JP2000304052A - 流体軸受装置およびその製造方法 - Google Patents

流体軸受装置およびその製造方法

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JP2000304052A
JP2000304052A JP11113349A JP11334999A JP2000304052A JP 2000304052 A JP2000304052 A JP 2000304052A JP 11113349 A JP11113349 A JP 11113349A JP 11334999 A JP11334999 A JP 11334999A JP 2000304052 A JP2000304052 A JP 2000304052A
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lubricating fluid
shaft
capillary seal
centrifugal force
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Masato Gomyo
五明  正人
Takehiko Yazawa
岳彦 矢沢
Tokio Tago
登喜雄 多胡
Kazuji Miura
和司 三浦
Ryuhei Matsuda
隆平 松田
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Seagate Technology International
Seagate Technology LLC
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Sankyo Seiki Manufacturing Co Ltd
Seagate Technology International
Seagate Technology LLC
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 潤滑流体量を確実に安定させ、潤滑流体を保
持することができる流体軸受装置およびその製造方法を
得る。 【解決手段】 軸3と、軸3に対して相対回転する軸受
10と、軸受クリアランス内の潤滑流体15を保持する
毛細管シール部13、14とを有し、潤滑流体15の動
圧によって軸3と軸受10とを相対的に回転可能に支承
する動圧軸受装置において、軸受クリアランス内の余分
な潤滑流体15は遠心力によって飛散され、毛細管シー
ル部13、14によって潤滑流体15が一定量に保持さ
れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑流体に動圧を
発生させ、その動圧により固定部材に対して回転部材を
支持するように構成された流体軸受装置およびその製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、モータ等の各種装置において、特
に高速回転に対応するように、流体の動圧力を利用した
流体軸受装置が種々提案されている。この流体軸受装置
においては、固定部材側の軸受面と回転部材側の軸受面
とが対向配置されていると共に、これら両対向軸受面の
うちの少なくとも一方側に動圧発生用の溝が形成されて
おり、回転部材と固定部材との両対向面間、すなわち軸
受クリアランス内に充填された所定のオイル等の潤滑流
体が、回転部材の回転時に動圧発生用の溝のポンピング
作用により昇圧され、潤滑流体の活性により発生する動
圧力によって回転部材の回転支持が行われるようになっ
ている。
【0003】上記軸受クリアランス内に充填されている
潤滑流体は、傾斜テーパ面を有する毛細管シール部の毛
細管力によって軸受クリアランス内に保持されていると
共に、軸受クリアランスから外方に飛散するのを防止さ
れている。上記潤滑流体が蒸発して枯渇すると十分な軸
受性能を得ることができず、また信頼性等も悪くなるた
め、上記毛細管シール部は、蒸発量を見込んだ所定量の
潤滑流体を保持している。
【0004】しかし、蒸発量を見込んだ潤滑流体の量が
多いと流体漏れが発生して周囲を汚染してしまうことに
なる。特に、ハードディスクドライブ装置(HDD)等
では清浄度が要求されるため、致命的な欠陥となってし
まう。そこで、従来では、余剰潤滑流体を布などの毛細
管力を利用して吸い取ったり、エアバキュームなどで吸
引することによって、潤滑流体量を安定させ、潤滑流体
を保持している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方
法では、微細な量を調整することは難しく、潤滑流体量
