JP3534038B2 - スポット溶接性にすぐれた合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法および評価方法 - Google Patents

スポット溶接性にすぐれた合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法および評価方法

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JP3534038B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、スポット溶接の連
続打点性にすぐれた合金化溶融亜鉛めっき鋼板、その製
造方法およびスポット溶接の連続打点性評価方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛
浴に鋼板を浸漬して亜鉛めっき層を付着させた後、加熱
して素地鋼板の鉄(Fe)を亜鉛(Zn)中に拡散さ
せ、めっき層をZn−Fe合金化させたものである。こ
のめっき層中のFeの含有量は、通常7〜20質量%程度
が選ばれる。合金化させることにより、その上へ塗布す
る塗料の密着性が向上し、スパングルが消え、めっき層
の硬さが上昇するので、塗装後の耐食性がより向上し、
塗装表面は美麗であり、スポット溶接はZnだけのめっ
きの場合よりも安定する。このため、プレス成形性にす
ぐれた鋼板を母材に用いて、自動車車体の外板などに広
く適用されている。
【0003】鋼板の自動車車体への組み立てにはスポッ
ト溶接が多用される。スポット溶接の多くは、二枚ない
しはそれ以上の鋼板を重ね合わせ、銅を主成分とする電
極チップ先端を鋼板に接触加圧して通電し、抵抗加熱に
より溶接する。このスポット溶接による接合は、自動車
車体組み立ての場合連続的に多数の点を溶接する必要が
あるが、連続してスポット溶接をおこなっていくと、鋼
板に接する電極チップの先端が損耗したり変形したりし
て、溶接電流の流れ方が変わり、溶接強度を維持するた
めの適正な形状のナゲットが得られなくなってくる。そ
うなると、電極チップの手入れをするかあるいは取り替
えるために、溶接作業を中断しなければならない。した
がって、スポット溶接における生産性を高めるには、新
たに取り替えた電極チップでの連続して溶接できる点数
を、できるだけ多くすることが要求される。合金化溶融
亜鉛めっき鋼板の自動車車体適用においては、鋼板性能
としてこの正常なスポット溶接点の得られる連続打点数
の多いこと、すなわち連続打点性のすぐれていることが
強く要望される。ところが合金化溶融亜鉛めっき鋼板
は、そのスポット溶接連続打点性があまりよくないこと
が従来より指摘され、原因として次のような推測がなさ
れている。
【0004】一つにはめっき層の主成分がZnであり、
Znは銅(Cu)との合金を作りやすく、その合金の融
点が低く脆いので、Cuを主成分とする電極チップへZ
nが拡散することにより、電極チップの損耗が甚だしく
なってその形状が損なわれ、少ない打点数で正常なスポ
ット溶接点が得られなくなる。またもう一つには、めっ
き層表面に酸化アルミニウム(Al23)が存在し、A
23は絶縁体であるために、電極チップと鋼板めっき
表面の接触部の電気抵抗が増し、その部分の発熱が増大
して、電極チップの損耗を大きくする。亜鉛めっき浴に
は、めっき層と母材鋼板との密着性を高めるため、およ
び硬くて脆いΓ1相(Fe5Zn21の相)などが現れない
よう合金化の進みすぎを抑止するために、0.08〜0.2%
程度のアルミニウム(Al)が添加されている。このA
lは、鋼板に付着した亜鉛めっき層にも取り込まれてお
り、AlはZnよりも酸化されやすく、Al23として
表面に存在する。
【0005】スポット溶接の連続打点性を改善した合金
化溶融亜鉛めっき鋼板として、たとえば特開平4-21750
号公報にはめっき層中の全Al量を0.2〜0.5質量%、F
e含有量を7〜12質量%とし、そのめっき層中の金属性
Alの総量を0.01〜0.2g/m2に限定した鋼板の発明が開
