JP2009057287A - アクロレインの製造方法およびアクリル酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のアクロレインの製造方法は、グリセリンと脂肪酸および/または脂肪酸塩とを含むグリセリン混合物を脱水反応させて、アクロレインと脂肪酸および/または脂肪酸塩とを含むアクロレイン混合物を得る工程と、該アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程とを有する。本発明のアクリル酸の製造方法は、上述したアクロレインの製造方法により得たアクロレインと、分子状酸素とを反応させる。
【選択図】なし
Description
そこで、植物性油脂または動物性油脂からバイオディーゼル燃料を製造する際に、または、石鹸を製造する際に副生物として生成するグリセリンを利用することが検討されている。すなわち、副生したグリセリンを脱水してアクロレインを製造する方法が検討されている。
ここで、植物性油脂から生成したグリセリンは、植物由来であることから資源の枯渇の懸念がなく、しかも、その炭素源は大気中の二酸化炭素であることから、実質的に大気中の二酸化炭素の増加に寄与しないといった利点を有する。また、動物性油脂は、家畜が植物性油脂などの飼料を摂食することで作り出された資源で、その炭素源は大気中の二酸化炭素とみなすことができる。
このようなことから、バイオディーゼル燃料製造の際または石鹸製造の際に副生したグリセリンを、少ないエネルギー消費量で活用することが求められている。
また、本発明の課題は、グリセリンと脂肪酸および/または脂肪酸塩を含むグリセリン混合物からアクリル酸を少ないエネルギー消費量で製造できるアクリル酸の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
該アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程とを同時にまたは逐次に行うことを特徴とするアクロレインの製造方法。
[2] 前記アクロレイン混合物を得る工程の前に、
油脂とアルコールとをエステル交換反応させて、脂肪酸エステル、グリセリン、脂肪酸および/または脂肪酸塩を含む脂肪酸エステル混合物を得る工程と、
該脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して、グリセリン混合物を得る工程とを有する[1]に記載のアクロレインの製造方法。
[3] アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程に戻す工程をさらに有する[2]に記載のアクロレインの製造方法。
[4] アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程に戻す前に、前記残存物の一部または全部を酸で処理する[3]に記載のアクロレインの製造方法。
[5] 前記アクロレイン混合物を得る工程の前に、
油脂とアルカリとをケン化反応させて、脂肪酸アルカリ塩、グリセリンおよび脂肪酸を含む脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程と、
該脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去して、グリセリン混合物を得る工程とを有する[1]に記載のアクロレインの製造方法。
[6] アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程に戻す工程をさらに有する[5]に記載のアクロレインの製造方法。
[7] 前記アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程では、アクロレイン混合物を蒸留する[1]〜[6]のいずれかに記載のアクロレインの製造方法。
[8] 脂肪酸は、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上である[1]〜[7]のいずれかに記載のアクロレインの製造方法。
[9] 脂肪酸塩は、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上である脂肪酸と、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アミン化合物の群から選ばれる1種以上の化合物との塩である[1]〜[8]のいずれかに記載のアクロレインの製造方法。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載のアクロレインの製造方法により得たアクロレインと、分子状酸素とを反応させることを特徴とするアクリル酸の製造方法。
本発明のアクリル酸の製造方法によれば、グリセリンと脂肪酸および/または脂肪酸塩を含むグリセリン混合物からアクリル酸を少ないエネルギー消費量で製造できる。
<第1の実施形態例>
本発明のアクロレインの製造方法の第1の実施形態例について説明する。
