JP2004245282A - 液体動圧軸受製造方法 - Google Patents

液体動圧軸受製造方法 Download PDF

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Kaoru Uenosono
薫 上之園
Itsuo Murata
五雄 村田
Takayuki Ishino
孝幸 石野
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Abstract

【課題】減圧環境を利用してオイル中に空気を内包してしまうことを回避しつつ組立て作業を容易且つ円滑に行い得、減圧下の組立てにおいてもオイルの飛び出しや乱れが抑えられる。
【解決手段】減圧前に軸受穴18b内に所要量のオイルLを配し、減圧した後、軸受穴18b内にシャフト10bを挿入し、オイルLを、軸受隙間及びテーパシール部28に連続するよう移動させると共に、スリーブ18にオイルを含浸させる。次いで復圧する。シャフト10b及び軸側円周状平坦面10a1と軸受構造体12との間の一連の軸受隙間が連続したオイルLで満たされ、更にそのオイルに連続して、テーパシール部28に空気との界面を有する状態でオイルLが保持されたフルフィル構造の液体動圧軸受を得る。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体動圧軸受の製造方法、特に、例えばハードディスクなどの情報記録機器を駆動するためのスピンドルモータに用いるのに適した液体動圧軸受の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体動圧軸受の組立てにおいては、製品使用中に温度上昇等により潤滑油が漏出すること及びNRRO(non−repeatable run−out)を惹起して液体動圧軸受の性能低下の原因となること等を回避するために、潤滑油中に気泡を含まないようにすることが肝要である。
【0003】
減圧環境を利用して潤滑油中に気泡を含まないようにする従来の動圧軸受装置の組立については、特許文献1に、スリーブの円筒部内面に設けられた動圧溝と、該スリーブの該円筒部内に挿入される回転軸の外周面とで共働きするラジアル軸受と、スラスト軸受面と該軸の端面とで共働きするスラスト軸受とを備えた動圧軸受装置において、該スラスト軸受面に潤滑油を注入後、該潤滑油の沸点以上であって70kPa以下の気圧下で、該軸を該スリーブの該円筒部に挿入することを特徴とする動圧軸受装置が開示されている。この発明によれば、スリーブ底部(スラスト軸受部)に潤滑油を注入後、潤滑油の沸点以上の気圧下であって70kPa以下で軸を挿入している。このため、100kPaで挿入する場合より、潤滑油中(スリーブと軸の隙間に満たされている潤滑油)に残る空気量を少なくできる。
【0004】
また、同様に減圧環境を利用する潤滑流体動圧軸受装置付ブラシレスモータの組立方法として、特許文献2に、軸と該軸を回転可能に嵌合して支持するスリーブとを有し、軸又はスリーブ内面の少なくとも一方にヘリングボーン状の動圧発生用の溝が設けられ、軸とスリーブとの隙間には、潤滑流体が充填される潤滑流体動圧軸受装置付ブラシレスモータの組立方法において、スリーブ内部に充填される潤滑流体の注入工程と、マグネットを有するロータの一体となった軸を、潤滑流体が注入されたスリーブ内部へ挿入する組立工程を、共に減圧環境下において行うことを特徴とする潤滑流体動圧軸受装置付ブラシレスモータの組立方法が開示されている。この方法により組み立てられたブラシレスモータは、潤滑流体が実質的に気泡を含まないので、潤滑流体の漏れ出しの恐れがなく、また、気泡を含まないことから、潤滑流体の漏れ出しにともなう量の減少によるモータ性能の低下、耐久性の低下を防ぐことができ、さらに、注入工程と組立工程が一つの装置によって行われることにより、装置スペースを小さくでき、また、モータ製作タクト(時間)が減少できる。
【0005】
しかしながら、特にハードディスクなどの情報記録機器を駆動するためのスピンドルモータに用いる液体動圧軸受においては、組立ての際に潤滑油が飛散して外部を汚染し、ハードディスク等の使用時に記録媒体を汚損することを確実に防ぐ必要がある。
【0006】
前述のような、減圧環境下での液体動圧軸受の組み立ては、作業精度や円滑性等において通常環境での組立てに及ばない点があることは否めず、オイル中に気泡を含むことを防ぎつつ作業の十分な精度及び円滑性を実現し、且つオイルの飛散をより確実に防ぐ製造方法が要望されるところである。
【0007】
なお、ここに述べた内容がブラシレスモータやスピンドルモータ以外の用途の液体動圧軸受の製造についても同様に該当するものであることは言うまでもない。
【特許文献1】特開2002−130283号公報
【特許文献2】特開2001−107967号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、オイル中に空気を内包してしまうこと、並びに、それにより液体動圧軸受使用中に温度上昇等により潤滑油が漏出すること及びNRROを惹起して液体動圧軸受の性能低下の原因となること等を、減圧環境を利用して回避しつつ、組立て作業を容易且つ円滑に行い得、而も、減圧下の組立てにおいてもオイルの飛び出しや乱れが抑えられる液体動圧軸受製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1) 上記目的を達成する本発明の液体動圧軸受製造方法は、
中央部に突出するシャフトと、該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と、該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体、及び、前記シャフトが挿入される軸受穴と、該シャフトの先端面と軸線方向に対向する閉塞端面と、前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備えており、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在する液体動圧軸受の製造方法であって、
減圧前に又は減圧下で、前記軸受構造体における閉塞端面を内底面として軸受穴内に所要量のオイルを配すること、
軸受穴内に閉塞端面を内底面として所要量のオイルが配された状態で、減圧下、その軸受穴内に軸側構造体のシャフトを挿入し、前記オイルを、少なくとも前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間の軸受隙間並びに前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させること、及び、
復圧することを含む。
【0010】
軸受穴内にシャフトを挿入する前に軸受穴内に所要量のオイルを配するので、オイルを配する作業が容易である。その後、減圧下、その軸受穴内にシャフトを挿入し、オイルを、少なくともシャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間の軸受隙間並びに前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の間に連続するよう介在させるので、オイル中に空気を内包してしまうことを効果的に避けることができる。なお、本明細書中における軸受穴内へのシャフトの挿入は、軸受穴側とシャフト側の何れを移動させるものでもよく、両者を共に移動させるものでもよい。
【0011】
減圧下での作業は、真空槽内等において行わざるを得ないので、作業の精度や円滑性等において通常環境での組立て作業に及ばない点がある。例えば、一般に人が直接部品を扱えない状況であるため、軸受穴とシャフトとの嵌合速度を微妙にコントロールすることは難しくなることがある。ところが本発明の方法では、軸受穴の底部に配されたオイルの界面は、減圧下でのシャフトの挿入により、シャフトと軸受穴の径方向間隙を軸受穴の底部から軸受穴の開口部へと、軸線方向におけるシャフトの基部側に移動した後、軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間を周方向に拡がりつつ径方向外方へ移動し、更に、軸側円周状平坦面の外周側から円筒状周壁面と軸受側外周面との径方向間隙を軸線方向におけるシャフト先端側へ移動する。このように、オイルの界面の移動方向が複数回にわたりそれぞれほぼ90度ずつ変化し、而もその間に、オイル界面は軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間を周方向に拡がりつつ径方向外方へ移動するので、オイル界面の急激な移動が防がれ、前記のように減圧下において作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でも、オイルの飛び出しや乱れが抑えられる。
【0012】
得られる液体動圧軸受は、シャフト及び軸側円周状平坦面と軸受構造体との間の一連の軸受隙間が連続したオイルで満たされ、円筒状周壁面の少なくとも基部と軸受構造体の軸受側外周面の間に前記オイルに連続するオイルが介在する、所謂フルフィル構造となる。
【0013】
(2) 本発明の別の液体動圧軸受製造方法は、
中央部に突出するシャフトと該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体と、前記シャフトが挿入される軸受穴と該シャフトの端面と軸線方向に対向する閉塞端面と前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備え、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在する液体動圧軸受の製造方法であって、
減圧前に又は減圧下で、前記軸側構造体における軸側円周状平坦面を内底面として円筒状周壁面とシャフトの間の環状凹部内に所要量のオイルを配すること、
軸側構造体の軸側円周状平坦面を内底面として環状凹部内に所要量のオイルが配された状態で、減圧下、シャフトを前記軸受構造体の軸受穴内に挿入すると共に前記環状凹部内に軸受構造体の開口側を嵌合させ、前記オイルを、少なくとも前記シャフトと前記軸受穴の径方向間隙及び前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させること、及び、
復圧することを含む。
【0014】
