JP2006307302A - 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スポット連続打点性と塗装鮮映性をバランス良く向上させる皮膜構成を備え、更にめっき密着性も確保できる溶融亜鉛めっき鋼板およびこの鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】素地鋼板5の少なくとも片面にめっき皮膜4を備え、該亜鉛めっき皮膜4は、素地鋼板側からFe−Al系合金層2、Fe−Zn系合金層3および亜鉛めっき層1がこの順で存在するものであり、Fe−Al系合金層中のAl含有量が10〜300mg/m2であり、Fe−Zn系合金層の厚みが亜鉛めっき皮膜厚みの1/2以下であり、さらに合金層を含めためっき皮膜中のFe含有量が0.5質量%以上である溶融亜鉛めっき鋼板。この鋼板は、めっき後、所定の条件で加熱する本発明の製造方法により製造することができる。
【選択図】図1
【解決手段】素地鋼板5の少なくとも片面にめっき皮膜4を備え、該亜鉛めっき皮膜4は、素地鋼板側からFe−Al系合金層2、Fe−Zn系合金層3および亜鉛めっき層1がこの順で存在するものであり、Fe−Al系合金層中のAl含有量が10〜300mg/m2であり、Fe−Zn系合金層の厚みが亜鉛めっき皮膜厚みの1/2以下であり、さらに合金層を含めためっき皮膜中のFe含有量が0.5質量%以上である溶融亜鉛めっき鋼板。この鋼板は、めっき後、所定の条件で加熱する本発明の製造方法により製造することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関し、特に自動車用鋼板として要求されるスポット溶接の連続打点性および塗装鮮映性に優れ、さらにめっき密着性も確保できる溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
家電製品用、建築用、自動車用等の素材として広く使用されている溶融亜鉛めっき鋼板には、めっき後に加熱処理を行わない溶融亜鉛めっき鋼板(以下、「GI鋼板」ともいう)と合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、「GA鋼板」ともいう)とがある。
GI鋼板は、微量のAlを含有するめっき浴に鋼板を浸漬して溶融めっきし、めっき付着量を調整した後、加熱しないで冷却することにより製造され、耐食性やめっき密着性(めっき皮膜と素地鋼板との密着性)等に優れるという特徴を有している。一方、GA鋼板は、めっき付着量を調整した後加熱して鋼板中のFeをZnめっき皮膜中に拡散させる合金化処理を行い、めっき皮膜中のFe含有量を8〜12質量%になるようにした鋼板で、連続スポット溶接性、プレス性等に優れている。このため、自動車用めっき鋼板としては、従来、GA鋼板が広く用いられてきた。
しかし、自動車用めっき鋼板の防錆性能のより一層の向上を図るために、厚目付が可能で耐食性に優れ、製造コスト面でも有利なGI鋼板を自動車用鋼板として使用するという要求が出てきた。GI鋼板は、めっき密着性が良好であり、GA鋼板で厚目付の際にしばしば問題となるプレス時のパウダリング現象が生じにくいなど、多くの利点を有している。
しかしながら、GI鋼板を自動車用鋼板として用いる場合の問題点として、スポット溶接時の連続打点性に劣ることが挙げられる。これは、GI鋼板のめっき皮膜にはFeが含まれておらず、めっき皮膜の融点が低いので、スポット溶接時には溶接部のめっき皮膜(Zn)が容易に溶融し、電極の汚染、損耗が大きく、そのため、同一電極で連続して溶接できる連続打点性がGA鋼板に比べて劣っていることによるものである。
GI鋼板のスポット連続打点性を改善する技術としては、例えば、特許文献1、2に、めっき付着量を調整しためっき鋼板に亜鉛の融点以上の温度で加熱する処理(以下、この加熱処理を「リフロー処理」という)を施して、めっき皮膜中のFe含有量を0.5〜3.0質量%程度とする技術が記載されている。特許文献3に記載されるGI鋼板の製造においても、この技術が適用されている。