本実施形態例のアクロレインの製造方法は、油脂とアルコールとをエステル交換反応させて、脂肪酸エステル混合物を得る工程(以下、第1の工程という。)と、該脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して、グリセリン混合物を得る工程(以下、第2の工程という。)と、該グリセリン混合物を脱水反応させてアクロレイン混合物を得る工程(以下、第3の工程という。)、該アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程(以下、第4の工程という。)と、該第4の工程後に残った残存物の一部または全部を第1の工程に戻す工程(以下、第5の工程という。)とを有する。
第1の工程における油脂としては、例えば、植物性油脂、動物性油脂、廃食用油脂などが挙げられる。
植物性油脂としては、例えば、アマニ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、コメ油、ナタネ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヒマシ油、米ぬか油、クルミ油、ツバキ油、ピーナッツ油などが挙げられる。
動物性油脂としては、例えば、牛脂、豚脂、羊脂、牛脚脂、鳥油、鶏油、魚油、鯨油、バターなどが挙げられる。
廃食用油脂としては、家庭、レストラン、ファーストフード店、弁当製造工場、給食工場などにおいて調理に用いた使用済みの動植物性油脂が挙げられる。
油脂とアルコールとをエステル交換反応させることにより、脂肪酸エステル、グリセリン、脂肪酸および/または脂肪酸塩を含む脂肪酸エステル混合物が得られる。ここで生成する脂肪酸エステルは、使用した油脂とアルコールに対応したものであり、いわゆるバイオディーゼル燃料と呼ばれ、ディーゼルエンジンの燃料として使用することができる。
第2の工程において、脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去する方法としては、例えば、脂肪酸エステル混合物を蒸留する方法、液液分離方法、カラムにより分離する方法などが挙げられる。
脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して得たグリセリン混合物は、グリセリンと脂肪酸および/または脂肪酸塩とを含む。
グリセリン混合物に含まれる脂肪酸は、油脂を構成するものと同様である。ただし、グリセリン混合物に含まれる脂肪酸は、0.10MPaにおける沸点が200〜400℃の範囲にある脂肪酸が好ましい。このような沸点の脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸などが挙げられる。これらの脂肪酸は、グリセリンとの沸点が近いために蒸留での分離は困難であるが、グリセリンをアクロレインに変換することでその分離が容易になる。
ここで、アルカリ金属化合物としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド等が挙げられ、アルカリ土類金属化合物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド等が挙げられる。
また、アミン化合物しては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、アニリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピロール、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、尿素等が挙げられる。
グリセリン混合物における脂肪酸の含有量は、グリセリンの含有量(質量)を1とした際に、質量比で0.001〜1であることが好ましく、0.01〜0.1であることがより好ましい。脂肪酸の含有量が、グリセリン含有量を1とした際の0.001以下であると、本発明の有用性が低下する傾向にあり、1を超えるとアクロレインの収量が小さく、効率が低下する傾向にある。
グリセリン混合物における脂肪酸塩の含有量は、グリセリンの含有量(質量)を1とした際に、質量比で0.001〜1であることが好ましく、0.01〜0.1であることがより好ましい。脂肪酸塩の含有量が、グリセリン含有量を1とした際の0.001以下であると、本発明の有用性が低下する傾向にあり、1を超えるとアクロレインの収量が小さく効率が低下する傾向にある。
また、グリセリン混合物には、グリセリン、脂肪酸および脂肪酸塩以外の成分、例えば、水、塩基、酸、脂肪酸エステル、アルコール、グリセリドなどが含まれてもよい。また、グリセリン混合物は、第3の工程以降の反応を阻害しない溶媒(例えば、水等)によって希釈されたものでもよい。
第3の工程におけるグリセリン混合物の脱水反応では、具体的には、グリセリン混合物中のグリセリンが脱水してアクロレインを生成する。
