えば、No.7と11とを比較すると、9%以上が好適である
ことがわかる。
【0083】Al含有率に関しては、その上限について
は、たとえば、No.15 〜17より、Al:0.36%ではアルカ
リ、酸処理を施しても、充分な連続打点性の向上効果が
確保できず、No.4の結果から、0.35%以下であることが
わかる。最適な溶接性を確保するためには、たとえば、
No.11 から、0.28%以下である。下限については、No.1
2 〜14より、0.09%では、連続打点数を確保できても、
スパッタ発生率を制御できず、またパウダリング性も劣
化する。従ってNo.24 、25より、0.10%以上必要である
ことがわかる。最適な溶接性を確保するためには、No.2
2より、0.17%以上必要である。
【0084】一方、GA皮膜最表部の金属Zn量に関して
は、No.29 から、40%以下、No.12から、好ましくは、3
0%以下が必要であることがわかる。また、最表部Al2O3
量の下限に関しては、No.25 、28から、スティッキン
グ現象の抑制のためには、1.0 %以上残存させることが
必要であり、No.22 から、3%以上が好ましいことがわ
かる。また、上限に関しては、たとえば、No.29 、30
(但し、No.30 に関してはパウダリング性が低下) と、N
o.10 の比較から、10%以下であること、さらには、No.
11 から、好ましくは、8%以下であることがわかる。
【0085】以上の結果から、連続打点性を確保し、か
つ、良好なスパッタ現象、スティッキング現象を抑制す
る好適なGA皮膜組成、および、GA皮膜最表部組成
は、本発明において規定する範囲であることが分かる。
【0086】
【表7】
【0087】(実施例2)次に、アルカリ処理と酸処理の
各処理の条件を明確にするために、各処理液のpHの影響
について、検討を行った。
【0088】本試験における母材には、表2に示した化
学成分値を有する板厚=0.8 mmの冷延鋼板を用い、目付
量が50g/m2であって、Fe含量が11%で、Al含有率が0.22
%、0.38%の合金化溶融亜鉛めっき皮膜を形成したもの
を試験に供した。
【0089】アルカリ処理は、表8に示す処理条件で水
酸化カリウム水溶液を用い、酸処理は、表9に示す処理
条件で塩酸を用い、水酸化カリウム、塩酸溶液にてpHを
所定に調整した。処理時間は、各々、15秒浸漬とし、直
ちに水洗、乾燥した後、実施例1に示した条件にて連続
打点性試験に供した。
【0090】
【表8】
【0091】連続打点性の結果を、図4、図5にグラフ
で示す。図4には、連続打点性に及ぼすアルカリ処理液
のpHの影響を示し、図5には、連続打点性に及ぼす酸処
理液のpHの影響を示す。
【0092】めっき皮膜Al含有率が本発明の範囲外の0.
38%では、アルカリ処理、酸処理とも連続打点性の改善
効果は認められるが、本発明の期待効果までの連続打点
性には、達しないことがわかる。一方、めっき皮膜Al含
有率が本発明の範囲内である0.22%では、本発明の期待
効果の連続打点性を確保するためには、図4から、アル
カリ処理時のpHは9.0 以上であり、好ましくは、11.0以
上であり、一方、図5から、酸処理のpHは3.0 以下であ
り、好ましくは、2.0 以下であることがわかる。
【0093】(実施例3)実際の製造の際には、処理槽の
長さが決っているため、短時間で処理できることが好ま
しい。したがって、アルカリ処理と酸処理の組み合わせ
により、短時間での処理が可能かの検討を行った。
【0094】母材は、表2に示す化学成分値を有する板
厚0.8 mmの冷延鋼板をベースとして、目付量が43g/m2
あって、Fe含有量が10%、Al含有率が0.33%の合金化溶
融亜鉛めっき皮膜を形成したものを試験に供した。
【0095】このような合金化溶融亜鉛めっき鋼板につ
いて、表10に処理条件を示すアルカリ処理および、表11
に処理条件を示す酸処理の一方、または、双方を行っ
た。これらの処理の際に、浸漬時間を変化させることに
より、めっき皮膜最表部における金属Zn量、Al2O3 量を
変化させた。
【0096】このように、アルカリ処理および酸処理の
一方、または、双方を行われたサンプルについて、実施
例1と同様の連続打点性およびスパッタ発生率、スティ
ッキング発生率について、調査した。
【0097】
【表10】
【0098】
【表11】
【0099】その結果を表12に示す。No.2、3とNo.4、
5、No.6、7とNo.8、9、No.10 、11とNo.12 、13か
ら、同一処理時間であっても、アルカリ処理、酸洗処理
を組み合わせることにより、より容易に最適なめっき最
表部組成を確保することが可能になり、連続打点性が向
上することがわかる。特に、No.4と5、No.8と9、No.1
2 とNo.13 から、酸処理→アルカリ処理を実施するより
