JP2005180622A - 流体軸受装置および流体軸受装置の潤滑油充填方法 - Google Patents

流体軸受装置および流体軸受装置の潤滑油充填方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高速回転時でも潤滑油が外部に漏れることを防止でき、しかも、潤滑油充填工程において潤滑油の充填動作を行った後にスリーブの開口部側上面やその近傍に付着した潤滑油を拭き取らなくても済み、撥油機能も低下しない流体軸受装置および流体軸受装置の潤滑油充填方法を提供する。
【解決手段】 スリーブ1における開口部側上面1aに、潤滑油5をはじく撥油剤13が塗布される撥油剤塗布面20を形成し、前記撥油剤塗布面20を、真空注油時に、撥油剤13が塗布された撥油剤塗布面20上に載せられた潤滑油5がスリーブ1とシャフト4との間の隙間に吸い込み落ちるように傾斜させた。この構成を用いて潤滑油5を充填することにより、撥油剤塗布面20上に載せられた潤滑油5が、撥油剤塗布面20の撥油剤13上を流れ落ちてスリーブ1とシャフト4との間の隙間に流れ落ち、この結果、潤滑油5の拭き取り作業を行わなくて済む。
【選択図】 図4

Description

本発明は、ハードディスク装置用のスピンドルモータなどに適した流体軸受装置および流体軸受装置の潤滑油充填方法に関する。
近年のハードディスク装置の高容量化に伴い、ハードディスク装置のスピンドルモータなどに用いられている軸受装置として、従来用いられた玉軸受装置に代わって、玉軸受よりも回転精度が優れ、しかも静音性にも優れる流体軸受装置が多く用いられつつある。
この種の従来の流体軸受装置は、図8、図9に概略的に示すように、中央部に挿通孔を有するスリーブ51に、磁気ディスクが固定されるハブ52が取り付けられているとともにスピンドルモータ部53により回転駆動されるシャフト54を、所定隙間を介して挿入させ、シャフト54とスリーブ51との間の隙間に、潤滑油55を充填させている。また、シャフト54の外周面とスリーブ51の内周面との互いに対向する面における少なくとも一方にヘリングボーン形状などの動圧発生溝を形成してラジアル軸受部56を構成しており、このラジアル軸受部56の箇所にも潤滑油55が充填されている。そして、スピンドルモータ部53によりシャフト54が回転駆動されると、ラジアル軸受部56の動圧発生溝の給油作用により潤滑油55に圧力を発生し、スリーブ51でシャフト54が一定量の隙間を有した姿勢で回転自在に支持されるようになっている。
また、スリーブ51における開口部57に臨む内周部の箇所には、ラジアル軸受部56の部分よりも大きい隙間を有するようにシール面部58が設けられている。このシール面部58は、例えばその断面形状が、開口部57側ほどシャフト54との隙間が広がるような傾斜面で構成され、回転駆動時においても潤滑油55がこのシール面部58とシャフト54との間の隙間に溜められる。このシール面部58が設けられている箇所には比較的多くの量の潤滑油55を溜めることができるので、潤滑油55の一部が蒸発するなどしてその量が減少した場合でも、シール面部58に溜められた潤滑油55が毛細管現象によりラジアル軸受部56側に流入し、ラジアル軸受部56では常に潤滑油55が満たされた状態に保持されて、軸受性能が良好に維持されるように図られている。
さらに、高速回転時でも潤滑油55が外部に漏れないように、スリーブ51における開口部側上面51aに、潤滑油55をはじく撥油剤60を塗布している。この構成により、高速回転時に潤滑油55がスリーブ51の開口部側上面51aをつたわって外部に漏れ出ようとした場合でも、この箇所の撥油剤60によりはじかれて潤滑油55が外部に漏れ出ることを防止している。なお、スリーブ51における開口部側上面51aは水平な平面形状とされている。
