JP2005200398A - 脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】油脂類とアルコールとを触媒の存在下に接触させる工程を含んでなる脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法であって、上記触媒は、4族及び5族の金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を必須成分とするものである脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法。
【選択図】 なし
Description
このような製造方法においては、一般に、均一系アルカリ触媒を用いる方法が工業的に用いられているが、煩雑な触媒の分離除去工程が必要となる。また、油脂に含まれる遊離の脂肪酸がアルカリ触媒によってけん化されるため石鹸が副生することになり、多量の水で洗浄する工程が必要であるばかりでなく、石鹸の乳化作用により脂肪酸アルキルエステルの収率が低下し、また、その後のグリセリンの精製プロセスも煩雑となる場合がある。
以下に本発明を詳述する。
本発明における触媒としては、上記金属元素を必須成分とすることにより、活性金属成分の溶出が充分に抑制され、また、高い触媒活性を有することから、より効率的に反応を実施することが可能となる。
上記第2成分の含有量は、特に限定されるものではないが、通常、必須成分原子に対する第2成分原子の存在比は、0.05以上であり、10以下である。0.05以下であると、触媒活性の向上効果が充分には発現されないおそれがあり、10以上であると、触媒の活性金属成分(必須成分及び/又は第2成分)の反応液への溶出を充分には抑制できないおそれがある。下限値として、より好ましくは、0.1であり、さらに好ましくは、0.2である。また上限値としては、より好ましくは、5であり、さらに好ましくは3である。好ましい範囲としては、0.1〜5であり、より好ましくは、0.2〜3である。
上記複合酸化物を形成する形態としては特に限定されないが、例えば、酸素原子を介して必須成分原子と第2成分原子とが共有結合した形態;必須成分原子と第2成分原子とが結合したものと、酸素原子とが共有結合した形態;必須成分原子の酸化物と第2成分原子の酸化物との複合物及びそれらの固溶体等が挙げられる。また、複合酸化物や錯体等を担体上に坦持又は固定化した形態であってもよい。
中でも、チタンケイ素複合酸化物、TiVO4等のチタンバナジウム複合酸化物、FeVO4等の鉄バナジウム複合酸化物、Co2V2O7等のコバルトバナジウム複合酸化物、CeVO4等のセリウムバナジウム複合酸化物、モリブデンニオブ複合酸化物、モリブデンタンタル複合酸化物、タングステンニオブ複合酸化物、タングステンタンタル複合酸化物を含むことが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記チタン含有酸化物触媒としては、例えば、アナターゼ型TiO2、ルチル型TiO2、チタニアシリカ、チタニアジルコニア、チタニアマグネシア、チタニアカルシア、チタニアイットリア、チタニアボリア、チタニア−酸化スズ等の複合金属酸化物等が挙げられ、中でも、アナターゼ型TiO2、ルチル型TiO2、チタニアシリカが好ましい。
上記結晶性チタン複合酸化物とは、結晶化された複合酸化物であり、チタン原子を必須とする触媒活性を発現するものであることを意味する。このように結晶化され、表面積が大きいことから、触媒としての活性が向上することになる。このような結晶性チタン複合酸化物としては、酸素原子を介してチタン原子とその他の金属原子とが共有結合したものを含むものであることが好ましい。また、結晶格子内にチタン原子を有する構造であるものが好適である。これにより活性金属成分の溶出を充分に抑制することができることから、活性金属成分を分離する工程を省略して製造工程を簡略化することができるうえに、触媒を長期にわたって使用することが可能となる。
また、結晶性チタン複合酸化物としては、結晶性チタノシリケートであることが特に好ましい。結晶性チタノシリケートとは、ケイ素骨格の中に酸素原子を介してチタン原子を取り込んだ構造を有するものであり、チタン原子が溶出しにくく、リーチングが少ないので、触媒の分離や除去工程を簡略化又は不要とすることができ、また、触媒として長期にわたって活性を維持することができる。