を確実に安定させ、潤滑流体を保持することは困難であ
る。また、余剰潤滑流体を取り除くための装置等が必要
となり、コストが高くなってしまう。
【0006】本発明は以上のような従来技術の問題点を
解消するためになされたものであり、潤滑流体量を確実
に安定させ、潤滑流体を保持することができる流体軸受
装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
軸と、上記軸に対して相対回転する軸受と、軸受クリア
ランス内の潤滑流体を保持する毛細管シール部とを有
し、潤滑流体の動圧によって上記軸と上記軸受とを相対
的に回転可能に支承する流体軸受装置において、上記軸
受クリアランス内の余分な潤滑流体は遠心力によって飛
散され、上記毛細管シール部によって潤滑流体が一定量
に保持されていることを特徴とする。
【0008】請求項2記載の発明は、軸と、上記軸に対
して相対回転する軸受と、軸受クリアランス内の潤滑流
体を保持する毛細管シール部とを有し、潤滑流体の動圧
によって上記軸と上記軸受とを相対的に回転可能に支承
する流体軸受装置の製造方法であって、上記軸受クリア
ランス内の余分な潤滑流体を遠心力によって飛散させ、
上記毛細管シール部によって潤滑流体を一定量に保持す
ることを特徴とする。
【0009】請求項3記載の発明は、請求項2記載の発
明において、上記遠心力を発生させる回転数は、流体軸
受装置の最大使用回転数よりも大きいことを特徴とす
る。
【0010】請求項4記載の発明は、請求項2または3
記載の発明において、上記潤滑流体を遠心力によって飛
散して一定量に安定させる際の温度は、流体軸受装置の
使用温度よりも高いことを特徴とする。
【0011】請求項5記載の発明は、請求項2、3、ま
たは4記載の発明において、飛散された潤滑流体を吸収
する吸収手段を流体軸受装置の周囲に設けることを特徴
とする。
【0012】請求項6記載の発明は、請求項2、3、
4、または5記載の発明において、上記遠心力は、上記
軸と上記軸受とを一体に回転させることにより発生する
ことを特徴とする。
【0013】請求項7記載の発明は、請求項2、3、
4、または5記載の発明において、上記遠心力は、上記
軸受を回転させることにより発生することを特徴とす
る。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
にかかる流体軸受装置の実施の形態について説明する。
図1には、本発明にかかる流体動圧軸受装置が適用され
た軸回転型のモータの右半部正面断面を示している。図
1に示すように、このモータは、アルミ材等からなるフ
レーム1側に組み付けられた固定部材としてのステータ
組2と、このステータ組2に対し、回転軸3を中心にし
て図示の上側から組み付けられた回転部材としてのロー
タ組4とから主に構成されている。
【0015】上記ロータ組4は、上記回転軸3の上端部
に一体に取り付けらた段付中空円筒状のハブ5を有して
いる。このハブ5は、ディスクを支持するためのもので
ある。ハブ5の外筒部5aの下部内周面には、後述する
ステータコア6に対向するように駆動マグネット7が取
り付けられている。
【0016】一方、上記ステータ組2は、ステータコア
6を有している。このステータコア6は、上記フレーム
1に一体的に形成された中空円筒状の支持ホルダ8の外
周に取り付けられていて、このステータコア6の各突極
部に巻線9がそれぞれ巻回されている。このステータコ
ア6は、上記駆動マグネット7と対向している。
【0017】上記支持ホルダ8の内周には、回転軸3に
対して相対回転することができる円筒状の軸受10が取
り付けられている。この軸受10の内周面には、動圧発
生用の軸受面としてのラジアル動圧軸受部が形成されて
いて、このラジアル動圧軸受部を介することにより、回
転軸3および回転軸3に一体に取り付けられたハブ5が
軸受10に対して相対的に回転することができるように
なっている。
【0018】上記軸受10の下端には、環状の突起部1
0aが形成されていて、この突起部10aの内側には、
二つのスラスト動圧軸受部11a、11bを構成してい
るリング状のスラストプレート11が回転軸3の下端部
に固着されている。図示のように、このスラストプレー
ト11は、軸受10の突起部10aの内側に位置する底
面と、フレーム1の中心孔1aに嵌合されたカウンタプ
レート12の上面とによって僅かな空間をおいて挟み込
まれ、これによって、それぞれの対向面の間に二つのス
ラスト動圧軸受部11a、11bがそれぞれ構成されて
いる。
【0019】また、図1に示すように、軸受10の上端
部および下端部の内周面には、傾斜テーパ面を有する毛
細管シール部13、14がそれぞれ形成されている。図