また、特許文献1には、同様に潤滑油55の外部への漏れを考慮した、別途構成の流体軸受装置として、図10に示すように、スリーブ51の開口部側上面51aにおけるシール面部58に続く箇所に傾斜面51bを形成し、この傾斜面51bとシール面部58とを接続する角部51cと、傾斜面51bと前記開口部側上面51aとを接続する角部51dとのそれぞれの箇所に撥油剤60を塗布した構成が開示されている。この構成によれば、高速回転時に潤滑油55がシール面部58から傾斜面51bや開口部側上面51aをつたわって外部に漏れ出ようとした場合でも、スリーブ51の角部51cや角部51dの撥油剤60により潤滑油55がはじかれて外部に漏れ出ることを防止できる。
なお、図10における61は潤滑油55を吸収する吸収布、62は潤滑油55の飛び出しを防止するストッパ板で、万一、潤滑油55が角部51cや角部51dよりもさらに外部に飛び出ようとした場合でも、このような潤滑油55を吸収布61で吸収したり、ストッパ板62で外部の飛び出しを防止したりするように図られている。これらの吸収布61やストッパ板62は、スリーブ51とシャフト54との間に潤滑油55が充填された後に、スリーブ51の開口部側上面51aに取り付けられる。
特開平10−73126号公報
しかしながら、図8、図9に示す従来構成の流体軸受装置や、図10に示す従来構成の流体軸受装置では、何れも、流体軸受装置の使用時に撥油剤60により潤滑油55を外部に漏れ出ないようにすることしか考慮されておらず、流体軸受装置の潤滑油充填工程における点については配慮されていない。
つまり、流体軸受装置の潤滑油充填工程においては、スリーブ51とシャフト54との間の極めて狭い隙間に潤滑油55を良好に充填する必要があり、一般には、この工程は真空注油法を用いて行われるが、従来の流体軸受装置の潤滑油充填方法では、充填工程の最後に潤滑油55の拭取り作業が必要となり、手間や時間がかかるという課題があった。
具体的に、図8、図9に示す流体軸受装置の場合を例にとって、真空注油法を用いてスリーブ51とシャフト54との間に潤滑油55を充填する方法について説明すると、まず、シャフト54を組み付けていないスリーブ51の開口部側上面51aに撥油剤60を塗布し、次に、スリーブ51にシャフト54等を組付け、この組付け体を、真空に近い雰囲気の空間に載置して、スリーブ51とシャフト54との間の隙間を真空に近い状態とする。この後、引き続いて、真空に近い雰囲気の空間において、図11に示すように、潤滑油55を貯留した容器70中に、前記組付け体を上下逆にして、スリーブ51の開口部57の箇所を潤滑油55中につけ、この後、空間に大気を導入する。この充填方法によれば、大気を導入した時点で、大気圧により、真空に近い状態であったスリーブ51とシャフト54との間の隙間に潤滑油55が良好に導入される利点がある。しかし、多量の潤滑油55を必要とする欠点があるとともに、スリーブ51の外周やシャフト54の外周などに多量の潤滑油55が付着するため、これらの箇所に付着した不要な潤滑油55を拭き取らなければならず、多くの手間や時間がかかる欠点がある。
また、潤滑油55を比較的少量で済ますことができる充填方法として、図12に示すように、真空に近い雰囲気の空間において、シャフト54などが組付けられたスリーブ51の開口部側上面51aに、潤滑油55を滴下させるなどして供給し、この後、前記空間に大気を導入することが考えられる。この充填方法によれば、スリーブ51とシャフト54との間の隙間に潤滑油55が良好に導入されるだけでなく、ほぼ必要量に等しい量の潤滑油55だけで済む利点がある。