上記結晶格子内チタン含有結晶性マイクロポーラスマテリアルとしては、例えば、MFI型ゼオライト構造を有するチタノシリケート(TS−1)、MFI型チタノアルミノシリケート、MEL型チタノシリケート(TS−2)、MEL型チタノアルミノシリケート、BEA型チタノシリケート、BEA型チタノアルミノシリケート、RUT型チタノシリケート、RUT型チタノアルミノシリケート、MWW型チタノシリケート、MWW型チタノアルミノシリケート、ETS−4型チタノシリケート、ETS−10型チタノシリケート等のゼオライト構造の結晶性マイクロポーラスマテリアル;TAPO−5、TAPO−11、TAPO−34等のチタノアルミノホスフェート類の結晶性マイクロポーラスマテリアル等が挙げられ、中でもTS−1型チタノシリケートが好ましい。
上記(5)の形態においては、ルチル構造とは、正方晶系に属し、AB2で表される化合物(A:陽性原子、B:陰性原子)により形成される結晶構造である。このような結晶構造においては、A原子がB原子によって八面体的に配位され、各八面体は隣接八面体と頂点又は稜を共有して骨格構造を形成することになる。なお、ルチル構造の化合物は、アナターゼ構造の化合物を焼成することにより得ることが可能である。
上記層状酸化物とは、シート状の酸化物が複数積層されて層状構造を形成したものである。好ましくは、4族及び5族の金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含有する複合酸化物が複数積層されて層状構造を形成したものである。
また例えば、シート状のチタン含有層状複合酸化物を4級アンモニウム塩を用いて剥離させることによって得られる、いわゆるナノシート構造を有する複合酸化物も好適に使用することができる。
ATiXMO(2X+3) (1)
(Aは、水素原子又はアルカリ金属原子を表す。Mは、ニオブ原子又はタンタル原子を表す。Xは、7以下の自然数である。)で表される層状化合物であることも好ましい。
上記Aは、水素原子又はアルカリ金属原子であり、中でも、水素原子、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、セシウム原子が好ましく、より好ましくは、水素原子である。このような層状酸化物としては、チタン含有層状複合酸化物であることが好ましく、中でも、チタン含有層状複合酸化物触媒を好適に用いることができる。
上記層状酸化物としては、例えば、HTiNbO5、KTiNbO5、CsTiNbO5、HTi2NbO7、CsTi2NbO7、HTi3NbO9、KTi3NbO9、CsTi3NbO9、HNb3O8、KNb3O8、CsNb3O8、HTiTaO5、KTiTaO5、CsTiTaO5、HNbMoO6、KNbMoO6、CsNbMoO6、HNbWO6、KNbWO6、CsNbWO6、HTaMoO6、KTaMoO6、CsTaMoO6、HTaWO6、KTaWO6、CsTaWO6、リン酸チタン等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、HTiNbO5、HTi2NbO7、HNb3O8、HNbMoO6、HNbWO6が好ましい。
上記遊離脂肪酸の含有量が800ppm未満であると、精製や洗浄等の工程を簡略化できないことから、エネルギー的に充分に有利になものとできないこととなり、4500ppmを超えると、ディーゼルエンジンの腐食を充分には抑制できなかったり、セタン価が低下するため好ましくない。下限値として、好ましくは、900ppmであり、より好ましくは、1000ppmである。また上限値として、好ましくは、3000ppmであり、より好ましくは、2500ppmである。
上記脂肪酸アルキルエステルの含有量が98.00質量%未満であると、各種用途に充分に好適に用いることができなくなり、99.92質量%を越えると、エネルギー的に充分に有利になものとできないこととなる。下限値として、好ましくは、98.50質量%であり、上限値として、好ましくは、99.90質量%である。
上記反応液中の触媒の活性金属成分の溶出量は、反応後の反応液を、溶液状態のまま蛍光X線分析法(XRF)により測定する。また、より微小量の溶出量を測定する場合には、高周波誘導プラズマ(ICP)発光分析法により測定する。