示されている。また、特開平6-73521号公報には、めっ
き表面の酸化皮膜を50〜1000mg/m2、その中のAl量を
1.6V・sec以下とする鋼板の発明が提示されている。た
だし上記の公報には、これらの鋼板における酸化されて
いない金属性Al量の生成条件、または表面酸化皮膜の
量や皮膜中のAl量の制御方法等は、具体的には示され
ていない。
【0006】さらに、特開平10-330902号公報には、合
金化溶融亜鉛めっき層の最表層における金属Zn量を50
質量%以下、Al23量を15質量%以下とするスポット
溶接性にすぐれた鋼板の発明が開示されている。この場
合、合金化処理した溶融亜鉛めっき鋼板の表面を、pHが
9.0以上のアルカリ溶液またはpHが3.0以下の酸液に接触
させることにより、この金属Zn量およびAl23量の
低減をおこなう。
【0007】合金化溶融亜鉛めっき鋼板においては、塗
料の密着性や加工時に粉状に剥離するパウダリングに対
する耐性が、極めて重要な特性として要求される。これ
らの点がより重視されることもあって、鋼板のスポット
溶接の連続打点性の改善は必ずしも十分でない。また、
スポット溶接性の評価は、実際に溶接打点を繰り返す試
験がおこなわれ、これには多大の工数を必要とする。こ
のため、数多くの試験を実施することが容易でないこと
もあり、スポット溶接性の十分にすぐれた合金化溶融亜
鉛めっき鋼板が得られているとは言い難い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、スポ
ット溶接の際の溶接電極の損耗抑止の効果のある、溶接
の連続打点性を改善させた合金化溶融亜鉛めっき鋼板
と、その製造方法とを提供し、さらに合金化溶融亜鉛め
っき鋼板のスポット溶接連続打点性を実際にスポット溶
接試験を実施することなく判断できる評価方法をも提供
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、合金化溶
融亜鉛めっき鋼板の連続打点性に大きく影響していると
考えられるめっき皮膜の表面状態と、溶接用電極との反
応の様相を調査した。連続して打点を繰り返した後の、
電極チップ先端の表面の状態を観察した結果、少ない打
点で溶接不良が発生する傾向の大きい鋼板の溶接に用い
られた電極チップは、同じ打点数でも接触部表面にCu
−Zn−Fe合金がより不均一に生成しており、これが
電極チップ先端の凹凸を激しくさせ、スポット溶接の連
続打点数を大きく低下させていると推測された。そこで
まず電極チップの損耗の大きい鋼板と少ない鋼板を選
び、調質圧延前の鋼板表面を詳細に調査した。
【0010】調質圧延前の合金化溶融亜鉛めっき鋼板
は、数μmから数百μm程度の間隔で高低差が5〜10μm程
度の凹凸が発生している。これは、亜鉛を付着させるめ
っき後の加熱により、素地のFeをZnめっき層中に拡
散させて合金化するが、この合金化は必ずしも均一には
進行せず、鋼板表面部位により合金化進行の程度が異な
り、それによってめっき層の厚さが変化したためと考え
られる。このような凹凸は、調質圧延により緩和される
が、組成の局所的な変動はある程度避けがたいと思われ
た。
【0011】スポット溶接時、電極チップ先端と鋼板が
接して反応する部分は、表面から10〜100nm程度の深さ
であろうと推定される。一方、めっき層の表面には、め
っきの際や合金化処理の加熱によってその極表面部に酸
化物を主とする皮膜が形成される。その皮膜の厚さは数
十〜数百nm程度であるが、その酸化物中のAlの量は、
めっき浴に含まれるAl量よりもはるかに高い値を示し
ていた。Alは酸素との親和力がZnよりも大きいの
で、めっき直後から合金化処理の高温になっている過程
で、めっき層の表面ではAlが選択的に酸化されてAl
23となり、極表面部近傍ではZn中の固溶しているA
l濃度が相対的に大きく低下する。このため固溶Alが
めっき層内部から拡散してきて、さらに酸化が進み、そ
の結果として、酸化物の形になった極表面部のAl元素
の量が大きく増加する結果になったと推定される。
【0012】酸化物となった極表面部のAlの量は、亜
鉛浴中のAl量にはあまり影響されず、合金化処理など