しかしながら、この充填方法によっても、スリーブ51とシャフト54との間に潤滑油55を充填した際に、潤滑油55が、図13に示すように、シール面部58の近傍の開口部側上面51a上に残る可能性が高く、このような箇所の潤滑油55は外部に飛散するおそれがあるので、この潤滑油55を拭き取る作業が必要となり、その分だけ手間や時間がかかる欠点がある。
また、図10に示す流体軸受装置の場合には、潤滑油55を充填した際に、潤滑油55が、図14に示すように、スリーブ51の傾斜面51bに付着したままとなる場合が多くなり、この場合も、この箇所の潤滑油55は外部に飛散するおそれがあるので、この潤滑油55を拭き取る作業が必要となり、その分だけ手間や時間がかかる欠点がある。
また、何れの場合も、撥油剤60が塗布されている箇所やその近傍の潤滑油55を拭き取るので、この拭取り作業により撥油剤60の塗布層が薄くなって、撥油機能が低下するおそれもある。
本発明は上記課題を解決するもので、高速回転時でも潤滑油が外部に漏れることを防止でき、しかも、潤滑油充填工程において潤滑油の充填動作を行った後にスリーブの開口部側上面やその近傍に付着した潤滑油を拭き取らなくても済み、撥油機能も低下しない流体軸受装置および流体軸受装置の潤滑油充填方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の流体軸受装置は、スリーブと、このスリーブに所定隙間を介して挿入されたシャフトと、このスリーブにシャフトを回転自在に支持させるラジアル軸受部と、前記ラジアル軸受部の箇所を含めてスリーブとシャフトとの間の隙間に充填された潤滑油とを備えた流体軸受装置であって、スリーブにおける開口部側上面に、潤滑油をはじく撥油剤が塗布される撥油剤塗布面を形成し、前記撥油剤塗布面を、真空注油時に、撥油剤が塗布された撥油剤塗布面上に載せられた潤滑油がスリーブとシャフトとの間の隙間に吸い込み落ちるように傾斜させたものであり、この構成によれば、潤滑油をスリーブとシャフトとの間の隙間に充填する際に、撥油剤塗布面上に載せられた潤滑油が、撥油剤塗布面の撥油剤上を流れ落ちてスリーブとシャフトとの間の隙間に流れ落ち、この結果、潤滑油の拭き取り作業を行わなくて済む。
なお、スリーブの内周面における開口部の近傍箇所に、シャフト外周面に対して前記ラジアル軸受部の部分よりも大きい隙間を有し、シャフト外周面との隙間部分に潤滑油が充填されるシール面部を形成してもよい。
また、スリーブの開口部側上面に、シール面部の開口部分を覆うカバーを取り付けることにより、潤滑油が外部に飛散することを一層確実に防止できる。
また、本発明の流体軸受装置の潤滑油充填方法は、スリーブにおける前記撥油剤塗布面に撥油剤を塗布する撥油剤塗布工程と、真空に近い雰囲気中で、シャフトを挿入したスリーブにおける前記撥油剤塗布面上に潤滑油を供給して載せる潤滑油供給工程と、大気圧に戻して、撥油剤が塗布された撥油剤塗布面上の潤滑油をスリーブとシャフトとの間の隙間に落ちるように吸い込ませる潤滑油注入工程とを有することを特徴とする。
この方法によれば、潤滑油をスリーブとシャフトとの間の隙間に充填する際に、撥油剤塗布面上に載せられた潤滑油が、撥油剤塗布面の撥油剤上を流れ落ちてスリーブとシャフトとの間の隙間に流れ落ち、この結果、潤滑油の拭き取り作業を行わなくて済む。
