JP2005209909A - 半導体光素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】p型半導体基板1上に、少なくともp型のクラッド層2、活性層4及びn型クラッド層6からなる積層体がメサストライプ状に加工され、該積層体の両側がルテニウム(Ru)を添加した半絶縁性半導体結晶9で埋め込まれた半導体光素子において、前記p型半導体基板1及びその上の前記積層体2,4,6と前記半絶縁性半導体結晶9の間に、p型ドーパントの拡散緩和層8が挿入されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
このため、このような埋め込み構造を持つ半導体光素子は、大容量光伝送システムに不可欠となっている。
n型半導体に比べ接触抵抗の小さいp型半導体を、大きい接触面積がとれる下部基板電極とすることで、素子抵抗が低減でき、素子特性を向上させることができる。
また高速動作が求められる直接変調半導体レーザでは、p型基板はレーザ駆動用のドライバーとして高速動作に優れたnpn型トランジスタと回路の整合性がとれる利点がある。
しかしながら、半絶縁性埋め込み層には、従来、鉄(Fe)をドーピングした半導体結晶が用いられているが、ドーパントの鉄とp型基板のドーパントである亜鉛(Zn)とが、埋め込み成長界面で相互拡散する問題があった。
最近、ルテニウム(Ru)をドーピングした半絶縁性半導体結晶ではZnとほとんど相互拡散をおこさないことが見いだされ、n型InP基板上にRuをドーパントとした高抵抗埋め込み層を用いた半導体レーザが作製されたという報告がなされた(非特許文献1,2参照)。
しかしながら、より高速大容量伝送が求められる光ネットワークシステム環境では、より高速で、低閾値、高効率で動作する直接変調半導体レーザがより低コストで求められており、そのためには、p型InP基板上に形成する高抵抗埋め込み層の電流ブロック特性を確実に機能させ、その再現性と基板面内の歩留まりを上げることが不可欠である。
p型基板上の半絶縁性半導体結晶の埋め込み層をRuドープ半絶縁性半導体結晶とすることで相互拡散はほとんどなくすことはできる。
この格子間Znは、相互拡散現象が発生しなくても、埋め込み層をMOVPE成長する時の成長温度約600℃以上の温度で結晶サイトに入ているZnより拡散しやすい。
それでも、Znがドーパントであるp型基板上にRuをドーパントとした高抵抗埋め込み層を成長する場合は、格子間Znが拡散し、埋め込み層の電流ブロック機能が劣化し、その素子特性の再現性と基板面内の歩留まりが低下する問題があった。
この問題を解決するためには、その格子間Znの埋め込層への拡散を抑制する必要がある。
しかし、Ruをドーピングした半絶縁性半導体結晶を用いることで、相互拡散がほとんどなくなり、Znが埋め込み層中に深く拡散することはなくなる。
p型ドーパントの拡散緩和層にp型低濃度ドープの半導体結晶、或いはノンドープの半導体結晶を用いることにより、拡散してきた格子間Znをそこでトラップすることができ、Ruをドーピングした半絶縁性半導体埋込み層への格子間Znの拡散を抑制できる。
ノンドープの半導体結晶を用いた場合、格子間Znの拡散量が少なく、ノンドープの半導体結晶がp型にならず残ったとしても、ノンドープの半導体結晶のキャリア濃度は通常1×1016cm-3以下のn型キャリア濃度であるため、素子容量に顕著な増加はなく、素子特性に与える影響はほとんどない。
p型ドーパントの拡散緩和層であるp型低濃度ドープの半導体結晶或いはノンドープの半導体結晶としては、InP結晶、InGaAs結晶、InAlAs結晶或いはInGaAsP結晶を用いることができる。
以上の方法により、埋め込み層の電流ブロック機能を高め、高い素子特性の再現性と基板面の均一性を向上させることができ、p型基板の利点を活用した高い素子性能を得ることができる。
これまでの説明は典型的なp型ドーパントであるZnを例にとり説明したが、他のp型ドーパント(例えば、Be、Cd、Mg)でも同様であることは言うまでもない。
以下、実施例を用いて説明する。
図1は、MQWを活性層にした直接変調半導体DFBレーザの断面構造である。
図1(a)に示すように、面方位(100)のZnドープp型InP基板1上に、有機金属気相成長法(MOVPE)法により層厚0.5μmのZnドープp型InPクラッド層2、層厚0.05μmのノンドープInGaAsP下部光閉じ込め(SCH)層3、層厚0.15μmの発光波長1.3μmのノンドープInGaAsP/InGaAsP歪MQW(多重量子井戸)活性層4、層厚0.05μmのノンドープInGaAsP上部光閉じ込め(SCH)層5を順に成長した。