軸受穴内にシャフトを挿入する前に軸側構造体における円筒状周壁面とシャフトの間の環状凹部内に所要量のオイルを配するので、オイルを配する作業が容易である。その後、減圧下、その軸受穴内にシャフトを挿入すると共に前記環状凹部内に軸受構造体の開口側を嵌合させることにより、環状凹部内のオイルを、軸側円周状平坦面と軸受構造体との間から、一部は径方向内方側へ(すなわちシャフトと軸受穴の径方向間隙に)、別の一部は径方向外方側へ(すなわち円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に)移動させる。このようなオイルの移動は減圧下で行われるので、オイル中に空気を内包してしまうことを効果的に避けることができる。
【0015】
また、環状凹部内に配されたオイルの界面は、減圧下での環状凹部内への軸受構造体の開口側の嵌合及び軸受穴内へのシャフトの挿入により、径方向内方側及び径方向外方側においてそれぞれ軸線方向におけるシャフト先端側へ移動する。オイルの界面が径方向内方と外方の両側に生じ、オイルに作用する力によりそれぞれが軸線方向に移動するので、オイルに作用する力を内外に分散してオイル界面の急激な移動が防がれ、前記のように減圧下において作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でも、オイルの飛び出しや乱れが抑えられる。
【0016】
復圧により、シャフトの先端面と閉塞端面との間隙を含むシャフトと軸受孔の間隙にオイルが確実に行き渡り、得られる液体動圧軸受は、シャフト及び軸側円周状平坦面と軸受構造体との間の一連の軸受隙間が連続したオイルで満たされ、円筒状周壁面の少なくとも基部と軸受構造体の軸受側外周面の間に前記オイルに連続するオイルが介在する、所謂フルフィル構造となる。
【0017】
(3) 本発明の更に別の液体動圧軸受製造方法は、
中央部に突出するシャフトを有する軸側構造体、及び、前記シャフトが挿入される軸受穴と、該シャフトの先端面と軸線方向に対向する閉塞端面を有する一方開口の軸受構造体を備えており、前記シャフトと前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記軸受構造体に、外部と軸受穴内を連通する連通孔を有する液体動圧軸受の製造方法であって、
減圧前に、前記軸受穴内に、前記連通孔の軸受穴内開口を閉塞しない範囲で前記軸側構造体のシャフトを部分挿入すること、
減圧前に又は減圧下で、前記軸側構造体又は軸受構造体の所定部位に所要量のオイルを配すること、
前記軸側構造体又は軸受構造体の所定部位に所要量のオイルが配された状態で、減圧下、軸受穴に対するシャフトの挿入を完了すること、及び
復圧することを含む。
【0018】
軸受穴内にシャフトを部分挿入する作業は減圧前に行うので、作業が容易であり、減圧下において軸受穴に対しシャフト挿入を完了させる作業は、予め部分挿入された状態から行うので、減圧下であるにもかかわらず作業は容易である。軸受穴内に対するシャフトの部分挿入は、連通孔の軸受穴内開口を閉塞しない範囲で行うので、減圧下では、軸受穴のうちシャフトの先端よりも奥の部分も、連通孔を通じて減圧状態となる。
【0019】
減圧下で軸受穴に対するシャフトの挿入を完了することにより、所定部位に所要量配されたオイルの一部を軸受隙間等へ移動させる。このようなオイルの移動は減圧下で行われるので、オイル中に空気を内包してしまうことを効果的に避けることができる。
【0020】
(4) 本発明の更に別の液体動圧軸受製造方法は、
中央部に突出するシャフトと、該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と、該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体、及び、前記シャフトが挿入される軸受穴と、該シャフトの先端面と軸線方向に対向する閉塞端面と、前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備えており、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在し、前記軸受構造体に、外部と軸受穴内を連通する連通孔を有する液体動圧軸受の製造方法であって、
減圧前に、前記軸受構造体における閉塞端面を内底面として軸受穴内に所要量のオイルを配した後、軸受穴内に、前記連通孔の軸受穴内開口を閉塞しない範囲で軸側構造体のシャフトを部分挿入すること、
軸受穴内に閉塞端面を内底面として所要量のオイルが配された状態で、減圧下、その軸受穴に対するシャフトの挿入を完了し、前記オイルを、少なくとも前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間の軸受隙間並びに前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させること、及び、
復圧することを含む。
【0021】
軸受穴内にシャフトを部分挿入する作業は減圧前に行うので、作業が容易であり、減圧下において軸受穴に対しシャフト挿入を完了させる作業は、予め部分挿入された状態から行うので、減圧下であるにもかかわらず作業は容易である。軸受穴内に対するシャフトの部分挿入は、連通孔の軸受穴内開口を閉塞しない範囲で行うので、減圧下では、軸受穴のうちシャフトの先端よりも奥の部分も、連通孔を通じて減圧状態となる。
【0022】
軸受穴内にシャフトを挿入する前に軸受穴内に所要量のオイルを配するので、オイルを配する作業が容易である。また、軸受穴内に対するシャフトの部分挿入後、軸受穴のうちシャフトの先端よりも奥の部分を含む減圧下で、軸受穴に対しシャフト挿入を完了させ、オイルを、少なくともシャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間の軸受隙間並びに前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の間に連続するよう介在させるので、オイル中に空気を内包してしまうことを効果的に避けることができる。
【0023】
軸受穴の底部に配されたオイルの界面は、減圧下でのシャフトの挿入により、シャフトと軸受穴の径方向間隙を軸受穴の底部から軸受穴の開口部へと、軸線方向におけるシャフトの基部側に移動した後、軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間を周方向に拡がりつつ径方向外方へ移動し、更に、軸側円周状平坦面の外周側から円筒状周壁面と軸受側外周面との径方向間隙を軸線方向におけるシャフト先端側へ移動する。オイルの界面の移動方向が複数回にわたりそれぞれほぼ90度ずつ変化し、而もその間に、オイル界面は軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間を周方向に拡がりつつ径方向外方へ移動するので、オイル界面の急激な移動が防がれ、前記のように減圧下において作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でも、オイルの飛び出しや乱れが抑えられる。
【0024】
得られる液体動圧軸受は、シャフト及び軸側円周状平坦面と軸受構造体との間の一連の軸受隙間が連続したオイルで満たされ、円筒状周壁面の少なくとも基部と軸受構造体の軸受側外周面の間に前記オイルに連続するオイルが介在する、所謂フルフィル構造となる。
【0025】
前記液体動圧軸受は、
中央部に突出するシャフトと、該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と、該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体、及び、前記シャフトが挿入される軸受穴と、該シャフトの先端面と軸線方向に対向する閉塞端面と、前記軸側円周状平坦面と軸線方向間隙を介して相対する軸受側円周状平坦面と、前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備えており、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在し、
前記軸側円周状平坦面と軸受側円周状平坦面との間には、軸側構造体と軸受構造体との間の所定向きの相対回転時に前記オイルに対して半径方向内方側に作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたスラスト軸受部が形成され、
前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間には、軸側構造体と軸受構造体との間の所定向きの相対回転時に前記オイルに対して軸線方向両側から作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたラジアル軸受部が形成されており、
前記軸受構造体に、一方が前記軸受穴外における前記スラスト軸受部の半径方向内方に開口し、他方が軸受穴内に開口することにより、前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間に形成される軸受隙間の軸線方向両端部に連通し、当該軸受隙間内の圧力の均衡を図る連通孔が形成されてなるものとすることが好ましい。
【0026】
また、液体動圧軸受の軸受穴の内周面部が多孔質材料からなるものであり、
所要量のオイルが、前記多孔質材料に含浸させるオイルを含む量であり、
軸受穴内に閉塞端面を内底面として所要量のオイルが配された状態で、減圧下、その軸受穴に対するシャフトの挿入を完了し、前記オイルを、少なくとも前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間の軸受隙間並びに前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させると共に、前記多孔質材料に前記オイルを含浸させるものとすることが好ましい。この場合、軸受穴の内周面部を構成する多孔質材料に対するオイルの含浸を、液体動圧軸受の組み立てと同時に行って製造効率を高めることができる。なお、減圧下で軸受穴に対しシャフトの挿入を完了させようとする際に前記多孔質材料にオイルが十分に含浸していない場合、オイルが十分に含浸するまで挿入を停止させ或いは挿入速度を低下させることにより、オイルの飛び出しを回避する必要がある。但し、本発明の製造方法によれば、オイル界面の急激な移動が緩和されるため、減圧下において挿入作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でもオイルの飛び出しを抑制する効果がある。