の条件により大きく依存するようであった。そして、極
表面の薄い皮膜とはいえ、Al23は絶縁体であるた
め、スポット溶接時の電極チップや鋼板同士が接触加圧
されたときの電気抵抗や接触部分の発熱、そして電極の
CuとZnとの反応に、大きな影響を及ぼすと考えられ
る。この影響は、前述の合金化処理による組成の局所的
な変動よりも、はるかに大きいと思われた。
【0013】表面にできた皮膜について、そこに含まれ
るAl量とZn量とをさらに詳細に調べてみると、スポ
ット溶接の電極チップ先端が鋼板表面に押しつけられる
範囲の面内にて、局部的な場所により種々異なる値を示
すことが見いだされた。とくに合金化反応によりできた
めっき層の凹部ではAl量が極大値を示し、凸部では極
小値になっている。その近傍にて、いくつもの凹部と凸
部とのAl量とZn量とを分析し、Zn(mol%)に対
するAl(mol%)の原子濃度比[(Almol%)/(Z
nmol%)]で比較してみた結果、その極大値または極
小値は、電極チップ先端が押しつけられる大きさの部分
で、ほぼその最大値または最小値に相当していることが
わかった。
【0014】そこで、この電極先端が接する面の大きさ
の範囲内で、AlとZnとの原子濃度比がほぼ最大であ
る値とほぼ最小である値との差、ないしは凹部と凸部と
でのAlとZnとの原子濃度比の差を求め、その差の大
小と、スポット溶接の連続打点性との関係を対比してみ
た。その結果、この値が鋼板のスポット溶接性の良否の
判定に、極めて良好な指標となることを見いだしたので
ある。
【0015】このAlとZnとの原子濃度比の最大値と
最小値の差の値をXとすれば、X値が小さい鋼板はスポ
ット溶接の連続打点性にすぐれ、X値の大きい鋼板は連
続打点性が劣る結果を示す。表面分析によりこのXを求
めれば、X値の大小により実際にスポット溶接の試験を
行わなくても、鋼板のスポット溶接性が判断できる。X
の値は小さいほどスポット溶接の連続打点性がすぐれて
おり、これはメッキ層表面の組成の均一性がよく、その
ためにスポット溶接の電極にできるCu−Zn−Fe合
金の不均一な生成が抑止されると考えられた。
【0016】この不均一性の指標と考えられるX値と、
スポット溶接の連続打点数との関係を調べていくと、X
値がある値を境に、これを超えるとスポット溶接性が急
激に悪くなり、それ以下であれば良好であると判断でき
ることもわかってきた。しかしながら、通常の合金化溶
融亜鉛めっき鋼板の製造方法の範囲にて種々条件を変え
ても、鋼板のX値をとくに大きく低下させることは困難
であった。
【0017】前述のように合金化溶融亜鉛めっき鋼板に
おいては、塗料の密着性および加工時の耐パウダリング
耐性が極めて重要であり、これらの特性は亜鉛浴浸漬の
めっき条件、合金化の処理条件、あるいは合金化度によ
りほぼ決定される。したがって、これらの条件や要因の
変更は容易ではないので、スポット溶接性の改善には、
それら以外の手段を講じなければならない。このような
観点から、とくにX値に着目し、安定してX値を十分に
低下させる方法をさらに検討した。
【0018】調質圧延は、先述のように合金化処理でで
きた凹凸を緩和できる。しかしながら上記X値は調質圧
延では低下せず、かえって増加する傾向も認められた。
これは、圧延によりめっき層の凸部は大きく延伸された
り押しつぶされたりするが、凹部の底は変形が小さくほ
とんどそのまま残るためと考えられる。すなわち、Al
とZnとの原子濃度比の最小値を示していた凸部は、変
形によってよりAl量の少ないめっき層の亜鉛の組成に
に近づくのに対し、最大値を示す凹部はそのまま残るか
らである。
【0019】酸液またはアルカリ液による処理が、スポ
ット溶接の連続打点性向上に有効であることは前出の特
開平10-330902号公報に示されており、X値を大きく低
下させるのに効果がある。通常、合金化溶融亜鉛めっき
鋼板は、合金化処理後に母材鋼板の加工時のストレッチ
ャーストレイン発生抑止、および鋼板の平坦性など形状
修正のために、伸び率0.2〜1.5%程度の調質圧延が必須
である。したがって、上記公報に示された酸液またはア