次に、図1(b)に示すように、SiO2をマスク7としてRIE(反応性イオンエッチング)により、幅2μmで高さ1.5μm程度のメサストライプを形成した。
引き続き、図1(c)に示すように、メサストライプ基板上に、MOVPE法により、p型ドーパントの拡散緩和層8である層厚0.5μmで、p型ドープ濃度が1×1017cm-3のp型低濃度ドープInP埋め込み層を成長した。
Ruの原料としてビスジメチルペンタディエニルルテニウムbis(η5-2,4-dimethylpentadienyl)ruthenium(II)を用いた。
更に、図1(d)に示すように、マスク7を除去し、層厚2μmのSeをドーパントとするn型InPクラッド層10、層厚0.4μmのSeをドーパントとするn型インジウムガリウム砒素燐(InGaAsP)コンタクト層11の順に成長した。
活性層以外の化合物半導体は特に断らない限り、InP基板に格子整合する組成である。
n型InP/RuドープInP(層厚3μm)/n型InP構造のV−I測定によりRuドープInPの抵抗率は108Ωcm以上であった。
チップ化して作製した直接変調用半導体レーザの小信号変調特性(3dB帯域)は、チップ温度が25℃で約27GHz,95℃の場合は約12GHzであった。
発振閾値は、チップ温度が25℃の場合で約6mA,95℃の場合は約35m/Aであり、光出力効率は、チップ温度が25℃の場合で約0.35W/A,95℃の場合は約0.15W/Aであった。
また以上の優れた素子特性が再現性良く得られた。
比較のため、p型ドーパントの拡散緩和層を挿入しない素子を同様の手順で作製した。
また、同一特性が得られるrun−to−runの再現性は、p型ドーパントの拡散緩和層を用いた場合の方が拡散緩和層を用いない場合より、約3倍増加した。
同一特性が得られる基板面内の歩留まりは、p型ドーパントの拡散緩和層を用いた場合の方が拡散緩和層を用いない場合より約4倍増加した。
これは、p型ドーパントの拡散緩和層8が、素子特性を向上させ、run−to−runの再現性と基板面内の歩留まりを著しく向上させたことを意味する。
図2は、MQWを活性層にした直接変調半導体DFBレーザの断面構造である。
図2(a)に示すように、面方位(100)のZnドープp型InP基板21上に、有機金属気相成長法(MOVPE)法により層厚0.2μmのZnドープp型InPクラッド層22、層厚0.05μmのノンドープInGaAsP下部光閉じ込め(SCH)層23、層厚0.15μmの発光波長1.55μmのノンドープInGaAsP/InGaAsP歪MQW(多重量子井戸)活性層24、層厚0.05μmのノンドープInGaAsP上部光閉じ込め(SCH)層25を順に成長した。
次に、図2(b)に示すように、SiO2をマスク28としてRIE(反応性イオンエッチング)により、幅2μmで高さ3μm程度のメサストライプを形成した。
引き続き、図2(c)に示すように、メサストライプ基板上に、MOVPE法により、p型ドーパントの拡散緩和層29である層厚0.5μmで、p型ドープ濃度が1×1017cm-3のp型低濃度ドープInP埋め込み層を成長した。
Ruの原料としてビスジシクロペンタディエニルルテニウムbis(η5-cyclopentadienyl)ruthenium(II)を用いた。
活性層以外の化合物半導体は特に断らない限り、InP基板に格子整合する組成である。
この後、図2(d)に示すように、RuドープInP埋込み層30の上面をSiO2保護膜31で覆い、n型電極32、基板側にp型電極33を形成した。
チップ化して作製した直接変調用半導体レーザの小信号変調特性(3dB帯域)は、チップ温度が25℃で約30GHz,65℃の場合は約10GHzであった。
発振閾値は、チップ温度が25℃の場合で約5mA,65℃の場合は約14mAであり、光出力効率は、チップ温度が25℃の場合で約0.26W/A,65℃の場合は約0.16W/Aであった。
また以上の優れた素子特性が再現性良く得られた。
その結果、小信号変調特性の3dB帯域が約20%減少し、発振閾値も15%以上増加し、光出力効率も25%以上減少した。
また、同一特性が得られるrun−to−runの再現性は、p型ドーパントの拡散緩和層を用いた場合の方が拡散緩和層を用いない場合より約3倍増加した。
同一特性が得られる基板面内の歩留まりは、p型ドーパントの拡散緩和層を用いた場合の方が拡散緩和層を用いない場合より約4倍増加した。