上記工程においては、例えば、下記式に示すように、トリグリセリドとメタノールとのエステル交換反応により、脂肪酸メチルエステルとグリセリンとが生成することになる。
上記製造方法において、上記触媒を用いることによりエステル交換反応とエステル化反応とを行うことができるので、原料である油脂類が遊離脂肪酸を含むものであっても、エステル交換反応工程で同時に遊離脂肪酸のエステル化反応が進行するため、エステル交換反応工程と別にエステル化反応工程を設けなくても脂肪酸アルキルエステルの収率を向上することができる。
上記製造方法においては、上記式に示すように、エステル交換反応により脂肪酸アルキルエステルと共にグリセリンが得られることになる。本発明においては、精製されたグリセリンを工業的に簡便に得ることができる。このようなグリセリンは、化学原料として各種の用途に有用なものである。
上記油脂としては、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ベニバナ油、アマニ油、綿実油、キリ油、ヒマシ油等の植物油脂;牛脂、豚油、魚油、鯨脂等の動物油脂;各種の食用油の使用済み油(廃食油)が好適であり、これらは、1種のものを用いてもよく、2種以上のものを併用してもよい。
上記アルコールはまた、食用油、化粧品、医薬等の製造を目的とする場合には、ポリオールであることが好ましい。上記ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が好適である。中でも、グリセリンが好ましい。これらは、1種又は2種以上を混合して用いてもよい。本発明の脂肪酸アルキルエステルの製造方法は、上記アルコールとしてポリオールを用いる場合、後述のように、ジグリセリドを得る方法において好適に用いることができる。
上記脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法においては、油脂類、アルコール及び触媒以外のその他の成分が存在してもよい。
上記アルコールの使用量としては、油脂類とアルコールとの反応における理論必要量の1〜5倍であることが好ましい。1倍未満であると、油脂類とアルコールとが充分には反応しないおそれがあり、転化率を充分には向上できないおそれがある。5倍を超えると、余剰アルコールの回収やリサイクル量が大きくなるためコストがかかるおそれがある。下限値として、より好ましくは、1.1倍であり、さらに好ましくは1.3倍であり、特に好ましくは、1.5倍である。上限値として、より好ましくは4.8倍であり、さらに好ましくは、4.5倍であり、特に好ましくは、4.0倍である。また、より好ましい範囲としては、1.1〜4.8倍であり、さらに好ましくは、1.3〜4.5倍であり、特に好ましくは、1.5〜4.0倍である。
本発明でいうアルコールの理論必要量は、油脂類のけん化価に対応するアルコールのモル数を意味しており、下記式で算出することができる。
アルコールの理論必要量(kg)=アルコールの分子量×[油脂の使用量(kg)×けん化価(g−KOH/kg−油脂)/56100]
上記ジグリセリド類を得る形態において、例えば、ポリオールとしてグリセリンを用いる場合、下記式に示すような反応が進行することとなる。
本発明の方法により、モノグリセリドとジグリセリドを主成分に持つ混合物を得て、これに遊離脂肪酸又はそのアルキルエステルを添加して、リパーゼの存在下で反応させることが好ましく、これにより、高選択率でジグリセリド類を得ることができる。
上記リパーゼを作用させる条件としては、良好なリパーゼ活性が得られる条件を適宜選択することができるが、反応温度としては、10〜100℃が好ましく、より好ましくは、20℃以上、80℃以下である。
上記脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法に用いる触媒は、上記範囲内の反応温度で用いる場合に、活性金属成分が溶出しないものであることが好ましい。このような触媒を用いることにより、反応温度が高温であっても触媒の活性を充分に維持することができ、反応を良好に行うことができる。