ルカリ液による処理は、調質圧延が施された状態でおこ
なわれている。
【0020】これに着目して、調質圧延が一回施されて
いる鋼板を、もう一度調質圧延してから、酸液またはア
ルカリ液で処理した結果、X値を大きく低下させること
ができた。この鋼板のスポット溶接の連続打点性を調査
の結果、極めてすぐれていることが確認できたのであ
る。
【0021】調質圧延において鋼板の表面は、伸び率で
示される加工度の数倍以上の大きな剪断変形を受ける。
めっきした鋼板でも、めっき層の表面に強度の加工が加
えられる。したがって、合計の伸び率が同じであって
も、二回、三回とわけて調質圧延を施せば、めっき層表
面には、一回の圧延よりもはるかに大きい加工を加える
ことができる。この加工による歪みが、酸液またはアル
カリ液での処理の際の反応を大幅に促進して表面を均一
化し、X値を大きく低下させたと推定される。
【0022】以上の結果からさらに各条件の限界をそれ
ぞれ確認し本発明を完成させた。本発明の要旨は次のと
おりである。
(1)Fe含有量が7〜20質量%であるめっき層を有する合
金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、スポット溶接の電極
先端の接する面に相当する大きさの範囲内における、め
っき層の表面におけるAlとZnとの原子濃度比の最大
値(Al/Zn)maxと最小値(Al/Zn)minとの
差、すなわち下記の(1) で表されるXの値が、3.0以下
であることを特徴とするスポット溶接の連続打点性にす
ぐれた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0023】 X=(Al/Zn)max −(Al/Zn)min・・・・・(1) (2)合金化処理後、1回当たりの伸び率が 0.1 %以上、
計の伸び率を0.3〜1.5%の範囲とする調質圧延を、2回
以上に分けておこなった後、亜鉛を溶解させる酸液、ア
ルカリ液または両方の液に接触させることを特徴とす
る、請求項1に記載のスポット溶接の連続打点性にすぐ
れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 (3)合金化溶融亜鉛めっき鋼板のスポット溶接における
連続打点性を、スポット溶接の電極先端の接する面に相
当する大きさの範囲内における、めっき層表面のアルミ
ニウムと亜鉛との原子濃度比の、最大値と最小値との差
により判断することを特徴とするスポット溶接性評価方
法。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の対象とする合金化溶融亜
鉛めっき鋼板は、亜鉛の付着量が鋼板片面に対し20〜10
0g/m2でFe含有量が7〜20質量%のめっき層を有する自
動車用として通常採用される範囲のものである。このF
e含有量は、鋼板の耐食性や塗料の密着性、加工時のめ
っき層のフレーク状に剥離することに対する耐フレーキ
ング性、耐パウダリング性、等を勘案して選定するのは
通常製造されている場合と同じである。また鋼板のめっ
き層には、塗料密着性や耐食性、加工性など種々の性能
向上を目的とした、Ni、Co、Mn、Mg、その他の
元素が少量添加されていてもよい。
【0025】めっき層の表面におけるAlとZnとの原
子濃度比の最大値と最小値との差は、溶接電極が鋼板に
接する部分に相当する面積、すなわち10〜100mm2程度の
範囲の面積内で求めればよい。スポット溶接の電極チッ
プ先端の鋼板に接する面積は、鋼板の厚さにもよるが、
たとえば0.8mm前後の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合
電極チップは直径約7mm以下であるので、縦横7mm角の
面、あるいは面積50mm2の範囲内にて、AlとZnとの
原子濃度比の最大値および最小値を測定する。めっき層
表面におけるAlの原子濃度をAlmol%、Znの原子
濃度をZnmol%とし、原子濃度比の最大値を(Al/
Zn)max、最小値を(Al/Zn)minと表せば、最大