該脱水反応では、反応速度を高める点で、脱水反応用触媒を用いることが好ましい。脱水反応用触媒としては、例えば、酸性触媒、塩基性触媒を使用することができる。酸性触媒としては、例えば、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ゼオライトなどの天然物あるいは合成粘土化合物、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナなどの酸化物、複合酸化物、ヘテロポリ酸、硫酸塩、硫酸酸性塩、炭酸塩、炭酸酸性塩、硝酸塩、硝酸酸性塩、リン酸塩、リン酸酸性塩、硫酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂などが挙げられる。
また、ヘテロポリ酸、硫酸塩、硫酸酸性塩、炭酸塩、炭酸酸性塩、硝酸塩、硝酸酸性塩、リン酸塩、リン酸酸性塩、硫酸、リン酸などを担体に担持した担持型触媒を使用することもできる。担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナなどの酸化物、複合酸化物などが挙げられる。
触媒の形状については、特に限定はされない。例えば、粉体状、球状、円柱状、鞍状、ハニカム状などが挙げられる。
触媒の調製方法としては、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などが挙げられる。
また、触媒は、予めその目的に応じた気体中で焼成することも可能である。気体としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気などが挙げられる。
脱水反応の温度は、0〜600℃にすることができる。反応の効率が高いことから、100〜500℃であることが好ましく、150〜400℃であることがより好ましい。
グリセリンの脱水反応はモル数が増加する反応であるため、圧力が低い程、グリセリンの収率が高くなる。具体的には、圧力は0.01〜10.0MPaであることが好ましく、0.05〜5MPaであることがより好ましい。
ただし、液相反応の場合には、グリセリンおよび脂肪酸が液体として存在できる温度および圧力を選択し、気相反応の場合には、グリセリンおよび脂肪酸が気体として存在できる温度および圧力を選択する。
アクロレイン混合物からアクロレインを回収する方法としては、公知の分離・回収方法を適用することができるが、工業的に回収するためには、アクロレイン混合物を蒸留する方法が好ましい。
蒸留の具体例としては、単蒸留、多段蒸留、水蒸気蒸留、フラッシュ蒸留などが挙げられる。蒸留の方式は、回分式、半回分式、連続式のいずれであってもよい。
多段蒸留を適用した場合には、例えば、アクロレインより低沸点の成分を塔頂部から留出させ、中間部からアクロレインを留出させ、塔底部から脂肪酸および/または脂肪酸塩を留出させることができる。
棚段式蒸留塔の棚段の構造としては、例えば、泡鐘トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラクトレイなどが挙げられる。
充填蒸留塔の充填物としては、規則充填物や不規則充填物が挙げられる。規則充填物としては、例えば、金属板型、金網型、グリッド型などが挙げられる。不規則充填物としては、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、テラレット、ポールリング、フレキシリング、カスケードリングなどが挙げられる。
第4の工程を第3の工程と同時に行う具体的態様としては、例えば、液相反応で、蒸留塔を備えた反応器にグリセリン混合物を供給し、脱水反応を行ってアクロレインを製造すると共に、生成したアクロレインを蒸留塔の塔頂部または側塔部から回収してもよい。
第4の工程を第3の工程と同時に行う際には、第3の工程の反応における反応温度を第4の工程の蒸留における塔底温度とすることができる。例えば、塔底部の温度は、高い反応効率を維持するという観点から、100〜500℃であることが好ましく、150〜400℃であることがより好ましい。なお、蒸留時の圧力は、温度との関係で決まる。
第4の工程後に残った残存物には、脂肪酸および/または脂肪酸塩が含まれる。残存物の一部を戻す場合には、脂肪酸および脂肪酸塩を含む混合物の一部を戻してもよいし、脂肪酸のみを戻してもよいし、脂肪酸塩のみを戻してもよい。
残存物の全部または一部を第1の工程に戻した場合、または、残存物中の脂肪酸を戻した場合には、脂肪酸とアルコールとがエステル化反応して、脂肪酸エステルを生成する。これは、第1の工程で用いるエステル交換反応用触媒は、エステル化反応用触媒としても機能するからである。
残存物中の脂肪酸塩を第1の工程に戻した場合には、油脂との反応に利用される。また、脂肪酸塩を第1の工程に戻す場合には、第1の工程の前に脂肪酸塩を酸により前処理することが好ましい。
本発明のアクロレインの製造方法の第2の実施形態例について説明する。