このリフロー処理によってスポット連続打点性が改善されるのは、鋼板とめっき皮膜間でのFe、Znの熱拡散(Fe−Zn合金化)が進行し、めっき時にめっき皮膜と素地鋼板との界面に形成されたFe−Al系合金層中のAlがFe−Zn合金相中に固溶してAl量が低減するとともに、Fe−Zn合金化が一層促進され、めっき皮膜の融点が高くなって、溶接時に電極が溶融Znと接する時間が短くなり、電極の損耗が軽減されることによるものと考えられている。なお、前記Fe−Al合金層中のAl量は、例えば、非特許文献1に記載される方法で定量することができる。
さらに、このリフロー処理によって、めっき表面を再溶融、合金化することによりガスワイピングによるめっき付着量調整後のめっき皮膜表面に生じる凹凸やめっき浴のドロスのめっき表面への付着に起因するドロス欠陥を解消して、表面外観が優れためっき皮膜が得られる(特許文献1参照)。
このように、リフロー処理は、スポット溶接時の連続打点性を向上させるとともに、良好なめっき表面外観を得ることができる非常に有用な技術である。
しかしながら、一方で、リフロー処理を施されたGI鋼板は、塗装後の鮮映性が必ずしも良好でないという新たな問題が生じた。自動車外板(外装パネル材)などにおいては外観品質が厳格に評価され、優れた耐食性、プレス性、めっき密着性、連続スポット溶接性等に加え、表面が美麗で、特に、優れた鮮映性を有していることに対する要請が益々強くなったことによるものである。
自動車外板の塗装は、一般に、電着塗装を下塗りとし、その上に中塗りおよび上塗り塗装を施した後、硬化させる方法により行われるが、このような塗装が施された塗面が、均一な表面外観を有することはもちろん、光沢があって鮮やかに見える塗面の鮮映性(以下、「塗装鮮映性」という)に優れていることが満たすべき重要な性能として挙げられている。
本発明は前述の状況に鑑みてなされたもので、スポット連続打点性と塗装鮮映性をバランス良く向上させる皮膜構成を備え、更にめっき密着性も確保できる溶融亜鉛めっき鋼板およびこの鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題を解決するために検討を重ねた結果、めっき付着量を調整した後、リフロー処理を行ってスポット連続打点性を向上させるという従来の知見に加え、新たにこのリフロー処理時において、めっき皮膜と素地鋼板の界面に形成されるFe−Zn系合金層の厚みを適正化することによって塗装鮮映性を向上させ得ることを見いだした。
本発明はかかる知見に基づきなされたもので、その要旨は下記(1)の溶融亜鉛めっき鋼板、およびこの鋼板を製造することができる下記(2)の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法にある。
(1)素地鋼板の少なくとも片面にめっき皮膜を備える溶融亜鉛めっき鋼板であって、亜鉛めっき皮膜は、素地鋼板側からFe−Al系合金層、Fe−Zn系合金層および亜鉛めっき層がこの順で存在するものであり、Fe−Al系合金層中のAl含有量が10mg/m2以上300mg/m2以下であり、前記Fe−Zn系合金層の厚みが亜鉛めっき皮膜厚みの1/2以下であり、さらに合金層を含めためっき皮膜中のFe含有量が0.5質量%以上である溶融亜鉛めっき鋼板。
(2)Alを0.1〜0.3質量%含む溶融亜鉛めっき浴に素材鋼板を浸漬し、その後めっき付着量を調節しためっき鋼板を、鋼板温度が420℃以上490℃以下の範囲になるように加熱し、鋼板温度が当該温度範囲にある時間を20秒未満とし、次いで420℃から300℃までの平均冷却速度を20℃/秒以下として冷却する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
なお、本明細書においては、めっき鋼板の素地を構成する鋼板を指す場合、「素地鋼板」と記し、めっきを施す前の素材としての鋼板をいう場合は「素材鋼板」と記載する。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、スポット溶接性と塗装鮮映性がともに良好であり、めっき密着性にも優れている。