本発明によれば、流体軸受装置として、スリーブにおける開口部側上面に、潤滑油をはじく撥油剤が塗布される撥油剤塗布面を形成し、前記撥油剤塗布面を、真空注油時に、撥油剤が塗布された撥油剤塗布面上に載せられた潤滑油がスリーブとシャフトとの間の隙間に吸い込み落ちるように傾斜させることにより、潤滑油が外部に漏れ出ることを防止できる。また、この流体軸受装置を用いた潤滑油充填方法として、スリーブにおける前記撥油剤塗布面に撥油剤を塗布する撥油剤塗布工程と、真空に近い雰囲気中で、シャフトを挿入したスリーブにおける前記撥油剤塗布面上に潤滑油を供給して載せる潤滑油供給工程と、大気圧に戻して、撥油剤が塗布された撥油剤塗布面上の潤滑油をスリーブとシャフトとの間の隙間に落ちるように吸い込ませる潤滑油注入工程とを有せしめることにより、潤滑油の拭き取り作業を行わなくて済み、流体軸受装置の組付製造工程での省力化を図ることができ、さらに、拭取り作業によって撥油剤の塗布層が薄くなることがないので、撥油機能が低下することがない。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
なお、図1〜図7に示す本発明の実施の形態においては流体軸受装置が、ハードディスク装置のスピンドルモータとして用いられている場合を述べるが、これに限るものではない。
図1および図2に概略的に示すように、この流体軸受装置は、中央部に挿通孔を有するスリーブ1に、磁気ディスクが固定されるハブ2が取り付けられているとともにスピンドルモータ部3により回転駆動されるシャフト4を、所定隙間を介して挿入させ、シャフト4とスリーブ1との間の隙間に、潤滑油5を充填させている。また、シャフト4の外周面とスリーブ1の内周面との互いに対向する面における少なくとも一方にヘリングボーン形状などの動圧発生溝を形成してラジアル軸受部6を構成しており、このラジアル軸受部6の箇所を含めて潤滑油5が充填されている。なお、この実施の形態においては、シャフト4とスリーブ1との間における奥側箇所と開口部7寄り箇所との2箇所にそれぞれラジアル軸受部6が設けられている。
また、シャフト4の端部にはシャフト4よりも太径のスラストフランジ9が取り付けられ、スラストフランジ9の円形平面部に対向するようにスラストプレート10を配設させてスリーブ1に固定しており、スラストフランジ9とスラストプレート10との間の隙間にかけても潤滑油5を充填させている。また、スラストフランジ9とスラストプレート10との対向面における少なくとも一方の面に動圧発生溝を形成してスラスト軸受部12を構成し、さらに、シャフト4の端部に隣接するスラストフランジ9の面とこの面に対向するスリーブ1の面とにおける少なくとも一方にも動圧発生溝を形成してスラスト軸受部12を構成している。
そして、スピンドルモータ部3によりシャフト4が回転駆動されると、ラジアル軸受部6およびスラスト軸受部12の動圧発生溝の給油作用により潤滑油5に圧力を発生し、スリーブ1でシャフト4が一定量の隙間を有した姿勢で回転自在に支持されるよう構成されている。
また、スリーブ1における開口部7に臨む内周面には、ラジアル軸受部6の部分よりも大きい隙間を有するようにシール面部8が外周側に切欠かれて形成され、回転駆動時においても潤滑油5がこのシール面部8とシャフト4の外周面との間の隙間に溜められる。なお、この実施の形態においては、図2に示すように、シール面部8が、ラジアル軸受部6寄りに形成された第1傾斜面8aと、この第1傾斜面8aよりもラジアル軸受部6から離れた側に形成された第2傾斜面8bとで構成されている。そして、このシール面部8における第1傾斜面8aのシャフト軸Xに対するラジアル軸受部6側からの傾斜角度αを、第2傾斜面8bのシャフト軸Xに対するラジアル軸受部6側からの傾斜角度β(なお、図2においては、第2傾斜面8bとシャフト軸Xとの交差部分が図外となるので、同等の傾斜角となる、シャフト軸Xに平行な軸線に対する傾斜角度βを示している)よりも大きく形成している。そして、これにより、シール面部8において十分な量の潤滑油5を保持できて、潤滑油5の一部が蒸発するなどしてその量が減少した場合でも、シール面部8に溜められた潤滑油5が毛細管現象によりラジアル軸受部6側に流入し、ラジアル軸受部6では常に潤滑油5が満たされた状態に保持されて、軸受性能が良好に維持されるようになっている。なお、図2における5aは潤滑油5の液面で、潤滑油5は、第1傾斜面8aを越えて第2傾斜面8bに接するような量が充填されている。