示のように、上側に位置する毛細管シール部13の傾斜
テーパ面は、毛細管シール部14の傾斜テーパ面よりも
軸方向に大きく形成されている。図2には、毛細管シー
ル部13の周辺部を拡大して示している。
【0020】上記毛細管シール部13から毛細管シール
部14までの間の軸受クリアランス内には連続して動圧
軸受用の潤滑流体15が充填されていて、上記毛細管シ
ール部13、14によって潤滑流体15が漏出しないよ
うに保持されている。すなわち、上記ラジアル動圧軸受
部の内周面は、回転軸3の外周面に対して上記潤滑流体
15を介して非接触の摺動部を構成しており、ラジアル
動圧軸受部の内周面と回転軸3の外周面とによってラジ
アル方向の動圧面が構成されている。
【0021】図7(a)に示すように、上記軸受クリア
ランス内には、蒸発量を見込んだ量よりも余分に潤滑流
体15が充填されていて、後述する遠心力によって余分
な潤滑流体15が飛散されて、上記毛細管シール部1
3、14によって蒸発量を見込んだ一定量の潤滑流体1
5が安定に保持されている。上記遠心力は、回転軸3と
軸受10とを一緒に回転させるか、あるいは、回転軸3
を固定した状態で軸受10を回転させることにより発生
させる。
【0022】回転軸3を固定して軸受10を回転させる
ことにより上記遠心力を発生させる場合は、例えば、図
8に示すように、フレーム1を回転体16にネジ17等
で一体に取り付け、軸受10を回転体16と共に一体に
回転させる。一方、回転軸3と軸受10とを一体に回転
させることにより遠心力を発生させる場合は、例えば、
図8に示すように、フレーム1を回転体16にネジ17
等で一体に取り付けると共に、回転軸3と回転体16、
あるいは回転軸3と軸受10とを図示しない適宜の手段
で一体に連結して、回転軸3と軸受10とを回転体16
と共に一体に回転させる。
【0023】このようにして発生させた遠心力によっ
て、毛細管シール部13から余分な潤滑流体15が向心
力と反対方向、すなわち、図7(a)のα方向に示すよ
うに、回転の中心から遠ざかる方向に飛散される。前述
のように、毛細管シール部14の傾斜テーパ面よりも毛
細管シール部13の傾斜テーパ面の方が軸方向に大きく
形成されているため、余分な潤滑流体15は、毛細管シ
ール部13の傾斜テーパ面から上記方向に飛散される。
このように、遠心力によって余分な潤滑流体15を飛散
させることによって、図7(b)に示すように、上記軸
受クリアランス内には蒸発量を見込んだ一定量の潤滑流
体15が毛細管シール部13、14によって安定に保持
される。
【0024】上記遠心力を発生させる回転数は、流体軸
受装置の最大使用回転数よりも大きくする。これによっ
て、流体軸受装置が最大使用回転数で使用されても、潤
滑流体15が飛散することがなく、軸受クリアランス内
には蒸発量を見込んだ一定量の潤滑流体15が毛細管シ
ール部13、14によって安定に保持される。また、上
記遠心力を発生させる回転数を調節することにより、潤
滑流体15の量をきめ細かく設定することができる。
【0025】また、潤滑流体15を遠心力によって飛散
して一定量に安定させる際の温度は、流体軸受装置の使
用温度よりも高くする。例えば、ヒータ等で使用温度よ
りも高い温度に設定する。このようにすることによっ
て、軸受クリアランス内の潤滑流体15の粘度を下げ、
余分な潤滑流体を効果的に飛散させることができ、通常
の使用状態における流体軸受装置の信頼度を高めると共
に、軸受性能を向上させることができる。
【0026】また、飛散された余分な潤滑流体15を吸
収する吸収手段を設けることが好ましい。図8には、吸
収手段の一例として、孔18aが形成された中空の筺体
18を示している。図8に示すように、この筺体18の
記孔18aには、軸受10の上部がわずかな隙間を介し
て挿入されている。従って、上記遠心力によって飛散さ
れた余分な潤滑流体15は筺体18内に収容され、この
飛散された余分な潤滑流体15によって装置およびその
周囲が汚染されることはない。なお、吸収手段は、使用
後には破棄して新しいものと取り替えることもできる
し、清掃して繰り返し使用することもできる。
【0027】以上のように、上記実施の形態によれば、
遠心力によって余分な潤滑流体15を飛散させ、上記毛
細管シール部13、14によって潤滑流体15が一定量
に保持されているため、軸受クリアランス内の潤滑流体
15を安定に、かつ確実に保持することができる。
【0028】次に、別の実施の形態について説明する。
図5に示すように、このモータは、軸固定型のモータで
あり、図示しないフレーム側に組み付けられた固定部材
としてのステータ組と、このステータ組に対し、固定軸
20を中心にして図示の上側から組み付けられた回転部