この鋼板は、めっき付着量を調整した後、亜鉛の融点以上の温度で加熱するリフロー処理を施す本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法により、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に比べて安価に製造することができる。
以下に、前記(1)および(2)に記載した本発明の溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法について詳細に説明する。なお、めっき皮膜の組成、めっき浴のAl濃度、素材鋼板の化学組成を示す「%」は「質量%」を意味する。
前記(1)に記載の本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、前述のとおり、素地鋼板の少なくとも片面にめっき皮膜を備える溶融亜鉛めっき鋼板であって、亜鉛めっき皮膜と素地鋼板との界面に、素地鋼板側からFe−Al系合金層、Fe−Zn系合金層および亜鉛めっき層がこの順で存在し、Fe−Al系合金層中のAl含有量が10mg/m2以上300mg/m2以下であり、前記Fe−Zn系合金層の厚みが亜鉛めっき皮膜厚みの1/2以下であり、さらに合金層を含めためっき皮膜中のFe含有量が0.5質量%以上の鋼板である。
図1は、この溶融亜鉛めっき鋼板におけるめっき皮膜の断面を模式的に示す図である。図示するように、亜鉛めっき皮膜(単に、めっき皮膜ともいう)4は、素地鋼板5側から順に存在するFe−Al系合金層(以下、単に「Fe−Al(合金)層」ともいう)2、Fe−Zn系合金層(以下、「Fe−Zn(合金)層」ともいう)3および亜鉛めっき層(めっき層)1とで構成されている。
素材鋼板としては、従来から家電製品用、建築用、自動車用等の用途に使用されている極底炭素鋼、低炭素鋼、さらにはSi、Mn、P、Al、Cu等の合金元素を含有する炭素鋼(高張力鋼や焼付硬化用鋼)などの鋼板を用いることができる。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板5の片面または両面に図1に示した構造のめっき皮膜4を備えており、めっき皮膜4の最下層には(すなわち、素地鋼板5に接して)ごく薄いFe−Al合金層2が存在する。
本発明のめっき鋼板においては、このFe−Al合金層2中のAl含有量(Al量)を10mg/m2以上300mg/m2以下と規定する。
このFe−Al合金層中のAl量は、例えば前掲の非特許文献1に記載される方法、すなわち、めっき鋼板を発煙硝酸溶液に浸漬してめっき皮膜を溶解し、溶解せずに残存したFe−Al合金層を、インヒビターを含有する塩酸溶液に浸漬して溶解し、得られた溶液のICP分光分析(誘導結合高周波プラズマ分光分析)により定量することができる。なお、前記図1において、「Fe−Al系合金層2が存在する」とは、ICP分光分析で検出されるAl量が10mg/m2以上であることを意味する。
前記Al量の下限を10mg/m2とするのは、Al量が10mg/m2未満では、めっき時にめっき皮膜と素地鋼板との界面に脆いFe−Zn合金層が成長し、めっき密着性が確保されない場合があるからである。一方、Al量が多すぎるとスポット溶接性が劣化するので、上限は300mg/m2とする。Al量の望ましい範囲は、10mg/m2以上200mg/m2以下である。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板においては、前記Fe−Zn系合金層3の厚みを亜鉛めっき皮膜4の厚みの1/2以下と規定する。例えばめっき付着量が70g/m2の場合、めっき皮膜の厚みは約10μmであるから、Fe−Zn系合金層の厚みは約5μm以下とする。
このFe−Zn系合金層3は、めっき付着量を調整しためっき鋼板にリフロー処理を施す際、その処理中にめっき皮膜中のZnと素地鋼板中のFeとの相互拡散が進むことにより、めっき層1と前記Fe−Al系合金層2との界面に形成される層である。なお、このFe−Zn系合金層3は、断面埋め込み試料(めっき皮膜の断面を残して合成樹脂に埋め込んだ試料)を「エタノール+硝酸」混合液によりエッチング処理してFe−Zn系合金相を視覚的に判別可能とした後、その断面観察により確認できる。