なお、前記4族及び5族の金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を必須成分とする触媒は、使用するアルコールの超臨界状態で用いることもできる。超臨界状態とは、物質固有の臨界温度及び臨界圧力を超えた領域をいい、アルコールとしてメタノールを使用する場合、温度が239℃以上であり、圧力が8.0MPa以上の条件を指す。該触媒を用いることにより、超臨界条件下においても効率的に脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンを製造することができる。
またバッチ式の好ましい形態としては、触媒を油脂類とアルコールとの混合系に投入する形態である。
なお、本発明は、これらの形態に限られるものではない。
図1においては、バッチ式により、油脂類としてパーム油を用い、アルコールとしてメタノールを用いて、これらを触媒の存在下に接触させる工程が示されている。このような形態では、パーム油とメタノールとを触媒とともに混合して、反応を行うことになる。この反応液を静置して脂肪酸メチルエステルとグリセリド類とを主に含むエステル相と、グリセリンとメタノールとを主に含むグリセリン相とに分離する。グリセリン相を分離して得られたエステル相にメタノールと触媒とを添加して更に反応を行い、エステル相とグリセリン相とに分離して、脂肪酸メチルエステルとグリセリンとを得ることになる。このような形態においては、反応液を相分離する前であって、ろ過等の工程により固体触媒を液相から分離除去した後に、アルコールを留去することが、脂肪酸メチルエステル類とグリセリンとの分離が向上できる点で好ましい。
このようにして得られた脂肪酸メチルエステル及び/又はグリセリンは、目的に応じて、蒸留塔の操作により、さらに精製することが好ましい。
反応プロセスを簡略化する点に関して、
(1)触媒の分離除去工程を簡略化又は不要とすることができる。
(2)遊離脂肪酸の中和除去工程、又は、酸触媒によるエステル化工程を不要とすることができる。
(3)遊離脂肪酸のけん化が起こらない。
(4)油脂類中の遊離脂肪酸のエステル化が同時に進行する。
精製プロセスを簡略化する、すなわち精製グリセリンを容易に得ることができる点に関して、
(1)触媒分離後にアルコールを留去することができ、逆反応が起こらないので、液−液二相の分配平衡が向上(相互溶解度が低下)して生成物の分離を良好に行うことができる。
(2)更に、4族及び5族の金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を必須成分とする結晶性酸化物触媒が、結晶骨格内の必須金属成分を活性種として使用するため、リーチングがなく、触媒を長寿命とすることができる点や、触媒表面に強い酸点又は塩基点を持たないのでアルコールの分解(脱水やコーキング等)が少なく、高選択的に脂肪酸アルキルエステルを得ることができる点、また、油脂中に含まれる微量金属成分や、前処理に用いる鉱酸の影響を受けにくい点が挙げられる。
実施例中の転化率、収率は、下記式により算出した。
転化率(%)=(反応終了時の油脂類の消費モル数)/(油脂類の仕込みモル数)×100(%)
メチルエステル収率(モル%)=(反応終了時のメチルエステル生成モル数)/(仕込み時の有効脂肪酸類のモル数)×100(%)
ジグリセリド収率(モル%)=(反応終了時のジグリセリド生成モル数×2)/(仕込み時の有効脂肪酸類のモル数)×100(%)
モノグリセリド収率(モル%)=(反応終了時のモノグリセリド生成モル数)/(仕込み時の有効脂肪酸類のモル数)×100(%)
グリセリンの収率(モル%)=(反応終了時の遊離グリセリンの生成モル数)/(仕込み時の有効グリセリン成分のモル数)×100(%)
なお、有効脂肪酸類とは、油脂類に含まれる脂肪酸のトリグリセリド類、ジグリセリド類、モノグリセリド類、遊離脂肪酸類のことをいう。すなわち、仕込み時の有効脂肪酸類のモル数は、下記式で算出される。
仕込み時の有効脂肪酸類のモル数(モル)=[油脂類の仕込み量(g)×油脂類のけん化価(mg−KOH/g−油脂)/56100]
また、有効グリセリン成分とは、本発明の方法によってグリセリンを生成することができる成分をいい、具体的には、油脂類中に含まれる脂肪酸のトリグリセリド類、ジグリセリド類、モノグリセリド類をいう。有効グリセリン成分の含有量は、油脂類(反応原料)をけん化することによって遊離するグリセリンの存在量をガスクロマトグラフィーによって定量することによって算出される。