【0027】
(5) 本発明の更に別の液体動圧軸受製造方法は、
中央部に突出するシャフトと該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体と、前記シャフトが挿入される軸受穴と該シャフトの端面と軸線方向に対向する閉塞端面と前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備え、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在し、前記軸受構造体に、外部と軸受穴内を連通する連通孔を有する液体動圧軸受の製造方法であって、
減圧前に、前記連通孔の軸受穴内開口を閉塞せず、前記軸側構造体における円筒状周壁面とシャフトの間の環状凹部を閉塞しない範囲で、軸受穴内に軸側構造体のシャフトを部分挿入すること、
減圧前に又は減圧下で、環状凹部が閉塞されていない状態で前記軸側構造体における軸側円周状平坦面を内底面として前記環状凹部内に所要量のオイルを配すること、
軸側構造体の軸側円周状平坦面を内底面として環状凹部内に所要量のオイルが配された状態で、減圧下、軸受穴に対するシャフトの挿入を完了すると共に前記環状凹部内に軸受構造体の開口側を嵌合させ、前記オイルを、少なくとも前記シャフトと前記軸受穴の径方向間隙及び前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させること、及び、
復圧することを含む液体動圧軸受製造方法。
【0028】
軸受穴内にシャフトを部分挿入する作業は減圧前に行うので、作業が容易であり、減圧下において軸受穴に対しシャフト挿入を完了させる作業は、予め部分挿入された状態から行うので、減圧下であるにもかかわらず作業は容易である。軸受穴内に対するシャフトの部分挿入は、連通孔の軸受穴内開口を閉塞せず、軸側構造体における円筒状周壁面とシャフトの間の環状凹部を閉塞しない範囲で行うので、減圧下では、軸受穴のうちシャフトの先端よりも奥の部分も、連通孔を通じて減圧状態となる。
【0029】
環状凹部が閉塞されていない状態でその環状凹部内に所要量のオイルを配するので、オイルを配する作業が容易である。また、軸受穴内に対するシャフトの部分挿入後、軸受穴のうちシャフトの先端よりも奥の部分を含む減圧下で、軸受穴に対しシャフト挿入を完了させると共に環状凹部内に軸受構造体の開口側を嵌合させることにより、環状凹部内のオイルを、軸側円周状平坦面と軸受構造体との間から、一部は径方向内方側へ(すなわちシャフトと軸受穴の径方向間隙に)、別の一部は径方向外方側へ(すなわち円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に)移動させる。このようなオイルの移動は減圧下で行われるので、オイル中に空気を内包してしまうことを効果的に避けることができる。
【0030】
環状凹部内に配されたオイルの界面は、減圧下での環状凹部内への軸受構造体の開口側の嵌合及び軸受穴内へのシャフトの挿入により、径方向内方側及び径方向外方側においてそれぞれ軸線方向におけるシャフト先端側へ移動する。オイルの界面が径方向内方と外方の両側に生じ、オイルに作用する力によりそれぞれが軸線方向に移動するので、オイルに作用する力を内外に分散してオイル界面の急激な移動が防がれ、前記のように減圧下において作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でも、オイルの飛び出しや乱れが抑えられる。
【0031】
復圧により、シャフトの先端面と閉塞端面との間隙を含むシャフトと軸受孔の間隙にオイルが確実に行き渡り、得られる液体動圧軸受は、シャフト及び軸側円周状平坦面と軸受構造体との間の一連の軸受隙間が連続したオイルで満たされ、円筒状周壁面の少なくとも基部と軸受構造体の軸受側外周面の間に前記オイルに連続するオイルが介在する、所謂フルフィル構造となる。
【0032】
前記液体動圧軸受は、
中央部に突出するシャフトと、該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と、該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体、及び、前記シャフトが挿入される軸受穴と、該シャフトの先端面と軸線方向に対向する閉塞端面と、前記軸側円周状平坦面と軸線方向間隙を介して相対する軸受側円周状平坦面と、前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備えており、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在し、
前記軸側円周状平坦面と軸受側円周状平坦面との間には、軸側構造体と軸受構造体との間の所定向きの相対回転時に前記オイルに対して半径方向内方側に作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたスラスト軸受部が形成され、
前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間には、軸側構造体と軸受構造体との間の所定向きの相対回転時に前記オイルに対して軸線方向両側から作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたラジアル軸受部が形成されており、
前記軸受構造体に、一方が前記軸受穴外における前記スラスト軸受部の半径方向内方に開口し、他方が軸受穴内に開口することにより、前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間に形成される軸受隙間の軸線方向両端部に連通し、当該軸受隙間内の圧力の均衡を図る連通孔が形成されてなるものとすることが好ましい。
【0033】
また、液体動圧軸受の軸受穴の内周面部が多孔質材料からなるものであり、
所要量のオイルが、前記多孔質材料に含浸させるオイルを含む量であり、
軸側構造体の軸側円周状平坦面を内底面として環状凹部内に所要量のオイルが配された状態で、減圧下、軸受穴に対するシャフトの挿入を完了すると共に前記環状凹部内に軸受構造体の開口側を嵌合させ、前記オイルを、少なくとも前記シャフトと前記軸受穴の径方向間隙及び前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させると共に、前記多孔質材料に前記オイルを含浸させるものとすることが好ましい。この場合、軸受穴の内周面部を構成する多孔質材料に対するオイルの含浸を、液体動圧軸受の組み立てと同時に行って製造効率を高めることができる。減圧下で軸受穴に対しシャフトの挿入を完了させようとする際に前記多孔質材料にオイルが十分に含浸していない場合、オイルが十分に含浸するまで挿入を停止させ或いは挿入速度を低下させることにより、オイルの飛び出しを回避する必要があるが、本発明の製造方法によれば、オイル界面の急激な移動が緩和されるため、減圧下において挿入作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でもオイルの飛び出しを抑制する効果がある。
【0034】
(6) 上記何れの液体動圧軸受製造方法においても、オイルの温度を、軸受隙間への確実な浸透が可能な十分な流動性を有する所定温度以上とすることが望ましい。その場合、オイルが十分な流動性を有するので、軸受隙間等の必要箇所がオイルによって確実性高く満たされる。よって、精度及び耐久性に優れた液体動圧軸受を製造する上で効果的である。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の液体動圧軸受製造方法の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1は、軸受構造体におけるオイルを配した軸受穴にシャフトを挿入する工程を示す断面図、図2は、図1の工程によるシャフト挿入を完了して復圧することにより得られた液体動圧軸受の断面図、図3は、図1の軸受構造体の平面図である。
【0037】
図4は、環状凹部内にオイルを配した軸側構造体のシャフトを軸受構造体の軸受穴に挿入する工程を示す断面図、図5は、図4の工程によるシャフト挿入を完了して復圧することにより得られた液体動圧軸受の断面図である。
【0038】
図6は、図2又は図5の液体動圧軸受を用いたスピンドルモータの断面図、図7は、スピンドルモータを用いたディスク駆動装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【0039】
(1)製造対象である液体動圧軸受の構成
図1又は図4に示す工程を経てそれぞれ製造される図2又は図5並びに図6に示す液体動圧軸受は、軸側構造体10(ロータ10)と軸受構造体12からなる。図示の例ではロータが軸側構造体を構成しているが、これに限るものではない。ステータ側に軸側構造体が設けられていてもよく、モータ以外の装置の回転側又は固定側に設けられているものでもよい。また、本発明により製造される液体動圧軸受は、特に、ハードディスクなどの情報記録機器を駆動するためのスピンドルモータに用いるのに適するが、それ以外の回転機械等にも用い得るものである。
【0040】
ロータ10は、略カップ状のロータハブ10aと、このロータハブ10aの回転中心に嵌合固定されたシャフト10bとから構成され、ロータハブ10aの外周壁の内周面にはロータマグネット14が接着等の手段によって取付けられている。
【0041】
軸受構造体12は、有底円筒状のハウジング16(軸受ハウジング)とこのハウジング16内に同軸状に取付けられた中空円筒状のスリーブ18とを有する。このように、ハウジング16とスリーブ18とが一体となって円筒状の軸受構造体12を形成している。軸受穴18bは、スリーブ18の中心部を軸線方向に貫通する。
【0042】
ハウジング16は、ステンレス鋼や銅系又はアルミニウム系合金等からなる薄板状の金属材をプレス加工することで下方側が閉塞された略カップ状の形状を有している。
【0043】
また、スリーブ18は多孔質焼結体からなる。従って、軸受穴18bの内周面部は多孔質材料からなる。その材質については特に限定はなく、各種金属粉未や金属化合物粉末、非金属粉末を原料として成形、焼結したものが使用できる。原料としてはFe−CuやCu−Sn、Cu−Sn−Pb、Fe−Cなどが挙げられる。この多孔質焼結体製のスリーブ18内には、後に述べる軸受間隙に保持されるのと同じオイルLが含浸されている。
【0044】