値と最小値との差Xは X=(Al/Zn)max −(Al/Zn)min・・・・・(1) で示される。
【0026】合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面は、数μ
mから数百μm程度の間隔の凹凸があり、通常凸部の頂上
がAlとZnとの原子濃度比の極小値を示し、凹部の底
がこの原子濃度比の極大値を示す。この極小値、または
極大値は、その近傍における最小値、または最大値にほ
ぼ等しいので、上記の面積範囲内で判別できる凸部の頂
上および凹部の底にて、AlとZnとの原子濃度比をそ
れぞれ複数点計測し、凸部の頂上の値または凹部の底の
値をそれぞれ平均して、最小値(Al/Zn)min、ま
たは最大値(Al/Zn)maxとすればよい。表面組成
の分析の方法は、表面から10nm程度までの深さにおける
組成が計測可能であって、めっき層表面にできる数μm
から数百μm程度の間隔の凹凸に対し、凹部の底、また
は凸部の頂上でのそれぞれのAlとZnとの原子濃度比
を検出するため、直径10μm程度の円内での定量ができ
る方法であればよく、とくに限定するものではない。測
定の簡便性や定量精度から、現状では表面分析法の一つ
であるオージェ電子分光法が好ましい。
【0027】表面分析を実施する場合、受け入れままの
試料は表面の汚染を除去しなければならないが、この清
浄化のため表面組成を変化させるような、たとえばイオ
ンを照射するスパッタリング処理などは好ましくない。
本発明方法では、AlとZnとの相対濃度を計測してお
り、多少の汚染はその影響を排除できるので、溶剤によ
る脱脂程度にとどめるのが望ましい。上述のX値を用い
てスポット溶接性を評価すると、Xの値は小さければ小
さいほど、その合金化溶融亜鉛めっき鋼板はスポット溶
接の連続打点性にすぐれていることがわかる。その判定
の基準として、いくつかの鋼板のX値とナゲット形状が
悪くなり溶接が不完全となる連続打点数とを対比してみ
た結果、X値が7.0を超えると、連続打点数が著しく悪
くなり、7.0以下であれば、十分な連続打点数が得られ
ることが明らかであった。したがって、たとえば、スポ
ット溶接性の判定基準として、X値が7.0以下の鋼板を
良、7.0を超える鋼板を否としてもよい。さらにX値が
4.5以下であれば、極めてすぐれた連続打点性を示す。
【0028】本発明の鋼板は、上述のX値が、3.0以下
であることとする。たとえば溶接条件を揃え、鋼板のス
ポット溶接性を比較するとき、X値が7.0未満の鋼板で
は連続打点数が3000点に満たないが、X値が3.0を超え
7.0までの鋼板では、3000〜5000点の溶接が可能であ
る。これに対し、X値が3.0以下の鋼板になると、溶接
打点数は5000点を超える結果が得られるのである。X値
が3.0以下である合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
は、とくには限定しない。しかしながら次のような方法
にて容易に製造することができる。すなわち合金化処理
した鋼板にて、1回当たりの伸び率が 0.1 %以上、合計
の伸び率が0.3〜1.5%の範囲となる調質圧延を、2回以
上に分けておこなった後、亜鉛を溶解させる酸またはア
ルカリ溶液に接触させる。このような製造方法により、
めっき条件、合金化処理条件、めっき層組成等に関わり
なく、X値を3.0以下とするスポット溶接性のすぐれた
合金化溶融めっき鋼板が得られる。調質圧延の伸び率
を、合計で0.3%以上とするのは、0.3%未満ではストレ
ッチャーストレインを抑止するという調質圧延の効果が
十分得られず、その後で酸またはアルカリ溶液に接触さ
せても、X値を十分低下させることが出来ないからであ
る。また、1.5%を超える調質圧延は、鋼板の加工性が
低下してくるので好ましくない。調質圧延を2回以上に
分けておこなうのは、その後の酸またはアルカリ溶液と
の接触により、X値が大きく低下し3.0以下にすること
ができるからである。これは、合計の調質圧延の伸び率
が小さい範囲内であっても、めっき層表面により大きな
歪みが与えられるためと考えられる。
【0029】2回以上に分けて複数回圧延をおこなうと