本実施形態例のアクロレインの製造方法は、油脂とアルカリとをケン化反応させて、脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程(以下、第1’の工程という。)と、該脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去して、グリセリン混合物を得る工程(以下、第2’の工程という。)と、該グリセリン混合物を脱水反応させてアクロレイン混合物を得る工程(第3の工程)、該アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程(第4の工程)と、該第4の工程後に残った残存物の一部または全部を第1’の工程に戻す工程(以下、第5’の工程という。)とを有する。
第1’の工程における油脂としては、第1の実施形態例における油脂と同様のものを挙げることができる。
第1’の工程において、油脂と反応させるアルカリとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、強塩基性イオン交換樹脂、アミン等が挙げられる。
油脂とアルカリとの反応は、公知のいかなる方法で行うことができる。この反応によって得られた脂肪酸アルカリ塩混合物は、アルカリに対応した脂肪酸アルカリ塩、グリセリン、脂肪酸および/または脂肪酸塩を含む。
脂肪酸アルカリ塩としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウム等が挙げられる。これらの脂肪酸アルカリ塩は、石鹸として使用することが可能である。
第2’の工程において、脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去する方法としては、例えば、第1の実施形態例における脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去する方法と同様である。
脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去して得たグリセリン混合物において、グリセリン含有量の好ましい範囲、グリセリン混合物における脂肪酸の含有量、脂肪酸塩の含有量は、第1の実施形態例と同等である。
また、本実施形態例におけるグリセリン混合物にも、グリセリン、脂肪酸および脂肪酸塩以外の成分、例えば、水、塩基、酸、脂肪酸エステル、アルコール、グリセリドなどが含まれてもよい。また、グリセリン混合物は、第3の工程以降の反応を阻害しない溶媒(例えば、水等)によって希釈されたものでもよい。
第3の工程および第4の工程は、第1の実施形態例と同様である。
第4の工程後に残った残存物の全部または一部、とりわけ脂肪酸を第1’の工程に戻した場合には、アルカリとのケン化反応をさらに生じさせることができる。
また、本実施形態でも、脂肪酸塩を第1の工程に戻す場合には、第1の工程の前に脂肪酸塩を酸により前処理することが好ましい。
したがって、上記製造方法によれば、グリセリン混合物からアクロレインを少ないエネルギー消費量で製造できる。
さらに、上記実施形態例では、第5の工程あるいは第5’の工程にて、第4の工程後に残った残存物を第1の工程に戻すため、油脂基準の脂肪酸エステルの収率を高めることができる。
アルコールとしては、上記第1の工程で挙げたものと同様のものを使用できる。
脂肪酸にアルコールを反応させる際には、エステル化反応用触媒を用いることが好ましい。エステル化反応用触媒としては、酸性触媒と塩基性触媒が挙げられる。酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸、強酸性イオン交換樹脂、ケイタングステン酸、リンタングステン酸などのヘテロポリ酸、硫酸ジルコニアなどが挙げられる。塩基性触媒としては、ナトリム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、強塩基性イオン交換樹脂、アミンなどが挙げられる。
脂肪酸アルカリ塩を製造する際に使用するアルカリとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの水酸化物、炭酸塩等が挙げられる。
得られた脂肪酸アルカリ塩は、石鹸として使用することができる。
次に、本発明のアクリル酸の製造方法の一実施形態例について説明する。
本実施形態例のアクリル酸の製造方法は、上記アクロレインの製造方法により得たアクロレインと、分子状酸素とを反応させて、アクリル酸を得る方法である。
酸化触媒は、上記酸化物を担体に担持した担持型触媒であってもよい。担体としては、シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびこられの混合物または複合酸化物、炭化珪素などが挙げられる。
触媒の形状については、特に限定はされない。例えば、粉体状、球状、円柱状、鞍状、ハニカム状などが挙げられる。
触媒の調製方法としては、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などが挙げられる。
また、触媒は、予めその目的に応じた気体中で焼成することも可能である。気体としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気などが挙げられる。
酸化反応の温度は、反応の効率が高いことから、150〜400℃であることが好ましく、200〜350℃であることがより好ましい。