スリーブ18の軸受穴18bには、シャフト10bが挿通されている。シャフト10bの外周面は、スリーブ18の内周面と間隙を介して半径方向に対向し、またシャフト10bの先端面は、ハウジング16の閉塞端部16aの内面(閉塞端面)と間隙を介して軸線方向に対向している。スリーブ18の奥側端面(図1及び図2における下側の端面、図4及び図5における上側の端面)は、ハウジング16の閉塞端部16aの内面と隙間を介して軸線方向に対向するよう取付けられている。更に、ハウジング16及びスリーブ18の開口側の端面は、ロータハブ10aのシャフト突出側においてそのシャフト10bの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面10a1と間隙を介して軸線方向に対向している。
【0045】
これらハウジング16及びスリーブ18の開口側の端面とロータハブ10aのシャフト突出側の面との間に形成される間隙と、スリーブ18の内周面とシャフト10bの外周面との間に形成される間隙と、ハウジング16の閉塞端部16aの内面とシャフト10bの下端面との間に形成される隙間及びこれに隣接するスリーブ18の奥側端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面との間に形成される隙間(これらの各隙間並びに後述する連通孔19内に形成される隙間を合わせて、以下「軸受隙間」と記載する)とは全て連続している。これら連続する各隙間には、オイルLが途切れることなく連続して保持されており、フルフィル構造の軸受を構成している。
【0046】
更に、スリーブ18の外周面には、その上方側の端面から下方側の端面に至る軸線方向溝18aが設けられている(図1及び図3参照)。この軸線方向溝18aは、断面形状が半円状(これに限らず、例えば略矩形状等の形状とすることもできる。)となるようプレス加工あるいは切削加工により形成されている。このような構成のスリーブ18がハウジング16の内周面に取付けられることで、軸線方向溝18aとハウジング16の内周面とによって、連通孔19が形成され、この連通孔19内にもオイルLが保持されている。スリーブ18の内周面とシャフト10bの外周面との間に形成される間隙の軸線方向両端部は、ハウジング16及びスリーブ18の開口側の端面とロータハブ10aのシャフト突出側の面との間に形成される間隙、並びにスリーブ18の奥側端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面との間に形成される隙間を介して、連通孔19により連通する。尚、連通孔19を通じてのオイルLの圧力補償に関しては後に詳述する。
【0047】
ハウジング16の外周開口端部には、半径方向外方に突設され且つ外周面がその開口端から離間するにつれて縮径するよう傾斜面状に形成された環状フランジ部16bが設けられている。また、ロータハブ10aには、軸側円周状平坦面10a1の外周側からシャフト10bと同じ向きにロータハブ10aの外周壁よりも短く立ち上げられた環状壁部10cが設けられ、環状壁部10cとシャフト10bの間に、軸側円周状平坦面10a1を底面とする環状凹部10dが形成されている。環状壁部10cの内周面とフランジ部16bの外周面は、非接触状態で半径方向に対向している。
【0048】
この環状壁部10cの内周面(すなわち円筒状周壁面)とフランジ部16bの外周面との間に規定される間隙の半径方向の間隙寸法は、フランジ部16bの外周面が上記のとおり傾斜面状に形成されることで、ブラケット30側(環状壁部10cの先端部方向)に向かって漸増する。すなわち、この環状壁部10cの内周面とフランジ部16bの外周面とが協働してテーパシール部28を構成している。上述した各間隙内に保持されるオイルLは、このテーパシール部28のみにおいて、オイルLの表面張力と外気圧とがバランスされ、オイルLと空気との界面がメニスカス状をなす。
【0049】
テーパシール部28は、オイルリザーバとして機能し、テーパシール部28内に保持されるオイル量に応じてオイル界面の形成位置が適宜移動可能である。従って、テーパシール部28内に保持されるオイルLが、オイル保持量の減少に伴ない後に説明する軸受部に供給されると共に、熱膨張等によって体積が増大した分のオイルLは、このテーパシール部28内に収容される。
【0050】
このように、ハウジング16のフランジ部16bの外周面とロータハブ10aの環状壁部10cの内周面間にテーパ状間隙を形成し、表面張力を利用したテーパシール部28を構成することで、テーパシール部28がより大径となると共に、テーパシール部28の軸線方向寸法も比較的に大とすることができる。従って、テーパシール部28内の容積が増大し、フルフィル構造の動圧軸受に多量に保持されるオイルLの熱膨張に対しても十分に追随可能となる。
【0051】
スリーブ18の内周面には、その開口端側に、ロータ10の回転時にオイルLに流体動圧を誘起するために、回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブ20aが形成されており、シャフト10bの外周面との間で開口側ラジアル軸受部20が構成される。
【0052】
開口側ラジアル軸受部20のヘリングボーングルーブ20aは、開口側に位置するスパイラル溝部が奥側に位置するスパイラル溝部よりも軸線方向寸法が大に形成されており、ロータ10の回転に応じて、軸受部の中心から奥側に偏倚した部位で動圧の極大点が発生すると同時に、オイルLを奥側に押し込む圧力が生じるよう形成されている。この押し込み圧によって、開口側ラジアル軸受部20よりも奥側に位置する間隙内に保持されるオイルLの内圧が大気圧(外気圧)以上に保たれる。
【0053】
また、スリーブ18の内周面には、その下端側に、ロータ10の回転時にオイルLに流体動圧を誘起するために、回転方向に対して相反する方向に傾斜する−対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブ22aが形成されており、シャフト10bの外周面との間で奥側ラジアル軸受部22が構成される。
【0054】
奥側ラジアル軸受部22におけるヘリングボーングルーブ22aを形成する両スパイラルグルーブは、実質的に同等のポンピングカを発生するよう、軸線方向の寸法、回転方向に対する傾斜角あるいは溝幅や深さといった溝諸元が同一となるよう設定されている。つまり、各スパイラルグルーブが、両者の連結部(スリーブ18の軸線方向一定位置の円周)に対して線対称になるよう設定されている。従って、奥側ラジアル軸受部22では、軸受部の軸線方向中央部において最大動圧が現れる。
【0055】
更に、図3に図示されるように、ハウジング16の開口端側の端面(軸受側円周状平坦面)には、ロータ10の回転時にオイルLに対して半径方向内方(シャフト10b側)に向かう圧力を誘起するポンプインのスパイラルグルーブ24aが形成されており、ロータハブ10aの軸側円周状平坦面10a1との間でスラスト軸受部24が構成される。
【0056】
前記開口側及び奥側ラジアル軸受部20,22に設けられるヘリングボーングルーブ20a,22aは、焼結材製のスリーブ18をプレス加工することによって形成することができる。また、スラスト軸受部24に設けられるスパイラルグルーブ24aは、ハウジング16をプレス成形する際に同時に形成可能である。
【0057】
尚、シャフト10bの自由端部側端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面とは、後に詳述するとおり、スラスト軸受部24のスパイラルグルーブ24aによって高められたオイルLの内圧を利用する、静圧軸受部として機能する。
【0058】
(2)液体動圧軸受の製造
(2−1)図1に示す工程を経て行う図2に示す液体動圧軸受の製造方法について説明する。
【0059】
第1の製造方法
先ず、減圧前に(本明細書中の減圧前というのは、通常の場合大気圧下を意味する。)又は真空槽内等における減圧下(本明細書中の減圧下というのは、例えば1000Pa以下の減圧である。好ましくは、100Pa以下、より好ましくは10Pa以下の減圧である。)で、軸受構造体12における閉塞端部16aの内面(図1における上面)を内底面として軸受穴18b内に所要量のオイルLを配し、閉塞端部16a上にオイルLを溜める。所要量のオイルというのは、多孔質焼結体からなるスリーブ18に含浸させるオイルLを含む量である。軸受穴18b内にシャフト10bを挿入する前に軸受穴18b内に所要量のオイルを配するので、作業が容易である。
【0060】
次いで、真空槽内等において減圧した後、又は減圧環境継続下、軸受穴18b内に軸側構造体10のシャフト10bを挿入し、軸受穴18b内の閉塞端部16a上に配したオイルLを、軸受隙間[すなわち、シャフト10bの先端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面との間隙、スリーブ18の内周面とシャフト10bの外周面との間の間隙及びこれに隣接するスリーブ18の奥側端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面の間の隙間、連通孔19内部、並びにハウジング16及びスリーブ18の開口側の端面とロータハブ10aのシャフト突出側の面との間隙]、及びテーパシール部28[環状壁部10cの内周面とフランジ部16bの外周面の間隙]に連続するよう移動させると共に、スリーブ18にオイルを含浸させる。この工程は減圧下で行われるので、オイルL中に空気を内包してしまうことを効果的に避けることができる。
【0061】
次いで復圧する。得られる液体動圧軸受は、図2に示されるように、シャフト10b及び軸側円周状平坦面10a1と軸受構造体12との間の一連の軸受隙間が連続したオイルLで満たされ、更にそのオイルに連続して、テーパシール部28に空気との界面を有する状態でオイルLが保持されたフルフィル構造となる。なお、余分なオイルは環状壁部10cの内周面とフランジ部16bの外周面の間隙におけるオイル界面から吸い取り等によって除去することができる。
【0062】