きの、1回たりの伸び率はめっき層の表面に十分な
加工を加えるために0.1%以上とするまた複数回に
分けることは有効ではあるが、回数を多くしても効果は
飽和し無駄になるので、4回程度までに止めるのがよ
い。
【0030】2回以上の調質圧延後、酸液またはアルカ
リ液に接触させる処理を施すことにより、X値が大幅に
低下する。ZnおよびAlのいずれも両性金属であり、
酸またはアルカリ溶液のどちらにも溶解する。したがっ
て、この処理はめっき層表面を溶解し、それと共に調質
圧延でできた酸化物などの破片を除去するが、調質圧延
により導入されためっき層の歪みは、この溶解を加速
し、均質化を促進させる。
【0031】ここで、酸液またはアルカリ液による処理
は、短時間でめっき層のごく表層が溶解できれば、とく
にその手段を限定するものではないが、たとえば酸液で
は、硝酸溶液のように酸化性を有する酸の溶液は酸化層
を過剰に形成させるので好ましくなく、pHが3.0以
下、望ましくは2.0以下の塩酸溶液や硫酸溶液、あるい
は硫酸亜鉛のように、ZnやAlを溶解する能力のある
金属塩の酸性溶液であってもかまわない。なお、過度に
pHを低くするとめっき層が大幅に溶解してくるので好
ましくなく、1.0程度までに止めるのがよい。アルカリ
液では、たとえばpHが9.0以上、好ましくは10.0以上
の、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液を
用いる。
【0032】これら酸液またはアルカリ液は、温度が20
〜80℃で、2〜10秒程度の浸漬またはスプレイなどでそ
の処理をおこなう。酸液あるいはアルカリ液の処理は処
理液の残存による汚れ防止のため、処理後直ちに十分な
水洗、乾燥するのがよい。なお、酸液、またはアルカリ
液のいずれか一方の処理でもよいが、両方の処理を組み
合わせて施してもよく、より一層X値を低下できる。
【0033】
【実施例】表1に示す化学組成の厚さ0.8mmの冷延鋼板
を母材に用い、溶融めっき鋼板の製造ラインにて、めっ
き浴中のAl濃度を0.1〜0.2%とし亜鉛の付着量を30〜
90g/m2の範囲で変え、めっき後の合金化は加熱温度およ
び時間を変えることによって調整して、合金化溶融めっ
き鋼板を作製した。
【0034】
【表1】 調質圧延は、製造ラインでは一回しか行えないので、複
数回の場合は、別ラインにて追加の圧延をおこなった。
この場合、1回毎のパスの伸び率を同じとし、たとえば
伸び率0.6%の調質圧延を3回のパスでおこなう場合、
0.2%の圧延を3回おこなった。酸液には硫酸亜鉛水溶液
(pH:2.0)を用い、アルカリ液には水酸化ナトリウ
ム水溶液(pH:10.0)を用い、いずれの液でも溶液の
温度を60℃とし、5秒間の浸漬とした。
【0035】鋼板表面の分析は、コイルの幅方向で中央
部と両端に近いところで3箇所、ランダムに試験片を採
取し、有機溶剤にて脱脂後、1試験片に対し1箇所の一辺
5mmの正方形の面内にて、オージェ電子分光法により、
各箇所のめっき表面の凹部と凸部とをそれぞれ10点ず
つ、1測定点の面積はほぼ1辺10μmの正方形として、
AlとZnとの原子濃度を測定した。測定結果から各試
験片ごとに(1) で示されるXの値を求め、平均してそ
の鋼板のX値とした。
【0036】このX値を求めた鋼板を2枚重ね、下記に
示す条件にて5000打点のスポット溶接を連続的におこな
った。その後、2枚の鋼板を引き剥がし、100打点毎に
ナゲットを観察し、健全なナゲットが形成できなくなる
までの打点数を、その鋼板の連続打点数とした。
【0037】 加圧力 :1961 N スクイズ時間 :17 サイクル 通電時間 :8 サイクル 保持時間 :5 サイクル 溶接電流 :9.5 kA チップ先端形状 :直径 5 mm(CF型) 表2にこれら試験を行った鋼板の、めっきの亜鉛付着
量、Fe含有量、調質圧延の合計伸び率、回数、酸液ま
たはアルカリ液処理の有無、X値、および連続打点数評
価の結果を示す。ここで、連続打点数評価は3000点未満
を×、3000点以上5000点までを○、5000点でも健全なナ
ゲットが得られた場合を◎として示した。