材としてのロータ組4とから主に構成されている。
【0029】上記ロータ組4は、上記固定軸20に取り
付けられると共に、固定軸20に対して相対回転するこ
とができる円筒状の軸受10の外周面に一体に取り付け
らた段付中空円筒状のハブ5を有している。このハブ5
は、ディスクを支持するためのものである。ハブ5の外
筒部5aの下部内周面には、図示しないステータ側の所
定の位置に設けられたステータコアに対向するように駆
動マグネット7が取り付けられている。
【0030】上記軸受10の内周面には、動圧発生用の
軸受面としてのラジアル動圧軸受部が形成されていて、
このラジアル動圧軸受部を介することにより、軸受10
の外周面にに一体に取り付けられたハブ5が固定軸20
に対して相対的に回転することができるようになってい
る。
【0031】上記軸受10の上端には、環状の突起部1
0aが形成され、さらにこの突起部10aの外周に環状
の突起部10bが形成されている。上記突起部10aの
内側には、二つのスラスト動圧軸受部11a、11bを
構成しているリング状のスラストプレート11が固定軸
20の上端部に固着されている。図示のように、このス
ラストプレート11は、軸受10の突起部10aの内側
に位置する上面と、上記突起部10bの内側に設けられ
たカウンタプレート12の底面とによって僅かな空間を
おいて挟み込まれ、これによって、それぞれの対向面の
間に二つのスラスト動圧軸受部11a、11bがそれぞ
れ構成されている。
【0032】また、図5に示すように、軸受10の上端
部および下端部の内周面には、傾斜テーパ面を有する毛
細管シール部21、22がそれぞれ形成されている。図
示のように、下側に位置する毛細管シール部22の傾斜
テーパ面は、毛細管シール部21の傾斜テーパ面よりも
軸方向に大きく形成されている。従って、後述するよう
に、毛細管シール部22から余分な潤滑流体15が向心
力と反対方向、すなわち、回転の中心から遠ざかる方向
に飛散される。また、毛細管シール部22の上記潤滑流
体の飛散方向側に位置する軸受10の底面10cは、飛
散された余分な潤滑流体15を吸収する吸収手段として
表面処理されている。
【0033】上記毛細管シール部21から毛細管シール
部22までの間の軸受クリアランス内には連続して動圧
軸受用の潤滑流体15が充填されていて、上記毛細管シ
ール部21、22によって潤滑流体15が保持されてい
る。すなわち、上記ラジアル動圧軸受部の内周面は、固
定軸20の外周面に対して上記潤滑流体15を介して非
接触の摺動部を構成しており、ラジアル動圧軸受部の内
周面と固定軸20の外周面とによってラジアル方向の動
圧面が構成されている。
【0034】上記軸受クリアランス内には、蒸発量を見
込んだ量よりも余分に潤滑流体15が充填されていて、
後述する遠心力によって余分な潤滑流体15が飛散され
て、上記毛細管シール部21、22によって蒸発量を見
込んだ一定量の潤滑流体15が安定に保持されている。
上記遠心力は、固定軸20と軸受10とを一体に回転さ
せることにより発生させるか、あるいは、固定軸20を
固定した状態で軸受10を回転させて発生させる。この
場合も、遠心力を発生させる際の回転数は、流体軸受装
置の最大使用回転数よりも大きいことが望ましく、ま
た、そのときの温度は流体軸受装置の使用温度よりも高
いことが望ましい。
【0035】このようにして発生させた遠心力によっ
て、毛細管シール部22から余分な潤滑流体15が向心
力と反対方向、すなわち、回転の中心から遠ざかる方向
に飛散される。前述のように、毛細管シール部21の傾
斜テーパ面よりも毛細管シール部22の傾斜テーパ面の
方が軸方向に大きく形成されているため、余分な潤滑流
体15は、下側に位置する毛細管シール部22の傾斜テ
ーパ面から上記方向に、かつ軸受10の底面10cに沿
って飛散されるが、前述のように軸受10の底面10c
は、飛散された余分な潤滑流体15を吸収するように表
面処理されているため、飛散された余分な潤滑流体15
は軸受10の底面10cによって吸収され、装置および
その周囲が汚染されることはない。なお、吸収手段は軸
受の性能に支障のないように設けられている。
【0036】以上のように、遠心力によって余分な潤滑
流体15を飛散させることによって、上記軸受クリアラ
ンス内には蒸発量を見込んだ一定量の潤滑流体15が毛
細管シール部21、22によって安定に保持される。
【0037】図5に示すものは、吸収手段として、軸受
10の底面10cを飛散された余分な潤滑流体15を吸
収するように表面処理しているものであるが、図6に示
すように、上記潤滑流体の飛散方向側に位置する軸受1
0の底面10cに、飛散された余分な潤滑流体15を吸