このように形成されるFe−Zn系合金層の厚みを前記のように亜鉛めっき皮膜の厚みの1/2以下と規定するのは、これよりも厚すぎると、めっき表面にこの合金層に起因する微細凹凸が形成されやすくなり、塗装鮮映性に悪影響を及ぼすからである。
なお、亜鉛めっき皮膜の厚みは、前記断面埋め込み試料の観察から求めることができる。便宜的にはめっき付着量を亜鉛の比重(7.1)で除することにより求めてもよい。
さらに、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板においては、めっき皮膜4中のFe含有量を0.5%以上と規定する。
めっき皮膜中のFe含有量の下限を0.5%とするのは、スポット連続打点性を向上させるためである。すなわち、リフロー処理によってめっき皮膜中のZnと素地鋼板中のFeとの相互拡散が進み、めっき皮膜中のFe含有量が増大すると、前述したように、めっき皮膜の融点が高くなって溶接時に電極が溶融Znと接する時間が短くなり、電極の損耗が軽減される結果、スポット連続打点性が向上する。しかし、前記Fe含有量が0.5%未満では、リフロー処理されないGI鋼板と比較して、スポット連続打点数の差で10%程度以下の改善にとどまり、改善の程度が小さい。したがって、めっき皮膜中のFe含有量は、0.5%以上とする。
一方、めっき皮膜中のFe含有量の上限は特に限定しない。しかし、Fe含有量とめっき皮膜の組織とは概ね相関があり(実際には、鋼種やめっき付着量、リフロー処理条件の違いなどによって、同じFe含有量でもめっき皮膜の組織が異なる)、Fe含有量があまり高くなると、めっき密着性の確保が困難になる。したがって、めっき皮膜中のFe含有量は6%以下とするのが望ましい。
なお、めっき皮膜中のFe含有量は、インヒビターを添加した10%塩酸溶液によりめっき皮膜を溶解した後、溶解液中のFe、Al、Znの各イオン種の存在量をICP分光分析で求め、これら3種の金属イオンの総量でFeイオン量を除することにより求めることができる。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板において、めっき付着量についての限定はない。例えば、従来のGI鋼板における通常のめっき付着量に準じた付着量とすればよく、耐食性が重視される場合は、より厚目付であってもよい。
次に、前記(2)に記載の本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、前記のとおり、Alを0.1〜0.3%含む溶融亜鉛めっき浴に素材鋼板を浸漬し、その後めっき付着量を調節しためっき鋼板を、鋼板温度が420℃以上490℃以下の範囲になるように加熱し、鋼板温度が当該温度範囲にある時間を20秒未満とし、次いで420℃から300℃までの平均冷却速度を20℃/秒以下として冷却する方法である。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法においては、めっき浴のAl濃度を0.1〜0.3%と規定する。
GI鋼板を製造する際、通常、Alを0.13%程度以上含有するめっき浴を用いて、脆いFe−Zn合金層の成長を抑制し、めっき密着性を向上させているが、本発明の製造方法においても、GI鋼板のこの特性を確保すべくめっき浴のAl濃度を前記のように規定する。
すなわち、前記Al濃度の下限を0.1%とするのは、めっき皮膜と素地鋼板の界面にFe−Al系合金層を形成させて、めっき密着性を確保するためで、めっき浴のAl濃度がこの値より小さいと、リフロー処理によって界面のFe−Al系合金層が消失して、めっき密着性が損なわれやすくなる。一方、めっき浴のAl濃度が高く、0.3%を超えると、リフロー処理時のZnとFeの相互拡散の速度が遅くなり、前述した0.5%以上のFeを含有するめっき皮膜が得られにくくなる。
続いて、めっき付着量を調節した後のめっき鋼板を鋼板温度が420℃以上490℃以下の範囲になるように加熱し、鋼板温度が当該温度範囲にある時間を20秒未満とする加熱処理(リフロー処理)を施す。