これらの構成に加えて、本発明の流体軸受装置においては、スリーブ1における開口部7が設けられている開口部側上面1aに、潤滑油5をはじく撥油剤13が塗布される撥油剤塗布面20を形成している。そして、この撥油剤塗布面20を、真空注油時に、撥油剤13が塗布された撥油剤塗布面20上に載せられた潤滑油13が、スリーブ1のシール面8とシャフト4の外周面との間の隙間に吸い込み落ちるように、スリーブ1の半径方向中心側(すなわち、スリーブ1の内周側)ほど下方に傾斜させて形成しており、この撥油剤塗布面20に撥油剤13を塗布させている。なお、この実施の形態においては、この撥油剤塗布面20のシャフト軸Xに対するラジアル軸受部6側からの傾斜角度γが、シール面部8の第2傾斜面8bの傾斜角度βよりも大きい角度とされ、90度以下の傾斜角度で、撥油剤塗布面20の撥油剤13上の潤滑油5が、シール面部8とシャフト4との間に吸い込まれる最大角度に近い角度とされている。
なお、この実施の形態においては、シャフト4における外部に露出する箇所に断面略V字状の溝部4aを形成し、この断面略V字状の溝部4aにも、潤滑油5をはじく撥油剤13を塗布している。
この流体軸受装置の潤滑油5の充填方法は、以下のようにして行われる。
まず、通常の大気中の雰囲気において、シャフト4を組み付けていないスリーブ1の撥油剤塗布面20に撥油剤13を刷毛などにより塗布する(撥油剤塗布工程)。なお、同様に、通常の大気中の雰囲気において、単体のシャフト4の溝部4aにも、予め、潤滑油5をはじく撥油剤13を塗布する。
次に、スリーブ1に、スラストフランジ9を取り付けたシャフト4や等を組付けるとともに、スリーブ1にスラストプレート10を溶着して組付け体21を形成し、この組付け体21を、図3に示すように、真空に近い雰囲気が維持された真空室22内に所定時間以上載置して、スリーブ1とシャフト4との間の隙間も真空に近い状態とする。なお、真空室22は、真空バルブ23を有する真空用連通路24を介して図外の真空ポンプに接続されており、また、この真空室22には、内部を大気圧に戻すことができるように、大気バルブ25を有する大気連通路26も接続されている。また、真空室22には、複数の組付け体21をテーブル27上に、スリーブ1の開口部7および開口部側上面1aが上方になる姿勢で配置できるとともに、各組付け体21に対して、潤滑油5を供給するディスペンサなどの注油用治具28が移動自在に配置されている。
この後、引き続いて、真空室22内において、図4(a)〜(c)に示すように、スリーブ1における前記撥油剤塗布面1a上、詳しくは、スリーブ1における前記撥油剤塗布面1aからシャフト4の外周面にかけて、ディスペンサなどの注油用治具28などを用いるなどして、潤滑油5を供給して載せる(潤滑油供給工程)。
そして最後に、大気バルブ25を開放して真空室22内を大気圧に戻すと、図5に示すように、スリーブ1のシール面部8とシャフト4の外周面との間の隙間の潤滑油5が毛細管現象によりラジアル軸受部6側に吸引されて流れ込む。そして、撥油剤13が塗布された撥油剤塗布面20がスリーブ1の内周側に傾斜されているので、前記潤滑油5に続いて、撥油剤塗布面20上の潤滑油5もスリーブ1とシャフト4との間のラジアル軸受部6側の隙間に落ちるように吸い込まれ、この結果、潤滑油5がラジアル軸受部6およびその下方のスラスト軸受部12などに良好に注入される(潤滑油注入工程)。なお、撥油剤塗布面20が傾斜されていることにより、真空室22内を大気圧に戻した際に、撥油剤塗布面20上の潤滑油5がスリーブ1とシャフト4との間の隙間への吸引力により落ちるように吸い込まれるが、この際、潤滑油5はその重力によっても、スリーブ1とシャフト4との間の隙間へ良好に流れ落ちることとなる。