収する吸収材23を設けてもよい。
【0038】いままで述べてきたものは、軸と軸受とを
相対回転させた際に軸受クリアランス内の潤滑流体が軸
方向に移動しない形式の流体軸受装置であったが、流体
軸受装置には、軸と軸受とを相対回転させた際に軸受ク
リアランス内の潤滑流体が軸方向に移動する形式のもの
もある。この後者の形式の流体軸受装置である場合は、
軸を固定し、軸受を回転させて遠心力を発生させること
により余分な潤滑流体を飛散させる。これは、軸と軸受
とを一体に回転させても潤滑流体が移動せず、本発明の
余分な潤滑流体を飛散させるという作用を奏することが
難しいからである。以下、軸受クリアランス内の潤滑流
体が軸方向に移動する流体軸受装置の実施の形態につい
て説明する。
【0039】図3には、軸受クリアランス内の潤滑流体
が軸方向に移動する流体軸受装置が適用された軸固定型
のモータの右半部正面断面を示している。図3に示すよ
うに、このモータは、アルミ材等からなるフレーム1側
に組み付けられた固定部材としてのステータ組2と、こ
のステータ組2に対し、固定軸30を中心にして図示の
上側から組み付けられた回転部材としてのロータ組4と
から主に構成されている。
【0040】上記ロータ組4は、上記固定軸20に取り
付けられると共に、固定軸30に対して相対回転するこ
とができる円筒状の軸受10の外周面に一体に取り付け
らた段付中空円筒状のハブ5を有している。このハブ5
は、ディスクを支持するためのものである。ハブ5の外
筒部5aの下部内周面には、後述するステータコア6に
対向するように駆動マグネット7が取り付けられてい
る。
【0041】一方、上記ステータ組2は、ステータコア
6を有している。このステータコア6は、上記フレーム
1に一体的に形成された中空円筒状の支持ホルダ8の外
周に取り付けられていて、このステータコア6の各突極
部に巻線9がそれぞれ巻回されている。このステータコ
ア6は、上記駆動マグネット7と対向している。
【0042】上記軸受10の内周面には、動圧発生用の
軸受面としてのラジアル動圧軸受部31、32が形成さ
れている。図示のように、上記ラジアル動圧軸受部3
1、32は、軸受10の内周面の略軸方向中心位置に形
成された環状凹部33によって軸方向に区分されてい
る。このラジアル動圧軸受部31、32を介することに
より、軸受10の外周面に一体に取り付けられたハブ5
が固定軸30に対して回転することができるようになっ
ている。
【0043】上記軸受10の上端には、環状の突起部1
0aが形成され、さらにこの突起部10aの外周に環状
の突起部10bが形成されている。上記突起部10aの
内側には、二つのスラスト動圧軸受部11a、11bを
構成しているリング状のスラストプレート11が固定軸
30の上端部に固着されている。図示のように、このス
ラストプレート11は、軸受10の突起部10aの内側
に位置する上面と、上記突起部10bの内側に設けられ
たカウンタプレート12の底面とによって僅かな空間を
おいて挟み込まれ、これによって、それぞれの対向面の
間に二つのスラスト動圧軸受部11a、11bがそれぞ
れ構成されている。
【0044】また、図3に示すように、軸受10の内周
面には、ラジアル動圧軸受部31、32のそれぞれの上
下位置に傾斜テーパ面を有する毛細管シール部34、3
5、36、37がそれぞれ形成されている。図示のよう
に、下側に位置する毛細管シール部35、37の傾斜テ
ーパ面は、毛細管シール部34、36の傾斜テーパ面よ
りも軸方向に大きく形成されていて、さらに毛細管シー
ル部35の傾斜テーパ面よりも毛細管シール部37の傾
斜テーパ面の方が軸方向に大きく形成されている。従っ
て、後述するように、最も下側に位置する毛細管シール
部37から余分な潤滑流体15が向心力と反対方向、す
なわち、回転の中心から遠ざかる方向に飛散される。ま
た、毛細管シール部37の上記潤滑流体の飛散方向側に
位置する軸受10の底面10cには、飛散された余分な
潤滑流体15を吸収する吸収手段として吸収材38が設
けられている。
【0045】軸受クリアランス内には、動圧軸受用の潤
滑流体15が充填されるようになっている。軸受10が
固定軸30に対して相対回転することにより、固定軸3
0に形成され、かつ一端が上記環状凹部33に連通され
た空気抜き通路40から軸受クリアランス内の空気が外
方に放出され、これによって、潤滑流体15は、上記毛
細管シール部34から毛細管シール部35までの間、お
よび上記毛細管シール部36から毛細管シール部37ま
での間に充填されるようになっている。すなわち、上記
ラジアル動圧軸受部31、32の内周面は、固定軸30
の外周面に対して上記潤滑流体15を介して非接触の摺