リフロー処理は、めっき皮膜全体をFe−Zn合金とするいわゆる合金化処理とは異なり、めっき後の鋼板をめっき皮膜の融点以上に短時間再加熱してめっき表面を再溶解する処理である。このリフロー処理により、前述のように、スポット連続打点性の改善、めっき皮膜表面の凹凸の除去等による表面外観の向上などの効果が得られる。
リフロー処理の際の鋼板温度は亜鉛の融点(420℃)以上とする。一方、鋼板温度の上限を490℃とするのは、この温度を超えて過度に高くするとFe−Zn合金層が厚くなり過ぎて、塗装鮮映性が劣化するからである。
鋼板温度が前記420〜490℃の温度範囲にある時間は20秒未満とする。20秒以上の長時間にわたって鋼板温度が前記温度範囲内にあると、Fe−Zn系合金層が厚くなり過ぎ、やはり塗装鮮映性が劣化する。この時間の下限は特に限定しない。制御可能であれば1秒程度の短時間でもよく、リフロー処理の効果が十分得られる。
次いで、鋼板温度が420℃から300℃までの平均冷却速度を20℃/秒以下として冷却する。すなわち、鋼板温度が420℃から300℃まで120℃低下する間の平均冷却速度を20℃/秒以下とする。平均冷却速度がこれより速い場合は、ZnとFeの拡散が十分に進行せず、スポット連続打点性の改善が不十分となる。なお、平均冷却速度の下限は特に限定しない。実際の操業では、生産効率を落とさないように冷却ガス等により鋼板を強制冷却するか、炉外で自然冷却(放冷)するが、冷却速度の下限は放冷時の冷却速度として自ずと定まるからである。
リフロー処理に際し、冷却をこのように徐々に行うことにより、Fe−Zn合金層が厚くなり過ぎない、すなわち優れた塗装鮮映性が得られる条件の下で、ZnとFeの相互拡散を進行させてめっき皮膜中のFe含有量を0.5%以上に高め、溶接性(連続スポット打点性)を向上させることができる。
冷却方法は、前記の放冷で構わない。通常は、放冷によって前記所定温度間の平均冷却速度を20℃/秒以下とすることができる。しかし、生産性の観点から冷却速度をある程度速めたい場合は、20℃/秒を超えない範囲でガス冷却法等により強制冷却してもよい。
本発明のめっき鋼板の製造方法では、めっき鋼板の機械的特性の調整や適切な表面粗度の付与等を目的として、調質圧延を施してもよい。その際、塗装鮮映性の向上の観点からは、例えば、放電ダル加工されたワークロールで圧延することにより、Wca(中心線平均うねり高さ)をできるだけ小さくしながら適切な表面粗度をめっき鋼板に付与するのが望ましい。実用上の望ましいWcaは、Wca≦0.4である。
表1に示す化学組成の冷延鋼板(板厚0.7mm、板幅1200mm)を素材鋼板として用い、連続溶融亜鉛めっきラインにて、Al濃度が0.1〜0.3%のめっき浴に浸漬し、得られためっき鋼板に種々の条件でリフロー処理を施した後、調質圧延した数種の溶融亜鉛めっき鋼板を試作した。なお、目標めっき付着量を70g/m2とした。
表2にめっき鋼板の製造条件および調質圧延条件をまとめて示す。
これらの溶融亜鉛めっき鋼板について、めっき皮膜中のFe含有量、Fe−Al合金層中のAl量、Fe−Zn合金層の厚み、スポット溶接での連続打点数、および化成電着塗装後の塗装鮮映性を以下の方法で調査し、評価した。
〔めっき皮膜中のFe含有量〕
前述したICP分光分析により求めた。
前述したICP分光分析により求めた。
〔Fe−Al合金層中のAl量〕
前述の発煙硝酸を用いる方法でめっき皮膜からFe−Al合金層を分離し、塩酸溶液に溶解して得られた溶液中のAlをICP分光分析で定量した。このAl量を試料面積で除し、その値が10mg/m2以上であれば、Fe−Al合金層が存在しているとした。Fe−Alが存在すると判断したものについては、後に示す表3の「Fe−Al層中Al」の欄に○印を付して示した。
前述の発煙硝酸を用いる方法でめっき皮膜からFe−Al合金層を分離し、塩酸溶液に溶解して得られた溶液中のAlをICP分光分析で定量した。このAl量を試料面積で除し、その値が10mg/m2以上であれば、Fe−Al合金層が存在しているとした。Fe−Alが存在すると判断したものについては、後に示す表3の「Fe−Al層中Al」の欄に○印を付して示した。