軸受穴18b内の閉塞端部16a上に配したオイルLの界面は、減圧下でのシャフト10bの挿入により、スリーブ18の内周面とシャフト10bの外周面との間の間隙を軸受穴18bの底部から開口部へと、軸線方向におけるシャフト10bの基部側(図1及び図2における上方)に移動した後、軸側円周状平坦面10a1とハウジング16及びスリーブ18の開口側の端面との間を周方向に拡がりつつ半径方向外方へ移動し、更に、軸側円周状平坦面10a1の外周側から環状壁部10cの内周面とフランジ部16bの外周面の間隙を軸線方向におけるシャフト10b先端側(図1及び図2における下方)へ移動する。オイルLの界面の移動方向が複数回にわたりそれぞれほぼ90度ずつ変化し、而もその間に、オイル界面は軸側円周状平坦面10a1と軸受構造体12との間を周方向に拡がりつつ径方向外方へ移動するので、オイル界面の急激な移動が防がれ、減圧下において作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でも、オイルの飛び出しや乱れが抑えられる。また、スリーブ18を構成する多孔質焼結体に対するオイルLの含浸が、液体動圧軸受の組み立てと同時に行われることにより、製造効率が高まる。減圧下で軸受穴18bに対しシャフト10bの挿入を完了させようとする際にスリーブ18を構成する多孔質焼結体に対しオイルLが十分に含浸していない場合、オイルLが十分に含浸するまで挿入を停止させ或いは挿入速度を低下させることにより、オイルLの飛び出しを回避する必要があるが、この場合においても、オイル界面の急激な移動が緩和されるため、減圧下において挿入作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でもオイルの飛び出しが抑制される。
なお、本明細書に記載した各液体動圧軸受製造方法の発明において用いるオイルは、各製造方法実施の際の減圧時における気泡の膨張や発生によるオイルの飛散を防ぐ上で、実質上気泡を含まないオイル(好ましくは気泡を含まず且つ溶存気体濃度が十分に低いオイル)、すなわち例えば(好ましくは、本発明の製造方法における減圧時の圧力よりも低い圧力下で)十分に脱泡処理されたオイル又はそれと同等のオイルとすることが望ましい。
【0063】
第2の製造方法
先ず、減圧前に、閉塞端部16aの内面(図1における上面)を内底面として軸受穴18b内に前記と同様に所要量のオイルLを配した後、軸受穴18b内にシャフト10bを軸方向長の3分の1程度部分挿入(図1における2点鎖線参照)する。次いで、真空槽内等において減圧した後、軸受穴18bに対するシャフト10bの挿入を完了する。これら以外の点は第1の製造方法と同様である。
【0064】
この場合、軸受穴18b内にシャフト10bを部分挿入する作業は減圧前に行うので、作業が容易であり、減圧下において軸受穴18bに対しシャフト10bの挿入を完了させる作業は、予め部分挿入された状態から行うので、減圧下であるにもかかわらず作業は容易である。部分挿入状態において、連通孔19の奥側端部(図1における下端部)は、スリーブ18の奥側端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面の間の隙間を通じて軸受穴18b内に通じているので、軸受穴18bのうちシャフト10bの先端よりも奥(図1における下)の部分も、連通孔を通じて減圧状態となる。従って、第1の製造方法と同様にオイルL中に空気を内包してしまうことを効果的に避けることができる。その他の点も第1の製造方法と同様である。
(2−2)図4に示す工程を経て行う図5に示す液体動圧軸受の製造方法について説明する。
【0065】
第1の製造方法
先ず、減圧前に又は真空槽内等における減圧下で、軸側構造体10における軸側円周状平坦面10a1を内底面として環状壁部10cとシャフト10bの間の環状凹部10d内に所要量のオイルLを配し、軸側円周状平坦面10a1上にオイルLを溜める。所要量のオイルというのは、前記と同様、多孔質焼結体からなるスリーブ18に含浸させるオイルLを含む量である。軸受穴18b内にシャフト10bを挿入する前に環状凹部10d内に所要量のオイルを配するので、作業が容易である。
【0066】
次いで、真空槽内等において減圧した後、又は減圧環境継続下、図4に二点鎖線で示すようにシャフト10bを軸受構造体12の軸受穴18b内に挿入すると共に環状凹部10d内にハウジング16及びスリーブ18の開口側を嵌合させ、環状凹部10d内の軸側円周状平坦面10a1上に配したオイルLを、少なくとも、一部は径方向内方側(スリーブ18の内周面とシャフト10bの外周面との間の間隙)へ、別の一部は径方向外方側(環状壁部10cの内周面とフランジ部16bの外周面の間隙)に、連続するよう移動させると共に、スリーブ18にオイルを含浸させる。
【0067】
この工程は減圧下で行われるので、オイルL中に空気を内包してしまうことを効果的に避けることができる。また、環状凹部10d内に配したオイルLの界面は、減圧下での環状凹部10d内へのハウジング16及びスリーブ18の開口側の嵌合及び軸受穴18b内へのシャフト10bの挿入により、径方向内方側及び径方向外方側においてそれぞれスリーブ18の内周面とシャフト10bの外周面との間の間隙及び環状壁部10cの内周面とフランジ部16bの外周面の間隙を軸線方向におけるシャフト10bの先端側(図4及び図5における上方)へ移動する。オイルLの界面が径方向内方と外方の両側に生じ、オイルに作用する力によりそれぞれが軸線方向に移動するので、オイルLに作用する力を内外に分散してオイル界面の急激な移動が防がれ、減圧下において作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でも、オイルの飛び出しや乱れが抑えられる。減圧下で軸受穴18bに対しシャフト10bの挿入を完了させようとする際にスリーブ18を構成する多孔質焼結体に対しオイルLが十分に含浸していない場合、オイルLが十分に含浸するまで挿入を停止させ或いは挿入速度を低下させることにより、オイルLの飛び出しを回避する必要があるが、この場合においても、オイル界面の急激な移動が緩和されるため、減圧下において挿入作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でもオイルの飛び出しが抑制される。
【0068】
次いで復圧する。復圧により、シャフト10bの先端面と閉塞端部16aの内面との間隙を含むシャフト10bと軸受孔18bの間隙にオイルが確実に行き渡り、得られる液体動圧軸受は、図5に示されるように、シャフト10b及び軸側円周状平坦面10a1と軸受構造体12との間の一連の軸受隙間が連続したオイルLで満たされ、更にそのオイルに連続して、テーパシール部28に空気との界面を有する状態でオイルLが保持されたフルフィル構造となる。なお、余分なオイルは環状壁部10cの内周面とフランジ部16bの外周面の間隙におけるオイル界面から吸い取り等によって除去することができる。また、スリーブ18を構成する多孔質焼結体に対するオイルLの含浸が、液体動圧軸受の組み立てと同時に行われることにより、製造効率が高まる。
【0069】
第2の製造方法
減圧前に、環状凹部10dを閉塞しない範囲で、軸受穴18b内にシャフト10bを軸方向長の3分の1程度部分挿入(図4参照)する。また、減圧前に又は真空槽内等における減圧下で、軸側構造体10における軸側円周状平坦面10a1を内底面として環状凹部10d内に所要量のオイルLを配する。それらの後、減圧下、軸受穴18bに対するシャフト10bの挿入を完了すると共に環状凹部10d内にハウジング16及びスリーブ18の開口側を嵌合させる。これら以外の点は第1の製造方法と同様である。
【0070】
この場合、軸受穴18b内にシャフト10bを部分挿入する作業は減圧前に行うので、作業が容易であり、減圧下において軸受穴18bに対しシャフト10bの挿入を完了させる作業は、予め部分挿入された状態から行うので、減圧下であるにもかかわらず作業は容易である。部分挿入状態において、連通孔19の奥側端部(図4における上端部)は、スリーブ18の奥側端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面の間の隙間を通じて軸受穴18b内に通じているので、軸受穴18bのうちシャフト10bの先端よりも奥(図4における上)の部分も、連通孔を通じて減圧状態となる。従って、第1の製造方法と同様にオイルL中に空気を内包してしまうことを効果的に避けることができる。その他の点も第1の製造方法と同様である。
【0071】
上記何れの液体動圧軸受製造方法においても、オイルの温度を、軸受隙間への確実な浸透が可能な十分な流動性を有する所定温度以上とすることが望ましい。その場合、オイルが十分な流動性を有するので、軸受隙間等の必要箇所がオイルによって確実性高く満たされる。よって、精度及び耐久性に優れた液体動圧軸受を製造する上で効果的である。
【0072】
(2−3)抜け止め機構
図6に示されるように、環状壁部10cのうちテーパシール部28よりも先端側には、接着等の手段によって環状の抜止めリング25が固着されている。この抜止めリング25がフランジ部16bの下部(図6)に対して非接触状態で嵌り合うことで、軸受構造体12のハウジング16に対するロータ10(軸側構造体)の抜け止め構造が構成される。
【0073】
このように、ハウジング16の外周面側においてロータ10の抜止め構造を構成しているので、一対のラジアル軸受部と抜止め構造とが軸線方向における同一線上に整列配置されることが回避されている。従って、相互に対向するシャフト10bの外周面とスリーブ18の内周面との軸線方向の高さ寸法全体を軸受として有効に活用することが可能になり、軸受剛性を維持しながら更なる液体動圧軸受及びそれを利用する装置の軸線方向寸法の縮小又は薄型化が実現される。
【0074】
抜止めリング25の上面(図6)とフランジ部16bの下面(図6)並びに抜止めリング25の内周面とハウジング16の外周面とは、テーパシール部28に連続し且つテーパシール部28の半径方向の間隙の最小の隙間寸法よりも小な隙間寸法を有する間隙を介して対向している。
【0075】
抜止めリング25の上面(図6)とフランジ部16bの下面(図6)との間に規定される軸線方向の間隙並びに抜止めリング25の内周面とハウジング16の外周面との間に形成される半径方向の隙間の間隙寸法を可能な限り小さく設定することによって、ロータ10の回転時に、これら抜止めリング25とハウジング16との間の間隙における空気の流速とテーパシール部28に規定される半径方向の間隙における空気の流速との差が大きくなり、オイルLが気化することによって生じた蒸気の外部への流出抵抗を大きくしてオイルLの境界面近傍における蒸気圧を高く保ち、更なるオイルLの蒸散を防止するよう、ラビリンスシールとして機能する。
【0076】
このように、テーパシール部28に連続してラビリンスシールを設けることで、液体としてのオイルLの流出が阻止されるばかりでなく、外部環境温度の上昇等によりオイルLが気化することで発生するオイルLミストの外部への流出も阻止することが可能となる。従って、オイルL保持量の低下を防止して、長期間にわたって安定した軸受性能を維持することができ、耐久性、信頼性の高い軸受とすることができる。