も、アルカリ処理→酸処理を組み合わせた方が、連続打
点性に対する改善効果がより大きいことが判る。
【0100】
【表12】
【0101】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
り、例えば自動車車体パネル用として実用上の加工性が
問題とならない範囲で、良好なスポット溶接性を有する
合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することが可能となっ
た。
【0102】本発明にかかる合金化溶融亜鉛めっき鋼板
によれば、スポット溶接時の連続打点性を飛躍的に改善
し、スパッタ現象、スティッキング現象も改善できる。
また、本発明にかかる合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、合
金化溶融亜鉛めっき後にアルカリ処理および酸処理の一
方、または、双方を行うという極めて簡単な工程で行う
ことが、特に、アルカリ処理後に酸処理を行うことによ
り、その処理時間を短縮し、安定した最表部状態を有す
る合金化溶融亜鉛めっき鋼板を極めて効率的に製造する
ことが可能である。
【0103】したがって、本発明によれば、自動車車体
組立工程において、溶接時の連続打点数を向上させるこ
とにより、電極チップの手入れ頻度が低減できるととも
に、スパッタ現象の発生頻度を低減して、車体表面手入
れを解消することが可能となり、さらに、スティッキン
グ現象も発生頻度を低減することから、溶接トラブルを
回避でき、生産性を飛躍的に向上させることができる。
かかる効果を有する本発明の意義は、極めて著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a) は、従来技術における合金化溶融亜鉛
めっき鋼板の連続打点時の電極の断面形状の説明図であ
り、図1(b) は、本発明における場合の同じく電極断面
形状の説明図である。
【図2】図2(a) は、従来技術における電極先端での合
金相の形成の様子を示す説明図であり、図2(b) は、本
発明における同様の説明図である。
【図3】XPS によるめっき最表部の組成分析の模式図で
あり、図3(a) は、あるスパッタ時間 (測定時) のスペ
クトルを示し、図3(b) は、各スパッタ時間 (深さ方
向) の組成量測定結果から、深さ方向の金属Fe/金属Zn
比を表あらわす。
【図4】実施例2における、連続打点数に及ぼすアルカ
リ処理液のpHの影響を示すグラフである。
【図5】実施例2における、連続打点数に及ぼす酸処理
液のpHの影響を示すグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 西尾 康一 茨城県鹿嶋市大字光3番地 住友金属工 業株式会社鹿島製鉄所内 (72)発明者 後藤 正 三重県鈴鹿市平田町1907番地 本田技研 工業株式会社鈴鹿製作所内 (72)発明者 大谷 広司 三重県鈴鹿市平田町1907番地 本田技研 工業株式会社鈴鹿製作所内 (56)参考文献 特開 平10−330902(JP,A) 特開 平11−131205(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 めっき皮膜中のAl含有量:0.17〜0.28
    量%、Fe含有量:8〜16重量%であるとともに、該めっ
    き皮膜の最表部における金属Zn量:40重量%以下、か
    つ、最表部におけるAl2O3 量が1.0 〜10重量%である合
    金化溶融亜鉛めっき皮膜を有することを特徴とするスポ
    ット溶接性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 めっき皮膜中のAl含有量:0.17〜0.28
    量%、Fe含有量:8〜16重量%である合金化溶融亜鉛め
    っき鋼板を、pH9.0 以上のアルカリ溶液に接触させるこ
    と、および/または、pH3.0 以下の酸溶液に接触させる
    ことにより、該めっき皮膜の最表部における金属Zn量:
    40重量%以下、かつ、最表部におけるAl2O3 量:1.0 〜
    10重量%とすることを特徴とするスポット溶接性に優れ
    た合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板を前記ア
    ルカリ溶液に接触させた後に、前記酸溶液に接触させる
    ことを特徴とする請求項2記載のスポット溶接性に優れ
    た合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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