〔Fe−Zn合金層の厚み〕
前述の断面埋め込み試料を用い、断面観察を行って平均厚みを測定した。
前述の断面埋め込み試料を用い、断面観察を行って平均厚みを測定した。
〔スポット溶接での連続打点数および溶接性の評価〕
前記試作した溶融亜鉛めっき鋼板を2枚重ねて下記の条件でスポット溶接を連続的に行い、4t1/2(tは鋼板厚み(mm))のナゲット径が形成できなくなるまでの連続打点数を調査した。
前記試作した溶融亜鉛めっき鋼板を2枚重ねて下記の条件でスポット溶接を連続的に行い、4t1/2(tは鋼板厚み(mm))のナゲット径が形成できなくなるまでの連続打点数を調査した。
加圧力 :1961N
スクイズ時間 :17サイクル
通電時間 :8サイクル
保持時間 :5サイクル
溶接電流 :10kA
チップ先端形状:直径5mm(CF型)。
スクイズ時間 :17サイクル
通電時間 :8サイクル
保持時間 :5サイクル
溶接電流 :10kA
チップ先端形状:直径5mm(CF型)。
溶接性の評価は、100打点毎(最高3000打点)にナゲットを観察し、4t1/2(tは鋼板厚み(mm))のナゲット径が形成できなくなるまでの連続打点数を調査し、リフロー処理をしないものの連続打点数に対する増加割合(%)を求め、それに基づいて以下の3段階に分別し、◎印または○印であれば、良好とした。リフロー処理しないもの(後に示す表3のNo.1)では連続打点数が1000打点なので、例えば、評価対象鋼板の連続打点数が1500打点であれば増加割合は50%であり、評価は◎印(良好)となる。
50%以上 ・・・◎印
10%以上50%未満 ・・・○印
10%未満(現状レベル) ・・・×印。
10%以上50%未満 ・・・○印
10%未満(現状レベル) ・・・×印。
〔塗装鮮映性〕
試作した溶融亜鉛めっき鋼板を、日本ペイント(株)製SD280MZ(20g/l(リットル))にて120秒間アルカリ脱脂した後、日本ペイント(株)製表面調整液5MZ−1(1g/l)に20秒間浸漬し、続いて、日本ペイント(株)製リン酸塩処理液SD2500MZL(43℃)に180秒間浸漬するリン酸亜鉛処理を行った。
試作した溶融亜鉛めっき鋼板を、日本ペイント(株)製SD280MZ(20g/l(リットル))にて120秒間アルカリ脱脂した後、日本ペイント(株)製表面調整液5MZ−1(1g/l)に20秒間浸漬し、続いて、日本ペイント(株)製リン酸塩処理液SD2500MZL(43℃)に180秒間浸漬するリン酸亜鉛処理を行った。
次に、日本ペイント(株)製電着塗料PN120Mを用いて、電圧200Vのスロープ通電で電着塗装し、焼付け温度175℃で20分焼付け塗装した(塗膜厚は20μm)。
この塗装鋼板に、更に約30μm厚のポリエステルテープを貼り付け、塗装鮮映性の評価材とした。
塗装鮮映性の評価にはパーセプトロン(株)製「オートスペクト」を用いた。オートスペクトでは、塗装鮮映性の評価パラメータとして、光沢度(GL:GLOSS)、識別度(DOI:DISTINCTNESS OF IMAGE)、ゆず肌度(OP:ORANGE PEEL)があり、それぞれ数値で示される。
塗装鮮映性の評価は、試作した溶融亜鉛めっき鋼板について、前記評価パラメータとして光沢度、識別度およびゆず肌度の数値を求め、リフロー処理しないもの(表3のNo.1)の測定数値(光沢度、識別度およびゆず肌度)を基準数値とし、それに基づいて以下の2段階に分別し、○印であれば、良好とした。
基準数値の±10%以内 ・・・○印
基準数値の−10%未満 ・・・×印
なお、「基準数値の±10%以内」とは、これら評価パラメータとしての光沢度、識別度およびゆず肌度の各数値のいずれもが±10%以内であることを、また、「基準数値の−10%未満」とは、前記各数値のいずれかが−10%未満であることを意味する。
基準数値の−10%未満 ・・・×印
なお、「基準数値の±10%以内」とは、これら評価パラメータとしての光沢度、識別度およびゆず肌度の各数値のいずれもが±10%以内であることを、また、「基準数値の−10%未満」とは、前記各数値のいずれかが−10%未満であることを意味する。