メタバナジン酸アンモニウム25.74gを90℃の蒸留水700gに溶解させた溶液中に、三塩化チタン(III)20%水溶液169.66gを滴下した。蒸発乾固後、空気気流下で350℃2時間予備焼成し、引き続いて750℃5時間焼成することによって、チタンバナジウム酸化物触媒(触媒A)を得た。触媒AのX線回折測定の結果、主としてルチル型TiVO4構造の複合酸化物と五酸化バナジウムとの混合物であった。
メタバナジン酸アンモニウム14.04gを90℃の蒸留水700gに溶解させた(溶液A)。硝酸鉄(III)9水和物48.48gを蒸留水40gに溶解させた溶液を、溶液Aに滴下し、蒸発乾固した。空気気流下で350℃2時間予備焼成し、引き続いて750℃5時間焼成することによって、鉄バナジウム酸化物触媒(触媒B)を得た。触媒BのX線回折測定の結果、主として三斜晶型FeVO4構造の複合酸化物であった。
オキシシュウ酸バナジル7.49gと硝酸鉄(III)9水和物13.45gとをメタノールに均一に溶解させた溶液中に、シリカ粉末10gを混練し、撹拌しながら蒸発乾固した。空気気流下で350℃2時間予備焼成し、引き続いて750℃5時間焼成することによって、シリカ担持鉄バナジウム酸化物触媒(触媒C)を得た。
硝酸鉄のかわりに硝酸セリウム(III)6水和物53.17gを用いた以外は、触媒調製例2(触媒B)と同様にしてセリウムバナジウム酸化物触媒(触媒D)を得た。触媒DのX線回折測定により、主として二酸化セリウム(IV)とCeVO4構造の酸化物であった。
硝酸鉄の代わりに硝酸コバルト(II)6水和物35.64gを用いた以外は、触媒調製例2(触媒B)と同様にしてコバルトバナジウム酸化物触媒(触媒E)を得た。触媒EのX線回折測定の結果、主としてCo2V2O7構造の複合酸化物であった。
メタバナジン酸アンモニウム粉体21.06gを空気気流下で500℃3時間焼成することによってバナジウム酸化物触媒(触媒F)を得た。触媒FのX線回折測定の結果、主として五酸化バナジウムであった。
和光純薬製の酸化ニオブ(Nb2O5)を触媒Gとし、同社製の酸化タンタル(Ta2O5)を触媒Hとして用いた。
硝酸ジルコニル(IV)2水和物80.99gを蒸留水1000gに溶解させた(溶液B)。オキシ硫酸チタン(IV)9.21gを23gの蒸留水に溶解させ溶液Bに滴下し、さらに25%アンモニア水溶液48.07gを蒸留水100gで希釈した溶液を滴下し固体を析出させた。得られた固体を蒸留水500mLで6回洗浄した後、120℃で一晩乾燥させた(固体A)。硫酸バナジル(IV)4水和物8.46gを蒸留水25gに溶解させ、先に得られた固体Aと混練し、攪拌しながら蒸発乾固した。空気気流下で350℃2時間予備加熱し、引き続いて750℃5時間焼成することによって、チタンバナジウムジルコニウム三元系複合酸化物(触媒I)を得た。
炭酸カリウム3.47g、酸化ニオブ(Nb2O5)19.96gを乳鉢内でよく混合し、更に少量の水を加えよく混練した。120℃で4時間乾燥させた後、1100℃で3時間焼成することによって、層状のKNb3O8を得た。これを1N硝酸水溶液(1L)でイオン交換を二度繰り返した後、水洗し、500℃2時間焼成することによって、H型にイオン交換したHNb3O8(触媒J)を得た。
炭酸カリウム(13.9g)を蒸留水(30g)に溶解させた。アナターゼ型酸化チタン(16.0g)と酸化ニオブ(Nb2O5)(26.6g)とを乳鉢内でよく混合した中に、前記の炭酸カリウム溶液を入れて均質になるように混練した。120℃で一昼夜乾燥させた後、1100℃で3時間焼成することによって、K型チタノニオベート(KTiNbO5)を得た。これを6N硝酸水溶液(150mL)でイオン交換を二度繰り返した後、水洗し、500℃2時間焼成することによって、H型にイオン交換したHTiNbO5(触媒K)を得た。このようにして得られたHTiNbO5触媒の酸強度(H0)をハメット指示薬法で測定した結果、+3.3から+6.3の間であった。