動部を構成しており、ラジアル動圧軸受部31、32の
内周面と固定軸30の外周面とによってラジアル方向の
動圧面が構成されている。
【0046】上記軸受クリアランス内には、蒸発量を見
込んだ量よりも余分に潤滑流体15が充填されると共
に、遠心力によって余分な潤滑流体15が飛散されて、
上記毛細管シール部34、35、36、37によって蒸
発量を見込んだ一定量の潤滑流体15が安定に保持され
ている。上記遠心力は、固定軸30を固定した状態で軸
受10を回転させることにより発生させる。この場合
も、遠心力を発生させる際の回転数は、流体軸受装置の
最大使用回転数よりも大きいことが望ましく、また、そ
のときの温度は流体軸受装置の使用温度よりも高いこと
が望ましい。
【0047】このようにして発生させた遠心力によっ
て、毛細管シール部37から余分な潤滑流体15が向心
力と反対方向、すなわち、回転の中心から遠ざかる方向
に飛散される。前述のように、毛細管シール部34、3
5、36の傾斜テーパ面よりも毛細管シール部37の傾
斜テーパ面の方が軸方向に大きく形成されているため、
余分な潤滑流体15は、最も下側に位置する毛細管シー
ル部37の傾斜テーパ面から上記方向に、かつ軸受10
の底面10cに沿って飛散される。前述のように軸受1
0の底面10cは、飛散された余分な潤滑流体15を吸
収する吸収材38が設けられているため、飛散された余
分な潤滑流体15は吸収材38によって吸収され、装置
およびその周囲が汚染されることはない。なお、吸収手
段は軸受の性能に支障のないように設けられている。
【0048】以上のように、遠心力によって余分な潤滑
流体15を飛散させることによって、上記軸受クリアラ
ンス内には蒸発量を見込んだ一定量の潤滑流体15が毛
細管シール部21、22によって安定に保持される。
【0049】次に、別の実施の形態について説明する。
図9には、軸受クリアランス内の潤滑流体が軸方向に移
動する流体軸受装置が適用された軸回転型のモータの右
半部正面断面を示している。図9に示すように、このモ
ータは、アルミ材等からなるフレーム1側に組み付けら
れた固定部材としてのステータ組2と、このステータ組
2に対し、回転軸50を中心にして組み付けられた回転
部材としてのロータ組(図示せず)とから主に構成され
ている。上記ロータ組は、ディスクを支持するためのハ
ブを有し、このハブの内周面の所定の位置には、後述す
るステータコア6に対向するように駆動マグネットが取
り付けられている。
【0050】一方、上記ステータ組2は、ステータコア
6を有している。このステータコア6は、上記フレーム
1に一体的に形成された中空円筒状の支持ホルダ8の外
周に取り付けられていて、このステータコア6の各突極
部に巻線9がそれぞれ巻回されている。このステータコ
ア6は、上記ハブの内周面の所定の位置に取り付けられ
た駆動マグネットと対向している。
【0051】上記支持ホルダ8の内周には、回転軸50
に対して相対回転することができる円筒状の軸受10が
取り付けられている。この軸受10の内周面には、動圧
発生用の軸受面としてのラジアル動圧軸受部31、32
が形成されている。図示のように、上記ラジアル動圧軸
受部31、32は、後述する傾斜テーパ面を有する毛細
管シール部52、53によって軸方向に区分されてい
る。このラジアル動圧軸受部31、32を介することに
より、軸受10の外周面に一体に取り付けられたハブ
(図示せず)が回転軸50に対して相対的に回転するこ
とができるようになっている。
【0052】上記軸受10の下端には、環状の突起部1
0aが形成されていて、この突起部10aの内側には、
二つのスラスト動圧軸受部11a、11bを構成してい
るリング状のスラストプレート11が回転軸50の下端
部に固着されている。図示のように、このスラストプレ
ート11は、軸受10の突起部10aの内側に位置する
底面と、フレーム1の中心孔1aに嵌合されたカウンタ
プレート12の上面とによって僅かな空間をおいて挟み
込まれ、これによって、それぞれの対向面の間に二つの
スラスト動圧軸受部11a、11bがそれぞれ構成され
ている。
【0053】また、図9に示すように、軸受10の内周
面には、ラジアル動圧軸受部31、32のそれぞれの上
下位置に傾斜テーパ面を有する毛細管シール部51、5
2、53、54がそれぞれ形成されている。図示のよう
に、最も上側に位置する毛細管シール部51の傾斜テー
パ面は、最も下側に位置する毛細管シール部54の傾斜
テーパ面よりも軸方向に大きく形成されている。従っ
て、後述するように、最も上側に位置する毛細管シール
部51から余分な潤滑流体15が向心力と反対方向、す
なわち、回転の中心から遠ざかる方向に飛散される。
【0054】軸受クリアランス内には、動圧軸受用の潤