【0077】
(3)軸支持方法
次に、上記のように製造して得られた液体動圧軸受における各軸受部による軸支持方法について詳述する。
【0078】
開口側及び奥側ラジアル軸受部20,22では、ロータ10の回転に伴ない、ヘリングボーングルーブ20a,22aによるポンピングカが高まり、流体動圧が生じる。開口側及び奥側ラジアル軸受部20,22における圧力分布は、ヘリングボーングルーブ20a,22aの両端側から急激に高まり、各スパイラルグルーブの連結部(略「く」字状ヘリングボーングルーブにおける屈曲部)付近において極大となる。この開口側及び奥側ラジアル軸受部20,22で発生する流体動圧により、ロータ10がスリーブ18及びシャフト10bの軸線方向上下部から支持され、これがロータ10の調芯作用及び倒れに対する復元作用を担っている。
【0079】
スラスト軸受部24では、ロータ10の回転に伴ない、ポンプインのスパイラルグルーブ24aによって、オイルLに半径方向内方に向かう圧力が誘起される。この半径方向内方に向かう圧力によって、オイルLの内圧が高められ、ロータ10の浮上方向に作用する流体動圧が発生すると共に、スラスト軸受部24よりも軸受隙間の奥側(閉塞端部16a側)に保持されるオイルL全体の圧力が正圧に保たれることとなる。尚、スラスト軸受部24で誘起される流体動圧は、開口側及び奥側ラジアル軸受部20,22のように急激に高まることはなく、最大でも大気圧を幾分上回る程度である。このスラスト軸受部24で発生する半径方向内方に向かう圧力によって、スラスト軸受部24よりも軸受隙間の奥側に保持されているオイルLは、圧力的に実質上密封された状態となる。
【0080】
また、開口側ラジアル軸受部20に形成されるヘリングボーングルーブ20aを軸線方向に非対称な形状とし、オイルLに対して軸線方向奥側へと押圧する動圧を発生することで、その軸受部の中心部から幾分奥側ラジアル軸受部22側に偏倚した部位で極大となる動圧を発生し、シャフト10bを軸線方向開口側において支持すると共に、開口側ラジアル軸受部20と奥側ラジアル軸受部22との間の領域の圧力が大気圧以上の正圧に保たれ、負圧の発生が防止される。
【0081】
尚、上記のとおり、スラスト軸受部24で発生する圧力は、大気圧を幾分上回る程度であり、これのみでロータ10を十分に浮上させるのは困難である。しかしながら、上述のとおりシャフト10bの端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面との間に保持されたオイルLの内圧も、連通孔19を通じてスラスト軸受部24で誘起される流体動圧によって高められたオイルLの内圧と同等の圧力となるよう伝播されるので、静圧軸受部として機能する。これらスラスト軸受部24と静圧軸受部との協働によって、ロータ10を十分に浮上させることが可能となる。
【0082】
また、液体動圧軸受を図6に示すように用いたスピンドルモータにおいては、ブラケット30のロータマグネット14との対向位置に強磁性材からなる環状のスラストヨーク26を配置し、ロータマグネット14とスラストヨーク26との間で軸線方向の磁気吸引力を発生させることで、スラスト軸受部24及びシャフト10bの端面とハウジング16閉塞端部16aの内面との間の静圧軸受部で発生するロータ10の浮上圧とバランスさせて、ロータ10のスラスト方向の支持を安定させている。このようなロータ10に対する磁気的な付勢は、例えば、ステータ27とロータマグネット14との磁気的中心を軸線方向に相違させることによっても作用させることが可能である。
【0083】
(4)連通孔の作用
図1及び図4に図示するように、スリーブ18がハウジング16の内周面に取付けられると、ハウジング16の内周面と軸線方向溝18aとの間に、スリーブ18の軸線方向開口端部から下端部を連続する連通孔19が規定される。連通孔19内には、上述したとおり一連の軸受間隙内に保持されるオイルLに連続してオイルLが保持されている。また、連通孔19内に保持されるオイルLの内圧は、各軸受部に保持されるオイルLの内圧とバランスしている。
【0084】
開口側及び奥側ラジアル軸受部20,22が構成されるスリーブ18の内周面とシャフト10bの外周面との間に形成される微小間隙が所定の寸法を維持している場合、あるいは、ヘリングボーングルーブ20a,22aが所定の精度を維持して形成されている場合には、各軸受部に保持されるオイルLは少なくともスラスト軸受部24で発生する圧力と等価となり、オイルLの内圧が負圧となることはない。
【0085】
しかし、スリーブ18の内周面又はシャフト10bの外周面の加工誤差によって、スリーブ18の内周面とシャフト10bの外周面との間に形成される微小間隙が、その軸線方向開口端部側が奥端部側よりも広く形成されると、奥側ラジアル軸受部22側の発生する動圧が開口側ラジアル軸受部20で発生する動圧を上回り、軸線方向奥側から開口側へと向かうオイルLの流動が発生して、ハウジング16の閉塞端部16a側、すなわち軸受隙間の奥側に保持されているオイルLの内圧が負圧となる懸念がある。また、スリーブ18の内周面とシャフト10bの外周面との間に形成される微小間隙が、その軸線方向開口端部側が奥端部側よりも狭く形成された場合には、開口側ラジアル軸受部に設けられたヘリングボーングルーブ22aが発生する動圧が所定圧以上となり、シャフト10bの先端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面との間で負圧が発生し、また、オイルLが軸線方向開口端部側から奥端都側へと流動する場合は、シャフト10bの先端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面との間のオイルLの内圧が必要以上に高まってロータ10の過浮上が発生する懸念がある。
【0086】
これに対し、連通孔19を設けることで、スラスト軸受部24で発生した圧力が幾分減衰はされるものの、ハウジング16の閉塞端部16a側に保持されるオイルLへと伝播されるので、通常状態では、この領域でオイルLの内圧が負圧となることはない。
【0087】
また、開口側ラジアル軸受部20に設けられるヘリングボーングルーブ20aを軸線方向に非対称な形状とし、オイルLに対して奥側へと押圧する動圧を発生することで、開口側ラジアル軸受部20と奥側ラジアル軸受部22との間の領域の圧力が大気圧以上の正圧に保たれ、負圧の発生が防止されると共に、ヘリングボーングルーブ20aの発生する押圧力によって、オイルLは常に奥側ラジアル軸受部22、スリーブ18の奥端側の端面とハウジング16の閉塞端部16aの内面との閏から連通孔19、更にスリーブ18の開口端側の端面とロータハブ10aの軸側円周状平坦面10a1との間を経て、シャフト10bの外周面及びスリーブ18の内周面の軸線方向開口端都側へと流動し、開口側ラジアル軸受部20へと環流するよう加圧され、一連の循環路が形成される。
【0088】
これにより、軸受隙間内のオイルLが常に−定方向に流動することとなり、圧力の均衡が図られるので、負圧による気泡の発生やロータ10の過浮上の発生が防止されると共に、加工誤差に対する許容範囲が格段に拡大するので、歩留まりが改善される。
【0089】
尚、連通孔19の一端がスラスト軸受部24よりも半径方向内方側に開口するよう配置することで、大気圧よりも高圧な領域内でオイルLの圧力が一定に保たれるようになる。このように、スラスト軸受部24によって、これよりも軸受部の奥側は圧力的に密封された状態となる。
【0090】
例えば、連通孔19の一端を軸受部とテーパシール部との間に開口した場合も、モータの定常回転時等軸受部で所定の動圧が発生している間は十分な支持剛性が得られているため、軸受部の接触や摺動が発生する可能性は低い。しかし、モータの停止時等モータの回転速度が低下すると、連通孔19の一端が圧力的に密封された領域以外の部分、すなわち、オイルLの圧力が大気圧と同等もしくはそれ以下の領域に開口していることで、軸受部内で高く維持されていたオイルLの圧力が、連通孔19の開口部分のオイルLの圧力との差圧によって急激に低下することとなる。
【0091】
例えば液体動圧軸受を図6のようなスピンドルモータに用いた場合、このように軸受部内の圧力が急激に低下することで、ロータ10は容易に触れ回ったり偏心したりして、シャフト10bやスリーブ18等軸受部を構成する部材に接触や摺動が発生することとなる。これは、ロータハブ10aに載置される記録ディスクを含むロータ10の重量アンバランス、モータを構成する部材の加工や組立公差あるいはステータ27とロータマグネット14との間に作用する磁気力のアンバランス等が原因と考えられるが、このような軸受部の接触や摺動がモータが停止する度に繰り返されることで、軸受部を構成する部材の摩耗や損傷が顕著となり、モータの信頼性や耐久性を低下させる。
【0092】
これに対し、連通孔19をスラスト軸受部24の半径方向内方に開口させることで、このようなモータが完全に停止する直前までスパイラルグルーブ24aによるポンピングが作用し、オイルLには半径方向内方側に作用する流体動圧が誘起され続ける。従って、スラスト軸受部24が圧力的な隔壁として働くので、軸受部内の圧力の低下が緩やかになり、軸受部を構成する部材の接触や摺動が緩和され、信頼性や耐久性の低下が抑制される。
【0093】
(5)スピンドルモータの構成
上記のように製造される液体動圧軸受は、例えば図6に図示されるようにスピンドルモータに用いることができる。すなわち、ハウジング16が、ブラケット30に設けられた円形ボス部30aに固着され、円形ボス部30aの外周面には、ロータマグネット14と半径方向に対向してステータ27が固着される。
【0094】
(6)ディスク駆動装置の構成
図7に、一般的なディスク駆動装置50の内部構成を模式図として示す。ケーシング51の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状のディスク板53が装着されたスピンドルモータ52が設置されている。加えてケーシング51の内部には、ディスク板53に対して情報を読み書きするヘッド移動機構57が配置され、このヘッド移動機構57は、ディスク板53上の情報を読み書きするヘッド56、このヘッドを支えるアーム55及びヘッド56及びアーム55をディスク板53上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部54により構成される。
【0095】