このような構成および方法を採用することで、潤滑油5は、傾斜されている撥油剤塗布面20の撥油剤13上からラジアル軸受部6側の隙間に落ちるように吸い込まれる。つまり、潤滑油5が撥油剤塗布面20の撥油剤13上に残らないので、潤滑油5の拭き取り作業を行わなくて済み、流体軸受装置の潤滑油充填工程での省力化を図ることができる。なお、この実施の形態においては、シャフト4においても、シャフト4の溝部4aやその情報箇所でも潤滑油5が残らないので、この箇所での、潤滑油5の拭き取り作業を行わなくて済む。また、潤滑油5の拭き取り作業を行わないので、拭取り作業により撥油剤13の塗布層が薄くなることがなく、撥油機能が低下するおそれもない。
また、潤滑油5が充填されて、この流体軸受装置がハードディスク装置用のスピンドルモータに組込まれた後には、高速回転時などに、スリーブ1のシール面部8側から撥油剤塗布面20をつたって潤滑油5が漏れ出ようとした場合でも、撥油剤塗布面20の撥油剤13により潤滑油5がはじかれて、回転駆動時でも潤滑油5が外部に漏れ出ることが防止され、良好な信頼性を維持できる。
なお、上記実施の形態においては、シール面部8が、第1傾斜面8aと第2傾斜面8bとに2分割されている場合を述べたが、これに限るものではなく、単一の傾斜面や円弧面など、どのような形状のシール面部8であっても適用可能である。
また、図6に示すように、ラジアル軸受部6と第1傾斜面8aとの接続部8dや、第1傾斜面8aと第2傾斜面8bとの接続部8eなどをなだらかな断面形状に形成することも可能であり、この構成によれば、スリーブ1を製造する切削工程などで、接続部8d,8eにおいてバリなどを生じることを防止できる利点がある。しかしながら、第2傾斜面8bと撥油剤塗布面20との接続部8gや、撥油剤塗布面20とスリーブ開口部側上面1aとの接続部8fでは、なだらかにせずに、角部のままとすることが望ましく、この構成により、撥油剤13を塗布する範囲が明確になり、塗布作業における塗布範囲を確認し易い長所がある。
また、図7に示すように、スリーブ1の開口部側上面1aに、シール面部8の開口部7部分を覆うカバー14を取り付けてもよく、この構成によれば、潤滑油5が外部に飛散することをさらに確実に防止でき、これによれば信頼性が向上する。さらに、この場合に、図7において仮想線で示すように、シール面部8や撥油剤塗布面20に臨むカバー14の下面にも撥油剤13を塗布してもよく、これによれば、潤滑油5がカバー14の下面に付着することも防止でき、一層信頼性が向上する。
なお、上記実施の形態においては、何れも、スリーブ1の一方が開口されているとともに他方が閉じられて、シャフト4の一端側だけが突出された構成の流体軸受装置である場合を述べたが、これに限るものではなく、スリーブ1の両側からシャフト4の両端部が突出する構成の流体軸受装置にも適用可能であり、この場合には、潤滑油5の真空注入時には、片側の開口部を閉じて、他方の開口部から潤滑油5を注入することにより、同様な方法で充填することができる。さらに、スリーブ1の開口部7に臨む箇所にシール面部8が設けられていない場合でも、撥油剤塗布面20を形成することは可能である。