窒素雰囲気下で、テトラメチルオルトシリケート96.8gとテトラエチルオルトチタネート4.8gを混合した。この溶液に10%水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液400gを滴下した。90℃で3時間還流させた後、オートクレーブに移し、175℃で48時間水熱合成させた。得られた白色スラリーを遠心分離し、水洗後、空気気流下で550℃3時間焼成することによって、MFI型チタノシリケート(TS−1)触媒(触媒L)を得た。得られたチタノシリケートのTi/Si原子比は1/22であった。こうにして得られたTS−1触媒の酸強度(H0)をハメット指示薬法で測定した結果、+6.3から+8.3の間であった。
チタンテトライソプロポキシド3.56gをイソプロパノールに均一に溶解させた溶液中に、シリカ粉末20gを混練し、攪拌しながら蒸発乾固した。空気気流下で500℃5時間焼成することによって、シリカ担持酸化チタン触媒(触媒M)を得た。このようにして得られたチタニアシリカ触媒の酸強度(H0)をハメット指示薬法で測定した結果、+6.3から+8.3の間であった。
実施例1
トリオレイン(60g)、メタノール(20g)及び触媒A(Ti−V)(2.5g)を容量200mLのオートクレーブ内に仕込んだ。窒素置換後、内部を撹拌しながら反応温度150℃で24時間反応させたところ、オレイン酸メチルの収率は79%であり、グリセリンの収率は51%であった。XRF分析で活性溶出成分であるTiとVの合計の濃度が1000ppm以下であることを確認し、更にICP分析を行ったところ、Ti及びVの溶出は認められなかった。
実施例1において、触媒としてハイドロタルサイトを用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。オレイン酸メチルの収率は77%であり、グリセリンの収率は63%であった。エステル相のXRF分析の結果、表1に記載した通りハイドロタルサイトを構成するマグネシウムのほぼ全量とアルミニウムの約半量とが溶出していた。
実施例2〜10では触媒Aのかわりに触媒B〜Jを用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。実施例11〜13では触媒Aのかわりに触媒K〜Mを用い、反応温度を150℃から200℃へ変更させた以外は実施例1と同様にして反応を行った。
実施例1において、トリオレインの代わりに、けん化価195.9、有効脂肪酸含有率96.5%、遊離脂肪酸含有率5.1%、水分量0.06%のパーム油を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。脂肪酸メチルエステルの収率は72%、グリセリンの収率は41%、遊離脂肪酸の転化率は64%であった。
実施例14において触媒Aのかわりに触媒Kを用い、パーム油、メタノール、触媒の仕込み量をそれぞれ70g、14g、7.8gに変更し、反応濃度を150℃から200℃へ変更した以外は実施例14と同様にして反応を行った。脂肪酸メチルエステルの収率は65%、グリセリンの収率は29%、遊離脂肪酸の転化率は49%であった。また、Tiの溶出は認められなかった。
実施例1において反応原料として更にオレイン酸を2.5g添加した以外は実施例1と同様にして反応を行った。オレイン酸メチルエステルの収率は77%、グリセリンの収率は45%であった。また、Ti及びVの溶出は認められなかった。
実施例16において、触媒Aのかわりに触媒Kを用い、反応温度を150℃から200℃に変更した以外は実施例16と同様にして反応を行った。オレイン酸メチルエステルの収率は78%、グリセリンの収率は71%であった。また、Tiの溶出は確認されなかった。
実施例17において触媒Kのかわりに触媒Lを用いた以外は実施例17と同様にして反応を行った。オレイン酸メチルエステルの収率は81%、グリセリンの収率は74%であった。また、Tiの溶出は確認されなかった。
触媒Aを圧縮成型した後、破砕して、300〜850μmの粒径にそろえた。
内径10mm、長さ210mmのSUS−316製直管反応管内に、成型した触媒A15mL(25g)を充填した。反応器出口には、空冷式冷却管を介してフィルターと背圧弁とを取り付けて、圧力制御できるようにした。
精密高圧定量ポンプを使用してトリオレインとメタノールとを、各々、0.192mL/min、0.040mL/min(モル比=1/5)の流量で反応器上部より下向きに流通させながら、背圧弁で反応管内の圧力を2.5MPaに設定した。