これは、p型ドーパントの拡散緩和層29が、素子特性を向上させ、run−to−runの再現性と基板面内の歩留まりを著しく向上させたことを意味する。
図3は、MQWを活性層にした直接変調半導体DFBレーザの断面構造である。
図3(a)に示すように、面方位(100)のZnドープp型InP基板41上に、有機金属気相成長法(MOVPE)法により層厚0.5μmのZnドープp型InPクラッド層42、層厚0.05μmのノンドープInGaAsP下部光閉じ込め(SCH)層43層厚0.15μmの発光波長1.3μmのノンドープInGaAsP/InGaAsP歪MQW(多重量子井戸)活性層44、層厚0.05μmのノンドープInGaAsP上部光閉じ込め(SCH)層45を順に成長した。
次に、図3(b)に示すように、SiO2をマスク47としてRIE(反応性イオンエッチング)により、幅2μmで高さ1.5μm程度のメサストライプを形成した。
引き続き、図3(c)に示すように、メサストライプ基板上に、MOVPE法により、p型ドーパントの拡散緩和層48である層厚0.3μmのノンドープInP埋め込み層を成長した。
その上に、RuドープInP層49(層厚3μm)をMOVPE成長させた。
Ruの原料としてビスジメチルシクロペンタディエニルルテニウムbis(η5-methylcyclopentadienyl)ruthenium(II)を用いた。
活性層以外の化合物半導体は特に断らない限り、InP基板に格子整合する組成である。
この後、n型電極52、基板側にp型電極53を形成した。
n型InP/RuドープInP(層厚3μm)/n型InP構造のV−I測定によりRuドープInPの抵抗率は108Ωcm以上であった。
発振閾値は、チップ温度が25℃の場合で約7mA,95℃の場合は約37mAであり、光出力効率は、チップ温度が25℃の場合で約0.33W/A,95℃の場合は約0.13W/Aであった。
また、以上の優れた素子特性が再現性良く得られた。
比較のため、p型ドーパントの拡散緩和層を挿入しない素子を同様の手順で作製した。
その結果、小信号変調特性の3dB帯域が約18%減少し、発振閾値も15%以上増加し、光出力効率も20%以上減少した。
同一特性が得られる基板面内の歩留まりは、p型ドーパントの拡散緩和層を用いた場合の方が拡散緩和層を用いない場合より約4倍増加した。
これは、p型ドーパントの拡散緩和層48が、素子特性を向上させ、run−to−runの再現性と基板面内の歩留まりを著しく向上させたことを意味する。
図4は、MQWを活性層にした直接変調半導体DFBレーザの断面構造である。
図4(a)に示すように、面方位(100)のZnドープp型InP基板61上に、有機金属気相成長法(MOVPE)法により層厚0.2μmのZnドープp型InPクラッド層62、層厚0.05μmのノンドープInGaAsP下部光閉じ込め(SCH)層63、層厚0.15μmの発光波長1.55μmのノンドープInGaAsP/InGaAsP歪MQW(多重量子井戸)活性層64、層厚0.05μmのノンドープInGaAsP上部光閉じ込め(SCH)層65を順に成長した。
次に、図4(b)に示すように、SiO2をマスク68としてRIE(反応性イオンエッチング)により、幅2μmで高さ3μm程度のメサストライプを形成した。
引き続き、図4(c)に示すように、メサストライプ基板上に、MOVPE法により、p型ドーパントの拡散緩和層69である層厚0.3μmのノンドープInP埋め込み層を成長した。
Ruの原料としてシクロペンタディエニルメチルシクロペンタディエニルルテニウム(η5-cyclopentadienyl)(η5-methylcyclopentadjenyl)ruthenium(II)を用いた。
活性層以外の化合物半導体は特に断らない限り、InP基板に格子整合する組成である。
この後、図4(d)に示すように、RuドープInP埋込み層70の上面をSiO2保護膜71で覆い、n型電極72、基板側にp型電極73を形成した。
n型InP/RuドープInP(層厚3μm)/n型InP構造のV−I測定によりRuドープInPの抵抗率は108Ωcm以上であった。
発振閾値は、チップ温度が25℃の場合で約6mA,65℃の場合は約15mAであり、光出力効率は、チップ温度が25℃の場合で約0.25W/A,65℃の場合は約0.15W/Aであった。
また以上の優れた素子特性が再現性良く得られた。
比較のため、p型ドーパントの拡散緩和層を挿入しない素子を同様の手順で作製した。
その結果、小信号変調特性の3dB帯域が約20%減少し、発振閾値も15%以上増加し、光出力効率も25%以上減少した。