圧力は0.01〜10MPaであることが好ましく、0.05〜10MPaであることがより好ましい。
酸化反応の際には、不活性ガスを添加することもできる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン等)、水蒸気などが挙げられる。
酸化反応におけるガス組成は爆発範囲内にならないように調整する必要がある。そのような組成としては、例えば、アクロレイン1〜15体積%、酸素0.5〜25体積%、水蒸気0〜50体積%、窒素20〜80体積%の組成が挙げられる。
グリセリンを60質量%、パルミチン酸を5.4質量%、オレイン酸を5.1質量%、その他の成分を29.5質量%含むグリセリン混合物500gを、精留塔を具備する1000mlフラスコに仕込み、減圧下で蒸留して、グリセリン留分を得た。留出液の回収量は291gであった。この留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、グリセリン組成比は98質量%であり、パルミチン酸、オレイン酸とも確認されなかった。仕込みのグリセリンに対する留分中のグリセリンの回収率は95%であった。
上記グリセリン留出液204gと、脱水反応用触媒である硫酸水素カリウム(KHSO4)15gとを単蒸留管を備えた500mlフラスコに仕込んだ。次いで、攪拌しながら280℃に加熱し、3時間脱水反応させながら、単蒸留管により蒸留し、留出管から留出液を回収した。
これにより得られた留出液は166gであった。この留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アクロレインを73g含んでいた。グリセリン転化率は100%、グリセリン基準のアクロレイン収率は60%であった。
次いで、得られた留出液を精密蒸留して、アクロレイン69gを得た。グリセリン基準のアクロレイン収率は57%であった。
グリセリンを60質量%、パルミチン酸を5.4質量%、オレイン酸を5.1質量%、その他の成分を29.5質量%含むグリセリン混合物333gと、脱水反応用触媒として硫酸水素カリウム15gとを、単蒸留管を備えた500mlフラスコに仕込んだ。次いで、攪拌しながら280℃に加熱し、3時間脱水反応させながら、単蒸留管により蒸留し、留出管から留出液を回収した。
これにより得られた留出液は207gで、アクロレインを79g含んでいた。一方、フラスコに残った残存物から固形物を分離して、残存液126gを得た。この残存液は、パルミチン酸を13質量%、オレイン酸を12質量%含んでいた。
留出液および残存液に含まれる成分の質量からグリセリン転化率を求めたところ、100%であり、グリセリン基準のアクロレイン収率を求めたところ、65%であった。
その後、留出液を精密蒸留して、75gのアクロレインを得た。グリセリン基準のアクロレイン収率は62%であった。つまり、グリセリン混合物を蒸留しなかったもかかわらず、グリセリン混合物を蒸留して精製した比較例1と同程度の収率でアクロレインを得ることができた。
また、グリセリン混合物を蒸留せずに比較例1と同程度の収率でアクロレインを得ることができたことから、アクロレイン単位量当たり少ないエネルギー消費量でアクロレインを製造できることがわかる。
硫酸水素カリウム6gを水に溶解して硫酸水素カリウム水溶液を調製し、この硫酸水素カリウム水溶液をシリカ14gに含浸させ、乾燥させた後、窒素雰囲気下、300℃にて、3時間焼成して、硫酸水素カリウム/シリカからなる脱水反応用触媒を得た。
この脱水反応用触媒5mlを内径10mm×長さ300mmのステンレス製反応管に充填した。そして、その反応管に、実施例1で使用したグリセリン混合物に、グリセリン混合物と等しい質量の水を加えて、新たにグリセリン20質量%と、パルミチン酸1.8質量%、オレイン酸1.7質量%と、その他の成分76.5質量%を含むグリセリン混合物を得た。このグリセリン混合物を8g/時間で供給し、300℃で脱水反応させた。その際、反応管出口を冷却し、反応ガスを凝縮させて、捕集した。捕集液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、グリセリン転化率は100%、アクロレイン収率は65%であった。
その後、捕集液を精密蒸留して、精製アクロレインを得た。グリセリン基準のアクロレイン収率は62%であった。この例においても、グリセリン混合物を蒸留しなかったもかかわらず、グリセリン混合物を蒸留して精製した比較例1と同程度の収率でアクロレインを得ることができた。
パラモリブデン酸アンモニウム7.0g、メタバナジン酸アンモニウム2.1g、パラタングステン酸アンモニウム0.89g、水50mlをフラスコに仕込み、攪拌しながら90℃に加熱して溶解させた。これにより得た溶解液に、硝酸銅1.8gを水15mlに溶解させてあらかじめ調製した硝酸銅水溶液を添加し、触媒調製用溶液を得た。
この触媒調製用溶液をα−アルミナ20gに含浸させ、次いで、蒸発乾固させた。乾燥後、空気雰囲気下において400℃で3時間焼成して、α−アルミナ担持のモリブデン−バナジウム−タングステン−銅の酸化物からなる酸化反応用触媒を得た。