滑流体15が充填されるようになっている。軸受10が
回転軸50に対して相対回転することにより、軸受10
に形成され、かつ一端が上記毛細管シール部52、53
に連通された空気抜き通路60から軸受クリアランス内
の空気が外方に放出され、これによって、潤滑流体15
は、上記毛細管シール部51から毛細管シール部52ま
での間、および上記毛細管シール部53から毛細管シー
ル部54までの間に充填されるようになっている。すな
わち、上記ラジアル動圧軸受部31、32の内周面は、
回転軸50の外周面に対して上記潤滑流体15を介して
非接触の摺動部を構成しており、ラジアル動圧軸受部3
1、32の内周面と回転軸50の外周面とによってラジ
アル方向の動圧面が構成されている。
【0055】上記軸受クリアランス内には、蒸発量を見
込んだ量よりも余分に潤滑流体15が充填されていて、
遠心力によって余分な潤滑流体15が飛散されて、上記
毛細管シール部51、52、53、54によって蒸発量
を見込んだ一定量の潤滑流体15が安定に保持されてい
る。上記遠心力は、回転軸50を固定した状態で軸受1
0を回転させることにより発生させる。
【0056】このようにして発生させた遠心力によっ
て、図4に示すように毛細管シール部51内の潤滑流体
15が上昇し、毛細管シール部51から余分な潤滑流体
15が向心力と反対方向、すなわち、回転の中心から遠
ざかる方向に飛散される。前述のように、最も下側に位
置する毛細管シール部54の傾斜テーパ面よりも最も上
側に位置する毛細管シール部51の傾斜テーパ面の方が
軸方向に大きく形成されているため、余分な潤滑流体1
5は、毛細管シール部51の傾斜テーパ面から上記方向
に飛散される。なお、飛散された余分な潤滑流体15
は、図8に示すように、中空の筺体18の孔18aに軸
受10の上部をわずかな隙間を介して挿入することによ
り、筺体18内に収容することができ、もって、飛散さ
れた余分な潤滑流体15によって装置およびその周囲が
汚染されることはない。この場合も、遠心力を発生させ
る際の回転数は、流体軸受装置の最大使用回転数よりも
大きいことが望ましく、また、そのときの温度は流体軸
受装置の使用温度よりも高いことが望ましい。
【0057】以上のように、遠心力によって余分な潤滑
流体15を飛散させることによって、上記軸受クリアラ
ンス内には蒸発量を見込んだ一定量の潤滑流体15が毛
細管シール部21、22によって安定に保持される。
【0058】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、軸と、上
記軸に対して相対回転する軸受と、軸受クリアランス内
の潤滑流体を保持する毛細管シール部とを有し、潤滑流
体の動圧によって上記軸と上記軸受とを相対的に回転可
能に支承する流体軸受装置において、上記軸受クリアラ
ンス内の余分な潤滑流体は遠心力によって飛散され、上
記毛細管シール部によって潤滑流体が一定量に保持され
ているため、軸受クリアランス内の潤滑流体を安定に、
かつ確実に保持することができる。
【0059】請求項2記載の発明によれば、軸と、上記
軸に対して相対回転する軸受と、軸受クリアランス内の
潤滑流体を保持する毛細管シール部とを有し、潤滑流体
の動圧によって上記軸と上記軸受とを相対的に回転可能
に支承する流体軸受装置の製造方法であって、上記軸受
クリアランス内の余分な潤滑流体を遠心力によって飛散
させ、上記毛細管シール部によって潤滑流体を一定量に
保持するようにしたため、軸受クリアランス内の潤滑流
体を安定に、かつ確実に保持することができる。
【0060】請求項3記載の発明によれば、請求項2記
載の発明において、上記遠心力を発生させる回転数は、
流体軸受装置の最大使用回転数よりも大きいため、流体
軸受装置が最大回転数で使用されても、潤滑流体が飛散
することがなく、軸受クリアランス内の潤滑流体を安定
に保持することができる。
【0061】請求項4記載の発明によれば、請求項2ま
たは3記載の発明において、上記潤滑流体を遠心力によ
って飛散して一定量に安定させる際の温度は、流体軸受
装置の使用温度よりも高いため、軸受クリアランス内の
潤滑流体の粘度を下げて余分な潤滑流体を効果的に飛散
させることができ、通常の使用状態における流体軸受装
置の信頼度を高めると共に、軸受性能を向上させること
ができる。
【0062】請求項5記載の発明によれば、請求項2、
3または4記載の発明において、飛散された潤滑流体を
吸収する吸収手段を流体軸受装置の周囲に設けたため、
飛散された余分な潤滑流体によって装置およびその周囲
が汚染されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す右半部正面断面図で