【0038】
【表2】 この結果から明らかなように、試験No.1〜6の一般的に
製造される範囲の合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、Xの
値は4.0以上であり、溶接性評価で示したスポット溶接
の連続打点数は4000点程度までであった。アルカリ液ま
たは酸液で処理すると、Xを4.0を下回る値にすること
ができ、溶接の連続打点数は5000点に近いものが得られ
る。これらは、いずれも調質圧延が一回おこなわれてい
る鋼板であるが、本発明の調質圧延を複数回おこない、
その上でアルカリ液または酸液で処理した鋼板では、X
の値は3.0を下回り、溶接の連続打点数は5000点を超え
る鋼板となる。
【0039】また、AlとZnの原子濃度比の最大値と
最小値との差Xの値は、大きければ連続打点数が小さ
く、小さくなると連続打点数が増し、スポット溶接性を
評価するための、すぐれた指標になることがわかる。
【0040】
【発明の効果】本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、
スポット溶接の連続打点性がとくにすぐれている。また
その製造方法は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板にとって重
要な、耐食性、塗料密着性、加工時の耐パウダリング
性、などを支配するめっき条件や合金化処理条件などに
影響を受けることなく、スポット溶接性を向上させるこ
とができるので、自動車組み立てなどこのような鋼板を
多用する産業に対する寄与は極めて大である。また、め
っき層の表面におけるアルミニウムと亜鉛の原子濃度比
の最大値と最小値との差を示すX値を用いるスポット溶
接の連続打点性の評価方法は、少量の鋼板試料で短時間
に評価することができ、鋼板の品質管理や製造条件選
定、さらにはその特性改善検討に効果的に活用できる。
フロントページの続き (72)発明者 土岐 保 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−316769(JP,A) 特開 平10−330901(JP,A) 特開 平2−274858(JP,A) 特開 平5−15901(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Fe含有量が7〜20質量%であるめっき層
    を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、スポット
    溶接の電極先端の接する面に相当する大きさの範囲内に
    おける、めっき層表面のアルミニウムと亜鉛との原子濃
    度比の最大値(Al/Zn)maxと最小値(Al/Z
    n)minとの差、すなわち下記の(1) で表されるXの値
    が、3.0以下であることを特徴とするスポット溶接の連
    続打点性にすぐれた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。 X=(Al/Zn)max −(Al/Zn)min・・・・・(1)
  2. 【請求項2】合金化処理後、1回当たりの伸び率が 0.1
    %以上、合計の伸び率が0.3〜1.5%の範囲とする調質圧
    延を、2回以上に分けておこなった後、亜鉛を溶解させ
    る酸液、アルカリ液または両方の液に接触させることを
    特徴とする請求項1に記載のスポット溶接の連続打点性
    にすぐれた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】合金化溶融亜鉛めっき鋼板のスポット溶接
    における連続打点性を、スポット溶接の電極先端の接す
    る面に相当する大きさの範囲内における、めっき層表面
    のアルミニウムと亜鉛との原子濃度比の、最大値と最小
    値との差により判断することを特徴とするスポット溶接
    性評価方法。
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