内径10mm×長さ300mmのステンレス製反応管に、上記酸化反応用触媒5mlを充填した。そして、その反応管に、実施例1で得たアクロレインを用いて、アクロレイン3体積%、酸素3体積%、水蒸気30体積%、窒素64体積%を含む混合ガスを、空間速度3000/時間(STP)で導入した。また、反応管を280℃に電気炉により加熱して、酸化反応させた。その際、反応管出口を冷却し、反応ガスを凝縮させて、捕集した。捕集液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アクロレイン転化率は98%、アクロレイン基準のアクリル酸収率は90%であった。
実施例1におけるアクロレイン回収後の残存液10g(パルミチン酸13質量%、オレイン酸12質量%)に、メチルアルコール50g、エステル化触媒である95質量%硫酸0.1gを、冷却管を備えた500mlフラスコに仕込み、攪拌しながら、65℃で3時間反応させた。これにより得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、パルミチン酸の転化率は95%、オレイン酸の転化率は95%であった。また、パルミチン酸基準のパルミチン酸メチルの収率は91%、オレイン酸基準のオレイン酸メチルの収率は90%であった。
実施例1におけるアクロレイン回収後の残存液10g(パルミチン酸13質量%、オレイン酸12質量%)を、100mlフラスコに仕込み、攪拌しながら、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和を行ったところ、石鹸溶液が得られた。石鹸溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、パルミチン酸、オレイン酸とも確認されず、反応が完了していることがわかった。
Claims (10)
- グリセリンと脂肪酸および/または脂肪酸塩とを含むグリセリン混合物を脱水反応させて、アクロレインと脂肪酸および/または脂肪酸塩とを含むアクロレイン混合物を得る工程と、
該アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程とを同時にまたは逐次に行うことを特徴とするアクロレインの製造方法。 - 前記アクロレイン混合物を得る工程の前に、
油脂とアルコールとをエステル交換反応させて、脂肪酸エステル、グリセリン、脂肪酸および/または脂肪酸塩を含む脂肪酸エステル混合物を得る工程と、
該脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して、グリセリン混合物を得る工程とを有する請求項1に記載のアクロレインの製造方法。 - アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程に戻す工程をさらに有する請求項2に記載のアクロレインの製造方法。
- アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程に戻す前に、前記残存物の一部または全部を酸で処理する請求項3に記載のアクロレインの製造方法。
- 前記アクロレイン混合物を得る工程の前に、
油脂とアルカリとをケン化反応させて、脂肪酸アルカリ塩、グリセリンおよび脂肪酸を含む脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程と、
該脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去して、グリセリン混合物を得る工程とを有する請求項1に記載のアクロレインの製造方法。 - アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程に戻す工程をさらに有する請求項5に記載のアクロレインの製造方法。
- 前記アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程では、アクロレイン混合物を蒸留する請求項1〜6のいずれかに記載のアクロレインの製造方法。
- 脂肪酸は、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上である請求項1〜7のいずれかに記載のアクロレインの製造方法。
- 脂肪酸塩は、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上である脂肪酸と、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アミン化合物の群から選ばれる1種以上の化合物との塩である請求項1〜8のいずれかに記載のアクロレインの製造方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のアクロレインの製造方法により得たアクロレインと、分子状酸素とを反応させることを特徴とするアクリル酸の製造方法。
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