表3に、リフロー処理条件、めっき皮膜構成、およびめっき皮膜性能の評価結果をまとめて示す。表3において、「冷却速度(℃/秒)」は420℃から300℃までの平均冷却速度である。また、「皮膜中Fe(質量%)」とは、めっき皮膜中のFe含有量を意味する。
No.4〜No.7は本発明例であり、これらの溶融亜鉛めっき鋼板は、スポット溶接性(連続打点性)および塗装鮮映性のいずれも良好であった。
一方、No.2およびNo.3は、めっき皮膜中のFe含有量が本発明で規定する範囲より低い場合で、スポット溶接性の改善がみられなかった。このうちのNo.3の鋼板と本発明例のNo.4の鋼板を比較すると、420℃から300℃までの平均冷却速度が異なり、No.4の鋼板の方が連続打点数が多く、スポット溶接性が良好だった。No.4の鋼板では冷却を徐々に行ったので、ZnとFeとの相互拡散が進み、めっき皮膜中のFe含有量が増大したことによるものである。
また、No.8〜No.10は、Fe−Zn合金層の厚みが本発明で規定する亜鉛めっき皮膜厚みの1/2以下という条件から外れる場合で(この場合のめっき付着量70g/m2から、めっき皮膜厚みは約10μmとなる)、スポット溶接性は良好であったが、塗装鮮映性が劣化した。めっき後加熱処理(リフロー処理)の際の保持時間が本発明で規定する時間を超え、Fe−Zn合金層が厚くなり過ぎたことによるものである。
なお、この実施例で素材鋼板として用いた前記冷延鋼板(表1参照)とは合金化速度に差がみられる鋼種(例えば、C:0.002%、Mn:0.3〜0.4%、P:0.04%、Ti:0.01%、Nb<0.01%、N:0.002%、Al:0.05%を含有するような340MPa級焼付硬化型鋼板)についても調査し、性能評価を行ったが、前記冷延鋼板について得られた結果と同傾向を示した。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、スポット溶接性と塗装鮮映性がともに良好であり、めっき密着性にも優れており、厚目付が可能で耐食性に優れるという利点も有している。この鋼板は、めっき付着量を調整した後、亜鉛の融点以上の温度で加熱するリフロー処理を施す本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法により製造することができる。
したがって、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法は、家電製品用、建築用、自動車用等の素材およびその製造方法として利用できることは勿論、塗装鮮映性が良好であることから、従来、GA鋼板が用いられていた自動車外板等の用途にも十分適用可能である。
1:亜鉛めっき層(めっき層)
2:Fe−Al系合金層
3:Fe−Zn系合金層
4:亜鉛めっき皮膜(めっき皮膜)
5:素地鋼板
2:Fe−Al系合金層
3:Fe−Zn系合金層
4:亜鉛めっき皮膜(めっき皮膜)
5:素地鋼板
Claims (2)
- 素地鋼板の少なくとも片面にめっき皮膜を備える溶融亜鉛めっき鋼板であって、亜鉛めっき皮膜は、素地鋼板側からFe−Al系合金層、Fe−Zn系合金層および亜鉛めっき層がこの順で存在するものであり、Fe−Al系合金層中のAl含有量が10mg/m2以上300mg/m2以下であり、前記Fe−Zn系合金層の厚みが亜鉛めっき皮膜厚みの1/2以下であり、さらに合金層を含めためっき皮膜中のFe含有量が0.5質量%以上であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
- Alを0.1〜0.3質量%含む溶融亜鉛めっき浴に素材鋼板を浸漬し、その後めっき付着量を調節しためっき鋼板を、鋼板温度が420℃以上490℃以下の範囲になるように加熱し、鋼板温度が当該温度範囲にある時間を20秒未満とし、次いで420℃から300℃までの平均冷却速度を20℃/秒以下として冷却することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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