本発明は、ハードディスク装置用スピンドルモータなどに加えて、ビデオテープレコーダやその他のモータの流体軸受装置に適しているが、その他の回転部を支持する軸受として用いることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る流体軸受装置の断面正面図 同実施の形態に係る流体軸受装置の部分断面正面図 本発明の流体軸受装置の潤滑油充填方法に用いる装置の構成を概略的に示す図 (a)〜(c)はそれぞれ同流体軸受装置の潤滑油充填方法の潤滑油注入工程を説明するための図であり、(a)は真空室内で潤滑油を供給している状態を示す全体図、(b)は組付け体の全体断面正面図、(c)は組付け体の部分断面正面図 本発明の同流体軸受装置の潤滑油充填方法において潤滑油がスリーブとシャフトとの間の隙間に吸い込み落ちる様子を示す部分断面正面図 本発明の第2の実施の形態に係る流体軸受装置の部分断面正面図 本発明の第3の実施の形態に係る流体軸受装置の部分断面正面図 従来の流体軸受装置の断面正面図 同従来の流体軸受装置の部分断面正面図 従来の他の流体軸受装置の部分断面正面図 従来の流体軸受装置の潤滑油充填方法を概略的に示す図 その他の従来の流体軸受装置の潤滑油充填方法を概略的に示す部分断面正面図 従来の流体軸受装置の潤滑油充填方法による問題点を示す部分断面正面図 その他の流体軸受装置の潤滑油充填方法による問題点を示す部分断面正面図
符号の説明
1 スリーブ
1a 開口部側上面
2 ハブ
3 スピンドルモータ部
4 シャフト
4a 溝部
5 潤滑油
5a 液面
6 ラジアル軸受部
7 開口部
8 シール面部
8a 第1傾斜面
8b 第2傾斜面
9 スラストフランジ
10 スラストプレート
12 スラスト軸受部
13 撥油剤
14 カバー
20 撥油剤塗布面
21 組付け体
22 真空室
23 真空バルブ
24 真空用連通路
25 大気バルブ
26 大気連通路
27 テーブル
28 注油用治具
X シャフト軸

Claims (4)

  1. スリーブと、
    このスリーブに所定隙間を介して挿入されたシャフトと、
    このスリーブにシャフトを回転自在に支持させるラジアル軸受部と、
    前記ラジアル軸受部の箇所を含めてスリーブとシャフトとの間の隙間に充填された潤滑油と
    を備えた流体軸受装置であって、
    スリーブにおける開口部側上面に、潤滑油をはじく撥油剤が塗布される撥油剤塗布面を形成し、
    前記撥油剤塗布面を、真空注油時に、撥油剤が塗布された撥油剤塗布面上に載せられた潤滑油がスリーブとシャフトとの間の隙間に吸い込み落ちるように傾斜させた流体軸受装置。
  2. スリーブの内周面における開口部の近傍箇所に、シャフト外周面に対して前記ラジアル軸受部の部分よりも大きい隙間を有し、シャフト外周面との隙間部分に潤滑油が充填されるシール面部を形成した請求項1記載の流体軸受装置。
  3. スリーブの開口部側上面に、前記シール面部の開口部分を覆うカバーを取り付けた請求項2に記載の流体軸受装置。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の流体軸受装置に潤滑油を充填する流体軸受装置の潤滑油充填方法であって、
    スリーブにおける前記撥油剤塗布面に撥油剤を塗布する撥油剤塗布工程と、
    真空に近い雰囲気中で、シャフトを挿入したスリーブにおける前記撥油剤塗布面上に潤滑油を供給して載せる潤滑油供給工程と、
    大気圧に戻して、撥油剤が塗布された撥油剤塗布面上の潤滑油をスリーブとシャフトとの間の隙間に落ちるように吸い込ませる潤滑油注入工程と
    を有する流体軸受装置の潤滑油充填方法。
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