このようなディスク駆動装置50のスピンドルモータ52として上記のように製造される液体動圧軸受を用いたスピンドルモータを使用することで、ディスク駆動装置50の薄型化並びに低コスト化を可能にすると同時に、スピンドルモータの安定性や信頼性及び耐久性が改善されるので、より信頼性の高いディスク駆動装置とすることができる。
【0096】
以上、本発明に従う液体動圧軸受製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0097】
例えば、スリーブ18の下端側の端面をハウジング16の閉塞端部16aの内面に当接させ、スリーブ18の下端側の端面に、その内周面と軸線方向溝18aとに連続する半径方向溝を設けて連通をはかることも可能である。
【0098】
また、スリーブ18は、アルミニウム系の材料、銅系材料、ステンレス綱といった無垢の金属材から適宜選択して使用することも可能である。
【0099】
更に、開口側及び奥側ラジアル軸受部20,22に形成される動圧発生溝は、オイルLに対して常に一方向に向かう流動を誘起するよう配置されることが重要であり、上記実施形態では、開口側ラジアル軸受部20の動圧発生溝を軸線方向に非対称な形状のヘリングボーングルーブ20aとし、奥側ラジアル軸受部22の動圧発生溝を軸線方向に対称な形状のヘリングボーングルーブ22aとしているが、開口側ラジアル軸受部20の動圧発生溝を軸線方向に対称な形状のヘリングボーングルーブとし、奥側ラジアル軸受部22の動圧発生溝を軸線方向に非対称な形状のヘリングボーングルーブとして、オイルLに対して押し込み圧を付与することも可能である。
【0100】
尚、上記実施形態では、閉塞端部16aをハウジング16と−体に形成した構成を例示しているが、ハウジング16を中空円筒状とし、一方の端部をハウジング16とは別の部材からなる閉塞部材によって閉塞した構成とすることも当然に可能である。
【0101】
【発明の効果】
請求項1の液体動圧軸受製造方法によれば、軸受穴内にオイルを配する作業が容易であると共に、オイル中に空気を内包してしまうこと、並びに、それにより液体動圧軸受使用中に温度上昇等により潤滑油が漏出すること及びNRROを惹起して液体動圧軸受の性能低下の原因となること等を効果的に避けることができる。また、シャフトの挿入時に、オイル界面の複数回にわたるほぼ90度の移動方向変化と周方向拡がりによりオイル界面の急激な移動が防がれ、減圧下において作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でも、オイルの飛び出しや乱れが抑えられる。
【0102】
請求項2の液体動圧軸受製造方法によれば、軸側構造体における環状凹部内にオイルを配する作業が容易であると共に、オイル中に空気を内包してしまうこと、並びに、それにより液体動圧軸受使用中に温度上昇等により潤滑油が漏出すること及びNRROを惹起して液体動圧軸受の性能低下の原因となること等を効果的に避けることができる。また、環状凹部内への軸受構造体の開口側の嵌合及び軸受穴内へのシャフトの挿入時に、オイルに作用する力が内外に分散してオイル界面の急激な移動が防がれ、減圧下において作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でも、オイルの飛び出しや乱れが抑えられ、復圧によりオイルが確実に行き渡る。
【0103】
請求項3の液体動圧軸受製造方法によれば、減圧前に行う軸受穴内へのシャフトの部分挿入作業及び減圧下における軸受穴に対するシャフト挿入完了作業が何れも容易であると共に、オイル中に空気を内包してしまうこと、並びに、それにより液体動圧軸受使用中に温度上昇等により潤滑油が漏出すること及びNRROを惹起して液体動圧軸受の性能低下の原因となること等を効果的に避けることができる。
【0104】
請求項4及び請求項6の各液体動圧軸受製造方法によれば、減圧前に行う軸受穴内へのシャフトの部分挿入作業及び減圧下における軸受穴に対するシャフト挿入完了作業が何れも容易である。また、軸受穴内にオイルを配する作業が容易であると共に、オイル中に空気を内包してしまうこと、並びに、それにより液体動圧軸受使用中に温度上昇等により潤滑油が漏出すること及びNRROを惹起して液体動圧軸受の性能低下の原因となること等を効果的に避けることができる。而も、シャフトの挿入時に、オイル界面の複数回にわたるほぼ90度の移動方向変化と周方向拡がりによりオイル界面の急激な移動が防がれ、減圧下において作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でも、オイルの飛び出しや乱れが抑えられる。請求項8の各液体動圧軸受製造方法によれば、更に、軸受穴内周面部を構成する多孔質材料へのオイル含浸を液体動圧軸受組立てと同時に行って製造効率を高めることができる。また、減圧下で軸受穴に対しシャフトの挿入を完了させようとする際に前記多孔質材料にオイルが十分に含浸していない場合、オイルが十分に含浸するまで挿入を停止させ或いは挿入速度を低下させることにより、オイルの飛び出しを回避する必要があるが、オイル界面の急激な移動が緩和されるため、減圧下において挿入作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でもオイルの飛び出しを抑制する効果がある。
【0105】
請求項5及び請求項7の各液体動圧軸受製造方法によれば、減圧前に行う軸受穴内へのシャフトの部分挿入作業及び減圧下における軸受穴に対するシャフト挿入完了作業が何れも容易である。また、環状凹部内にオイルを配する作業が容易であると共に、オイル中に空気を内包してしまうこと、並びに、それにより液体動圧軸受使用中に温度上昇等により潤滑油が漏出すること及びNRROを惹起して液体動圧軸受の性能低下の原因となること等を効果的に避けることができる。而も、環状凹部内への軸受構造体の開口側の嵌合及び軸受穴内へのシャフトの挿入時に、オイルに作用する力が内外に分散してオイル界面の急激な移動が防がれ、減圧下において作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でも、オイルの飛び出しや乱れが抑えられ、復圧によりオイルが確実に行き渡る。請求項9の各液体動圧軸受製造方法によれば、更に、軸受穴内周面部を構成する多孔質材料へのオイル含浸を液体動圧軸受組立てと同時に行って製造効率を高めることができる。また、減圧下で軸受穴に対しシャフトの挿入を完了させようとする際に前記多孔質材料にオイルが十分に含浸していない場合、オイルが十分に含浸するまで挿入を停止させ或いは挿入速度を低下させることにより、オイルの飛び出しを回避する必要があるが、オイル界面の急激な移動が緩和されるため、減圧下において挿入作業の精度や円滑性等が十分とは言い難い場合でもオイルの飛び出しを抑制する効果がある。
【0106】
請求項10の各液体動圧軸受製造方法によれば、オイルが十分な流動性を有するので、軸受隙間等の必要箇所がオイルによって確実性高く満たされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】オイルを配した軸受穴にシャフトを挿入する工程を示す断面図である。
【図2】図1の工程によるシャフト挿入を完了して復圧することにより得られた液体動圧軸受の断面図である。
【図3】図1の軸受構造体の平面図である。
【図4】環状凹部内にオイルを配した軸側構造体のシャフトを軸受穴に挿入する工程を示す断面図である。
【図5】図4の工程によるシャフト挿入を完了して復圧することにより得られた液体動圧軸受の断面図である。
【図6】図2又は図5の液体動圧軸受を用いたスピンドルモータの断面図である。
【図7】スピンドルモータを用いたディスク駆動装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
10 ロータ
10 軸側構造体
10a ロータハブ
10a1 軸側円周状平坦面
10b シャフト
10c 環状壁部
10d 環状凹部
12 軸受構造体
14 ロータマグネット
16 ハウジング
16a 閉塞端部
16b フランジ部
18 スリーブ
18a 軸線方向溝
18b 軸受穴
18c 分岐孔
19 連通孔
20 開口側ラジアル軸受部
20a ヘリングボーングルーブ
22 奥側ラジアル軸受部
22a ヘリングボーングルーブ
24 スラスト軸受部
24a スパイラルグルーブ
25 抜止めリング
26 スラストヨーク
27 ステータ
28 テーパシール部
30 ブラケット
30a 円形ボス部
50 ディスク駆動装置
51 ケーシング
52 スピンドルモータ
53 ディスク板
54 アクチュエータ部
55 アーム
56 ヘッド
L オイル

Claims (10)

  1. 中央部に突出するシャフトと、該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と、該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体、及び、前記シャフトが挿入される軸受穴と、該シャフトの先端面と軸線方向に対向する閉塞端面と、前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備えており、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在する液体動圧軸受の製造方法であって、
    減圧前に又は減圧下で、前記軸受構造体における閉塞端面を内底面として軸受穴内に所要量のオイルを配すること、
    軸受穴内に閉塞端面を内底面として所要量のオイルが配された状態で、減圧下、その軸受穴内に軸側構造体のシャフトを挿入し、前記オイルを、少なくとも前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間の軸受隙間並びに前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させること、及び、
    復圧することを含む液体動圧軸受製造方法。
  2. 中央部に突出するシャフトと該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体と、前記シャフトが挿入される軸受穴と該シャフトの端面と軸線方向に対向する閉塞端面と前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備え、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在する液体動圧軸受の製造方法であって、