反応管部分をGCオーブンを使用して外部から加熱し、温度を150℃に設定した。温度と圧力が安定してから3.5時間後の反応器出口におけるオレイン酸メチルエステルの収率は50%であった。
実施例19において、触媒Aのかわりに触媒Kを用い、トリオレインとメタノールの流量をそれぞれ0.170mL/min、0.065mL/min(モル比=1/9)に変更し、反応温度を2.5MPaから3.7MPaに変更し、反応温度を150℃から200℃に変更した以外は実施例19と同様にして反応を行った。温度と圧力が安定してから1.5時間後のトリオレインの転化率は84%であり、オレイン酸メチルエステル収率50%、グリセリン収率15%であった。
けん化価195.9、有効脂肪酸含有率96.5%、遊離脂肪酸含有率5.1%、水分量0.06%のパーム油(28g)、グリセリン(9.6g)及び触媒L(1.25g)を容積100mLのオートクレーブ内に仕込んだ。窒素置換後、内部を攪拌しながら反応温度250℃で6時間反応させたところ、転化率75%、ジグリセリド収率20%、モノグリセリド収率55%であった。グリセリン縮合物やエーテル化物の副生はなく、Tiの溶出はなかった。
Claims (9)
- 油脂類とアルコールとを触媒の存在下に接触させる工程を含んでなる脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法であって、
該触媒は、4族及び5族の金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を必須成分とするものである
ことを特徴とする脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法。 - 前記触媒は、更に、3族、6族、8族、9族、10族、11族、12族、14族、15族、16族及びランタノイドの元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むものである
ことを特徴とする請求項1記載の脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法。 - 前記触媒は、ハメットの酸度関数が−3.0≦H0≦+12.2のチタン含有酸化物触媒である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法。 - 前記触媒は、結晶性チタン複合酸化物触媒であって、結晶格子内にチタンを含有する結晶性マイクロポーラスマテリアル触媒、及び/又は、結晶格子内にチタンを含有する結晶性メソポーラスマテリアル触媒である
ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法。 - 前記触媒は、必須金属成分が6配位で酸素原子と結合して形成される八面体骨格により結晶が構成される酸化物である
ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法。 - 前記触媒は、結晶構造が三斜晶系である酸化物である
ことを特徴とする請求項1、2又は5記載の脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法。 - 前記触媒は、結晶構造がルチル構造である
ことを特徴とする請求項1、2、3又は5記載の脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法。 - 前記触媒は、八面体骨格により結晶が構成されるものであり、該八面体の少なくとも1組が辺共有で結合している層状酸化物である
ことを特徴とする請求項1、2、3又は5記載の脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法。 - 前記層状酸化物は、下記一般式(1);
ATiXMO(2X+3) (1)
(Aは、水素原子又はアルカリ金属原子を表す。Mは、ニオブ原子又はタンタル原子を表す。Xは、7以下の自然数である。)で表される化合物である
ことを特徴とする請求項8記載の脂肪酸アルキルエステル及び/又はグリセリンの製造方法。
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