ある。
【図2】上記実施の形態に適用された毛細管シール部1
3の周辺部を示す部分拡大断面図である。
【図3】別の実施の形態を示す右半部正面断面図であ
る。
【図4】本発明に適用可能な潤滑流体を示す作用図であ
る。
【図5】さらに別の実施の形態を示す右半部正面断面図
である。
【図6】さらに別の実施の形態を示す右半部正面断面図
である。
【図7】本発明に適用可能な潤滑流体を示す作用図であ
る。
【図8】本発明に適用可能な吸収手段を示す正面断面図
である。
【図9】さらに別の実施の形態を示す右半部正面断面図
である。
【符号の説明】
1 フレーム 2 ステータ組 3、50 回転軸 4 ロータ組 8 支持ホルダ 10 軸受 11 スラストプレート 11a、11b スラスト動圧軸受部 12 カウンタプレート 13、14 毛細管シール部 15 潤滑流体 16 回転体 18 筺体 20、30 固定軸 21、22 毛細管シール部 23、38 吸収材 31、32 ラジアル動圧軸受部 34、35、36、37 毛細管シール部 40、60 空気抜き通路 51、52、53、54 毛細管シール部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 五明 正人 長野県諏訪郡下諏訪町5329番地 株式会社 三協精機製作所内 (72)発明者 矢沢 岳彦 長野県諏訪郡下諏訪町5329番地 株式会社 三協精機製作所内 (72)発明者 多胡 登喜雄 長野県諏訪郡下諏訪町5329番地 株式会社 三協精機製作所内 (72)発明者 三浦 和司 長野県諏訪郡下諏訪町5329番地 株式会社 三協精機製作所内 (72)発明者 松田 隆平 長野県諏訪郡下諏訪町5329番地 株式会社 三協精機製作所内 Fターム(参考) 3J011 AA07 BA02 BA09 CA02 JA02 KA02 KA03 MA03 MA23 5D109 BB01 BB17 BB21 BB22 5H607 AA05 BB01 BB14 BB17 BB25 CC01 DD01 DD02 DD03 DD05 DD16 FF01 GG01 GG02 GG12 GG28

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸と、 上記軸に対して相対回転する軸受と、 軸受クリアランス内の潤滑流体を保持する毛細管シール
    部とを有し、 潤滑流体の動圧によって上記軸と上記軸受とを相対的に
    回転可能に支承する流体軸受装置において、 上記軸受クリアランス内の余分な潤滑流体は遠心力によ
    って飛散され、上記毛細管シール部によって潤滑流体が
    一定量に保持されていることを特徴とする流体軸受装
    置。
  2. 【請求項2】 軸と、 上記軸に対して相対回転する軸受と、 軸受クリアランス内の潤滑流体を保持する毛細管シール
    部とを有し、 潤滑流体の動圧によって上記軸と上記軸受とを相対的に
    回転可能に支承する流体軸受装置の製造方法であって、 上記軸受クリアランス内の余分な潤滑流体を遠心力によ
    って飛散させ、上記毛細管シール部によって潤滑流体を
    一定量に保持することを特徴とする流体軸受装置の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 上記遠心力を発生させる回転数は、流体
    軸受装置の最大使用回転数よりも大きいことを特徴とす
    る請求項2記載の流体軸受装置の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記潤滑流体を遠心力によって飛散して
    一定量に安定させる際の温度は、流体軸受装置の使用温
    度よりも高いことを特徴とする請求項2または3記載の
    流体軸受装置の製造方法。
  5. 【請求項5】 飛散された潤滑流体を吸収する吸収手段
    を流体軸受装置の周囲に設けることを特徴とする請求項
    2、3、または4記載の流体軸受装置の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記遠心力は、上記軸と上記軸受とを一
    体に回転させることにより発生することを特徴とする請
    求項2、3、4、または5記載の流体軸受装置の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 上記遠心力は、上記軸受を回転させるこ
    とにより発生することを特徴とする請求項2、3、4、
    または5記載の流体軸受装置の製造方法。
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