    減圧前に又は減圧下で、前記軸側構造体における軸側円周状平坦面を内底面として円筒状周壁面とシャフトの間の環状凹部内に所要量のオイルを配すること、
    軸側構造体の軸側円周状平坦面を内底面として環状凹部内に所要量のオイルが配された状態で、減圧下、シャフトを前記軸受構造体の軸受穴内に挿入すると共に前記環状凹部内に軸受構造体の開口側を嵌合させ、前記オイルを、少なくとも前記シャフトと前記軸受穴の径方向間隙及び前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させること、及び、
    復圧することを含む液体動圧軸受製造方法。
  3. 中央部に突出するシャフトを有する軸側構造体、及び、前記シャフトが挿入される軸受穴と、該シャフトの先端面と軸線方向に対向する閉塞端面を有する一方開口の軸受構造体を備えており、前記シャフトと前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記軸受構造体に、外部と軸受穴内を連通する連通孔を有する液体動圧軸受の製造方法であって、
    減圧前に、前記軸受穴内に、前記連通孔の軸受穴内開口を閉塞しない範囲で前記軸側構造体のシャフトを部分挿入すること、
    減圧前に又は減圧下で、前記軸側構造体又は軸受構造体の所定部位に所要量のオイルを配すること、
    前記軸側構造体又は軸受構造体の所定部位に所要量のオイルが配された状態で、減圧下、軸受穴に対するシャフトの挿入を完了すること、及び
    復圧することを含む液体動圧軸受製造方法。
  4. 中央部に突出するシャフトと、該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と、該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体、及び、前記シャフトが挿入される軸受穴と、該シャフトの先端面と軸線方向に対向する閉塞端面と、前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備えており、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在し、前記軸受構造体に、外部と軸受穴内を連通する連通孔を有する液体動圧軸受の製造方法であって、
    減圧前に、前記軸受構造体における閉塞端面を内底面として軸受穴内に所要量のオイルを配した後、軸受穴内に、前記連通孔の軸受穴内開口を閉塞しない範囲で軸側構造体のシャフトを部分挿入すること、
    軸受穴内に閉塞端面を内底面として所要量のオイルが配された状態で、減圧下、その軸受穴に対するシャフトの挿入を完了し、前記オイルを、少なくとも前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間の軸受隙間並びに前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させること、及び、
    復圧することを含む液体動圧軸受製造方法。
  5. 中央部に突出するシャフトと該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体と、前記シャフトが挿入される軸受穴と該シャフトの端面と軸線方向に対向する閉塞端面と前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備え、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在し、前記軸受構造体に、外部と軸受穴内を連通する連通孔を有する液体動圧軸受の製造方法であって、
    減圧前に、前記連通孔の軸受穴内開口を閉塞せず、前記軸側構造体における円筒状周壁面とシャフトの間の環状凹部を閉塞しない範囲で、軸受穴内に軸側構造体のシャフトを部分挿入すること、
    減圧前に又は減圧下で、環状凹部が閉塞されていない状態で前記軸側構造体における軸側円周状平坦面を内底面として前記環状凹部内に所要量のオイルを配すること、
    軸側構造体の軸側円周状平坦面を内底面として環状凹部内に所要量のオイルが配された状態で、軸受穴に対するシャフトの挿入を完了すると共に前記環状凹部内に軸受構造体の開口側を嵌合させ、前記オイルを、少なくとも前記シャフトと前記軸受穴の径方向間隙及び前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させること、及び、
    復圧することを含む液体動圧軸受製造方法。
  6. 液体動圧軸受が、
    中央部に突出するシャフトと、該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と、該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体、及び、前記シャフトが挿入される軸受穴と、該シャフトの先端面と軸線方向に対向する閉塞端面と、前記軸側円周状平坦面と軸線方向間隙を介して相対する軸受側円周状平坦面と、前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備えており、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在し、
    前記軸側円周状平坦面と軸受側円周状平坦面との間には、軸側構造体と軸受構造体との間の所定向きの相対回転時に前記オイルに対して半径方向内方側に作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたスラスト軸受部が形成され、
    前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間には、軸側構造体と軸受構造体との間の所定向きの相対回転時に前記オイルに対して軸線方向両側から作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたラジアル軸受部が形成されており、
    前記軸受構造体に、一方が前記軸受穴外における前記スラスト軸受部の半径方向内方に開口し、他方が軸受穴内に開口することにより、前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間に形成される軸受隙間の軸線方向両端部に連通し、当該軸受隙間内の圧力の均衡を図る連通孔が形成されてなるものである請求項4記載の液体動圧軸受製造方法。
  7. 液体動圧軸受が、
    中央部に突出するシャフトと、該シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する軸側円周状平坦面と、該軸側円周状平坦面の外周側から前記シャフトと同じ向きに立ち上げられた円筒状周壁面を有する軸側構造体、及び、前記シャフトが挿入される軸受穴と、該シャフトの先端面と軸線方向に対向する閉塞端面と、前記軸側円周状平坦面と軸線方向間隙を介して相対する軸受側円周状平坦面と、前記円筒状周壁面と径方向間隙を介して相対する軸受側外周面を有する一方開口の軸受構造体を備えており、前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記円筒状周壁面の少なくとも基部と前記軸受側外周面の間に、前記オイルに連続するオイルが介在し、
    前記軸側円周状平坦面と軸受側円周状平坦面との間には、軸側構造体と軸受構造体との間の所定向きの相対回転時に前記オイルに対して半径方向内方側に作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたスラスト軸受部が形成され、
    前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間には、軸側構造体と軸受構造体との間の所定向きの相対回転時に前記オイルに対して軸線方向両側から作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたラジアル軸受部が形成されており、
    前記軸受構造体に、一方が前記軸受穴外における前記スラスト軸受部の半径方向内方に開口し、他方が軸受穴内に開口することにより、前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間に形成される軸受隙間の軸線方向両端部に連通し、当該軸受隙間内の圧力の均衡を図る連通孔が形成されてなるものである請求項5記載の液体動圧軸受製造方法。
  8. 液体動圧軸受の軸受穴の内周面部が多孔質材料からなるものであり、
    所要量のオイルが、前記多孔質材料に含浸させるオイルを含む量であり、
    軸受穴内に閉塞端面を内底面として所要量のオイルが配された状態で、減圧下、その軸受穴に対するシャフトの挿入を完了し、前記オイルを、少なくとも前記シャフト及び前記軸側円周状平坦面と前記軸受構造体との間の軸受隙間並びに前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させると共に、前記多孔質材料に前記オイルを含浸させるものである請求項6記載の液体動圧軸受製造方法。
  9. 液体動圧軸受の軸受穴の内周面部が多孔質材料からなるものであり、
    所要量のオイルが、前記多孔質材料に含浸させるオイルを含む量であり、
    軸側構造体の軸側円周状平坦面を内底面として環状凹部内に所要量のオイルが配された状態で、軸受穴に対するシャフトの挿入を完了すると共に前記環状凹部内に軸受構造体の開口側を嵌合させ、前記オイルを、少なくとも前記シャフトと前記軸受穴の径方向間隙及び前記円筒状周壁面の基部と前記軸受側外周面の径方向間隙に連続するよう介在させると共に、前記多孔質材料に前記オイルを含浸させるものである請求項7記載の液体動圧軸受製造方法。
  10. 上記オイルの温度を、軸受隙間への確実な浸透が可能な十分な流動性を有する所定温度以上とする請求項1乃至9の何れかに記載の液体動圧軸受製造方法。
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US7808139B2 (en) 2005-02-17 2010-10-05 Hitachi Global Storage Technologies, Inc. Netherlands B.V. Magnetic disk drive with improved vibration characteristics

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