同一特性が得られる基板面内の歩留まりは、p型ドーパントの拡散緩和層を用いた場合の方が拡散緩和層を用いない場合より約4倍増加した。
これは、p型ドーパントの拡散緩和層69が、素子特性を向上させ、run−to−runの再現性と基板面内の歩留まりを著しく向上させたことを意味する。
2 p型InPクラッド層
3 ノンドープInGaAsP下部光閉じ込め層
4 InGaAsPMQW層
5 ノンドープInGaAsP上部光閉じ込め層
6 n型InPクラッド層
7 SiO2マスク
8 p型低濃度ドープInP拡散緩和層
9 Ruドープ半絶縁性埋め込み層
10 n型InPクラッド層
11 n型InGaAsPコンタクト層
12 n型電極
13 p型電極
21 p型InP基板
22 p型InPクラッド層
23 ノンドープInGaAsP下部光閉じ込め層
24 InGaAsPMQW層
25 ノンドープInGaAsP上部光閉じ込め層
26 n型InPクラッド層
27 n型InGaAsPコンタクト層
28 SiO2マスク
29 p型低濃度ドープInP拡散緩和層
30 Ruドープ半絶縁性埋め込み層
31 SiO2保護膜
32 n型電極
33 p型電極
41 p型InP基板
42 p型InPクラッド層
43 ノンドープInGaAsP下部光閉じ込め層
44 InGaAsPMQW層
45 ノンドープInGaAsP上部光閉じ込め層
46 n型InPクラッド層
47 SiO2マスク
48 ノンドープInP拡散緩和層
49 Ruドープ半絶縁性埋め込み層
50 n型InPクラッド層
51 n型InGaAsPコンタクト層
52 n型電極53p型電極
61 p型InP基板
62 p型InPクラッド層
63 ノンドープInGaAsP下部光閉じ込め層
64 InGaAsPMQW層
65 ノンドープInGaAsP上部光閉じ込め層
66 n型InPクラッド層
67 n型InGaAsPコンタクト層
68 SiO2マスク
69 ノンドープInP拡散緩和層
70 Ruドープ半絶縁性埋め込み層
71 SiO2保護膜
72 n型電極
73 p型電極
Claims (8)
- p型半導体基板上に、少なくともp型のクラッド層、活性層及びn型クラッド層からなる積層体がメサストライプ状に加工され、該積層体の両側がルテニウム(Ru)を添加した半絶縁性半導体結晶で埋め込まれた半導体光素子において、前記p型半導体基板及びその上の前記積層体と前記半絶縁性半導体結晶の間に、p型ドーパントの拡散緩和層が挿入されていることを特徴とする半導体光素子。
- p型半導体基板上に、少なくともp型のクラッド層、活性層及びn型クラッド層からなる積層体がメサストライプ状に加工され、該積層体の両側がルテニウムを添加した半絶縁性半導体結晶で埋め込まれた直接変調半導体レーザにおいて、前記p型半導体基板及びその上の前記積層体と前記半絶縁性半導体結晶と間に、p型ドーパントの拡散緩和層が挿入されていることを特徴とする半導体光素子。
- 請求項1において、該p型ドーパントの拡散緩和層がp型低濃度ドープの半導体結晶であることを特徴とする半導体光素子。
- 請求項3において、該p型ドーパントの拡散緩和層となるp型低濃度ドープの半導体結晶がp型低濃度ドープInP結晶、p型低濃度ドープInGaAs結晶、p型低濃度ドープInAlAs結晶或いはp型低濃度ドープInGaAsP結晶であることを特徴とする半導体光素子。
- 請求項1において、該p型ドーパントの拡散緩和層がノンドープの半導体結晶であることを特徴とする半導体光素子。
- 請求項5において、該p型ドーパントの拡散緩和層となるノンドープの半導体結晶がノンドープInP結晶、ノンドープInGaAs結晶、ノンドープInAlAs結晶或いはノンドープInGaAsP結晶であることを特徴とする半導体光素子。
- p型半導体基板上に、少なくともp型のクラッド層、活性層及びn型クラッド層からなる積層体を形成する工程と、該積層体をメサストライプ状に加工する工程と、該積層体の両側をルテニウムを添加した半絶縁性半導体結晶で埋め込む工程を含む半導体光素子の製造方法において、該p型半導体基板及びその上の前記積層体と前記半絶縁性半導体結晶の間にp型ドーパントの拡散緩和層を挿入する工程を設けることを特徴とする半導体光素子の製造方法。
- 請求項3又は4において、前記p型低濃度ドープの半導体結晶のドープ濃度が3×1017cm-3以下であることを特徴とする半導体光素子。
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